説明

レトルト食品容器及びその製造方法

【課題】 ボイルレトルト処理を行っても容器口縁のフランジ部にカビやしみを生じることがなく、電子レンジ等で再加熱した際にも容器外面に熱が伝わりにくいレトルト食品容器、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 食品容器1は表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シート100を熱圧プレス金型40で熱圧プレス成型することにより形成される。食品容器1に食品1を入れた後、蓋体10で密封し、ボイルレトルト処理で殺菌を行う。食品容器1は口縁にフランジ部2を備え、このフランジ部2の周縁は圧縮されて不浸透領域3となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレトルト食品容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの加工食品が容器封入後に殺菌のためレトルト処理して販売されており、当該容器としてはパウチ形式のものや、プラスチック成型容器にシート蓋を熱接着したものが一般的である。しかしながらプラスチック成型容器にシート蓋を熱接着したものでは断熱性が十分でないため、電子レンジ等で再加熱を行うような用途では容器外面に熱が伝わるという問題があった。この問題を解決したものとして耐熱性の高いポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱圧プレスしてレトルト用食品容器を形成する技術があり、その例を特許文献1に見ることができる。
【特許文献1】特開平11−245928号公報(第3頁−第5頁、図1−図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
食品を入れて密封した食品容器をレトルト処理するにあたっては、レトルト釜の中に食品容器を入れて加熱・加圧し、沸点以上の熱水で加熱処理するボイルレトルト方式を採用することが多い。この場合、食品容器が樹脂発泡シートを素材とするものであると、次のような問題が生じることがあった。すなわち、この種の食品容器は、通常、口縁にフランジ部を形成する。そのフランジ部の端の切断面には発泡層が露出している。この食品容器を熱水に浸漬すると、発泡層の露出面から泡の内部へと水が浸透する。ボイルレトルト処理の場合、熱と圧力で泡の壁が破れ、独立気泡であったものが連通してしまうという現象も生じ、水が発泡層の奥深くまで浸透する。一旦浸透した水はレトルト処理終了後もフランジ部に留まり、カビ発生の原因となったり、しみをつくったりする。このようなカビやしみは商品の外観を損ない、場合によっては購買者からのクレームを招きかねない。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ボイルレトルト処理を行っても容器口縁のフランジ部に水分の浸透によるカビやしみを生じることがなく、電子レンジ等で再加熱した時にも容器外面に熱が伝わりにくいレトルト食品容器、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するため、本発明では、表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱圧プレスすることにより形成される、口縁にフランジ部を備えたレトルト食品容器において、前記フランジ部の周縁に、圧縮により形成された不浸透領域を有することを特徴としている。
【0006】
この構成によると、食品容器の口縁のフランジ部の周縁に不浸透領域が設けられているので、熱水がフランジ部の切断面から浸透しない。そのため、万一熱水が汚れている場合でも、その汚れた水がフランジ部に浸透してカビ発生の原因となったりしみをつくったりするようなことがなく、カビやしみによって商品の外観が損なわれるという事態を招かずに済む。
【0007】
(2)また本発明では、表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱圧プレスすることにより、口縁にフランジ部を備えたレトルト食品容器を形成するに際し、前記フランジ部の周縁を圧縮して不浸透領域を形成することを特徴としている。
【0008】
この構成によると、食品容器の口縁のフランジ部の周縁を圧縮して不浸透領域を設けることにより、熱水がフランジ部の切断面から浸透してカビやしみを生じることのないレトルト食品容器を製造することができる。また、いずれかの工程で圧縮を行うだけで事足り、容易に実施できる。
【0009】
(3)また本発明では、前記のように構成されたレトルト食品容器製造方法において、前記不浸透領域の形成は、容器形状を形成するための熱圧プレスにより遂行されることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、食品容器を形成するための1度の熱圧プレスによって不浸透領域も一緒に形成でき、作業能率が高い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱圧プレスすることにより形成される、口縁にフランジ部を備えたレトルト食品容器において、フランジ部の周縁に不浸透領域を設けたので、熱水がフランジ部の端面から浸透してカビ発生の原因となったりしみをつくったりするようなことがない。このため、カビやしみによって商品の外観が損なわれることを懸念することなく、安心してボイルレトルト処理を遂行することができる。また、不浸透領域は熱圧プレスにより容器形状を形成するのと同時に形成でき、作業能率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るレトルト食品容器及びその製造方法を図1−図7に基づき説明する。図1は蓋をする前の食品容器の斜視図、図2は蓋をした状態の食品容器の断面図、図3は食品容器の部分拡大断面図、図4は食品容器の素材となる樹脂発泡シートの構成を示す断面図、図5は樹脂発泡シートの他の構成を示す断面図、図6は食品容器製造工程の説明図、図7は熱圧プレス金型の構成を示す断面図である。
【0013】
図1に示す食品容器1は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱圧プレスして平面形状円形のカップ形状としたものである。ポリプロピレン系樹脂発泡シートの表面には、液体や気体の透過を防ぐバリア層を形成する。
【0014】
図4にはバリア層を1層としたポリプロピレン系樹脂発泡シートの構成例が示されている。ここでは、厚さ0.6〜2.0mmのポリプロピレン系樹脂発泡シート100の表面に、厚さ40〜150μのPP/EVOH/PPフィルムからなるバリア層101が形成されている。「PP/EVOH/PP」の「PP」はポリプロピレンであり、「EVOH」はエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、商品名「エバール(EVAL)」として知られる樹脂である。すなわちPP/EVOH/PPフィルムはエバールを両側からポリプロピレンで挟んだ3層構成のフィルムである。
【0015】
図5にはバリア層を2層としたポリプロピレン系樹脂発泡シートの構成例が示されている。ここでは、厚さ0.6〜2.0mmのポリプロピレン系樹脂発泡シート100の表面に、厚さ15〜50μのPPフィルムからなる接着層102と、厚さ40〜150μのPP/EVOH/PPフィルムからなるバリア層101が形成されている。
【0016】
なお水蒸気に対するバリアが求められるだけならば、PP/EVOH/PPフィルムを用いるまでもなく、単なるPPフィルムで十分目的を達成できる。
【0017】
食品容器1の口縁にはフランジ部2が形成されている。食品容器1の中に食品を入れた後、図2に示すようにフランジ部2の上に蓋体10を載せ、フランジ部2と蓋体10を熱圧着や超音波溶着などの手段で溶着して食品容器1を密封する。
【0018】
蓋体10としては、アルミニウムを蒸着したPETフィルム、あるいは酸化珪素を蒸着したPETフィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムとアルミニウムなどの金属箔を積層し、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を高めたものを用いる。例えば、酸化珪素を蒸着した厚さ12μのポリエステルフィルムと、厚さ15μのナイロンフィルムと、厚さ60μの無延伸ポリプロピレンフィルムとを積層したものなどを用いることができる。
【0019】
食品を入れ、蓋体10で密封した食品容器1はボイルレトルトによる殺菌処理を受ける。通常の発泡容器であれば、フランジ部2の切断面から熱水が浸透してカビ発生の原因となったり、しみをつくったりすることを懸念しなければならないのであるが、本発明ではフランジ部2の周縁を圧縮して不浸透領域3を形成することによりこの問題に対処する。
【0020】
図3に見られるように、不浸透領域3では発泡層がつぶされており、泡の中に水が入り込む余地がなくなっている。また、不浸透領域3はフランジ部2の切断面に強固な壁を形成しており、ボイルレトルト処理時に熱や圧力がかかってもこの壁が破壊され、内部に水が浸透することがない。不浸透領域3の圧縮率と水平方向の幅は、ボイルレトルト処理の熱と圧力に持ちこたえることを旨として、実験により決定する。
【0021】
実験では、2.5倍発泡のポリプロピレン樹脂発泡シートの端部を約55%の厚さにまでつぶし、これを120℃の熱水で30分間ボイルレトルト処理したが、端面からの吸水は認められなかった。
【0022】
食品容器1は図6に示すような製造ラインにより製造される。原反ロール110から引き出された表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シート100はオーブン30を通り、予備加熱される。予備加熱された表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シート100は、雄型41と雌型42からなる熱圧プレス金型40で熱圧プレスされ、食品容器1の形状が形成される。熱圧プレス金型40を出たポリプロピレン系樹脂発泡シート100は雄型51と雌型52からなるトリミング金型50に送られ、ここで食品容器1の部分がシートから打ち抜かれる。
【0023】
図7に熱圧プレス金型40の構造を示す。雄型41は、食品容器1のフランジ部2を形成する部分の端に突部43を備えており、この突部43と雌型42との間でポリプロピレン系樹脂発泡シート100を圧縮し、不浸透領域3を形成する。他方雌型42にはキャビティの底に真空通路43が連通しており、真空圧でポリプロピレン系樹脂発泡シート100をキャビティに引き込む。これにより、ポリプロピレン系樹脂発泡シート100は設計通りの容器形状に精度良く仕上げられる。なお雄型41、雌型42ともに温度管理用のヒータを備えるが、これは図示しない。
【0024】
このように、食品容器1の容器形状を形成するための熱圧プレス工程において、不浸透領域3まで一挙に形成してしまうので、不浸透領域を形成するための専用工程を置く必要がなく、作業能率が高い。
【0025】
食品容器1の形状は平面形状円形に限定されない。正方形、矩形、それ以外の多角形、あるいは楕円形などであってもよい。また、深さのあるカップ形状であっても、浅いトレイ形状であってもよい。
【0026】
以上本発明の実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨から逸脱しない範囲で種々の改変を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱圧プレスして、口縁にフランジ部を備えたレトルト食品容器を形成するにあたり利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】蓋をする前の食品容器の斜視図
【図2】蓋をした状態の食品容器の断面図
【図3】食品容器の部分拡大断面図
【図4】食品容器の素材となる樹脂発泡シートの構成を示す断面図
【図5】樹脂発泡シートの他の構成を示す断面図
【図6】食品容器製造工程の説明図
【図7】熱圧プレス金型の構成を示す断面図
【符号の説明】
【0029】
1 食品容器
2 フランジ部
3 不浸透領域
10 蓋体
30 オーブン
40 熱圧プレス金型
50 トリミング金型
100 表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱圧プレスすることにより形成される、口縁にフランジ部を備えたレトルト食品容器において、
前記フランジ部の周縁に、圧縮により形成された不浸透領域を有することを特徴とするレトルト食品容器。
【請求項2】
表面にバリア層を備えたポリプロピレン系樹脂発泡シートを熱圧プレスすることにより、口縁にフランジ部を備えたレトルト食品容器を形成するに際し、前記フランジ部の周縁を圧縮して不浸透領域を形成することを特徴とするレトルト食品容器の製造方法。
【請求項3】
前記不浸透領域の形成は、容器形状を形成するための熱圧プレスにより遂行されることを特徴とする請求項2に記載のレトルト食品容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−76643(P2006−76643A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265316(P2004−265316)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】