説明

レバー切換装置、定着装置、および画像形成装置

【課題】レバーの復帰時の衝撃を緩和できて、衝撃音の発生を抑えることができるレバー切換装置、定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】レバー切換装置は、第1部材46と、第2部材47と、第1部材46と第2部材47を圧接する方向に付勢する弾性部材とを備えた構造体に対して付設される。レバー50の操作によって、第1部材46と第2部材47とは、低圧接状態と高圧接状態との変位が可能である。低圧接状態から高圧接状態に切換える方向にレバー50を揺動させる際に、この揺動に対して抵抗を付与する抵抗付与手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真技術を利用した複写機やプリンタなどの画像形成装置、このような画像形成装置に用いられる定着装置、および、このような定着装置に用いられるレバー切換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真式等の画像形成装置においては、転写材としての用紙に転写されるトナー画像に熱を加えて定着する熱定着の方法が採用されている。この熱定着に用いる定着装置は、図9と図10に示すように、定着部材としての定着ローラ101と、加圧部材としての加圧ローラ102とを備える。
【0003】
定着ローラ101は、例えば、熱伝導性基体103と、この基体103を被覆する外装体104とからなる円筒状のローラ本体105と、このローラ本体105に内装されるハロゲンヒータ等の加熱源106とを備える。なお、外装体104は、弾性層と、この弾性層を被覆する表層とからなる。加圧ローラ102は、芯金107と、この芯金107を被覆する外装体108とからなる。なお、装体108は、弾性層と、この弾性層を被覆する表層とからなる。
【0004】
そして、定着ローラ101と加圧ローラ102とは、図示省略のバネ部材にて、圧接するように押圧され、定着ニップNが形成される。ところで、このような定着装置に対して、転写材Pが普通紙の場合や封筒の場合等がある。しかしながら、封筒は、紙を折り曲げて張り合わせるものである。このため、このような封筒が定着ニップを通過する際に、歪やシワが発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、従来では、普通紙を通過させる場合には、図9に示すように、定着ニップNの範囲を広く、封筒を通過させる場合、図10に示すように、定着ローラ101と加圧ローラ102との圧着圧(定着圧)を小さくしていた。このように、定着ニップNの範囲を小さくするようにして、封筒を通過させる場合にもシワ等が発生させにくくしていた。
【0006】
この定着ローラ101と加圧ローラ102との間の距離を広げる方法として、レバーを操作して、てこの原理によって、定着ローラ101を支持している定着フレームと加圧ローラ102を支持している加圧フレームとの間を開けるようにする。また、直接的に定着ローラ101と加圧ローラ102との間の距離を広げ、ニップ幅を小さくするようにする等の方法を提案できる。
【0007】
レバーを用いる方法としては、図7と図8に示すような装置を提案できる。すなわち、定着ローラ101を定着フレーム110にて保持させるとともに、加圧ローラ102を加圧フレーム111に保持させる。この際、加圧ローラ11は、定着フレーム101に設けたれた軸部103を中心に回動するように設定される。また、図示省略のバネ部材にて、フレーム110,111には加圧力が付与される。これによって、定着ローラ101と加圧ローラ102が圧接状となって、定着ニップNが形成される。
【0008】
そして、加圧フレーム111には、レバー部材115が枢支軸116を中心に揺動可能として枢着されている。図7では、図示省略のバネ部材の付勢力によって、定着ニップNが大きく設定されている状態である。この状態から、レバー部材115を矢印A1方向に、枢支軸116を中心に揺動させることによって、図8に示すように、レバー部材115の先端部が定着フレーム110を接触して、加圧フレーム111が軸部113を中心に矢印B1方向に揺動する。これによって、加圧ローラ102が定着ローラ101から離間するように揺動して、定着ニップNの幅が小さくなる。
【0009】
また、この図8に示す状態から、レバー部材115を矢印A2方向に、枢支軸116を中心に揺動させることによって、レバー部材115による定着フレーム110への押圧を解除すれば、加圧フレーム111が軸部113を中心にB2方向に揺動して、図7に示すように、定着ニップNの幅が大きい状態に戻すことができる。
【0010】
このように、構成することによって、図7に示す状態では、普通紙P1を定着ニップNを通過させ、図8に示す状態では、封筒P2を定着ニップNを通過させることができる。これによって、封筒P2を通過させても、シワ等が発生させにくくしていた。
【0011】
しかしながら、図7と図8に示すように、レバー機構として1リンク機構を用いたものでは、定着ローラ101と加圧ローラ102との間の距離を広げる量が少なかったり、広げる量を大きくしようとするとレバーの操作力が大きくなったりおすれがあった。
【0012】
そこで、レバー機構として2リンク機構として、定着ローラ101と加圧ローラ102の間の距離を広げる量が大きくするとともに、レバーの操作力を小さくすることを提案できる。
【0013】
ところで、図8に示す状態(低圧接状態)から図7に示す状態(高圧接状態)に切り替える場合、レバー部材115による定着フレーム110への押圧を解除すれば、フレーム110,111に対して加圧力を付与するバネ部材の弾性力によって、レバー部材115の矢印B2方向揺動が加速される。このため、この定着装置に大きな衝撃が加わることになり、衝撃音が発生するとともに、衝撃によって、定着ニップNの設定を精度よくできなくなったりする場合がある。特に、レバー機構として2リンク機構とすることによって、低圧接状態から高圧接状態に戻す際の勢いや衝撃が大きくなるおそれがある。
【0014】
従来には、レバー操作によって、部品の位置を変更する装置が種々あり、レバー復帰時に発生する音を緩和するようにしたものがある(特許文献1)。また、衝撃を緩和するようにしたものもある(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記特許文献1に記載のものでは、レバーをカムの係止段部から解除する解除手段と、レバーをカム面に復帰させる復帰手段とを備えたものある。この場合、カムは、係止段部よりカム回転方向下流部で該係止段部に隣接するカム解除面と、該カム解除面より下流部に配置され解除手段により解除されたレバーが復帰するカム復帰面を備える。そして、カム復帰面の高さを、カム解除面の高さよりも高く設定している。
【0016】
特許文献1では、レバーはカムの係止段部との係合が解除されると、レバーはカム解除面に沿って移動し、レバーが復帰する際には、カム解除面より高いカム復帰面に係合することになり、その可動ストロークが完全になくなるように動作し、復帰動作するレバーはカム面へ衝突せず、騒音を発生しない。
【0017】
しかしながら、この特許文献1に示す構成としたとしても、騒音の発生を緩和することができても、レバーの復帰時の衝撃を緩和できない。
【0018】
また、特許文献2には、離間付勢手段の付勢力が除去された時に、衝撃を緩和するための緩衝手段を設けた画像形成装置が記載されている。すなわち、この緩衝手段としては、スポンジ等からなり、レバーをこの緩衝手段に衝突させて、その衝突の衝撃を緩和するものである。しかしながら、通常、レバーにこの緩衝手段が作用しないように、接離ソレノイドを必要とする。このため、コスト高となる欠点がある。
【0019】
本発明は、斯かる事情に鑑み、簡単な構成で低コストに、レバーの復帰時の衝撃を緩和できて、衝撃音の発生を抑えることができるレバー切換装置、定着装置および画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のレバー切換装置は、第1部材と、第2部材と、第1部材と第2部材を圧接する方向に付勢する弾性部材とを備えた構造体に対して、レバーの操作によって、第1部材と第2部材とは、低圧接状態と高圧接状態との変位が可能なレバー切換装置であって、低圧接状態から高圧接状態に切換える方向にレバーを揺動させる際に、この揺動に対して抵抗を付与する抵抗付与手段を備えたものである。
【0021】
本発明のレバー切換装置によれば、レバーの操作によって、第1部材と第2部材とを低圧接状態と高圧接状態とに変位させることができる。そして、抵抗付与手段によって、低圧接状態から高圧接状態に切換える方向にレバーを揺動させる際に、抵抗を付与することができる。このため、低圧接状態から高圧接状態に切換える際における弾性部材の付勢を緩和することができ、この切換え時のレバーの揺動を緩やかにすることができる。
【0022】
本発明の定着装置は、熱源を備えた定着部材と、定着部材と圧接する加圧部材とを備え、未定着トナー画像を担持した転写材を定着部材と加圧部材とで形成されるニップを通過させることにより、転写材上のトナー画像を定着する定着装置において、前記レバー切換装置を備え、前記第1部材が前記定着部材であり、前記第2部材が前記加圧部材であるものである。
【0023】
本発明の定着装置によれば、レバーの操作によって、定着部材と加圧部材とを低圧接状態と高圧接状態とに変位させることができる。そして、抵抗付与手段によって、低圧接状態から高圧接状態に切換える方向にレバーを揺動させる際に、抵抗を付与することができる。このため、低圧接状態から高圧接状態に切換える際における弾性部材の付勢を緩和することができ、この切換え時のレバーの揺動を緩やかにすることができる。
【0024】
本発明の画像形成装置は、前記定着装置を備えたものである。本発明の画像形成装置によれば、定着装置において、レバーの操作によって、定着部材と加圧部材とを低圧接状態と高圧接状態とに変位させることができる。そして、抵抗付与手段によって、低圧接状態から高圧接状態に切換える方向にレバーを揺動させる際に、抵抗を付与することができる。このため、低圧接状態から高圧接状態に切換える際における弾性部材の付勢を緩和することができ、この切換え時のレバーの揺動を緩やかにすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のレバー切換装置では、低圧接状態と高圧接状態との切換を行うことができ、操作性に優れる。しかも、低圧接状態から高圧接状態に切換える際における弾性部材の付勢を緩和することができ、切換時の衝撃を緩和できて、各状態を安定して維持できるとともに、切換の信頼性の向上を図ることができ、かつ、衝撃音の発生も抑えることができる。また、比較的高価なソレノイド等を用いる必要がなく、低コストで構成することができる。
【0026】
本発明の定着装置では、低圧接状態と高圧接状態との切換を行うことができ、操作性に優れる。すなわち、高圧接状態とすることによって、定着ニップが広くなって、普通紙に対して安定した定着機能を発揮することができる。また、低圧接状態とすることによって、封筒を通過させても、シワ等が発生させにくくすることができる。特に、低圧接状態から高圧接状態への切換時の衝撃を緩和できて、各状態を安定して維持できるとともに、切換の信頼性の向上を図ることができ、しかも、衝撃音の発生も抑えることができる。低コストを図ることができる。
【0027】
本発明の画像形成装置では、前記作用効果を発揮する定着装置を具備することになる。このため、普通紙に対して安定した定着機能を発揮するとともに、封筒に対してもシワ等が発生させにくくすることができ、しかも、衝撃音の発生も抑えることができる高品質の画像形成装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態に係る定着装置を示し、高圧接状態の簡略図である。
【図2】前記図1の定着装置を示し、低圧接状態の簡略図である。
【図3】前記図1に示す定着装置を用いた画像形成装置の全体構成図である。
【図4】前記図1に示す定着装置の要部拡大図である。
【図5】前記図1に示す定着装置の要部分解簡略図である。
【図6】前記図1に示す定着装置のレバーと抵抗付与手段とは非係合状態の拡大図である。
【図7】定着装置の比較例を示し、高圧接状態の簡略図である。
【図8】図7の定着装置を示し、低圧接状態の簡略図である。
【図9】従来の定着装置を示し、高圧接状態の簡略図である。
【図10】従来の定着装置を示し、低圧接状態の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図に示す実施例による本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例】
【0030】
図3は、画像形成装置の実施の一形態を示す概略構成図である。図3に示す画像形成装置は、4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1BKを備えている。各プロセスユニット1Y,1C,1M,1BKは、画像形成装置本体100に対して着脱可能に構成してある。
【0031】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1BKは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。そこで、1つのプロセスユニット1Yを例にその構成を説明する。
【0032】
プロセスユニット1Yは、像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ3と、感光体2の表面にトナー像を形成する現像手段としての現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段としての感光体クリーニングブレード5を備えている。
【0033】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1BKの上方には、感光体2の表面を露光する露光手段としての露光装置7が配設されている。また、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1BKの下方には、中間転写ユニット6が配設されている。中間転写ユニット6は、無端状のベルトから構成される中間転写ベルト10を有する。中間転写ベルト10は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に張架され、図の矢印の方向に周回走行可能に構成されている。
【0034】
中間転写ベルト10の内周面には、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11Y,11C,11M,11BKが配設されている。各一次転写ローラ11Y,11C,11M,11BKは、それぞれ感光体2に対向した位置で中間転写ベルト10の内周面に圧接しており、この圧接により、各感光体2は中間転写ベルト10の外周面に圧接して一次転写ニップを形成している。
【0035】
中間転写ベルト10を張架する駆動ローラ8に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は、中間転写ベルト10の外周面に圧接しており、その圧接部において二次転写ニップを形成している。
【0036】
中間転写ユニット6は、中間転写ベルト10の表面をクリーニングするためのベルトクリーニング装置21を備える。また、中間転写ユニット6の下方には、廃トナーを収容するための廃トナー収容器22が配設されている。廃トナー収容器22の入口部にはベルトクリーニング装置21から伸びた図示しない廃トナー移送ホースが接続されている。
【0037】
画像形成装置本体100の下部には、紙やOHPシート等の記録媒体Pを収容した記録媒体収容部13が配設されている。記録媒体収容部13には、記録媒体Pを搬出する供給ローラ14等が設けてある。
【0038】
画像形成装置本体100内には、記録媒体Pを記録媒体収容部13から上方へ案内するための搬送路R1が配設されている。駆動ローラ8と二次転写ローラ12によって形成された二次転写ニップよりも、搬送路R1の搬送方向上流側(図の下方)に、一対のレジストローラ15a,15bが配設されている。また、二次転写ニップよりも、搬送路R1の搬送方向下流側(図の上方)に、定着装置16が配設されている。定着装置16は、定着ローラ17と加圧ローラ18を有する。定着ローラ17と加圧ローラ18は互いに圧接しており、その圧接部において定着ニップを形成している。
【0039】
搬送路R1の搬送方向下流端部には、一対の排出ローラ19a,19bが配設されている。また、記録媒体Pを積載するためのストック部20が、画像形成装置本体100の上面を内方へ凹ませて形成されている。
【0040】
以下、図3を参照して上記画像形成装置の基本的動作について説明する。
プロセスユニット1Yにおいて、感光体2を図の矢印の方向に回転させ、その感光体2の表面を帯電ローラ3によって均一な高電位に帯電させる。次いで、画像データに基づいて露光装置7から感光体2の表面にレーザビームが照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。この感光体2の表面に形成された静電潜像の部分に、現像装置4によって帯電させたトナーを静電的に転移させ、イエローのトナー画像を形成(可視画像化)する。
【0041】
一次転写ローラ11Yに、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、一次転写ローラ11Yと感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界を形成する。そして、一次転写ニップにおいて、回転する感光体2上のトナー画像を、図の矢印方向に走行する中間転写ベルト10に一次転写する。
【0042】
その他の各プロセスユニット1C,1M,1BKにおいても、同様にして感光体2上にトナー画像を形成し、4色のトナー画像を互いに重なり合うように中間転写ベルト10に一次転写する。
【0043】
また、一次転写行程を経た後の感光体2の表面を、感光体クリーニングブレード5によってクリーニングし、残留トナーを除去する。さらに、感光体2の表面に残る残留電荷を図示しない除電ランプによって除電する。
【0044】
一方、記録媒体収容部13に収容されている記録媒体Pを、供給ローラ14を回転させて搬送路R1へ送り出す。送り出された記録媒体Pは、レジストローラ15a,15bによって一旦停止される。
【0045】
また、二次転写ローラ12にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加して二次転写ニップに転写電界を形成する。あるいは、二次転写ローラ12に対向する駆動ローラ8にトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加して、同様の転写電界を形成してもよい。その後、レジストローラ15a,15bの駆動を再開し、中間転写ベルト10上のトナー画像とタイミング(同期)をとって記録媒体Pを二次転写ニップへ送る。そして、二次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト10上のトナー画像を記録媒体P上に一括して二次転写する。また、二次転写後、中間転写ベルト10の表面に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置21によって除去され、除去されたトナーは廃トナー収容器22へ回収される。
【0046】
トナー画像を転写された記録媒体Pは、定着装置16へと搬送される。定着装置16に送り込まれた記録媒体Pは、定着ローラ17と加圧ローラ18間に挟まれて加熱・加圧され、トナー画像が記録媒体P上に定着される。その後、記録媒体Pは排出ローラ19a,19bによってストック部20に排出される。
【0047】
定着装置16は、図1と図2に示すように、第1部材46としての定着部材である定着ローラ17と、第2部材47としての加圧部材である加圧ローラ18と、第1部材46と第2部材47を圧接する方向に付勢する弾性部材(図示省略)とを備えた構造体である。
【0048】
この場合、レバー50の操作によって、第1部材46と第2部材47とは、低圧接状態と高圧接状態との変位が可能なレバー切換装置51を備える。定着ローラ17を定着フレーム61にて保持させ、加圧ローラ18は加圧フレーム62に保持させる。この際、加圧ローラ18は、定着フレーム61に設けたられた軸部69を中心に回動するように設定される。そして、図示省略の弾性部材(バネ部材)にて、フレーム61,62には加圧力が付与される。これによって、定着ローラ17と加圧ローラ18が圧接状となって、定着ニップNが形成される。なお、この弾性部材(バネ部材)のバネ荷重は65Nであり、ニップ荷重は340Nである。
【0049】
定着ローラ17は、例えば、熱伝導性基体63と、この基体63を被覆する外装体64とからなる円筒状のローラ本体65と、このローラ本体65に内装されるハロゲンヒータ等の加熱源66とを備える。なお、外装体64は、弾性層と、この弾性層を被覆する表層とからなる。
【0050】
熱伝導性基体63は、所要の機械的強度を有し、熱伝導性の良好な炭素鋼材やアルミニウム材等からなる。また、外装体64の弾性層は、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムからなる。表層としては、トナーとの離型性を良好とすると共に、弾性層の耐久性を高めるものであり、熱伝導率が高く耐久性に富む材料が用いられる。フッ素樹脂(PFA)のチューブ、フッ素樹脂(PFA)の塗布層、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の被覆層等で構成される。
【0051】
定着ローラ17は、その外径寸法が15mm〜40mm程度とされ、外装体64の弾性層の肉厚が0.5mm〜3mm程度とされ、外装体64の表層の肉厚が10μm〜80μm程度とされる。なお、この実施例では、外径寸法を24mmとし、弾性層の肉厚を1mmとし、表層の肉厚を43μmとした。
【0052】
加圧ローラ18は、芯金67と、この芯金67を被覆する外装体68とからなる。外装体68は、弾性層と、この弾性層を被覆する表層とからなる。芯金67としては、例えば、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)等で構成され、外装体68の弾性層としては、シリコーンゴムやフッ素ゴム等、あるいはこれらの発泡体が用いられる。外装体68の表層は、離型性に富むPFA、PTFA等の耐熱性フッ素樹脂のチューブ等で構成される。
【0053】
加圧ローラ18は、その外径寸法が20mm〜40mm程度とされ、外装体68の弾性層の肉厚が0.5mm〜10mm程度とされ、外装体68の表層の肉厚が10μm〜80μm程度とされる。なお、この実施例では、外径寸法を30mmとし、弾性層の肉厚を8mmとし、表層の肉厚を50μmとした。
【0054】
定着ローラ17の近傍には、温度検出手段としてのサーミスタ(図示省略)、異常温度防止用のサーミスタ(図示省略)等が配置され、これらのサーミスタからの検出信号が、制御手段(図示省略)に入力される。そして、例えば、マイクロコンピュータ等にて構成される制御手段により、定着ローラ17の温度が所定温度領域内に維持される。なお、定着ニップNよりも記録媒体搬送方向の上流側には定着入口ガイド(図示省略)があり、定着ニップNよりも記録媒体搬送方向の下流側には定着出口ガイド(図示省略)がある。
【0055】
レバー切換装置51は、操作用の前記レバー50と、抵抗付与手段70とを備える。レバー50は、第1リンク50aと第2リンク50bを有するリンク機構71にて構成される。この場合、第2リンク50bは、一端部が定着フレーム61の枢支ピン72を介して枢結され、他端部が後述するように、枢支ピン73を介して第1リンク50aに枢結されている。
【0056】
また、第1リンク50aは、図4に示すように、リンク本体75と、このリンク本体75から突設される操作部76とからなる。そして、リンク本体75は、長円形状体であって、一方の円弧部に凹凸歯77が設けられ、加圧フレーム62に枢支ピン78を介して枢結されている。このリンク本体75に枢支ピン73を介して第1リンク50aの他端部が枢結される。操作部76は、リンク本体75の一方(上方)の長辺からこのリンク本体75に直交する方向に延びる基部76aと、この基部76aから屈曲して延びる屈曲部76bとからなる。なお、屈曲部76bには、すべり止め79が設けられている。
【0057】
抵抗付与手段70としては、いわゆるトルクリミッタが用いられる。この場合、図5に示すように、受け部材82と、貫通孔85aを有するプレート85と、波ワッシャ86と、外周に凹凸歯87bを有する歯車87と、ボルト部材88とを備える。
【0058】
受け部材82は、鍔部82aとボス部82bと軸部82cとからなる。また、鍔部82aは円盤体であり、ボス部82bは扁平長円形状板であり、軸部82cは、断面が長円形の短軸体である。また、加圧フレーム62には、この受け部材82の軸部82cが嵌合される孔部90が設けられている。この孔部90は、長円孔状の本体部90aと、この本体部90aの下端に連設される逃げ用のスリット孔90bとを有する。なお、この加圧フレーム62には、この加圧フレーム62を保持するための取付孔55aを有する取付片55と、軸部69を支持するための孔部56aを有する取付片56とを備える。また、加圧フレーム62には、加圧ローラ18を支持するための貫通孔57が設けられている。
【0059】
そして、受け部材82が加圧フレーム62の裏面62bから孔部90に嵌入され、表面62aから突出した軸部82cに、プレート85と、波ワッシャ86と、歯車87とを外嵌し、ボルト部材88をこれらの貫通孔85a、86a、87aに挿通して、受け部材82のねじ孔82dにボルト部材88のねじ部88aを螺合するものである。
【0060】
このように、ボルト部材88を受け部材82に螺着することによって、波ワッシャ86を、プレート85と歯車87とで挟持することになって、歯車87の回転に摩擦により抵抗(トルク)を発生させることができる。また、抵抗付与手段70は図示省略のバネ部材によって、矢印Z1方向(図4等参照)に付勢されていて、孔部90の本体部90aに対応する位置に維持される。抗力付与手段70とレバー50とは、歯車機構80を介して嵌合(係合)されるようになっている。
【0061】
ところで、定着ローラ17と加圧ローラ18とは、弾性部材(バネ部材)の弾性力によって図1に示すように高圧接状態となって、定着ニップNが大となっている。この状態においては、フレーム61,62は近接した状態であって、レバー50の第1リンク50aは、その操作部76の屈曲部76bが鉛直方向に沿って延びた状態となっている。なお、この高圧接状態におけるニップNの幅は約6.5mm程度である。
【0062】
この図1に示す状態から図2に示すように、レバー50の第1リンク50aを、矢印X1方向に枢支ピン78を中心に揺動させる。この際、第1リンク50aと第2リンク50bとは、枢支ピン73を介して連結されているので、この揺動によって、第2リンク50bは、枢支ピン72を中心に矢印X4方向に揺動する。これによって、フレーム62が軸部69を中心に矢印E1方向に揺動して、定着ローラ17と加圧ローラ18とは、低圧接状態となって、定着ニップNが狭くなる。なお、この低圧接状態におけるニップNの幅は約2mm程度である。
【0063】
また、この図2に示す状態から、レバー50を矢印X2方向に揺動させることによって、第2リンク50bが、枢支ピン72を中心に矢印X3方向に揺動する。これによって、図1に示すように、フレーム62が軸部69を中心に矢印E2方向に揺動して、定着ローラ17と加圧ローラ18とは、高圧接状態となって、定着ニップNが広くなる。
【0064】
この図2に示す状態から、レバー50の第1リンク50aを矢印X2方向に揺動させれば、抵抗付与手段70の歯車87の凹凸歯76bと凹凸歯77とが噛合しつつ、第1リンク50aが揺動する。このため、この揺動に対して、抵抗付与手段70によって抗力が付与される。すなわち、低圧接状態から高圧接状態に切換える際における弾性部材(定着ローラ17と加圧ローラ18とを圧接させるためのバネ部材)の付勢力を緩和することができる。
【0065】
ところで、このレバー50の矢印X1方向の揺動の際には、レバー50の凹凸歯77が、抵抗付与手段70の歯車87の凹凸歯76bに噛合するものであれば、この揺動時にも、抵抗付与手段70によって、その揺動に抗する抗力が発生することになる。しかしながら、この揺動の際には、図示省略の弾性部材にて、定着ローラ17と加圧ローラ18とが圧接する方向に付勢されている、つまり抗力が作用している。このため、抵抗付与手段70による抗力をさらに必要としない。そこで、この揺動の際には、図6に示すように、抵抗付与手段70を図示省略のバネ部材の付勢力を抗して、矢印Z2方向に押し下げれば、歯車87の凹凸歯76bをレバー50の凹凸歯77から離間させることができる。この状態とすれば、矢印X1方向の揺動における抗力付与を回避することができる。また、図2に示す状態では、レバー50のリンク機構がこの固定状態を維持することができる。
【0066】
この実施例の定着装置では、レバー切換装置51を、2リンク機構としている。このため、コンパクト化を図ることができるとともに、操作力を小さく(例えば、20N以下)できる。(これに対して、1レバー機構を用いたものでは、定着ローラと加圧ローラとの間の距離を広げる量が少なかったり、広げる量を大きくしようとするとレバーの操作力が大きくなったりおすれがあった。)しかも、低圧接状態から高圧接状態に切換える際における弾性部材の付勢を緩和することができ、切換時の衝撃を緩和できて、各状態を安定して維持できるとともに、切換の信頼性の向上を図ることができ、しかも、衝撃音の発生も抑えることができる。また、比較的高価なソレノイド等を用いる必要がなく、低コストで構成することができる。
【0067】
実施例では、抵抗付与手段70とレバー50との係合(嵌合)は、歯車嵌合であるので、レバー50を戻す際の衝撃や衝撃音をより安定して抑えることができる。しかも、凹凸歯77は円周全体に形成されたものではないので、必要な時のみ抵抗を与えることができる。すなわち、図1に示す高圧接状態近傍において、その噛合が解除されるようにしてもよい。
【0068】
高圧接状態から低圧接状態に切換える方向にレバー50を揺動させる際に、抵抗付与手段70をレバー50から退避して非抵抗付与状態する退避機構95を備えたものが好ましい。このように、退避機構95を備えているので、高圧接状態から低圧接状態に切換える際に、抵抗付与手段70によるレバー50に対する抵抗力付与を回避でき、この切換えを安定して行うことができる。すなわち、この高圧接状態から低圧接状態への切換えを行う場合、弾性部材の弾性力に抗したものであるので、退避機構95が無ければ、この弾性力と抵抗付与手段70の抗力とに反した方向にレバー50を揺動させる必要があるからである。
【0069】
退避機構95は、抵抗付与手段70による抵抗を付与する状態となるように付勢する付勢部材を備えるようにするのが好ましい。このように設定することによって、通常は、抵抗付与手段70によって、レバーには抵抗が付与される状態となっている。このため、低圧接状態から高圧接状態に切換える際には、安定して抵抗を付与することができ、衝撃の緩和機能が安定する。
【0070】
退避機構95を備えたものでは、高圧接状態から低圧接状態に切換える際に、高圧接状態から低圧接状態への切換えを安定して行うことができ、操作性の向上を図ることができる。
【0071】
本発明の画像形成装置では、前記作用効果を発揮する定着装置を具備することになる。このため、普通紙に対して安定した定着機能を発揮するとともに、封筒に対してもシワ等が発生させにくくすることができ、しかも、衝撃音の発生も抑えることができる高品質の画像形成装置を安価に提供することができる。
【0072】
ところで、図1に示す高圧接状態では、定着ニップNが大きくなり、普通紙P1が通過するモードであり、図2に示す低圧接状態では、定着ニップNが小さくなり、封筒P2が通過するモードである。すなわち、封筒P2を通過させる場合、定着ローラ1と加圧ローラ2との圧着圧(定着圧)を小さくして、定着ニップNの範囲を小さくするようにして、シワ等が発生させにくくすることができる。また、普通紙モードでは、定着ニップNを大きくして、安定した定着機能を発揮させることができる。なお、図2に示す低圧接状態として、保管モード(装置を使用しない輸送時や保管時のモード)とすれば、定着ローラ17と加圧ローラ18の塑性変形を防止できる。このため、印刷画像のノイズや動作時の騒音を防止できる。
【0073】
ところで、この実施例では、図1に示す普通紙モードと図2に示す封筒モードの2つのモードに限るものであったが、他の実施例として、さらに別モードを構成されるものであってよい。この別モードとしては、図2の封筒モードよりも定着ニップNが小さいもの、又は、定着ニップNを形成しないもの等とすることができる。このモードでは、定着ローラ17と加圧ローラ18とが圧接状とならないので、このモードを保管モード(装置を使用しない輸送時や保管時のモード)とすることによって、定着ローラ17と加圧ローラ18の塑性変形をより有効に防止できる。
【0074】
また、別モードとしては、図1に示す高圧接状態と、図2に示す低圧接状態と、の間の中圧接状態としたものであってもよい。この中圧接状態とすることによって、定着ニップNを図1と図2の間の大きさにすることができる。これによって、このニップNに最適な記録媒体の定着が可能となる。
【0075】
ところで、3段階のモードを形成する場合、定着ローラ17と加圧ローラ18との間隔を3段階に設定する必要がある。このため、レバー50を構成するリンク構造をこの各モードで維持できる機構とすればよい。
【0076】
抵抗付与手段70として、前記実施例では、波ワッシャを用いたトルクリミッタであった。しかしながら、トルクリミッタとして、従来からオイルを用いたもの、板バネを用いたもの等の種々のタイプがある。このため、トルクリミッタとしては、既存の種々のタイプのものを使用することができる。すなわち、抵抗付与手段としては、市販の種々のトルクリミッタを用いることができ、より安定して低コスト化を図ることができる。
【0077】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。本発明に係る画像形成装置は、電子写真複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ装置等がある。また、第1部材と第2部材と弾性部材とを備えた構造体として定着装置に限るものではなく、例えば、感光体ドラムと、これに所定の圧接力で圧接する帯電ローラとを備えた構造体であってもよい。前記実施形態では、形成される定着ニップの圧接状態は、2つ、又は3つであったが、4以上であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
46 第1部材
47 第2部材
50 レバー
70 抵抗付与手段
80 歯車機構
95 退避機構
N 定着ニップ
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開平11−190410号公報
【特許文献2】特開平8−272191号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、第2部材と、第1部材と第2部材を圧接する方向に付勢する弾性部材とを備えた構造体に対して、レバーの操作によって、第1部材と第2部材とは、低圧接状態と高圧接状態との変位が可能なレバー切換装置であって、
低圧接状態から高圧接状態に切換える方向にレバーを揺動させる際に、この揺動に対して抵抗を付与する抵抗付与手段を備えたことを特徴とするレバー切換装置。
【請求項2】
抵抗付与手段とレバーとが歯車機構を介して係合状態となることを特徴とする請求項1に記載のレバー切換装置。
【請求項3】
抵抗付与手段は、オイルを用いたトルクリミッタ手段にて構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレバー切換装置。
【請求項4】
抵抗付与手段は、板バネを用いたトルクリミッタ手段にて構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレバー切換装置。
【請求項5】
抵抗付与手段は、波ワッシャを用いたトルクリミッタ手段にて構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレバー切換装置。
【請求項6】
高圧接状態から低圧接状態に切換える方向にレバーを揺動させる際に、前記抵抗付与手段をレバーから退避して非抵抗付与状態する退避機構を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のレバー切換装置。
【請求項7】
退避機構は、抵抗付与手段による抵抗を付与する状態となるように付勢する付勢部材を備えたことを特徴とする請求項6に記載のレバー切換装置。
【請求項8】
レバー操作の変位には、低圧接状態と、高圧接状態と、低圧接状態と高圧接状態とは異なる状態とがあることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のレバー切換装置。
【請求項9】
熱源を備えた定着部材と、定着部材と圧接する加圧部材とを備え、未定着トナー画像を担持した転写材を定着部材と加圧部材とで形成されるニップを通過させることにより、転写材上のトナー画像を定着する定着装置において、
前記請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のレバー切換装置を備え、前記第1部材が前記定着部材であり、前記第2部材が前記加圧部材であることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
前記請求項9に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−11686(P2013−11686A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143300(P2011−143300)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】