説明

レトルト殺菌装置、加熱装置、加熱殺菌方法および加熱処理方法

【課題】エネルギー効率の良いレトルト殺菌装置を提供する。
【解決手段】レトルト食品70が配置される加熱釜50と、湯気を発生させる湯気発生装置10とを備えたレトルト殺菌装置100である。加熱釜50は、湯気発生装置10に接続されており、湯気発生装置10は、互いに独立する液体経路91および蒸気経路92を有し、液体経路91を流動する液体25と蒸気経路92を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われる熱交換器90から構成されている。熱交換器90の蒸気経路92には加熱用蒸気が導入され、熱交換器90の液体経路91の上端92aは湯気供給管12を通じて加熱釜50の内部55に配置された湯気噴出部52に接続されている。熱交換器90には液体容器20が接続されている。熱交換器90の液体経路91の下端91bは、連通管30を通して液体容器20に接続され、液体容器20は加熱釜50に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト殺菌装置、加熱装置、加熱殺菌方法および加熱処理方法に関する。特に、加熱加圧殺菌処理をする加熱釜を備えたレトルト殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品の表面や内部にはカビ、酵母、細菌などの微生物が付着または混入しており、そして、水分が多い場合には腐敗変敗を引き起こす。このために食品の保存方法として、乾燥、塩蔵、低温貯蔵などが昔から行われてきたが、フィルム包装による微生物完全遮断が容易になり、それによって、包装後の加熱殺菌も有効な保存方法として広く利用されている。
【0003】
加熱殺菌には、加熱空気による乾熱殺菌と、蒸気や熱水による湿式殺菌があり、熱量の関係から湿熱殺菌の方が殺菌の効果は大きい。微生物を湿熱で殺菌する最も簡単な方法がボイル殺菌(湯殺菌)であり、食品を包装した後に湯の中に入れて殺菌する方法である。しかしながら、加熱時間が長いと食品の熱劣化を引き起こすという欠点が発生するとともに、100℃でも死なない耐熱菌が存在する場合には常圧の条件下では完全殺菌を実行することができない。
【0004】
そこで、必要に応じて100℃を越える加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)が行われている。すなわち、湯煎を利用した場合、水の沸騰温度(100℃)を越えて加熱することはできないが、蒸気や加圧熱水を利用すると、100℃を越えた加熱をすることができ、この殺菌がレトルト殺菌である。なお、100℃を越える温度で加熱した場合、冷却時に袋内圧が高くなって破裂するので、加熱時以上に加圧し、圧力を調整しながら冷却する必要がある。また、レトルト殺菌を行うには、温度、時間、圧力を精密に調整できる装置が必要であり、ボイル殺菌装置とは比較にならないくらいイニシャルコストは高くなる。
【0005】
耐熱性樹脂フィルムなどの包装袋内に食品を密封したレトルト食品をレトルト殺菌する場合、レトルト釜内で蒸気や熱水で包装袋を加熱することによって行う。しかしながら、レトルト釜内の加熱温度を均一にすることは困難であり、それゆえに、加熱ムラが生じることがある。特許文献1では、レトルト食品を殺菌するにあたり、前後方向や左右方向に摺動させつつ殺菌その後の冷却の処理を行う殺菌方法が開示されている。
【0006】
図15は、特許文献1に開示された殺菌装置1000を示している。図15に示した殺菌装置1000では、レトルト釜本体110の内部にレール120を設けて、そのレール120の上に車輪130を介して可動台140が支持されている。そして、可動台140の上には、レトルト食品150を多数並べて収容したトレー160が多段に積み重ねられて支持されている。可動台140は、モータ170によって駆動されるクランク機構180の駆動軸185に対して、レトルト釜本体110に設けられた軸封機構190を介して連結されている。
【0007】
ここで、モータ170が回転駆動すると、これに連動してクランク機構180の駆動軸185がレトルト釜本体110を往復運動し、さらに、レトルト食品150が並んだトレー160を載せた可動台140が摺動運動する。そして、レトルト食品を摺動しながら殺菌やその後の冷却処理を行うことによって、殺菌中の焦げの発生などを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−301739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、主に、流動状食品などの内容物を密封したレトルト食品の殺菌において、殺菌中にレトルト食品150を摺動させて、殺菌中の焦げを抑制するようにしている。しかしながら、本願発明者の検討によると、レトルト釜本体110内部の温度は均一ではなく、流動状の食品だから殺菌中の焦げが生じるということに限らず、流動状の食品でないものであっても、レトルト釜本体110内部の位置によって殺菌中の加熱ムラが生じることがわかった。
【0010】
レトルト殺菌中の加熱ムラの原因としては、レトルト釜本体110内部においてレトルト食品に熱水をかけて加熱する場合には、熱水がよくかかる箇所とそうでない箇所の温度差が挙げられる。また、レトルト釜本体110内部に高温高圧の蒸気(ボイラー蒸気)を導入して、そのボイラー蒸気でレトルト食品を加熱する場合には、ボイラー蒸気が良くあたる部分とそうでない部分との温度差が挙げられる。そして、レトルト釜本体110内部には空気が残っており、空気は断熱材としての働きをするため、その空気の存在によってレトルト釜本体110内部における加熱ムラ、すなわち、不均一な温度分布が生じる。また、ボイラー蒸気は、レトルト釜内の設定温度・設定圧力よりも高いものを導入させるので、想定よりも加熱される場合があり、特に、ボイラー蒸気がよくあたる場所での加熱のムラが問題になることが多い。
【0011】
レトルト釜本体110内部から空気を排除するには、レトルト釜本体110内部に真空ポンプ(減圧ポンプ)を接続して、レトルト釜本体110内部の空気を取り除くことができる。しかしながら、真空ポンプの使用は、設備コストがかかるだけでなく、ランニングコストが非常に多くかかるものであり、それゆえに、レトルト食品の殺菌コスト(または製造コスト)が大幅に上昇してしまう。上述したように、レトルト殺菌装置は、ボイル殺菌装置とは比較にならないくらいイニシャルコストが高いものであり、それに、さらに真空ポンプを使用するタイプとなると、より費用は高くなる。加えて、レトルト釜本体110内部の空気を取り除くことができたとしても、そこに導入するボイラー蒸気が、食品に直接あたる部分とそうでない部分とで加熱ムラが生じてしまう。また、熱水をかけるタイプの場合には、レトルト釜本体110内部に圧縮空気を導入して加圧状態にするので、空気の影響を排除することができない。
【0012】
そして、加熱ムラが生じることにより、温度が低い箇所において殺菌が十分でない現象が生じる可能性があるとともに、レトルト殺菌が成功したとしても、その加熱ムラにより、食品の味の劣化が生じる可能性が高くなる。
【0013】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、エネルギー効率が良く、及び/又は、加熱ムラを抑制することができるレトルト殺菌装置、加熱装置、加熱殺菌方法および加熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るレトルト殺菌装置は、レトルト食品が配置される加熱釜と、湯気を発生させる湯気発生装置とを備え、前記加熱釜は、前記湯気発生装置に接続されており、前記湯気発生装置は、互いに独立する液体経路および蒸気経路を有し、前記液体経路を流動する液体と前記蒸気経路を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われる熱交換器から構成されており、前記熱交換器の前記蒸気経路には、ボイラーからの前記加熱用蒸気が導入され、前記熱交換器の前記液体経路の上端は、湯気供給管を通じて、前記加熱釜の内部に配置された湯気噴出部に接続されており、前記熱交換器には、前記熱交換器に供給する前記液体を貯留する液体容器が接続されており、前記熱交換器の前記液体経路の下端は、連通管を通して、前記液体容器に接続され、前記液体容器は、前記加熱釜に連結されている。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記液体容器の内部には、前記液体が蓄えられており、前記液体容器における前記液体の水位と、前記熱交換器における前記液体経路の前記液体の水位とは互いに一致している。
【0016】
ある好適な実施形態において、前記液体容器には、前記液体の水位を調整する水位調整部材が設けられている。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記液体容器は、連結配管を通じて前記加熱釜に接続されている。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記液体容器は、上部に開口部を有する液体ポット本体部と、前記液体ポット本体部の前記開口部を密閉する蓋部とから構成され、前記液体ポット本体部は、耐圧容器であり、前記液体ポット本体部の底部には、前記連通管が接続されており、前記蓋部には、前記連結配管が接続されている。
【0019】
ある好適な実施形態において、前記液体容器は、上部開口部を有する液体ポット本体部から構成されており、前記液体ポット本体部の上部開口部が前記加熱釜の内部に位置するように、前記液体ポット本体部は前記加熱釜に取り付けられている。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記液体ポット本体部の底面には、前記連通管が接続されている。
【0021】
ある好適な実施形態において、前記液体ポット本体部の上部開口部には、前記上部開口部を密閉しない形態の上蓋が配置されている。
【0022】
ある好適な実施形態において、前記加熱釜は、円筒形状を有しており、前記加熱釜には、前記レトルト食品を収納する容器を載置する載置板が配置されている。
【0023】
ある好適な実施形態において、前記湯気噴出部は、前記加熱釜の内部において水平方向に延びるように配置されたスパージ管である。
【0024】
ある好適な実施形態において、前記湯気噴出部は、前記加熱釜の内部において複数配置されている。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記湯気噴出部は、前記加熱釜の内部の下部領域に配置されている。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記加熱釜の内部の前記下部領域において、前記湯気噴出部は、少なくとも2つ配置されており、かつ、前記加熱釜の内部の前記下部領域よりも上方において、前記湯気噴出部は、少なくとも2つ配置されている。
【0027】
ある好適な実施形態において、前記加熱釜の下部には、前記加熱釜の内部の気体を外部に排出する排出配管が接続されている。
【0028】
ある好適な実施形態において、前記排出配管には、前記排出配管の開閉を変動させる変動バルブが接続されており、前記排出配管は、前記加熱釜の底部におけるドリップ水を排水可能である。
【0029】
ある好適な実施形態において、前記加熱釜には、前記加熱釜の内部の空気を外部に出す空気抜け弁、および、内部圧力を調整する圧力逃がし弁としての比例式弁の少なくとも一方が設けられている。
【0030】
ある好適な実施形態において、前記空気抜け弁は、前記加熱釜の最頂部に取り付けられている。
【0031】
ある好適な実施形態において、前記湯気噴出部に接続される前記湯気供給管の一部において、前記湯気を加熱する加熱装置が設けられている。
【0032】
ある好適な実施形態において、前記加熱装置は、電熱ヒータである。
【0033】
ある好適な実施形態において、前記レトルト殺菌装置は、前記熱交換器と前記加熱釜と前記液体容器との間で前記湯気を循環させることによって前記加熱釜の内部が加圧状態になる加圧加熱装置である。
【0034】
ある好適な実施形態において、前記湯気発生装置で発生した前記湯気は、絶対圧力0.12MPaA以下(すなわち、ゲージ圧力0.0187MPaG以下)の微圧力を有する飽和水蒸気である。
【0035】
ある好適な実施形態では、前記湯気噴出部から冷水が噴射するように、前記湯気供給管の一部に冷水供給配管が接続されている。
【0036】
ある好適な実施形態において、前記熱交換器と前記液体容器とを連通させる前記連通管は、第1経路および第2経路に分岐した部分を有している。
【0037】
ある好適な実施形態において、前記第2経路には、前記液体を循環させる循環ポンプが配置されている。
【0038】
本発明に係る加熱装置は、被加熱物が内部に配置される加熱釜と、前記加熱釜に接続された熱交換器とを備えた加熱装置であり、前記熱交換器は、互いに独立する液体経路および蒸気経路を有し、前記液体経路を流動する液体と前記蒸気経路を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われ、前記熱交換器の前記液体経路の上端は、第1配管を通じて、前記加熱釜の内部に配置された噴出部に接続されており、前記熱交換器には、前記熱交換器に供給する前記液体を貯留する液体容器が接続されており、前記熱交換器の前記液体経路の下端は、連通管を通して、前記液体容器に接続され、前記液体容器は、前記加熱釜に連結されている。
【0039】
ある好適な実施形態において、前記熱交換器における前記熱交換によって、前記熱交換器の前記液体経路の上端から湯気を発生させ、前記加熱釜には、前記加熱釜の内部への前記湯気の供給時において、前記加熱釜の内部の空気を外部に出す空気抜け弁が設けられている。
【0040】
ある好適な実施形態において、前記加熱釜の下部には、前記加熱釜の内部の気体を外部に排出する排出配管が接続されている。
【0041】
ある好適な実施形態において、前記液体容器の内部には、前記液体が蓄えられており、前記液体容器における前記液体の水位と、前記熱交換器における前記液体経路の前記液体の水位とは互いに一致している。
【0042】
ある好適な実施形態において、前記液体容器は、上部開口部を有する液体ポット本体部から構成されており、前記液体ポット本体部の上部開口部が前記加熱釜の内部に位置するように、前記液体ポット本体部は前記加熱釜に取り付けられている。
【0043】
ある好適な実施形態において、前記熱交換器の前記液体経路の前記液体は、前記液体経路の上端から、第1配管を通じて、前記加熱釜の内部に導入され、前記加熱釜の内部の液体は、前記液体ポット本体部および前記連通管を通って、前記液体経路に導入される。
【0044】
ある好適な実施形態において、前記連通管には、前記液体を循環させる循環ポンプが接続されている。
【0045】
ある好適な実施形態において、前記被加熱物は、食品である。
【0046】
本発明に係る加熱殺菌方法は、加圧状態で加熱殺菌する方法であり、加熱釜の内部に、被加熱物を配置する工程と、加熱釜の内部に湯気を導入する工程とを含み、前記湯気は、熱交換器によって生成され、前記熱交換器と、前記熱交換器に液体を供給する液体容器と、前記加熱釜とが、密閉空間を作るように接続されており、前記湯気を導入する工程を連続して実行することにより、前記加熱釜の内部を加圧状態にする。
【0047】
ある好適な実施形態において、前記熱交換器と、前記液体容器と、前記加熱釜とは循環するように接続されている。
【0048】
ある好適な実施形態において、前記湯気を導入する工程においては、前記湯気は、前記加熱釜の内部における中央部よりも下の領域(当該中央部を含む)に導入され、且つ、前記加熱釜の上部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する。
【0049】
ある好適な実施形態では、前記湯気を導入する工程においては、前記加熱釜の下部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する。
【0050】
ある好適な実施形態において、前記被加熱物は、レトルトパウチ包装の食品、缶詰および瓶詰めから選択される少なくとも1つである。
【0051】
本発明に係る加熱処理方法は、被加熱物を加熱処理する方法であり、加熱釜の内部に、被加熱物を配置する工程と、前記加熱釜の内部に湯気を導入する工程とを含み、前記湯気は、熱交換器によって生成され、前記熱交換器と、前記熱交換器に液体を供給する液体容器と、前記加熱釜とは循環するように接続されており、前記湯気を導入する工程を連続して実行することにより、前記加熱釜の内部を加熱する。
【0052】
ある好適な実施形態では、前記湯気を導入する工程においては、前記湯気を導入するとともに、前記加熱釜の上部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する。
【0053】
ある好適な実施形態では、前記湯気を導入する工程においては、前記湯気を導入するとともに、前記加熱釜の下部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する。
【0054】
ある好適な実施形態において、前記湯気を導入する工程においては、前記湯気は、前記加熱釜の内部における中央部よりも下の領域(当該中央部を含む)に導入され、且つ、前記加熱釜の上部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する。
【0055】
ある好適な実施形態において、前記加熱釜の内部に湯気を導入する工程は、前記熱交換器で生成された湯気を加熱することによって発生した過熱蒸気の形態で導入することを含む。
【0056】
ある好適な実施形態において、前記被加熱物は、レトルト食品、魚、肉、野菜、根菜、果物、炊飯、パン、茶、コーヒーおよび佃煮からなる群から選択された少なくとも1つである。
【0057】
ある実施形態係る加熱処理方法は、湯気を用いた加熱処理方法であり、熱交換器から構成された湯気発生装置で湯気を発生させる工程と、前記湯気を加熱釜に導入する工程と、前記加熱釜の内部の底に存在する液体を前記熱交換器に導入する工程とを含む。
【0058】
ある実施形態において、前記加熱釜で加熱する工程においては、前記熱交換器と前記加熱釜との間で前記湯気を循環させることによって前記加熱釜の内部が加圧状態になる。
【発明の効果】
【0059】
本発明に係るレトルト殺菌装置においては、加熱釜に接続された湯気発生装置が熱交換器から構成され、熱交換器の液体経路の上端は、湯気供給管を通じて、加熱釜の内部に配置された湯気噴出部に接続されている。また、熱交換器には液体容器が接続されており、熱交換器の液体経路の下端は連通管を通して液体容器に接続され、そして、液体容器は加熱釜に連結されている。したがって、熱交換器と加熱釜と液体容器とを接続することによって密閉空間を構築することができ、熱交換器から構成された湯気発生装置の湯気(微圧蒸気)を加熱釜に導入することにより、加熱釜の内部の圧力を徐々に上げて加圧状態にすることができる。湯気は基本的に飽和水蒸気であるので、湯気を加熱釜内に導入することで、空気をほとんど含まない飽和水蒸気の雰囲気を作ることができ、断熱材として機能する空気による加熱ムラを抑制することができる。その結果、エネルギー効率が良く、及び/又は、加熱ムラを抑制することができるレトルト殺菌装置を実現することができる。また、熱交換器と加熱釜と液体容器とを接続した密閉空間により、それらの空間の内部圧力は同一になるがゆえに、熱交換器の水位と液体容器内の水位とをパスカルの原理によって一致させることができ、それによって、熱交換器の水位を安定させることにより、安定した湯気の発生を連続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置(加熱装置)100の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る加熱釜50の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る湯気発生装置10(熱交換器90)の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る熱交換器90の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置(加熱装置)100の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る加熱釜50の内部構造を模式的に示す図である。
【図7】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置100の構成を示す正面図および側面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置100の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置100の構成を示す図である。
【図10】レトルト殺菌装置100を動作させた場合の温度および圧力を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置(加熱装置)200の構成を示す模式図である
【図12】本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置(加熱装置)100の構成を示す模式図である
【図13】本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置(加熱装置)100の構成を示す模式図である
【図14】本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置(加熱装置)100の構成を示す模式図である
【図15】従来のレトルト殺菌装置1000の構成を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0061】
本願発明者は、レトルト殺菌装置におけるエネルギー効率の悪い点、及び/又は、加熱ムラの点を長年検討してきたが、従来の高温加圧蒸気(ボイラー蒸気)および熱水を用いたレトルト殺菌装置はそれ自体完成したものであるので、細かな改善の積み重ねで欠点を緩和していくものしかないと思っていた。しかしながら、本願発明者は、微圧蒸気(湯気)を用いて加圧加熱を行うという従来の常識から飛躍した手法を見出し本発明に至った。具体的には、本願発明者は、湯気(微圧飽和蒸気)を用いた加圧加熱によるレトルト殺菌を、圧縮空気を用いることなく、加熱釜内において簡便に加圧状態を生じさせることに成功した。なお、ボイラー蒸気を使用するレトルト殺菌装置では、ボイラー蒸気を用いた高温蒸気流入での加熱によってレトルト臭(例えば、タンパク変性した臭い)が発生したり、色の変色(茶色くくすんだ色)が起きる可能性があり、美味しさと見栄えの点で問題があった。また、熱水をレトルト食品にかけるレトルト殺菌装置でも、加熱ムラなどにより、加熱後にレトルト臭(例えば、タンパク変性した臭い)が発生したり、色の変色(茶色くくすんだ色)が起きる可能性があるものであった。
【0062】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0063】
図1は、本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置(加熱装置)100の構成を示す模式図である。本実施形態のレトルト殺菌装置100は、耐熱性樹脂フィルムのような材料から構成された包装袋内に食品を密封したレトルト食品を加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)することができる加熱装置である。また、本実施形態の加熱装置100は、湯気(微圧飽和蒸気)を用いて被加熱物を加熱する装置(蒸気加熱装置)であり、特に被加熱物が食品(ここでは、レトルト食品)である場合には、蒸気式の食品加熱装置である。
【0064】
本実施形態のレトルト殺菌装置100は、加熱釜50と、湯気を発生させる湯気発生装置10とから構成されている。加熱釜50は、湯気発生装置10に接続されている。また、熱交換器90には、熱交換器90に供給する液体25を貯留する液体容器20が接続されている。そして、液体容器20は、加熱釜50に連結されている。
【0065】
図2は、本実施形態の加熱釜50の構成を模式的に示す断面図である。本実施形態の加熱釜50は、レトルト食品70が配置されるレトルト釜(加熱釜)であり、図2に示した例では、加熱釜50の内部には、レトルト食品70を収納する容器(トレー)72を載置する載置板75が配置されている。この例では、レトルト食品70は各容器72に収納され、その容器は多段に積層されて、加熱釜50の内部55に配置されている。なお、図示した例では、レトルト食品70は容器72に収納したが、容器72に収納して配置する以外にも、加熱釜50の内部55に配置できるのであればその形態は問わない。
【0066】
本実施形態のレトルト食品は、加圧加熱の処理がされる食品であり、例えば、レトルトパウチで包装された食品である。レトルトパウチは、一般的に食品側にポリプロピレン、外側にはポリエステル(PET)のような合成樹脂またはアルミ箔を積層加工(ラミネート加工)したフィルムから構成されており、空気や水分、光を遮断して内部の食品を密閉することができる。レトルトパウチ(レトルト包装容器)としては、平袋(封筒状の平たい袋)のもの(例えば、カレーや牛丼などに使用される)、スタンディングパウチ(底が広がるようにされた袋)のもの(例えば、シチューなどに使用される)、成形容器(弁当箱状のプラスチック容器の上面にフィルムを貼り密閉した容器)のもの(例えば、レトルト米飯などに使用される)を挙げることができる。
【0067】
なお、本実施形態のレトルト食品は、加圧加熱殺菌を行う食品を意味し、レトルトパウチ包装の食品の他、缶詰、瓶詰めの食品も包含するものとする。また、レトルト食品の内容物としては、魚、肉、野菜、根菜、果物、その他、レトルト製法に適した食物全般を挙げることができる。また、本実施形態のレトルト食品は、人間用の食品に限らず、ペット用の食品、または、アニマルレトルトフードであってもよい。また、レトルト食品を作る際のレトルト殺菌(加圧加熱)は、加熱殺菌処理するものに限らず、レトルト殺菌(加圧加熱)にて食品を軟化処理する目的でも用いられる。さらに、代表的なレトルト食品としては、例えば、カレー(レトルトカレー)、シチュー、スープ、粥(かゆ)、パスタソース、丼物の具、米飯(レトルト米飯)、ハンバーグ、ミートボールなどを挙げることできる。
【0068】
また、レトルト処理(レトルト殺菌)は、原則として、容器内部の食品中央部において120℃で4分間、またはそれと同等の熱がかかる状態に加圧加熱して殺菌するものである(なお、内容物によっては温度・時間は調整され得る)。そして、この処理によって、芽胞菌の死滅を行うことができ、そして、一般的な食中毒細菌の中で最も耐熱性の高いボツリヌス菌を殺菌できるとされている。食品業界内では、殺菌効力を表す数値はF値(120℃1分で、F値=1)で、通常、F値が5〜10程度の殺菌を行う。
【0069】
また、本実施形態の加熱釜50は、耐圧の加熱容器であり、円筒形状を有している。本実施形態の加熱釜50は、例えば、ステンレス材料から構成されている。加熱釜50が円筒形状を有していると、圧力に強い構造にすることができる。ただし、レトルト釜として機能するのであれば、加熱釜50は円筒形状に限らず、他の形状であっても構わない。なお、円筒形状以外の形状(例えば、断面四角形)であると、円筒形状と比べて厚く重くなるので、その点で円筒形状が好ましい。また、ここでの円筒形状とは、必ずしも幾何学的な意味での円筒に限らず、断面の円形が多少変形(例えば、楕円形、長円径)していても構わず、実質的に円筒形状であればよい。
【0070】
本実施形態の湯気発生装置10は、熱交換器90から構成されている。本実施形態の熱交換器90の構成を図3及び図4に示す。図3は、ボイラー94とともに、熱交換器90の断面構成を示した図である。また、図4は、熱交換器90の内部構成を模式的に示す斜視図である。
【0071】
本実施形態の熱交換器90は、互いに独立する液体経路91および蒸気経路92を有しており、液体経路91を流動する液体(ここでは、水)と蒸気経路92を流動する加熱用蒸気(ここでは、スチーム蒸気)との間で熱交換が行われる。
【0072】
熱交換器90の蒸気経路92には、図3に示すように、ボイラー94からの加熱用蒸気(ボイラー蒸気、または、高圧蒸気)が導入される。具体的には、ボイラー94からの高圧蒸気は、ボイラー配管82を介して、熱交換器90の蒸気経路92に導入される。熱交換器90の内部において、蒸気経路92を通る加熱用蒸気の熱は、液体経路91に存在する液体に移動して、ここで熱交換が行われる。そして、熱交換器90の内部において、非接触で、加熱用蒸気(熱媒体)と液体(熱交換媒体)とが交差する際に熱交換が実行されて、湯が沸き、そして、湯気(微圧飽和蒸気)15が発生する。熱交換器90において熱交換が終わった加熱用蒸気は、排気スチーム配管84を通って排気される。
【0073】
本実施形態の熱交換器90は、図4に示すように、外殻体93の中に複数の液体経路91が配置されて形成されている。本実施形態では、外殻体93は、略円筒状の形状をしており、液体経路91は、伝熱管から構成されている。液体経路91を構成する伝熱管は、熱媒体(スチーム)の熱を管内の熱交換対象体(ここでは、水)に伝える材質から形成されており、例えば、金属管(例えば、ステンレス)からなる。液体経路(伝熱管)91は、円筒形状の長手方向(軸心方向)に延びている。本実施形態では、軸心方向に沿って、周方向に間隔をあけて並列に配置されている。そして、液体経路(伝熱管)91同士の間が、熱媒体(スチーム)16が通過する蒸気経路92となる。また、熱交換器90の液体経路91の上端91aからは、湯気15が発生して移動していく。
【0074】
熱交換器90から構成された湯気発生装置10は、図1に示すように、湯気供給管12を通じて、加熱釜50の内部55に配置された湯気噴出部52に接続されている。したがって、熱交換器90の液体経路91の上端91aから生じた湯気15は、湯気供給管12を通って移動し、続いて、加熱釜50の内部55に導入され、湯気噴出部52から噴出して加熱釜50の内部55に放出される(矢印53)。
【0075】
本実施形態の湯気噴出部52は、少なくとも1つ加熱釜50の内部55に配置されているものであるが、本実施形態の構成では、複数の湯気噴出部52(52A、52B)が加熱釜50の内部55に配置されている。本実施形態の湯気噴出部52は、噴き出し口が複数形成されたスパージ管である。図示した例では、加熱釜50の内部55において水平方向に延びるように配置されている。ここでは、加熱釜50の円筒形状の長手方向に沿って、湯気噴出部52(スパージ管)は配置されている。
【0076】
また、図2に示した構成では、本実施形態の湯気噴出部52(52B)の少なくとも1つは、加熱釜の内部55の下部領域に配置されている。図示した例では、加熱釜50の内部55の下部領域に2本のスパージ管52Bが配置されている。本実施形態における加熱釜の内部55の下部領域は、加熱釜の内部55の底面に近い領域をいい、図2に示した例では、載置板75よりも下方の領域である。加えて、図2に示した例では、加熱釜50の下部領域よりも上方において、湯気噴出部52(52A)が配置されており、ここでは、加熱釜50の中央領域(円筒形状の中心を通る水平面またはその周囲)に湯気噴出部52(52A)が配置されている。図示した例では、加熱釜の内部55において、下部のスパージ管52Bが2本配置され、中央部のスパージ管52Aが2本配置されている。スパージ管52Aの2本は互いに左右対称になるように、そして、スパージ管52Bの2本も互いに左右対称になるように配置されている。なお、加熱釜50の上部領域(加熱釜の内部55の上面に近い領域)に、1本または複数本(例えば、2本)の湯気噴出部(スパージ管)53を配置することも可能である。すなわち、本実施形態の構成においては、湯気噴出部(スパージ管)53を、上下左右で全体に複数本配置する構成にすることが可能である。
【0077】
また、熱交換器90の液体経路91の下端91bは、連通管30を通して、液体容器20に接続されている。言い換えると、連通管30の一端30aは、液体容器20に接続され、一方、連通管30の他端30bは熱交換器90(特に、液体経路91の下端91b)に接続されている。したがって、液体容器20内の液体(水)25は、連通管30に移動することができる。そして、続いて、熱交換器90の液体経路91から湯気が発生して、熱交換器90内の液体経路91の水位が低下するのにあわせて、それを補うように、連通管30内の液体は熱交換器90の液体経路91の下端91bの方に移動する。
【0078】
図1に示した構成では、液体容器20は、上部に開口部21aを有する液体ポット本体部21と、液体ポット本体部21の開口部21aを密閉する蓋部22とから構成されている。液体ポット本体部21は、耐圧容器であり、動作時の所定の圧力に耐えることができる。また、液体ポット本体部21の底部には、連通管30が接続されている。液体ポット本体部21の上部を塞ぐ蓋部22には、連結配管28が接続されている。連結配管28の一端28aは液体容器20内に位置し、そして、連結配管28の他端28bは加熱釜50の内部55に位置している。
【0079】
また、図1に示した構造では、加熱釜50の下部には、排出配管69が接続されている。本実施形態の排出配管69は、加熱釜50の底部に溜まったドリップ水(蒸気が劣化した水、被加熱製品から生じた液体)を排出することができ、その排出配管69の開閉は、変動バルブ69aによって行うことができる。また、本実施形態の排出配管69(および変動バルブ69a)を用いて、加熱釜50の内部の気体(空気及び/又は蒸気)を外部に排出することも可能である。そして、排出配管69および変動バルブ69aによって、加熱釜50の内部圧力を調整することができる。
【0080】
図1に示した構成では、液体ポット本体部21と蓋部22とによって液体容器20を密閉構造にしている。ただし、蓋部22を設けずに、一体型の液体容器20において連通管30および連結配管28を接続した構成にしてもよい。あるいは、液体容器20を構成する液体ポット本体部21が上面以外(例えば、側面)のところにあり、そこに蓋部22を取付けたような構造にすることも可能である。
【0081】
本実施形態のレトルト殺菌装置100においては、液体容器20は、連結配管28を通じて加熱釜50に接続されている。また、熱交換器の液体経路91は、湯気供給管12を介して加熱釜50に接続されている。さらに、熱交換器の液体経路91は、連通管30を介して液体容器20に接続されている。したがって、熱交換器90と加熱釜50と液体容器20とを接続することによって密閉空間を構築することができる。そして、熱交換器90から構成された湯気発生装置10の湯気(微圧蒸気)15を加熱釜50に導入することにより、導入した湯気53で加熱釜50の内部55の圧力を徐々に上げて加圧状態にすることができる。
【0082】
また、その密閉空間を有する密閉構造においては、パスカルの原理により、いずれの場所も圧力は等しくなる。それゆえに、熱交換器90、加熱釜50、液体容器20およびそれらを連結する配管が耐圧構造を有していれば、それらの密閉構造の内部の圧力は等しいまま、徐々に加圧させることができる。
【0083】
さらに説明すると、熱交換器90から発生する蒸気(湯気)が微圧であっても、風船やタイヤのような密閉空間に連続して気体を供給することにより、その密閉空間を加圧状態にすることができ、かつ、その圧力が全体で同期することで徐々に昇圧し、結果として、導入する蒸気(湯気)よりも高い圧力を達成させることができる。すなわち、密閉構造においてはパスカルの原理が働いているので、微圧の湯気の導入で加熱釜50の内部圧力が少し高くなると、それと同じ圧力が熱交換器90にも生じ、その結果、微圧の湯気を徐々に導入していくと、熱交換器90の内部の圧力も、加熱釜50(および液体容器20)の内部の圧力とともに上昇していく。そして、結果として、熱交換器90から生じる湯気の圧力が約0.12MPaA以下(すなわち、ゲージ圧力0.0187MPaG以下)であっても、加熱釜50の内部圧力をそれよりも高い加圧状態にすることができる。具体的には、絶対圧力0.12MPaAまたはそれに近い状態から、0.2MPaA(又は0.3MPaA)くらいまでの加圧状態にすることができる。そして、温度は約120℃にすることができ、熱交換させる熱源の温度の90%くらい迄の(80〜90%くらいの)温度に上昇させることができる。典型的には0.13MPaA以下(一例では0.105〜0.12MPaA)の湯気(微圧蒸気)を用いて、加熱釜50の内部55をレトルト殺菌ができる程度の加圧状態(例えば、0.2MPaA程度)にする。
【0084】
加えて、湯気は基本的に飽和水蒸気であるので、湯気を加熱釜内に導入することで、空気をほとんど含まない飽和水蒸気の雰囲気を作ることができ、断熱材として機能する空気による加熱ムラを抑制することができる。その結果、エネルギー効率が良く、及び/又は、加熱ムラを抑制することができるレトルト殺菌装置を実現することができる。また、ボイラー蒸気は不純物を含むが、湯気はそのような不純物を含まないので、その点での利点もある。
【0085】
そして、熱交換器90、加熱釜50および液体容器20から構成された密閉空間の内部は実質的にどの箇所も等しい圧力であるので、パスカルの原理により、連通管30を介して、液体容器20の内部の水位(WL1)と、熱交換器の液体経路91内の水位(WL2)とを一致させることが可能である。すなわち、加圧前の状態においては、パスカルの原理に基づいて、大気圧によって、液体容器20の内部の水位(WL1)と、熱交換器の液体経路91内の水位(WL2)とを一致させることが可能である。そして、加圧状態においては、同じくパスカルの原理に基づいて、密閉空間の内部圧力によって、液体容器20の内部の水位(WL1)と、熱交換器の液体経路91内の水位(WL2)とを一致させることが可能である。
【0086】
ここで、熱交換器の液体経路91内の水位(WL2)を簡便に且つ安定して制御できることにより、安定した蒸気(湯気)の導入を実行することができる。また、高温高圧のボイラー蒸気の導入では精密な制御が難しい蒸気導入であるが、本実施形態のレトルト殺菌装置100によれば、レトルト殺菌装置の制御手順の通りに精密に実行することができる。これは、微圧蒸気の水蒸気(湯気)の流速が遅く制御が容易であることも起因している。その結果、本実施形態のレトルト殺菌装置100によれば、殺菌及び/又は加熱のプロセスを精度良く安定して且つ簡便に進めることができる。
【0087】
なお、図1に示した構成では、液体容器20には、液体25の水位(WL1)を調整する水位調整部材23が設けられている。水位調整部材23は、例えば、水位表示器(例えば、浮き球)から構成されている。そして、液体容器20には、液体(水)を供給するための配管(例えば、水道管)26が接続されている。本実施形態の構成では、水位調整部材(水位表示器)23が示す水位WL1に基づき、配管(例えば、内部圧力よりも高い圧力を有する配管、典型的には、水道管)26を通じて水を供給することができる。なお、水位調整部材23は、簡易な水位表示器(例えば、浮き球)を用いるものに限らず、水位WL1を所定または一定に調整できる電子制御式の装置を使用することも可能である。
【0088】
上述したように、本実施形態のレトルト殺菌装置100では、ボイラー94からのボイラー蒸気(加熱用の加圧蒸気)をそのまま加熱釜50の内部55に導入するのではなく、湯気発生装置10からの湯気15を加熱釜50の内部55に導入する。湯気発生装置10からは、微圧力(例えば、0.12MPaA以下)の湯気(飽和水蒸気)15が生成し、湯気は微圧力であるがゆえ、湯気供給管12をゆっくりと移動して、加熱釜50の内部55に導入される。ここでの「湯気」は、ボイラー蒸気のような高圧蒸気ではなく、微圧蒸気のことを意味する。換言すると、本実施形態の「湯気」は、高温高圧のスチーム蒸気と異なり、微圧力の蒸気(例えば、0.12MPaA以下の蒸気)である。なお、ここでの「湯気」は微圧力の蒸気であることを特徴としており、湯から立ち上る蒸気(水蒸気)であればよく、その蒸気が小さな水滴となって白く煙になるような状態であることまで限定されるものではない。すなわち、湯気は、白い煙のような状態であってもよいし、透明の状態であってもよい。
【0089】
まず前提として、加熱釜において高温で高圧の加熱環境を実現しようとすれば、圧力の高い気体(蒸気、空気)を加熱釜に導入して、高温で高圧の条件を設定することが技術的な常識である。そして、高圧であればあるほど高温の加熱環境を実現することが容易となる。そのような大前提の中、本願発明者は、微圧蒸気である湯気15を、加熱釜50に連続して導入することにより、加熱釜50の内部55の環境を加圧状態にするものである。すなわち、当業界の技術常識とは異なる方向で、加熱釜50の加圧条件を構築するものである。
【0090】
本実施形態の加熱装置100においては、0.11MPaAまたは0.12MPaAの湯気15を連続して導入することにより、加熱釜50の内部55を、例えば、0.15MPaA〜0.25MPaA(一例では、0.15MPaA(111℃)、0.20MPaA(120℃)、0.30MPaA(133℃)の設定)にすることができる。そして、連通管30を介して熱交換器90の液体経路91には液体が自動的に供給されるので、熱交換器90の熱交換によって連続して湯気15を加熱釜50に導入することができる。なお、一例では、0.30MPaA(133℃)のボイラー蒸気を用いて、熱交換器90(言い換えると、蒸気間接加熱方式の湯気発生装置10)にて、0.12MPaA(104℃)の湯気(クリーンスチーム)15を発生させて、上述したような機構(同期昇圧方法)によって昇圧・昇温させることにより、その湯気15で加熱釜50の内部を加圧状態にする。具体的には、熱交換器90の湯気による昇圧・昇温で、例えば0.20MPaA(120℃)まで加圧することができる。
【0091】
本実施形態の加熱装置100における加熱釜50において、加熱温度110〜120℃、圧力0.14MPaA〜0.20MPaAで、例えば20分〜40分の蒸気加熱(湯気15の加熱)を行ったところ、F値6のレトルト食品のレトルト殺菌を行うことができた。なお、加熱温度および加熱時間(または圧力)は、これらに限定されるものではなく、適宜好適なものを選択することができる。例えば、条件によっては、20分よりも短い加熱時間でレトルト殺菌を行うこともできるし、40分よりも長い加熱時間でレトルト殺菌を行うこともできる。具体的には、対象物の比熱や大きさなどによって加熱時間は変化し、それゆえに、対象物にあわせた適切な加熱時間を選択するようにすればよい。
【0092】
レトルト製法で製品化された食品は、レトルト製法でない通常の調理品と比較して味がよくないことが多い。これは、レトルト製法では高温加圧での殺菌(レトルト殺菌)を行うことがメインの目的となっており(すなわち、殺菌が主目的)、加熱される食品の状態のことの考慮がメインとなっていないことに起因していると思われる。従来のレトルト殺菌装置による処理では高温加圧状態で加熱することで、加熱後にレトルト臭(例えば、食品のタンパク変性した臭い)が生じていることが多く、また、ボイラー蒸気(130〜150℃程度)を加熱釜に直接導入すると、加熱釜の内部の昇温において部分的にムラが生じる可能性が高い。そして、高圧にするために加圧空気(圧縮空気)を使用する場合には、断熱材となる加圧空気の導入の影響も受けて、加熱ムラが生じる。
【0093】
一方、本実施形態のレトルト殺菌装置(加熱処理方法)によれば、熱交換器90を用いて湯気を連続して加熱釜50に導入することができ、そして、その湯気15の導入にて加圧と昇温を徐々に行うことによって、本実施形態の加熱釜50内の温度上昇と、加熱釜50内のレトルト食品70の温度上昇とを揃えながら加熱させることができる(ただし、レトルト食品70の芯温は遅れて上昇する)。その結果、安定した食品(70)の温度上昇による効果、加熱釜50内の均一な加熱環境(加熱ムラの低下)の効果、ボイラー蒸気を使用しないクリーン蒸気(湯気)による効果、低空気状態での加熱環境(空気の少ないことによる熱伝導率の良さ)の効果、蒸籠の内部状態に類似した高濃度水蒸気環境における加熱環境などの効果を得ることができる。なお、乾燥空気の比熱と、飽和水蒸気の比熱とを比較すると、飽和水蒸気の比熱の方が大きいので、実質的に空気が含まれていない高濃度水蒸気環境における加熱環境は、食品の加熱(特に、レトルト殺菌)において好ましい環境である。
【0094】
また、本実施形態の構成において、湯気噴出部52を加熱釜50の内部55の下部領域(あるいは、中央領域)に配置すると次のような効果が得られる。加熱釜50の内部55の空気を外部に出す空気抜け弁を加熱釜50の上部に設けた構成において、湯気噴出部52を加熱釜50の内部55の下部領域(または中央領域)に配置すると、水蒸気からなる湯気53は空気よりも比重が重いので、湯気53の導入当初は、湯気53は、加熱釜50の内部55の下部に移動する。そして、その湯気53の導入の反動によって、加熱釜50の内部55に当初存在していた空気は、加熱釜50の例えば上部に設けられた空気抜け弁から抜けていく。次いで、湯気53が導入されていくに従って、湯気53は、湯気濃度としてみると相対的に加熱釜50の下部の方から上部の方へと充填されていき、湯気53の導入に伴って加熱釜50内の空気は空気抜け弁から抜けていく。
【0095】
ボイラー蒸気(130℃〜150℃程度)を加熱釜に直接導入する場合には、加熱釜50内の空気を排除したくても、加熱釜50に導入された高温高圧のボイラー蒸気が、加熱釜50の内部をかなり早いスピードで移動しており、加熱釜50の内部を開けるために電磁弁で開放することは危険が伴うとともに、そのような開放を行ったとしても、空気だけを選択して排除することは困難であり、空気とボイラー蒸気の両方が加熱釜50の外部にでることになる。また、空気の体積膨張によって内部圧力が一気に高くなるので、ボイラー蒸気が入りにくいという問題もある。さらに、仮に加熱釜50に空気抜け弁を設けたとしても、ボイラー蒸気は加熱釜50内部を高速で拡散しながら移動して空気と混じるために、ボイラー蒸気の導入時に空気だけが優先して排除されるようにならない。それゆえに、ボイラー蒸気を加熱釜に直接導入する方式では、適切な加熱制御を確保するために、ボイラー蒸気の導入前に、真空ポンプによって空気を抜く作業をする必要がある。真空ポンプを用いるのには設備コストおよびエネルギーコストが必要であり、また、真空ポンプで真空にして、ボイラー蒸気で加圧して、さらに、取り出すときには常圧に戻して、そして次の加熱ではまた真空ポンプで真空にする、との工程を繰り返すのは、非常にエネルギーロスが大きい。この点、本実施形態のレトルト殺菌装置100の構成では、そのようなエネルギー効率の悪さを解消することができる。なお、本実施形態の加熱釜50に取り付けられる空気抜け弁は、加熱釜50の内外の圧力差によって自然に空気を排除できる構造のものである場合には、自然と空気が抜けていくので便利である。
【0096】
なお、湯気噴出部52を加熱釜50の下部領域に配置した場合だけでなく、加熱釜50の中央領域に配置した場合でも、湯気53は、空気との比重差によって加熱釜50の下部領域に移動するので、湯気53の導入時の空気の排出の効果を得ることができる。また、湯気噴出部52を加熱釜50の中央領域に配置した構成では、加熱釜50の中央部(中心部分)にセットされた食品(レトルト食品)70に湯気53を吹き付けやすいので、加熱・殺菌の効率性の点での効果を有している。さらに、図2に示したように、湯気噴出部52を加熱釜50の下部領域および中央領域の両方に、湯気噴出部52を配置することにより、湯気53の導入時の空気抜けの効果と、加熱釜50の内部の加熱温度均一性の両方の効果を得ることができる。
【0097】
加えて、加熱釜50の上部に湯気噴出部52を設けても構わない。湯気噴出部52を加熱釜50の中央領域及び/又は上部に設けた場合、湯気は、比重によって加熱釜50の下部領域に移動するので、その移動の際の流れによって、加熱釜50の下部に設けた排出配管69を開放して、そこから空気を逃がすようにすることができる。
【0098】
図1に示したレトルト殺菌装置100では、液体容器20を加熱釜50の外部に配置した構成を示したが、それに限らず、他の構成を採用することも可能である。具体的には、図5に示すように、液体容器20を加熱釜50に取り付けた構成にすることも可能である。
【0099】
図5に示したレトルト殺菌装置100においては、液体容器20は、上部開口部21aを有する液体ポット本体部21から構成されている。そして、液体ポット本体部21の上部開口部21aが加熱釜50の内部55に位置するように、液体ポット本体部21は加熱釜50に取り付けられている。すなわち、液体容器20は加熱釜50の下部(底面)に取り付けられており、液体ポット本体部21の上部開口部21aが加熱釜50の内部55に露出している。
【0100】
図5に示した構成では、液体ポット本体部21の底面21bには、連通管30が接続されており、その連通管30は、熱交換器90に(特に、熱交換器90の液体経路91の下端に)接続されている。このように液体容器20を加熱釜50に取り付けた構成においても、熱交換器90と加熱釜50と液体容器20とが接続されて密閉空間が構築されている。そして、熱交換器90から構成された湯気発生装置10の湯気(微圧蒸気)15を加熱釜50に導入することにより、導入した湯気53で加熱釜50の内部55の圧力を徐々に上げて加圧状態にすることができる。
【0101】
また、図5に示したレトルト殺菌装置100においても、密閉空間の内部の圧力が等しいことにより、すなわちパスカルの原理によって、液体容器20(液体ポット本体部21)の水位(WL)と、熱交換器90(熱交換器90の液体経路91)の水位(WL)とを一致させることができる。すなわち、湯気15の生成とともに、熱交換器90における液体経路91の液体(水)25bが減っていくと、液体容器20の液体(水)25の液体25aは、連通管30内を通って(液体25c)、自動的に熱交換器90の液体経路91に供給され、それゆえ、液体25のWL(WL1、WL2)が一定となるように調整することができる。
【0102】
なお、図5に示した構成では、液体容器20(液体ポット本体部)21に、水道水などを供給する液体供給配管(水道管)26を接続することができる。また、水位調整部材(水位表示器)27が示す水位WL1に基づき、配管(例えば、内部圧力よりも高い圧力を有する配管、典型的には、水道管)26を通じて水を供給することができる。なお、水位調整部材23は、簡易な水位表示器(例えば、浮き球)を用いるものに限らず、水位WL1を所定または一定に調整できる電子制御式の装置を使用することも可能である。
【0103】
さらに、この例のレトルト殺菌装置100では、加熱釜50の内部で生じた液体(湯気が凝縮したものを含む)は、液体ポット本体部21に到達して、その液体25(25a)も、熱交換器90への液体25(25b)として使用することができる。すなわち、図5に示したレトルト殺菌装置100においては、熱交換器90と加熱釜50との間で湯気15を循環させることによって(より正確には、湯気15と、連通管30内の液体とを循環させることによって)、加熱釜50の内部55を加圧状態にすることが可能である。この循環式の加熱方式により、湯気15の再利用を図ることができるので、液体(水)の無駄を減らした高効率のレトルト殺菌装置を実現することができる。なお、本実施形態のレトルト殺菌装置100においては、液体を積極的に再利用する他に、変動バルブ69a付きの排出配管69から、蒸気を外部に排出して、圧力調節しながら運転させることも可能である。
【0104】
また、加熱釜50の内部で生じて液体ポット本体部21に到達した液体25(25a)は温水であるので、冷水を熱交換器90で加熱する場合と比較して、エネルギー効率も向上させることができる。すなわち、この例のレトルト殺菌装置100では、本来廃棄されてしまう熱エネルギーを再利用することができる。加えて、この例の構成であれば、加熱釜50の内部55に生じたドリップ廃液の処理も簡便にすることができ、多面的な技術的利点があるものである。
【0105】
次に、図6から図10を参照しながら、本実施形態のレトルト殺菌装置100の構成をより詳細に説明する。なお、図6から図10に示したレトルト殺菌装置100は、本発明の実施形態のレトルト殺菌装置100を具現化した好適な例であり、本発明の実施形態のレトルト殺菌装置100は、この構造例に限定されるものではない。
【0106】
図6は、本実施形態の加熱釜50の内部構造を示している。加熱釜50の釜本体部51は、断面が円形である円筒形状(または略円筒形状)を有しており、例えば、ステンレスから構成されている。加熱釜50の内部55には、複数の湯気噴出部52(52A、52B)が配置されている。湯気噴出部52は、蒸気(湯気)の噴出口が等間隔に配置された配管(スパージ管)から構成されている。湯気噴出部52は、加熱釜50の円筒形状の長手方向に沿って配置されており、湯気53が加熱釜50の内部55にできるだけ均一に噴き出されるようにされている。
【0107】
なお、湯気噴出部52を構成する配管は、長手方向(または、水平方向)に直線に延びる方向の構造の他、曲線部分を含むように延ばしても良く、あるいは、蛇行するように延ばしても構わない。また、加熱釜50の内部55においてらせん状に延ばすように配置したり、加熱釜50の内部55において円周方向に延びる配管を複数作製してそれらを連結するようにしても構わない。直線に延ばした構成の場合でも湯気53の噴霧の均一性を確保できるが、曲線部分を設けたり、らせん状の配管にしたり、円環状の配管の部分を設けることにより、湯気53の噴霧の均一性をより向上させることができる可能性がある。
【0108】
また、図6に示した構成例では、湯気噴出部52を構成する配管は、加熱釜50の内壁に接するように配置されているが、それに限るものではない。例えば、加熱釜50の内部55を貫通するように配管を延ばすことも可能である。また、湯気噴出部52は、配管の構造を有するものに限らず、他のものでも構わない。湯気噴出部52は、例えば、加熱釜50の釜本体部51に形成された貫通孔から湯気53を噴射できるような構成にしもよい。あるいは、湯気噴出部52は、スプリンクラーのような部材、または、貫通孔を有する円盤状の部材から、湯気53が噴出できるようなものであっても構わない。
【0109】
なお、湯気噴出部52に水(水道水、または、冷水)を供給する配管を接続して、湯気噴出部52から水(冷水)を噴霧するように構成することも可能である。このような水噴霧機構を備えるようにすれば、加熱釜50の冷却機構として機能させることができる。そして、その構成としては、例えば、湯気噴出部52に接続された湯気供給管12の一部に、切替弁および水配管を取り付けるようにして、切替弁の切り替えによって水道水(または他の水)を導入できるようにすればよい。すなわち、簡単な構成によって冷却機構を搭載させることができる。また、湯気噴出部52に水を通すのではなく、単独の冷水配管(スパージ管)を配置して、加熱釜50内に水(冷水)を噴霧するように構成することも可能であるし、スプリンクラー式の散水装置を配置することも可能である。なお、この例では、図6には、排出配管69の開口部(接続端)69bが示されている。噴霧された冷却水などは排水配管69の開口部69bから排出することができる。
【0110】
加えて、図6に示した液体容器20を構成する液体ポット本体部21は、矩形形状(または、直方体形状)を有しているが、この形状に限るものではない。例えば、液体ポット本体部21は、上方に開口部21aを有する円筒形の形状、または、多角形形状の構造を有してもよい。なお、図6に示した構成例では、加熱釜50の内壁から突き出すように液体ポット本体部21の上端がでているが、それに限らず、液体ポット本体部21の上端が加熱釜50の内壁に一致するような構成にしてもよい。
【0111】
さらには、液体ポット本体部21の上部開口部21aを覆いながら、上部開口部21aを密閉しない上蓋を配置してもよい。この上蓋は、加熱釜50の内部55のゴミ・異物が入らないようにすることができる。なお、上蓋に代えて、メッシュ状の部材、ネット状の部材、通気性を有する多孔性部材を、
液体ポット本体部21の上部開口部21aを覆うように配置することも可能である。
【0112】
図7(a)および(b)は、本実施形態の加熱釜50の構成を示す正面図および側面(断面)図である。図7(a)に示すように、加熱釜50の釜本体部51の正面側(前方側)には、正面(前方)開口部を塞ぐ扉57(57A)が設けられている。扉57は、ヒンジ部58によって開閉可能な構造を有しており、レバー59によってロックすることが可能である。なお、この構成例では、図7(b)に示すように、加熱釜50の釜本体部51の背面側(後方側)にも、背面(後方)開口部を塞ぐ扉57(57B)が設けられている。このように前後に開閉可能な扉(57A、57B)を有する構造の加熱釜50にすると、前後の両方から出し入れできるので、製造ラインの作業効率を向上させることができる。もちろん、加熱釜50の開閉可能な扉を一つにして(例えば、扉57A)、そこから食品(レトルト食品)を出し入れするようにしても構わない。
【0113】
図7(b)に示すように、加熱釜50の上部(特に、頭頂部)には、空気抜け弁60a(60)が設けられている。この例では、複数の空気抜け弁60が加熱釜50に設けられており、加熱釜50の内部からの空気の抜けをできるだけ均一に行うことができるようにされている。本実施形態の空気抜け弁60は、加熱釜50の内部の加圧を保持しながら空気(及び/又は内部蒸気)を適切に排出できる弁(エアベント)のものであればその構造・種類は特に問わないが、例えば、装置(釜)内の空気を抜くための空気抜け弁60としては、自動式のもの(自動エアベント)が好ましく、例えば、蒸気配管・装置の空気抜き用エアベント(サーモスタティック・スチームトラップの技術が使用された空気抜け弁など)を使用することができる。なお、手動にて空気(及び/又は内部蒸気)を排気できる装置を設けても構わない。本実施形態では、加熱釜50の内部55をより積極的に高精度に制御する上で、電磁式の逃がしバルブを設けて、内部圧力を調整できるようにすることもできる。また、図7(b)に示した例では、加熱釜50の最頂部に空気抜け弁60aを設けているが、必ずしも最も高い位置でなく、上部であれば特に問題ない。また、上部および下部との両方に抜け弁(60、69)を設けることも可能で、上部には、空気(及び/又は内部蒸気)を排出する空気抜け弁60を付けて、下部には、ドレインや内部蒸気を排出する排出配管69を設けてもよい。排出配管69は、バルブ(変動バルブ69a)を調整することで、加熱釜50の内部の気体(空気、及び/又は、水蒸気)を排出することができる。
【0114】
また、図7(b)では、加熱釜50の上部(特に、頭頂部)には、安全弁61も設けられている。安全弁61は、密閉した容器において、内圧が上がった状態で加熱した場合において内圧が上がりすぎた場合に容器が破損するのを防止する弁であり、これにより、容器の内圧が上がり過ぎないようにできる。本実施形態のレトルト殺菌装置100では、微圧蒸気の湯気53を使用するので、加熱釜50が破損する程に内圧が上がる危険性は極めて低いが、安全のために安全弁61を設けている。また、変動バルブ69aを用いた排出配管69の開閉によって加熱釜50の内部圧力を低下させることもできる。
【0115】
この例では、液体容器20を構成する液体ポット本体部21の上部開口部21aを覆う上蓋29が示されている。上蓋29は、液体ポット本体部21を覆うものの、非密閉になるように配置されている。また、加熱釜50の釜本体部51は、支持棒(支持台)65によって支持されており、加熱釜50の釜本体部51の外周面には、支持棒65を固定する固定部材51aが形成されている。さらに、加熱釜50の釜本体部51には、湯気供給管(蒸気供給管)12を外部から内部に通す貫通孔12cが形成されている。また、加熱釜50の内部には、各種センサ(温度センサ、圧力センサなど)が配置されており、それらのセンサは、レトルト殺菌装置100の運転を制御する制御装置(制御板)に接続されている。そして、本実施形態の構成では、この制御装置を用いて、加熱釜50の上部、下部または上下の両方に設置した電動比例式弁による内部圧力調整を実行するとともに、熱交換器90に取り入れるボイラー蒸気をコントロールして、加熱釜50の内部温度と内部圧力を調整することができる。なお、比例式弁(比例制御弁、または、電磁式比例制御弁)とは、オンオフの弁の開閉制御だけでなく、流体を比例的に制御することができるものであり、比例式弁(比例制御弁)への制御信号を変化させることで、流れる流体の流量を、 最大流量に対して0〜100%の範囲で連続的に制御することができるものである。
【0116】
なお、図7(a)および(b)には、熱交換器90は示していないが、熱交換器90は、1つの加熱釜50に少なくとも1つは設けられる。本実施形態では、加熱釜50の寸法・体積によるが、1つの加熱釜50に複数(例えば、3つ)の熱交換器90を設けており、加熱釜50に大量の湯気53を安定してできるだけ均一に供給できるようにしている。また、特に限定されるものではないが、加熱釜50の寸法を例示的に示すと次の通りである。加熱釜50の直径は、例えば、50cm〜2m又はそれ以上であり、加熱釜50の長手方向の長さは、例えば、50cm〜10mまたはそれ以上である。
【0117】
図8は、加熱釜50に取付けされた液体容器20と熱交換器90とが連通管30によって接続された構成例を示している。熱交換器90から延びた連通管30は、液体容器20に接続され、そして、液体容器20の開口部21aは、加熱釜50の内部55に露出している。なお、連通管30には、加熱釜50の内部55の液体を排出するためのドレイン配管34が連結されており、開閉バルブ33によってドレイン配管34から廃液を出すことができる構造になっている。また、加熱釜50に排出配管69が接続されている場合には、その排出配管69にドレイン配管34を接続することができる。ここで、加熱釜50を支持する支持棒65は、土台部67に連結されている。
【0118】
図9は、加熱釜50と、湯気供給管12(12A、12B)および湯気噴出部52(52A、52B)の構成例を示している。図9に示した例では、共通の湯気供給管12から、第1湯気供給管12Aと第2湯気供給管12Bとが分岐して、それらが加熱釜50の内部55に導入されている。また、図9に示した例では、第1湯気供給管12Aおよび第2湯気供給管12Bは、それぞれ、複数(2本ずつ)に別れて延びている。なお、第1湯気供給管12Aの一本は、加熱釜50の上方を跨ぐように延びているが、この構成に限らず、湯気供給管12Aを加熱釜50の下方を潜るように延ばしても構わない。
【0119】
また、湯気供給管12の一部において、湯気を加熱する加熱装置40を設けるような構成例を採用してもよい。湯気供給管12の一部に加熱装置40を配置すれば、湯気供給管12を通過する湯気の温度を上昇させることができる。具体的には、加熱装置40を追加することによって、レトルト殺菌装置100において所望の温度を調整する更なる手段(加熱手段)を導入することができる。加熱装置40は、例えば、電熱ヒータ(加熱ヒータ)である。本実施形態の電熱ヒータ40は、例えば、数キロワット程度の電熱ヒータ(例えば、プラグヒータ、フランジヒータなど)である。
【0120】
また、加熱装置40で湯気を加熱することにより、湯気から過熱蒸気を生成することもできる。通常の高温高圧のボイラー蒸気を電熱ヒータで加熱してもボイラー蒸気の流速が速いために加熱の効率は良くない。しかしながら、本実施形態の構成では、流速の遅い湯気(微圧蒸気)を加熱装置(例えば、電熱ヒータ)で加熱するので、過熱蒸気を効率良く生成することができる。そして、その過熱蒸気の雰囲気下での加熱釜50にてレトルト加熱(レトルト殺菌)や食品加熱を行うことができる。なお、加熱装置40内では、動作時に実質的に大気圧と同じ内部圧力(例えば、1.2気圧以下の内部圧力)で加熱が実行されるので、圧力的にも安全な動作を確保することができる。
【0121】
次に、図10を参照しながら、本実施形態のレトルト殺菌装置100の動作結果について述べる。図10は、本実施形態のレトルト殺菌装置100を動作させた場合の結果を示すグラフである。図10のグラフにおいては、加熱釜50の内部55の庫内温度(庫内右側箇所、左側箇所)と、そこに配置された食品70の芯温度(庫内右側箇所、左側箇所)の温度が示されている。また、加熱釜50の内部55の庫内圧力もあわせて示している。この例ではビン詰め加熱においける動作結果を示している。なお、横軸の一目盛りは、約4分である。ここでは、絶対圧力で0.12MPaA以下(例えば、0.11MPaA程度)の湯気を連続して導入して、その連続して追加する湯気の圧力の加算によって昇圧が行われている(区間T1)。なお、所定の圧力(0.20MPaA)に達したらそこで一定になるように内部圧力を制御している(区間T2)。
【0122】
レトルト殺菌装置100の動作開始とともに、内部圧力が上がり、それとともに、庫内温度が上昇する。スタート時ないし昇温時において(区間T1)、通常は温度バラツキが大きい庫内の部分温度(右、左)の差は極めて小さく抑えられていることがわかる。すなわち、庫内温度(加熱釜50の内部)の温度が優れた均一性を持って制御されていることがわかる。そして、炉内温度を設定温度(約120℃)に調整した時も(区間T2)、庫内の部分温度(右、左)の差が極めて小さいことがわかる。また、炉内温度の上昇に追随して、食品の芯温(右、左)も上昇していく。庫内の部分温度(右、左)のバラツキが極めて少ないため、食品の芯温のバラツキも極めて少ない。また、炉内温度の上昇にあわせて滑らかに芯温が上昇していくので、非常に適切な加熱処理を行うことができ、それによって、美味しい食品加工(加熱処理)を達成することができる。
【0123】
なお、レトルト殺菌の加熱が終わると、内部温度を下げていく制御を行い(ポイントT3)、それに伴って、炉内温度および食品の芯温が低下していく。内部温度を下げる過程においては、袋の破裂を防止するために、コンプレッサで加圧空気を釜内部に導入して、製品の芯温が一定温度まで下がるまで(例えば、70℃)炉内を空気で加圧する。最後に、加熱釜50の内部圧力を大気圧にして、内部の被加熱物を取り出せば、レトルト殺菌処理は終了である。
【0124】
図10を見て分かるように、本実施形態のレトルト殺菌装置100では、庫内圧力および庫内温度を精密に制御することができる。この精密な制御を容易に行うことができるのは、加熱釜50の圧力に対して、湯気による微圧の圧力追加(例えば、0.12MPaAまたはそれ以下の圧力の追加)を繰り返し行うことにより、加熱釜50の内部55の圧力変化、温度変化、比容積変化、熱量(潜熱)変化が少ないことに起因していると思われる。また、流速の遅い湯気であるがゆえに、湯気を導入しても加熱釜50の内部55における空気を攪乱させることが少なく、加熱釜50に設けられた空気逃がし弁60(または排出配管69)によって空気をスムーズに逃がすことができることも大きなメリットである。
【0125】
一方、ボイラー蒸気を加熱釜に直接投入する方式では、制御装置の設定をする時点では所定の温度・圧力は規定できるものの、実際の庫内圧力および庫内温度における各部分のバラツキを取り除くことは極めて難しい。さらに説明すると、この直接投入方式では、0.3MPaAのボイラー蒸気の流入時(通例で0.4MPaA前後のボイラー蒸気が使用される)において、すなわち、配管から加熱釜に入る時において、蒸気圧力は、一時的に、例えば0.3MPaA→0.1MPaAに変化する。さらに、蒸気温度は133℃→100℃に変化し、比容積は0.605m3/kg→1.673m3/kgに変化し、熱量(潜熱)は516.8kcal/kg→539.6kcal/kgへと変化する。このように、配管から加熱釜に入る時に大きく特性が変化する熱媒体(ボイラー蒸気)を用いて加熱温度の制御を行うことは非常に困難である。また、ボイラー蒸気を外部熱源として連続的に投入するためには、設定圧力以上の圧力熱源を必要とし、これも制約となる。なお、直接投入方式では、0.3MPaA(133℃)のボイラー蒸気の流入させるため、昇温開始時は、庫内温度と製品芯温度との差が100℃以上あり、また、ボイラー蒸気との接触部と非接触部との温度差が大きい状態のまま昇温が進み、製品芯温度が110℃くらいになってから、比例昇温度になる。ただし、温度ムラは、13℃くらいあるので(ボイラー温度133℃から、製品用の設定温度120℃まで)、製造品質は一定しないという問題がある。
【0126】
そして、ボイラー蒸気を加熱釜に直接投入する方式では、ボイラー蒸気の条件の変動が激しいため、設定圧力以上の蒸気、設定温度以上の蒸気が流入する状態で、加熱釜内(炉内)の急激な減圧や温度低下が生じつつ、設定温度を維持しようと制御する必要がある。そのような中では、電磁弁にてボイラー蒸気の流量を制御しても、精密な温度制御を行うことは至難の業であり、温度ムラが生じてしまう。そして、設定温度以上の蒸気が存在することにより、食品の部分的な焦げや焼けが生じてしまい、それがタンパク質の変性の増進となり、味や臭いの悪さにつながってしまう。
【0127】
同様に、圧縮空気を用いながら熱水を加熱釜に投入する方式でも、制御装置の設定では所定の温度・圧力は規定できるものの、実際の庫内圧力および庫内温度における各部分のバラツキを取り除くことは極めて難しい。しかも、いずれの方式も、加圧のボイラー蒸気または圧縮空気を用いるものであるので、本実施形態の微圧蒸気(湯気)を用いた方式と比較すると、運転安全性および温度・圧力制御の点で課題が大きくなる。
【0128】
加えて、ボイラー蒸気を加熱釜に直接投入する方式では、ボイラー蒸気を発生する時に、ボイラー内に強アルカリ性の清缶剤(例えば、pH11〜13程度)が使用されていることから、ボイラー蒸気にその強アルカリ成分が混入し、製品袋などに付着してしまう可能性がある。一方、本実施形態の構成では、加熱釜50には、水を熱交換で沸騰させて発生させた湯気を導入するものであるので、そのような強アルカリ成分の腐食の問題を回避することができる。
【0129】
また、圧縮空気を用いながら熱水を加熱釜に投入する方式は、毎回、圧縮空気を導入して、大気圧に戻しての繰り返しを実行する必要があり、エネルギー効率が悪いという問題がある。一方、熱水は重力によって加熱釜の下に落ちるものであり、常に新しい熱水を加熱釜に供給して食品(レトルト食品)に吹き付ける必要があるので、これもエネルギー効率が悪くなる原因となる。本発明の実施形態の手法では、湯気が加熱釜50の内部で漂うので、熱水を食品に吹き付け続ける必要のある方式と比べて利点が大きい。また、本発明の実施形態の手法によれば、加熱源となる湯気を連続供給することで昇温・昇圧させることができるので、圧縮空気を用いる必要がなく、加えて、断熱材として空気の導入を回避することができるので、この点でも技術的な貢献が大きい。
【0130】
したがって、本実施形態の構成によれば、エネルギー効率が良く、及び/又は、加熱ムラを抑制することができるレトルト殺菌装置(加熱装置)100を実現することができる。
【0131】
上述の実施形態では、湯気を用いてレトルト殺菌を行うことができるレトルト殺菌装置100について説明したが、本実施形態のレトルト殺菌装置100を改変することにより、熱水循環式のレトルト殺菌装置(加熱装置)を実現することができる。
【0132】
図11は、本発明の実施形態に係るレトルト殺菌装置200の構成を模式的に示している。図11に示したレトルト殺菌装置200は、基本構成は、図5に示したレトルト殺菌装置100と同様のものである。本実施形態のレトルト殺菌装置200では、加熱水(熱水または温水)を、熱交換器(熱水生成装置)90、加熱釜50、連通管30を通って循環させることができる。
【0133】
レトルト殺菌装置100の連通管30には、液体(熱水)25を循環させる循環ポンプ35が配置された第2経路32bが第1経路32aとは別に設けられている。すなわち、連通管30は、連通管30として水位を一致させるために使用していた第1経路32aと分岐した形で、第2経路32bを設けている。この構成において、第1経路32aの開閉弁31cを閉めて、第2経路32bの開閉弁31a及び31bを開けた状態にし、循環ポンプ35を動かすと、液体(熱水)25を循環させることができる。
【0134】
具体的には、湯気噴出部(ここでは、熱水噴出部)52(ここでは、52A)の上部まで液体25(25c)が浸るようにすると、熱交換器90での熱交換によって加熱されることによって、液体25(25b)は高温熱水18となる。そして、高温熱水18は、湯気供給管(ここで、熱水供給配管)12を通って、湯気噴出部(ここでは、熱水噴出部)52から熱水54として加熱釜50の内部55に供給される。次いで、加熱釜50の内部55の液体25cは、液体容器20(液体ポット本体部)21を通過して、連通管30に入る。その後は、液体25aは、再び循環ポンプ35で流動されて循環していく。
【0135】
本実施形態のレトルト殺菌装置200では、熱水による加熱であるので、湯気による加熱よりも、さらに加熱伝導効率が向上する。そして、加熱釜50内を高圧にすると、100℃を越える熱水加熱処理を実行することができる。また、図11に示すように、加熱釜50の内部55の例えば半分以上を熱水25(25c)で充填させることにより、食品(レトルト食品)の全体を加熱することができ、加熱ムラを取り除くことができる。なお、熱水温度は、低温(室温から100度未満)から、100℃を越える高温まで広く調整することができる。なお、図11に示した構成では、レトルト包装のない食品に適用すれば、熱水によるボイル工程(煮る、茹でる)を実行することも可能である。
【0136】
レトルト殺菌装置200で加熱処理した後は、熱水25を別タンクに移して、加熱釜50を空にしてから食品(レトルト食品)を取り出すようにすればよい。そして、再度、レトルト殺菌装置200で加熱処理する場合には、その別タンクに移しておいた熱水25を再び連通管30に導入して、熱水25をレトルト殺菌装置200内で循環させるようにすることができる。なお、熱水25を別タンクに移した後、開閉弁31a〜31cを切り替えて、すなわち、開閉弁31aを開き、開閉弁31b及び31cを閉めにして、湯気による加熱処理を実行することも可能である。
【0137】
なお、図11に示した構造において、熱水(温水)25の液面の液体容器20(液体ポット本体部21)の上端よりも高くし、製品(被加熱物)が配置された位置よりも低くした状態で、熱水循環をすれば、スパージ管(熱水噴出部)52から熱水をシャワー放出しながらシャワー加熱を行うことができる。また、本実施形態のレトルト殺菌装置200において加熱釜50内を加圧状態(例えば、圧縮空気を導入)にしておけば、加圧加熱を実行することができる。
【0138】
また、上述の図5などでは、液体容器20(液体ポット本体部21)を加熱釜50の内部に配置した構成例を示したが、図1に示した構造のように、液体容器20(液体ポット本体部21)を加熱釜50の内部に配置した構成例にすることができる。図12は、加熱釜50の外部に液体容器20が配置されたレトルト殺菌装置100の構造図である。
【0139】
図12に示したレトルト殺菌装置100は、加熱釜50の内部に複数本の湯気噴出部(スパージ管)52(52A、52B)が配置されている。また、加熱釜50の内部には、冷却水を噴射する冷却水配管(スパージ管)53が配置されており、冷却水配管53は、貫通孔12dを通って、冷却水供給配管(例えば、水道管)64に接続されている。加熱釜50には、空気を排出できる空気抜け弁60、
安全弁61、加熱釜50の内部の圧力を調整する圧力調整弁(真空調整弁)62、圧力センサ63a、速成計63b、温度センサ63c、芯温センサ63dなどがセットされている。なお、芯温センサ63dの配線は、貫通孔12eを通って接続されることになる。また、加熱釜50の下部には、排出配管69が配置されている。また、空気冷却、圧縮吸気導入などを行うことができる空気導入配管66が加熱釜50に接続されている。
【0140】
図示した例の加熱釜50の釜本体部51は、支持棒(支持台)65によって支持されている。支持棒65の下部には車輪が設けられているので、この構成例のレトルト殺菌装置100は、工場内の所望の箇所に移動して設置することができる。熱交換器90からなる湯気発生装置10によって微圧蒸気を加熱釜50内に導入して、それを循環させて同期して昇圧昇温する機構については、上述の説明の通りである。
【0141】
図12に示した液体容器20が外部式の場合、図5に示した内部式のものと比べて、加熱釜50を既存のものを使うことができるので、既存のレトルト殺菌装置の加熱釜を改変して、図12に示した構造にすることができる利点がある。したがって、既存のものを利用できることから、製造コスト・設備コストを抑えることができるというメリットがある。なお、液体容器20を外部に配置した構造においても、配管を適切に配置・接続することにより、図11に示したように温水(熱水)を循環する方式のものを構築することも可能である。
【0142】
上述の図1や図12では、液体容器20を加熱釜50の外部に配置し、また、上述の図5などでは、液体容器20を加熱釜50の内部に配置した構造を示したが、湯気を用いて加熱釜50の内部を昇温・昇圧させる方法としては液体容器20を用いた場合に限らない。例えば、図13では、加熱釜50に連結管30を接続し、その連結管30を熱交換器90の液体経路91の下端に接続している。この方式でも、湯気(微圧蒸気)を循環させながら、全体を同期して昇圧させて、加圧・加熱をすることができる。さらに、図14に示すように、上述した構造における液体容器20を明確な形で使用しなくても、加熱釜50の底部に液体25を配置して、それによって液体25の保持を行うことも可能である。図13および図14に示した方式も、湯気を用いた加熱処理方法であり、熱交換器90から構成された湯気発生装置10で湯気を発生させる工程と、湯気(53)を加熱釜50に導入する工程と、加熱釜50の内部55の底に存在する液体25を熱交換器90に導入する工程とを含んでいる。そして、加熱釜50で加熱する工程において、熱交換器90と加熱釜50との間で湯気を循環させることによって加熱釜50の内部を加圧状態にすることができる。なお、湯気噴出部52の構成、抜け弁60(60a、60b)などの改変例は上述したように適宜好適なものを採用することができる。
【0143】
上述した実施形態では、主に、包装容器を備えた食品の加圧加熱処理(レトルト殺菌処理)について説明したが、本実施形態の手法はそれだけに限らず、包装容器のない食品の加熱処理、及び/又は、レトルト殺菌処理以外の加熱処理に用いることができる。さらに説明すると、従来のレトルト殺菌装置を通常の食品加熱処理に用いる場合、レトルト包装が施されていない食品(例えば、魚、肉など)に、ボイラー蒸気を直接吹き付けると、好ましくない焦げが生じたり、ボイラー蒸気に含まれる成分(アルカリ成分など)に起因するボイラー臭が食品に付くことがある。また、熱水を高圧下で吹き付けるタイプでは、その熱水で食品がぼろぼろになってしまう場合があり、これも好ましくない。一方、本実施形態の加熱装置(レトルト殺菌装置)100では、湯気は飽和水蒸気であるから、湯気による加熱は、蒸籠(セイロ)のような蒸し工程にあたり、食品の加熱時の乾燥を防ぎ、好ましい加熱となる。加えて、湯気のゲージ圧力が0kg/cm2の場合は、潜熱量は539.6kcal/kgとなり、水蒸気の潜熱量は一番高くなる。
【0144】
本実施形態においてレトルト食品以外の食品の加工としては、本実施形態の加熱装置100を用いて加熱処理を行うことができる。そのような加工用の食品としては、冷凍食品(冷凍魚、冷凍肉、冷凍野菜など)、冷蔵食品、調味食品、乾燥食品、その他、蒸し工程に適した食品全般を挙げることができる。また、本実施形態の加熱装置100を用いて加熱処理されるものとしては、炊飯、根菜、魚、肉(ハムなどの加工食品も含む)、パン、茶、コーヒー、佃煮などを挙げることができる。本実施形態の加熱装置100で冷凍品などを加熱処理した場合には、その冷凍食品からドリップが生じるが、本実施形態の構成では、そのドリップを液体容器20に集めて、湯気の生成用の液体にすることができる。なお、ドリップに臭いがあり、その臭いが食品に付くことを回避する場合には、ドレイン配管(34)から排水するような処理を実行してもよい。また、ドリップが液体溶液20に入らないように上蓋29によって保護することも可能である。加えて、ドリップを外部放出管(別の下部ドレイン管)に集めて、電動比例弁または手動弁によって排出することもできる。
【0145】
加えて、近年、骨まで食べられる魚の食品が注目されているが、本実施形態の加熱装置100によれば、湯気による加熱を行うので、そのような骨まで食べられる魚の食品を簡単に製造することができる。例えば、図2に示した構成においてトレー72に、魚(例えば、冷凍の魚)70を配置し、その魚による加熱を行うと、水蒸気の食品(魚)への添加によって骨まで食べられる魚を作製することができる。
その魚に味付けをする場合には、調味料を添加したりすることができ、さらに混練してミンチ状にすることもできる。本実施形態で加熱処理される魚類は、特に限定されないが、単価の安い小魚を利用すれば付加価値を高めることができる。また、本実施形態で加熱処理されたものは、非常に美味しいものになることが確認されている。骨を有する魚類の場合、本実施形態の加熱処理を施すと、骨まで食べられる焼き魚になる。本実施形態で加熱処理される魚類は、例えば、サバ、アジ、サンマ、イワシなどの青背の魚を挙げることができる。これらの魚は、表皮と身肉との間に厚い脂肪層が存在し得る魚である。また、ヒラメ、カレイ、タチウオ、ブリ、ニシンなどのようなもの(白身魚を含む)を用いることも可能である。
【0146】
これらの魚類は、一匹丸ごとのもの、内臓や頭など一部が除去されているもの、部分にわけられているものの何れも使用することができる。また、頭やヒレ、背骨、小骨など骨が付いたままのものを好適に使用することができる。なお、市場では骨を除去した魚類が販売されているが、魚類の骨を完全に取ることはコストがかかる作業であり、資源利用性やゴミの問題などを考慮すると、本実施形態の加熱処理方法または製造方法を用いて魚の骨を柔らかくして食べられるようにできることは、技術的な価値が高いものである。さらには、カルシウム摂取による栄養補助の観点があるとともに、老人や子どもなどの骨刺さりのトラブル防止にも役立つ。
【0147】
また、本実施形態で用いられる魚類は、生のままでもよいし、前処理が施されたものであってもよい。本実施形態において「生の魚類」とは、未だ加熱処理されていない魚類を含み、例えば、加熱処理を経ないで冷蔵、冷凍、あるいはパーシャルフリージングされた状態の魚類も含む。なお、冷凍前の魚類、解凍した魚類は保存・保管の問題があるので、冷凍した魚類を、冷凍状態のまま、本実施形態の加熱釜50に投入して、冷却した魚類から、骨まで食べられる魚類にできることの技術的意義も大きいものである。
【0148】
さらに、本実施形態で用いられる魚類は、前処理が施された魚類とは、加熱処理を除き、生の魚類に施される種々の公知の処理が施された魚類である。すなわち、前処理は、生の魚類に施される各種調理方法または各種加工方法およびその一部を含む。例えば、油、エキス、スープ、塩、味噌、醤油等に漬ける含浸処理、乾燥・脱水処理、発酵処理、塩、コショウ、小麦粉、片栗粉、米粉、ゴマ、けし、青のり、他種々の食材よりなる粉、フレーク等の付着処理、他の食材等をフィリングとして付与する処理、表皮に焼き色や切れ目を付与する処理などを挙げることができる。また、これらのうち2種以上を組み合わせたものも含む。なお、本明細書において、加熱処理とは、熱によって魚類中のタンパク質を変質させる処理を意味する。
【0149】
また、上述した説明では魚について述べたが、肉(冷凍肉、乾燥肉、または、ハムなどの加工肉を含む)、野菜についても、湯気による加熱処理を行うことができる。そして、従来のボイラー蒸気を直接吹き付ける方式、または、熱水を高圧下で吹き付ける方式では、実行できなかった新たな加熱方式(飽和水蒸気による加熱処理)を実行することができ、新たな調理法、新たな料理、新たな保存食品を実現することができる。
【0150】
また、上述の実施形態では、液体25については特に説明していなかったが、液体25は、典型的には水であり、例えば、水道水、ミネラルウオーター、イオン交換水、蒸留水、純水を使用することができる。それに加えて、包装容器に包装されていない食品70の場合には、液体25に調味料を加えて、調味料入りの湯気によって、調味加工しながら加熱処理を行うことも可能である。
【0151】
さらに、湯気供給管12の一部に、湯気を加熱する加熱装置40を設けた構成にした場合(図9参照)には、湯気から過熱蒸気を生成することができる。加熱装置40を直接に複数連結した場合には、より高温の過熱蒸気を生成ることも可能である。
【0152】
ここで、熱交換器90で発生する湯気は飽和蒸気(飽和水蒸気)であるので、加熱釜50に導入される過熱蒸気は、高温でありながらも、水分を多く含む気体である。したがって、湯気(飽和蒸気)を加熱して生成された過熱蒸気で食品を加熱すると、食品から必要以上に水分が取り出されてしまってパサパサになることを抑制することができる。この点、湯気を加熱して高温にした過熱蒸気と、高温高圧のスチーム蒸気を加熱して高温にした過熱蒸気(乾き度が大きいスチーム蒸気から生成させた過熱蒸気)とは異なり、焼成された魚類加工品の性質(味、乾燥具合)も異なったものになる。
【0153】
さらに、過熱蒸気は、次のような利点を有している。まず、過熱蒸気の伝熱は、対流伝熱の他に、放射伝熱が加わるため、熱効率が非常に高いという特長を有している。魚や肉の焼き上がりは、直火・ガスと同様以上であり、さらに、水蒸気なので対流伝達も早く、空気に比べて約10倍以上も対流伝達が早い。また、過熱蒸気は低温の物質に触れると凝縮し、その時に物質に熱を与えて温度(芯温)を上げるという水蒸気本来の性質と、加熱空気のように物質を加熱する性質を持っているので、短時間で焼成ができる。加えて、製品の芯温を短時間で上昇させるので、被加熱物(魚類、肉類など)の表面と内部との焼きムラを低減させることができる。
【0154】
さらには、過熱蒸気中は無酸素状態(あるいは、大気圧の酸素濃度よりも低い状態)なので、油脂の酸化・ビタミンの破壊などを抑制することができ、製品の保存を向上させることもできる。また、食品の退色防止にも役に立つ。そして、水は蒸発する時に油分を抱え込む性質があり、この性質は、脱油効果として利用することができる。
【0155】
このような特性を有する過熱蒸気による調理は、食材の水分を取り過ぎず表面の硬化を防ぎ(例えば、歩留まり85%以上)、素材の旨味を引き出すことができる。そして、この過熱蒸気の焼成は、肉類・肉類加工品や魚類加工品の焼成において特に適している。具体的には、過熱蒸気の焼成は、肉類・肉類加工品や魚類加工品の美味しさをさらに増し、身質も柔らかく仕上げることができる。その理由としては、低酸素状態(加熱釜50内にろうそくの火を入れると火が消えるくらいに実質的に無酸素状態にすることも可能である)での焼成で肉類・肉類加工品や魚類の油脂成分が酸化しないので、油臭さがないことが挙げられる。また、魚の温度の上昇温度が早いために良好な焼成が実現されているとともに、食品に調味料が含まれている場合にはその調味料が気体蒸気の粒子と絡んで魚類の身に浸透しやすく旨味が増すことも挙げられる。さらに、加熱釜50の内部は、過熱蒸気の存在に起因して遠赤外線が発生しており、それによっても加熱の効果を高めている。加えて、過熱蒸気の温度が300℃〜350℃またはそれ以上の場合、魚類の油脂の沸点200℃を遙かにオーバーする温度で加熱することができ、そのことも美味しさの原因の一つとなっている。なお、肉類および肉類加工品としては、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、ハム、ベーコンなどを挙げることができる。また、肉類・魚類・それらの加工品に限らず、野菜や、お茶またはコーヒー豆の焙煎にも効果的に用いることができる。
【0156】
また、本実施形態の加熱釜50において、複数の加熱装置(電熱ヒータ)40を直列に繋いで、例えば300℃〜400℃またはそれ以上(例えば、550℃)の過熱蒸気を生成させて導入する場合でも、配管部分では実質的に大気圧の内部圧力で動作を行わせることができる。具体的には、せいぜい0.12MPaAまたはそれ以下の内部圧力で動作をしている。この過熱蒸気を用いる場合は、加熱釜50の内部圧力はそれほど上げずに、加熱釜50の下部から蒸気を排気しながら、加熱釜50の内部圧力を微圧(0.13MPaA〜0.15MPaA)に留めて加熱処理を行うことが好ましい。なお、ボイラーを用いて、300℃〜400℃またはそれ以上の高温加熱を行おうとすれば、当然、数気圧以上の動作圧力が要求されることになる。
【0157】
加熱装置40が実質的に1気圧での動作を行うことができるのは、微圧蒸気である湯気を加熱して、高温の過熱蒸気を発生することができるからによる。技術常識に従えば、高温の気体を発生させるには高圧が必須となるが、例えば高温高圧のボイラー蒸気を加熱する場合、ボイラー蒸気の流速が速いために実際には上手く加熱することが難しいか、加熱することができるとしても膨大なエネルギーを要し非効率となる。一方、本実施形態の構成では、微圧蒸気である湯気は配管経路をゆっくり漂うので、その間、電熱ヒータで加熱することができ、実質的に大気圧で高温(例えば300℃以上)の過熱蒸気を生成させることができる。なお、レトルト殺菌装置100において加圧状態の場合には、その加圧状態での過熱蒸気が生じる。
【0158】
なお、加熱装置40で過熱蒸気を生成させる場合には、過熱蒸気の温度は、180℃以上であることが好ましい。これは、湯気(飽和蒸気)を加熱してなる過熱蒸気は、180℃前後でその性質が変化し、食材などの加熱処理に適したものになるからである。さらに説明すると、飽和蒸気を加熱した過熱蒸気は、非常に軽く、囲われた空間内の隅々まで充満しやすく、その体積膨張率が高く、含有酸素量も少なく、熱伝達速度も速くなるという特長を有しており、このような過熱蒸気を用いて食材を加熱した場合には、食材の表層部を焦がすことができ、外層部に浸透して、食材の内部温度を上げ、表層部の水分のみを最も多く蒸発させることができるので、表面がこんがりとして内部がジューシーな焼き上がりを実現することができる。過熱蒸気は、わずかな熱量の変化で急速に温度変化するという性質を持っているので、120℃程度の比較的不安定な過熱蒸気よりも、180℃以上の過熱蒸気を発生させて、加熱釜50の内部に導入することが、食品の加熱処理においては好ましい。
【0159】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。上述した各図面の装置における特徴は、適宜好適な組み合わせを行うことができ、各図に示された構造の装置だけを開示するものではない。例えば、図14に示した装置における上部に配置された湯気噴出部52を他の図面の装置に適用することができる。また、図14に示した装置に空気抜け弁60などを付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明によれば、エネルギー効率が良く、及び/又は、加熱ムラを抑制することができるレトルト殺菌装置、加熱装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0161】
10 湯気発生装置
12 湯気供給管
15 湯気
18 高温熱水
20 液体容器
21 液体ポット本体部
21a 上部開口部(開口部)
22 蓋部
23 水位調整部材
25 液体
26 配管(水道管)
28 連結配管
29 上蓋
30 連通管
31a、31b、31c 開閉弁
32a 第1経路
32b 第2経路
33 開閉バルブ
34 ドレイン配管
35 循環ポンプ
40 加熱装置(電熱ヒータ)
50 加熱釜
51 釜本体部
51a 固定部材
52 湯気噴出部(スパージ管)
55 加熱釜の内部
57 扉
58 ヒンジ部
59 レバー
60 空気抜け弁
61 安全弁
62 真空調整弁
63(63a〜63d) センサ
65 支持棒
66 空気導入配管
67 土台部
69 排出配管
70 被加熱物(レトルト食品)
72 容器(トレー)
75 載置板
82 ボイラー配管
84 排気スチーム配管
90 熱交換器
91 液体経路
92 蒸気経路
93 外殻体
94 ボイラー
100 レトルト殺菌装置(加熱装置)
120 レール
130 車輪
140 可動台
150 レトルト食品
160 トレー
170 モータ
180 クランク機構
185 駆動軸
190 軸封機構
200 レトルト殺菌装置
1000 レトルト殺菌装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レトルト殺菌装置であって、
レトルト食品が配置される加熱釜と、
湯気を発生させる湯気発生装置と
を備え、
前記加熱釜は、前記湯気発生装置に接続されており、
前記湯気発生装置は、互いに独立する液体経路および蒸気経路を有し、前記液体経路を流動する液体と前記蒸気経路を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われる熱交換器から構成されており、
前記熱交換器の前記蒸気経路には、ボイラーからの前記加熱用蒸気が導入され、
前記熱交換器の前記液体経路の上端は、湯気供給管を通じて、前記加熱釜の内部に配置された湯気噴出部に接続されており、
前記熱交換器には、前記熱交換器に供給する前記液体を貯留する液体容器が接続されており、
前記熱交換器の前記液体経路の下端は、連通管を通して、前記液体容器に接続され、
前記液体容器は、前記加熱釜に連結されている、レトルト殺菌装置。
【請求項2】
前記液体容器の内部には、前記液体が蓄えられており、
前記液体容器における前記液体の水位と、前記熱交換器における前記液体経路の前記液体の水位とは互いに一致している、請求項1に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項3】
前記液体容器には、前記液体の水位を調整する水位調整部材が設けられている、請求項1または2に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項4】
前記液体容器は、連結配管を通じて前記加熱釜に接続されている、請求項1から3の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項5】
前記液体容器は、上部に開口部を有する液体ポット本体部と、前記液体ポット本体部の前記開口部を密閉する蓋部とから構成され、
前記液体ポット本体部は、耐圧容器であり、
前記液体ポット本体部の底部には、前記連通管が接続されており、
前記蓋部には、前記連結配管が接続されている、請求項4に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項6】
前記液体容器は、上部開口部を有する液体ポット本体部から構成されており、
前記液体ポット本体部の上部開口部が前記加熱釜の内部に位置するように、前記液体ポット本体部は前記加熱釜に取り付けられている、請求項1から3の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項7】
前記液体ポット本体部の底面には、前記連通管が接続されている、請求項6に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項8】
前記液体ポット本体部の上部開口部には、前記上部開口部を密閉しない形態の上蓋が配置されている、請求項6または7に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項9】
前記加熱釜は、円筒形状を有しており、
前記加熱釜には、前記レトルト食品を収納する容器を載置する載置板が配置されている、請求項1から8の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項10】
前記湯気噴出部は、前記加熱釜の内部において水平方向に延びるように配置されたスパージ管である、請求項1から9の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項11】
前記湯気噴出部は、前記加熱釜の内部において複数配置されている、請求項1から10の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項12】
前記湯気噴出部は、前記加熱釜の内部の下部領域に配置されている、請求項1から11の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項13】
前記加熱釜の内部の前記下部領域において、前記湯気噴出部は、少なくとも2つ配置されており、かつ、
前記加熱釜の内部の前記下部領域よりも上方において、前記湯気噴出部は、少なくとも2つ配置されている、請求項12に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項14】
前記加熱釜の下部には、前記加熱釜の内部の気体を外部に排出する排出配管が接続されている、請求項1から13のレトルト殺菌装置。
【請求項15】
前記排出配管には、前記排出配管の開閉を変動させる変動バルブが接続されており、
前記排出配管は、前記加熱釜の底部におけるドリップ水を排水可能である、請求項14に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項16】
前記加熱釜には、前記加熱釜の内部の空気を外部に出す空気抜け弁、および、内部圧力を調整する圧力逃がし弁としての比例式弁の少なくとも一方が設けられている、請求項1から15の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項17】
前記空気抜け弁は、前記加熱釜の最頂部に取り付けられている、請求項16に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項18】
前記湯気噴出部に接続される前記湯気供給管の一部において、前記湯気を加熱する加熱装置が設けられている、請求項1から17の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項19】
前記加熱装置は、電熱ヒータである、請求項18に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項20】
前記レトルト殺菌装置は、前記熱交換器と前記加熱釜と前記液体容器との間で前記湯気を循環させることによって前記加熱釜の内部が加圧状態になる加圧加熱装置である、請求項1から19の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項21】
前記湯気発生装置で発生した前記湯気は、0.12MPaA以下の微圧力を有する飽和水蒸気である、請求項1から20の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項22】
前記湯気噴出部から冷水が噴射するように、前記湯気供給管の一部に冷水供給配管が接続されている、請求項1から21の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項23】
前記熱交換器と前記液体容器とを連通させる前記連通管は、第1経路および第2経路に分岐した部分を有している、請求項1から22の何れか1つに記載のレトルト殺菌装置。
【請求項24】
前記第2経路には、前記液体を循環させる循環ポンプが配置されている、請求項23に記載のレトルト殺菌装置。
【請求項25】
被加熱物が内部に配置される加熱釜と、
前記加熱釜に接続された熱交換器と
を備えた加熱装置であって、
前記熱交換器は、互いに独立する液体経路および蒸気経路を有し、前記液体経路を流動する液体と前記蒸気経路を流動する加熱用蒸気との間で熱交換が行われ、
前記熱交換器の前記液体経路の上端は、第1配管を通じて、前記加熱釜の内部に配置された噴出部に接続されており、
前記熱交換器には、前記熱交換器に供給する前記液体を貯留する液体容器が接続されており、
前記熱交換器の前記液体経路の下端は、連通管を通して、前記液体容器に接続され、
前記液体容器は、前記加熱釜に連結されている、加熱装置。
【請求項26】
前記熱交換器における前記熱交換によって、前記熱交換器の前記液体経路の上端から湯気を発生させ、
前記加熱釜には、前記加熱釜の内部への前記湯気の供給時において、前記加熱釜の内部の空気を外部に出す空気抜け弁が設けられている、請求項25に記載の加熱装置。
【請求項27】
前記加熱釜の下部には、前記加熱釜の内部の気体を外部に排出する排出配管が接続されている、請求項25または26に記載の加熱装置。
【請求項28】
前記液体容器の内部には、前記液体が蓄えられており、
前記液体容器における前記液体の水位と、前記熱交換器における前記液体経路の前記液体の水位とは互いに一致している、請求項25から27の何れか1つに記載の加熱装置。
【請求項29】
前記液体容器は、上部開口部を有する液体ポット本体部から構成されており、
前記液体ポット本体部の上部開口部が前記加熱釜の内部に位置するように、前記液体ポット本体部は前記加熱釜に取り付けられている、請求項25から28の何れか1つに記載の加熱装置。
【請求項30】
前記熱交換器の前記液体経路の前記液体は、前記液体経路の上端から、第1配管を通じて、前記加熱釜の内部に導入され、
前記加熱釜の内部の液体は、前記液体ポット本体部および前記連通管を通って、前記液体経路に導入される、請求項29に記載の加熱装置。
【請求項31】
前記連通管には、前記液体を循環させる循環ポンプが接続されている、請求項30に記載の加熱装置。
【請求項32】
前記被加熱物は、食品である、請求項25から31の何れか1つに記載の加熱装置。
【請求項33】
加圧状態で加熱殺菌する方法であって、
加熱釜の内部に、被加熱物を配置する工程と、
前記加熱釜の内部に湯気を導入する工程と
を含み、
前記湯気は、熱交換器によって生成され、
前記熱交換器と、前記熱交換器に液体を供給する液体容器と、前記加熱釜とが、密閉空間を作るように接続されており、
前記湯気を導入する工程を連続して実行することにより、前記加熱釜の内部を加圧状態にする、加熱殺菌方法。
【請求項34】
前記熱交換器と、前記液体容器と、前記加熱釜とは循環するように接続されている、請求項33に記載の加熱殺菌方法。
【請求項35】
前記湯気を導入する工程においては、前記湯気は、前記加熱釜の内部における中央部よりも下の領域(当該中央部を含む)に導入され、且つ、前記加熱釜の上部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する、請求項33または34に記載の加熱殺菌方法。
【請求項36】
前記湯気を導入する工程においては、前記加熱釜の下部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する、請求項33または34に記載の加熱殺菌方法。
【請求項37】
前記被加熱物は、レトルトパウチ包装の食品、缶詰および瓶詰めから選択される少なくとも1つである、請求項33から36の何れか1つに記載の加熱殺菌方法。
【請求項38】
被加熱物を加熱処理する方法であって、
加熱釜の内部に、被加熱物を配置する工程と、
前記加熱釜の内部に湯気を導入する工程と
を含み、
前記湯気は、熱交換器によって生成され、
前記熱交換器と、前記熱交換器に液体を供給する液体容器と、前記加熱釜とは循環するように接続されており、
前記湯気を導入する工程を連続して実行することにより、前記加熱釜の内部を加熱する、加熱処理方法。
【請求項39】
前記湯気を導入する工程においては、前記湯気を導入するとともに、前記加熱釜の上部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する、請求項38に記載の加熱処理方法。
【請求項40】
前記湯気を導入する工程においては、前記湯気を導入するとともに、前記加熱釜の下部から前記加熱釜の内部における空気を抜くことを実行する、請求項38に記載の加熱処理方法。
【請求項41】
前記加熱釜の内部に湯気を導入する工程は、前記熱交換器で生成された湯気を加熱することによって発生した過熱蒸気の形態で導入することを含む、請求項38または39に記載の加熱処理方法。
【請求項42】
前記被加熱物は、レトルト食品、魚、肉、野菜、根菜、果物、炊飯、パン、茶、コーヒーおよび佃煮からなる群から選択された少なくとも1つである、請求項38から41の何れか1つに記載の加熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−74879(P2013−74879A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133245(P2012−133245)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【特許番号】特許第5174263号(P5174263)
【特許公報発行日】平成25年4月3日(2013.4.3)
【出願人】(399054572)友田セーリング株式会社 (3)
【出願人】(505227157)友田水産株式会社 (3)
【出願人】(505227179)株式会社 豊祥 (3)
【出願人】(505227180)和汽産業有限会社 (3)
【Fターム(参考)】