説明

レドーム及びそのレドームを航空機に取付けるための装置

【課題】本発明は、航空機用レドーム(1)に関し、より具体的には前記レドームを前記航空機の構造体に接続するための装置に関する。
【解決手段】本発明の主題であるレドームは、航空機の機体(10)とレドーム(1)の対向する面同士を接合可能な複数のロッキングユニットを含み、前記ユニットの各々が、
−取付手段を介して、前記機体の表面に対して略垂直方向に、前記表面に牽引力を発揮可能なロッキング手段(20)と、
−前記機体及びレドームの対向する面に対して略接線方向のせん断力に耐えることが出来るセンタリング手段とを含み、
−前記ロッキング手段(20)は、前記レドーム(1)内のアセンブリによって発生する曲げ応力を最小にするように前記センタリング手段にかかる合力の円錐内に位置するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用レドームに関し、より具体的にはレドームを航空機の構造体に接続するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの航空機、より具体的には民間航空輸送機は、機体のノーズコーンに位置するレドームを含む。空気力学的役割に加えて、このレドームはレーダを保護する。結果的に、レドームは電磁波を通すことが出来る材料、一般的には複合材料からなる。レドームのこれらの機能のために、レドームの設計及び製造にはいくつかの制約が課される。即ち、
−レドームの下側に位置するレーダへのアクセスを可能にするために、レドームが、取り外し可能なものでなくてはならず、容易に取り外し又は取り付け(retract)可能なものであると有利であること、
−レドームにはレーダを保護するという役割があり、特にあらゆる衝撃にさらされる領域に位置するため、レドームは、特に耐久性がなくてはならず、また、機体への接続同然に、気密性がなくてはならないこと、
−レドームが機体と完全には水平でないがために気流に乱気流が発生するのを回避するために、レドームがノーズコーンにおいて空気力学的に位置するように、機体の形状に完全に調和しなければならないということが課される。
【0003】
これらの要件は色々な意味で相矛盾する。例えば、透磁率のためには複合材料で製造することが有利である。しかし、耐衝撃性という制約事項にふさわしい耐荷重層(plies)の形状及び定義の複雑さによって、硬化後のアセンブリが複雑に変形したり、レドームの形状を機体の形状に適応させることが困難になったりする。この適応は、二重曲率形状や高剛性部品が存在する場合には更に複雑である。
【0004】
先行技術によれば、基本的に、これらの様々な要件を折衷する2つの方法が用いられる。1つ目の方法は、機体との接合部分におけるレドーム内に剛性金属フレームを組み込み、前記フレームの形状を高精度に製造し、機体側の接合部分の形状に適応させる。この構成はその製造精度のためにコストがかかり、また金属部品が存在するため質量に関し悪影響を及ぼす。しかし、この周縁領域の剛性によって、開放機構を設置することが出来るようになり、その開放機構の運動学によって、レドームを取り外すことなくレーダに迅速にアクセスすることが容易になる。
【0005】
別の方法は、本出願人名義の特許文献1に記述されているが、剛性部品を含まないフレキシブルなアセンブリ接合部分を製造し、その円周上に複数の固締具を配置することによって機体に接続する。この構成から、接合部分の柔軟性により、複数の固定具を用いた機体の形状に順応させるという利点が得られる。一方、1つ目の方法と比較して、レドームを開閉する都度、複数の固締具を外したり締めたりしなくてはならないため、レドームを取り外す及び/又は開放するためにより長い時間を要する。これらの固締具は、特にレドームと機体端部との間の接合部分におけるレドームの柔軟性を補償するために多数配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1642139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、質量の点で不利益をもたらすことなく迅速に開放又は取り外し可能である点を維持しつつ、機体に適合し且つ水平になるよう向上させた嵌着/開放装置と連携する構成を有するレドームを提案することによって、先行技術の欠点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明は航空機用レドームを提案し、このレドームは、航空機の機体とレドームの対向する面同士を接合可能な複数のロッキングユニットを含み、前記ユニットの各々が、
−取付手段を介して、前記機体の表面に対して略垂直方向に、前記表面に対して牽引力を発揮可能なロッキング手段と、
−前記機体とレドームの対向する面に対して略接線方向のせん断力に耐えることが出来るセンタリング手段とを含み、
−前記ロッキング手段は、前記レドーム内のアセンブリによって発生する曲げ応力を最小にするように前記センタリング手段にかかる合力の円錐内に位置するように配置される。
【0009】
このように、前記レドームにおいて、特に、レドームと機体との接合部分で曲げ応力を最小にすることによって、レドームが前記機体の形状に対して完全に水平になるように順応する柔軟性を有することが出来、レドームを嵌着/取り外しするために多大な時間がかからないようにロッキングユニットの数を減少することが出来る。
【0010】
本発明は、以下に記述する複数の有利な実施形態に従って実施可能であり、これらの実施形態は単独でも技術的に効果的な任意の組み合わせにおいてでも考慮することができる。
【0011】
本発明の主題であるレドームは、レドームの構造体に、機体と接合する端部から延びる長手方向スロットを含むと有利である。
【0012】
このようにして、前記接合部分の柔軟性を増加させることが出来る。
【0013】
特に有利な実施形態によれば、レドームは、レドームの構造体に、機体との接合部分の端部から延び、前記端部の円周上に配置された複数の縦方向スロットを含み、前記複数のロッキングユニットの各々が、レドームに固定されスロットの両縁部にわたる剛性支持面を含む。
【0014】
このように、これらのスロットの存在によって、機体との接合部分を形成する前記レドームの端部における形状及び周長の両方に適応性をもたらすことができ、これにより、前記レドームの前記接合部分の端部において、2つの構造体を完全に水平に且つ適応させるが出来る。
【0015】
スロットの数は、機体と接合する端部の形状、性質、及び剛性に従って、この端部の形状及び周長の両方において適応可能な力量次第で決定される。実際には、スロットの数は、必要に応じて試作品試験を含めた数値シミュレーションによって確定される。
【0016】
スロットの両縁部にわたる一面を有するロッキングユニットはブラケットとして機能し、接合部分の構造的連続性を確保することが出来、且つ、一旦接合部分を適合すると、力の流れがスロットを通過せずに消散させることを可能にする。この構造的役割をロッキング機能と組み合わせることで、スロットの存在下で特定の荷重支持ブラケットによって追加される質量を制限することができる。
【0017】
本発明の主題である前記レドームは、有利に、前記機体と接合する端部から、各ロッキングユニットの下に及ぶモノリシックな周縁領域を含み、レドームのその他の部分はハニカム構造体から形成される。このモノリシック領域は、構造体の残りの部分と共硬化(co−cured)すると有利であり、その結果、レドームの端部に剛性をもたらし、従って限られた数のアンカーポイント、及び開放又は閉鎖(retraction)のための単純化したオプション、特にヒンジによって、レドームを適切な位置に保持することが出来るようになる。先行技術とは異なり、この剛性周縁領域は、特別精密に製造されるものではなく、複数のスロットによって機体に適応可能であり、これによって、前記レドームは経済的に製造することが可能になる。
【0018】
この剛性周縁領域を有利に使用し、特にこの周縁領域に溝を形成し、機体に固定された変形可能なシールの端部を収容することによって、レドームを確実に気密封止することが出来る。この封止機能を実行する手段をレドームの壁の厚みに組み込むことによって、複数のロッキング手段を壁に対して半径方向により近接させ、これにより、これらのロッキング手段上の力の作用点とこれらのロッキング手段が固定されるレドームの壁との距離によって引き起こされる寄生的な(parasite)曲げ及びせん断効果を制限することが出来るようになる。
【0019】
センタリング手段は、レドームを閉じたとき機体側の複数のリセプタクルに嵌着する複数のセンタリングデバイスによって構成されると有利である。レドームの位置決めを容易に繰り返すことができるという利点に加え、レドームが開閉される都度、これらのセンタリング装置は、接合部分の平面に略平行なせん断力に耐える。
【0020】
このように、ロックには位置決め機能を果たす役割はないため、ロックは、特に牽引フックロックなどの先行技術で既知の「すぐに取り外し可能な」タイプのロックから選択可能であり、レドームの外面に対して同一平面にあるレバーの一回の操作でロック又はアンロック(ロック解除)することが可能になる。従って、レドームの外側から上記ロックをアンロックすることが出来るので、業務時間を短縮させてレーダにアクセスすることが容易になる。このタイプのロックは、ロッキング軸に対して高い抵抗を示すが、この軸に対して垂直な抵抗は低減するので、低減した抵抗は複数のセンタリングデバイスの存在によって補償される。
【0021】
複数のロッキングユニットは、複数のセンタリング装置を支持するように使用すると有利であり、これによって、部品数を制限でき、質量の点で利益を得られ、とりわけ、複数のセンタリング装置を複数のロッキング装置の取付けポイントにより近接させることが可能になるため、前記ロッキング装置を容易に支持することができ、結果的にロッキングを安全にすることが可能になる。
【0022】
少なくとも2つのロッキングユニットが、機体に対してレドームを予め位置決めするための装置を含み、この装置がエラストマー製ワッシャに嵌着するピンによって構成されると有利である。これらの装置によって前記レドームの嵌着がより容易になる。エラストマーワッシャによって、レドームが機体上に複数のセンタリング装置によって位置決めされてしっかりと固定される前に、機体に対する前記レドームの相対的な配置及び保持が確実に行われる。この事前位置決め装置を前記複数のロッキングユニットに組み込むことによって、機体上に設置されるブラケットの数を制限し、質量を減少させることが可能になる。複数のユニットは、複数の事前位置決めピン又はエラストマーワッシャのいずれかを収容することが出来、この構成はユニットごとに変更可能である。レドームの寸法又は重量に対してこの構成が必要となる場合、このタイプの事前位置決めピンは4つ使用される。
【0023】
少なくとも2つのピンが、接合部分の平面に略平行な軸に沿ってレドームを連結するように設計された形状を有すると有利である。レドームが位置決めピンを2つのみ含む場合、これらのピンはこのタイプのピンであると好ましい。従って、これらのピンは、レドームを取り外すことなく迅速に開放するためのヒンジとして機能する。本発明に従うレドームが軽量であるため、前記のように連結させるためのブラケット及びフレームを設置することなく、複数のエラストマーワッシャによってこのような連結が実現可能になる。複数のピンが前記複数の剛性のユニットに接続され、複数の剛性のユニットも同様に剛性のモノリシック周縁領域に固定されているので、これら2か所の取付けポイントより、レドームが自重によって損傷する危険がなく、レドームを開放位置に十分に維持できる。
【0024】
本発明は、上述した複数の実施形態のいずれかに対応するレドームを含む航空機にも関連する。
【0025】
図1乃至図11に示す本発明の好適で非制限的な複数の実施形態に即して、本発明を以下により正確に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従うレドームの側方概観図を示す。
【図2】本発明に従うレドーム全体の正面図である。
【図3】前記レドームを航空機の構造体に接続する装置を上から見た詳細図である。
【図4】ロッキング装置を強調した、前記レドームの半径方向面に沿う断面図である。
【図5】航空機側の接続の接合部分に固定されたリセプタクルブラケットの詳細な正面及び側面図である。
【図6】前記レドームの球状センタリング装置の断面図である。
【図7】航空機の構造体に接合する前記レドームの端部で前記レドームの周縁を封止するための装置の一実施形態の断面図を示す。
【図8】航空機の構造体に接合する前記レドームの端部で前記レドームの周縁を封止するための装置の一実施形態の断面図を示す。
【図9】前記レドームを航空機の構造体に嵌着する際に前記レドームを予めセンタリングするための装置の一実施形態の放射面に沿う断面図を示す。
【図10】前記レドームを航空機の構造体に嵌着する際に前記レドームを予めセンタリングするための装置の一実施形態の放射面に沿う断面図を示す。
【図11】前記レドームを開放するためのヒンジとして前記事前センタリング装置の複数のピンを使用するための前記ピンの具体的な実施形態を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2において、本発明に従うレドーム(1)は、電磁波を通す材料、好ましくはハニカムタイプの複合材料から作られた二重曲率面(12)を含む。航空機の機体に固定される接合部分端(10)から、前記レドームは、複数のロッキング装置(20)の位置まで及ぶ剛性モノリシックリング(11)を含む。この剛性モノリシックリングは、特にレドームが開放している間、例えば、レドームの下側に配置されたレーダの検査又はメンテナンス作業の間、レドームの形状を維持する。
【0028】
また、このリング(11)の剛性により、より少ない数の機体アンカリング及びロッキングポイントでレドームを機体に対して固定した状態で維持することが出来る。一方、前記リングの剛性のために、接合部分端(10)の形状を機体の形状に対して完全に水平に且つ適応させることが出来ない。レドームの接合部分のリングの形状及び周長を航空機の機体に適応可能にするため、レドームの構造体に複数のスロット(100)を形成し、これらのスロット(100)は、接合部分端(10)から、モノリシックリング(11)内へと続き、モノリシックリング(11)の端を越えて延びている。前記複数のスロット(100)は、このアセンブリの接合部分に対して略垂直であり、従ってこれらのスロットによってレドームの形状及び周長を適応させることが出来る。
【0029】
図3において、スロット(100)は、2つの部分からなる。その内の第1の部分(200)は、略矩形であって、ロック(20)、好ましくはトグルファスナを有するクランプ型ロックを収容可能であるが、この部分(200)は、接合部分端から、適切なロッキング装置を収容するのに十分な長さに渡って延出する。このノッチ(200)を延長して狭スロット(100)が形成される。
【0030】
レドームを搭載予定の航空機上又はテンプレート上で直接機体に対してレドームをレドームの形状及び周長を適応させることが出来る。雌型のテンプレートを使用することが出来ると有利であり、この雌型のテンプレートに対してレドーム(1)の外面がモノリシックリング(11)のレベルでプレスされる。複数のスロットによって、テンプレートの全周囲に沿ってリングをテンプレート上に着座させるように制御することによる較正を行うのに十分な柔軟性がもたらされる。較正後、複数のロッキングユニット(30)が、図3及び図4に示すように、複数のスロットに沿ってレドームの内面上に固定される。
【0031】
図4において、ロッキングユニットは、ロック配置ノッチ(200)及びスロット(100)にわたるぐらい十分に幅広の基部(31)を備える。ユニットは、一旦固定されると、リング(11)を環状方向に剛性化し、複数のスロット及びノッチによって得られた柔軟性を解消する。その結果、レドームはテンプレートの形状を保持する。
【0032】
次に、レドームはテンプレートから取り出され、複数のロック(20)が夫々の位置に設置される。接着及び樹脂性ウェッジ(22)が、ノッチ(200)を閉塞するように各ロックの前方に配置され、スロット(100)は、短繊維を含むポリスルフィド系マスチック又はエポキシ樹脂によって閉塞される。
【0033】
ロッキングユニットの基部(31)がスロット(100、200)にわたるので、一旦ユニットがレドーム上に固定されると、円周方向及び縦方向の力の流れが、スロット(200、100)に圧力を加えることなく複数のユニットを通過する。ユニット(30)は、これらの力の流れに抵抗するように設計される。この荷重伝達を促進するために、レドームの接合部分端にあるモノリシック部分(11)は、ロッキングユニットの基部(31)の下に延出することが好ましい。各ロッキングユニットに関して、レドーム上への基部の着座は、ユニットの基部とレドーム上のユニット支持表面との間に樹脂を介在させることによる補償較正によって調整される。
【0034】
ロッキングユニットは、7000系から選択された高性能アルミニウム合金から作られ、且つ機械加工によって得られると有利である。この実例によれば、ロッキングユニットは、500×300×300mmの体積を占める略プリズム状中空要素の形状を有する。ユニットの壁の典型的な厚みは、1.5mm〜2.5mmである。このようなユニットの環状剛性は、レドームの構造的完全性に一部貢献し、航空機の構造体に対するアンカーポイントを補強し、従って、これらのアンカーポイントの数を減少することが可能になる。典型的には、このタイプのアンカー個所の数は、接合部分端の直径が2メートルの広胴型航空機の前記レドームでは8つにまで減少出来る。
【0035】
図4において、ユニットの剛性を利用して、航空機構造体上でレドームをセンタリングしてロッキングするための全ての機能をこれらの要素に集合させると有利である。
【0036】
有利な一実施形態によれば、レドームは、複数の球状センタリング装置(40)及び複数のラッチフック(21)によって航空機に接続される。好ましくは、これらは両方とも複数のリセプタクルブラケット(50)を用いて航空機構造体に接続され、各リセプタクルブラケットは、対向するロッキングユニットのセンタリング球体(40)を収容するように設計されたγ/2の円錐角を有する円錐状リセプタクル(510)と、フック(51)用接続ブラケットを収容する線条領域(520)とを含む。リセプタクルブラケット(50)は、例えば、チタンT40から作られ、同様にチタン製の複数のねじによって航空機構造体に固定される。
【0037】
球状センタリング装置は、好ましくは、チタンとの摩擦係数が小さい銅、錫、及び鉛を含む可鍛ブロンズ系材料から作られ、静荷重に耐えることが出来る。センタリング装置(40)の球状部分の典型的な直径は14〜22mmである。
【0038】
複数のセンタリング装置は、ボルトによって複数のユニット(30)の端部に固定される。この目的のため、図6に示すように、センタリング装置の球状部分とともにショルダ(420)を形成するように、センタリング装置の球状部分を延長してねじ付きピン(410)が形成される。ピン(410)は、航空機構造体との接合部分側のロッキングユニット(30)の端部にある孔(340)に適応され、このピンの端部にねじ止めされたナット(42)によって適切な位置に保持される。センタリング装置のショルダ(420)は、ロッキングユニット(30)の前面(320)に接触する。この前面(320)は、レドームの組付け平面(10)と平行であり、理想的にはこの平面に含まれる。
【0039】
フック用接続ブラケット(70)は、ロッキングピン(710)の半径方向距離をレドームの長手軸に対して調整可能にする溝付き接合部分面(520)を用いてリセプタクルブラケット(50)に接続される。フックの取付けポイントは、レドームの表面に対して半径方向に出来るだけ近接して配置されると有利である。レドームの長手方向には、ロッキングピン(710)が、複数のユニット(30)の前面上の複数のセンタリング装置のベアリング面(320)に出来るだけ近接して配置される。理想的には、所与のユニットに関して、ロッキングピンの長手方向は、図5に示すセンタリング球体にかかる合力の方向円錐内に配置される。この円錐角γの頂点は、球体の長手軸と前記ユニット上の球体のベアリング面(320)との交差点に位置される。これらの位置決め原理は、レドームの構造体における曲げモーメントを減少出来、従って、取付装置の質量を減少可能であることを意味する。実際的観点から、ロッキングユニット上の前記球体のベアリング面(320)と前記フック受けピン(710)との長手方向距離が30mm未満の場合にこの条件が満たされる。
【0040】
球体(50)によって、航空機構造体とレドームとの間で、半径方向位置決め、及び半径方向及び環状方向の力の伝達が確実に行われる。フックを用いるロック(20)によって、長手方向取付けが確実に行われ、気密性及び空気力学的連続性が確保されるようにレドームと航空機構造体との接合部分が圧迫される。フックの取付けピン(710)をユニット上の球体のベアリング面(320)に長手方向により近接させることによって、フックが操作される時の複数の球体の、そのハウジング内での支えを得ることが出来る。センタリング装置は、ロッキングフックが牽引力を加えている時、レドームを軸方向に保持することにも寄与する。
【0041】
このように、航空機構造体と完全に水平な状態を確保しつつ、レドームを容易且つ迅速に開放可能であるように、これらの様々な手段が協働する。実際には、航空機構造体に対するレドームのセンタリングは、スロット(200、100)によってもたらされるレドームの形状の順応性によって確実に行われる。このように、これらのセンタリング装置(40)は、調整可能なリセプタクル(510)に取付け可能であり、結果的に遊びを含まず取付けられる。従って、センタリング装置は、航空機との接合部分に効果的にせん断力を伝達することが出来、従って、レドームが、迅速且つ容易に操作可能な一連の牽引フックロックによって航空機の機体に接続されることが出来る。
【0042】
図7及び図8において、航空機機体と前記レドーム接合部分端との間の接合部分の周縁上にはシール(80、81)が配置される。好ましくは、シールを固定するために構造体に形成された溝又は孔内へのクリッピングによってシールは航空機構造体(C0)に固定される。シール(80、81)の他端は、レドームの端部のモノリシック部分(11)に接合部分平面(10)に対して垂直に形成された溝(110)に収納される。レドームの端部を航空機に対して長手方向に近接させるという複数のロック(20)の作用によって、溝上のシールが押し込まれ、従って、レドームの周縁の密閉性が確保され、更にシールが溝(110)内で保護される。
【0043】
図9及び図10において、航空機構造体上へのレドーム(1)の設置は、事前センタリング装置によってより容易になる。これらの事前センタリング装置は、各々、ピン(90)、及びこのピン(90)を収容するように設計された中心孔を含み且つこの孔に対する位置及び方向が僅かにずれているピン(90)を支持するのに十分な半径方向の柔軟性を示すエラストマー製ワッシャ(91)を含む。図9に示すように、事前センタリングピン(90)は、航空機構造体上に設置され、複数のエラストマーワッシャ(91)はロッキングユニット上に設置される。或いは、図10に示すように、事前センタリングピン(90)はロッキングユニット(30)に固定され、エラストマーワッシャ(91)は航空機構造体に固定される。ピン(90)及びエラストマーワッシャ(91)の長さ及び位置は、球状センタリング装置が夫々のリセプタクルに進入する前にピンがワッシャに進入するような長さ及び位置である。このタイプの少なくとも4つの事前センタリング装置を接合部分端でレドームの円周周りに配置し、分布させると有利である。
【0044】
図11において、有益な実施形態によれば、好ましくは前記レドームの上部に位置する事前センタリングピン(900)のうちの2つが、フック形状を有し、対応するロッキングユニット(300)の基部に固定される。これらの特殊なピンは、他の事前センタリングピン(90)を収容するワッシャ(91)と比較して、半径方向の弾性が減少したエラストマーワッシャ(93)の中心に配置される。これらのピン(900)の特殊な形状とは、ピン(900)がレドームを開放するためのヒンジとして使用可能であるということであり、従って、レドームを取り外すことなくレーダにアクセスできるようにレドームを開放可能である。
【0045】
以上の記述は、本発明の様々な特徴及びその利益を介して、本発明がそれ自体で設定した目的を実現することを明確に説明するものである。特に、本発明は、質量の点で不利益をもたらすことなく迅速に開放又は除去可能である点は維持しつつ、機体に適応させ且つ水平に保たせる質を向上させたレドームを製造可能にする。
【符号の説明】
【0046】
1 レドーム
10 (機体の)接合部分端/組付け平面
11 (剛性)モノリシックリング
12 二重曲率面
20 ロッキング装置(ロック)
21 (ラッチ)フック
22 接着及び樹脂性ウェッジ
30 (ロッキング)ユニット
31 基部
40 (球状)センタリング装置
42 ナット
50 リセプタクルブラケット/球体
51 フック
70 フック用接続ブラケット
80 シール
81 シール
90 (センタリング)ピン
91、93 エラストマー製ワッシャ
100 スロット
110 溝
200 スロット/(ロック配置)ノッチ
300 ロッキングユニット
320 (ロッキングユニットの)前面/(球体の)ベアリング面
340 孔
410 ピン
420 ショルダ
510 (円錐状)リセプタクル
520 線条領域(溝付き接合部分面)
710 ロッキング(取付け)ピン
900 (事前センタリング)ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用レドーム(1)であって、航空機の機体とレドーム(1)の対向する面同士を接合可能な複数のロッキングユニット(30)を含み、前記ユニット(30)の各々が、
−取付手段を介して、前記機体の表面に対して略垂直方向に、前記表面へ牽引力を発揮可能なロッキング手段(20、21、70、710)と、
−前記機体とレドームの対向する面に対して略接線方向のせん断力に耐えることが出来るセンタリング手段(40、510)とを含み、
−前記ロッキング手段(20、21、70、710)は、前記レドーム(1)内のアセンブリによって発生する曲げ応力を最小にするように前記センタリング手段(40、510)にかかる合力の円錐内に位置するように配置される、レドーム(1)。
【請求項2】
前記レドームの構造体に、前記機体(10)と接合する端部から延びる長手方向スロット(200、100)を含む請求項1に記載のレドーム。
【請求項3】
前記レドームの構造体に、前記機体との接合部分の端部から延び、前記端部の円周上に配置された複数の長手方向スロット(200、100)を含み、前記ロッキングユニット(30)の各々が、レドームに固定されスロットの両縁部にわたる剛性支持面を含む請求項1に記載のレドーム。
【請求項4】
前記機体(10)と接合する端部から、前記各ロッキングユニット(30)の下に及ぶモノリシック周縁領域(11)を含み、前記レドームのその他の部分(12)がハニカム構造体から形成される請求項3に記載のレドーム。
【請求項5】
前記周縁領域(11)が、接合部分端の平面(10)に、前記機体に固定された変形可能シール(80、81)の端部を収容可能な溝(110)を含む請求項4に記載のレドーム。
【請求項6】
前記センタリング手段は、前記機体との接合部分を含む平面に配置され且つ前記レドームが閉鎖位置にある時に前記機体に接続されたリセプタクル(510)に嵌着するセンタリング装置(40)を備える請求項1に記載のレドーム。
【請求項7】
前記ロッキング手段が、ロック位置にある時、前記機体に接続されたピン(710)に力を及ぼすフック(21)を有するロッキング装置(20)を備える請求項6に記載のレドーム。
【請求項8】
前記機体との前記フックの接続点(710)と前記ロッキングユニット上の前記センタリング装置のベアリング点(410)との間の前記機体の長手軸上の距離が、30mm以下である請求項7に記載のレドーム。
【請求項9】
少なくとも2つのロッキングユニットが、前記機体に対して前記レドームを事前位置決めするための装置を備え、この装置がエラストマー製ワッシャ(91)に嵌着するピン(90)を備える請求項1乃至8のいずれか1項に記載のレドーム。
【請求項10】
前記複数のピン(900)の少なくとも2つが、前記接合部分の平面に略平行な軸に沿って前記レドームを連結するように設計されたフック形状を有する請求項9に記載のレドーム。
【請求項11】
−前記レドームの端部に機械加工によって複数のスロット(200、100)に切り込みを入れるステップと、
−前記レドームの端部をテンプレートに配置し、接合部分端の形状及び周長をテンプレートに適応させるステップと、
−前記レドームの端部の形状を固めるように前記レドームが前記テンプレート上にある間に前記各スロットに沿って複数のロッキングユニット(30)を固定するステップと
を含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の複合材料のレドーム(1)の製造方法。
【請求項12】
−ハニカムコアによって分離される2つの熱可塑性又は熱硬化性のマトリクス複合パネルによって構成される前記レドームの形状に複合構造体(12)を成形するステップと、
−この構造体の端部にモノリシックリング(11)を接合するステップと、
を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のレドームを備える航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−504468(P2013−504468A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528435(P2012−528435)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051896
【国際公開番号】WO2011/030078
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509265313)エアバス オペラシオン(エス.ア.エス) (20)
【Fターム(参考)】