説明

レジストパタ−ンの形成方法

【目的】 超解像露光方法によってパターン形成を行う際に、孤立パターンに対して設ける補助パターンをできるだけ大きく設定できるようにして孤立パターンの解像度及び焦点深度を向上させる。
【構成】 被加工基板として、例えばシリコン酸化膜21、Al薄膜22を有するシリコン基板20を用い、その上にエッチング耐性の高い低解像度フォトレジスト23を塗付し、補助パターンを有するレチクルを用いて露光し現像する(図5工程A)。続いて高解像度フォトレジスト24を塗付し、同じレチクルを用いて露光し現像し(図5工程B)、次にAl薄膜22をエッチングする(図5工程C)。
【効果】 高解像度フォトレジストの補助パターンに対応する部分が解像されたとしても、その下の低解像度レジストがエッチングストッパとして働くため、補助パターンを大きくすることができ、解像度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レジストパターンの形成方法に関し、特に、半導体基板のような被加工基板上にエッチングマスク、イオン注入マスク等として用いられる、フォトレジストからなるパターンの形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】投影露光法と呼ばれる従前の一般的露光方法では、露光装置のσ絞りには円形の光透過部を有する絞りが用いられており、従って照明光の光強度の最大値は光軸上に存在していた。
【0003】また、マスク(レチクル)としては、転写すべき回路パターンが例えば透過部として描画され、それ以外の部分は遮光部となされたものが用いられている。この場合、レチクルに垂直に入射し、パターンで回折されずに直進する0次光が±1次回折光より十分に大きいことを前提としており、これが満たされている条件下では、レチクルの回路パターンを精度よく基板上に転写することができる。
【0004】この従来方法では、回路パターンが照明光の波長に対し十分に大きいときには上記条件が満たされ、回折光の影響を受けずにレチクルのパターンを比較的正確に基板上に再現することができるが、回路パターンが微細化するにつれてこの条件が満たされないようになってきつつある。現在、半導体デバイスにおいては集積度が年々高まり、回路パターンの微細化が一層進められようとしているからである。
【0005】微細化されたパターンを基板上に転写する際の技術評価項目として、解像度Rとその解像度を実現できる焦点深度DOFとがある。解像度Rは、照明光の波長をλ、開口数をNAとして次式で与えられる。
R=k1・λ/NA (但し、k1は定数)
従って、解像度を高めるには照明光を短波長化し、露光装置の開口数を大きくすればよいことになる。現に、この照明光の短波長化と開口数の向上によりパターン微細化への対応が図られてきた。
【0006】一方、焦点深度DOFは、次式で与えられる。
DOF=k2・λ/(NA)2 (但し、k2は定数)
よって、解像度Rを向上させると焦点深度の低下を招くことになる。而して、実際の半導体基板の表面は平坦ではなく様々な回路要素により段差が形成されており、しかも半導体装置の多機能化、高性能化の動きに伴って表面の段差は拡大する傾向にある。
【0007】そこで、焦点深度を下げることなく解像度を向上させる手法が求められ、最近では、超解像露光技術と呼ばれる位相シフト法や変形照明法が開発され、実用化されてきている。位相シフト法は、マスク上の一定の間隔で繰り返されるパターンにおいて、一つおきのパターンに位相シフタとよばれる光の位相を180°遅らせる膜を設け、位相シフタの設けられていないパターンを透過した光と位相シフタのあるパターンを透過した光とを干渉させることにより、パターン像のコントラストを向上させる方法である。
【0008】一方、変形照明法は、σ絞りの形状を、透過部の中心が光軸上ではなく光軸を中心として点対称の位置にくるようにして、マスクへの入射光を斜めにする方法である。この方法では、0次光とマスクでの1次光の2光束のみが投影レンズを通して基板上に結像されるため、解像度を向上させることができ、焦点深度を広げることができる(“変形照明”に、輪帯状絞りを用いた照明を含めない場合があるが、本明細書では、4点透過部乃至2点透過部の絞り等を用いた照明のみならず、輪帯状絞りを用いたものをも含むものとする)。
【0009】上記の位相シフト法及び変形照明法は、半導体記憶素子のメモリ領域のように回路パターンに周期性のあるものでは、解像度の向上に効果がある。しかし、これらの超解像露光技術では、配線形成工程において現れる孤立パターンやコンタクト形成工程における孤立パターン等に対しては全く効果がない。そこで、孤立パターンに対しては、特開平4−273428号公報に示されているように、本来のパターンに近接して補助パターンを設けることによってパターンに周期性をもたせる方法が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】孤立パターンに対して補助パターンを設けて超解像露光を行う場合、補助パターンの大きさは、できるだけ本パターンの大きさに近づけた方が超解像露光の効果を高めることができる。
【0011】しかしながら、補助パターンを有する孤立パターンの半導体基板上での光強度分布は、図4「露光装置における被加工基板上での光強度分布を示す図」に示すように、三つ山となり、補助パターンが本パターンの大きさに近いほど補助パターンでの光強度が高くなる。なお、図4において、10はマスク、11は孤立パターン、12は補助パターンを示す。そのため、補助パターンの大きさを大きくした場合、フォトレジストを解像する光強度しきい値Ithと補助パターンでの光強度との差が少なくなる。
【0012】例えば、図7「従来例の工程A〜Bよりなる工程順断面図」を参照してこれを説明すると、シリコン酸化膜21とAl薄膜22とを有するシリコン基板20上に、高解像度フォトレジスト24を塗付し、これを露光し、現像を行った場合、図7工程Aに示されるように、補助パターン部分も解像しかかることになる。その結果、次のエッチング工程では、レジストとAlとのエッチング選択比が小さいため、図7工程Bに示されるように、補助パターン部分のAl薄膜22までエッチングされてしまう。
【0013】即ち、従来方法では、補助パターンの大きさは解像しない範囲内でしか大きくすることはできず、孤立パターンに対して、周期性のあるパターンと同程度の解像度及び焦点深度を得ることはできなかった。本発明は、この点に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、孤立パターンに近接して設けられる補助パターンの大きさを孤立パターンのそれにできるだけ近づけることができるようにすることであり、このことにより孤立パターンに対する解像度及び焦点深度を周期性のあるパターンと同程度に改善することができるようにしようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための、本発明によるレジストパターンの形成方法は、被加工基板上に低解像度フォトレジストを用いて低解像度の第1のレジストパターンを形成する工程と、高解像度フォトレジストを用いて高解像度の第2のレジストパターンを形成する工程と、を備えることを特徴としている。
【0015】即ち、本発明は、「被加工基板上にマスクパターン形状のレジストパターンを形成する方法であって、(1) 前記被加工基板上に低解像度レジストを塗付する工程、(2) 前記マスクパターンの設けられたレチクルを用いて前記低解像度レジストを露光する工程、(3) 前記低解像度レジストを現像して該低解像度レジストからなる第1のレジストパターンを形成する工程、(4) 前記第1のレジストパターンの設けられた前記被加工基板上に高解像度レジストを塗付する工程、(5) 前記マスクパターンと該マスクパターンに近接して設けられた補助パターンとを備えたレチクルを用いて前記高解像度レジストを露光する工程、(6) 前記高解像度レジストを現像して該高解像度レジストからなる第2のレジストパターンを形成する工程、を有することを特徴とするレジストパターンの形成方法。」を要旨とする。
【0016】
【作用】本発明によるパターン形成方法では、始めに低解像度のレジストを用いてパターンを形成する。このレジストパターンは、低解像度故にパターンに急峻性はなく、マスクの本パターンの形状を忠実に再現するものとはなっていないものの、本パターンより小さい補助パターンが解像されていないため(そして好ましくはエッチング耐性の高い材料により形成されているため)、レジストパターン形成後に続く被加工基板のエッチング工程において、エッチングストッパとして働く。
【0017】一方、高解像度のレジストによるパターンでは、マスクの補助パターンの形状が本パターンに近いとき、本パターンの形状を正確に再現することができるものの、補助パターン部分が解像されかかって形成される。しかし、補助パターン部には上記したようにエッチングストッパとなる低解像度のレジストが存在しているため、補助パターンが解像されたことによる不都合は生じない。従って、本発明によれば、補助パターンを従来より大きく設定することが可能となり、解像度を高めることができ、かつ焦点深度を広げることができるという超解像露光の効果を享受することができるようになる。
【0018】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0019】(実施例1)図1は、本発明の第1の実施例(実施例1)に用いられる露光装置の概略構成図である。同図に示されるように、光源1から出射された照明光は、楕円ミラー2、ミラー3で反射された後、蠅の目レンズ4に入射してここで均一化され、σ絞り5にて絞られた後、ミラー6により反射され、コンデンサレンズ7によってマスク10上に集光される。そして、マスク10を透過した光は、投影レンズ8によってシリコン基板20上に集光される。
【0020】図2(a)は、本実施例1において用いられるσ絞り5の平面図である。このσ絞り5は、輪帯状の絞りであって、遮光部5a、5a間にリング状の透過部5bが形成されている。このσ絞りにより変形照明光が得られるが、この輪帯状絞りに代えて、図2(b)に示される4点透過部のσ絞りや2点透過部のσ絞りを用いてもよい。
【0021】図3(a)及び(b)は、本実施例1において用いられるマスク10の平面図及び断面図である。マスク10は、ガラス基板14上に被着された遮光膜13から孤立パターン11と補助パターン12の部分を除去して形成したものである。このマスクを用いた場合のシリコン基板20上での光強度の分布を図4に示す。図4において、Ithは高解像度フォトレジストを解像できる光強度しきい値を示す。
【0022】図5は、本実施例1におけるパターン形成方法を示す工程A〜Cよりなる工程順断面図である。まず、シリコン酸化膜21、Al薄膜22が形成されたシリコン基板20上に、エッチング耐性が高い、シリコンを含有する低解像度フォトレジスト23を塗付し、上述の露光装置(図1参照)により露光し、現像を行う。
【0023】形成されたパターンは、図5工程Aに示すように、急峻性は低く本パターンのマスクパターンを正確には再現してはいないものの、補助パターンの膜減りは低く抑えられている。次に、高解像度フォトレジスト24を塗付し、低解像度フォトレジストの場合と同様、前記図3(a)、(b)に示したマスク10により露光し、現像を行う。形成されたパターンは、図5工程Bに示すように、急峻性が高くマスクの本パターンを正確に再現しているものの、補助パターン部での膜減りは大きくほとんど解像されかかった状態に形成される。
【0024】次のエッチング工程では、高解像度フォトレジスト24は、補助パターン部において解像されるが、その下の低解像度フォトレジスト23がエッチングストッパとして機能しているため、図5工程Cに示すように、補助パターン部が解像されることはない。そして、本パターンは高解像度フォトレジスト24によって正確に再現されているため、Al薄膜22のパターニングも正確に行われる。
【0025】(実施例2)本実施例2は、超解像露光技術として位相シフト法を用いた場合に関する。本実施例2においても前記図1に示した露光装置が用いられる。但し、輪帯状のσ絞り5は除去され、代わって透過部が円形状で光軸上に光透過部の中心が存在する絞りが用いられる。
【0026】また、本実施例2では、前記図3に示したマスクに代え、図6に示されるマスクが用いられる。図6R>6は本実施例2において用いられるマスク(レチクル)を説明する図であって、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。図6(a)、(b)に示すように、本実施例2において用いられるマスク10aは、ガラス基板14上に被着された遮光膜13から孤立パターン11と補助パターン12の部分を除去し、さらに補助パターン部に照明光の位相を180°ずらせる位相シフタ15を形成したものである。
【0027】このマスク10aを用い、前記実施例1の場合と同様、シリコン基板上のAl薄膜を低解像度フォトレジスト及び高解像度フォトレジストを用いてパターニングを行ったところ、前記実施例1における図5工程A〜工程Cに示した結果と同様の結果が得られた。
【0028】以上本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれら実施例1、2に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、実施例1、2では、低解像度フォトレジストとしてシリコン含有のレジストを用いていたが、これに代えて他のエッチング耐性の高いフォトレジストを用いてもよい。さらに、通常のエッチング耐性のフォトレジストを用い露光後にシリル化処理を行ってエッチング耐性を高めるようにしてもよい。
【0029】また、実施例1、2では、低解像度のレジストと高解像度のレジストとを同様の露光方法により露光していたが、低解像度のレジストについては、解像度及び焦点深度が十分であれば、超解像技術を用いない露光方法を採用してもよい。即ち、変形照明を使用しないようにし、また、孤立パターンのみで補助パターンの形成されていないマスクを用いて露光するようにしてもよい。さらに、図1に示した投影露光装置に代え反射型投影露光装置を用いるようにしてもよい。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のレジストパターン形成方法は、低解像度のフォトレジストを用いて第1のレジストパターンを形成し、続いて超解像技術を用いて高解像度のレジストにより第2のレジストパターンを形成するものであるので、パターン形成時に第2のレジストパターンの補助パターン部が解像されかかっていても第1のレジストパターンのエッチングストッパ機能によって被加工物のパターンに対して影響がでないようにすることができる。
【0031】従って、本発明によれば、補助パターンを本パターンと同程度の大きさとすることができるようになり、孤立パターンに対しても超解像技術により周期性のあるパターンと同様に解像度及び焦点深度を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1において用いられる露光装置の概略構成図。
【図2】本発明の実施例1において用いられるσ絞りを説明する図であって、(a)はその一例を示すσ絞りの平面図、(b)は(a)に代えて用いることのできる他の例を示すσ絞りの平面図。
【図3】本発明の実施例1において用いられるマスク(レチクル)を説明する図であって、(a)はその平面図、(b)はその断面図。
【図4】図1の露光装置における被加工基板(シリコン基板20)上での光強度分布を示す図。
【図5】本発明の実施例1におけるパターン形成方法を示す工程A〜Cよりなる工程順断面図。
【図6】本発明の実施例2において用いられるマスク(レチクル)を説明する図であって、(a)はその平面図、(b)はその断面図。
【図7】従来例の工程A〜Bよりなる工程順断面図。
【符号の説明】
1 光源
2 楕円ミラー
3 ミラー
4 蠅の目レンズ
5 σ絞り
5a 遮光部
5b 透過部
6 ミラー
7 コンデンサレンズ
8 投影レンズ
10、10a マスク
11 孤立パターン
12 補助パターン
13 遮光膜
14 ガラス基板
15 位相シフタ
20 シリコン基板
21 シリコン酸化膜
22 Al薄膜
23 低解像度フォトレジスト
24 高解像度フォトレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被加工基板上にマスクパターン形状のレジストパターンを形成する方法であって、(1) 前記被加工基板上に低解像度レジストを塗付する工程、(2) 前記マスクパターンの設けられたレチクルを用いて前記低解像度レジストを露光する工程、(3) 前記低解像度レジストを現像して該低解像度レジストからなる第1のレジストパターンを形成する工程、(4) 前記第1のレジストパターンの設けられた前記被加工基板上に高解像度レジストを塗付する工程、(5) 前記マスクパターンと該マスクパターンに近接して設けられた補助パターンとを備えたレチクルを用いて前記高解像度レジストを露光する工程、(6) 前記高解像度レジストを現像して該高解像度レジストからなる第2のレジストパターンを形成する工程、を有することを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項2】 前記第(2)工程において、前記第(5)工程において用いられるレチクルを用いて露光を行うことを特徴とする請求項1記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項3】 前記第(3)工程において形成された第1のレジストパターンが、前記第(6)工程において形成された第2のレジストパターンよりエッチング耐性が高いことを特徴とする請求項1記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項4】 前記マスクパターン及び前記補助パターンが光透過性パターンであり、かつそれぞれのパターンの透過光の位相が同位相であることを特徴とする請求項1記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項5】 前記マスクパターンが光透過性パターンであり、かつ前記補助パターンが位相シフタを備えた光透過性パターンであることを特徴とする請求項1記載のレジストパターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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