説明

ループ再生装置

【課題】斬新な操作態様でループ再生可能な装置を提供すること。
【解決手段】タッチ位置検出部20が、タッチ領域における2次元平面上でタッチ操作が行われた場合に、XおよびY方向の基準点からの位置を検出し、更に、制御部30が、Y方向のタッチ位置に対応するレングスなるパラメータに応じて、再生領域であるプレイエリアのサイズを求めると共に、X方向のタッチ位置に対応するトリガ値なるパラメータを求め対応するプレイエリアの先頭アドレスを求める。プレイエリアの先頭アドレスから順番にプレイエリアに記憶されている音楽データをループ状に再生するので、ユーザはタッチ位置を変えて様々な場所で異なる音楽データのループ再生を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の音楽データをループ再生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リセット制御部が、レングスとカウント値とを対応付けて登録したカウント値テーブルの登録内容を参照して、レングス設定部によって設定されたレングスに対応するカウント値を求め、このカウント値を、LFOからの矩形波の立ち上がり、立下りに応じてカウントダウンしていき「0」となった場合に、再生制御部が再生しようとする音楽データの現在アドレスをリセットして再生開始アドレス値とし、ユーザが音楽データ再生中にテンポ、レングス等を変更してもリアルタイムに対処してテンポずれの累積を防止する音楽データ録音再生装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。そして、再生制御部は、上記リセット制御部からリセット信号が発行されない場合には録音用バッファメモリに記憶された音楽データを再生開始アドレスから再生データ数だけ再生する処理を繰り返して行うループ再生機能を有することになる一方、ループ再生中にリセット制御部からリセット信号が発行された場合にはその都度、現在の再生アドレスを初期値にリセットしながらループ再生を続行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−113176号公報(第7−9頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、ループトップからループエンドまでの音楽データを繰り返して再生するループ再生機能を有する音楽装置は種々提案されてきたが、その指示操作子はスイッチ等で実現されていた。そのため、操作の斬新さに欠けていたという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたもので、斬新な操作態様でループ再生機能を可能な装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、タッチ操作可能で基準点からX方向およびY方向に伸びるタッチ領域(11)が形成されたタッチパッド(10)と、
2次元のXY平面上でのタッチ位置を検出するタッチ位置検出手段(20)と、
前記Y方向におけるタッチ位置に対応するレングスなるパラメータを求め、この求めたレングスに対応する音楽データの再生エリアであるプレイエリア(Playエリア)のサイズを算出するプレイエリア演算手段(30、ステップS420)と、
前記X方向におけるタッチ位置に対応するトリガ値なるパラメータを求め、この求めたトリガ値に対応する前記プレイエリアの先頭アドレスを算出するプレイエリア先頭アドレス演算手段(30、ステップS430)と、
前記プレイエリア先頭アドレスから順番にアドレス増加して、前記プレイエリアのサイズの分だけ、前記プレイエリアに記憶されている音楽データを再生する動作をループ状に行う再生制御手段(30、ステップS440)と、を備えたことを特徴とするようにした。
【0007】
この発明によれば、タッチ位置検出手段が、2次元のXY平面上でのタッチ位置を検出し、更に、プレイエリア演算手段が、Y方向におけるタッチ位置に対応するレングスなるパラメータを求め、この求めたレングスに対応する音楽データの再生エリアであるプレイエリア(Playエリア)のサイズを算出し、また、プレイエリア先頭アドレス演算手段が、X方向におけるタッチ位置に対応するトリガ値なるパラメータを求め、この求めたトリガ値に対応する前記プレイエリアの先頭アドレスを算出する。そして、再生制御手段が、プレイエリア先頭アドレスから順番にアドレス増加して、前記プレイエリアのサイズの分だけ、前記プレイエリアに記憶されている音楽データを再生する制御をループ状に行う。この結果、ユーザはタッチ位置に応じて様々な態様での音楽データのループ再生を行うことができ、斬新な操作態様でループ再生を実現可能になる。
【0008】
より具体的には、上記装置において、前記レングスとレングスシフト(200)との関係を予め対応付けて登録したレングスシフトテーブルを更に備えた構成とし、前記プレイエリア演算手段(30、ステップS420)を、ループエリア(Loopエリア)なる値を「(60/現在のBPM(Beat Per Minute))×4」なる演算にて求める手段と、前記レングスシフトテーブルを参照して当該レングスを求める手段と、前記求めたループエリアなる値を「2∧Length shift(レングスシフト):∧は累乗を表す」なる値で除した除算値を、前記プレイエリアの再生領域のサイズとして求める手段とを含むようにすることができる。また、前記プレイエリア先頭アドレス演算手段(30、ステップS430)は、前記プレイエリアにエリアに前記トリガ値を乗じて、前記プレイエリアの先頭アドレスを求めるようにすれば簡素な構成でプレイエリアの先頭アドレスを求めることが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、斬新な操作態様でループ再生可能な装置を実現可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態のループ再生装置1の構成図である。
【図2】レングスシフトテーブル200の説明図である。
【図3】トリガテーブル300の説明図である。
【図4】装置動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】装置動作の説明図である。
【図6】タッチ操作による装置動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(構成)
図1は本発明の実施形態におけるループ再生装置1の構成図である。この装置1は、平面視四角形のタッチ領域を有するタッチパッド10と、このタッチ領域の左下の原点(基準点)からのXY方向の2次元平面におけるX方向およびY方向のタッチ位置を検出するタッチ位置検出部20と、このタッチ位置検出部20からのXY座標を受け付けて各種の演算や制御を行う制御部30とを有している。そして、制御部30によるメモリ40からの音楽データの読み出しによって得られた音楽データをデジタルアナログ変換するD/A変換器50と、これを放音するためのスピーカ55とが備えられていて「ループ再生」動作を可能としている。
【0013】
一方、マイクロフォン56から拾った音楽情報をアナログデジタル変換するA/D変換器51が制御部30に接続されていて、タッチ操作による音楽データの再生を行わない場合には、再生とは独自の先頭アドレスから順次所定のアドレスまで音楽データを書き込む「録音」動作も可能である。
【0014】
また、ROM60には不図示の制御プログラムや制御データの他にレングスシフトテーブル200が格納されている。このレングスシフトテーブル200は、拍数(Length)とレングスシフト(Length shift)なるパラメータとを対応付けて登録したものである。夫々のレングスの値に対してレングスシフトの値が定義されている。なお、レングス「1」は「四分音符」としている。例えば、レングス「1」の場合のレングスシフトは「2」となる。なお、ループ再生のフレーズ長(秒)と、レングスとテンポとの関係は「フレーズ長(秒)=「(60(秒)/テンポ(BPM))×レングス」なる関係がある。
【0015】
また、RAM70にはトリガテーブル300が展開されている。このトリガテーブル300は、レングスが変化すれば変化するものである。図3はトリガテーブル300の説明図である。拍数(length)に対して、タッチ位置のX座標とトリガ値との関係が対応づけられている。例えば、拍数(レングス)「2」の場合には、「0≦x<a」なるX座標でトリガ値が「0」になっており、「a≦x」なるX座標に対してはトリガ値が「1」とされている。これによって、タッチ位置のX座標に対応するトリガ値なるパラメータが求められる。なお、このようなテーブルを持たなくても、トリガ値はレングスが決まれば数式で決定される。例えば、Y座標の値によりレングス(Length)を決め、レングス値に対応するレングスシフト値を用い、図6(a)に示した様に、X軸を幾つかの領域に分割する場合、各領域の大きさは、この値を「トリガ判定値」と呼ぶことにすると、「トリガ判定値」=X軸の最大値/2∧LengthShift(∧は累乗を表す)となる。ここで、タッチ位置のX軸座標をaとすると、トリガ値iは、i=a/「トリガ判定値」として求めることができる。ソフトウエアで実装する場合、例えばiの初期値を2∧LengthShiftとして、比較評価式「0≧a−「トリガ判定値」×i」を満たせば、このiの値をトリガ値とし、満たさなければ「i=i−1」として比較評価を繰り返すことによりトリガ値iを得ることができる。
【0016】
(動作)
次に図4、図5、図6を参照して動作を説明する。先ず、ステップS400において、制御部30がタッチパッド10のタッチ領域11に対して、ユーザのタッチ操作があったか否かを判定する。タッチ操作がないと判定した場合(No)には、ステップS410に移行して録音制御を行う。この録音制御はループ再生とは異なる独立の先頭アドレスから順番に所定の最終アドレスまでループ状にマイクロフォン56からの音楽データを書き込む動作を行う。これによって、タッチ操作による再生により順次、新たな音楽を楽しみことができる。
【0017】
制御部30がタッチパッド10のタッチ領域11に対して、ユーザのタッチ操作があったと判定した場合(Yes)には、ステップ420に移行する。制御部30は、タッチ位置に対するXY座標に基づいてレングス、トリガ(Trigger)なるパラメータを求め、これに基づいて演算を行う。先ず、図5に示す「loopエリア」の大きさを「(60/現在のBPM)×4」なる式で求め、次いで、プレイエリア(Playエリア)の大きさを「loopエリア/(2∧レングスシフト)」(∧は2の累乗を表す)なる式から求める。制御部30は現在のBPM(Beat Per Minutes)を順次把握しているため、loopエリアのサイズは、この現在のBPMに応じて変化する。
【0018】
例えば、タッチ位置のY座標から求まるレングスが「1」の場合、図2のレングステーブル200から、対応するレングスシフトは「2」であるので、2の2乗、つまり、「Loopエリア」の大きさを四分の一としたものが、プレイエリアのサイズとなる。図5に示すように、「loopエリア」の四分の一がプレイエリア即ち、音楽データのループ再生領域のサイズとなっている。
【0019】
次に、ステップ430において、制御部30は、Playエリアの先頭のアドレスであるプレイエリア先頭アドレス(PlayエリアTopアドレス)を求める。この際にはレングス(拍数)が決まっているので、制御部30は、タッチ位置のX座標の値に対応するトリガ値をトリガテーブル300を参照して求める。そして、「プレイエリア先頭アドレス(PlayエリアTopアドレス)=PLAYエリア×トリガ値(Trigger値)」なる式でプレイエリア先頭アドレスを求める。したがって、ステップS440において、「プレイエリア先頭アドレス(PlayエリアTopアドレス)」を読み出し先頭アドレスとしてこれから順番にアドレスをインクリメントしながら(Readアドレス)Playエリアの音楽データを繰り返し読み出せば、タッチ位置に対応した音楽データが繰り返して再生される。
【0020】
なお、図5において、loopエリアの先頭アドレスは「loopエリアTopアドレス」であり、「PlayエリアTopアドレス」は、「loopエリアTopアドレス」を「0」とした場合に、「loopエリアTopアドレス」からどれくらいオフセットしているかを表すアドレスであるため、図5においては、playエリアの再生開始位置は「loopエリアTopアドレス+PlayエリアTopアドレス」となる。なお、図5において「Loopバッファ」と記載したのは、メモリ40内に形成されるloopエリアのことを意味する。
【0021】
次に、図6を参照して本装置における動作をより理解容易に説明する。図6は、横軸はトリガ、縦軸は拍数(Length)となっている。この図6は、現実にタッチ領域11に表示されているものではなく、装置動作の概念的な説明図である。今、太枠で囲まれた長方形状の領域(「2」が表示されている)内のいずれかの位置をタッチ動作すると、このタッチ位置のX、Y座標がタッチ位置検出部20から得られる。そして、このタッチ位置のX方向に対応するトリガ値が「2」、Y方向に対応するレングスの値が「1」であることを制御部30は把握する。なお、図2で示した太枠内の長方形形状領域のいずれの位置をXY方向にタッチしても、トリガ値は「2」、レングス値は「1」である。他の各長方形形状領域においても、同一のトリガ値や同一の拍数として定義される、X方向およびY方向のタッチ位置は幅を有している。
【0022】
レングス値「1」に対応するレングスシフトは、図3より「2」であるので、Playエリアのサイズは「Loopエリア/4」、即ち、loopエリアの四分の一となる。図6(b)は、Loopエリアのサイズの四分の一が再生するPlayエリアのサイズとなることを示している。一方、トリガ値は「2」であるため、PlayエリアTopアドレスは「Playエリア×2」となる。したがって、Playエリアの2個分となり、図6(b)に示すようにPlayエリアの3個分目の初期アドレスから、Playエリア1個分のデータを順次読み出しループ再生することになる。
【0023】
このように、タッチ位置の2次元のXY座標をそのまま利用して再生エリアを決定せずに、タッチ位置のXY座標からパラメータであるトリガ値、レングスを求めて、これを用いて再生エリアおよび再生先頭アドレスを決定しているので、楽曲の持つ抑揚をテンポに沿って取り出し、任意の位置を再生することで元の楽曲にはない新しい曲の展開を作り出すことができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上説明してきたように、本発明に係る再生装置は音楽分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ループ再生装置
10 タッチパッド
20 タッチ位置検出部
30 制御部
40 メモリ
50 D/A変換器
51 A/D変換器
55 スピーカ
56 マイクロフォン
60 ROM
70 RAM
200 レングスシフトテーブル
300 トリガテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ操作可能で基準点からX方向およびY方向に伸びるタッチ領域が形成されたタッチパッドと、
2次元のXY平面上でのタッチ位置を検出するタッチ位置検出手段と、
前記Y方向におけるタッチ位置に対応するレングスなるパラメータを求め、この求めたレングスに対応する音楽データの再生エリアであるプレイエリア(Playエリア)のサイズを算出するプレイエリア演算手段と、
前記X方向におけるタッチ位置に対応するトリガ値なるパラメータを求め、この求めたトリガ値に対応する前記プレイエリアの先頭アドレスを算出するプレイエリア先頭アドレス演算手段と、
前記プレイエリア先頭アドレスから順番にアドレス増加して、前記プレイエリアのサイズの分だけ、前記プレイエリアに記憶されている音楽データを再生する動作をループ状に行う再生制御手段と、を備えたことを特徴とするループ再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記レングスとレングスシフトとの関係を予め対応付けて登録したレングスシフトテーブルを更に備え、
前記プレイエリア演算手段は、
ループエリア(Loopエリア)なる値を「(60/現在のBPM(Beat Per
Minute))×4」なる演算にて求める手段と、
前記レングスシフトテーブルを参照してレングスを求める手段と、
前記求めたループエリアなる値を「2∧Length shift(レングスシフト):∧は累乗を表す」なる値で除した除算値を、前記プレイエリアの再生領域のサイズとして求める手段と、を含んで成ることを特徴とするループ再生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
プレイエリア先頭アドレス演算手段は、
前記プレイエリアのサイズに前記トリガ値を乗じて、前記プレイエリアの先頭アドレスを求めることを特徴とするループ再生装置。
【請求項4】
請求項1、2および3の内のいずれか一項に記載の装置において、
前記タッチ領域に対するタッチ操作が行われていない間は、前記プレイエリアの先頭アドレス以外の或るアドレスから所定のアドレスまでの音楽データの書き込み動作を行う録音制御手段を更に備えたことを特徴とするループ再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−83390(P2012−83390A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227075(P2010−227075)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000130329)株式会社コルグ (111)
【Fターム(参考)】