ループアンテナ装置
【課題】特定の指向性が要求される用途に適したループアンテナ装置を提供する。
【解決手段】ループアンテナ装置１００は、螺旋状をなす第１〜第５導体部１０〜５０を有しており、これら導体部１０〜５０が多層構造の絶縁基板２に形成されている。このうち、第１導体部１０と第２導体部２０には、それぞれ螺旋の内側に第１磁性体１９、第２磁性体２９が配置されており、これら磁性体１９，２９は内層化されている。第１磁性体１９と第２磁性体２９とは互いに分離された状態で平行に配置されており、それぞれループの外側にて磁界の集束作用を発揮することから、アンテナ全体として特定の方向への指向性を持たせることができる。
【解決手段】ループアンテナ装置１００は、螺旋状をなす第１〜第５導体部１０〜５０を有しており、これら導体部１０〜５０が多層構造の絶縁基板２に形成されている。このうち、第１導体部１０と第２導体部２０には、それぞれ螺旋の内側に第１磁性体１９、第２磁性体２９が配置されており、これら磁性体１９，２９は内層化されている。第１磁性体１９と第２磁性体２９とは互いに分離された状態で平行に配置されており、それぞれループの外側にて磁界の集束作用を発揮することから、アンテナ全体として特定の方向への指向性を持たせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えばＲＦＩＤ（Ｒａｄｉｏ Ｆｒｅｑｕｅｎｃｙ Ｉｄｅｎｔｉｆｉｃａｔｉｏｎ）用の通信機器に好適したループアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
一般にＲＦＩＤ用の通信機器においては、互いに近接させた２つのアンテナ間での磁界結合を用いて信号の授受が行われている。このような磁界結合は、一方のアンテナから他方のアンテナに磁界を作用させて電気的な共振を起こさせるものであるが、例えば一方のアンテナ（ＩＣカード等）を所持したユーザが他方のアンテナ（リーダ／ライタ等）に対して相対的に移動しながら通信が行われる場合、磁界結合の過程で２つのアンテナ間の距離が変化するため、その途中の距離によっては磁界結合が不感となり、共振が発生しなくなるタイミング（いわゆるヌルポイント）が存在する（例えば、特許文献１参照。）。
【０００３】
このようなヌルポイント現象の対策として、従来、アンテナ間での磁界結合とともに電界結合を併用する先行技術が知られている。この先行技術は、アンテナ線に螺旋ワイヤを使用し、これを全体としてループ形状に成形したトロイド状のアンテナを用いて通信を行うものである（例えば、特許文献２参照。）。このようなトロイド状アンテナは、アンテナ全体として周方向に大きな磁界結合ループを形成するとともに、螺旋部分により小さな電界結合ループを形成することができる。このためトロイド状アンテナをＲＦＩＤ用の通信機器に採り入れれば、磁界結合を用いた通信の過程でヌルポイント現象が発生しても、これを電界結合による通信で補完することができると考えられる。
【特許文献１】特開平１０−２６１９８４号公報（段落０００６〜０００８、図５）
【特許文献２】特開２００３−２１８６２５号公報（段落００１２、図４）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、上記の先行技術に挙げられる一般的なトロイド状アンテナは、全体としてループに沿って周方向に略均等な磁界強度分布を示すため、磁界結合時に所望の指向性を持たせることは困難である。このため例えば、ＲＦＩＤ用のＩＣカードを所持したユーザが自動改札機を通過しながら通信を行う場合のように、特定の方向への指向性が要求される用途にはあまり適しているとはいえない。
【０００５】
そこで本発明は上記の事情に鑑み、特定の指向性が要求される用途に適したアンテナを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
すなわち本発明は、螺旋状に形成された１本の導体経路を、全体としてループ状に形成したトロイド状アンテナである。連続した１本の導体経路には、少なくとも第１の導体部及び第２の導体部が含まれており、このうち第１の導体部は、第１の軸線の周りに螺旋状に形成されている。また第２の導体部は、第１の軸線に対して平行な第２の軸線の周りに螺旋状に形成されている。
【０００７】
また本発明では、第１の導体部により形成される螺旋の内側に第１の軸線に沿って延びる第１の磁性体が配置されており、さらに第２の導体部により形成される螺旋の内側には、第１の磁性体と分離された状態で第２の軸線に沿って延びる第２の磁性体が配置されている。
【０００８】
本発明のループアンテナ装置によれば、全体として１本の導体経路上に少なくとも螺旋形状の導体部（第１の導体部，第２の導体部）が含まれているため、例えばＲＦＩＤ用の通信時に相手のアンテナとの距離が変化しても、その過程で電界結合を発生させ、磁界結合時のヌルポイント現象を補完することができる。
【０００９】
また本発明では、第１の導体部及び第２の導体部にそれぞれ磁性体（第１の磁性体，第２の磁性体）が配置されているため、各導体部で経路の実効インダクタを大きく確保することができる。また、通信時には第１，第２導体部において第１，第２磁性体による磁界の収束作用が働くが、このとき第１，第２導体部が互いに平行に配置されているため、それぞれの収束作用は、特に第１，第２導体部からループの外側に向けて磁界強度を高める方向に働く。これにより、ループアンテナ装置全体としては、第１，第２導体部の配列方向（第１，第２の軸線と直交する方向）へ強い指向性を持たせることができる。
【００１０】
好ましくは、第１の導体部と第２の導体部とは、互いの進行方向が対向した螺旋を形成している。すなわち、第１の導体部と第２の導体部とが連続した１本の導体経路上にあり、これらが互いに逆向きの螺旋を形成していることから、導体経路が全体としてループを形成することになる。これにより、連続した１本の導体経路により、全体として良好な磁界結合ループを構成することができる。
【００１１】
なお連続した１本の導体経路は、第３の導体部を含む態様であってもよい。すなわち第３の導体部は、少なくとも第１の導体部と第２の導体部とを結ぶ区間に配置されており、第１及び第２の軸線と交差して延びる第３の軸線の周りに螺旋状に形成されている。
【００１２】
このような態様であれば、第１，第２導体部の間の区間においても実効インダクタンスを確保できるので、全体の小型化を図ることができる。また、第１，第２導体部の間の区間においても電界結合ループを良好に形成することができるため、それだけ通信性能が向上する。
【００１３】
さらに導体経路は、第４及び第５の導体部を含んでいてもよい。すなわち第４の導体部は、第３の導体部が接続される第１の導体部の一端と反対側の他端に接続されており、第３の軸線と平行な第４の軸線の周りに螺旋状に形成されている。また第５の導体部は、第３の導体部が接続される第２の導体部の一端と反対側の他端に接続されており、第３の軸線と平行な第５の軸線の周りに螺旋状に形成されている。そして、これら第４の導体部、第１の導体部、第３の導体部、第２の導体部及び第５の導体部が順番に接続されることで、導体経路の全体が矩形のトロイド状をなしている。
【００１４】
この場合、導体経路を全体として矩形ループアンテナとして構成することができるので、それだけ良好な磁界結合ループを構成することができる。また、導体経路が概ね全周にわたって螺旋形状を構成することにより、良好な電界結合ループを合わせて構成することができる。また、全体としてアンテナの構造が立体的となることから、それだけ磁界との接触面積を拡大することができるので、より通信感度を向上することができる。
【００１５】
また本発明において、第１及び第２の磁性体は、多層構造を有する絶縁基板の内層に配置されており、第１及び第２の導体部は、絶縁基板の外面に設けられた配線パターンと、絶縁基板を厚み方向に貫通して形成され、端部が配線パターンに接続されたビアとを含む構成であってもよい。
【００１６】
このような構成であれば、ループアンテナ装置を絶縁基板に実装した状態でモジュール化することができるので、全体の薄型化が可能となる。また、ループアンテナ装置をモジュール化することができるため、製品としての取り扱い性や利便性を向上することができる。
【００１７】
なお第１及び第２の磁性体は、多層構造を有する絶縁基板の内層に配置されており、第１及び第２の導体部は、絶縁基板の外面に設けられて第１又は第２の磁性体と交差する方向に延びる配線パターンと、絶縁基板の内部をその厚み方向に延びて形成され、絶縁基板の外面の位置で一端が配線パターンに接続されるとともに、他端が絶縁基板の内層に位置するビアと、絶縁基板の内層に設けられてビアの他端に接続された内層配線パターンとから構成されていてもよい。
【００１８】
このような構成であれば、絶縁基板の片方の外面には配線パターンが形成されないので、この外面に別の回路や電極を形成することができ、それだけ回路設計の自由度が高まる。
【００１９】
あるいは本発明において、第１及び第２の導体部は、絶縁基板の一対をなす端面の近傍にそれぞれ配置されており、第１の導体部を構成する配線パターンは、絶縁基板の一対をなす端面の一方から第２の導体部に向かって延び、かつ、第２の導体部を構成する配線パターンは、絶縁基板の一対をなす端面の他方から第１の導体部に向かって延びている態様であってもよい。
【００２０】
この場合、第１の導体部を構成するビアは、第２の導体部に近い位置と第２の導体部から離れた位置にそれぞれ形成され、かつ第２の導体部から離れた位置では絶縁基板の一方の端面から露出しており、そして第２の導体部を構成するビアは、第１の導体部に近い位置と第１の導体部から離れた位置にそれぞれ形成され、かつ第１の導体部から離れた位置では絶縁基板の他方の端面から露出していることが好ましい。
【００２１】
このような構成であれば、絶縁基板の各端面の方向で指向性をより高めることができ、それだけ良好な通信が可能になる。
【００２２】
より実用的には、第１及び第２の磁性体に金属ガラスを使用してもよい。あるいは、第１及び第２の磁性体がソフトフェライトであってもよい。
【００２３】
上記の金属ガラスは、鉄を主成分としたアモルファス（非結晶）合金であり、その高い透磁率によって軟磁性材料としての性質を示す素材である。またソフトフェライトは、酸化鉄を主原料とする軟質磁性材料であり、他の軟質磁性材料（珪素鋼、パーマロイ等）と比較して飽和磁束密度はやや小さいものの、電気比抵抗が大きく、高周波領域における磁気特性に優れた素材である。
【００２４】
また金属ガラス、ソフトフェライトはともに形状加工の自由度が高いことから、上記のように第１，第２の磁性体として多層構造の絶縁基板の内層に設けることは容易である。
【発明の効果】
【００２５】
以上のように本発明のループアンテナ装置は、特定の方向に強い指向性を発揮できることから、ＲＦＩＤ用の通信において指向性が要求される用途にも好適する。また、磁界結合時のヌルポイント現象を電界結合により補完できるので、通信不良を防止して確実なＲＦＩＤ用の通信を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２６】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【００２７】
〔第１実施形態〕
図１は、第１実施形態のループアンテナ装置１００を示す平面図である。また図２は、ループアンテナ装置１００の縦断面図（図１中ＩＩ−ＩＩ断面）である。図２の断面に示されているように、ループアンテナ装置１００は、多層構造を有する絶縁基板２（例えばＬＴＣＣ）に実装された状態で、１つのアンテナモジュールとして構成されている。また図１に示されているように、ループアンテナ装置１００は大きく分けて第１導体部１０、第２導体部２０、第３導体部３０、第４導体部４０及び第５導体部５０を有しており、これらが絶縁基板２内で連続した１本の導体経路上に接続されることにより、全体としてトロイド状アンテナを構成している。以下、各部の構成について具体的に説明する。
【００２８】
〔第１導体部〕
第１導体部１０は、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数（この例では６本）の配線パターン１２を有するほか、その内層に形成された複数（この例では５本）の配線パターン１４、そしてビア１６，１８を有している。このうち表面の配線パターン１２は、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂのうち、一方の端面２ａに近接した位置から他方の端面２ｂに向けて延びており、個々の配線パターン１２は互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向に配列されている。また内層の配線パターン１４は、隣り合う表面の配線パターン１２の間を斜めに延びており、これら配線パターン１４もまた互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向に配列されている。
【００２９】
ビア１６，１８のうち、一方のビア１６は絶縁基板２の一方の端面２ａに近接して配置されており、他方のビア１８は端面２ａから離れて配置されている。このためループアンテナ装置１００全体としてみると、一方のビア１６は第２導体部２０から離れた位置にあり、他方のビア１８は第２導体部２０に近い位置にある。
【００３０】
また図２に示されているように、各ビア１６，１８は、それぞれ一端が絶縁基板２の表面で配線パターン１２と接続されており、また他端が絶縁基板２の内層で配線パターン１４と接続されている。これにより、表面の配線パターン１２同士が絶縁基板２の内層で配線パターン１４及びビア１６，１８を通じて接続される結果、全体として第１導体部１０は一続きの電気的な導体として構成されている。
【００３１】
また第１導体部１０は、表面の配線パターン１２からビア１８、ビア１８から内層の配線パターン１４、内層の配線パターン１４から次のビア１６、そしてビア１６から次の配線パターン１２へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。このような螺旋は、絶縁基板２の長手方向に平行となる仮想的な軸線（第１の軸線）の周りに形成されている。
【００３２】
なお、第１導体部１０の中で最も第４導体部４０に近い位置にあるビア１６は、他端が別の配線パターン５１と接続されている。この配線パターン５１は、第１導体部１０と第４導体部４０とを接続するものである。また、第１導体部１０の中で最も第３導体部３０に近い位置にあるビア１８は、他端が別の配線パターン５２と接続されている。この配線パターン５２は、第１導体部１０と第３導体部３０とを接続するものである。
【００３３】
〔第２導体部〕
第２導体部２０もまた、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数（この例では６本）の配線パターン２２を有するほか、その内層に形成された複数（この例では５本）の配線パターン２４、そしてビア２６，２８を有している。このうち表面の配線パターン２２は、絶縁基板２の他方の端面２ｂに近接した位置から一方の端面２ａに向けて延びており、個々の配線パターン２２は互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向に配列されている。また内層の配線パターン２４は、隣り合う表面の配線パターン２２の間を斜めに延びており、これら配線パターン２４もまた互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向に配列されている。
【００３４】
ビア２６，２８のうち、一方のビア２６は絶縁基板２の他方の端面２ｂに近接して配置されており、他方のビア２８は一方の端面２ａから離れて配置されている。このためループアンテナ装置１００全体としてみると、一方のビア２６は第１導体部１０から離れた位置にあり、他方のビア２８は第１導体部１０に近い位置にある。
【００３５】
また図２に示されているように、各ビア２６，２８は、それぞれ一端が絶縁基板２の表面で配線パターン２２と接続されており、また他端が絶縁基板２の内層で配線パターン２４と接続されている。これにより、表面の配線パターン２２同士が絶縁基板２の内層で配線パターン２４及びビア２６，２８を通じて接続される結果、全体として第２導体部２０もまた一続きの電気的な導体として構成されている。
【００３６】
そして、このような第２導体部２０もまた、表面の配線パターン２２からビア２８、ビア２８から内層の配線パターン２４、内層の配線パターン２４から次のビア２６、そしてビア２６から次の配線パターン２２へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。第２導体部２０の螺旋は、絶縁基板２の長手方向に平行となる仮想的な軸線（第２の軸線）の周りに形成されており、この軸線は、第１導体部１０における仮想的な軸線と平行である。
【００３７】
なお、第２導体部２０の中で第３導体部３０に隣接した位置にあるビア２６は、他端が別の配線パターン５３と接続されている。この配線パターン５３は、第２導体部２０と第３導体部３０とを接続するものである。また第２導体部２０の中で最も第５導体部５０に近い位置にあるビア２８は、他端が別の配線パターン５４と接続されている。この配線パターン５４は、第２導体部２０と第５導体部５０とを接続するものである。
【００３８】
〔第１，第２磁性体〕
絶縁基板２の内層には、第１磁性体１９及び第２磁性体２９が埋め込まれるようにして設置されている。これら第１磁性体１９及び第２磁性体２９は、いずれも長板状をなしており、絶縁基板２の内層をその長手方向に延びている。図２に示されているように、このうち第１磁性体１９は、第１導体部１０により形成される螺旋の内側に配置されており、また第２磁性体２９は、第２導体部２０により形成される螺旋の内側に配置されている。これら第１磁性体１９及び第２磁性体２９の全長は、いずれも第１導体部１０及び第２導体部２０の螺旋領域よりも長い。
【００３９】
なお第１磁性体１９及び第２磁性体２９には、例えば金属ガラスが使用されている。金属ガラスは、鉄を主成分としたアモルファス（非結晶）合金であり、その高い透磁率によって軟磁性材料としての性質を示すことから、磁性コアの用途に適した素材である。
【００４０】
この他に第１磁性体１９及び第２磁性体２９には、例えばソフトフェライトを使用してもよい。ソフトフェライトは、酸化鉄を主原料とする軟質磁性材料であり、他の軟質磁性材料（珪素鋼、パーマロイ等）と比較して飽和磁束密度はやや小さいものの、電気比抵抗が大きく、高周波領域における磁気特性に優れているため、磁性コアとして好適な素材である。
【００４１】
また上記の金属ガラス、ソフトフェライトともに形状加工の自由度が高いことから、第１磁性体１９及び第２磁性体２９を絶縁基板２の内層に設けることは容易である。
【００４２】
〔第３導体部〕
第３導体部は、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数（この例では５本）の配線パターン３２を有するほか、その内層に形成された複数（この例では４本）の配線パターン３４、そしてビア３６，３８を有している。このうち表面の配線パターン３２は、絶縁基板２の長手方向の一端面（符号なし）に近接した位置から絶縁基板２の内側へ延びており、個々の配線パターン３２は互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向と直交する方向に配列されている。また内層の配線パターン３４は、隣り合う表面の配線パターン３２の間を斜めに延びており、これら配線パターン３４もまた互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向と直交する方向に配列されている。
【００４３】
またビア３６，３８のうち、一方のビア３６は絶縁基板２の長手方向の一端面に近接して配置されており、他方のビア３８は一端面から絶縁基板２の内側に配置されている。
【００４４】
特に断面は図示していないが、各ビア３６，３８は、それぞれ一端が絶縁基板２の表面で配線パターン３２と接続されており、また他端が絶縁基板２の内層で配線パターン３４と接続されている。これにより、表面の配線パターン３２同士が絶縁基板２の内層で配線パターン３４及びビア３６，３８を通じて接続される結果、全体として第３導体部３０もまた一続きの電気的な導体として構成されている。そして第３導体部３０は、表面の配線パターン３２からビア３８、ビア３８から内層の配線パターン３４、内層の配線パターン３４から次のビア３６、そしてビア３６から次の配線パターン３２へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。第３導体部３０の螺旋は、絶縁基板２の長手方向と直交する仮想的な軸線（第３の軸線）の周りに形成されており、この軸線は、第１導体部１０又は第２導体部２０における仮想的な軸線と直交する。
【００４５】
なお、第３導体部３０の中で最も第１導体部１０に近い位置にあるビア３６は、他端が上記の配線パターン５２と接続されている。また、第３導体部３０の中で最も第２導体部２０に近い位置にあるビア３８は、他端が上記の配線パターン５３と接続されている。
【００４６】
〔第４，第５導体部〕
第４導体部４０は、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数の配線パターン４２，４３を有するほか、その内層に形成された配線パターン４４、そしてビア４６，４７，４８を有している。また第５導体部５０は、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数の配線パターン５２，５３を有するほか、その内層に形成された配線パターン５４、そしてビア５６，５７，５８を有している。
【００４７】
これら第４導体部４０及び第５導体部５０は、トロイド状アンテナとしての終端又は始端を構成する部分である。すなわち、絶縁基板２上で表面の配線パターン４３は図示しない整合回路に接続されており、また配線パターン５３は図示しない接地電極（ＧＮＤ）に接続されている。なお整合回路は、図示しないチップコンデンサやチップ抵抗、これらを接続する配線パターン等を含む構成である。なお、これとは逆に配線パターン４３が接地電極（ＧＮＤ）に接続されており、配線パターン５３が整合回路に接続されている構成であってもよい。
【００４８】
第４導体部４０においても、表面の配線パターン４２，４３同士は平行であり、また、各配線パターン４２，４３は互いに間隔をおいて絶縁基板２の長手方向と直交する方向に配列されている。また内層の配線パターン４４は、隣り合う表面の配線パターン４２，４３の間を斜めに延びている。これら配線パターン４２，４３は、ビア４６，４８を通じて一続きの導体として接続されている。なお、第１導体部１０に最も近い位置にあるビア４７は、配線パターン４２と上記の配線パターン５１を接続している。
【００４９】
第４導体部４０についても、全体として一続きの電気的な導体として構成されている。そして、このような第４導体部４０もまた、表面の配線パターン４３からビア４６、ビア４６から内層の配線パターン４４、内層の配線パターン４４から次のビア４８、そしてビア４８から次の配線パターン４２へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。第４導体部４０の螺旋は、絶縁基板２の長手方向と直交する仮想的な軸線（第４の軸線）の周りに形成されており、この軸線は、第１導体部１０又は第２導体部２０における仮想的な軸線と直交する。
【００５０】
また第５導体部５０において、表面の配線パターン５２，５３同士は互いに間隔をおいて絶縁基板２の長手方向と直交する方向に配列されている。また内層の配線パターン５４は、表面の配線パターン５２，５３の間を斜めに延びている。これら配線パターン５２，５３は、ビア５６，５８を通じて一続きの導体として接続されている。なお、第２導体部２０に隣接する位置にあるビア５７は、配線パターン５２と上記の配線パターン５４を接続している。
【００５１】
この第５導体部５０についても同様に、全体として一続きの電気的な導体として構成されている。そして第５導体部５０もまた、表面の配線パターン５２からビア５６、ビア５６から内層の配線パターン５４、内層の配線パターン５４から次のビア５８、そしてビア５８から次の配線パターン５３へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。第５導体部５０の螺旋は、絶縁基板２の長手方向と直交する仮想的な軸線（第５の軸線）の周りに形成されており、この軸線は、第１導体部１０又は第２導体部２０における仮想的な軸線と直交する。なお、ここでは第４の軸線と第５の軸線が同一線上にある例を示しているが、これらは互いに平行に配置されていてもよい。
【００５２】
〔指向性の向上〕
図３は、ループアンテナ装置１００を模式的に示す斜視図である。なお図３中、第１〜第５導体部１０〜５０は、それぞれ単純なワイヤモデルとして簡略化されている。また図示の煩雑化を防止するため、個々の配線パターンやビア等の符号は適宜図示を省略している。
【００５３】
第１実施形態のループアンテナ装置１００によれば、第１導体部１０及び第２導体部２０をそれぞれ螺旋状に形成し、その内側に第１磁性体１９、第２磁性体２９をそれぞれ配置することにより、第１導体部１０及び第２導体部２０の実効インダクタを大きく確保することができる。また、絶縁基板２の対向する一対の端面（端部）に沿って第１導体部１０と第２導体部２０とを別々に配置し、かつ第１磁性体１９及び第２磁性体２９を互いに平行に配置することにより、図中に一点鎖線で示されているように、通信時にはそれぞれ第１磁性体１９、第２磁性体２９に磁束が集束されることになる。この場合、第１導体部１０及び第２導体部２０に沿う領域では、その他の領域（例えば第３導体部３０）に比較して磁界強度が向上するため、それだけ通信感度を増大することができる。これにより、ループアンテナ装置１００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。
【００５４】
〔第２実施形態〕
次に図４は、第２実施形態のループアンテナ装置２００の構造例を示す縦断面図である。以下、第２実施形態のループアンテナ装置２００について、主に第１実施形態との相違点を中心に説明する。なお以下の説明では、第１実施形態と共通する構成要素には同じ符号を付し、その重複した説明を省略する。なお、特に相違点として説明している構成要素については、第１実施形態と同じ符号を付していても異なる構造を有する場合がある。
【００５５】
第２実施形態のループアンテナ装置２００においては、絶縁基板２の内層ではなく裏面に配線パターン１４，２４が形成されている。またビア１６，１８，２６，２８は、いずれも絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されており、各ビア１６，１８，２６，２８の他端は、絶縁基板２の裏面にて配線パターン１４，２４と接続されている。なお、ここでは特に図示していないが、その他の第３導体部３０、第４導体部４０及び第５導体部５０についても、絶縁基板２の裏面に上記の配線パターン３４，４４，５４が形成されており、それぞれのビア（符号省略）は、絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されている。
【００５６】
第２実施形態のループアンテナ装置２００においても、第１実施形態と同様に、ループアンテナ装置２００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。
【００５７】
〔第３実施形態〕
図５は、第３実施形態のループアンテナ装置３００を示す平面図である。また図６は、ループアンテナ装置３００の縦断面図（図５中ＶＩ−ＶＩ断面）である。第３実施形態のループアンテナ装置３００についても、主に第１実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に相違点として説明している構成要素については、第１実施形態と同じ符号を付していても異なる構造を有する場合がある点は上記と同様である。
【００５８】
第３実施形態のループアンテナ装置３００においては、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂにそれぞれビア１６，２６が露出している。すなわち絶縁基板２は、各ビア１６，２６の配列の中心線に沿ってダイシングされており、その切断面に各端面２ａ，２ｂが形成されている。このため各端面２ａ，２ｂには、ビア１６，２６を構成する導体が露出した状態にある。なお、第３導体部３０のビア３６については、第１，第２実施形態と同様に絶縁基板２の長手方向の一端面に露出していない。
【００５９】
第３実施形態のループアンテナ装置３００によれば、第１，第２実施形態と同様に、ループアンテナ装置３００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。加えて、各端面２ａ，２ｂにビア１６，２６を露出させることにより、各端面２ａ，２ｂの側方での磁界強度を向上させている。これにより第３実施形態では、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向への指向性をさらに高めることができる。
【００６０】
〔第４実施形態〕
次に図７は、第４実施形態のループアンテナ装置４００の構造例を示す縦断面図である。以下、第４実施形態のループアンテナ装置４００について、特に上記の第３実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に相違点として説明している構成要素については、第１〜３実施形態と同じ符号を付していても異なる構造を有する場合がある点はこれまでと同様である。
【００６１】
第４実施形態のループアンテナ装置４００においては、絶縁基板２の内層ではなく裏面に配線パターン１４，２４が形成されている。またビア１６，１８，２６，２８は、いずれも絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されており、各ビア１６，１８，２６，２８の他端は、絶縁基板２の裏面にて配線パターン１４，２４と接続されている。さらにビア１６，２６については、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂにそれぞれ露出している。なお、ここでは特に図示していないが、その他の第３導体部３０、第４導体部４０及び第５導体部５０についても、絶縁基板２の裏面に上記の配線パターン３４，４４，５４が形成されており、それぞれのビア（符号省略）は、絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されている。
【００６２】
第４実施形態のループアンテナ装置４００によれば、第１〜第３実施形態と同様に、ループアンテナ装置４００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。加えて、各端面２ａ，２ｂにビア１６，２６を露出させることにより、各端面２ａ，２ｂの側方での磁界強度を向上させている。これにより第４実施形態においても、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向への指向性をさらに高めることができる。
【００６３】
〔第５実施形態〕
図８は、第５実施形態のループアンテナ装置５００を示す平面図である。また図９は、ループアンテナ装置５００の縦断面図（図８中ＩＸ−ＩＸ断面）である。この第５実施形態のループアンテナ装置５００について、主に第１実施形態との相違点を中心に説明する。特に相違点として説明している構成要素については、第１実施形態と同じ符号を付していても異なる構造を有する場合がある点はこれまでと同様である。
【００６４】
第５実施形態のループアンテナ装置５００においては、第２実施形態と同様に絶縁基板２の内層ではなく裏面に配線パターン１４，２４が形成されている。またビア１８，２８は、いずれも絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されており、各ビア１８，２８の他端は、絶縁基板２の裏面にて配線パターン１４，２４と接続されている。なお、ここでは特に図示していないが、その他の第３導体部３０、第４導体部４０及び第５導体部５０についても、絶縁基板２の裏面に上記の配線パターン３４，４４，５４が形成されており、それぞれのビア（符号省略）は、絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されている。
【００６５】
さらに第５実施形態のループアンテナ装置５００では、第１〜第４実施形態のビア１６，２６が形成されておらず、代わりに絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂにそれぞれ導体路１７，２７が形成されている。このため図９に示されているように、絶縁基板２の一方の端面２ａにおいて、表面の配線パターン１２と裏面の配線パターン１４とは導体路１７を通じて接続されており、また他方の端面２ｂにおいて、表面の配線パターン２２と裏面の配線パターン２４とは導体路２７を通じて接続されている。なお導体路１７，２７は、例えば導電性ペーストを塗布することで形成されている。また第３導体部３０については、第１〜第４実施形態と同様にビア３６が形成されている。
【００６６】
第５実施形態のループアンテナ装置５００によれば、第１，第２実施形態と同様に、ループアンテナ装置５００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。加えて、各端面２ａ，２ｂに導体路１７，１８が形成されていることにより、各端面２ａ，２ｂの側方での磁界強度を向上させている。これにより第５実施形態では、第３，第４実施形態と同様に絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向への指向性をさらに高めることができる。
【００６７】
上記のように第１〜第５実施形態のループアンテナ装置１００〜５００は、いずれも特定の方向に強い指向性を有している。このためループアンテナ装置１００〜５００は、例えばＲＦＩＤ用のＩＣカードを所持したユーザが自動改札機を通過しながら通信を行う場合のように、特定の方向に指向性が要求される用途に極めて好適である。この場合、各実施形態のループアンテナ装置１００〜５００を自動改札機（リーダ／ライタ）に設置し、ユーザの通過する方向に絶縁基板２の各端面２ａ，２ｂを合わせて配置することで、ＩＣカードの移動方向に関して強い指向性を発揮させることができる。なお、ループアンテナ装置１００〜５００はリーダ／ライタだけでなく、ＩＣカードにも適用することができる。
【００６８】
またループアンテナ装置１００〜５００は、磁界結合とともに電界結合を行うことができるトロイド状アンテナとしての構造を有するため、磁界結合時のヌルポイント現象を補完して、安定した確実な信号の授受を可能とする。
【００６９】
本発明は以上の実施形態に制約されることなく、各種の変形を伴って実施することができる。各実施形態ではビアが導電性ペーストにより形成される形態を挙げているが、ビアはスルーホールの内面を金属めっきすることで形成されていてもよい。
【００７０】
各実施形態では、第１〜第５導体部により概ね１周のループを形成しているが、例えば第１，第３，第２導体部だけでＵ字形状のループが形成される態様であってもよい。また、各導体部の配置や形態はあくまで例示であり、これらを適宜に変形して実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【００７１】
【図１】第１実施形態のループアンテナ装置を示す平面図である。
【図２】第１実施形態のループアンテナ装置の縦断面図（図１中ＩＩ−ＩＩ断面）である。
【図３】ループアンテナ装置を模式的に示す斜視図である。
【図４】第２実施形態のループアンテナ装置の構造例を示す縦断面図（図１中ＩＩ−ＩＩ断面）である。
【図５】第３実施形態のループアンテナ装置を示す平面図である。
【図６】第３実施形態のループアンテナ装置の縦断面図（図５中ＶＩ−ＶＩ断面）である。
【図７】第４実施形態のループアンテナ装置の構造例を示す縦断面図（図５中ＶＩ−ＶＩ断面）である。
【図８】第５実施形態のループアンテナ装置を示す平面図である。
【図９】第５実施形態のループアンテナ装置の縦断面図（図８中ＩＸ−ＩＸ断面）である。
【符号の説明】
【００７２】
２ 絶縁基板
１０ 第１導体部
１２，１４ 配線パターン
１６，１８ ビア
１７ 導体路
１９ 第１磁性体
２０ 第２導体部
２２，２４ 配線パターン
２６，２８ ビア
２７ 導体路
２９ 第２磁性体
３０ 第３導体部
３２，３４ 配線パターン
３６，３８ ビア
４０ 第４導体部
５０ 第５導体部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えばＲＦＩＤ（Ｒａｄｉｏ Ｆｒｅｑｕｅｎｃｙ Ｉｄｅｎｔｉｆｉｃａｔｉｏｎ）用の通信機器に好適したループアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
一般にＲＦＩＤ用の通信機器においては、互いに近接させた２つのアンテナ間での磁界結合を用いて信号の授受が行われている。このような磁界結合は、一方のアンテナから他方のアンテナに磁界を作用させて電気的な共振を起こさせるものであるが、例えば一方のアンテナ（ＩＣカード等）を所持したユーザが他方のアンテナ（リーダ／ライタ等）に対して相対的に移動しながら通信が行われる場合、磁界結合の過程で２つのアンテナ間の距離が変化するため、その途中の距離によっては磁界結合が不感となり、共振が発生しなくなるタイミング（いわゆるヌルポイント）が存在する（例えば、特許文献１参照。）。
【０００３】
このようなヌルポイント現象の対策として、従来、アンテナ間での磁界結合とともに電界結合を併用する先行技術が知られている。この先行技術は、アンテナ線に螺旋ワイヤを使用し、これを全体としてループ形状に成形したトロイド状のアンテナを用いて通信を行うものである（例えば、特許文献２参照。）。このようなトロイド状アンテナは、アンテナ全体として周方向に大きな磁界結合ループを形成するとともに、螺旋部分により小さな電界結合ループを形成することができる。このためトロイド状アンテナをＲＦＩＤ用の通信機器に採り入れれば、磁界結合を用いた通信の過程でヌルポイント現象が発生しても、これを電界結合による通信で補完することができると考えられる。
【特許文献１】特開平１０−２６１９８４号公報（段落０００６〜０００８、図５）
【特許文献２】特開２００３−２１８６２５号公報（段落００１２、図４）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、上記の先行技術に挙げられる一般的なトロイド状アンテナは、全体としてループに沿って周方向に略均等な磁界強度分布を示すため、磁界結合時に所望の指向性を持たせることは困難である。このため例えば、ＲＦＩＤ用のＩＣカードを所持したユーザが自動改札機を通過しながら通信を行う場合のように、特定の方向への指向性が要求される用途にはあまり適しているとはいえない。
【０００５】
そこで本発明は上記の事情に鑑み、特定の指向性が要求される用途に適したアンテナを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
すなわち本発明は、螺旋状に形成された１本の導体経路を、全体としてループ状に形成したトロイド状アンテナである。連続した１本の導体経路には、少なくとも第１の導体部及び第２の導体部が含まれており、このうち第１の導体部は、第１の軸線の周りに螺旋状に形成されている。また第２の導体部は、第１の軸線に対して平行な第２の軸線の周りに螺旋状に形成されている。
【０００７】
また本発明では、第１の導体部により形成される螺旋の内側に第１の軸線に沿って延びる第１の磁性体が配置されており、さらに第２の導体部により形成される螺旋の内側には、第１の磁性体と分離された状態で第２の軸線に沿って延びる第２の磁性体が配置されている。
【０００８】
本発明のループアンテナ装置によれば、全体として１本の導体経路上に少なくとも螺旋形状の導体部（第１の導体部，第２の導体部）が含まれているため、例えばＲＦＩＤ用の通信時に相手のアンテナとの距離が変化しても、その過程で電界結合を発生させ、磁界結合時のヌルポイント現象を補完することができる。
【０００９】
また本発明では、第１の導体部及び第２の導体部にそれぞれ磁性体（第１の磁性体，第２の磁性体）が配置されているため、各導体部で経路の実効インダクタを大きく確保することができる。また、通信時には第１，第２導体部において第１，第２磁性体による磁界の収束作用が働くが、このとき第１，第２導体部が互いに平行に配置されているため、それぞれの収束作用は、特に第１，第２導体部からループの外側に向けて磁界強度を高める方向に働く。これにより、ループアンテナ装置全体としては、第１，第２導体部の配列方向（第１，第２の軸線と直交する方向）へ強い指向性を持たせることができる。
【００１０】
好ましくは、第１の導体部と第２の導体部とは、互いの進行方向が対向した螺旋を形成している。すなわち、第１の導体部と第２の導体部とが連続した１本の導体経路上にあり、これらが互いに逆向きの螺旋を形成していることから、導体経路が全体としてループを形成することになる。これにより、連続した１本の導体経路により、全体として良好な磁界結合ループを構成することができる。
【００１１】
なお連続した１本の導体経路は、第３の導体部を含む態様であってもよい。すなわち第３の導体部は、少なくとも第１の導体部と第２の導体部とを結ぶ区間に配置されており、第１及び第２の軸線と交差して延びる第３の軸線の周りに螺旋状に形成されている。
【００１２】
このような態様であれば、第１，第２導体部の間の区間においても実効インダクタンスを確保できるので、全体の小型化を図ることができる。また、第１，第２導体部の間の区間においても電界結合ループを良好に形成することができるため、それだけ通信性能が向上する。
【００１３】
さらに導体経路は、第４及び第５の導体部を含んでいてもよい。すなわち第４の導体部は、第３の導体部が接続される第１の導体部の一端と反対側の他端に接続されており、第３の軸線と平行な第４の軸線の周りに螺旋状に形成されている。また第５の導体部は、第３の導体部が接続される第２の導体部の一端と反対側の他端に接続されており、第３の軸線と平行な第５の軸線の周りに螺旋状に形成されている。そして、これら第４の導体部、第１の導体部、第３の導体部、第２の導体部及び第５の導体部が順番に接続されることで、導体経路の全体が矩形のトロイド状をなしている。
【００１４】
この場合、導体経路を全体として矩形ループアンテナとして構成することができるので、それだけ良好な磁界結合ループを構成することができる。また、導体経路が概ね全周にわたって螺旋形状を構成することにより、良好な電界結合ループを合わせて構成することができる。また、全体としてアンテナの構造が立体的となることから、それだけ磁界との接触面積を拡大することができるので、より通信感度を向上することができる。
【００１５】
また本発明において、第１及び第２の磁性体は、多層構造を有する絶縁基板の内層に配置されており、第１及び第２の導体部は、絶縁基板の外面に設けられた配線パターンと、絶縁基板を厚み方向に貫通して形成され、端部が配線パターンに接続されたビアとを含む構成であってもよい。
【００１６】
このような構成であれば、ループアンテナ装置を絶縁基板に実装した状態でモジュール化することができるので、全体の薄型化が可能となる。また、ループアンテナ装置をモジュール化することができるため、製品としての取り扱い性や利便性を向上することができる。
【００１７】
なお第１及び第２の磁性体は、多層構造を有する絶縁基板の内層に配置されており、第１及び第２の導体部は、絶縁基板の外面に設けられて第１又は第２の磁性体と交差する方向に延びる配線パターンと、絶縁基板の内部をその厚み方向に延びて形成され、絶縁基板の外面の位置で一端が配線パターンに接続されるとともに、他端が絶縁基板の内層に位置するビアと、絶縁基板の内層に設けられてビアの他端に接続された内層配線パターンとから構成されていてもよい。
【００１８】
このような構成であれば、絶縁基板の片方の外面には配線パターンが形成されないので、この外面に別の回路や電極を形成することができ、それだけ回路設計の自由度が高まる。
【００１９】
あるいは本発明において、第１及び第２の導体部は、絶縁基板の一対をなす端面の近傍にそれぞれ配置されており、第１の導体部を構成する配線パターンは、絶縁基板の一対をなす端面の一方から第２の導体部に向かって延び、かつ、第２の導体部を構成する配線パターンは、絶縁基板の一対をなす端面の他方から第１の導体部に向かって延びている態様であってもよい。
【００２０】
この場合、第１の導体部を構成するビアは、第２の導体部に近い位置と第２の導体部から離れた位置にそれぞれ形成され、かつ第２の導体部から離れた位置では絶縁基板の一方の端面から露出しており、そして第２の導体部を構成するビアは、第１の導体部に近い位置と第１の導体部から離れた位置にそれぞれ形成され、かつ第１の導体部から離れた位置では絶縁基板の他方の端面から露出していることが好ましい。
【００２１】
このような構成であれば、絶縁基板の各端面の方向で指向性をより高めることができ、それだけ良好な通信が可能になる。
【００２２】
より実用的には、第１及び第２の磁性体に金属ガラスを使用してもよい。あるいは、第１及び第２の磁性体がソフトフェライトであってもよい。
【００２３】
上記の金属ガラスは、鉄を主成分としたアモルファス（非結晶）合金であり、その高い透磁率によって軟磁性材料としての性質を示す素材である。またソフトフェライトは、酸化鉄を主原料とする軟質磁性材料であり、他の軟質磁性材料（珪素鋼、パーマロイ等）と比較して飽和磁束密度はやや小さいものの、電気比抵抗が大きく、高周波領域における磁気特性に優れた素材である。
【００２４】
また金属ガラス、ソフトフェライトはともに形状加工の自由度が高いことから、上記のように第１，第２の磁性体として多層構造の絶縁基板の内層に設けることは容易である。
【発明の効果】
【００２５】
以上のように本発明のループアンテナ装置は、特定の方向に強い指向性を発揮できることから、ＲＦＩＤ用の通信において指向性が要求される用途にも好適する。また、磁界結合時のヌルポイント現象を電界結合により補完できるので、通信不良を防止して確実なＲＦＩＤ用の通信を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２６】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【００２７】
〔第１実施形態〕
図１は、第１実施形態のループアンテナ装置１００を示す平面図である。また図２は、ループアンテナ装置１００の縦断面図（図１中ＩＩ−ＩＩ断面）である。図２の断面に示されているように、ループアンテナ装置１００は、多層構造を有する絶縁基板２（例えばＬＴＣＣ）に実装された状態で、１つのアンテナモジュールとして構成されている。また図１に示されているように、ループアンテナ装置１００は大きく分けて第１導体部１０、第２導体部２０、第３導体部３０、第４導体部４０及び第５導体部５０を有しており、これらが絶縁基板２内で連続した１本の導体経路上に接続されることにより、全体としてトロイド状アンテナを構成している。以下、各部の構成について具体的に説明する。
【００２８】
〔第１導体部〕
第１導体部１０は、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数（この例では６本）の配線パターン１２を有するほか、その内層に形成された複数（この例では５本）の配線パターン１４、そしてビア１６，１８を有している。このうち表面の配線パターン１２は、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂのうち、一方の端面２ａに近接した位置から他方の端面２ｂに向けて延びており、個々の配線パターン１２は互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向に配列されている。また内層の配線パターン１４は、隣り合う表面の配線パターン１２の間を斜めに延びており、これら配線パターン１４もまた互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向に配列されている。
【００２９】
ビア１６，１８のうち、一方のビア１６は絶縁基板２の一方の端面２ａに近接して配置されており、他方のビア１８は端面２ａから離れて配置されている。このためループアンテナ装置１００全体としてみると、一方のビア１６は第２導体部２０から離れた位置にあり、他方のビア１８は第２導体部２０に近い位置にある。
【００３０】
また図２に示されているように、各ビア１６，１８は、それぞれ一端が絶縁基板２の表面で配線パターン１２と接続されており、また他端が絶縁基板２の内層で配線パターン１４と接続されている。これにより、表面の配線パターン１２同士が絶縁基板２の内層で配線パターン１４及びビア１６，１８を通じて接続される結果、全体として第１導体部１０は一続きの電気的な導体として構成されている。
【００３１】
また第１導体部１０は、表面の配線パターン１２からビア１８、ビア１８から内層の配線パターン１４、内層の配線パターン１４から次のビア１６、そしてビア１６から次の配線パターン１２へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。このような螺旋は、絶縁基板２の長手方向に平行となる仮想的な軸線（第１の軸線）の周りに形成されている。
【００３２】
なお、第１導体部１０の中で最も第４導体部４０に近い位置にあるビア１６は、他端が別の配線パターン５１と接続されている。この配線パターン５１は、第１導体部１０と第４導体部４０とを接続するものである。また、第１導体部１０の中で最も第３導体部３０に近い位置にあるビア１８は、他端が別の配線パターン５２と接続されている。この配線パターン５２は、第１導体部１０と第３導体部３０とを接続するものである。
【００３３】
〔第２導体部〕
第２導体部２０もまた、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数（この例では６本）の配線パターン２２を有するほか、その内層に形成された複数（この例では５本）の配線パターン２４、そしてビア２６，２８を有している。このうち表面の配線パターン２２は、絶縁基板２の他方の端面２ｂに近接した位置から一方の端面２ａに向けて延びており、個々の配線パターン２２は互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向に配列されている。また内層の配線パターン２４は、隣り合う表面の配線パターン２２の間を斜めに延びており、これら配線パターン２４もまた互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向に配列されている。
【００３４】
ビア２６，２８のうち、一方のビア２６は絶縁基板２の他方の端面２ｂに近接して配置されており、他方のビア２８は一方の端面２ａから離れて配置されている。このためループアンテナ装置１００全体としてみると、一方のビア２６は第１導体部１０から離れた位置にあり、他方のビア２８は第１導体部１０に近い位置にある。
【００３５】
また図２に示されているように、各ビア２６，２８は、それぞれ一端が絶縁基板２の表面で配線パターン２２と接続されており、また他端が絶縁基板２の内層で配線パターン２４と接続されている。これにより、表面の配線パターン２２同士が絶縁基板２の内層で配線パターン２４及びビア２６，２８を通じて接続される結果、全体として第２導体部２０もまた一続きの電気的な導体として構成されている。
【００３６】
そして、このような第２導体部２０もまた、表面の配線パターン２２からビア２８、ビア２８から内層の配線パターン２４、内層の配線パターン２４から次のビア２６、そしてビア２６から次の配線パターン２２へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。第２導体部２０の螺旋は、絶縁基板２の長手方向に平行となる仮想的な軸線（第２の軸線）の周りに形成されており、この軸線は、第１導体部１０における仮想的な軸線と平行である。
【００３７】
なお、第２導体部２０の中で第３導体部３０に隣接した位置にあるビア２６は、他端が別の配線パターン５３と接続されている。この配線パターン５３は、第２導体部２０と第３導体部３０とを接続するものである。また第２導体部２０の中で最も第５導体部５０に近い位置にあるビア２８は、他端が別の配線パターン５４と接続されている。この配線パターン５４は、第２導体部２０と第５導体部５０とを接続するものである。
【００３８】
〔第１，第２磁性体〕
絶縁基板２の内層には、第１磁性体１９及び第２磁性体２９が埋め込まれるようにして設置されている。これら第１磁性体１９及び第２磁性体２９は、いずれも長板状をなしており、絶縁基板２の内層をその長手方向に延びている。図２に示されているように、このうち第１磁性体１９は、第１導体部１０により形成される螺旋の内側に配置されており、また第２磁性体２９は、第２導体部２０により形成される螺旋の内側に配置されている。これら第１磁性体１９及び第２磁性体２９の全長は、いずれも第１導体部１０及び第２導体部２０の螺旋領域よりも長い。
【００３９】
なお第１磁性体１９及び第２磁性体２９には、例えば金属ガラスが使用されている。金属ガラスは、鉄を主成分としたアモルファス（非結晶）合金であり、その高い透磁率によって軟磁性材料としての性質を示すことから、磁性コアの用途に適した素材である。
【００４０】
この他に第１磁性体１９及び第２磁性体２９には、例えばソフトフェライトを使用してもよい。ソフトフェライトは、酸化鉄を主原料とする軟質磁性材料であり、他の軟質磁性材料（珪素鋼、パーマロイ等）と比較して飽和磁束密度はやや小さいものの、電気比抵抗が大きく、高周波領域における磁気特性に優れているため、磁性コアとして好適な素材である。
【００４１】
また上記の金属ガラス、ソフトフェライトともに形状加工の自由度が高いことから、第１磁性体１９及び第２磁性体２９を絶縁基板２の内層に設けることは容易である。
【００４２】
〔第３導体部〕
第３導体部は、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数（この例では５本）の配線パターン３２を有するほか、その内層に形成された複数（この例では４本）の配線パターン３４、そしてビア３６，３８を有している。このうち表面の配線パターン３２は、絶縁基板２の長手方向の一端面（符号なし）に近接した位置から絶縁基板２の内側へ延びており、個々の配線パターン３２は互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向と直交する方向に配列されている。また内層の配線パターン３４は、隣り合う表面の配線パターン３２の間を斜めに延びており、これら配線パターン３４もまた互いに平行にして、かつ一定の間隔をおいて絶縁基板２の長手方向と直交する方向に配列されている。
【００４３】
またビア３６，３８のうち、一方のビア３６は絶縁基板２の長手方向の一端面に近接して配置されており、他方のビア３８は一端面から絶縁基板２の内側に配置されている。
【００４４】
特に断面は図示していないが、各ビア３６，３８は、それぞれ一端が絶縁基板２の表面で配線パターン３２と接続されており、また他端が絶縁基板２の内層で配線パターン３４と接続されている。これにより、表面の配線パターン３２同士が絶縁基板２の内層で配線パターン３４及びビア３６，３８を通じて接続される結果、全体として第３導体部３０もまた一続きの電気的な導体として構成されている。そして第３導体部３０は、表面の配線パターン３２からビア３８、ビア３８から内層の配線パターン３４、内層の配線パターン３４から次のビア３６、そしてビア３６から次の配線パターン３２へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。第３導体部３０の螺旋は、絶縁基板２の長手方向と直交する仮想的な軸線（第３の軸線）の周りに形成されており、この軸線は、第１導体部１０又は第２導体部２０における仮想的な軸線と直交する。
【００４５】
なお、第３導体部３０の中で最も第１導体部１０に近い位置にあるビア３６は、他端が上記の配線パターン５２と接続されている。また、第３導体部３０の中で最も第２導体部２０に近い位置にあるビア３８は、他端が上記の配線パターン５３と接続されている。
【００４６】
〔第４，第５導体部〕
第４導体部４０は、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数の配線パターン４２，４３を有するほか、その内層に形成された配線パターン４４、そしてビア４６，４７，４８を有している。また第５導体部５０は、絶縁基板２の表面（表層）に形成された複数の配線パターン５２，５３を有するほか、その内層に形成された配線パターン５４、そしてビア５６，５７，５８を有している。
【００４７】
これら第４導体部４０及び第５導体部５０は、トロイド状アンテナとしての終端又は始端を構成する部分である。すなわち、絶縁基板２上で表面の配線パターン４３は図示しない整合回路に接続されており、また配線パターン５３は図示しない接地電極（ＧＮＤ）に接続されている。なお整合回路は、図示しないチップコンデンサやチップ抵抗、これらを接続する配線パターン等を含む構成である。なお、これとは逆に配線パターン４３が接地電極（ＧＮＤ）に接続されており、配線パターン５３が整合回路に接続されている構成であってもよい。
【００４８】
第４導体部４０においても、表面の配線パターン４２，４３同士は平行であり、また、各配線パターン４２，４３は互いに間隔をおいて絶縁基板２の長手方向と直交する方向に配列されている。また内層の配線パターン４４は、隣り合う表面の配線パターン４２，４３の間を斜めに延びている。これら配線パターン４２，４３は、ビア４６，４８を通じて一続きの導体として接続されている。なお、第１導体部１０に最も近い位置にあるビア４７は、配線パターン４２と上記の配線パターン５１を接続している。
【００４９】
第４導体部４０についても、全体として一続きの電気的な導体として構成されている。そして、このような第４導体部４０もまた、表面の配線パターン４３からビア４６、ビア４６から内層の配線パターン４４、内層の配線パターン４４から次のビア４８、そしてビア４８から次の配線パターン４２へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。第４導体部４０の螺旋は、絶縁基板２の長手方向と直交する仮想的な軸線（第４の軸線）の周りに形成されており、この軸線は、第１導体部１０又は第２導体部２０における仮想的な軸線と直交する。
【００５０】
また第５導体部５０において、表面の配線パターン５２，５３同士は互いに間隔をおいて絶縁基板２の長手方向と直交する方向に配列されている。また内層の配線パターン５４は、表面の配線パターン５２，５３の間を斜めに延びている。これら配線パターン５２，５３は、ビア５６，５８を通じて一続きの導体として接続されている。なお、第２導体部２０に隣接する位置にあるビア５７は、配線パターン５２と上記の配線パターン５４を接続している。
【００５１】
この第５導体部５０についても同様に、全体として一続きの電気的な導体として構成されている。そして第５導体部５０もまた、表面の配線パターン５２からビア５６、ビア５６から内層の配線パターン５４、内層の配線パターン５４から次のビア５８、そしてビア５８から次の配線パターン５３へと連続していくことにより、全体として角形の螺旋を形成している。第５導体部５０の螺旋は、絶縁基板２の長手方向と直交する仮想的な軸線（第５の軸線）の周りに形成されており、この軸線は、第１導体部１０又は第２導体部２０における仮想的な軸線と直交する。なお、ここでは第４の軸線と第５の軸線が同一線上にある例を示しているが、これらは互いに平行に配置されていてもよい。
【００５２】
〔指向性の向上〕
図３は、ループアンテナ装置１００を模式的に示す斜視図である。なお図３中、第１〜第５導体部１０〜５０は、それぞれ単純なワイヤモデルとして簡略化されている。また図示の煩雑化を防止するため、個々の配線パターンやビア等の符号は適宜図示を省略している。
【００５３】
第１実施形態のループアンテナ装置１００によれば、第１導体部１０及び第２導体部２０をそれぞれ螺旋状に形成し、その内側に第１磁性体１９、第２磁性体２９をそれぞれ配置することにより、第１導体部１０及び第２導体部２０の実効インダクタを大きく確保することができる。また、絶縁基板２の対向する一対の端面（端部）に沿って第１導体部１０と第２導体部２０とを別々に配置し、かつ第１磁性体１９及び第２磁性体２９を互いに平行に配置することにより、図中に一点鎖線で示されているように、通信時にはそれぞれ第１磁性体１９、第２磁性体２９に磁束が集束されることになる。この場合、第１導体部１０及び第２導体部２０に沿う領域では、その他の領域（例えば第３導体部３０）に比較して磁界強度が向上するため、それだけ通信感度を増大することができる。これにより、ループアンテナ装置１００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。
【００５４】
〔第２実施形態〕
次に図４は、第２実施形態のループアンテナ装置２００の構造例を示す縦断面図である。以下、第２実施形態のループアンテナ装置２００について、主に第１実施形態との相違点を中心に説明する。なお以下の説明では、第１実施形態と共通する構成要素には同じ符号を付し、その重複した説明を省略する。なお、特に相違点として説明している構成要素については、第１実施形態と同じ符号を付していても異なる構造を有する場合がある。
【００５５】
第２実施形態のループアンテナ装置２００においては、絶縁基板２の内層ではなく裏面に配線パターン１４，２４が形成されている。またビア１６，１８，２６，２８は、いずれも絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されており、各ビア１６，１８，２６，２８の他端は、絶縁基板２の裏面にて配線パターン１４，２４と接続されている。なお、ここでは特に図示していないが、その他の第３導体部３０、第４導体部４０及び第５導体部５０についても、絶縁基板２の裏面に上記の配線パターン３４，４４，５４が形成されており、それぞれのビア（符号省略）は、絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されている。
【００５６】
第２実施形態のループアンテナ装置２００においても、第１実施形態と同様に、ループアンテナ装置２００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。
【００５７】
〔第３実施形態〕
図５は、第３実施形態のループアンテナ装置３００を示す平面図である。また図６は、ループアンテナ装置３００の縦断面図（図５中ＶＩ−ＶＩ断面）である。第３実施形態のループアンテナ装置３００についても、主に第１実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に相違点として説明している構成要素については、第１実施形態と同じ符号を付していても異なる構造を有する場合がある点は上記と同様である。
【００５８】
第３実施形態のループアンテナ装置３００においては、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂにそれぞれビア１６，２６が露出している。すなわち絶縁基板２は、各ビア１６，２６の配列の中心線に沿ってダイシングされており、その切断面に各端面２ａ，２ｂが形成されている。このため各端面２ａ，２ｂには、ビア１６，２６を構成する導体が露出した状態にある。なお、第３導体部３０のビア３６については、第１，第２実施形態と同様に絶縁基板２の長手方向の一端面に露出していない。
【００５９】
第３実施形態のループアンテナ装置３００によれば、第１，第２実施形態と同様に、ループアンテナ装置３００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。加えて、各端面２ａ，２ｂにビア１６，２６を露出させることにより、各端面２ａ，２ｂの側方での磁界強度を向上させている。これにより第３実施形態では、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向への指向性をさらに高めることができる。
【００６０】
〔第４実施形態〕
次に図７は、第４実施形態のループアンテナ装置４００の構造例を示す縦断面図である。以下、第４実施形態のループアンテナ装置４００について、特に上記の第３実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に相違点として説明している構成要素については、第１〜３実施形態と同じ符号を付していても異なる構造を有する場合がある点はこれまでと同様である。
【００６１】
第４実施形態のループアンテナ装置４００においては、絶縁基板２の内層ではなく裏面に配線パターン１４，２４が形成されている。またビア１６，１８，２６，２８は、いずれも絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されており、各ビア１６，１８，２６，２８の他端は、絶縁基板２の裏面にて配線パターン１４，２４と接続されている。さらにビア１６，２６については、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂにそれぞれ露出している。なお、ここでは特に図示していないが、その他の第３導体部３０、第４導体部４０及び第５導体部５０についても、絶縁基板２の裏面に上記の配線パターン３４，４４，５４が形成されており、それぞれのビア（符号省略）は、絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されている。
【００６２】
第４実施形態のループアンテナ装置４００によれば、第１〜第３実施形態と同様に、ループアンテナ装置４００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。加えて、各端面２ａ，２ｂにビア１６，２６を露出させることにより、各端面２ａ，２ｂの側方での磁界強度を向上させている。これにより第４実施形態においても、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向への指向性をさらに高めることができる。
【００６３】
〔第５実施形態〕
図８は、第５実施形態のループアンテナ装置５００を示す平面図である。また図９は、ループアンテナ装置５００の縦断面図（図８中ＩＸ−ＩＸ断面）である。この第５実施形態のループアンテナ装置５００について、主に第１実施形態との相違点を中心に説明する。特に相違点として説明している構成要素については、第１実施形態と同じ符号を付していても異なる構造を有する場合がある点はこれまでと同様である。
【００６４】
第５実施形態のループアンテナ装置５００においては、第２実施形態と同様に絶縁基板２の内層ではなく裏面に配線パターン１４，２４が形成されている。またビア１８，２８は、いずれも絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されており、各ビア１８，２８の他端は、絶縁基板２の裏面にて配線パターン１４，２４と接続されている。なお、ここでは特に図示していないが、その他の第３導体部３０、第４導体部４０及び第５導体部５０についても、絶縁基板２の裏面に上記の配線パターン３４，４４，５４が形成されており、それぞれのビア（符号省略）は、絶縁基板２を厚み方向に貫通して形成されている。
【００６５】
さらに第５実施形態のループアンテナ装置５００では、第１〜第４実施形態のビア１６，２６が形成されておらず、代わりに絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂにそれぞれ導体路１７，２７が形成されている。このため図９に示されているように、絶縁基板２の一方の端面２ａにおいて、表面の配線パターン１２と裏面の配線パターン１４とは導体路１７を通じて接続されており、また他方の端面２ｂにおいて、表面の配線パターン２２と裏面の配線パターン２４とは導体路２７を通じて接続されている。なお導体路１７，２７は、例えば導電性ペーストを塗布することで形成されている。また第３導体部３０については、第１〜第４実施形態と同様にビア３６が形成されている。
【００６６】
第５実施形態のループアンテナ装置５００によれば、第１，第２実施形態と同様に、ループアンテナ装置５００全体として、絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向に指向性を持たせることができる。加えて、各端面２ａ，２ｂに導体路１７，１８が形成されていることにより、各端面２ａ，２ｂの側方での磁界強度を向上させている。これにより第５実施形態では、第３，第４実施形態と同様に絶縁基板２の対向する一対の端面２ａ，２ｂそれぞれの方向への指向性をさらに高めることができる。
【００６７】
上記のように第１〜第５実施形態のループアンテナ装置１００〜５００は、いずれも特定の方向に強い指向性を有している。このためループアンテナ装置１００〜５００は、例えばＲＦＩＤ用のＩＣカードを所持したユーザが自動改札機を通過しながら通信を行う場合のように、特定の方向に指向性が要求される用途に極めて好適である。この場合、各実施形態のループアンテナ装置１００〜５００を自動改札機（リーダ／ライタ）に設置し、ユーザの通過する方向に絶縁基板２の各端面２ａ，２ｂを合わせて配置することで、ＩＣカードの移動方向に関して強い指向性を発揮させることができる。なお、ループアンテナ装置１００〜５００はリーダ／ライタだけでなく、ＩＣカードにも適用することができる。
【００６８】
またループアンテナ装置１００〜５００は、磁界結合とともに電界結合を行うことができるトロイド状アンテナとしての構造を有するため、磁界結合時のヌルポイント現象を補完して、安定した確実な信号の授受を可能とする。
【００６９】
本発明は以上の実施形態に制約されることなく、各種の変形を伴って実施することができる。各実施形態ではビアが導電性ペーストにより形成される形態を挙げているが、ビアはスルーホールの内面を金属めっきすることで形成されていてもよい。
【００７０】
各実施形態では、第１〜第５導体部により概ね１周のループを形成しているが、例えば第１，第３，第２導体部だけでＵ字形状のループが形成される態様であってもよい。また、各導体部の配置や形態はあくまで例示であり、これらを適宜に変形して実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【００７１】
【図１】第１実施形態のループアンテナ装置を示す平面図である。
【図２】第１実施形態のループアンテナ装置の縦断面図（図１中ＩＩ−ＩＩ断面）である。
【図３】ループアンテナ装置を模式的に示す斜視図である。
【図４】第２実施形態のループアンテナ装置の構造例を示す縦断面図（図１中ＩＩ−ＩＩ断面）である。
【図５】第３実施形態のループアンテナ装置を示す平面図である。
【図６】第３実施形態のループアンテナ装置の縦断面図（図５中ＶＩ−ＶＩ断面）である。
【図７】第４実施形態のループアンテナ装置の構造例を示す縦断面図（図５中ＶＩ−ＶＩ断面）である。
【図８】第５実施形態のループアンテナ装置を示す平面図である。
【図９】第５実施形態のループアンテナ装置の縦断面図（図８中ＩＸ−ＩＸ断面）である。
【符号の説明】
【００７２】
２ 絶縁基板
１０ 第１導体部
１２，１４ 配線パターン
１６，１８ ビア
１７ 導体路
１９ 第１磁性体
２０ 第２導体部
２２，２４ 配線パターン
２６，２８ ビア
２７ 導体路
２９ 第２磁性体
３０ 第３導体部
３２，３４ 配線パターン
３６，３８ ビア
４０ 第４導体部
５０ 第５導体部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
第１の軸線の周りに螺旋状に形成された第１の導体部と、
前記第１の導体部を含む連続した１本の導体経路上に設けられ、前記第１の軸線に対して平行な第２の軸線の周りに螺旋状に形成された第２の導体部と、
前記第１の導体部により形成される螺旋の内側に配置されて前記第１の軸線に沿って延びる第１の磁性体と、
前記第１の磁性体と分離された状態で前記第２の導体部により形成される螺旋の内側に配置され、前記第２の軸線に沿って延びる第２の磁性体と
を備えたことを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項２】
請求項１に記載のループアンテナ装置において、
前記第１の導体部と前記第２の導体部とは、互いの進行方向が対向した螺旋を形成していることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項３】
請求項１又は２に記載のループアンテナ装置において、
前記導体経路は、
少なくとも前記第１の導体部と前記第２の導体部とを結ぶ区間に配置され、前記第１及び第２の軸線と交差して延びる第３の軸線の周りに螺旋状に形成された第３の導体部を含むことを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項４】
請求項３に記載のループアンテナ装置において、
前記導体経路は、
前記第３の導体部が接続される前記第１の導体部の一端と反対側の他端に接続され、前記第３の軸線と平行な第４の軸線の周りに螺旋状に形成された第４の導体部と、
前記第３の導体部が接続される前記第２の導体部の一端と反対側の他端に接続され、前記第３の軸線と平行な第５の軸線の周りに螺旋状に形成された第５の導体部とをさらに含み、
前記第４の導体部、前記第１の導体部、前記第３の導体部、前記第２の導体部及び前記第５の導体部が順番に接続されることで全体が矩形のトロイド状をなしていることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項５】
請求項１から４のいずれかに記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の磁性体は、多層構造を有する絶縁基板の内層に配置されており、
前記第１及び第２の導体部は、
前記絶縁基板の外面に設けられた配線パターンと、
前記絶縁基板を厚み方向に貫通して形成され、端部が前記配線パターンに接続されたビアとを含むことを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項６】
請求項１から４のいずれかに記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の磁性体は、多層構造を有する絶縁基板の内層に配置されており、
前記第１及び第２の導体部は、
前記絶縁基板の外面に設けられて前記第１又は第２の磁性体と交差する方向に延びる配線パターンと、
前記絶縁基板の内部をその厚み方向に延びて形成され、前記絶縁基板の外面の位置で一端が前記配線パターンに接続されるとともに、他端が前記絶縁基板の内層に位置するビアと、
前記絶縁基板の内層に設けられて前記ビアの他端に接続された内層配線パターンとから構成されることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項７】
請求項５又は６に記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の導体部は、前記絶縁基板の一対をなす端面の近傍にそれぞれ配置されており、
前記第１の導体部を構成する前記配線パターンは、前記絶縁基板の一対をなす端面の一方から前記第２の導体部に向かって延び、かつ、前記第２の導体部を構成する前記配線パターンは、前記絶縁基板の一対をなす端面の他方から前記第１の導体部に向かって延びており、
前記第１の導体部を構成する前記ビアは、前記第２の導体部に近い位置と前記第２の導体部から離れた位置にそれぞれ形成され、かつ前記第２の導体部から離れた位置では前記絶縁基板の一方の端面から露出しており、
前記第２の導体部を構成する前記ビアは、前記第１の導体部に近い位置と前記第１の導体部から離れた位置にそれぞれ形成され、かつ前記第１の導体部から離れた位置では前記絶縁基板の他方の端面から露出していることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項８】
請求項１から７のいずれかに記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の磁性体が金属ガラスであることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項９】
請求項１から７のいずれかに記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の磁性体がソフトフェライトであることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項１】
第１の軸線の周りに螺旋状に形成された第１の導体部と、
前記第１の導体部を含む連続した１本の導体経路上に設けられ、前記第１の軸線に対して平行な第２の軸線の周りに螺旋状に形成された第２の導体部と、
前記第１の導体部により形成される螺旋の内側に配置されて前記第１の軸線に沿って延びる第１の磁性体と、
前記第１の磁性体と分離された状態で前記第２の導体部により形成される螺旋の内側に配置され、前記第２の軸線に沿って延びる第２の磁性体と
を備えたことを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項２】
請求項１に記載のループアンテナ装置において、
前記第１の導体部と前記第２の導体部とは、互いの進行方向が対向した螺旋を形成していることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項３】
請求項１又は２に記載のループアンテナ装置において、
前記導体経路は、
少なくとも前記第１の導体部と前記第２の導体部とを結ぶ区間に配置され、前記第１及び第２の軸線と交差して延びる第３の軸線の周りに螺旋状に形成された第３の導体部を含むことを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項４】
請求項３に記載のループアンテナ装置において、
前記導体経路は、
前記第３の導体部が接続される前記第１の導体部の一端と反対側の他端に接続され、前記第３の軸線と平行な第４の軸線の周りに螺旋状に形成された第４の導体部と、
前記第３の導体部が接続される前記第２の導体部の一端と反対側の他端に接続され、前記第３の軸線と平行な第５の軸線の周りに螺旋状に形成された第５の導体部とをさらに含み、
前記第４の導体部、前記第１の導体部、前記第３の導体部、前記第２の導体部及び前記第５の導体部が順番に接続されることで全体が矩形のトロイド状をなしていることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項５】
請求項１から４のいずれかに記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の磁性体は、多層構造を有する絶縁基板の内層に配置されており、
前記第１及び第２の導体部は、
前記絶縁基板の外面に設けられた配線パターンと、
前記絶縁基板を厚み方向に貫通して形成され、端部が前記配線パターンに接続されたビアとを含むことを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項６】
請求項１から４のいずれかに記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の磁性体は、多層構造を有する絶縁基板の内層に配置されており、
前記第１及び第２の導体部は、
前記絶縁基板の外面に設けられて前記第１又は第２の磁性体と交差する方向に延びる配線パターンと、
前記絶縁基板の内部をその厚み方向に延びて形成され、前記絶縁基板の外面の位置で一端が前記配線パターンに接続されるとともに、他端が前記絶縁基板の内層に位置するビアと、
前記絶縁基板の内層に設けられて前記ビアの他端に接続された内層配線パターンとから構成されることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項７】
請求項５又は６に記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の導体部は、前記絶縁基板の一対をなす端面の近傍にそれぞれ配置されており、
前記第１の導体部を構成する前記配線パターンは、前記絶縁基板の一対をなす端面の一方から前記第２の導体部に向かって延び、かつ、前記第２の導体部を構成する前記配線パターンは、前記絶縁基板の一対をなす端面の他方から前記第１の導体部に向かって延びており、
前記第１の導体部を構成する前記ビアは、前記第２の導体部に近い位置と前記第２の導体部から離れた位置にそれぞれ形成され、かつ前記第２の導体部から離れた位置では前記絶縁基板の一方の端面から露出しており、
前記第２の導体部を構成する前記ビアは、前記第１の導体部に近い位置と前記第１の導体部から離れた位置にそれぞれ形成され、かつ前記第１の導体部から離れた位置では前記絶縁基板の他方の端面から露出していることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項８】
請求項１から７のいずれかに記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の磁性体が金属ガラスであることを特徴とするループアンテナ装置。
【請求項９】
請求項１から７のいずれかに記載のループアンテナ装置において、
前記第１及び第２の磁性体がソフトフェライトであることを特徴とするループアンテナ装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【公開番号】特開２００９−２４６６２６（Ｐ２００９−２４６６２６Ａ）
【公開日】平成２１年１０月２２日（２００９．１０．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−８９７３０（Ｐ２００８−８９７３０）
【出願日】平成２０年３月３１日（２００８．３．３１）
【出願人】（００００１００９８）アルプス電気株式会社 (4,263)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１０月２２日（２００９．１０．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年３月３１日（２００８．３．３１）
【出願人】（００００１００９８）アルプス電気株式会社 (4,263)
【Ｆターム（参考）】
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