説明

レピア織機の緯糸把持駆動機構

【課題】 把持レバーが正確に動作して緯糸の把持ミスを起さず、低速から超高速までの織機運転に適合し、緯糸を精確に緯入して高品質織物の製織を行えるレピア織機を提供。【解決手段】 レピアヘッドの糸銜え部に臨向して先端の糸抑え部を差し伸べ、同糸抑え部は糸銜え部に合接揺動したとき糸銜え部との間に緯糸を挟着可能で、逆に同糸抑え部は後部アクション・ポイントに力を受けたとき糸銜え部から離分する方向へ揺動して挟着中の緯糸を開放可能である揺動把持レバーと;この揺動把持レバーのアクション・ポイントに作用可能で、当該レピアルームの主軸の設定クランク角度に応じて印加される電圧にて瞬間的に伸縮変位して揺動把持レバーのアクション・ポイントに作用し糸抑え部をフック部の糸銜え部から離分せしめる積層圧電素子から成る直動アクチュエータを採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レピア織機の緯糸把持駆動機構の改良、更に詳しくは、積層圧電素子の印加電圧に対する瞬間応答性を巧みに利用してレピアヘッドにおける緯糸の把持・開放を的確かつ高速化を可能にする画期的なレピア織機の緯糸把持駆動機構に関するものであって、レピア織機による高速製織から低速製織の全てに適用することができ、特に極細金属繊維の製織にも有効である。
【背景技術】
【0002】
ロッドやスチールテープの先端に装着したレピアヘッドで緯糸を銜えてスレー上を走行させ、経糸開口中に緯入れして製織を行うレピア織機は、流体噴射(エアジェットまたはウォータージェット)による緯糸搬送力を利用して緯入を行うジェット織機に較べて回転速度が若干遅い。それでも、様々な性質を有する糸(例えば、ステンレス・ファイバーのような金属繊維糸)を高精度に緯入れすることができることから、精密で高品質度の織物を製織できる織機として信頼が高く、製織業界に広く普及している。
【0003】
そして最近、レピア織機を高速化する研究開発が進んで、1分間に 500〜800 回転もの高速で回転製織するレピア織機も出現するようなってきた。しかし、レピア織機の高速化を実現するためには、給糸部から緯糸を確実に銜え引き取って精確に経糸開口の中に緯入れするレピアヘッドの緯糸把持にも迅速応答性と確実安定性とが保障されなければならないし、レピアヘッドの緯糸把持動作によって当該ヘッドに余計な振動が発生すると、緯入が不整になって得られる織物の品質に悪影響が生ずる。
【0004】
従来、レピア織機の緯糸把持機構としては、特許文献1に開示される「キャリアレピアのヤーンキャッチャー開閉装置」が知られている。即ち、特許文献1には当該レピア織機の主軸の回転をカムを介してオープナーに伝達せしめ、このオープナーの動きに連動するヤーンキャッチャー(把持レバー)とレピアヘッドとの間に主軸の回転速度に合致した速度で緯糸を把持させる機械式の緯糸把持機構(特許文献1の段落[0013])、およびレピア織機の主軸にエンコーダを付設し、このエンコーダの出力する回転角度信号をソレノイドやエアシリンダのごときアクチュエータを駆動させてヤーンキャッチャーとレピアヘッドとの間に緯糸を把持させる電気式の緯糸把持機構(特許文献1の段落[0014]〜[0016])が開示されている。
【特許文献1】特開2000−73256号公報(段落[0013]〜[0016]、および 図2、図3および図4参照)
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたレピア織機の機械式緯糸把持機構は、主軸に取り付けたカムの回転運動をリンク手段により進退運動に変換して伝達するものであるから、主軸の回転が高速化してくると振動が激しくなるため、精々、300/rpm 程度の回転速度にしか適用できない。他方また、もう一つ同特許文献2に開示された電気式緯糸把持機構にしても、エンコーダの回転角度信号によってソレノイドやエアシリンダのアクチュエータを駆動させるものであるから、前記ソレノイドやエアシリンダの応答速度に制約されるため、如何に最新のソレノイドやエアシリンダを採用しても 500/rpmの回転速度以上には追従することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のレピア織機の緯糸把持機構に前述のごとき難点があったことに鑑みて為されたものであって、レピアヘッドの把持レバーが非常に正確なタイミングで動作して緯糸の把持と開放とを確実に行えて把持ミスを起すことなく精確かつ安定に緯入れできると共に、低速から超高速の織機運転に適合して的確に緯糸を把持・開放して正確に緯入して高品質の織物の製織を可能にするレピア織機における画期的な緯糸把持駆動機構を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の他の目的は、繊維径が18μm以下の細くて切れ易い極細の金属繊維糸でも的確かつ安定に把持することができて、高密度金属繊維布(例えば、400/in)でも緯入製織することを可能にするレピア織機の高精度な緯糸把持駆動機構を提供するにある。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、積層圧電素子を突押アクチュエータとして採用することによりレピアヘッドを小型軽量化し、レピアヘッドの慣性抵抗と運動振動が極端に少ない高性能のレピア織機を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決するため採用した手段を、添附図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、レピアヘッドHの先端が鉤状に後曲することによって鉤先内側に糸銜え部11を形成しているフック部1と;このフック部1の鉤先内側に臨向して先端の糸抑え部21が差し伸べられている揺動体であって、
この糸抑え部21は前記糸銜え部11の方向へ合接揺動したときに糸銜え部11との間に緯糸Yを挟着可能であり、また当該糸抑え部21は当該揺動体の後方側に位置するアクション・ポイント22が突押されたときには糸銜え部11から離分する方向へ揺動して挟着中の緯糸Yを開放可能である揺動把持レバー2か、
あるいは、当該揺動体後側に位置するアクション・ポイント22が拘引されたときには前記糸抑え部21が糸銜え部11から離分する方向へ揺動して挟着中の緯糸Yを開放可能であり、逆に前記アクションポイントが前方へ押圧されたときには前記糸抑え部21は糸銜え部11の方向へ合接揺動して前記糸銜え部11との間に緯糸Yを挟着・把持可能である揺動把持レバー2かの何れかと;
この揺動把持レバー2のアクション・ポイント22を突押可能に配設されて、当該レピアルームの主軸Mの設定クランク角度に応じて印加される電圧により瞬間的に伸膨変位して、前記揺動把持レバー2のアクション・ポイント22を突押動作することにより糸抑え部21をフック部1の糸銜え部11から離分せしめる積層圧電素子から成る直動アクチュエータ3とを採用してレピア織機の緯糸把持駆動機構を構成した点に特徴がある。
【0011】
また、本発明においては、レピアルームの主軸Mに絶対値エンコーダ4を装着し、このエンコーダ4の出力するパルス信号に基づいて把持レバー2の離分タイミングを任意に設定可能な緯糸の把持・開放タイミング制御回路5と;この把持・開放タイミング制御回路5から入力される制御信号に即時応答して電源Eから給電される電圧を積層圧電素子の直動アクチュエータ3に印加するドライブ回路6とを、上記直動アクチュエータ3を駆動する手段として採用することができる。
【0012】
また、本発明においては、直動アクチュエータ3を構成する積層圧電素子として、圧電セラミック層と内部電極層とを交互に積層して構成されるセラミック積層圧電素子を用いるのが好ましく、かつ、積層圧電素子を直列に少なくとも2個以上を連結して直動アクチュエータ3を構成すれば突押ストロークを増大するので有利である。
【0013】
また、本発明においては、把持レバー2の糸抑え部21をレピアヘッド・フック部1の糸銜え部11の方向へ合接揺動させる手段として、常時、糸銜え部11方向への復元弾力が働く圧縮バネ24を採用することができる。この場合において、直動アクチュエータ3は、この圧縮バネ24の復元弾力に抗して把持レバー2のアクション・ポイント22を突押し、糸抑え部21をフック部1の糸銜え部11から離分させることになる。
【0014】
他方また、本発明においては、揺動把持レバー2のアクション・ポイント22と直動アクチュエータ3とを連繋することにより、当該直動アクチュエータ3の伸膨変位に応じて、フック部1の糸銜え部11に対し揺動把持レバー2の糸抑え部21が合接揺動可能に構成することによって圧縮バネ24のごとき付勢手段を用いることなく、緯糸Yの把持・開放を行うことも可能である。
【0015】
さらに、本発明においては、レピアヘッドHのヘッド部1における鉤先内側の糸銜え部11の表面と把持レバー2の糸抑え部21とが噛み合う噛合面には耐磨耗性材料12(例えば、セラミック、金属とセラミックとの混合焼結体であるサーメットなど)が配設しておくのが好ましい。
【0016】
なお、本発明は、レピアヘッドHを剛体ロッドの先端に取付けて進退させるスピンドル・レピア織機にも、レピアヘッドHをフレキシブルなスチール・テープに取付けて進退させるバンド・レピア織機の何れにも適用可能であり、かつまた、給糸部Bから先端のレピアヘッドHで緯糸Yを挟着・把持して開口する経糸列Wの中を移動し反対側の織り端にまで搬送して緯入れをする片側レピア織機にも、給糸部Bから緯糸Yを引き出して開口する経糸列Wの途中まで引出しレピアヘッドH1 が搬送して、受継レピアヘッドH2 が当該緯糸Yを引き継いで織り端まで搬送して緯入れする両側レピア織機にも適用が可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の緯糸把持駆動機構によれば、積層圧電素子を直動アクチュエータ3の駆動手段として採用しているので、レピアヘッドHの鉤先内側における糸銜え部11と把持レバー2の糸抑え部21との噛合動作は低速から超高速の領域に至るまで頗る精巧で、レピアヘッドHの糸銜え部11と揺動把持レバー2の糸抑え部21との間に挟着・把持した緯糸Yを、当該レピアルームの主軸Mの設定クランク角度に応じて印加される電圧により瞬間的に伸膨変位して、前記揺動把持レバー2のアクション・ポイント22を突押動作するから、糸抑え部21をフック部1の糸銜え部11から離分して当該緯糸Yを適時的確に開放することが可能であり、レピアヘッドHの把持レバー2は非常に正確なタイミングで動作して緯糸の把持と開放とを確実に行えて把持ミスを起こさずに、精確かつ安定に緯入れでき、かつ、低速から超高速の織機運転に即応して的確に緯糸を把持・開放して正確に緯入して高品質の織物の製織を実現することができる。
【0018】
また、本発明の緯糸把持駆動機構にあっては、積層圧電素子を採用して直動アクチュエータ3を構成しているので、レピアヘッドを大幅に小型軽量化できてレピアヘッドの慣性抵抗と運動振動を極端に低減化できて高性能のレピア織機を実現することができる。
【0019】
さらに、本発明の緯糸把持駆動機構は、レピアヘッドのヘッド部における鉤先内側の糸銜え部と把持レバーの糸抑え部とが噛み合う噛合面に耐磨耗性材料を使用することによって、金属繊維糸のように表面硬度の高い糸など如何なる種類の緯糸を対象としても糸溝を生じせることなく長期にわたる製織に耐えることができるうえに、繊維径が18μm以下の細くて切れ易い金属繊維糸でもビリ(kinky) を生じさせることなく、的確・安定に挟着・把持して緯入れすることができて高密度金属繊維布(例えば、400/in)の製織をも可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を添附図面に図示する好ましい実施の形態に基いて、さらに詳しく説明するものとする。
【実施例】
【0021】
〔実施例1〕
図1〜図3は、本発明を適用して構成される緯糸把持駆動機構(実施例1)の主要部を図示したものである。
【0022】
図面上、符号1で指示するものはフック部であり、レピアヘッドHの先端が鉤状に後曲することによって形成されている。そして、このフック部1の鉤先内側は糸銜え部11となっており、その内側内面には TiC基サーメット(cermet)が付設されている。ちなみに、本実施例におけるレピアヘッドHは、フック部1の上面が開放して緯糸Yを引っ掛け可能に構成されていると共に、フック部1から後方は長手方向に沿って空洞に構成されて後述の把持レバーや直動アクチュエータを内装可能に成形してある。なお、本実施例ではレピアヘッドHはスレー(図示せず)上を進退往復するスピンドルSの先端部に装着してある。
【0023】
つぎに、符号2で指示するものは略L字形に屈曲したベルクランク式の揺動把持レバーであって、上記フック部1の糸抑え部11に対向する位置には可動先端の糸抑え部21が差し伸べる状態に臨向している。一方、このベルクランク式の揺動把持レバー2の後部下端はレピアヘッドHの底部近傍に枢支されて支承部23を形成し、かつ、当該把持レバーの屈曲部背面はアクション・ポイント22を形成して、このアクション・ポイント22を後述の直動アクチュエータが直伸することによって突押する構成となっており、アクション・ポイント22が突押されると、前記糸抑え部21は支承部23を支点として下向きに傾動してフック部1の糸抑え部11から離分することになる。ちなみに、本実施例における揺動把持レバー2は、糸抑え部21の下側に圧縮バネ24が配設してあるので、常時、糸銜え部11方向への復元弾力が働き、糸銜え部11に把持レバー2の糸抑え部21が噛合するように構成してある。なお、本実施例においては、把持レバー2の糸抑え部21の噛合面にはフック部1の糸銜え部11と同様に TiC基サーメット(cermet)が付設してある。
【0024】
また、符号3で指示するものは、セラミック積層圧電素子3a・3b(NEC/TOKIN=ASB シリーズ金属ケース封入型)を2本直列に連結して構成した直動アクチュエータであり、圧電素子1本当りDC 140Vの印加電圧にて39μm、前記積層圧電素子3aと3bの2本で78μmの伸膨変位量を発生する。本実施例あっては、上記ベルクランク式の揺動把持レバー2の機構的な増幅拡大によって前記78μmの伸膨変位量は糸抑え部21の部位において約5倍に拡大されて約 390μmの傾動量となるように設計されている。なお、図中の符号31は上記の揺動把持レバー2のアクション・ポイント22に当接して突押するように配設されたトスロッドであって、前記直動アクチュエータ3の先端に強弱調整ネジ32を介してアクション・ポイント22に対する接圧力を調節自在に連結してある。
【0025】
次にまた、図3におけるブロック図の部分において、符号4で指示するものは、レピア織機の主軸Mに装着された絶対値エンコーダであり、符号5にて指示するものは前記エンコーダ4の出力するパルス信号を基準として、揺動把持レバー2による緯糸Yの把持・離分のタイミングを必要な時間幅に設定入力するための緯糸Yの把持・開放タイミング制御回路であり、符号5により指示するものは前記緯糸の把持・開放タイミング制御回路5から入力される制御信号に即時応答して電源Eから給電される電圧を上記の積層圧電素子3a・3bに印加して上記直動アクチュエータ3を駆動するドライブ回路であって、これら絶対値エンコーダ4、緯糸の把持・開放タイミング制御回路5、およびドライブ回路6は当該レピアヘッドHを 60rpm〜1000 rpmの範囲内で正確に駆動制御することが可能である。
【0026】
こうして作製されたレピアヘッドHは、レピアヘッドHのケース重量、把持レバー2、および積層圧電素子3a・3bを合わせたサイズが、幅14mm,厚み4.5mm ,長さ100mm で頗るコンパクトであると共に、重量も45gで極めて軽量に仕上がっている。
【0027】
そこで、上記構成の本実施例の緯糸把持駆動機構をスピンドル式レピア織機に装備して糸径18μmのステンレス繊維糸を経糸および緯糸として、織密度が400/inで織幅 120cmの高密度メッシュ織物を製織したところ、レピアヘッドHが上記のように非常に小型軽量であるため、スピンドルSを高速で直動進退運動させても動きが安定して偏心振動や暴れがを起こすことなく、経糸と緯糸が等間隔の精確な織り目の高品質の高密度メッシュ織物を高速度(120rpm)で製することができた。
【0028】
また、同じスピンドル式レピア織機を用いて23デニールのポリエステル・モノフィラメント糸を経糸・緯糸として織り密度が 50/inの平織地を製織したところ、780rpmで高速製織をすることができ、当該織り地の織り目にも狂いはなく高品質なものが得られた。
【0029】
〔実施例2〕
図4は、本発明を適用して構成された実施例2としての緯糸把持駆動機構の主要部を図示したものである。
【0030】
この実施例2の緯糸把持駆動機構が前述の実施例1と異なる点は、積層圧電素子3a・3bから成る直動アクチュエータ3の先端に強弱調整ネジ32を介して接圧力が調節自在に連結されたトスロッド31と揺動把持レバー2のアクション・ポイント22とが2軸連結リンク25を介して枢着連繋してある点、揺動把持レバー2における糸抑え部21の TiC基サーメットの裏面に圧縮コイルバネ26が介装してあり、フック部1の糸銜え部11との噛合圧力を適正に調節できるようにしてある点、ならびに実施例1にあっては、糸抑え部21の下側に圧縮バネ24が配設してあったけれども、実施例2にあっては直動アクチュエータ3の伸膨変位動作だけによって揺動把持レバー2を揺動させてフック部1の糸銜え部11と糸抑え部21との合接・離分させる構造になっている点だけであり、その他の基本的な構成は実施例1と変わりがない。
【0031】
〔実施例3〕
図5は、本発明を適用して構成された実施例3としての緯糸把持駆動機構の主要部を図示したものである。
【0032】
この実施例3の緯糸把持駆動機構が前述の実施例2と異なっている点は、ベルクランク式の揺動把持レバー2の屈曲部がレピアヘッドHの上面部近傍に枢支されている点、ベルクランク式揺動レバー2の後部垂曲部に直動アクチュエータ3のトスロッド31が2軸連結リンク25を介し枢着連繋されている点、そして、かゝる構造的差異によって、揺動把持レバー2の後側に位置するアクション・ポイント22が拘引されたときに当該把持レバー2の糸抑え部21が糸銜え部11から離分する方向へ揺動して挟着中の緯糸Yを開放し、逆に前記アクション・ポイント22が前方へ押圧されたときには前記糸抑え部21は糸銜え部11の方向へ合接揺動して前記糸銜え部11との間に緯糸Yを挟着・把持するように動作する点が相違してくるという点である。
【0033】
〔実施例4〕
図6は、本発明を適用して構成された実施例4としての緯糸把持駆動機構の主要部を図示したものである。
【0034】
実施例4の緯糸把持駆動機構が前述の実施例3と異なっている点は、ベルクランク式の揺動把持レバー2の糸抑え部21の下側に引張りコイルバネ24′が配設されて常に糸抑え部21がフック部1の糸銜え部11から離分する方向に付勢されている点、ベルクランク式揺動レバー2における後部垂曲部のアクション・ポイント22と直動アクチュエータ3のトスロッド31とが圧縮コイルバネ27によって連繋されており、直動アクチュエータ3が伸膨変位したとき先端のトスロッド31が前記圧縮コイルバネ27を介してアクション・ポイント22が突押されてフック部1の糸銜え部11に揺動把持レバー2の糸抑え部21が合接揺動して緯糸Yを挟着・把持可能であり、逆に、直動アクチュエータ3が縮小変位したときはトスロッド31が前記圧縮コイルバネ27を介しアクション・ポイント22を拘引すると共に、前記引張りコイルバネ24′が揺動把持レバー2の糸抑え部21を下方へ拘引助勢してフック部1の糸銜え部11から離分させるように機能するという点が相違しているということである。
【0035】
〔実施例5〕
図7は、本発明を適用して構成された実施例4としての緯糸把持駆動機構の主要部を図示したものである。
【0036】
図7の左側に示すものは、給糸部Bから緯糸Yをフック部1a・1aの糸銜え部11a・11aと揺動把持レバー2a・2aの糸抑え部21a・21aとの間に挟着・把持して開口する経糸列Wの途中まで搬送する引出しレピアヘッドH1 であり、
図7の右側に示されるものは、前記引出しレピアヘッドH1 が引出し搬送してくるところの前記緯糸Yを、フック部1bの糸銜え部11bと揺動把持レバー2bの糸抑え部21bとの間に挟着・把持して受け継いで経糸列Wの中を反対側の織り端にまで搬送して緯入れする受継レピアヘッドH2 である(例えば、図11〜図13を参照)。
【0037】
引出しレピアヘッドH1 は、先端部が2股状に分岐して各々の先端にはフック部1a・1aが形成され、かつ、各々のフック部1a・1aにはベルクランク式の揺動把持レバー2a・2aが配設されている。ちなみに、これら揺動把持レバー2a・2aの枢支構造は、上記実施例3と大略同じであって、屈曲部がレピアヘッドH1 の分岐部近傍に枢支されている。そして、これらの揺動把持レバー2a・2aは、直動アクチュエータ3の先端に螺着された調整ネジ32に連結された2股トスロッド31に連繋されて直動アクチュエータ3の伸縮変位に応じて、糸抑え部21a・21aがフック部1a・1aの糸銜え部11に対し、合接・離分動作を行うようになっている。
【0038】
他方、受継レピアヘッドH2 は、基本的には前述の実施例3と同じ構造であって、実施例3のレピアヘッドとは上下の向きが反対になっているだけである。しかして、この受継レピアヘッドH2 は、引出しレピアヘッドH1 がフック部1a・1aの間に掛渡し状態で糸抑え部21a・21aで挟着・把持して運んで来た緯糸Yを、前記2股に分岐するフック部1a・1aの間にまで進入して、フック部1bの糸銜え部11bと揺動把持レバー2の糸抑え部21bとの間に挟着・把持して受継し、開口する経糸列Wの間を移動して織り端まで搬送して緯入を行うのである。
【0039】
本願の明細書と図面に具体的に例示する本発明の実施例は概ね上記のとおりであるが、本発明は前述の実施例に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変形が可能であって、図8〜図10に図示するような片側タイプのバンドレピア織機としても、また、図11〜図13に図示するような両側タイプのバンドレピア織機としても実施可能であって、本発明の技術的範囲に属することは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のとおり、本発明によって提供されるレピア織機の緯糸把持駆動機構は、積層圧電素子の印加電圧に対する瞬間応答性を巧みに利用してレピアヘッドにおける緯糸の把持・開放を従来レピア織機の緯糸把持機構に比較して精確に、しかも驚くほどの高速化を実現できるのであって、レピア織機による超高速製織から低速製織の全てに適用できる画期的な技術であって、その産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明を適用して構成した実施例1の緯糸把持駆動機構の要部たるレピアヘッドの内部構造を拡大して示した機構説明図である。
【図2】図2は、図1に示した実施例1のレピアヘッドが緯糸を把持する状態を表わす機構説明図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1である緯糸把持機構の全体的概要を説明する説明図である。
【図4】図4は、本発明の実施例2である緯糸把持機構におけるレピアヘッドの内部構造を拡大して示した機構説明図である。
【図5】図5は、本発明の実施例3である緯糸把持機構におけるレピアヘッドの内部構造を拡大して示した機構説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施例4である緯糸把持機構におけるレピアヘッドの内部構造を拡大して示した機構説明図である。
【図7】図7は、本発明の実施例5である緯糸把持機構におけるレピアヘッドの内部構造を拡大して示した機構説明図である。
【図8】図8は、片側タイプのバンドレピア織機に本発明が適用可能であることを示した機構説明図であって、給糸部からグリッパに連なる緯糸をバンドレピアのレピアヘッドが把持しにゆく状態を表わしたものである。
【図9】図9は、図8の片側バンドレピア織機のレピアヘッドが緯糸を把持して開口する経糸列の中へ引き込んでゆく状態を表わす説明図である。
【図10】図10は、図8の片側バンドレピア織機のレピアヘッドが緯糸を開口する経糸列の織り端にまで搬送して緯入を完了した状態を表わす説明図である。
【図11】図11は、両側タイプのバンドレピア織機に本発明が適用可能であることを示した機構説明図であって、給糸部からグリッパに連なる緯糸を引出しレピアヘッドが把持して開口する経糸列の中に搬送しようとする状態を表わしたものである。
【図12】図12は、図11の両側バンドレピア織機の引出しレピアヘッドが開口する経糸列の中間域にまで緯糸を搬送して、受継レピアヘッドに緯糸を受継せしめた状態を表わす説明図である。
【図13】図13は、緯糸を受継した受継レピアヘッドが当該緯糸を開口する経糸列の織り端にまで搬送して緯入を完了した状態を表わす説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1・1a・1b (レピアヘッドの)フック部
11・11a・11b 糸銜え部
2・2a・2b 把持レバー
21 糸抑え部
22 アクション・ポイント
23 支承部
24 スプリング(圧縮コイルバネ)
24′ スプリング(引張りコイルバネ)
25 リンク(2軸連結リンク)
26 (糸抑え部の)圧縮コイルバネ
27 (アクション・ポイントとトスロッドとの間に介装した)圧縮コイル バネ
3 直動アクチュエータ
31 トスロッド
3a・3b 積層圧電素子
4 絶対値エンコーダ
5 緯糸の把持・開放タイミング制御回路
6 ドライブ回路
B 給糸部
E 電源
G グリッパ
H レピアヘッド
1 引取りレピアヘッド
2 受継レピアヘッド
M 織機の主軸
S スピンドル
W 経糸列
Y 緯糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レピアヘッドHの先端が鉤状に後曲することによって鉤先内側に糸銜え部11を形成しているフック部1と;このフック部1の鉤先内側に臨向して先端の糸抑え部21が差し伸べられている揺動体であって、この糸抑え部21は前記糸銜え部11の方向へ合接揺動したときに糸銜え部11との間に緯糸Yを挟着可能であり、また当該糸抑え部21は当該揺動体の後方側に位置するアクション・ポイント22が突押されたときには糸銜え部11から離分する方向へ揺動して挟着中の緯糸Yを開放可能である揺動把持レバー2と;この揺動把持レバー2のアクション・ポイント22を突押可能に配設されて、当該レピアルームの主軸Mの設定クランク角度に応じて印加される電圧により瞬間的に伸膨変位して、前記揺動把持レバー2のアクション・ポイント22を突押動作することにより糸抑え部21をフック部1の糸銜え部11から離分せしめる積層圧電素子から成る直動アクチュエータ3とを包含して構成されることを特徴とするレピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項2】
揺動把持レバー2は後部の屈曲したベルクランク・レバーであって、このベルクランク式揺動把持レバー2の後部突端がレピアヘッドHに枢支されて支承部23を形成し、かつ、当該把持レバーの屈曲部背面にアクション・ポイント22を有しており、このアクション・ポイント22をレピアヘッドHの中に内装された直動アクチュエータ3の駆動によって直伸突押可能であることを特徴とする請求項1記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項3】
揺動把持レバー2における糸抑え部21を、フック部1の糸銜え部11の方向へ合接揺動させる手段として、スプリング24を採用したことを特徴とする請求項1又は2記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項4】
レピアヘッドHの先端が鉤状に後曲することによって鉤先内側に糸銜え部11を形成しているフック部1と;このフック部1の鉤先内側に臨向して先端の糸抑え部21が差し伸べられている揺動体であって、当該揺動体後側に位置するアクション・ポイント22が拘引されたときは前記糸抑え部21が糸銜え部11から離分する方向へ揺動して挟着中の緯糸Yを開放可能であり、逆に前記アクションポイントが前方へ押圧されたときには前記糸抑え部21は糸銜え部11の方向へ合接揺動して前記糸銜え部11との間に緯糸Yを挟着可能である揺動把持レバー2と;この揺動把持レバー2のアクション・ポイント22を拘引可能に連繋配設されており、当該レピアルームの主軸Mの設定クランク角度に応じて印加される電圧により瞬間的に収縮変位して、前記揺動把持レバー2のアクション・ポイント22を拘引し糸抑え部21をフック部1の糸銜え部11から離分させる積層圧電素子から成る直動アクチュエータ3とを含んで構成されることを特徴とするレピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項5】
レピアルームの主軸Mに装着された絶対値エンコーダ4と;このエンコーダ4の出力するパルス信号に基いて揺動把持レバー2の離分タイミングを任意に設定可能な緯糸の把持・開放タイミング制御回路5と;この把持・開放タイミング制御回路5から入力される制御信号に即時応答して電源Eから給電される電圧を積層圧電素子の直動アクチュエータ3に印加するドライブ回路6とにより、当該直動アクチュエータの伸膨変位を制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項6】
積層圧電素子を1個又は2個以上を直列に連結することによって直動アクチュエータ3を構成したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項7】
揺動把持レバー2のアクション・ポイント22を動かす直動アクチュエータ3が、圧電セラミック層と内部電極層とを交互に積層して構成されたセラミック積層圧電素子であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項8】
揺動把持レバー2のアクション・ポイント22と直動アクチュエータ3とが連繋されており、当該直動アクチュエータ3の伸膨変位に応じて、フック部1の糸銜え部11に対し揺動把持レバー2の糸抑え部21が開閉揺動することによって緯糸Yの把持・開放を行うことを特徴とする請求項1もしくは2に記載されるか、又は請求項4〜7の何れか1つに記載されるレピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項9】
揺動把持レバー2のアクション・ポイント22と直動アクチュエータ3とが、リンク25を介してヒンジ連結されていることを特徴とする請求項7記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項10】
レピアヘッドHのフック部1における糸銜え部11、および把持レバー2の糸抑え部21に耐磨耗性材料が使用されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1つに記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項11】
レピア織機が片側レピア織機であって、レピアヘッドHに設けたフック部1の糸銜え部11と揺動把持レバー2の糸抑え部21とが給糸部Bの緯糸Yを挟着・把持することにより引き出して開口する経糸列Wの中を移動し、反対側の織り端にまで搬送して緯入れすることを特徴とする請求項1〜10の何れか1つに記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。
【請求項12】
レピア織機が両側レピア織機であって、給糸部B側から緯糸Yをフック部1aの糸銜え部11aと揺動把持レバー2aの糸抑え部21aとの間に挟着・把持して開口する経糸列Wの途中まで搬送する引出しレピアヘッドH1 と;この引出しレピアヘッドH1 の引出し搬送してきた前記緯糸Yを、対向する受継レピアヘッドH2 のフック部1bの糸銜え部11bと揺動把持レバー2bの糸抑え部21bとの間に挟着・把持し受け継いで経糸列Wの中を反対側の織り端にまで搬送して緯入れすることを特徴とする請求項1〜10の何れか1つに記載の、レピア織機の緯糸把持駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−161194(P2006−161194A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351607(P2004−351607)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(395016936)株式会社橋詰研究所 (4)
【Fターム(参考)】