説明

レドックスフロー電池用隔膜及びその製造方法

【課題】 乾燥保存ができて、しかも優れた電池性能と耐薬品性と耐久性を有するレドックスフロー電池用隔膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 シートの表裏に連通する多数の空隙を有するシート基材の前記空隙および/またはシート基材面に、イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体がマトリクッス中に分散したイオン交換膜を形成してなる。無機多孔質粉粒状体にイオン交換樹脂を付着させる工程と、前記イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質紛粒状体とマトリクッスと分散媒を含む混合液を調整する工程と、シートの表裏を連通する多数の空隙を有するシート基材に前記イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体を充填する工程と、前記無機多孔質粉粒状体を充填したシート基材に前記混合液を含浸させる工程と、前記混合液を含浸させたシート基材を加熱乾燥して前記シート基材にイオン交換膜を形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥保存ができて取り扱いが容易であり、しかも優れた電池性能と耐久性を有するレドックスフロー電池用隔膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レドックスフロー電池に用いられる隔膜は、セル容器内で陰極液と陽極液を分離する膜として、陰極液と陽極液がこの隔膜を介して接しており、充放電時にプロトン(水素イオンH)がこの隔膜を透過して移動するが、陰極液と陽極液の金属イオンは透過しない性質を有するイオン交換膜が用いられている。
【0003】
一般的なイオン交換膜としては、例えば、溶融法、湿式法により膜面方向及び膜の表裏に連通した孔を有する多孔質基材膜であって全周辺端部の孔が閉塞された電解質含浸膜について特許文献1に開示されており、芳香族ポリアミドを含む多孔質膜としてコロナ放電によって穿孔する例と、湿式製膜法で多孔質膜を製造する方法と、得られた多孔質膜を用いた電池の放電容量について特許文献2に開示されており、また、延伸法や造孔法により多孔質構造を形成したポリテトラフルオロエチレン多孔質膜や不織布に陰イオン交換基を有する架橋重合体を複合化した電池用隔膜についての発明が特許文献3に開示されている。しかし、前記の例は、全て溶融法、湿式法、コロナ放電、延伸法等で穿孔した多孔質フィルム等にイオン交換樹脂を付着させるものであり、本願発明のように無機多孔質粉粒状体にイオン交換樹脂を付着させ、このイオン交換樹脂を付着した無機多孔質粉粒状体を漆類等のマトリクッス中に分散したイオン交換膜をシート基材に形成する隔膜については見出されていない。
【0004】
従来の電池用隔膜には、湿潤保存タイプと乾燥保存タイプの二種類のタイプがあり、例えば、ナフィオン(登録商標)に代表される、ある種のパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜のような乾燥保存タイプ以外は、乾燥すると膜の劣化が著しいことから、例えば、3%食塩溶液を満たした袋に封入して冷暗所に保管することを条件としているものが多い。前記に挙げた例は、何れも多孔性フィルムを基材とし、この多孔性フィルム基材にイオン交換樹脂を付着させたものであり、基材である多孔性フィルムとイオン交換樹脂との結合が比較的弱いために繰り返し使用により又は空気と接触することによって劣化して性能変化する恐れがあり、或いは膜の膨潤収縮による形状変化が起こる恐れがあることから、常時乾燥させず湿った状態で保存し、膜の取り付けも作業用プールのような設備の中で行い、取り付け後も湿潤環境下に置かなければならないと言う取り扱い上の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−86909号公報
【特許文献2】特開2008−106261号公報
【特許文献3】特開2000−235849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在汎用されている電池用隔膜の多くは、前述したとおりプラスチックフィルムまたはエンジニアリングプラスチックフィルムに細孔を設けた多孔性フィルムにイオン交換樹脂を付着させたイオン交換膜であり、これらの多孔性フィルムの細孔は、ポアサイズ径が10〜10,000nmであり、イオン交換樹脂を付着する担持容量が小さい。それ故にプロトン透過性に劣り充放電効率が低く、その上、極液の漏液を生じ易いと言う課題があった。そこで、本願発明者は、電池用隔膜について鋭意研究している課程において、前記多孔性フィルムに比較してポアサイズ径が小さくバラツキが狭い、例えば、ポアサイズ径が2〜50nmの珪藻土等の無機多孔質粉粒状体にイオン交換樹脂を付着させ、このイオン交換樹脂を付着した無機多孔質粉粒状体を漆類等のマトリクッス中に分散させることにより、繰り返し充放電してもイオン交換樹脂が離脱し難く且つプロトンの透過量が増大し、極液の漏液を阻止して安定した隔膜が得られるとの知見を得て本発明に至ったものであり、本願発明の主たる目的は、プロトン透過性に優れていて極液の漏液を防止し、且つ、乾燥保存ができるので取り扱いが容易で、優れた電池性能と耐薬品性と耐久性を有するレドックスフロー電池用隔膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明は、シートの表裏に連通する多数の空隙を有するシート基材の前記空隙および/またはシート基材面に、イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体がマトリクッス中に分散したイオン交換膜を形成してなることを特徴とするレドックスフロー電池用隔膜とする(請求項1)。
【0008】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体がマトリクッス中に分散したイオン交換膜からなるレドックスフロー電池用隔膜とする(請求項2)。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記イオン交換樹脂は、ポリスルホン系のイオン交換樹脂であることを特徴とする前記のレドックスフロー電池用隔膜とすることが好ましい(請求項3)。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、
前記イオン交換樹脂は、
【化1】

(式中、mは繰り返し単位を表す0または1以上の整数、nは1以上の整数とする。)
(式中、Xはイオン交換基を有するフェノール・その塩またはイオン交換基を有する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン・その塩、Rはアルキル基とする。)
で表される架橋が導入された重合体からなることを特徴とする前記のレドックスフロー電池用隔膜とすることが好ましい(請求項4)。
【0011】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記マトリクッスを構成する樹脂は、漆類、その他の水酸基を有する合成樹脂あるいは天然由来の樹脂およびこれらの樹脂とイオン交換樹脂との組み合わせの中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする前記のレドックスフロー電池用隔膜とすることが好ましい(請求項5)。
【0012】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記無機多孔質粉粒状体は、珪藻土、セピオライト、ゼオライト、パーライト、ケイ酸カルシウム、カオリン、アタパルジャイト、バーミキュライト、クリストバライトおよびその他のシリカ多孔質体の中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする前記のレドックスフロー電池用隔膜とすることが好ましい(請求項6)。
【0013】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、無機多孔質粉粒状体にイオン交換樹脂を付着させる工程と、前記イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質紛粒状体とマトリクッスと分散媒を含む混合液を調整する工程と、シートの表裏に連通する多数の空隙を有するシート基材に前記イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体を充填する工程と、前記無機多孔質粉粒状体を充填したシート基材に前記混合液を含浸させる工程と、前記混合液を含浸させたシート基材を加熱乾燥して前記シート基材にイオン交換膜を形成する工程とを備えることを特徴とするレドックスフロー電池用隔膜の製造方法とする(請求項7)。
【0014】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、無機多孔質粉粒状体にイオン交換樹脂を付着させる工程と、前記イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質紛粒状体とマトリクッスと分散媒とを含む混合液を調整する工程と、前記混合液を面状化した後、加熱乾燥してイオン交換膜を形成するする工程とを備えることを特徴とするレドックスフロー電池用隔膜の製造方法とする(請求項8)。
【0015】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記イオン交換樹脂は、ポリスルホン系のイオン交換樹脂であることを特徴とする前記のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法とすることが好ましい(請求項9)。
【0016】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、
前記イオン交換樹脂は、
【化2】

(式中、mは繰り返し単位を表す0または1以上の整数、nは1以上の整数とする。)
(式中、Xはイオン交換基を有するフェノール・その塩またはイオン交換基を有する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン・その塩、Rはアルキル基とする。)
で表される芳香族ポリスルホン系重合体であって架橋導入性能を有する重合体およびそのプレポリマーからなることを特徴とする請求項7〜9記載のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法とすることが好ましい(請求項10)。
【0017】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記マトリクッスを構成する樹脂は、漆類、その他の水酸基を有する合成樹脂あるいは天然由来の樹脂およびこれらの樹脂とイオン交換樹脂との組み合わせの中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする前記の何れかに記載のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法とすることが好ましい(請求項11)。
【0018】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記無機多孔質粉粒状体は、珪藻土、セピオライト、ゼオライト、パーライト、ケイ酸カルシウム、カオリン、アタパルジャイト、バーミキュライト、クリストバライト及びその他のシリカ多孔質体の中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする前記のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法とすることが好ましい(請求項12)。
【発明の効果】
【0019】
本願発明に係るレドックスフロー電池用隔膜は、前記のように乾燥保存できることから、隔膜をセル容器に取り付けるときに、水中で作業することなく、乾燥した空間域で作業することができるので、将来的にはロボットによる自動組み立てが可能であり、取り付け作業が極めて容易にでき、作業用プールのような設備も必要なく経済的効果を奏する。前記の取り扱い上の効果に加えて、メソポア珪藻土やセピオライトのようにポアサイズ径が数nmの細孔を有する無機多孔質粉粒状体を用いた場合は、プロトンの透過性が向上し極液の漏液性が低減する効果を奏する。更に、燃料電池等への応用も可能と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】性能試験用レドックスフロー電池に用いるセルの説明図である。
【図2】性能試験用レドックスフロー電池を示す説明図である。
【図3】実施例1に係るレドックスフロー電池用隔膜の製造工程図である。
【図4】実施例2に係るレドックスフロー電池用隔膜の製造工程図である。
【図5】実施例3に係るレドックスフロー電池用隔膜の製造工程図である。
【図6】実施例4に係るレドックスフロー電池用隔膜の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と称する)について、以下に詳細に説明する。しかし、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではない。本発明の実施の形態に係るレドックスフロー電池用隔膜は、シートの表裏に連通する多数の空隙を有するシート基材の前記空隙および/またはシート基材面に、イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体がマトリクッス中に分散したイオン交換膜を形成してなることを特徴とする。
【0022】
本実施の形態に用いるシート基材は、少なくともシートの表裏あるいはシート面方向に連通する多数の空隙を有し、該空隙に無機多孔質粉粒状体を保持可能であって、且つ、極液に対する耐酸性と強度を有する限り特に限定されないが、基材の形状としては、織編布、不織布、ネット状物あるいは多孔質シートなどのイオン交換膜の基材として公知のものが広く用いられる。例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維、その他の合成繊維等のステープル条、または麻、パルプ等の天然繊維またはこれら短繊維条の組み合わせと珪藻土等の無機多孔質粉粒状体と必要に応じてバインダーを添加して乾式法あるいは湿式法にてシート状に形成したものが挙げられる。該シート基材の配合比率は特に限定するものではないが、例えば、無機多孔質粉粒状体が50〜70質量部、繊維状物が30〜50質量部、必要に応じてバインダーを1〜7質量部添加したものが好ましい。
【0023】
無機多孔質粉粒状体としてはイオン交換樹脂が付着する微細孔を有するものが好ましく、珪藻土、セピオライト、ゼオライト、パーライト、ケイ酸カルシウム、カオリン、アタパルジャイト、バーミキュライト、クリストバライト及びその他のシリカ等の多孔質体の粉粒状体が好ましい。特に珪藻土とセピオライトが特に好ましい。その他、天然ないし人口のシリカ多孔質体、例えば、界面活性剤のミセルを鋳造型として合成されるポアサイズ径が2〜50nmからなるハニカム状の均一なメソポアを有するシリカ多孔質体TMPS(登録商標)等が挙げられる。
【0024】
珪藻土は二酸化ケイ素(シリカSiO)が主成分であって耐酸性が強く吸放湿性に富み、特にポアサイズが2〜50nmのメソポア珪藻土は比表面積が100m/gと一般の珪藻土の約4倍あり、微細孔容積は約5倍あって微細孔内にイオン交換樹脂を保持する容量が大きいことからレドックスフロー電池用隔膜としてより好ましい。また、焼成メソポア珪藻土は微細孔中に詰まっている有機質夾雑物又は可燃物夾雑物が消失することにより微細孔内にイオン交換樹脂をより多く取り込んで保持できるのでプロトン伝導性が向上する。
【0025】
セピオライトは含水マグネシウムケイ酸塩を主成分とし、酸化マグネシウムと酸化アルミニウム等を含み、ポアサイズ径が1〜20nm、比表面積が230〜300m/gと大きく且つ粒子表面に開孔している空隙が粒子内部で網目状に連結しているので、イオン交換樹脂を保持し易い。セピオライトはシラノール基を有し水分や有機物と水素結合による吸着性を有するとともに共有結合により水や溶媒の存在下でも膨張し難いのでイオン交換樹脂の保持性に優れる。
【0026】
前記シート基材に含まれる無機多孔質粉粒状体に付着させるイオン交換樹脂としては、公知のイオン交換基を有する重縮合物を広く用いることができる。例えば、マイナス電荷のイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基等があり、プラス電荷のイオン交換基としては、ピリジニウム塩基、第四級アンモニウム塩基、第三級アミン基、ホスホニウム基等がある。これらのうち、スルホン酸基はプロトン伝導性を向上し、ピリジニウム塩基は、プロトン選択透過性に優れ、ともに耐酸化性を有するので本発明の交換基としては好適である。また、これらのイオン交換基が導入される樹脂は、いかなるものであっても良いが、膨潤や変形を防ぐために通常は例えば架橋剤等により三次元架橋された架橋重合体からなるものが一般的である。
【0027】
カチオン交換隔膜に用いられるイオン交換基を有する単量体で公知のものとしては、例えば、フェノールスルホン酸、α,β,β’−ハロゲン化ビニルスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンホスホニル酸、無水マレイン酸、ビニルリン酸等、これらの塩類、エステル類等が挙げられる。また、アニオン交換隔膜に用いられるイオン交換基を有する単量体で公知のものとしては、例えば、ビニルピリジン、メチルビニルピリジン、エチルビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、アミノスチレン、アルキルアミノスチレン、ジアルキルアミノスチレン、トリアルキルアミノスチレン、メチルビニルケトン、クロルメチルスチレン、アクリル酸アミド、アクリルアミド、オキシム、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0028】
本願発明において、上記イオン交換樹脂は、いかなる方法で製造してもよいが、一般的にはイオン交換基の導入に適した官能基またはイオン交換基を有する単量体、架橋剤、重合開始剤等を含む重合組成物を前記の無機多孔質粉粒状体または無機多孔質粉粒状体を有するシート基材に付着させて重合させることにより製造することができる。または、前記重合組成物のプレポリマー等を無機多孔質粉粒状体または無機多孔質粉粒状体を有するシート基材に付着させてた後、重合体を成長させることによって製造することができる。
【0029】
以上により得られる重合組成物またはそのプレポリマーは、無機多孔質粉粒状体または無機多孔質粉粒状体を有するシート基材に付着されて重合し三次元架橋される。重合組成物またはそのプレポリマーのシート基材への付着方法は、特に限定するものではないが、例えば、塗布、含浸、或いは浸漬等の公知の方法が使用でき、付着する対象物の材質、形状、或いは重合組成物またはそのプレポリマーの性状に応じて適宜選択すればよい。
【0030】
本実施の形態におけるイオン交換樹脂としては、例えば、
【化3】

(式中、mは繰り返し単位を表す0または1以上の整数、nは1以上の整数とする。)
(式中、Xはイオン交換基を有するフェノール単量体・その塩またはイオン交換基を有する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン単量体・その塩、Rはアルキル基とする。)
で表される芳香族ポリスルホン系重合体、該重合体のプレポリマーおよび該重合体に架橋が導入された重合体の中の少なくとも何れかを用いることができる。
【0031】
前記のプレポリマーからなる水溶性フェノール重縮合物は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン単量体とホルムアルデヒドの縮合部[(C1310S)m]と、イオン交換基(スルホン酸)を有するフェノールまたはその塩、(Na)とホルムアルデヒドの縮合部[(CNaOS)n]とのブロック型共重合体からなり、後者のセグメントには芳香族環にスルホン酸基(−SOH)またはその塩(Na)が導入される。前記の水溶性フェノール重縮合物の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、特開2010−285383、または、特開2005−15607に記載の方法が用いられる。
【0032】
平均分子量が10,000〜20,000からなる前記水溶性フェノール重縮合物が約30質量%、水が約70質量%からなる水溶性フェノール重縮合物水溶液を酢酸水溶液で希釈して得られた希釈液中に無機多孔質粉粒状体を浸漬して、必要に応じて減圧下で攪拌し無機多孔質粉粒状体の外周部及び微細孔内に希釈液を浸透させた後、余分な希釈液を取り除いて加熱処理すると、水溶性フェノール重縮合物が酸性下での加熱による自己架橋により三次元化して硬化しイオン交換樹脂が形成される。
【0033】
前記イオン交換樹脂が付着した多数の無機多孔質粉粒状体がマトリクッス中に分散したイオン交換膜がシート基材の空隙およびシート基材面に形成される結果、イオン交換樹脂の剥離を防止し隔膜の耐久性が向上するとともに極液の漏液を防止することができる。また、外周部及び微細孔内にイオン交換樹脂が付着された多数の無機多孔質粉粒状体を漆類等の水酸基を有するマトリクッス中に分散させることにより、マトリクッスと極液との親和性が向上するとともに、前記イオン交換膜中の粉粒状体と粉粒状体の外周面同士および粉粒状体内の微細孔壁面に沿って多数のプロトン伝導用パスが形成されることにより、プロトンはより透過しやすくなるものと考えられる。
【0034】
本発明におけるマトリクッスとは、シート基材の空隙およびシート基材面に被膜を形成し得る成分を言い、シート基材との密着性やコーティング液の成分であるイオン交換樹脂との親和性、更に極液の漏液を抑制し得る能力の有無などの条件に適合する樹脂などから選択することが好ましく、例えば、ウルシオールを主成分とする天然由来の漆やカシューナットシェルオイルを主成分とするポリマーを含む漆類およびその他の合成樹脂、例えば、塗料用ビヒクルとして従来から用いられているポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ブチラール系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これらの混合物、共重合体、変性体からなる塗料用樹脂、またはアルコキシシラン等加水分解性有機ケイ素化合物およびこれらの部分加水分解物などが挙げられる。また、これらの樹脂にイオン交換樹脂を加えることによって、プロトン伝導性をより向上することができる。
【0035】
本実施の形態におけるマトリクッスとして用いられる漆は、種類や産地などが特に限定されず、汎用の漆が広く使用可能である。汎用の漆以外にウルシ科に属するカシューの実の殻から抽出されるカシューナットシェルオイルも含まれる。漆は一般的に、漆の木から採取したままの漆液「荒味うるし」を塗料等として使用できるように精製する。先ず、「荒味うるし」を加熱下で濾過してゴミや木の皮を取り除き、濾過した「生漆」を品質を均一化して平滑性や光沢を与える「やなし」作業に続いて40℃前後の加熱下で攪拌し水分3〜4%に調整したものが好ましい。
【0036】
漆をシート基材に付着した後乾燥することによって塗膜を形成するが、これは水分が蒸発するのではなく、ラッカーゼという酵素の働きで適度な温度と湿度の条件の下で、漆の主成分であるウルシオールが重合し、更に網目状に高分子を形成し硬化することによる。また、20〜190℃前後、加熱下で焼き付けにより硬化する。本実施の形態においては、時間の短縮を考慮してこの焼き付けによる硬化を利用して作業することが好ましい。
【0037】
前記漆類に予めイオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体と分散媒を加えて攪拌混合してコーティング液を調整する。このコーティング液に前記イオン処理基材を浸漬しコーティング液を含浸させた後加熱乾燥させると、漆が硬化してイオン交換樹脂が無機多孔質粉粒状体及びシート基材に強固に付着する。この際、極液の漏液が生じない範囲内でなるべく無機多孔質粉粒状体の混合比率を高めることが好ましい。つまり無機多孔質粉粒状体の混合比率が高いコーティング液ほど無機多孔質粉粒状体と電解液との接触する確率が高まり、プロトンの選択透過性が大きくなる。
【0038】
そこで、コーティング液の調整において、漆100質量部に対して、無機多孔質粉粒状体(珪藻土)50〜350質量部が好ましい。無機多孔質粉粒状体(珪藻土)200〜300質量部が特に好ましい。無機多孔質粉粒状体(珪藻土)が50質量部未満ではプロトンの選択透過性が小さく、350質量部を越えると無機多孔質粉粒状体(珪藻土)が分離する恐れが生じる。更に、イオン交換樹脂素材、例えば、以下に示すフェノール水溶液を漆の添加割合と比較校量して適宜量を添加混合することが好ましい。また、漆類の分散媒としては、特に限定するものではないが、テレピン油、エタノール又はこれらと水との混合分散媒が好ましい。必要に応じて界面活性剤や粘度調整剤を用いてもよい。
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法について図3〜6を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例においては、請求項1の化学構造式(1)で表されるイオン交換樹脂素材として、前記化学構造式(1)中、 m/n=7〜9/3〜1、平均分子量が10,000〜20,000、濃度30質量%のフェノール重縮合物水溶液(以下「フェノール水溶液」と称する。)を用いた。
【実施例1】
【0040】
先ず、図1に示すように、前記フェノール水溶液に以下の配合に基づき適宜量の酢酸と水を加えて酸性(PH4〜4.5)になるようにイオン交換樹脂希釈液を調整する。酢酸に代えてまたは酢酸とともにPH調整に用いられる公知の硫酸その他の酸を用いてもよい。
<イオン交換樹脂希釈液の調整>
フェノール水溶液 3 (単位:質量部)
水 100
酢酸(濃度60質量%) 0.5(変動)
【0041】
次に、骨材として以下の配合からなる湿式法(抄紙法)によるシート基材を準備する。
シート基材(100×100mm)の重量は1.4〜1.5g、総厚は0.25〜0.35mmである。
<シート基材の基本配合>
珪藻土粉末(メソポア珪藻土、平均粒径:φ2.5μm) 60(単位:質量部)
(真比重:2.0〜2.1、見掛け比重:0.5〜0.7)
合成繊維ステープル(ポリエステル繊維、比重:1.4) 40
【0042】
前記で調整したイオン交換樹脂希釈液を80〜100℃に加熱した中に前記シート基材(S1)を浸漬(11)してシート基材中にイオン交換樹脂希釈液を含浸させる。その後、表面を自然乾燥させ(12)、130〜160℃で約1時間加熱処理し(13)架橋させ、シート基材にイオン交換樹脂を付着した処理シート基材(S2)を得た。
【0043】
次に、前記で調整したイオン交換樹脂希釈液中に珪藻土粉末(K1)を投入して約1時間攪拌混合して(14)、珪藻土粉末にイオン交換樹脂を付着させる。必要により減圧下で処理してもよい。その後、容器に入れて、150〜170℃で約1時間加熱処理(15)、するとイオン交換樹脂が珪藻土粉末に固着した塊状物が得られるので、この塊状物をボールミルで粉砕し(16)、粉状の前処理珪藻土(K2)を得た。
【0044】
以下の配合に従って、イオン交換樹脂(濃度30質量%水溶液)と漆と分散媒(エタノール)と前処理珪藻土(K2)と界面活性剤を攪拌混合し(17)コーティング液(C)を得た。
<コーティング液の配合>
前処理珪藻土 100 (単位:質量部)
フェノール水溶液 100
漆(比重:0.44) 35
分散媒(エタノール) 30
界面活性剤 0.5
【0045】
前記コーティング液(C)に前記処理シート基材(S2)を浸漬して(18)処理シート基材にコーティング液をそれぞれ含浸させる。その後処理シート基材(S2)を前記コーティング液から引き上げて、基材の表裏面に付着したコーティング液を所定厚み平面状に残してガラス棒で掻き取った後、約20〜190℃で所定時間加熱乾燥し(19)、レドックスフロー電池用隔膜(1)を得た。得られたレドックスフロー電池用隔膜のサンプル(100×100mm)の総厚は約1.15〜1.18mm、重量は4.2〜4.3gであった。
【0046】
コーティング液の塗布方法は前記ディップコーティング法に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーティング法、ローラーコーティング法、スプレーディングコーティング法、ロータリースクリーンコーティング法、スプレッドコーティング法、ロールコーティング法(ダイレクトロールコーター、リバースロールコーター)、エクアライザーロッドコーティング法、含浸塗装(インプレグネーション法)、スラッシュモールディング法、ローティショナルモールディング法、キャビティモールディング法等が利用可能である。
【実施例2】
【0047】
次に実施例2について図4に基づいて説明する。実施例1において、前記イオン交換樹脂希釈液に代えて下記イオン交換樹脂珪藻土混液をシート基材に含浸させ乾燥後1〜3%の水希釈酢酸に浸漬した後、約80℃で1時間加熱処理して得られた(13)処理シート基材(S2)を下記配合のコーティング液(C)に浸漬する(18)以外は実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用隔膜(1)を得た。
【0048】
<イオン交換樹脂珪藻土混液の調整>
フェノール水溶液 100 (単位:質量部)
前処理珪藻土 33.2
水 16.6
【0049】
<コーティング液の配合>
漆 100 (67) (単位:質量部)
前処理珪藻土 150 (100)
分散媒(1.3倍水希釈エタノール) 325 (217)
【実施例3】
【0050】
次に実施例3について図5に基づいて説明する。実施例2において、イオン交換樹脂珪藻土混液をシート基材に含浸させた後、130℃で10分間加熱処理し、水洗して表面自然乾燥(12)させた後、前記水希釈酸に浸漬した後引き上げて、130℃で10分間加熱処理して(13)得られた処理シート基材(S2)を下記のコーティング液(C)に前記シート処理基材を浸漬する(18)以外は実施例2と同様にしてレドックスフロー電池用隔膜(1)を得た。
【0051】
<コーティング液の配合>
漆 60 (150)(単位:質量部)
前処理珪藻土 40 (100)
分散媒(1.2倍水希釈エタノール) 120 (300)
【実施例4】
【0052】
次に実施例4について図6に基づいて説明する。前記シート基材に下記のコーティング液(C)を含浸させ、その後加熱乾燥させ(19)。次に、下記のイオン交換樹脂珪藻土混液に浸漬した後取り出して自然乾燥する。次に、5%濃度の水希釈酢酸に浸漬した後取り出し、その後加熱乾燥して(19)以外は実施例2と同様にしてレドックスフロー電池用隔膜(1)を得た。
【0053】
<イオン交換樹脂珪藻土混液の配合>
フェノール水溶液 75 (単位:質量部)
前処理珪藻土 25
水 10
【0054】
<コーティング液の配合>
漆 60 (100) (単位:質量部)
前処理珪藻土 60 (100)
分散媒(3倍水希釈エタノール) 360 (600)
【実施例5】
【0055】
次に実施例5について説明する。実施例1において、このコーティング液(C)に処理シート基材(S2)を2〜3分間放置した後引き上げること2〜3回繰り返してコーティング液を処理シート基材に含浸させた後、加熱乾燥する以外は前記実施例1と同様にしてレドックスフロー電池用隔膜(1)を得た。
【0056】
前記の各工程を経て得られたレドックスフロー電池用隔膜は、従来のレドックスフロー電池用隔膜のように、プラスチックフィルムに穿設した孔にイオン交換性樹脂を付着させたものとは全く異なり、無機多孔質体にイオン交換性樹脂を含浸させ、天然の漆類又はイオン交換性樹脂で固着したものからなるので、プロトン伝導性が優れていて極液の透過を抑制し、且つ、乾燥保存ができて、優れた電池性能と耐薬品性と耐久性を有し、湿った状態で保存する必要がない。ただし、隔膜を取り付けた後に極液に浸漬して隔膜に極液を充分に湿潤させてから充放電することは従来の隔膜の場合と同様である。
【0057】
次に、前記で得られた前記レドックスフロー電池用隔膜のサンプルをレドックスフロー電池に装着してその性能を確認した。この隔膜の性能試験に用いたレドックスフロー電池は、図1に示すように前記のレドックスフロー電池用隔膜1を、中央部にカーボンフェルト電極2(正極2aと負極2b)を配置した正極フレーム3aと負極フレーム3bで両側から挟み、その外側に双極板4a,4bを当接したセル5を構成単位とし、図2に示すように配線し、セル5を複数個積層した構造体をセルスタック6として用いた。正極フレーム3a及び負極フレーム3bにはそれぞれ吸引口7と排出口8を設け、正極フレーム3a側の吸引口7a同士をそれぞれパイプで連結し正極ポンプ10aを介して正極液タンク9aに連結し、正極フレーム3a側の排出口8a同士をそれぞれパイプで連結して正極液タンク9aに連結する。同様にして、負極フレーム3b側の吸引口7b同士をそれぞれパイプで連結し負極ポンプ10bを介して負極液タンク9bに連結し、負極フレーム3b側の排出口8b同士をそれぞれパイプで連結して負極液タンク9bに連結する。正極ポンプ10a及び負極ポンプ10bにより極液を循環するように構成した。
【0058】
実施例で得られたレドックスフロー電池用隔膜1を前記の性能試験用レドックスフロー電池にそれぞれセットし、ポンプ10を稼働してレドックスフロー電池用隔膜1が極液で充分湿潤した時点で電池の両極間に交直変換器を介して電圧をかけ、極液の色の変化を目視により観察した。正極液と負極液は正極液タンク9aと負極液タンク9bからそれぞれ正極フレーム3a側と負極フレーム3b側にポンプ10によって別々に送られる。初充電では、正極液タンク9aと負極液タンク9bそれぞれに4価のバナジウム電解液を入れて、電解還元がはじまると、正極ではバナジウムは4価(青色)から5価(ピンク系の黄色)に酸化され、負極では4価(青色)から3価(青緑色)を経て2価(黒系の青色)に還元され、色が変化するので目視により判断が可能である。
【0059】
前記の性能試験用レドックスフロー電池に乾燥保存した前記実施例で得られたレドックスフロー電池用隔膜をそれぞれ空間域で組み立てて性能試験をしたところ、実施例1〜5について、正極液は4価の青色から5価のピンク系黄色に変化し、負極液は4価の青色から3価の青緑色に変化し、更に2価の黒系青色に変化した。実施例1で得られた隔膜が、特に正極液と負極液の流動による混液現象もなく、且つ、速やかに極液の色が変化した。実施例5で得られた隔膜は実施例1で得られた隔膜に比較して漏液性を抑制する効果に優れるが、極液の湿潤にやや時間がかかる。また、実施例2〜4の隔膜は、極液の湿潤にやや時間がかかり、更に、満充電までに時間がかかるが交直変換器の電圧を上げることによって対応可能である。起電力は単位セル当たり1.3Vであった。その後、充放電を複数回繰り返し行ったが何れの隔膜も性能低下は見られなかった。
【0060】
実施例1によって得られたレドックスフロー電池用隔膜を愛知県産業技術研究所で、交流インピーダンスを測定し、プロトン伝導性を求めた結果を以下に示す。
測定機器:燃料電池評価システム(チノー社製FC5100series)付属ポテンショ/ガルバノ
スタット(AUTO LAB社製PGSTAT302)
抵抗値(Ω) 89.33
膜厚(cm) 0.0456
電極間距離(cm) 0.5
プロトン伝導性(S/cm)0.2455
【0061】
また、前記性能試験における正極液及び負極液を酸化還元電位計によって測定した極液の酸化還元電位(ORP)の測定値は以下の通りである。
充電前の4価の電極液(青色)のORP:380mV
充電後の5価の正極液(ピンク系の黄色)のORP:990mV
充電後の2価の正極液(黒系の青色)のORP:−227mV
【0062】
本願発明のレドックスフロー電池用隔膜は、レドックスフロー電池以外に各種燃料電池の電解質膜として、或いは電気透析、脱塩・減塩、医薬、食品加工、メッキ溶剤処理、廃液処理など様々な用途において使用可能である。また、本願発明の技術的範囲は、本願発明の精神に反しない限りにおいて広く及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願発明に係るレドックスフロー電池用隔膜は、前記のように乾燥保存できることから、隔膜をセル容器に取り付けるときに、水中で作業することなく、空間域で作業することができるので、取り付け作業が極めて容易にでき、作業用プールのような設備も必要なく経済的であり、水素イオンの透過性に優れ且つ金属イオンと水の漏液性が低い上に耐久性に優れていることから極めて有用である。
【符号の説明】
【0064】
1:レドックスフロー電池用隔膜、2:カーボンフェルト電極、2a:正極カーボンフェルト電極、2b:負極カーボンフェルト電極、3:フレーム、3a:正極フレーム、3b:負極フレーム、4:双極板、4a:正極双極板,4b:負極双極板、5:セル、6:セルスタック、7:吸引口、7a:正極吸引口、7b:負極吸引口、8:排出口、8:排出口、8a:正極排出口、8b:負極排出口、9:極液タンク、9a:正極液タンク、9b:負極液タンク、10:ポンプ、10a:正極ポンプ、10b:負極ポンプ、
11:浸漬工程、12:水洗・乾燥工程、13:加熱処理工程、14:攪拌混合工程、15:加熱処理工程、16:粉砕工程、17:攪拌混合工程、18:浸漬工程、19:加熱乾燥工程、S1:シート基材、S2:シート処理基材、K1:珪藻土粉末、K2:前処理珪藻土、C:コーティング液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの表裏に連通する多数の空隙を有するシート基材の前記空隙および/またはシート基材面に、イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体がマトリクッス中に分散したイオン交換膜を形成してなることを特徴とするレドックスフロー電池用隔膜。
【請求項2】
イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体がマトリクッス中に分散したイオン交換膜からなるレドックスフロー電池用隔膜。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂は、ポリスルホン系のイオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載のレドックスフロー電池用隔膜。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂は、
【化4】

(式中、mは繰り返し単位を表す0または1以上の整数、nは1以上の整数とする。)
(式中、Xはイオン交換基を有するフェノール・その塩またはイオン交換基を有する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン・その塩、Rはアルキル基とする。)
で表される架橋が導入された重合体からなることを特徴とする請求項1〜3記載のレドックスフロー電池用隔膜。
【請求項5】
前記マトリクッスを構成する樹脂は、漆類、その他の水酸基を有する合成樹脂あるいは天然由来の樹脂およびこれらの樹脂とイオン交換樹脂との組み合わせの中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のレドックスフロー電池用隔膜。
【請求項6】
前記無機多孔質粉粒状体は、珪藻土、セピオライト、ゼオライト、パーライト、ケイ酸カルシウム、カオリン、アタパルジャイト、バーミキュライト、クリストバライトおよびその他のシリカ多孔質体の中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のレドックスフロー電池用隔膜。
【請求項7】
無機多孔質粉粒状体にイオン交換樹脂を付着させる工程と、前記イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質紛粒状体とマトリクッスと分散媒を含む混合液を調整する工程と、シートの表裏に連通する多数の空隙を有するシート基材に前記イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質粉粒状体を充填する工程と、前記無機多孔質粉粒状体を充填したシート基材に前記混合液を含浸させる工程と、前記混合液を含浸させたシート基材を加熱乾燥して前記シート基材にイオン交換膜を形成する工程とを備えることを特徴とするレドックスフロー電池用隔膜の製造方法。
【請求項8】
無機多孔質粉粒状体にイオン交換樹脂を形成する付着させる工程と、前記イオン交換樹脂を付着させた無機多孔質紛粒状体とマトリクッスと分散媒とを含む混合液を調整する工程と、前記混合液を面状化した後、加熱乾燥してイオン交換膜を形成するする工程とを備えることを特徴とするレドックスフロー電池用隔膜の製造方法。
【請求項9】
前記イオン交換樹脂は、ポリスルホン系のイオン交換樹脂であることを特徴とする請求項7または8記載のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法。
【請求項10】
前記イオン交換樹脂は、
【化5】

(式中、mは繰り返し単位を表す0または1以上の整数、nは1以上の整数とする。)
(式中、Xはイオン交換基を有するフェノール・その塩またはイオン交換基を有する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン・その塩、Rはアルキル基とする。)
で表される芳香族ポリスルホン系重合体であって架橋導入性能を有する重合体およびそのプレポリマーからなることを特徴とする請求項7〜9記載のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法。
【請求項11】
前記マトリクッスを構成する樹脂は、漆類、その他の水酸基を有する合成樹脂あるいは天然由来の樹脂およびこれらの樹脂とイオン交換樹脂との組み合わせの中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法。
【請求項12】
前記無機多孔質粉粒状体は、珪藻土、セピオライト、ゼオライト、パーライト、ケイ酸カルシウム、カオリン、アタパルジャイト、バーミキュライト、クリストバライト及びその他のシリカ多孔質体の中の少なくとも何れか一種からなることを特徴とする請求項7〜11の何れかに記載のレドックスフロー電池用隔膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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