説明

レオロジー調節剤としてのポリ尿素

【課題】長時間にわたり加工が容易であり、良好で広い相溶性と、低レベルのチキソトロピー性とを示す、配合物の貯蔵安定性及び剪断安定性を増大させるポリ尿素を提供する。
【解決手段】一般式(I):
【化1】


[式中、Tは、少なくとも4つの尿素基を含んでなるポリマー単位であり、R1及びR7は、互いに独立して、分枝もしくは非分枝のC4−C32アルキル基等、R8及びR9は、互いに独立して、水素、分枝もしくは非分枝のC1−C32アルキル基等、R2及びR6は、互いに独立して、分枝もしくは非分枝のC4−C22アルキレン基等、R5は、分枝もしくは非分枝のポリエステル基等、A、B、X、及びYは、互いに独立して、−O−又は−NR10−であり、その重量平均分子量は、5000ないし70000g/モルである]
のポリ尿素、同ポリ尿素の製造方法および同ポリ尿素を含んでなるレオロジー調節剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ尿素、それらの調製、及びレオロジー調節剤としてのそれらの使用に関する。加えて、本発明は、ポリ尿素を含むレオロジー調節剤、及びそれらの使用に関する。本発明はさらに、ポリ尿素を含む配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体コーティング系のレオロジーは、主として、有機変性ベントナイト、シリカ、水素化ヒマシ油、及びポリアミドワックスを用いて調節される。これらの物質は、殆どが乾燥固体であり、これらは、溶媒及び剪断力を用いて半完成の形態に加工され、及び/又は、目標値温度調節により液体コーティング系へ添加される必要がある。これらの温度が観測されない場合、完成したコーティング系に微結晶を生じ、コーティングに欠陥をもたらす可能性がある。
これらのレオロジー助剤は、しばしば、明澄で透明なコーティングに曇り(clouding)及び濁り(haze)の事例を生じる。さらに、加工の間に粉塵をもたらす乾燥粉末状の製品を用いて操作することは、技術上好ましくない場合がある。
【0003】
レオロジー調節のための他の解決法は、欧州特許出願(特許文献1)に詳述されている。これにおいては、イソシアネートを、薄膜形成樹脂溶液の存在下でアミンと反応させ、微晶質の、針状結晶を形成する尿素を生成させる。このように修飾されたこれらの薄膜形成バインダーは、レオロジー調節バインダー及び垂れ防止バインダーとして、いわゆる「垂れ抑制剤(sag control agents)」の形態で使用される。
レオロジー調節に関する別の提案は、特許文献2及び特許文献3に記載されており、ここでは、ポリイソシアネート又はポリイソシアヌレートを、必須のバインダーの存在下でモノアミン又はポリアミンと反応させて、ポリ尿素を生成する。
【0004】
特許文献4は、脂肪又は油の増粘化に使用される尿素を記載する。これらの増粘剤は、増粘されるべき脂肪又は油中で、第一級アミンをジイソシアネートと化学量論的に反応させることにより調製される。
特許文献5特許明細書は、同様に、反応工程での油の増粘を記載する。この場合、第一級単官能性アミンとポリオキシアルキレンジアミンとの混合物を、増粘されるべき油中で、ジイソシアネートと反応させる。
特許文献6及び特許文献7明細書は、双方とも、イソシアネートをジアミン又はトリアミンと反応させることにより得られる尿素誘導体を用いた、成形コンパウンド(バルク成形コンパウンド、BMC、及びシート成形コンパウンド、SMC)の増粘を記載する。イソシアネート成分としては、脂肪族、芳香族ジイソシアネートを、しかしまた、ジイソシアネートとポリエーテルジオール又はポリエステルジオールとの反応生成物も使用し得る。アミン成分としては、低分子量ジアミン及びトリアミン、並びにポリアミンが使用される。尿素化合物は、アミン成分及びイソシアネート成分を、対応する樹脂中で混合物することにより調製される。
【0005】
先行技術において記載された全ての生成物の不利な点は、それらが常に、増粘されるべき媒体中で調製される必要があり、かつそのレオロジーに影響を及ぼすと考えられることである。それ故生成物は、増粘されるべき媒体に無関係ではない。それらは貯蔵に対し安定ではなく、むしろ短時間で塊(lump)及び/又は小片(bit)を呈する。さらなる不利な点は、これらのチキソトロープ性媒体が、プレゲルを使って調製されねばならないことである。この粘稠性のプレゲルは、長い静置時間の後では、もはや崩壊なしには取り込まれ得ないことから、通常はその調製の直後に加工される必要がある。完成した配合物のその後の修正は、それ故不可能である。先行技術のレオロジー調節剤は、単独では調製され得ず、薄膜形成剤の存在下でのみ調製可能である。それらの有用性はそれ故限定される。
【0006】
特許文献8は、チキソトロープ剤として有効であり、かつ尿素−ウレタンを含む溶液を調製するプロセス、及びコーティング材の増粘のための、この溶液の使用を記載する。これらの尿素−ウレタンは、モノヒドロキシ化合物を過剰のトリレンジイソシアネートと反応させること、未反応のトリレンジイソシアネートを反応混合物から除去すること、及び得られたモノイソシアネート付加物を、溶媒中で、ジアミンと2:1のモル比で更に反応させて、尿素−ウレタンを生成することによって得られる。特許文献9は、モノヒドロキシ化合物の、ジイソシアネート及びジアミンとの化学量論的反応により得られる、類似の尿素−ウレタンを記載する。
【0007】
特許文献10特許明細書は、過剰のジイソシアネートをポリオールと反応させて、過剰のジイソシアネートと一緒に存在するNCO−両末端ウレタンポリマーを生成する第1の反応と、それに続く、一方の、NCO−両末端ウレタンプレポリマーと過剰のジイソシアネートとの混合物と、他方の、第一級モノアミンと第一級ジアミンとの混合物との、第2の反応により得ることができる、ポリマー性尿素ウレタンを記載する。用いる媒体は、極性非プロトン性溶媒である。この方法で得られた尿素−ウレタン溶液を、液体ポリマー系におけるレオロジー調節剤として使用する。
これらの尿素−ウレタンの不利な点は、剪断安定性及びまたチキソトロピー性も限定されることであり、これは、適用により非常に顕著となる。このことは、適用の結果としての剪断後の粘性は、時間遅れの後にのみ再び増大し、それ故、得られる垂れ防止効果が乏しいことを意味する。
【0008】
特許文献11特許明細書は、噴霧乾燥により(ポリ)尿素粉末を生産するためのプロセスを記載する。得られる(ポリ)尿素粉末は、モノ尿素化合物又はポリ尿素化合物のいずれかからなり、かつ好ましくは低分子量を有する。これらの(ポリ)尿素化合物は、好ましくは、わずか数個の尿素基を有するにすぎない。(ポリ)尿素粉末は、潤滑剤、増粘剤、及び/又は加工処理剤として適すると言われる組成物中での使用が意図される。こうした目的には、ポリ(尿素)粉末は、基油及び/又は溶媒中への分散が意図される。調製又は使用を通じて、ポリ(尿素)粒子は、固体又は懸濁液の形態で存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP−A−0198519
【特許文献2】US 4,311,622
【特許文献3】US 4,677,028
【特許文献4】WO 02/04579
【特許文献5】US 5,554,586
【特許文献6】US 2005/0182205
【特許文献7】WO 95/09201
【特許文献8】EP 1188779
【特許文献9】EP−A−0006252
【特許文献10】DE 10241853 B3
【特許文献11】EP 1 630 191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故本発明の目的は、新規なレオロジー調節剤を提供することであった。これらの新規薬剤は、上記の明細書に述べられた不利な点をもつべきではない。さらに具体的には、本発明の意図は、貯蔵安定性のあるレオロジー調節剤を見出すことであった。さらに、レオロジー調節剤は、バインダーのように、増粘されるべき媒体に結合されているべきではなく、むしろ、完成した添加剤として、配合物の製造プロセスのどの時点においても添加可能でなければならない。これらの添加剤はまた、比較的長時間にわたり加工が容易であるとともに、良好で広い相溶性と、低レベルのチキソトロピー性とをもつべきである。
【0011】
新規なレオロジー調節剤は、強力なレオロジー作用と良好な剪断安定性とにより識別されるべきである。さらに、スプレー塗布によって適用される、DIN EN ISO 12944による厚膜(ハイビルド)システムの、垂れ特性を調節するのに適さねばならない。それらはさらに、先行技術のレオロジー調節剤よりも温度依存性が低くなければならず、それにより、焼付けシステムのレオロジー調節のため、及び、比較的高温において、すなわち、より具体的には、70℃ないし180℃の温度において行なわれるコーティング作業において使用できるようにする必要がある。加えてレオロジー調節剤は、貯蔵安定性を増大させるため、また塗料又はコーティング材が垂れる傾向を低減させるための、沈降防止剤として有用でなければならない。アルコール及びケトンなどの極性溶媒を含む系においても、同様に、レオロジー調節剤は、良好な相溶性及び良好なレオロジー活性を示す必要がある。このクラスの物質を用いることで、様々な極性をもつ溶媒中で使用するためのレオロジー調節剤を得ることが可能となるはずである。
【0012】
さらに、新規なレオロジー調節剤には、入手し易いこと、及び加工し易いことが望ましく、それらがダストフリーであり、かつ多大なコスト又は複雑さなしに他の系に混和できれば有利である。さらに、それらは理想的には透明であるべきであり、かつ、例えば塗料中に小片を形成する傾向をもつべきではない。それ故、特に望ましい一実施態様においては、レオロジー調節剤は、溶液の形態である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、これらの目的は、新規な物質クラスのレオロジー調節剤としての、一般式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
のポリ尿素によって達成し得ることが判明し、上記の式おいて、可変基は以下の定義を有する。
Tは、少なくとも4つの尿素基を含んでなるポリマー単位であり、
1及びR7は、互いに独立して、分枝もしくは非分枝のC4−C32アルキル、C3−C18アルケニル、C2−C20アルキニル、C3−C20シクロアルキル、C3−C20シクロアルケニル、C5−C12アリールもしくはアリールアルキル、Cm2m+1(O−Cn2np−(O−CH(C65)−CH2u−、U−C64−(CH2S−(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−、Cm2m+1(O−Cn2np−(O−CH(C65)−CH2u−(OOC−Cv2vx−、U−C64−(CH2S−(O−Cn2np−(O−CH(C65)−CH2u−(OOC−CvH2vx−、C4−C32−ヒドロキシアルキル、C4−C32−カルボキシアルキル、−Cm2mC(=O)R8−、−Cm2mCOOR8−、−Cm2mC(=O)NR89−、又は−Cm2mOC(=O)NR89基であり、該基は、置換又は未置換であってもよく、アミノ基及び/又はカルボキシル基については、塩形成又は四級化された形態で存在してもよく、かつCm2mは、直鎖又は分枝鎖のアルキレン基であり、かつR8及びR9は、互いに独立して、水素、分枝もしくは非分枝のC1−C32アルキル、C3−C18アルケニル、C2−C20アルキニル、C3−C20シクロアルキル、C3−C20シクロアルケニル、C5−C12アリール又はアリールアルキル、C1−C32アルコキシアルキル、又はC1−C32アシルオキシアルキル基であり、ここで、mは0−32、nは2−4、xは0−100、uは0−100、vは1−22、pは0−100、sは0−1、UはH、C1−C12アルキル、又は−C651-4であり、
2及びR6は、互いに独立して、分枝もしくは非分枝のC4−C22アルキレン、C3−C18アルケニレン、C2−C20アルキニレン、C3−C20シクロアルキレン、C3−C20シクロアルケニレン、C5−C12アリーレン又はアリールアルキレン基であり、
5は、分枝もしくは非分枝のポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、C4−C22アルキレン、C3−C18アルケニレン、C2−C20アルキニレン、C3−C20シクロアルキレン、C3−C20シクロアルケニレン、C5−C12アリーレン又はアリールアルキレン基であり、
A、B、X、及びYは、互いに独立して、−O−又は−NR10−であり、ここで、R10=H、分枝もしくは非分枝のC1−C32アルキル、C3−C18アルケニル、C2−C20アルキニル、C3−C20シクロアルキル、C3−C20シクロアルケニル、C5−C12アリール又はアリールアルキル基であり、
ポリ尿素の重量平均分子量は、5000ないし70000g/モルである。
【発明の効果】
【0016】
驚くべきことに、配合物の貯蔵安定性及び剪断安定性を増大させるポリ尿素が見出された。さらなる驚きは、これらのポリ尿素を含むレオロジー助剤であって、24000g/モルまでの比較的低い重量平均分子量をもつポリ尿素によるばかりでなく、24000g/モルを超える比較的高い重量平均分子量をもつものによっても、剪断後の垂れに対する抵抗性がわずかしか減少しない、該レオロジー助剤が見出されたことであった。さらに、本発明のポリ尿素は、貯蔵安定性がある。それらはさらに、増粘されるべき媒体から独立しており、前記媒体なしに調製し得る。それらはまた、比較的長時間にわたり加工が容易であり、良好で広い相溶性と、低レベルのチキソトロピー性とを示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】温度安定性効果に関する試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリ尿素は、好ましくは、完全に反応した化合物であり、配合物中の成分との、さらなる反応は何ら開始し得ない。例えば、EP−A−0198519において記載されたように、アミン及びイソシアネートを、バインダーの存在下で結合させることによる、反応工程のポリ尿素の生成は、アミンがバインダーと自発的に反応することから、例えば、不飽和ポリエステル樹脂又はUV硬化アクリレート塗料の場合には許されない。好ましい一実施態様においては、本発明のポリ尿素は、完全反応系であり、R1、R7、R2、R6、R5、及びR10は、バインダー系と反応するいずれの官能基ももたないことを意味する。
【0019】
別の好ましい実施態様においては、さらに具体的には、例えば、水性媒体などの極性系における使用のため、本発明のポリ尿素の基R1及びR7は、置換され、かつ好ましくは、アミン、OH、カルボキシル、エステル、ニトリル、又はアミド基、或いはヘテロ芳香族基などの、極性官能基を含む。アミン基は、塩形成されるか、又は四級化されていてもよい。カルボキシル基は、カルボキシラート基の形態で塩形成されていてもよい。別の実施態様においては、基R1及び/又はR7は、極性系において使用するため、ポリエステル基又はポリエーテル基を含む。
【0020】
プロトン化された、すなわち、塩形成された形態のアミノ基のための、通常の対イオンは、例えば、ハロゲン化物である。カルボキシラート基の通常の対イオンは、K+もしくはNa+などのアルカリ金属イオン、又はアルカリ土類金属イオンである。通常の四級化剤の例は、ハロゲン化アルキル、好ましくはヨウ化アルキルである。
基R2及びR6は、好ましくは、同じかもしくは異なる、分枝もしくは非分枝のC5−C12アリーレン、C5−C12アリールアルキレン、C3−C20シクロアルキレン、又はC4−C22アルキレン基である。
基R8及びR9は、好ましくは、互いに独立して、水素又は、分枝もしくは非分枝のC1−C32アルキル、C1−C32アルコキシアルキル、C5−C12アリール又はアリールアルキル基である。
基R10は、好ましくは、H又は、分枝もしくは非分枝のC1−C32アルキル、C3−C20シクロアルキル、C5−C12アリール又はアリールアルキル基である。
好ましいポリエーテル基は、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド及び/又はスチレンオキシド基である。
【0021】
好ましくは、mは、1−18である。別の好ましい実施態様においては、xは、0−50である。別の好ましい実施態様においては、uは、0−50である。別の好ましい実施態様においては、vは、1−6である。別の好ましい実施態様においては、pは、0−50である。
1つの特に好ましい実施態様においては、mは、1−18であり、xは、0−50であり、uは0−50、vは1−6、及びpは0−50である。
式(I)による本発明のポリ尿素のポリマー単位Tは、ウレタン基を含んでなってもよい。好ましくは、ポリマー単位Tは、ウレタン基を含まない。さらに好ましくは、Tは、ウレタン基を含まず、かつ式(I)のA及びYは、NR10である。
1つの好ましい実施態様においては、ポリマー単位Tは、式(II):
【0022】
【化2】

【0023】
の単位を表わし、これにおいて、R3及びR4は、互いに同じかもしくは異なり、かつ互いに独立して、分枝もしくは非分枝のポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、C4−C22アルキレン、C3−C18アルケニレン、C2−C20アルキニレン、C3−C20シクロアルキレン、C3−C20シクロアルケニレン、C5−C12アリーレン又はアリールアルキレン基であり、Z及びWは、互いに同じかもしくは異なり、かつ互いに独立して、−NHCOO−又は−NH−CO−NH−であり、かつqは、2−200である。
3、R4、及びR5は、好ましくは、分枝もしくは非分枝のポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、C4−C22アルキレン、C3−C20シクロアルキレン、又はC5−C12アリーレン又はアリールアルキレン基であり、基R3、R4、及びR5については、同じかもしくは異なっていてもよい。
好ましくは、qは、2−150、さらに好ましくは、qは、2−100、及び非常に好ましくは、qは、2−50である。
【0024】
本発明の化合物の重量平均分子量は、好ましくは、5000−60000g/モル、さらに好ましくは、5000−55000g/モルの範囲内である。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される分子質量分布の重量平均である。分子質量分布は、DIN 55672パート2によって測定する。用いる溶出液は、ジメチルアセトアミド中の臭化リチウム(含有量5g/リットル)の溶液である。キャリブレーションは、1000000と102との間の分子量をもつ直鎖構造物の、分布範囲の狭いポリメチルメタクリレート標準を用いて実施する。GPCシステム(インジェクター、サンプルプレート、検出器、及びカラム)の全体の温度は、80℃である。
本発明の化合物のレオロジー活性は、主としてその分子量及びその極性により決定される。
【0025】
高い相溶性及びレオロジー活性を得るためには、本発明のポリ尿素を、アルコール含有及びケトン含有系などの極性溶媒を含む系におけるレオロジー調節に使用し得る。重量平均分子量が高いほど、ポリ尿素の極性は高くなければならない。極性は、好ましくは、基R1及び/又はR7を含有する極性官能基によるか、或いは基R1及び/又はR7中のポリエステル基及びポリエーテル基によって達成される。適切な極性官能基の例は、アミン、OH、カルボキシル、エステル、ニトリル、又はアミド基、或いはヘテロ芳香族基であり、アミノ基及びカルボキシル基については、塩形成又は四級化されていてもよい。極性官能基としては、カルボキシル基が好ましい。
【0026】
高い相溶性及びレオロジー活性を得るためには、5000ないし12000g/モルの重量平均分子量を有するポリ尿素が、好ましくは、極性溶媒を含む系において使用される。特に好ましいのは、5000ないし12000g/モルの重量平均分子量を有し、かつ極性官能基によって置換され並びに/又はポリエステル基及び/もしくはポリエーテル基を含む基R1及び/又はR7を有するポリ尿素である。
【0027】
顔料及びフィラーは、塗料又はコーティング材の貯蔵の間に沈降し、沈殿物を形成する傾向があり、これらは、場合によっては決定的に硬く、再分散させることは難しく、加工を妨げる。このことは、顔料コンセントレート又はマニキュア液の貯蔵の間に特に当てはまる。傾斜及び垂直表面に対し比較的高い膜厚で適用する場合、垂れ跡が形成され易い。沈殿及び垂れようとする傾向は、望ましい効果ではない。それらは、本発明のポリ尿素により防止可能であり、したがって、貯蔵安定系をもたらす。40℃を超える貯蔵温度においてでも、本発明のポリ尿素は、貯蔵安定性を増大するための温度安定性の沈降防止挙動を達成するのに適している。記載されたポリ尿素のさらなる利点は、それらが、20から200℃まで、好ましくは20ないし150℃、さらに好ましくは20から100℃までの広い温度範囲にわたり、沈殿及び垂れようとする傾向を確実に防止することである。本発明のポリ尿素は、したがって、抗沈降剤として作用し、かつ垂れようとする傾向を防止する。5000ないし12000g/モルの重量平均分子量をもつポリ尿素は、このことに関して好適である。
【0028】
本発明のポリ尿素はまた、非常に広い相溶性についても注目に値する。これらの生成物のレオロジー効果は、先行技術(例えば、特許明細書 EP 1188779)により生産された生成物よりも、温度依存性が少なく、それにより、焼付けシステム又は比較的高温において行なわれるコーティング作業におけるレオロジー調節のため、それらを優先的に使用することができる。DIN EN 971−1は、焼付けを、バインダーの架橋が規定の最低温度で熱に暴露されることにより起こる1つの硬化法であると解釈する。それ故焼付けシステムは、温度暴露により硬化されて、連続した固体薄膜を形成するコーティング材である。この硬化は、一般に、70℃から180℃までの範囲の、比較的高い温度において起こる。
【0029】
前述の焼付けシステムにおけるレオロジー調節のための適合性は、10000ないし26000g/モル、好ましくは12000ないし21000g/モルの重量平均分子量をもつポリ尿素にある。R1及びR7中の、ポリエステル又はポリエーテル構造が好ましい。エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド及び/又はスチレンオキシド基は、特に好ましい。基R1及び/又はR7は、極性官能基を含んでいてもよい。
【0030】
本発明のポリ尿素はまた、強力なレオロジー活性と、剪断に対する良好な安定性とについても注目すべきである。それ故それらは、例えば、スプレー塗布により適用される厚膜システムの垂れようとする挙動の調整に特に適合する。DIN EN ISO 12944によれば、厚膜システムは、標的膜厚≧80μmを有するコーティングであり、厚膜型に加工され得るコーティング材から、一工程で加工される。これらのシステムは、好ましくは、防錆コーティングとして用いられる。
【0031】
厚膜システムを修飾するためには、24000ないし55000g/モル、好ましくは34000ないし50000g/モルの重量平均分子量を有するポリ尿素の使用が好ましい。基R1及び/又はR7は、極性官能基により置換されていてもよく、及び/又はポリステル基及び/又はポリエーテル基を含んでいてもよい。適切な極性官能基の例は、アミン、OH、カルボキシル、エステル、ニトリル、又はアミド基、或いはヘテロ芳香族基であり、アミノ及び/又はカルボキシル基については、塩形成されるか、又は四級化されていてもよい。極性官能基としては、カルボキシル基が好ましい。
【0032】
本発明のポリ尿素は、4つの異なる方法により調製し得る。
方法a.は、少なくとも1つのジイソシアネートと、2つのNCO−反応性基を含有する少なくとも1つの成分Kとの反応を考える。この2つの成分を、ジイソシアネート/化合物K(モル比)を(f+1):f(f≧1)で反応させ、したがって、中間体として、分子中に平均して2つの遊離のイソシアネート基を有するイソシアネート−末端尿素を生成する。これに続き、中間体の遊離のイソシアネート基と、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1つの成分Lとの完全反応を行う。この方法は、24000ないし70000g/モルの重量平均分子量を有するポリ尿素を得るのに好ましい。
【0033】
第2の方法b.では、少なくとも1つのジイソシアネートを、2つのNCO−反応性基を含有する少なくとも1つの成分Kと、ジイソシアネート/化合物K(モル比)をf:(f+1)(f≧1)で反応させ、したがって、分子中に平均して2つの遊離のイソシアネート−反応性の末端基を有する中間体を生成する。これに続き、中間体の遊離のイソシアネート−反応性基と、少なくとも1つのモノイソシアネート−官能性化合物との完全反応を行う。この方法は、24000ないし70000g/モルの重量平均分子量を有するポリ尿素を得るのに好ましい。
【0034】
第3の方法c.では、少なくとも1つのジイソシアネート及び少なくとも1つのモノイソシアネート−官能性化合物の混合物を、2つのNCO−反応性基を含有する少なくとも1つの成分Kと反応させる。ジイソシアネート/成分K/モノイソシアネート−官能性化合物(モル比)は、f:(f+1):2(f≧1)である。この方法は、5000ないし26000g/モルの重量平均分子量を有するポリ尿素を得るのに好ましい。
【0035】
第4の方法d.では、イソシアネート基に対し反応性である少なくとも1つの成分Lと、2つのNCO−反応性基を含有する少なくとも1つの成分Kとの混合物を、少なくとも1つのジイソシアネートと反応させる。成分K/ジイソシアネート/成分L(モル比)は、f:(f+1):2(f≧1)である。この方法は、5000ないし26000g/モルの重量平均分子量を有するポリ尿素を得るのに好ましい。
【0036】
それぞれの方法に関し、数値fは、好ましくは1から100、さらに好ましくは1から50、そして非常に好ましくは1から30である。
方法a.b.c.及びd.における反応は、極性非プロトン性及び非極性非プロトン性溶媒中で、また極性及び非極性媒体中で行なってもよい。極性非プロトン性溶媒の使用が好ましい。適切な極性非プロトン性溶媒の例は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルアセトアミドである。適切な非極性媒体系は、パラフィン系炭化水素である。溶媒の混合物もまた使用し得る。用いる溶媒及び媒体は、方法a.、b.、c.、及びd.において反応される出発化合物に対し化学的に不活性であることが好ましくい。
【0037】
それ故、方法a.、b.、c.、及びd.においては、ポリ尿素を含む溶液が得られ、それによるポリ尿素は、好ましくは、少なくとも1つの溶媒及び/又は媒体中の溶液として、溶解された形態で存在する。ポリ尿素を含む溶液は、本発明のポリ尿素と、1つ以上の溶媒及び/又は媒体、好ましくは1つ以上の上記記載の溶媒及び/又は媒体との均一な混合物であり、存在するポリ尿素は、溶媒/媒体から単純な濾過により分離することはできない。ポリ尿素溶液は、ポリ尿素が溶媒/媒体系中の溶液の状態にある点で、ポリ尿素の懸濁液又はエマルジョンとは異なり、また、超微小分散粒子の形態では存在しない。
4つの方法全てにおいて、成分Kは、2つの第一級アミン基又は1つの第一級アミン基のいずれか、および、1つのOH基とを、イソシアネート−反応性基として含有し、かつ成分Lは、少なくとも1つの第一級アミン基、1つの第二級アミン基、又は1つのOH基を、イソシアネート−反応性基として含有する。
【0038】
本発明のポリ尿素はまた、反応の終結後に、例えば、溶液の蒸発などにより揮発性成分を除去することで、固体の形態で回収し得る。
例えば、チャン(Zhang)らによる刊行物である「J.Phys.Chem.Ref.Data、2006年、第35巻、第4号、p.1475」に記載された種類の、イオン液体として知られる液体塩を、本発明のポリ尿素の調製のための反応媒体として使用することが有利であることもまた判明している。本発明の目的のための「イオン液体」とは、その融点が80℃未満であり、その融点が好ましくは50℃未満、さらに好ましくは30℃未満、及び非常に好ましくは20℃未満である、有機塩又は有機塩の混合物である。本明細書において特に好ましいイオン液体は室温(25℃)で液体である。それらは、極性非プロトン性溶媒の代わりに、該溶媒と同じ量で使用し得る。
反応は、例えば、塩化リチウム又は硝酸リチウムといった、可溶性の無機リチウム化合物の存在下で行なってもよい。液体塩を用いる場合、リチウム塩の使用を先行させることが可能である。
リチウム化合物の物質量は、好ましくは、成分Kの物質量の0.2ないし2.0倍である。該物質量は、好ましくは、成分Kの物質量の0.5ないし1.5倍、さらに好ましくは0.6ないし1.0倍である。
【0039】
本発明のポリ尿素を調製するためのプロセスにおいては、レオロジー調節剤系の貯蔵安定性を増大するため、リチウム化合物又は液体塩を使用することが有利である。
それぞれの反応条件(反応温度、反応時間、測定時間、有機スズ化合物又は第三級アミンなどの触媒、その他)の選択は、当業者には公知であり、実施例においてさらに詳細に例示される。生成物の重量平均分子量は、個々の成分の比率fによって調整される。
【0040】
ジイソシアネート成分としては、基R2、R3、R4、R5、及び/又はR6を含む化合物が使用される。これは、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、又は芳香族-脂肪族ジイソシアネート単独か、又はそれらの混合物を包含する。かかるジイソシアネートの具体的な例は、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート及びそれらの混合物、p−及びm−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビスフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4’−及び4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンの異性体混合物、及びC36二量体ジイソシアネートである。
【0041】
成分Kは、好ましくは、脂肪族、芳香-脂肪族、又は芳香族第一級ジアミン、又は第一級アミン基を含有するアルカノールアミンからなる。第一級ジアミンが好ましい。該成分は、2つ以上のジアミン又はアルカノールアミンの混合物から構成されていてもよい。それらは、基R2、R3、R4、R5、及び/又はR6を含む。
【0042】
適切なジアミンの例は、エチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、1,2−及び1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、4,7−ジアオキサデカン−1,10−ジアミン、4,7,10−トリオキサデカン−1,12−ジアミン、ランダム又はブロック状に配置されたエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド基を含有する、148ないし4000g/モルの重量平均分子量を有するポリオキシアルキレンジアミン(Huntsman社製、商標名Jeffamin D、及びJeffamin EDで知られる)、パラ−及びメタ−キシリレンジアミン;4,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3−ジメチル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、異性体フェニレンジアミン、又は異性体キシリレンジアミンである。
【0043】
適切なアルカノールアミンの例としては、モノエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−ブタノール、イソプロパノールアミン、5−アミノ−1−ペンタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N−メチル−エタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)アニリンが使用される。
【0044】
モノイソシアネート成分は、本発明のポリ尿素の基R1及びR7を含む。モノイソシアネート成分は、好ましくは、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、又はアリール脂肪族モノイソシアネートから選択され、これらは飽和もしくは不飽和であってもよい。モノイソシアネート成分は、好ましくは、エチレン性不飽和二重結合を含まない。
例としては、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、2−イソシアナトプロパン、m−トリルイソシアネート、p−トリルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、2−エチルフェニルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、又は2−ナフチルイソシアネートが使用される。
【0045】
特に好ましいのは、C5−C12アリーレン−ウレタンモノイソシアネート、さらに具体的には、EP 1188779に記載された種類の、トリレンウレタンモノイソシアネートである。
モノイソシアネート成分は、極性官能基、例えば、カルボキシル、エステル、ニトリル、又はアミド基、或いはヘテロ芳香族基を含んでいてもよい。また、アミン基及びOH基も存在してよく、これらの官能基はブロックされている。カルボキシル基が存在する場合、それらもまたブロックされていてもよい。保護基は、ウレタン又は尿素生成反応がその過程を終了した後に除去される。それらを除去するための適切なブロッキング剤及び手段は、当業者に公知である。アミノ基はまた、塩形成されるか、又は四級化された形態であってもよい。カルボキシル基は、同様に、塩形成された形態であってもよい。
【0046】
イソシアネート基に対し反応性である成分Lは、モノイソシアネート成分と同様に、本発明のポリ尿素の基R1及びR7を含む。成分Lは、好ましくは、モノアルコール、ポリアルコール、第一級モノアミン、第二級モノアミン、第一級ポリアミン、第二級ポリアミン、モノアルカノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される。化合物は、直鎖又は分枝鎖であってよく、また飽和されているか又は不飽和であってもよい。好ましくは、それらは飽和されている。
NCO基との反応が意図されていないOH及び/又はアミン基には、対応する保護基が与えられ、ウレタン又は尿素生成反応がその過程を終了した後に除去される。これらのアミノ基はまた、塩形成されるか、又は四級化されていてもよい。
【0047】
モノアルコールの使用が好ましい。特に好ましいのは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド及び/又はスチレンオキシド基を含むモノアルコールである。
ポリアルコール及びポリアミンにより、少なくとも2つのヒドロキシル基、及び2つのアミン基を、それぞれ含有する化合物が意味される。
適切なモノ−及びポリアルコールは、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソトリデシルアルコール、鎖長C10ないしC20のゲルベアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、グリセロール、ジペンタエリスリトール、ポリグリセロール、シクロヘキサノール又はそのアルキル置換誘導体、及びベンジルアルコールである。
【0048】
イソシアネート反応性基の他に、成分Lの化合物は、例えば、カルボキシル、エステル、ニトリル、又はアミド基、或いはヘテロ芳香族基などの、他の極性官能基を含んでいてもよい。例としては、12−ヒドロキシステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、及びそれらのエステル又はアミドであり、またN−ヒドロキシエチルモルホリン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルイミダゾール、アルコキシル化脂肪アミン、ジメチルエタノールアミン、又はトリエタノールアミンなどの化合物である。官能基は、好ましくはカルボキシル基である。カルボキシル基をもつ成分Lとして特に好ましい化合物の1つは、12−ヒドロキシステアリン酸である。
極性の調整に特に適するのは、上記に列挙したアルコールのアルコキシル化誘導体であり、この場合、例えばメタノール又はアリルアルコールなどの低級アルコールを、アルコキシル化のための出発成分として使用することも可能である。このようにして調製されたポリエーテルは、好ましくは、中でも、エチレンオキシド単位及び/又はプロピレンオキシド単位をその鎖中に含んでなり、これらの単位を交互に、又は連続的に有してもよい。アルコキシル化においては、例えば、フェノール又はアルキルフェノールなどの芳香族アルコールを、出発成分として使用することも可能である。
本発明のポリ尿素の相溶性を、それらを含む配合物に適合させるためには、例えば、イプシロン−カプロラクトンなどのラクトンと、上記に列挙したアルコール又はアルコールエトキシレートとの付加反応により、或いはヒドロキシル官能性(メタ)アクリレートの使用により、エステル基又はポリエステル基を、アルコール成分中に導入することもできる。
【0049】
使用される成分Lの脂肪族アミンは、好ましくは、2ないし44個の炭素原子を含有する直鎖、分枝鎖、又は環状のアミンである。例としては、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec−及びtert−ブチルアミン、3−メチル−1−ブタンアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリデシルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、及びAkzo Nobel社製の商標名Armeenで知られる、C12−C22アミンの混合物である。本発明によれば、例えば、ポリイソブチレンアミンなどのポリオレフィンアミンだけでなく、好ましくは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド基を含有しかつHuntman社製の商標名Jeffamin M600、M1000、M2005、及びM2070で知られる、ポリオキシアルキレンモノアミンも使用し得る。
【0050】
芳香脂肪族アミンは、例えば、ベンジルアミン、2−フェニルエチルアミン、又は1−メチルベンジルアミンなどの化合物である。
適切なモノアルカノールアミンの例は、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−ブタノール、イソプロパノールアミン、5−アミノ−1−ペンタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、及びN−(2−ヒドロキシエチル)アニリンである。
同様に適切であるのは、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−メトキシ−1−プロピルアミン、1−メトキシメチルプロピルアミン、1,1−ジメトキシ−2−プロピルアミン、3−エトキシ−1−プロピルアミン、3−ブトキシ−1−プロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1−プロピルアミン、3−トリデシルオキシ−プロピルアミン、3−ステアリルオキシプロピルアミン、p−メトキシベンジルアミン、3,4−ジメトキシベンジルアミン、p−メトキシフェニルエチルアミン、3,4−ジメトキシフェニルエチルアミン、9−フェノキシ−4,7−ジオキサノン−1−アミン、2−メチル−4−メトキシアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、フルフリルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、2−(4−モルホリニル)エチルアミン、4−(3−アミノプロピル)−モルホリン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、及び2,2’−アミノエトキシエタノールである。
加えて、11−アミノウンデカン酸、グルタミン酸、及び全ての既知のα−、β−、及びγ−アミノ酸類などの化合物も使用し得る。
適切な第二級アミンは、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジトリデシルアミン、ジオクタデシルアミン、又はジフェニルアミンである。
【0051】
本発明はさらに、ポリ尿素を調製するプロセスを提供する。該プロセスは、4つの方法a.、b.、c.、又はd.のうちの1つによって実施し得る。結果は、実質的に透明ないし濁りのある、低ないし中程度の粘度の溶液であって、溶液の全重量に基づき、10重量%−70重量%の間、さらに好ましくは15重量%−55重量%、及び非常に好ましくは20重量%−50重量%の、好ましい作用成分の割合を有する溶液か、或いは、ろう様又はゼラチン様の固化された溶液であり、かつ40−70℃の穏やかな加熱によって液体の塗布可能な形態に戻り得るものである。ポリ尿素は溶液中で結晶化はしない。
ポリ尿素溶液は、何ら剪断を必要とせずに、塗料及びポリマー系中に容易に混和し得る。さらに、ポリ尿素は、溶液として後から混和し得る。ポリ尿素溶液を用いての作業は、例えば、それらがダストフリーの形態で処理可能であり、実質的に透明であり、他の系と特に良好な相溶性を示し、かつ塗料中に小片を生じないという、さらなる利点を有する。
【0052】
本発明のポリ尿素は、レオロジー調節剤として使用し得る。この用途においては、配合物中のポリ尿素の割合は、そのレオロジーが影響されるべき配合物の全重量に基づき、好ましくは0.05重量%ないし10.0重量%、さらに好ましくは0.1重量%ないし8.0重量%、及び非常に好ましくは0.2重量%ないし5.0重量%である。
それ故本発明は、本発明のポリ尿素を含む配合物にも関する。配合物の全重量に基づき、好ましくは0.05重量%ないし10.0重量%、さらに好ましくは0.1重量%ないし8.0重量%、及び非常に好ましくは0.2重量%ないし5.0重量%のポリ尿素が存在する。
そのレオロジーが調節可能である適切な配合物は、可塑剤、溶媒、油、鉱物油、石油生産(例えば、原油回収率増強技術など)における水及び/又は溶媒を含む組成物、化粧品、人間栄養学、動物栄養学、皮膚科学、薬学、洗剤用の水及び/又は溶媒を含む組成物、作物保護用組成物、及びまた表面改質用組成物、或いは硬化性液体又はペースト様ポリマー系である。
【0053】
硬化性液体又はペースト様ポリマー系は、以下の適用又は他の加工の後に、通常の熱工程によって、尚また例えばフリーラジカル共重合又は重付加などの、他のメカニズムによっても、固体状態へ変換される。これらの系は、例えば、溶剤型、水性、及び無溶媒型の塗料、並びに、ポリウレタン(1−成分及び2−成分)、ポリアクリレート、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、及びエポキシ樹脂などのバインダーをベースとするコーティング材、PVCプラスチゾル、PVCオルガノゾル、熱プラスチック、エポキシド及び不飽和ポリエステル樹脂をベースとするコーティング、及びまた化粧用配合物、特にマニキュア液、床コーティング組成物、成形用コンパウンド、ラミネート樹脂、接着剤、シーラント、印刷用インク、接合用コンパウンド、及び充填用コンパウンドである。
使用上好ましいポリ尿素の実施態様は、使用の分野に依存しており、上記に包括的に提示されている。
【0054】
本発明はまた、少なくとも1つの本発明のポリ尿素を含むレオロジー調節剤に関する。レオロジー調節剤は、好ましくは、少なくとも1つの本発明のポリ尿素と、少なくとも1つの媒体系とを含む。媒体系の例は、極性又は非極性であってもよい有機溶媒である。ポリ尿素又は複数のポリ尿素は、例えば、媒体系中の溶液又は分散物の状態で存在してもよい。レオロジー調節剤自体は、固体、固体の混合物、溶液、エマルジョン又は懸濁液などの分散物、ゲル、又はペーストの形態をとってもよい。レオロジー調節剤が溶液の形態であるべき場合、極性非プロトン性溶媒の使用が好ましい。特に好ましいのは、調製法a.、b.、c.、又はd.から得られるポリ尿素を含む溶液である。ペースト用の好ましい媒体系は、適宜に、パラフィン系炭化水素などの非極性溶媒を含む。
レオロジー調節剤においては、各場合にレオロジー調節剤の全重量に基づき、好ましくは10重量%ないし70重量%、さらに好ましくは15重量%ないし55重量%、及び非常に好ましくは20重量%ないし50重量%の、少なくとも1つの本発明のポリ尿素が存在する。
【0055】
本発明のレオロジー調節剤は、薄膜形成樹脂などの成分を含んでいてもよい。薄膜形成樹脂の例は、ポリウレタン(1−成分及び2−成分)、ポリアクリレート、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、及びエポキシ樹脂、PVCプラスチゾル、PVCオルガノゾル、熱プラスチック、エポキシド及び不飽和ポリエステル樹脂をベースとするコーティングである。レオロジー調節剤は、薄膜形成樹脂を含まないことが好ましい。
本発明のレオロジー調節剤は、さらに、通例の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例は、ブロッキング防止剤、安定化剤、酸化防止剤、顔料、湿潤剤、分散剤、乳化剤、UV吸収剤、フリーラジカルスカベンジャー、滑剤、消泡剤、密着促進剤、レベリング剤、ワックス、ナノ粒子、成膜助剤、及び難燃剤である。好ましい添加剤は、湿潤剤、分散剤、及び/又は乳化剤である。
レオロジー調節剤は、好ましくは、従来のポリ尿素が使われ得る用途分野において使用される。
レオロジー調節剤は、配合物の全重量に基づき、好ましくは0.05重量%ないし10.0重量%、さらに好ましくは0.1重量%ないし8.0重量%、及び非常に好ましくは0.2重量%ないし5.0重量%のポリ尿素が、配合物中に存在するように使用される。
本発明を、以下に実施例を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0056】
パーセント数は、何ら別に示されない限り、重量パーセントである。用語「活性物質」は、比較実施例1において、及び実施例1〜6において調製された尿素化合物を指す。
【0057】
<比較実施例1(先行技術どおり)>
まず、モノ付加物を特許明細書 EP 1188779により、2,4−トリレンジイソシアネートと、2,6−トリレンジイソシアネート(Desmodur T65、Bayer社製)と、ブチルトリグリコールとの混合物から調製する。
反応容器内で、攪拌しながら、4.1g(0.096モル)のLiClを、171.4gのN−エチルピロリドン中に溶解する。その後、27.2g(0.2モル)のメタ−キシリレンジアミンを添加し、透明な混合物を60℃に加熱する。続いて、154.4g(0.4モル)の、Desmodur T65とブチルトリグリコールとのモノ付加物を、温度が65℃を超えて上昇しないよう、1時間にわたり攪拌しながら滴下添加する。反応を完了させるため、反応混合物を60℃で3時間攪拌する。透明の液体生成物を得る。重量平均分子量は、2200g/モルである。
【0058】
<実施例1>
反応容器内で、攪拌しながら、0.7g(0.017モル)のLiClを、76.4gのN−メチルピロリドン中に溶解する。その後、2.3g(0.017モル)のメタ−キシリレンジアミンを添加し、透明な混合物を35℃に加熱する。続いて、5.9g(0.034モル)のトリレンジイソシアネート(Desmodur T80、Bayer社製)を、温度が45℃を超えて上昇しないよう、1時間にわたり攪拌しながら滴下添加する。トリレンジイソシアネートの添加終了後、65℃に加熱した10.2g(0.034モル)のヒドロキシステアリン酸を滴下添加する。反応を完了させるため、反応混合物を80℃で3時間攪拌する。これにより、濁りのある均一な液体生成物を得る。重量平均分子量は、49000g/モルである。
【0059】
<実施例2>
反応容器内で、攪拌しながら、15.1g(0.36モル)のLiClを、878.8gのN−メチルピロリドン中に溶解する。その後、49.3g(0.36ミリモル)のメタ−キシリレンジアミンを添加し、透明な混合物を80℃に加熱する。続いて、44.4g(0.3モル)のヘキサメチレンジイソシアネートを、45分間にわたり攪拌しながら滴下添加する。ヘキサメチレンジイソシアネートの添加終了後、特許明細書 EP 1188779に記載のプロセスにより、Desmodur T65とメトキシポリエチレングリコール(MPEG750)とから調製された、110.9g(0.12モル)のモノ付加物を滴下しながら添加する。反応を完了させるため、反応混合物を80℃で3時間攪拌する。これにより、透明、無色で、液体の生成物を得る。重量平均分子量は、34500g/モルである。
【0060】
<実施例3>
最初に、モノ付加物を、特許明細書 EP 1188779により、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物(Desmodur T80、Bayer社製)、及びブチルポリアルキレングリコール(Polyglycol B11/50、Clariant社製)から調製する。
反応容器内で、攪拌しながら、3.8g(0.09モル)のLiClを、146.3gのジメチルスルホキシド中に溶解する。その後、10.3g(0.075モル)のパラ−キシリレンジアミンを添加し、透明な混合物を60℃に加熱する。続いて、10.4g(0.06モル)のDesmodur T65、及び38.2g(0.03モル)の、Desmodur T80とブトキシポリアルキレングリコールとの付加物を、温度が65℃を超えて上昇しないよう、1時間にわたり攪拌しながら滴下添加する。反応を完了させるため、反応混合物を60℃で3時間攪拌する。透明、無色で、液体の生成物を得る。重量平均分子量は、15000g/モルである。
【0061】
<実施例4>
反応容器内に、69.6g(0.4モル)のDesmodur T80を投入し、カプロラクトン5モルとデカノール1モルとから生成されたポリエステル 145.6g(0.2モル)を、45分間にわたり攪拌しながら計量投入する。この時間中の温度を、45℃未満に維持する。添加の終了後、攪拌を2時間継続する。第2の反応容器内で、攪拌しながら、12.6g(0.3モル)のLiClを、627.4gのN−エチルピロリドン中に溶解する。その後、41.1g(0.3モル)のメタ−キシリレンジアミンを添加し、溶液を60℃に加熱する。続いて、第1の反応容器からの、モノ付加物と過剰のDesmodur T80との混合物を、第2の反応容器中に、温度が65℃を超えて上昇しないよう、90分間にわたり攪拌しながら滴下添加する。反応を完了させるため、反応混合物を60℃で3時間攪拌する。これにより、透明、無色で、粘稠の生成物を得る。重量平均分子量は、12500g/モルである。
【0062】
<実施例5>
反応容器内で、10.0g(0.045モル)のイソホロンジイソシアネートを投入し、12.1g(0.045モル)のオレイルアルコールを、15分間にわたり攪拌しながら計量投入する。この時間中の温度を、45℃未満に維持する。添加の終了後、攪拌をさらに2時間継続する。第2の反応容器内で、攪拌しながら、4.3g(0.102モル)のLiClを、126.3gのN−メチルピロリドン中に溶解する。その後、7.9g(0.068モル)のヘキサメチレンジアミンを添加し、混合物を60℃に加熱する。続いて、第1の反応容器からのモノ付加物の溶液、及び7.8g(0.045モル)のDesmodur T65を、第2の反応容器中に、温度が65℃を超えて上昇しないよう、2時間間にわたり攪拌しながら滴下添加する。反応を完了させるため、反応混合物を60℃で3時間攪拌する。これにより、黄色で粘稠の生成物を得る。重量平均分子量は、7500g/モルである。
【0063】
<実施例6>
反応容器内で、攪拌しながら、2.8g(0.0675モル)のLiClを、134.7gのN−メチルピロリドン中に溶解する。その後、40.5g(0.0675モル)のJeffamin ED600、及び0.915g(0.015モル)のアミノエタノールを添加し、透明な混合物を80℃に加熱する。続いて、13.05g(0.075モル)のDesmodur T65を、温度が85℃を超えて上昇しないよう、2時間にわたり攪拌しながら計量投入する。添加終了後、反応混合物を80℃で3時間攪拌する。これにより、透明、無色で、液体の生成物を得る。重量平均分子量は、20000g/モルである。
【0064】
〔性能結果〕
本発明のレオロジー調節剤は、例えば、相溶性及び/又は剪断安定性、及びまた、様々な極性の配合物中での汎用的活性という面で、先行技術を超えた性能上の利点を示す。
【0065】
相溶性試験
この目的には、ポリ尿素及び溶媒を含むレオロジー調節剤を、Dispermat CVを用いて、2m/秒で、室温で2分間攪拌しながら、ポリエステル−メラミン−ベースのオートモーティブクリアコート中に混和させる。コーティング系におけるレオロジー調節剤の相溶性は、混和の1日後に、ウェットコーティング材の曇りに基づき評価する。評価は、1−6[1(透明)〜6(非常に曇っている)]のスケールを用いて目視で行ない、表1に示される。

試験配合物1:Setal 1715 VX−74/Setamine US 138 BB 70をベースとする自動車用クリアコート
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
剪断安定性に関する試験
本発明のレオロジー調節剤の剪断安定性を試験するため、実施例からの生成物を、Epikote 828をベースとする防食配合物中で使用する。ここでは再度、Dispermat CVを用いて、2m/秒で、室温で2分間攪拌しながら、列記された配合物からなる成分A中への混和を行なう。
活性及び剪断安定性は、生成物の混和の1日後に、硬化剤(成分B)の添加後に検査する。この目的には、コーティング材を、BYK Gardner社製の自動アプリケーターを用いる2801コントラストチャートに対し、50−500μm及び550−1000μmの段階式コーターを使用して、5cm/秒の速度で塗布し、垂直に吊るして乾燥させる。ホールドアウト(保持性)は、wet(μm)で読み取られ、生成物のレオロジー活性の指標である。
剪断安定性を試験するため、剪断負荷の前後にサンプルを塗布する。ShandexペイントシェーカーBA S20(620rpm、5分間)を使用して、剪断負荷をかける。剪断負荷の前後でホールドアウトの差が小さいほど、生成物の剪断安定性は良好である。試験の結果は、表2に示される。
【0070】
試験配合物2:Epikote828/Epikure 3155をベースとする防食プライマー
成分A
Epikote 828 42.0%
BYK−066N 1.0%
BYK−P104 0.5%
Blanc Fixe N 18.5%
Talc AT−1 20.0%
Bayferrox 130M 10.0%
分散:Dispermat CV、4cm 歯付きディスク、8500rpm、50℃で30分間
BYK−358 1.0%
Araldite DY−E 7.0%
合計(成分A) 100.0%
成分B
Epikure 3155 32.7%
硬化剤は、攪拌しながら混和する。
Epikote 828:液体ビスフェノールAエポキシドバインダー、100%形態、Hexion Specialty Chemicals社製
Epikure 3155:低粘度改質ポリアミド硬化剤、Hexion Specialty Chemicals社製
BYK−066N:ジイソブチルケトン中の破泡性ポリシロキサン溶液、BYK−Chemie GmbH社製
BYK−P104:湿潤及び分散剤、BYKChemie GmbH社製
BYK−358:レベリングを改善するため、及び光沢を増大するためのアクリレート添加剤、BYK−Chemie GmbH社製
Blanc Fixe N:合成硫酸バリウム、Sachtleben社製
Talc AT−1:充填剤、Norwegian Talc Deutschland GmbH社製
Bayferrox 130M:酸化鉄顔料、Lanxess社製
Araldite DY−E:反応性希釈剤、Huntsman社製
添加のレベル:全配合物を基準として0.9重量%の活性物質
【0071】
【表4】

【0072】
温度安定性効果に関する試験
温度安定性効果を検査するため、比較実施例1及び実施例3を、相溶性に関する試験の項目下で記載した方法と同様に、試験配合物1に混和した。サンプルは、混和の1日後に、Anton PaarレオメーターMCR301を使用して調査した。この目的のため、0.2mmのスロットをもつ、使い捨て可能なプレート/プレート系を使用した。剪断速度Dは、1秒-1であった。サンプルを、6℃/分の速度で加熱し、30℃から140℃までの温度範囲で、レオロジーをキャラクタライズした。比較実施例1及び対照(添加剤なし)に比較した、実施例3の温度安定性挙動を、図1に示す。図1において、▲は実施例3の生成物、■は比較実施例1の生成物、×は対照品における温度安定性挙動を示す。
【0073】
汎用的活性に関する試験
本発明による物質クラスのレオロジー調節剤の汎用的活性を検査するため、生成物を、希釈されたバインダー中に、及び様々な化学的基盤及び極性をもつクリアコート配合物中に混和する。バインダーを、同等の処理粘度を得るべく希釈する。混和は、Dispermat CVを用いて、2m/秒で、室温で2分間攪拌するのみで行なう。生成物の混和の1日後、可視検査を行ない、ゲルが形成されているか否か、又は希釈されたバインダー/クリアコートが液体のままであるか否か(+ ゲル/− ゲル無し)を測定する。
【0074】
結果を表3に要約する。
添加のレベル:全組成物の重量を基準として、活性物質によって2重量%
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、Tは、少なくとも4つの尿素基を含んでなるポリマー単位であり、R1及びR7は、互いに独立して、分枝もしくは非分枝のC4−C32アルキル、C3−C18アルケニル、C2−C20アルキニル、C3−C20シクロアルキル、C3−C20シクロアルケニル、C5−C12アリールもしくはアリールアルキル、Cm2m+1(O−Cn2np−(O−CH(C65)−CH2u−、U−C64−(CH2S−(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−、Cm2m+1(O−Cn2np−(O−CH(C65)−CH2u−(OOC−Cv2vx−、U−C64−(CH2S−(O−Cn2np−(O−CH(C65)−CH2u−(OOC−Cv2vx−、C4−C32−ヒドロキシアルキル、C4−C32−カルボキシアルキル、−Cm2mC(=O)R8−、−Cm2mCOOR8−、−Cm2mC(=O)NR89−、又は−Cm2mOC(=O)NR89基であり、該基は、置換又は未置換であってもよく、アミノ基及び/又はカルボキシル基については、塩形成又は四級化された形態で存在してもよく、かつCm2mは、直鎖又は分枝鎖のアルキレン基であり、かつR8及びR9は、互いに独立して、水素、分枝もしくは非分枝のC1−C32アルキル、C3−C18アルケニル、C2−C20アルキニル、C3−C20シクロアルキル、C3−C20シクロアルケニル、C5−C12アリール又はアリールアルキル、C1−C32アルコキシアルキル、又はC1−C32アシルオキシアルキル基であり、ここで、mは0−32、nは2−4、xは0−100、uは0−100、vは1−22、pは0−100、sは0−1、UはH、C1−C12アルキル、又は−C651-4であり、
2及びR6は、互いに独立して、分枝もしくは非分枝のC4−C22アルキレン、C3−C18アルケニレン、C2−C20アルキニレン、C3−C20シクロアルキレン、C3−C20シクロアルケニレン、C5−C12アリーレン又はアリールアルキレン基であり、
5は、分枝もしくは非分枝のポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、非分枝のC4−C22アルキレン、C3−C18アルケニレン、C2−C20アルキニレン、C3−C20シクロアルキレン、C3−C20シクロアルケニレン、C5−C12アリーレン又はアリールアルキレン基であり、
A、B、X、及びYは、互いに独立して、−O−又は−NR10−であり、ここで、R10=H、分枝もしくは非分枝のC1−C32アルキル、C3−C18アルケニル、C2−C20アルキニル、C3−C20シクロアルキル、C3−C20シクロアルケニル、C5−C12アリール又はアリールアルキル基であり、
その重量平均分子量が、5000ないし70000g/モルである]
のポリ尿素。
【請求項2】
ポリマー単位Tが、式(II):
【化2】

[式中、R3及びR4は、互いに同じかもしくは異なり、かつ互いに独立して、分枝もしくは非分枝のポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、C4−C22アルキレン、C3−C18アルケニレン、C2−C20アルキニレン、C3−C20シクロアルキレン、C3−C20シクロアルケニレン、C5−C12アリーレン又はアリールアルキレン基であり、
Z及びWは、互いに同じかもしくは異なり、かつ互いに独立して、−NHCOO−又は−NH−CO−NH−であり、かつ
qが、2−200である]
の単位であることを特徴とする請求項1に記載のポリ尿素。
【請求項3】
前記ポリマー単位Tが、ウレタン基を含まないことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のポリ尿素。
【請求項4】
前記ポリ尿素が、5000ないし12000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のポリ尿素。
【請求項5】
前記ポリ尿素が、10000ないし26000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のポリ尿素。
【請求項6】
前記ポリ尿素が、24000ないし55000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のポリ尿素。
【請求項7】
基R1及び/又はR7が、極性官能基により置換されること、及び/又はポリステル基及び/又はポリエーテル基を含んでなることを特徴とする、請求項4から6のいずれかに記載のポリ尿素。
【請求項8】
前記ポリ尿素が、少なくとも1つの溶媒及び/又は媒体中の溶液として存在することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のポリ尿素。
【請求項9】
a.少なくとも1つのジイソシアネートと、2つのNCO−反応性基を有する少なくとも1つの成分Kとの、ジイソシアネート対化合物Kのモル比、(f+1):f(f≧1)での反応であって、中間体として、分子中に平均して2つの遊離のイソシアネート基を有するイソシアネート−末端尿素を生成する該反応と、これに続く、中間体の遊離のイソシアネート基と、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1つの成分Lとの完全反応、
又は
b.少なくとも1つのジイソシアネートと、2つのNCO−反応性基を有する少なくとも1つの成分Kとの、ジイソシアネート対化合物Kのモル比、f:(f+1)(f≧1)での反応であって、分子中に平均して2つの遊離のイソシアネート−反応性の末端基を有する中間体を生成する該反応と、これに続く、前記中間体の遊離のイソシアネート−反応性基と、少なくとも1つのモノイソシアネート−官能性化合物との完全反応、
又は
c.少なくとも1つのジイソシアネート及び少なくとも1つのモノイソシアネート−官能性化合物の混合物と、2つのNCO−反応性基を含有する少なくとも1つの成分Kとの、ジイソシアネート対成分K対モノイソシアネート−官能性化合物の比、f:(f+1):2(f≧1)での反応、
d.2つのNCO−反応性基を有する少なくとも1つの成分K、及びイソシアネート基に対し反応性である少なくとも1つの成分Lの混合物と、少なくとも1つのジイソシアネートとの、成分K対ジイソシアネート対成分Lのモル比、f:(f+1):2(f≧1)での反応、によって調製可能であり、
ここで、
成分Kは、NCO−反応性基として、2つの第一級アミン基又は1つの第一級アミン基のいずれかと、1つのOH基とを有しており、かつ成分Lは、少なくとも1つの第一級アミン基、1つの第二級アミン基、又は1つのOH基を有している、
請求項1から8までのいずれかに記載のポリ尿素。
【請求項10】
a.少なくとも1つのジイソシアネートを、2つのNCO−反応性基を含有する少なくとも1つの成分Kと、ジイソシアネート対化合物Kのモル比、(f+1):f(f≧1)で反応させて、中間体として、分子中に平均して2つの遊離のイソシアネート基を有するイソシアネート−末端尿素を生成し、そして
前記中間体の遊離のイソシアネート基を、次に、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1つの成分Lと完全に反応させるか、
又は
b.少なくとも1つのジイソシアネートを、2つのNCO−反応性基を有する少なくとも1つの成分Kと、ジイソシアネート対化合物Kのモル比、f:(f+1)(f≧1)で反応させて、分子中に平均して2つの遊離のイソシアネート−反応性の末端基を有する中間体を生成し、そして
前記遊離のイソシアネート−反応性基を、次に、少なくとも1つのモノイソシアネート−官能性化合物と完全に反応させるか、
又は
c.少なくとも1つのジイソシアネートを、少なくとも1つのモノイソシアネート−官能性化合物の混合物と混合し、かつこの混合物を、次に、2つのNCO−反応性基を有する少なくとも1つの成分Kと、ジイソシアネート/成分K/モノイソシアネート−官能性化合物の比、f:(f+1):2(f≧1)で反応させるか、
d.2つのNCO−反応性基を有する少なくとも1つの成分Kを、イソシアネート基に対し反応性である少なくとも1つの成分Lと混合し、この混合物を、次に、少なくとも1つのジイソシアネートと、成分K対ジイソシアネート/成分L(モル比)、f:(f+1):2(f≧1)で反応させることを特徴とし、
ここで、
成分Kが、NCO−反応性基として、2つの第一級アミン基又は1つの第一級アミン基のいずれかと、1つのOH基とを有しており、かつ成分Lが、少なくとも1つの第一級アミン基、1つの第二級アミン基、又は1つのOH基を有している、
請求項1から9までのいずれかに記載のポリ尿素を調製するためのプロセス。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれかに記載のポリ尿素の、レオロジー調節剤としての用途。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれかに記載の少なくとも1つのポリ尿素を含んでなる、レオロジー調節剤。
【請求項13】
前記レオロジー調節剤が、薄膜形成樹脂を含んでいないことを特徴とする、請求項12に記載のレオロジー調節剤。
【請求項14】
配合物中のポリ尿素の割合が、前記配合物の全重量に基づき、0.05重量%ないし10重量%であることを特徴とする、請求項12及び13のいずれかに記載のレオロジー調節剤の使用。
【請求項15】
極性溶媒中でのレオロジー調節のため、垂れ防止剤として、垂れる傾向を避けるため、焼付けシステムのレオロジーを調節するため、又は厚膜システムの垂れ特性を調整するための、請求項14に記載のレオロジー調節剤の使用。
【請求項16】
請求項1から9のいずれかに記載のポリ尿素を含んでなる配合物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−503953(P2013−503953A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528256(P2012−528256)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005426
【国際公開番号】WO2011/029556
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】