説明

レプトスピラブラティスラバおよび他の病原体に対する多価イヌワクチン

【課題】レプトスピラブラティスラバによって引き起こされる疾患からイヌを防御する混合ワクチンおよび方法の提供。
【解決手段】イヌの病原体によって引き起こされる疾患または障害、例えば、気管支敗血症菌によって引き起こされる感染性気管気管支炎、イヌジステンパー(CD)ウイルスによって引き起こされるイヌジステンパー、イヌアデノウイルスタイプ1(CAV−1)によって引き起こされるイヌ伝染性肝炎(ICH)、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)によって引き起こされる呼吸器疾患、などをイヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌパルボウイルス等の弱毒化株や不活性化調整物等を含む混合ワクチンをイヌに投与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)によって引き起こされる感染性気管気管支炎(「ケンネルコフ」(kennel cough))からイヌを防御するための、気管支敗血症菌p68抗原を含有するワクチンおよびその使用に関する。本発明は、気管支敗血症菌p68抗原と、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、イヌコロナウイルス(CCV)、イヌパルボウイルス(CPV)、レプトスピラブラティスラバ(Leptospira bratislava)、レプトスピラカニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラグリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)、レプトスピライクテロヘモリジア(Leptospira iceterohaemorrhagiae)またはレプトスピラポモナ(Leptospira pomona)など、イヌの別の病原体の1つまたは複数の抗原とを含有する混合ワクチンにも関する。混合ワクチンを用いて、イヌの病原体によって引き起こされる疾患からイヌを防御する方法も提供する。本発明は、レプトスピラブラティスラバによって引き起こされる感染からイヌを防御するための、レプトスピラブラティスラバを含有するワクチンおよびその使用に関する。本発明は、レプトスピラブラティスラバと、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、イヌコロナウイルス(CCV)、イヌパルボウイルス(CPV)、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジアまたはレプトスピラポモナなど、イヌの別の病原体の1つまたは複数の抗原とを含有する混合ワクチンにも関する。本発明は、さらに、レプトスピラブラティスラバを含まない、前記抗原の混合ワクチンに関する。上記混合ワクチンを用いて、イヌの病原体によって引き起こされる疾患からイヌを防御する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されているイヌ気管支敗血症菌ワクチン製剤は、アジュバント非添加不活性化気管支敗血症菌全細胞バクテリンで構成されている。そのような全細胞バクテリンは、細胞タンパク質関連のワクチン接種後反応をまねくことがある。気管支敗血症菌のp68タンパク質は、百日咳菌(B.pertussis)の外膜タンパク質(OMP)およびパラ百日咳菌(B.parapertussis)のOMPに抗原性が類似している(Shahinら、「Characterization of the Protective Capacity and Immunogenicity of the 69−kD Outer Membrane Protein of Bordetella pertussis」、J.Exp.Med.、171:63〜73、1990年)。このOMPの防護的役割は、マウス(Shahinら、同上;Novotnyら、「Biologic and Protective Properties of the 69−kD Outer Membrane Protein of Bordetella pertussis: A Novel Formulation for a Acellular Pertussis Vaccine」、J.Infect.Dis.164:114〜22、1991年)、ヒト(Heら、「Protective Role of Immunoglobulin G Antibodies to Filamentous Hemagglutinin and Pertactin of Bordetella pertussis in Bordetella parapertussis Infection」、Eur.J Clin Microbiol Infect Dis.10:793〜798、1996年)、およびブタ(Kobischら、「Identification of a 68−Kilodalton Outer Membrane Protein as the Major Protective Antigen of Bordetella bronchiseptica by Using Specific−Pathogen−Free Piglets」、Infect.Immun.58(2):352〜357、1990年)で明らかにされている。
【0003】
本発明の前には、気管支敗血症菌p68抗原がイヌで安全かつ有効なワクチンでありうることは示されていなかった。したがって、イヌにおける使用に適した、p68抗原を含有する気管支敗血症菌ワクチンを開発する必要がある。そのような気管支敗血症菌p68ワクチンが、子イヌへの投与に安全であり、また、長期の防御を与えるならば、それはさらに有利であろう。
【0004】
CDは、多様な症状を伴った一般的な、高死亡率のウイルス病である。ワクチン接種しておらず、免疫化されていないイヌの場合、CDウイルスに感染すると、約50%が臨床徴候を発症し、それらのイヌのうち約90%が死亡する。
【0005】
イヌ伝染性肝炎またはICHは、イヌアデノウイルス1型(CAV−1)によって引き起こされ、肝性および全身性の内皮病変を特徴とする、イヌの一般的な、時に致死的なウイルス病である。CAV−2は、呼吸器疾患を引き起こし、重度な場合、それには肺炎および気管支肺炎が含まれる。
【0006】
CPIは、一般的なウイルス性上部呼吸器系疾患である。合併症のないCPIは、軽度または無症候性でありえ、他の呼吸器病原に同時感染している場合には、徴候がより重度になる。
【0007】
CPV感染は、しばしば出血性となる嘔吐および下痢の突然発症を特徴とする腸疾患をもたらす。白血球減少症は、通常、臨床徴候を伴う。感受性のイヌならばいかなる年齢でも発症しうるが、死亡率が最も高いのは子イヌである。4〜12週齢の子イヌでは、時にCPVが心筋炎を引き起こすことがあり、その結果、短期間の目立たない疾患状態の後に、急性心不全が起こることがある。感染した後は、多くのイヌが1年間以上疾患に対して抵抗性を有する。同様に、血清陽性のメスイヌは、それらの子イヌにCPV抗体を伝え、それらのCPV抗体は、16週齢を通して子イヌの能動免疫を阻むことができる。
【0008】
CCVは、世界中であらゆる年齢の感受性のイヌに腸疾患を引き起こしている。このウイルスは、伝染性が強く、主として、感染性の糞便との直接的接触を介して伝染し、曝露後1〜4日以内に臨床的な小腸炎を引き起こしうる。疾患の重度は、他の病原体に同時感染することによって増悪することがある。CCV感染の主要な徴候には、無食欲、嘔吐、および下痢が含まれる。通常、嘔吐の頻度は下痢の開始後1または2日以内に低下するが、下痢は、感染の経過全体を通して続くことがあり、大便は時として縞状の血液を含有することがある。CCV感染では、ほとんどのイヌが無熱性の状態を保ち、合併症のない症例では白血球減少症が観察されていない。
【0009】
レプトスピラ症は、広範な臨床徴候を伴って、あらゆる年齢のイヌで発症し、急性感染の後には通常、慢性腎炎が発症する。
【0010】
Vanguard(登録商標)という商品名で販売されているものを含めたいくつかの混合ワクチンが開発されている。しかし、本発明の前には、気管支敗血症菌と、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV、CCV、ならびにレプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナなどのレプトスピラ諸種などの1つまたは複数の他のイヌの病原体とからイヌを防御するいかなる効果的な混合ワクチンも存在していなかった。また、気管支敗血症菌以外のこれらの他のイヌの病原体に対する、レプトスピラブラティスラバを含む効果的な混合ワクチンも存在していなかった。混合ワクチンを開発する際の1つの問題は、有効性干渉(efficacy interference)、すなわち、組成物中の他の抗原の存在のため、混合組成物中の1つまたは複数の抗原が有効性を維持できないか、あるいは実現できないことに関する。これは、宿主例えばイヌに投与された組成物内の抗原の干渉の結果であると考えられ、これは、複数の抗原が組成物中に存在しているがゆえに宿主において誘導した免疫、抗原、抗体または防御反応によるものであると考えられる。しかし、ネコなどの他の宿主では、混合ワクチンが既知である。イヌにおける有効性干渉は、イヌの生物システムの何らかの特性のため、またはイヌの生物システムとの上記抗原の反応のためであると考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、イヌへの投与に適し、かつイヌで有効性干渉を示さない、気管支敗血症菌および他の1つまたは複数のイヌの病原体に対する混合ワクチンを開発する必要がある。気管支敗血症菌を含まないそのような混合ワクチンを開発する必要性も存在する。そのような混合ワクチンが、子イヌに投与しても安全なものであり、長期の防御を与えるものであるならば、それはさらに有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、イヌの病原体によって引き起こされる疾患からイヌを防御するワクチンおよび方法を提供する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、イヌへの投与に適し、かつ気管支敗血症菌によって引き起こされる疾患からイヌを防御できるp68ワクチンを提供する。本発明のそのようなワクチンは、気管支敗血症菌p68抗原と、アジュバントなどの獣医学的に許容できる担体とを含む。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、気管支敗血症菌p68抗原と、アジュバントなどの獣医学的に許容できる担体とを含むワクチンをイヌに投与することによって、気管支敗血症菌によって引き起こされる疾患からイヌを防御する方法を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、イヌへの投与に適し、かつレプトスピラブラティスラバによって引き起こされる疾患からイヌを防御できるレプトスピラブラティスラバワクチンを提供する。本発明のそのようなワクチンは、レプトスピラブラティスラバの細胞調製物と、アジュバントなどの獣医学的に許容できる担体とを含む。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、レプトスピラブラティスラバの細胞調製物と、アジュバントなどの獣医学的に許容できる担体とを含むワクチンをイヌに投与することによって、レプトスピラブラティスラバによって引き起こされる疾患からイヌを防御する方法を提供する。
【0017】
さらに別の実施形態では、本発明は、イヌへの投与に適した混合ワクチンを提供する。本発明の混合ワクチンは、他のイヌの病原体によって引き起こされる疾患に対する防御免疫反応をイヌで誘導できる、そのような他の病原体に由来する少なくとも1つの他の抗原と併せて、気管支敗血症菌p68抗原を含む。そのような他の病原体は、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌコロナウイルス(CCV)、イヌヘルペスウイルス、狂犬病ウイルス、レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、レプトスピラポモナ、レプトスピラハージョボビス、ポルフィロモナス属全種、バクテロイデス属全種、リーシュマニア属全種、ボレリア属全種、エーリキア属全種、マイコプラズマ属全種、およびミクロスポルムカニスから選択することができる。
【0018】
本発明の好ましい組合せには、そのような病原体によって引き起こされる疾患に対する防御免疫反応をイヌで誘導できる、イヌの病原体に由来する2つ以上の抗原が含まれる。そのような病原体は、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌコロナウイルス(CCV)、イヌヘルペスウイルス、狂犬病ウイルス、レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、レプトスピラポモナ、レプトスピラハージョボビス(Leptospira hardjobovis)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)全種、バクテロイデス(Bacteriodes)属全種、リーシュマニア(Leishmania)属全種、ボレリア(Borrelia)属全種、エーリキア(Ehrlichia)属全種、マイコプラズマ(Mycoplasma)属全種、およびミクロスポルムカニス(Microsporum canis)から選択することができる。
【0019】
本発明の好ましい混合ワクチンの1つは、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、およびイヌパルボウイルス(CPV)の弱毒化株;イヌコロナウイルス(CCV)株の不活性化調製物;ならびに気管支敗血症菌p68抗原を含む。
【0020】
本発明の好ましい混合ワクチンの1つは、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、およびイヌパルボウイルス(CPV)の弱毒化株;ならびにイヌコロナウイルス(CCV)株の不活性化調製物を含む。
【0021】
本発明の別の好ましい混合ワクチンは、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、およびイヌパルボウイルス(CPV)の弱毒化株;イヌコロナウイルス(CCV)株の不活性化調製物;気管支敗血症菌p68タンパク質、ならびに5つのレプトスピラ血清型(レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の不活性化細胞調製物を含む。
【0022】
本発明の別の好ましい混合ワクチンは、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、およびイヌパルボウイルス(CPV)の弱毒化株;ならびにイヌコロナウイルス(CCV)株の不活性化調製物;ならびに5つのレプトスピラ血清型(レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の細胞調製物を含む。
【0023】
本発明の別の好ましい混合ワクチンは、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、およびイヌパルボウイルス(CPV)の弱毒化株;イヌコロナウイルス(CCV)株の不活性化調製物;ならびに4つのレプトスピラ血清型(レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の不活性化細胞調製物を含む。
【0024】
本発明のさらに別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株;および気管支敗血症菌p68抗原を含む。
【0025】
本発明のさらに別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株を含む。
【0026】
本発明の別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株;気管支敗血症菌p68抗原;ならびにレプトスピラカニコーラおよびレプトスピライクテロヘモリジアの不活性化細胞調製物を含む。
【0027】
本発明の別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株;ならびにレプトスピラカニコーラおよびレプトスピライクテロヘモリジアの不活性化細胞調製物を含む。
【0028】
本発明のさらに別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株、気管支敗血症菌p68抗原、ならびに5つのレプトスピラ血清型(レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の不活性化細胞調製物を含む。
【0029】
本発明のさらに別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株、ならびに5つのレプトスピラ血清型(レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の不活性化細胞調製物を含む。
【0030】
本発明のさらに別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株、ならびに4つのレプトスピラ血清型(レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の不活性化細胞調製物を含む。
【0031】
別の好ましい混合ワクチンは、気管支敗血症菌p68抗原および弱毒化CPIウイルスを含む。
【0032】
さらに別の好ましい混合ワクチンは、気管支敗血症菌p68抗原、弱毒化CPIウイルス、ならびにレプトスピラカニコーラおよびレプトスピライクテロヘモリジアの不活性化細胞調製物を含む。
【0033】
本発明は、本発明の混合ワクチンをイヌに投与することによって、イヌの病原体によって引き起こされる疾患からイヌを防御する方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
一実施形態では、本発明は、気管支敗血症菌によって引き起こされる疾患からイヌを防御できる、イヌへの投与に適した単価ワクチンを提供する。本発明の単価ワクチンは、組換え産生された気管支敗血症菌p68抗原と、アジュバントなどの獣医学的に許容できる担体とを含む。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、組換え産生された気管支敗血症菌p68抗原と、アジュバントなどの獣医学的に許容できる担体とを含む単価ワクチンをイヌに投与することによって、気管支敗血症菌によって引き起こされる疾患からイヌを防御する方法を提供する。
【0036】
さらに別の実施形態では、本発明は、イヌへの投与に適した混合ワクチンを提供する。本発明の混合ワクチンは、他の抗原によって引き起こされる疾患に対する防御免疫反応をイヌで誘導できる少なくとも1つのそのような他の抗原と併せて、組換え産生された気管支敗血症菌p68抗原を含む。本発明の別の実施形態は、イヌの病原体によって引き起こされる疾患に対する防御免疫反応をイヌで誘導できる、そのような病原体に由来する2つ以上の抗原を含む。
【0037】
本発明の好ましい混合ワクチンの1つは、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、およびイヌパルボウイルス(CPV)の弱毒化株;イヌコロナウイルス(CCV)株の不活性化調製物;ならびに4つのレプトスピラ血清型(レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の調製物を含む。
【0038】
本発明の別の好ましい混合ワクチンは、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、およびイヌパルボウイルス(CPV)の弱毒化株;イヌコロナウイルス(CCV)株の不活性化調製物;ならびに5つのレプトスピラ血清型(レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の調製物を含む。
【0039】
本発明のさらに別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株;ならびに4つのレプトスピラ血清型(レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の調製物を含む。
【0040】
本発明の別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株、CCV一株の弱毒化株;ならびにレプトスピラカニコーラおよびレプトスピライクテロヘモリジアの調製物を含む。
【0041】
本発明のさらに別の好ましい混合ワクチンは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV一株の弱毒化株、ならびに5つのレプトスピラ血清型(レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナ)の調製物を含む。
【0042】
本発明は、本発明の混合ワクチンをイヌに投与することによって、イヌの病原体によって引き起こされる疾患からイヌを防御する方法も提供する。
【0043】
制限ではなく、開示を明確にするために、本発明の詳細な説明を以下の通りの小区分に分割する。それらは、本発明の特定の特徴、実施形態、または適用を説明または例示するものである。
【0044】
定義および略語
本明細書で使用される場合、「イヌの病原体によって引き起こされる疾患からイヌを防御する」という用語は、その病原体に感染する危険性を低減または除去すること、感染の症候を寛解もしくは軽減させること、または感染からの回復を加速することを意味する。防御が実現するのは、例えば、ウイルスもしくは細菌の負荷が低減された場合、ウイルスもしくは細菌の散布性が低減された場合、感染の頻度もしくは継続時間が低減された場合、急性期血清タンパク質レベルが低減された場合、直腸温が低下した場合、ならびに/または食物摂取および/もしくは成長が増大した場合である。
【0045】
「p68抗原」という用語は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって測定された分子量が68kDaであるタンパク質であって、p68特異的モノクローナル抗体Bord 2−7(ATCC#)によって認識され、かつ配列番号1に記載のアミノ酸配列または配列番号1に実質的に同一なアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。
【0046】
「実質的に同一」によって、配列同一性の程度が少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、またはより好ましくは少なくとも約98%であることを意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「単価ワクチン」という用語は、1つの主要な抗原成分を有するワクチンを指す。例えば、p68単価ワクチンは、ワクチンの主要抗原成分として気管支敗血症菌p68抗原を含み、上記ワクチンを投与した動物を、気管支敗血症菌によって引き起こされる疾患から防御することができる。単価ワクチンの別の例は、ワクチンの主要抗原成分としてレプトスピラブラティスラバの細胞調製物を含み、上記ワクチンが投与した動物を、レプトスピラブラティスラバによって引き起こされる疾患から防御することができる。
【0048】
「混合ワクチン」という用語は、イヌで防御免疫応答を誘導できる抗原の二価または多価の組合せを意味する。1つまたは複数の病原体に対する混合ワクチンの防御効果は、通常、動物対象の体内で免疫応答、すなわち細胞性もしくは体液性免疫応答のいずれか、または両方の組合せを誘導することによって実現される。
【0049】
「免疫原性」によって、特定の病原体に対する免疫応答をイヌで引き起こす組成物の能力を意味する。免疫応答は、主として細胞傷害性T細胞およびサイトカイン産生T細胞によって媒介される細胞性免疫応答であるか、あるいは主としてヘルパーT細胞によって媒介される体液性免疫応答でありうる。ヘルパーT細胞は、その結果としてB細胞を活性化し、抗体産生へと導く。
【0050】
「治療有効量」または「有効量」という用語は、それが投与したイヌで防御免疫反応を誘発するのに十分な、単価ワクチンまたは混合ワクチンの量を指す。免疫応答は、細胞性および/または体液性免疫の誘導を含むが、これに限定されない。治療上有効なワクチンの量は、そのワクチンで使用されている特定の抗原、イヌの年齢および状態、ならびに/または感染の程度に応じて変動しうるものであり、獣医がこれを決定できる。
【0051】
p68ワクチン
本発明は、気管支敗血症菌p68抗原を含有するワクチン組成物が、気管支敗血症菌によって引き起こされる疾患からイヌを効果的に防御したことを初めて実証したものである。本発明のワクチン組成物は、有意なワクチン接種後反応を引き起こさず、子イヌに投与しても安全であり、かつ、長期間継続する防御免疫をイヌで誘導する。
【0052】
したがって、本発明の一実施形態は、イヌへの投与に適し、かつ気管支敗血症菌によって引き起こされる疾患、例えば感染性気管気管支炎(「ケンネルコフ」)からイヌを防御できる、気管支敗血症菌p68抗原を含有するワクチン組成物(すなわち「p68ワクチン」)を対象とする。
【0053】
本発明の目的においては、「p68抗原」という用語は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって測定された分子量が68kDaであるタンパク質(図5を参照)であって、p68特異的モノクローナル抗体Bord 2−7(ATCC#)によって認識され、かつ配列番号1に記載のアミノ酸配列または配列番号1に実質的に同一なアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。「実質的に同一」によって、配列同一性の程度が少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、またはより好ましくは少なくとも約98%であることを意味する。配列番号1に実質的に同一なアミノ酸配列を有するp68抗原の一例は、国際公開第92/17587号パンフレットに記載のp68抗原であり、それを配列番号3に示す。本発明のp68特異的モノクローナル抗体は、例えば、天然のp68タンパク質、組換え体p68タンパク質、および細菌表面のp68タンパク質を認識する。
【0054】
本発明によれば、本発明での使用に適したp68抗原には、天然のp68タンパク質(すなわち、気管支敗血症菌から精製された天然存在のp68タンパク質)、および組換え産生されたp68タンパク質の両方が含まれる。
【0055】
気管支敗血症菌からの天然p68の精製に関しては、例えば、Montarazら、Infection and Immunity 47:744〜751(1985年)に記載されており、また、本明細書中で下記に示す実施例でも例示する。p68の組換え産生は、当業者に知られている分子クローニング技法および組換え体発現技法のうちいずれか1つを用いて実施できる。例えば、p68をコードする核酸分子を、細菌、酵母細胞(例えばピキア(Pichia)細胞)、昆虫細胞、または哺乳類細胞(例えばCHO細胞)などの適切な宿主細胞に導入することができる。p68をコードしている核酸分子を、宿主細胞でのp68抗原の発現をもたらすことができるプロモーターと作用可能に連結させることができる。宿主細胞によって発現されたp68は、通常のタンパク質精製技法を用いて容易に精製することができる。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列を有するp68抗原をコードする、配列番号2に示すヌクレオチド配列を発現ベクターにクローニングし、温度感受性プロモーターと作用可能に連結させる。この発現ベクターを大腸菌(Escherichia coli)に導入し、熱誘導でp68抗原を発現させる。これらの細胞を溶解させ、p68抗原が蓄積している封入体を遠心法によって分離する。封入体中の組換え体p68は、SDS、または尿素、塩酸グアニジン、コール酸ナトリウム、タウロコラート、およびデオキシコール酸ナトリウムなど、当技術分野で知られている他の可溶化剤を用いて可溶化する。本発明によれば、精製された天然または組換え体のp68タンパク質を獣医学的に許容できる担体と併せてp68ワクチン組成物を形成させる。
【0057】
「獣医学的に許容できる担体」という用語には、すべての溶媒、分散媒、剤皮、アジュバント、安定化剤、希釈剤、保存剤、抗菌薬、抗真菌薬、等張剤、吸着遅延剤などが含まれる。希釈剤には、水、食塩水、ブドウ糖、エタノール、グリセロールなどが含まれうる。等張剤には、中でも、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースが含まれうる。安定化剤には、中でも、アルブミンが含まれる。
【0058】
本発明による使用に適したアジュバントには、無機質塩、例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、アルミニウムリン酸塩、およびリン酸カルシウム;界面活性剤およびマイクロ粒子、例えば、非イオン性ブロックポリマー界面活性剤(例えばコレステロール)、ウイロソーム、サポニン(例えば、Quil A、QS−21、およびGPI−0100)、プロテオソーム、免疫刺激性複合体、コクレエート(cochleate)、第4級アミン(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA))、アブリジン、ビタミンA、ビタミンE;RIBIアジュバントシステム(Ribi社)、チモテ菌(Mycobacterium phlei)の細胞壁骨格(Detox(登録商標))、ムラミルジペプチド(MDP)およびトリペプチド(MTP)、モノホスホリルリピドA、カルメット−ゲラン杆菌、熱不安定性大腸菌(E.coli)エンテロトキシン、コレラトキシン、トレハローズジミコレート、CpGオリゴデオキシヌクレオチドなどの細菌産物;サイトカインおよびホルモン、例えば、インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−6、IL−12、IL−15、IL−18)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、デヒドロエピアンドロステロン、1,25−ジヒドロキシビタミンD;ポリアニオン、例えばデキストラン;ポリアクリル酸(例えば、ポリメタクリル酸メチル、Carbopol 934P);担体、例えば、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、コレラトキシンBサブユニット、エンテロトキシン産生大腸菌の変異体熱不安定性エンテロトキシン(rmLT)、熱ショックタンパク質;水中油型乳剤、例えばAMPHIGEN(登録商標)(Hydronics社、米国);ならびに例えばフロイント完全および不完全アジュバントなどの油中水型乳剤など、いくつかのアジュバントクラスが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明のワクチン中での使用に好ましいアジュバントには、Quil Aおよびコレステロールが含まれる。
【0060】
p68抗原および獣医学的に許容できる担体は、ワクチン組成物を形成させるための任意の好都合かつ実際的な方法、例えば、混合、溶解、懸濁、乳化、カプセル化、吸収、および同様の方法によって併せることができ、注射、埋入、吸入、経口摂取、または同様の方法に適した、錠剤、カプセル剤、粉末薬、シロップ、懸濁液などの剤形にすることができる。ワクチンは、約0.1〜5ml、または好ましくは約0.5〜2.5mlの用量、またはさらにより好ましくは約1mlの用量の注射によってイヌに投与できるように調剤されることが好ましい。それが適切である場合には、本発明の医薬組成物を、よく知られる手順によって無菌化するべきである。
【0061】
ワクチン中のp68の量は、免疫化に有効な量であるべきであり、通常、1用量あたり0.5〜1000μgの範囲にある。p68の量は、1用量あたり1〜260μgの範囲にあることが好ましい。p68の量は、1用量あたり10〜100μgの範囲にあることがより好ましい。p68の量は、1用量あたり約15から25μgであることがさらにより好ましい。
【0062】
ワクチン中での使用に適したアジュバントの量は、使用されるアジュバントの性質に依存している。例えば、Quil Aおよびコレステロールをアジュバントとして使用する場合、Quil Aの量は、通常、1用量あたり約1〜1000μg、好ましくは1用量あたり30〜100μg、より好ましくは1用量あたり約50〜75μgであり、コレステロールの量は、通常、1用量あたり約1〜1000μg、好ましくは1用量あたり約30〜100μg、より好ましくは1用量あたり約50〜75μgである。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、上述の通り、p68ワクチン組成物をイヌに投与することによって、気管支敗血症菌によって引き起こされる疾患からイヌを防御する方法を提供する。本発明によれば、上記p68ワクチン組成物は、少なくとも約4カ月、好ましくは少なくとも約6カ月、またはさらに好ましくは約1年間の間、長期免疫をイヌに与える。
【0064】
本発明によれば、経口、鼻腔内、粘膜、局所、経皮および非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下または筋肉内)経路を含めた任意の知られている経路で、p68ワクチンをイヌに投与することができる。投与は、無針送達装置を用いて行うこともできる。投与は、複数の経路を併用して、例えば、最初に非経口経路を用いて投与し、それに続いて粘膜経路を用いて投与して行うこともできる。
【0065】
好ましい投与経路には、皮下投与および筋肉内投与が含まれる。
【0066】
本発明のp68ワクチン組成物は、少なくとも6週齢、好ましくは少なくとも7週齢、そしてより好ましくは少なくとも8または9週齢のイヌに投与することができる。イヌのワクチン接種は、単回用量または多回用量のp68ワクチンを用いて実施できる。2用量のp68ワクチンを、それら2回の投与の間隔が約2〜4週間、好ましくは約3週間となるようにイヌに投与するのが好ましい。4月齢未満の子イヌでは、移行抗体によって適切な免疫応答の発生が妨げられることがあるので、4月齢になる前にイヌにワクチン接種する場合、4月齢に達した際に単一用量を用いて再接種することが推奨される。また、毎年単一用量でイヌを再度ワクチン接種することもできる。繁殖、寄宿および品評会などの状態にあって、気管支敗血症菌に曝露している可能性が高い場合、これらの事態が生じてから1年以内、または好ましくは6カ月以内にもう一度追加免疫を与えることができる。
【0067】
混合ワクチン
別の実施形態では、本発明は、そのような混合ワクチンを投与することによって、気管支敗血症菌および/または他の1つもしくは複数の、イヌの病原体からイヌを防御する混合ワクチンおよび方法を提供する。本発明の混合ワクチン組成物は、有効性干渉を示さず、かつ子イヌに投与しても安全である。
【0068】
本発明の混合ワクチンは、気管支敗血症菌p68抗原を含み、上述の通り、他のイヌ病原体によって引き起こされる疾病に対する防御免疫応答をイヌで誘導することができるそのような他のイヌ病原体に由来する少なくとも1つの抗原と組み合わせて作製することができる。そのような混合ワクチンは、p68抗原を含まない2つ以上のそのような他のイヌ病原体の組合せをも含む。
【0069】
そのような他の病原体には、イヌジステンパー(CD)ウイルス、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルス、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌコロナウイルス(CCV)、イヌヘルペスウイルス、および狂犬病ウイルスが含まれるが、これらに限定されない。本発明のワクチン組成物中で使用するための、これらの病原体由来の抗原は、改変生ウイルス調製物または不活性化ウイルス調製物の形態にあるものでよい。これらのウイルスの毒性株を弱毒化する方法、および不活性化ウイルス調製物を作製する方法は、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第4567042号および第4567043号に記載されている。
【0070】
他の病原体には、レプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、レプトスピラポモナ、レプトスピラハージョボビス、ポルフィロモナス属全種、バクテロイデス全種、リーシュマニア属全種、ボレリア属全種、エーリキア属全種、マイコプラズマ属全種、およびミクロスポルムカニスも含まれる。本発明のワクチン組成物中で使用するための、これらの病原体由来の抗原は、当技術分野で周知の方法を用いて調製された不活性化全細胞調製物または部分細胞調製物の形態にあるものでよい。例えば、不活性レプトスピラ全細胞調製物または部分細胞調製物を作製する方法が当技術分野で知られており、例えば、Yan,K−T、「Aspects of Immunity to Leptospira borgpetersenii serovar hardjo」、博士論文、Appendix I、1996年、Faculty of Agriculture and Food Science,The Queen’s University of Belfast;Mackintoshら、「The use of a hardjo−pomona vaccine to prevent leptospiruria in cattle exposed to natural challenge with Leptospia interrogans serovar hardjo」、New Zealand Vet.J 28:174〜177、1980年;Bolinら、「Effect of vaccination with a pentavalent leptopsiral vaccine on Leptospira interrogans serovar hardjo type hardjo−boivs infection of pregnant cattle」Am.J.Vet.Res.50:161〜165、1989年に記載されている。
【0071】
本発明によれば、混合ワクチンは、通常、獣医学的に許容できる担体を含む。上述の通り、獣医学的に許容できる担体には、あらゆる溶媒、分散媒、剤皮、アジュバント、安定化剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤などが含まれる。希釈剤には、水、食塩水、ブドウ糖、エタノール、グリセロールなどが含まれうる。等張剤には、中でも、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトールおよびラクトースが含まれうる。安定化剤には、中でも、アルブミンが含まれる。
【0072】
本発明による使用に適したアジュバントには、無機質塩、例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、アルミニウムリン酸塩、およびリン酸カルシウム;界面活性剤およびマイクロ粒子、例えば、非イオン性ブロックポリマー界面活性剤(例えばコレステロール)、ウイロソーム、サポニン(例えば、Quil A、QS−21、およびGPI−0100)、プロテオソーム、免疫刺激性複合体、コクレエート、第4級アミン(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA))、アブリジン、ビタミンA、ビタミンE;RIBIアジュバントシステム(Ribi社)、チモテ菌の細胞壁骨格(Detox(登録商標))、ムラミルジペプチド(MDP)およびトリペプチド(MTP)、モノホスホリルリピドA、カルメット−ゲラン桿菌、熱不安定性大腸菌エンテロトキシン、コレラトキシン、トレハローズジミコレート、CpGオリゴデオキシヌクレオチドなどの細菌産物;サイトカインおよびホルモン、例えば、インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−6、IL−12、IL−15、IL−18)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、デヒドロエピアンドロステロン、1,25−ジヒドロキシビタミンD;ポリアニオン、例えばデキストラン;ポリアクリル酸(例えば、ポリメタクリル酸メチル、Carbopol 934P);担体、例えば、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、コレラトキシンBサブユニット、エンテロトキシン産生大腸菌の変異体熱不安定性エンテロトキシン(rmLT)、熱ショックタンパク質;水中油型乳剤、例えばAMPHIGEN(登録商標)(Hydronics社、米国);ならびに例えばフロイント完全および不完全アジュバントなどの油中水型乳剤など、いくつかのアジュバントクラスが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明による混合ワクチン中で使用するのに好ましいアジュバントには、1)Quil Aおよびコレステロールと;2)水酸化アルミニウムとが含まれる。上記ワクチン中での使用に適したアジュバントの量は、用いられたアジュバントの性質に依存する。例えば、Quil Aおよびコレステロールをアジュバントとして用いる場合、Quil Aの量は、通常、1用量あたり約1〜1000μg、好ましくは1用量あたり30〜100μg、より好ましくは1用量あたり約50〜75μgであり;コレステロールの量は、通常、1用量あたり約1〜1000μg、好ましくは1用量あたり約30〜100μg、より好ましくは1用量あたり約50〜75μgである。水酸化アルミニウムをアジュバントとして用いる場合、その量は、通常、約0.5〜20%、好ましくは約0.5〜10%、より好ましくは約1〜2%である。
【0074】
p68抗原、他の病原体に由来する1つもしくは複数の抗原、および/または獣医学的に許容できる担体は、混合ワクチン組成物を形成させるための任意の好都合かつ実際的な方法、例えば、混合、溶解、懸濁、乳化、カプセル化、吸収、および同様の方法によって併せることができ、注射、埋入、吸入、経口摂取、または同様の方法に適した、錠剤、カプセル剤、粉末薬、シロップ、懸濁液などの剤形にすることができる。上記ワクチンは、約0.1〜5ml、または好ましくは約0.5〜2.5mlの用量、またはさらにより好ましくは約1mlの用量の注射によってイヌに投与できるように調剤されることが好ましい。
【0075】
混合ワクチンは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)およびウイルス調製物を、無菌食塩水中に溶解しているレプトスピラ抗原、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントから構成されている液体調製物で再水和させることによって調製できる。そのような混合ワクチンは、上記弱毒化ウイルス株およびレプトスピラウイルス調製物の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)を無菌溶液で再水和させるか、あるいは前記凍結乾燥調製物を、CCVおよび希釈剤で再水和させることによって調製することもできる。
【0076】
本発明によれば、混合ワクチンは、少なくとも6週齢、好ましくは少なくとも7週齢、そしてより好ましくは少なくとも8または9週齢のイヌに投与することができる。混合ワクチンは、2から4用量、好ましくは2から3用量で投与することができる。各用量の間に2から6週間をおいて、好ましくは各用量の間に2から4週間をおいて、これらの用量を投与することができる。
【0077】
投与は、経口、鼻腔内、粘膜、局所、経皮および非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下または筋肉内)経路を含めた、任意の既知な経路で実施できる。投与は、無針送達装置を用いて行うこともできる。投与は、複数の経路を併用して、例えば、最初に非経口経路を用いて投与し、それに続いて粘膜経路を用いて投与して行うこともできる。好ましい投与経路には、皮下投与および筋肉内投与が含まれる。
【0078】
好ましい混合ワクチンおよびワクチン接種方法
本発明の好ましい混合ワクチンには、CDウイルスの弱毒化株、CAV−2の弱毒化株、CPIウイルスの弱毒化株、CPVの弱毒化株、CCV株の不活性化調製物、および気管支敗血症菌p68抗原が含まれる。
【0079】
特に好ましい混合ワクチンには、「Snyder Hill」株と命名された弱毒化CDウイルス株(米国獣医学試験研究所(National Veterinary Service Laboratory)、アイオワ州Ames所在)、「Manhattan」株と命名された弱毒化CAV−2株(米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、「NL−CPI−5」と命名された弱毒化CPIウイルス株(米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、「NL−35−D」と命名された弱毒化CPV株(米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、「NL−18」と命名されたCCV株の不活性化調製物(米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、および配列番号1の配列を有する組換え体気管支敗血症菌p68抗原が含まれる。そのような混合ワクチンは、本明細書では「p68/5CV混合ワクチン」とも呼ばれ、好ましくは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物およびウイルス調製物を、無菌食塩水中に溶解しているp68抗原、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントで構成されている液体調製物で再水和させることによって調製される。p68抗原を含まない場合、本明細書ではこの混合ワクチンを5CV混合ワクチンと呼ぶ。そのような混合ワクチンは、好ましくは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物およびウイルス調製物を、無菌食塩水、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントで構成されている液体調製物で再水和させることによって調製される。
【0080】
別の特に好ましい混合ワクチンには、p68/5CV混合ワクチンの抗原成分、ならびに5つのレプトスピラ種、すなわち、レプトスピラブラティスラバ(例えばアイオワ州Ames所在の米国獣医学試験研究所から入手できるレプトスピラブラティスラバ株)、レプトスピラカニコーラ(例えばC−5株、米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、レプトスピラグリポティフォーサ(例えばMAL1540株、米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、レプトスピライクテロヘモリジア、(例えばNADL11403株、米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、およびレプトスピラポモナ(例えばT262株、米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)の不活性化全細胞調製物が含まれる。そのような混合ワクチンは、本明細書では「p68/5CV−レプトスピラ混合ワクチン」とも呼ばれ、好ましくは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)およびウイルス調製物を、無菌食塩水中に溶解しているp68抗原およびレプトスピラ抗原、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントから構成されている液体調製物で再水和させることによって調製される。p68抗原を含まない場合、本明細書ではこの混合ワクチンを5CV−5レプトスピラ混合ワクチンと呼ぶ。p68抗原もレプトスピラブラティスラバも含まない場合、本明細書ではこの混合ワクチンを5CV−4レプトスピラ混合ワクチンと呼ぶ。p68抗原を含まず、かつレプトスピラカニコーラおよびレプトスピライクテロヘモリジアを含む5CV混合ワクチンを、本明細書では5CV−2レプトスピラ混合ワクチンと呼ぶ。そのような混合ワクチンは、好ましくは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)およびウイルス調製物を、無菌食塩水中に溶解しているレプトスピラ抗原、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントから構成されている液体調製物で再水和させることによって調製される。上記弱毒化ウイルス株およびレプトスピラウイルス調製物の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)を無菌溶液で再水和させるか、あるいは前記凍結乾燥調製物を、CCVおよび希釈剤で再水和させることによって、そのような混合ワクチンを調製することも好ましい。
【0081】
本発明によれば、p68/5CV、p68/5CV−レプトスピラ、5CV、5CV−5レプトスピラ、5CV−4レプトスピラ、および5CV−2レプトスピラ混合ワクチンを4週齢以上、好ましくは6週齢以上の健康なイヌに、好ましくは3用量をそれぞれ約3週間の間隔をおいて投与することができる。毎年単一用量でイヌを再度ワクチン接種できる。繁殖、寄宿および品評会などの状態にあって、気管支敗血症菌および/またはイヌウイルスに曝露している可能性が高い場合、これらの事態が生じてから1年以内、または好ましくは6カ月以内にもう一度追加免疫を与えることができる。
【0082】
本発明のさらに別の好ましい混合ワクチンには、CDウイルスの弱毒化株、CAV−2の弱毒化株、CPIウイルスの弱毒化株、CPVの弱毒化株、および組換え体気管支敗血症菌p68抗原が含まれる。
【0083】
特に好ましい混合ワクチンには、「Synder Hill」株と命名された弱毒化CDウイルス株(米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、「Manhattan」株と命名された弱毒化CAV−2株(米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、「NL−CPI−5」と命名された弱毒化CPIウイルス株(米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、「NL−35−D」と命名された弱毒化CPV株(米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、および配列番号1の配列を有する組換え体気管支敗血症菌p68抗原が含まれる。そのような混合ワクチンは、本明細書では「p68/DAPP混合ワクチン」とも呼ばれ、好ましくは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)を、無菌食塩水中に溶解しているp68抗原、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントから構成されている液体調製物で再水和させることによって調製される。p68抗原を含まない場合、本明細書ではこの混合ワクチンをDAPP混合ワクチンと呼ぶ。そのような混合ワクチンは、好ましくは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)を、無菌食塩水、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントから構成されている液体調製物で再水和させることによって調製される。
【0084】
別の特に好ましい混合ワクチンには、p68/DAPP混合ワクチンの抗原成分、ならびに2つのレプトスピラ種、すなわち、レプトスピラカニコーラ(例えばC−51株、米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)およびレプトスピライクテロヘモリジア(例えばNADL11403株、米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)の不活性化全細胞調製物が含まれる。別法では、好ましい混合ワクチンには、p68/DAPP混合ワクチンの抗原成分ならびに5つのレプトスピラ種、すなわちレプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナの不活性全細胞調製が含まれうる。そのような混合ワクチンは、本明細書では「p68/DAPPレプトスピラ混合ワクチン」とも呼ばれ、好ましくは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)およびウイルス調製物を、無菌食塩水中に溶解しているp68抗原およびレプトスピラ抗原、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントから構成されている液体調製物で再水和させることによって調製される。
【0085】
別法では、別の好ましい混合ワクチンに、DAPP混合ワクチンの抗原成分、ならびに5つのレプトスピラ種、すなわちレプトスピラブラティスラバ、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナの不活性化全細胞調製物が含まれる。さらに別の好ましい混合ワクチンには、DAPP混合ワクチンの抗原成分、ならびに4つのレプトスピラ種、すなわちレプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナの不活性化全細胞調製物が含まれる。そのような混合ワクチンは、本明細書では「DAPP−レプトスピラ混合ワクチン」とも呼ばれ、好ましくは、上記弱毒化ウイルス株の凍結乾燥調製物(または噴霧乾燥もしくは脱水などの他の方法による調製物)およびウイルス調製物を、無菌食塩水中に溶解しているレプトスピラ抗原、ならびにQuil Aおよびコレステロールのアジュバントから構成されている液体調製物で再水和させることによって調製される。
【0086】
本発明によれば、p68/DAPP、p68/DAPP−レプトスピラ、DAPP、およびDAPP−レプトスピラ混合ワクチンを6週齢以上、または好ましくは8週齢以上の健康なイヌに、好ましくは2用量をそれぞれ約3週間の間隔をおいて投与することができる。少なくとも12週齢のイヌに与える場合には、単一用量で十分でありうる。毎年単一用量でイヌを再度ワクチン接種できる。繁殖、寄宿および品評会などの状態にあって、気管支敗血症菌および/またはイヌウイルスに曝露している可能性が高い場合、これらの事態が生じてから1年以内、または好ましくは6カ月以内にもう一度追加免疫を与えることができる。別の好ましい混合ワクチンには、CPIの弱毒化株と併せたp68抗原、好ましくは配列番号1を有する組換え体p68抗原が含まれる。
【0087】
さらに別の好ましい混合ワクチンには、p68抗原、好ましくは配列番号1を有する組換え体p68抗原、CPIの弱毒化株、ならびにレプトスピラカニコーラ(例えばC−51株、米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)、およびレプトスピライクテロヘモリジア(例えばNADL11403株、米国獣医学試験研究所、アイオワ州Ames所在)などの少なくとも2つのレプトスピラ種が含まれる。
【0088】
本発明の混合ワクチン中のp68抗原および他の1つまたは複数の病原体に由来する抗原の量は、免疫化に有効な量であるべきである。通常、混合ワクチン中のp68抗原の量は、1用量あたり少なくとも約0.5μgであるべきである。上記弱毒化CDウイルスの量は、1用量あたり少なくとも約10から約10TCID50(組織培養で感染を引き起こして50%の細胞変性効果を有する用量)、好ましくは1用量あたり約10から約10TCID50の範囲にあるべきである。弱毒化CAV−2の量は、1用量あたり少なくとも約10TCID50から約10TCID50、好ましくは1用量あたり104.0〜約106.0TCID50の範囲にあるべきである。弱毒化CPIウイルスの量は、1用量あたり少なくとも10TCID50から約10TCID50、好ましくは1用量あたり10〜約10TCID50の範囲にあるべきである。弱毒化CPVの量は、1用量あたり少なくとも約10TCID50から約10TCID50、好ましくは1用量あたり10〜約10TCID50の範囲にあるべきである。不活性化ウイルス調製物中のCCVの量は、1用量あたり少なくとも約100相対単位、好ましくは1用量あたり1000〜4500相対単位の範囲にあるべきである。ワクチン中の各レプトスピラ種は、ワクチン1用量あたり約100〜3500NU(濁度単位)の範囲、好ましくは1用量あたり200〜2000NUの範囲にあるべきである。
【0089】
上記混合ワクチンは、0.1mlから5ml、好ましくは0.5mlから2.5mlの用量、そしてより好ましくは約1mlの用量の注射によってイヌに投与できるように調剤される。
【0090】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
イヌボルデテラp68組換え体抗原の用量漸増試験
ワクチン:
実験ワクチン抗原は、大腸菌(E.coli)株LW68によって産生された気管支敗血症菌組換え体p68外膜タンパク質(配列番号1)であった。このワクチンは、1mL用量中に、様々なレベルのSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)可溶化p68と、50μgのQAC(QuitA/50μgコレステロール)アジュバントとを含有していた。
【0092】
攻撃物質:
気管支敗血症菌のイヌ単離株#85B、継代#3、ロット#051597のエアゾールを攻撃物質として用いた。プレート上の平均計数は、1.59×10CFU/mlであった。
【0093】
動物:
60匹のオスおよびメスの子イヌを、6つの治療群の1つに無作為に割り振った(1群あたり10匹の子イヌ)。初回ワクチン接種の41日前、および初回ワクチン接種の28日前に再度、子イヌから採血し、気管スワブを採取し、いかなる血清陽性動物も、培養陽性動物も試験から排除した。
【0094】
動物は、無作為化完備型設計に従って、無作為に治療および部屋に割り当てた。ワクチン接種後の観察は、ワクチン指定群に関する知識なしで行った。
【0095】
設計:
【0096】
【表1】

【0097】
手順:
IVP投与:
0日目にプラセボまたは実験ワクチンのいずれかを動物に接種した。2回目のワクチン接種は21日目に行った。初回ワクチン接種は右頸部皮下に行い、2回目のワクチン接種は左頸部皮下に行った。
【0098】
攻撃投与:
2回目のワクチン接種の28日後に、気管支敗血症菌のエアゾールで、すべての動物に攻撃を行った。攻撃後の2から14日目(51から63日目)に、1日に2回30分間(午前に1回および午後に1回)動物の咳嗽をモニターした。
【0099】
観察および試料採集:
各ワクチン接種後の7日間(0から7日目および21から28日目)、および各ワクチン接種後の14日目(14および35日目)に、すべての注射部位を触診し、3次元的に測定した。
【0100】
ワクチン接種当日および各ワクチン接種後の3日間(0から3日目および21から24日目)に直腸温を記録した。
【0101】
ワクチン接種当日(0および21日目)ならびに42、50および63日目に採血し、気管支敗血症菌から精製されたp68タンパク質に対する特異的抗体に関して、ELISAによってアッセイした。42、49、50、52、54、56、および58日目にも採血し、血清アミロイドA(SAA)に関して分析した。
【0102】
ワクチン接種前(供給業者において、41日目および28日目)および49日目に、すべての動物で、気管支敗血症菌を単離するために気管スワブを採取し、気管支敗血症菌の凝集素価測定用に採血した。
【0103】
ボルデテラP68イヌ抗体およびマウス抗体の力価測定DAB ELISA
精製された未変性のp68を、0.01Mホウ酸緩衝液で600ng/mLに希釈し、100μl/ウェルを各ウェルに添加した。このプレートを4℃で終夜インキュベートした。その後、過剰量のPBS−Tween20でプレートを1回洗浄した。1%の無脂粉乳を含有するPBSを200μl/ウェル、プレートに添加した。その後、プレートを37℃で1時間インキュベートした。次いで、過剰量のPBS−Tween20でプレートを1回洗浄した。
【0104】
ELISAプレートの最上列に、1:50希釈のイヌ血清またはマウス血清を添加し、プレートの最下部までずっと、2倍の段階希釈をした血清を添加した。このプレートを37℃で1時間インキュベートした。続いて、過剰量のPBS−Tween20でプレートを3回洗浄した。
【0105】
上記のイヌ血清と共にインキュベートしたプレートに、1:2000希釈のペルオキシダーゼ標識ヤギ抗イヌIgG(H+L)を100μl/ウェル添加した。次いで、プレートを37℃で1時間インキュベートした。上記のマウス血清と共にインキュベートしたプレートに、1:4000希釈のペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)を100μl/ウェル添加した。その後、プレートを37℃で1時間インキュベートした。次いで、過剰量のPBS−Tween20でプレートを3回洗浄した。
【0106】
ABTS基質を100μl/ウェル添加した。約20分後に、Molecular Devices社製または同等なプレートリーダーを用いて、プレートを405〜490nmで測定した。
【0107】
データ分析:
イヌの咳嗽の数における治療による相違は、フィッシャーの正確確率検定を用いて試験した。5%の有意水準を用いた。
【0108】
ELISA力価を対数変換し、その後、一般線型混合モデルを用いて分析した。治療による相違は、95%の信頼水準を用いて評価した。攻撃の観察を、1日2回、それぞれ30分間モニターした。
【0109】
結果:
気管スワブ培養および凝集素価
この試験に登録された動物の気管支敗血症菌状態をモニターするために、気管スワブ培養および凝集素価の評価を行った。多数のイヌが様々な時点で力価の増大を示したが、攻撃前には、128を超える増大を示した力価はなかった。
【0110】
注射部位の観察
初回ワクチン接種後の注射部位反応を表1に示す。最も大きい注射部位反応は、T05(64μg)のワクチン接種した動物で観測され、最も大きい平均注射部位反応でも、わずか14.69cmと測定された(ワクチン接種の2日後)。T03(4μg)、T04(16μg)、およびT06(256μg)のワクチン接種した動物は、ワクチン接種の最長7日後まで、様々な注射部位反応を示した。T02(1μg)のワクチン接種した動物は、ワクチン接種後1日目に反応を示したのみであった。ワクチン接種後7日目までには、治療群相互における注射部位反応の、統計的に有意な差はなくなっていた。14日目までに、すべての注射部位反応は消散していた。
【0111】
2回目のワクチン接種後の注射部位反応を表2に示す。2回目のワクチン接種後の最も大きな平均注射部位反応は、T06(256μg)のワクチン接種した動物で観測され、最も大きい平均注射部位反応は、50.03cmと測定された(ワクチン接種の1日後)。T05(64μg)およびT04(16μg)の動物は、2回目のワクチン接種後、最長7日目まで、注射部位反応を示した。T03(4μg)およびT02(1μg)動物は、ワクチン接種後、最長7日目まで、最小の注射部位反応を示した。T02(1μg)とT03(4μg)は、ワクチン接種後に、プラセボ群と統計的に相違していない注射部位反応を示した。2回目のワクチン接種後の14日目には、注射部位反応が観測されなかった。
【0112】
初回ワクチン接種後の注射部位反応の頻度を表3に示す。初回ワクチン接種後の任意な時点に反応を示した注射部位の最も高い総合的LSM頻度は、76%であって、T06(256μg)のワクチン接種によって生じたものであった。次に、最も頻度が高かったものとしては、T05(64μg)で初回ワクチン接種を行った後の注射部位の72%、T04(16μg)で初回ワクチン接種を行った後の69%、そしてT03(4μg)で初回ワクチン接種を行った後の63%が反応を示した。T02(1μg)で初回ワクチン接種を行った後の頻度が最も低かった(38%)。
【0113】
2回目のワクチン接種後の注射部位反応の頻度を表4に示す。各ワクチンの総合的LSM頻度は、初回ワクチン接種後に見られたものと一貫したものであった。
【0114】
ワクチン接種後の注射部位反応の発生頻度および持続時間を表5に要約する。初回および2回目のワクチン接種後の測定可能な注射部位反応の発生頻度(すなわち任意な時点に反応を示したイヌの数)は、T03、T04、T05、およびT06(それぞれ4μg、16μg、64μg、および256μg)では100%であった。ワクチン接種後の注射部位反応の発生頻度は、T02(1μg)を投与した動物で最少であった(57.1%)。
【0115】
初回および2回目のワクチン接種後の反応の持続時間(反応を伴った日数の最少二乗平均として表5に示す)は、T04、T05、およびT06(それぞれ16μg、64μg、および256μg)を用いてワクチン接種した動物のものが、他より長かった(初回ワクチン接種後には2.7から5.1日間、そして2回目のワクチン接種後には6.0から6.7日間)。T02およびT03(それぞれ1μgおよび4μg)を用いてワクチン接種した動物は、初回および2回目のワクチン接種後に、注射部位反応を伴った日数が最も少なかった(初回ワクチン接種後には0.3および1.3日間、そして2回目のワクチン接種後には1.9および4.5日間)。
【0116】
直腸温
直腸温の平均測定値を表6に要約する。T02(1μg)における1および24日目、T03(4μg)における1、21、および24日目、T04(16μg)における2および24日目、T05(64μg)における23日目、ならびにT06(256μg)における0、1、および24日目のLSM直腸温は、プラセボと有意に相違していた。23日目におけるすべての比較は、プラセボから統計的に有意に相違していなかった(P>0.05)。
【0117】
p68ELISA血清学
p68ELISAデータの要約を表7に示す。ワクチン接種前における、p68ELISA特異抗体の相乗平均ウイルス力価は、すべての群で低く(24.9から28.9の範囲)、プラセボの力価は、試験期間を通して低いままであった。初回ワクチン接種後の21日間に、ワクチン接種治療群では、p68ELISA相乗平均力価が増大した(55.2から4411.7の範囲)が、T02(1μg)の力価はプラセボ(T01)と統計的に相違していなかった。2回目のワクチン接種後の42日間に、すべてのワクチン接種群で相乗平均力価がさらに増大し(674.6から48382.0の範囲)、ワクチン接種に対する血清学的応答がよいことが実証された。
【0118】
血清アミロイドA(SAA)血清学
SAA力価を表8に要約する。攻撃前には、相乗平均SAA力価はすべての治療群で低かった(0.1〜0.5の範囲)。攻撃後には、T01 GMT力価は1.5から146.0の範囲にあり、一方、p68治療群は0.3から23.1の範囲にあった。50、52、54、および56日目では、すべての治療群がプラセボと統計的に相違していた。52日目のT02(1μg)を除いて、p68ワクチン相互ではいかなる統計的な相違点も示されなかった。52日目のT02は、他のすべてのp68治療群と統計的に相違した相乗平均を示した。
【0119】
攻撃反応
攻撃反応データを表9に示す。反応は、攻撃後における咳嗽をモニターすることによって測定し、2通りの方法、すなわち、咳嗽を伴った日数の最小二乗平均数および連続した2日間の咳嗽の数の最小二乗平均数(罹患率)を用いてこの観測を分析した。
【0120】
咳嗽を伴った平均日数の分析によって、p68治療群相互では統計的に有意な差がないが、プラセボを接種したイヌは、平均8.6日間咳をし、一方、p68ワクチンを投与したイヌは、それより有意に少ない、平均2.2から4.7日間の範囲で咳をしたことが実証された。
【0121】
罹患率を用いてイヌが評価した場合、すべてのT01(プラセボ)は、2日間連続して咳をしている(罹患率100%)のが観測された。T04(16μg)およびT05(64μg)を用いてワクチン接種したイヌは、それぞれ55.6%および66.7%の罹患率を示した。T02(1μg)を用いてワクチン接種したイヌの28.6%、T03(4μg)を用いてワクチン接種したイヌの50%、およびT06(256μg)を用いてワクチン接種したイヌの33.3%のみが、2日間連続して咳をしたことが観測された。
【0122】
考察:
この試験の目的は、イヌにおける抗原用量、免疫応答および防御の間の相関関係を確立することであった。試験されたp68抗原用量は、1μg、4μg、16μg、64μgおよび256μgであった。
【0123】
注射部位反応測定値の分析は、2回目のワクチン接種後1日目のT06(256μg)を除外して、p68治療群における反応が無視できるものであることを実証した。観測された反応は、小さい傾向にあり、通常、観測期間中に大きさが縮小した。これらの反応の大きさは、臨床的に取るに足りないものであり、剪毛していないイヌでは多くの場合目につかないであろう。
【0124】
ワクチン接種後の直腸温は、すべての群のすべてのイヌにおいて、平凡なものであり、正常な限度内にあった。
【0125】
ワクチン接種に対する血清学的応答は、T03からT06群まで極めて良好であった。これらの治療群は、21日目から63日目までのプラセボと比較して、すべてが、有意に高いp68ELISA力価を示した。T02(1μg)は、42日目から63日目までのT01(プラセボ)と比較して有意なp68ELISA力価を示した。最も高い力価は、T05(64μg)およびT06(256μg)で観測された。
【0126】
攻撃後におけるSAA反応試験は、p68ワクチン接種したイヌすべてで、対照のイヌと比較して、攻撃後のSAAの上昇がはるかに小さいことを示した。52日目のT02(1μg)を除外して、p68ワクチン用量レベル相互では、攻撃後の相違がないことが実証された。52日目のT02(1μg)は、他のすべてのp68治療群から統計的に相違した相乗平均を示した。
【0127】
咳嗽を伴った日数の最小二乗平均(LSM)または連続した2日間の咳嗽の数の最小二乗平均(罹患率)を用いて、攻撃後の咳嗽観測を分析した。咳嗽の日数のLSMを用いて、プラセボ群と全p68ワクチン接種群との間の有意差は示されたが、異なるp68ワクチン用量レベル相互の相違は示されなかった。罹患率を用いた場合、T02(1μg)、T03(4μg)、およびT06(256μg)を用いてワクチン接種したイヌは、プラセボのものより有意に咳が少なかった。
【0128】
結論:
この試験は、イヌにおける抗原用量、免疫応答および防御の間の相関関係を確立するために行われた。試験されたp68抗原用量は、1μg、4μg、16μg、64μgおよび256μgであった。
【0129】
最小の注射部位反応、正常な直腸温、およびワクチン接種に対する有害反応の欠如によって実証されたように、すべてのワクチンが安全であった。注射部位反応の大きさおよびこれらの反応の持続時間は、抗原性の低い治療群でより小さかった。ELISA力価によって測定された、ワクチン接種に対する血清学的応答は、抗原の用量がより高い群で極めて良好であり、より高い血清学的応答を示した。比較の方法として、咳嗽を伴う日数のLSMを用いた場合、すべての治療群は、プラセボと比較して、咳嗽の有意な減少を示した。治療群相互では、いかなる相違も認められなかった。連続した2日間の咳嗽(すなわち罹患率)を比較に用いた場合、T02(1μg)、T03(4μg)、およびT06(256μg)を用いてワクチン接種したイヌは、プラセボより有意に咳が少なかった。
【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
【表6】

【0135】
【表7】

【0136】
【表8】

【0137】
【表9】

【0138】
【表10】

【0139】
(実施例2)
イヌボルデテラp68免疫原性試験
動物
45匹のオスおよびメスの雑種イヌを購入した。子イヌが試験地に到着した日に、すべての子イヌにMLVパルボウイルスワクチンを接種した。実験に用いた製品を除いて、他のワクチンは、試験期間中に子イヌに投与しなかった。イヌは、約0日目(初回ワクチン接種の日)に約9週齢(±1週間)であった。
【0140】
イヌは、攻撃前にボルデテラおよび他のイヌの病原体への曝露を防止するのに必要な隔離施設で管理した。ボルデテラを含むエアゾールで攻撃した後も、他のイヌの病原体への曝露を防止するために隔離を継続した。
【0141】
ワクチン
治療群のT01およびT02では、無菌食塩水をプラセボワクチンとして用いた。治療群T03およびT04には、イヌ組換え体p68気管支敗血症菌ワクチンを用いた。p68抗原の構造遺伝子を大腸菌(Escherichia coli)にクローニングし、温度感受性プロモーターによって遺伝子の発現を調節した。細胞を溶解させ、遠心法によって封入体を分離した。封入体中の組換え体p68をSDS処理によって可溶化した。無菌食塩水を希釈剤として、その中で組換え体p68(1mLあたり15μg)を、1mLあたり50μgのQuil Aおよび50μgのコレステロールと混合した。各mL用量は、0.28%のエタノールおよび0.01%のチメロサールを含有していた。
【0142】
抗原接種原
気管支敗血症菌Bihr Cat株は、Biologics Control Laboratories−Microbiologyによって現在採用されている方法を用いて、抗原接種原として調製された。Bordet−Genou寒天プレートに、集密増殖の気管支敗血症菌Bihr Cat株を播種し、37.5+/−2.5℃で48時間インキュベートした。病原性の第1相コロニーを選択し、Bordet−Genou寒天上に広げ、37.5+/−2.5℃で24時間インキュベートした。インキュベーションの後に、ボルデテラ(Bordetella)食塩水を用いて寒天からコロニーを洗い出し、600nmにおける光学濃度が0.80となるように抗原を希釈した。濁度測定値を確認するため、攻撃の前後に細胞の計数を行った。攻撃標的濃度は、約1×10CFUであった。攻撃前の濃度は2.37×10CFU(100%第1相)、攻撃後の濃度計測値は1.35×10CFU(100%第1相)であった。
【0143】
試験設計
要約表
【0144】
【表11】

【0145】
無作為化/盲検化
ワクチン接種から攻撃の日までの期間、一般化ブロック設計に従って、動物を治療に割り当てた。治療は、無作為に部屋に割り当てた。攻撃の日に、動物は、ブロックによって無作為に攻撃部屋に割り当てた。
【0146】
割り当てられた治療群に関する認識をもたない有資格の個人が微生物学アッセイおよび血清学アッセイ、注射部位の評価、直腸温の測定、ならびに咳嗽の観測を行った。
【0147】
データ分析
ワクチン接種後反応の変数は、注射部位データ、直腸温、およびp68ELISA力価からなっていた。注射部位データは、以下の事項、すなわち、1)治療および試験日別の、測定可能反応を有する動物の数、2)治療別の、動物が測定可能な反応を有する時点の数、3)治療別の、任意の時点で測定可能反応を有する動物の数に関して要約した。
【0148】
初回および2回目のワクチン接種に関して別々に、注射部位容積(立方cm)、直腸温、および自然対数変換したp68ELISA力価データを、一般線型混合モデルを用いて分析した。
【0149】
各観測時点における治療群の相違を試験するため、ならびに各治療における時点の比較をするために、観測時点の最小二乗平均による、治療の先験的線型対比を構築した。すべての比較に、5%の有意水準を用いた。
【0150】
攻撃後反応の変数は、毎日の咳嗽観測、p68ELISA力価、および血清アミロイドA力価からなっていた。攻撃後期間中の咳嗽の日数は、一般線型混合モデルを用いて分析した。
【0151】
治療群の相違を試験するために、最小二乗平均による治療の先験的対比を構築した。すべての比較に、5%の有意水準を用いた。
【0152】
初回および2回目のワクチン接種に関して別々に、フィッシャーの正確確率検定を用いて、2日間連続した咳の発生頻度に関して、治療群を比較した。すべての比較に、5%の有意水準を用いた。
【0153】
攻撃後の血清アミロイドA(SAA)力価データは、力価の値に自然対数変換を適用し、その後、一般線型混合モデルを用いて分析した。
【0154】
各観測時点における治療群の相違を試験するため、ならびに各治療における時点の比較をするために、観測時点の最小二乗平均による、治療の先験的線型対比を構築した。すべての比較に、5%の有意水準を用いた。
【0155】
試験手順
詳細な動物操作手順
45匹の血清陰性かつ培養陰性の子イヌを無作為に4つの治療群の1つに割り当てた。合計15匹の対照イヌは、それぞれ8匹および7匹のイヌを、筋肉内(IM)または皮下(SC)対照群に割り当てた。p68 SC治療群に15匹のイヌを割り当て、p68 IM治療群に15匹のイヌを割り当てた。治療群に関しては、上記の試験設計の項に詳述してある。
【0156】
初回ワクチン接種の日を0日目とした。ワクチン接種は、0日目に行い、21日後に再度行った。初回ワクチン接種には、頸部の右側を用い、2回目のワクチン接種には、頸部の左側を用いた。それぞれ左右の半膜様筋に筋肉内注射して、初回および2回目のワクチン接種を行った。各ワクチン接種後の7日間、すべての注射部位を3次元的に測定し、ワクチン接種後の14日間、追跡測定を行った。ワクチン接種当日(ワクチン接種前)および各ワクチン接種後の3日間、直腸温をモニターした。
【0157】
35日目に、すべての動物から、気管支敗血症菌培養用に気管スワブを採取し、かつ凝集素価測定用に採血した。すべての動物が、気管スワブに関して陰性であり、ボルデテラに対して血清学的に陰性であり、かつ攻撃に好適であると考えられた。
【0158】
2回目のワクチン接種の24日後である45日目に、すべてのイヌに、気管支敗血症菌のエアゾール攻撃を行った。鎮静剤を投与したイヌに、使い捨てノーズコーンを用いて攻撃を行った。ノーズコーンは、鎮静剤を投与したイヌの鼻口部の上にぴったりと装着された。ノーズコーンは噴霧器に接続され、噴霧器は、5.5から6.0psiに設定された真空圧力ポンプに接続されていた。1mLの攻撃物質を噴霧器に入れ、それぞれのイヌにエアロゾル化された攻撃物質を4分間投与した。観測を行った人員は、治療群の割り当てを認知していなかった。
【0159】
攻撃後の14日間(46〜59日目)、動物の咳嗽をモニターした。毎日ほぼ同時刻に2回、午前に1回、午後に1回、約30分間観測を行い、結果を記録した。
【0160】
血液採集
凝集素価測定用の血液は、初回ワクチン接種前および攻撃前に採集した。抗p68ELISA評価用の血液は、0および21日目のワクチン接種の前、ならびに35、45、および59日目に採集した。血清アミロイドA(SAA)アッセイ用の血液は、攻撃当日(45日目)、ならびに46、48、50、52、および54日目に採集した。
【0161】
試料で実施した試験
気管スワブに気管支敗血症菌が存在するかどうか、培養によって評価した。各気管スワブを、ボルデテラ選択寒天プレート上に広げた。陽性対照および陰性対照が含まれていた。それらのプレートを37.5±2.5℃で48±4時間インキュベートした。その結果各プレート上に得られたコロニーを陽性対照と比較し、陽性対照と同じに見えたすべてのコロニーを、気管支敗血症菌の存在を確認するためにさらに試験した。確認試験には、TSI培地、クエン酸培地、尿素寒天培地、および硝酸レッド培地の使用が含まれていた。
【0162】
凝集素価、p68ELISA分析またはSAA分析に関して、以下の方法を用いて血清を評価した。
【0163】
凝集素価−ボルデテラ食塩水を用い、マイクロタイタープレート中で血清を連続希釈した。各プレートには陽性対照および陰性対照が含まれていた。気管支敗血症菌株87(Bordet Genou寒天上で培養され、採集および不活性化され、630nmで20% Tとなるように希釈された)を凝集性抗原として使用し、各ウェルに添加した。プレートを振盪させながら35±2℃で2時間インキュベートした。22時間、室温で2回目のインキュベーションをした後、プレートの測定を行った。50%の凝集を示す最終のウェルを用いて、エンドポイント力価を測定した。
【0164】
p68ELISA力価−ボルデテラp68抗原に特異的なポリクローナル抗血清でコーティングされた96ウェルマイクロタイタープレート表面に、組換え体p68抗原を捕捉した。そのプレートに、イヌ血清の連続二倍希釈を添加し、インキュベートした。各プレートには、1:1000希釈の陽性対照および陰性対照が含まれていた。p68抗原に特異的な抗体を検出するために、アフィニティー精製されたペルオキシダーゼ標識ヤギ抗イヌIgG指示体結合体を用いた。次いで、発色基質であるABTSを添加し、陽性対照ウェルのO.D.が1.2+0.2になったときにプレートの測定を行った。所与の試料の力価は、光学濃度が陰性対照血清希釈の平均に5つの標準偏差を加えた値より大きい最終希釈の逆数として計算した。
【0165】
SAA力価−イヌの血清アミロイドA力価は、Accuplex社(米国NE68198、Omaha所在ネブラスカ大学医学センター(University of Nebraska Medical Center))から購入したキットを用いて評価した。簡潔には、モノクローナル抗イヌSAA抗体でコーティングされたマイクロタイタープレート表面にイヌSAAを捕捉した。そのプレートに、イヌ血清の希釈試料を添加し、それに続いて、ビオチン標識された抗イヌ抗体結合体を添加した。インキュベーションの後、ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン発色基質を添加した。そのプレートを30分後に測定した。
【0166】
結果
直腸温
直腸温測定値の要約を表10および11に示す。
【0167】
【表12】

【0168】
【表13】

【0169】
初回ワクチン接種後のいかなる日にも、いずれの群の間にも有意な差は認められなかった。21日目において、食塩水を投与したイヌと、p68ワクチン接種したすべてのイヌとの間で有意な差が認められた(T01T02対T03T04ではp=0.0053)。24日目に、p68 SCワクチン接種と、IMワクチン接種との間における有意な差(p=0.0124)が実証された。
【0170】
注射部位反応
注射部位反応を表12および13に要約する。技術的な見落としのため、2回目のワクチン接種後14日目(35日目)の注射部位観測が行われなかった。
【0171】
測定可能な注射部位反応がT03(p68 SC)で観測されたが、大きさは最小であった。小さな注射部位反応が3日目にT04(p68 IM)の1頭のイヌで認められたが、この測定の影響は最小のものであり、その群の全体的平均には反映されていない。
【0172】
【表14】

【0173】
【表15】

【0174】
注射部位の測定値における有意な差を表14に要約する。T02(食塩水SC)対T03(p68 15μg SC)の間での注射部位測定値の有意な差が、初回ワクチン接種後の6日間に認められた。7日目まで、そして再び14日目(2週間の再評価観測)には、いかなる治療群の間でも、いかなる相違も認められなかった。
【0175】
T02(食塩水SC)対T03(p68 15μg SC)の間での注射部位測定値の有意な差が、2回目のワクチン接種後の7日間に認められた。
【0176】
【表16】

【0177】
p68ELISA力価
p68ELISAデータを表15および図1に要約する。ワクチン接種したイヌにおけるp68に対する力価反応が大きかったため、この試験中の異なった時点で様々な滴定最小値を用いた。0および21日目の滴定は、50から開始した。35、45、および59日目の滴定は、200から開始した。「未満」と報告されているいかなる値も分析前に2で割られた。対照群(T01およびT02)で試験の進行中に観測されたp68ELISA値の増分増加は、これらの最小滴定値によるものである。凝集素価は<4に保たれた。
【0178】
p68を用いてワクチン接種したすべての動物は、ワクチン接種の1日目から攻撃の当日まで(0日目対45日目)に、プラセボワクチン接種の動物と比較して少なくとも4倍の力価の増大を示した。
【0179】
【表17】



【0180】
ワクチン接種後および攻撃後のELISA力価の最小二乗平均における有意な差を表16に示す。ワクチン接種が完了した後では、ワクチン接種したp68 SCワクチン接種の動物とp68 IMワクチン接種の動物との間に有意な差は認められなかった。
【0181】
【表18】

【0182】
血清アミロイドA力価
SAA値は、攻撃後0、1、3、5、7、および9日目に測定した。血清アミロイドAの値を表17に示し、そして図2に表した。
【0183】
【表19】

【0184】
SAA力価における有意な差を表18に要約する。食塩水対照は、攻撃後の1、3、および5日目に、ワクチン接種したイヌより高いSAA力価を示した。食塩水SC対照は、ワクチン接種したSCのイヌと比較して有意に高いSAA力価を、攻撃後の7および9日目に示し続けた。
【0185】
【表20】

【0186】
咳嗽観察
すべての治療群におけるエアゾール攻撃は2回目のワクチン接種後の24日目(45日目)に行った。咳嗽観察は、2つの方法、すなわち連続した2日間の咳嗽に基づく疾患状態(表19に示す)と、咳を伴った日数のパーセンテージ(表20および21に示す)とを用いて試験した。連続した2日間の咳嗽を規準に用いてイヌが評価した際には、p68ワクチン接種したイヌ(SCとIM)は、それらの80%が少なくとも2日間連続して咳をしたが、食塩水SCおよび食塩水IMを投与したイヌは、それぞれそれらの100%および87.5%が咳をした。咳嗽が観測された日数のパーセンテージを用いてイヌを評価した際には、p68SCワクチン接種およびIMワクチン接種したイヌは、観測した日数のそれぞれ38.72%および41.05%で咳をした。食塩水SCワクチン接種および食塩水IMワクチン接種のイヌでは、それぞれ69.04%および62.66%で咳をした。
【0187】
【表21】

【0188】
疾病状態を連続した2日間の咳嗽に基づくものとした場合、食塩水をワクチン接種したイヌと、p68ワクチン接種したイヌとの間で有意な差は示されなかった。
【0189】
【表22】

【0190】
T02(食塩水SC)とT03(p68 15μgSC)との間で有意な差(p=0.0112)が示された。T01(食塩水IM)とT04(p68 15μgIM)との間では有意な差が示されなかった。
【0191】
【表23】

【0192】
食塩水対照とp68ワクチン接種したイヌとの間で有意な差(p=0.0022)が示された。
【0193】
考察
この試験は、イヌp68ボルデテラ15μg/用量ワクチンの安全性および有効性を実証するために設計された。
【0194】
安全性は、注射部位および直腸温の観測を用いて試験した。注射部位反応測定値の分析は、IMワクチン接種した群における反応が無視できるものであり、SCワクチン接種した群における反応が最小のものであることを実証した。観測された反応は、小さい傾向にあり、通常、観測期間中に大きさ縮小した。これらの反応の大きさは、剪毛していないイヌでは多くの場合目につかないであろう。21日目における食塩水とワクチン接種との間、ならびに24日目におけるIMワクチン接種と、SCワクチン接種との間で有意な差が観測されたが、直腸温は、すべての群におけるすべてのイヌで臨床的に平凡なものであり、かつ正常な限度内にあった。
【0195】
有効性は、p68ELISAエンドポイント力価測定値および咳嗽の観測を用いて試験した。投与経路にかかわらず、p68ワクチン接種群は、35日目までに良好なp68抗体反応を示した。ワクチン接種したものでは、攻撃後に良好な既往反応が観測された。伝統的には、SC経路と比較して、血管がより多く、脂肪がより少ないIM経路でより高い抗体反応が得られているが、試験全体を通して、p68 SCワクチン接種とIMワクチン接種との間には有意な差がなかった。
【0196】
p68ボルデテラワクチン接種したイヌ、およびワクチン接種していないイヌにおける、攻撃後のSAA反応の試験は、ワクチン接種した動物群、特に攻撃後の1、3、および5日目におけるSAA値の上昇がはるかに小さいことを示した。
【0197】
結論
この試験では、イヌの攻撃モデルを用いて、ワクチン接種の24日後における、15μg/用量のp68ボルデテライヌワクチンの有効性を試験した。このワクチンは、正常な直腸温および最小の注射部位反応によって安全であったことが実証され、有効性はIM群およびSC群の両方で実証された。SAA値の比較は、エアゾール攻撃後の1、3、および5日目に、p68ワクチン接種したイヌと食塩水ワクチン接種したイヌとの間で有意な差があることを実証した。
【0198】
(実施例3)
ボルデテラp68イヌワクチンの6カ月間にわたる免疫試験
動物
90匹のオスおよびメスの雑種イヌを購入した。子イヌの大部分は、初回ワクチン接種の日に9週齢(±1週齢)であった。
【0199】
試験地に到着した際に、MLVパルボウイルスワクチンをイヌに投与した。試験に好適であるか判定するため、気管スワブおよび凝集素価によって、動物が気管支敗血症菌に対して陰性であるかどうか判定した。実験に用いた製品を除いて、他のワクチンは、試験期間中に投与しなかった。
【0200】
イヌは、攻撃前に気管支敗血症菌およびイヌの病原体への曝露を防止するのに必要な隔離施設で管理した。気管支敗血症菌を含むエアゾールで攻撃した後も、他のイヌの病原体への曝露を防止するために隔離を継続した。
【0201】
ワクチン
治療群のT01およびT02では、無菌食塩水をプラセボワクチンとして用いた。治療群T03およびT04には、イヌ組換え体p68気管支敗血症菌ワクチンを用いた。p68抗原の構造遺伝子を大腸菌(Escherichia coli)にクローニングし、温度感受性プロモーターによって遺伝子の発現を調節した。細胞を溶解させ、遠心法によって封入体を分離した。封入体中の組換え体p68をSDS処理によって可溶化した。無菌Lepto食塩水を希釈剤として、15μgのp68および60μgのp68を別々に、1mLあたり50μgのQuil Aおよび50μgのコレステロールと併せた。併せた成分を、4℃で24時間混合し、ミクロフルイダイザー中を3回通過させた。各1mL用量あたり2.7μlのエタノールと、0.0001%チメロサールとを含有していた。実験ワクチン中のp68濃度は、p68ELISAによって測定した。すべてのアッセイを5つに複製して行った。すべてのワクチンは構築後6カ月以内に用いた。
【0202】
攻撃種菌
Bordet−Genou寒天プレートに気管支敗血症菌Bihr Cat株を播種し、37.5+/−2.5℃で48時間インキュベートした。病原性の第1相コロニーを選択し、Bordet−Genou寒天上に広げ、37.5+/−2.5℃で24時間インキュベートした。インキュベーションの後に、ボルデテラ食塩水を用いて寒天からコロニーを洗い出し、600nmにおける光学濃度が0.80となるように細胞を希釈した。濁度測定値を確認するため、攻撃の前後に細胞の計数を行った。攻撃標的濃度は、約1×10CFUであった。群Iでは、攻撃前の濃度計測値が1.94×10であり、攻撃後の濃度計測値が1.43×10であった。群IIでは、攻撃前の濃度計測値が2.55×10であり、攻撃後の濃度計測値が2.13×10であった。
【0203】
試験設計
要約表
【0204】
【表24】

【0205】
試験は、群Iの48匹のイヌと、群IIの42匹のイヌとからなる2つの相もしくは群において行った。ワクチン接種#1は0日目に各群で行った。ワクチン接種#2は、その20日後に行った。群Iにおけるイベントは群IIにおけるイベントから約15日ずらして並置した。最終のワクチン接種の181日後に、イヌを気管支敗血症菌にエアゾール攻撃させた。
【0206】
無作為化/盲検化
動物は、完全無作為化設計に従って、無作為に治療および部屋に割り当てた。
【0207】
各試験群の中で、ワクチン接種#1から攻撃の日までの期間、無作為化計画を用いて、動物を無作為に治療および部屋(1部屋あたり3から5匹のイヌ)に割り当てた。
【0208】
攻撃の日に、一般化ブロック設計を用いて、事前に処置した動物を試験群の中で無作為に攻撃部屋に割り当てた。
【0209】
割り当てられた治療群に関する認識をもたない有資格の個人が、微生物学アッセイおよび血清学アッセイ、ならびに注射部位および咳嗽の評価を行った。
【0210】
データ分析
ワクチン接種後反応の変数は、注射部位データ、直腸温、およびp68ELISA力価からなっていた。注射部位データは、以下の通り要約した。すなわち、1)治療および試験日別の、測定可能な反応を有する動物の数、2)治療別の、動物が測定可能な反応を有する時点の数、3)治療別の、任意の時点で測定可能な反応を有する動物の数、ならびに4)各動物における測定可能な反応の持続時間である。
【0211】
初回および2回目のワクチン接種に関して別々に、注射部位容積(立方cm)、直腸温、自然対数変換したp68ELISA力価データを、一般線型混合モデルを用いて分析した。
【0212】
各観測時点における治療群の相違を試験するため、ならびに各治療における時点の比較をするために、観測時点の最小二乗平均による、治療の先験的線型対比を構築した。対象とする特定の比較は、T01対T03、T01対T05、T03対T05、T02対T04、T02対T06、およびT04対T06であった。時点に関する対試験群、対治療相関関係がP<0.05で有意である場合には、各時点における治療群相互の対比および治療群中の時点相互の対比は、各試験群内部のものであり、そうでない場合、これらの対比は、治療対時点の相互作用効果の最小二乗平均に基づいたものであった。すべての比較に、5%の有意水準を用いた。
【0213】
攻撃後反応の変数は、p68ELISA力価、血清アミロイド力価、および毎日の咳嗽観察からなっていた。攻撃後のp68ELISA力価は、前述の通りに分析した。攻撃後の血清アミロイドA(SAA)力価データは、力価の値に自然対数変換を適用し、その後、一般線型混合モデルを用いて分析した。
【0214】
咳嗽の分析は、USDA規定を反映するように修正した。それぞれのイヌについて、咳が観察された期間のパーセンテージを計算した。分析前に、逆正弦平方根変換を用いて、パーセンテージを変換した。咳嗽の分析には一般線型混合モデルを用いた。
【0215】
この分析の最小二乗平均をパーセンテージに逆変換し、咳のパーセント減少を下式に従って計算した。
パーセント減少=100×(対照群平均−治療群平均)/(対照群平均)
【0216】
治療群の相違を試験するために、最小二乗平均による治療の先験的線型対比を構築した。対象とする特定の比較は、T01対T03、T01対T05、T03対T05、T02対T04、T02対T06、およびT04対T06であった。治療に関する対試験群相関関係がP<0.05で有意である場合には、治療群相互の対比は、各試験群内部のものであり、そうでない場合、治療群相互の対比は、治療を主とする効果の最小二乗平均に基づいたものであった。すべての比較に、5%の有意水準を用いた。
【0217】
試験手順
詳細な動物操作手順
試験地に到着する前であり、かつ初回ワクチン接種の前に、子イヌから、気管支敗血症菌培養用に気管スワブを採取し、凝集素価測定用に採血した。すべての動物が、気管スワブに関して陰性であり、ボルデテラに対して血清学的に陰性であり、かつこの試験に好適であると考えられた。群I用に、48匹の子イヌを、6つの治療群の1つに無作為に割り当てた。群II用に42匹のイヌを用いて、この操作手順を繰り返した。動物は、試験地に少なくとも5日間順応させた。
【0218】
群および治療については、セクション7.4.Aに詳述されている。設備上の制約によって、そして攻撃後の咳嗽観測の精度を向上させるために、ワクチン接種およびそれぞれの攻撃期間を15日間ずらして、2つのイヌの群をつくった。0日目は、群Iおよび群IIの両方に関して、ワクチン接種#1の日を指す。ワクチン接種#2はその20日後に行った。治療T01、T03、およびT05は、皮下経路で行った。治療T02、T04、およびT06は筋肉内経路で行った。皮下注射は、頸部の側背面に行った。ワクチン接種#1には、頸部の右側を用い、ワクチン接種#2には、頸部の左側を用いた。それぞれ左右の半膜様筋に筋肉内注射して、ワクチン接種#1および#2を行った。各ワクチン接種後の7日間、すべての注射部位を3次元的に測定し、ワクチン接種後の14日間、追跡測定を行った。ワクチン接種当日(ワクチン接種前)および各ワクチン接種後の3日間、直腸温をモニターした。p68のELISA力価測定用に、各ワクチン接種の前(−1日目および19日目)および50日目に採血した。
【0219】
気管支敗血症菌の陰性状態を確認するために、毎月、鎮静剤投与下に、気管支敗血症菌培養用の気管スワブをすべてのイヌから採取した。凝集およびELISA力価用にも採血した。攻撃の7日前に、各群についてこの操作手順を繰り返した。気管スワブ培養が陽性であるか、あるいは凝集素価が上昇している証跡のある動物は試験から除外した。
【0220】
ワクチン接種#2の181日後に、イヌに攻撃を行った。鎮静剤を投与したイヌに、使い捨てノーズコーンを用いて攻撃を行った。ノーズコーンは、鎮静剤を投与したイヌの鼻口部の上にぴったりと装着された。ノーズコーンは噴霧器に接続され、噴霧器は、5.5から6.0psiに設定された真空圧力ポンプに接続されていた。1mLの攻撃物質を噴霧器に入れ、それぞれのイヌにエアロゾル化された攻撃物質を4分間投与した。
【0221】
攻撃咳後観測は、攻撃前にUSDA推奨に従うように修正した。攻撃後3日目から10日目までの間、合計8日間、各群のイヌを観察した。1日2回、それぞれの観察時間に約45分間、咳嗽について動物を観察した。観測時間相互の間隔は約12時間であった。割り当てられた治療群に関する認識をもたない人員が咳嗽観測を記録した。
【0222】
血液採集
凝集素価測定用の血液は、各群について、初回ワクチン接種前、毎月、そして攻撃前に採集した。
【0223】
抗p66ELISA評価用の血液は、ワクチン接種#1および#2の前日、50日目、ならびにその後約30日おきに各群について、採集した。攻撃の日および攻撃後観察の最終日にも採血した。
【0224】
血清アミロイドA(SAA)アッセイ用の血液は、各群について、攻撃の当日(攻撃の前)ならびに攻撃後の1、3、5、7、および9日目に採取した。
【0225】
試料で実施した試験
気管スワブに気管支敗血症菌が存在するかどうか、培養によって評価した。各気管スワブを、ボルデテラ選択寒天プレート上に広げた。陽性対照および陰性対照が含まれている。それらのプレートを37.5±2.5℃で48±4時間インキュベートした。その結果各プレート上に得られたコロニーを陽性対照と比較し、陽性対照と同じに見えたすべてのコロニーを、気管支敗血症菌の存在を確認するためにさらに試験した。確認試験には、TSI培地、クエン酸培地、尿素寒天培地、および硝酸レッド培地の使用が含まれていた。
【0226】
血清は、以下の方法を用いて、凝集素価、p68ELISA分析またはSAA分析について評価した。
【0227】
凝集素価−ボルデテラ食塩水を用い、マイクロタイタープレート中で血清を連続希釈した。各プレートには陽性対照および陰性対照が含まれていた。気管支敗血症菌株87(Bordet Genou寒天上で培養され、採集および不活性化され、630nmで20%Tとなるように希釈された)を凝集性抗原として使用し、各ウェルに添加した。プレートを振盪させながら35±2℃で2時間インキュベートした。22時間、室温で2回目のインキュベーションをした後、プレートの測定を行った。50%の凝集を示す最終のウェルを用いて、エンドポイント力価を測定した。
【0228】
p68ELISA力価−ボルデテラp68抗原に特異的なポリクローナル抗血清でコーティングされた96ウェルマイクロタイタープレート表面に、組換え体p68抗原を捕捉した。そのプレートに、イヌ血清の連続2倍希釈を添加し、インキュベートした。各プレートには、1:1000希釈の陽性対照および陰性対照が含まれていた。rp68抗原に特異的な抗体を検出するために、アフィニティー精製されたペルオキシダーゼ標識ヤギ抗イヌIgG指示体結合体を用いた。次いで、発色基質であるABTSを添加し、陽性対照ウェルのO.D.が1.2±0.2になったときにプレートの測定を行った。所与の試料の力価は、光学濃度が陰性対照血清希釈の平均に5つの標準偏差を加えた値より大きい最終希釈の逆数として計算した。
【0229】
SAA力価−イヌ血清アミロイドAを、モノクローナル抗イヌSAA抗体でコーティングされた96ウェルマイクロタイタープレート表面に捕捉した。そのプレートにイヌ血清の希釈試料を添加し、インキュベートした。0.31ng/mlから20ng/mlまでの標準曲線が得られように、参照標準を添加した。ビオチン標識抗イヌ抗体結合体を添加した。ビオチン標識抗イヌ抗体のインキュベーションの後、ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを添加した。色素基質であるTMBを添加し、そのプレートを30分後に測定した。血清アミロイドAの濃度は、試料を標準曲線と比較し、適当な希釈係数をかけることよって決定した。
【0230】
結果
別段の記述がない限り、結果は、群Iおよび群IIから得られたものを結合したデータである。
【0231】
気管スワブ培養および凝集素価
試験の過程で11匹のイヌが陽性の気管スワブ培養および/または凝集素価の上昇を示した。これらのイヌ、および陽性のイヌと共に収容されたすべてイヌを試験から除去し、その結果20匹のイヌを失った。各群から除去されたイヌの数は、T01−4匹、T02−2匹、T03−3匹、T04−1匹、T05−5匹、T06−5匹であった。
【0232】
注射部位の観察
表22〜25に注射部位反応を要約する。21日目、群I、イヌ81595の注射部位情報は、技術的見落としのため収集されなかった。22日目における群IIのイヌの注射部位反応データを収集しないように、プロトコールが修正され、そのため、22日目からのデータの要約には、群Iにおける1治療群あたり8匹のイヌから得られた情報のみが含まれている。IM治療を受けたいずれのイヌでも注射部位反応は観測されなかった。注射部位の測定値は、両方のSCワクチン接種治療群(T03およびT05)で最小であった。
【0233】
【表25】

【0234】
【表26】

【0235】
【表27】

【0236】
【表28】

【0237】
注射部位測定値の有意な差を表26に要約する。T01(食塩水SC)対T03(60μg SC)の間での注射部位測定値の有意な差が、初回ワクチン接種後の7日間に認められた。T01(食塩水SC)およびT05(15μg SC)との間の有意な差が、初回ワクチン接種後の最初の4日間のみで認められた。3から7日目まで通して、T03(60μg SC)およびT05(15μg SC)との間の有意な差が見出された。14日目(2週間の再評価観測)まで、いずれの治療群の間でも、いかなる相違も認められなかった。
【0238】
T01(食塩水SC)対T03(60μg SC)およびT05(15μg SC)の間での注射部位測定値の有意な差(P=0.0138)が、2回目のワクチン接種後の7日間に認められた。23から27日目まで通して、T03(60μg SC)およびT05(15μg SC)との間で有意な差が見出された。34日目(2週間の再評価観測)まで、いずれの群の間でも、いかなる相違の認められなかった。
【0239】
【表29】

【0240】
直腸温
直腸温の測定値を表27および28に要約する。22日目における群IIのイヌの直腸温データを収集しないように、プロトコールが修正され、そのため、22日目からのデータの要約には、群Iにおける1治療群あたりのイヌから得られた情報のみが含まれている。
【0241】
【表30】

【0242】
【表31】

【0243】
初回ワクチン接種後の1日目に、T02(食塩水IM)とT04(60μgのIM)との間の直腸温に有意な差が認められた。2回目のワクチン接種後のいかなる日にも、いずれの群も間でも、直腸温に有意な差が見出されなかった。
【0244】
p68ELISA力価
攻撃前のp68ELISAデータを表29に要約する。19日目、T06における群Iのイヌの反応により、p68ELISA力価のデータ分析に群による効果が観測された。この効果は小さく、分析された他の時点に影響を与えなかった。したがって、報告の便宜のため、群Iおよび群IIからのデータが結合されている。
【0245】
ワクチン接種したイヌにおけるp68に対する力価反応が大きかったため、この試験中の異なった時点で様々な滴定最小値を用いた。1および19日目の滴定は、50から開始した。50から195日目までの滴定は200から開始した。201および211日目に採集された試料の滴定は1000から開始した。「未満」と報告されているいかなる値も分析前に2で割られた。対照群(T01およびT02)で試験の進行中に観測されたp68ELISA値の増分増加は、これらの最小滴定値によるものである。上述したものを除いて、凝集素価は<4に保たれていた。
【0246】
プラセボワクチン接種したすべてのイヌは、50日目のp68力価が<200であった。p68を用いてワクチン接種したすべての動物は、2回目のワクチン接種の後(0日目対50日目)に、プラセボワクチン接種した動物と比較して少なくとも4倍の力価の増大を示した。
【0247】
【表32】

【0248】
ワクチン接種後のELISA力価の最小二乗平均における有意な差を表30に示す。ワクチン接種前(1日目)には、SC対照とSCワクチン接種との間またはIM対照とIM予ワクチン接種との間で、p68ELISA力価の有意な差は観測されなかった。
【0249】
【表33】

【0250】
試験過程において測定されたp68ELISA力価を表31に要約し、図3に図示する。
【0251】
試験の経過中、群Iと群IIとの間の活動を協調させるためにあらゆる努力を行った。重要なデータ採取時点(すなわち、ワクチン接種および攻撃前後のイベント)に関しては、これを実現した。試験の合間に、3つの事例で、血液および気管スワブの採集が群相互で1または2日間異なった。この合間のp68ELISAデータを要約し、報告するために、これらの日のデータを併せた。したがって、79日目は、79日目(群I)および81日目(群II)からの混合データを含有し、111日目は110日目(群II)および111日目(群I)に対応し、169日目は169日目(群II)および170日目(群I)に対応している。プロトコールに従って、50日目以降にはp68ELISAデータのデータ分析を行わなかった。
【0252】
【表34】

【0253】
咳嗽観察
両群のエアゾール攻撃は、2回目のワクチン接種後の181日目に行った。USDA推奨に従うために、咳嗽判定規準を、攻撃後の3から8日目における約12時間離れた約45分の観察に修正した。咳嗽観察を表32および33に要約する。
【0254】
【表35】

【0255】
【表36】

【0256】
食塩水対照に比較して、咳嗽のパーセント減少は、15μg/用量群で51.55%、60μg/用量群で11.09%であった。統計的に有意な差を表34に要約する。
【0257】
【表37】

【0258】
血清アミロイドA
SAA値は、攻撃後の0、1、3、5、7、および9日目に測定した。血清アミロイドAの値を表35に示し、そして図4に表した。
【0259】
【表38】

【0260】
SAA力価における有意な差を表36に要約する。
【0261】
【表39】

【0262】
考察
この試験は、組換え体p68ボルデテライヌワクチンの安全性および6カ月の有効性を実証するために設計された。15μg/用量および60μg/用量ワクチンの両方の安全が実証された。この試験において、15μg/用量の有効性および6カ月の期間にわたる免疫が強く支持された。
【0263】
安全性は、注射部位および直腸温の観測を用いて試験した。注射部位反応測定値の分析は、IMワクチン接種群で反応がないこと、ならびに15μg/用量および60μg/用量のSCワクチン接種群両方で反応が最小であることを実証した。観測された反応は、15μg/用量のSCワクチン接種したイヌの方が小さい傾向にあった。そのような観察された反応は一過性のものであって、通常、14日以内に消散した。注射部位が剪毛されていないイヌでは、これらの反応の大きさは、気付かれないことが多いであろう。ワクチン接種後の直腸温は、すべての群のすべてのイヌにおいて、際立ったものではなく、正常な限度内にあった。
【0264】
咳嗽観察およびp68ELISAエンドポイント力価の測定を用いて、免疫の有効性および持続時間をワクチン接種から181日間試験した。食塩水対照における咳嗽のパーセンテージ(78.26%)は、試験動物に行われた攻撃が許容できるものであったことを示した。15μg/用量の群における咳をした時点のパーセント(37.92%)は、対照と比較して、51.55%の咳嗽の減少があり、USDAによって義務づけられている有効性に関する要件を満たすものであることを示した。60μg/用量群(69.58%)では、対照と比較して、イヌの咳の減少が最小しか示されず、防御が示されなかった。
【0265】
統計的には比較されていないが、SCワクチン接種は、IMワクチン接種と比較して、より高い抗体応答を有する傾向があったことを、表29および31から見ることができる。考察を目的として、IM経路およびSC経路での投与結果に、異なった用量群に関する以下のコメントをさらに加える。
【0266】
投与経路にかかわらず、両方のワクチン接種群が、50日目までに極めて良好なp68抗体反応を示し、ワクチン接種した動物は、試験過程全体を通してそれを維持した。攻撃後には、良好な既往応答がワクチン接種した動物で観測された。
【0267】
試験過程における、15μg/用量および60μg/用量のp68ELISA力価の比較によって、60μg/用量群がわずかに高い力価反応を示したことが示された(図3)。この反応は、極めて良好なものであったが、エアゾール攻撃後の防御とは相関していなかった。陽性の気管スワブまたは凝集素価の上昇によって試験から除外されたイヌにおけるp68ELISA力価反応は可変的であった。陽性の気管スワブ培養および/または凝集素価の上昇によって試験から除外された6つの対照のうち3つは、p68ELISA力価を<200に維持していた。試験から除外されたイヌの気管スワブまたは凝集素価状態とp68ELISA力価との間には相関関係がないようである。
【0268】
p68ボルデテラワクチン接種したイヌ、およびワクチン接種していないイヌにおける、攻撃後のSAA反応の試験は、15μg用量群、特に攻撃後の5および7日目におけるSAA値の上昇がはるかに小さいことを示した。
【0269】
結論
この試験では、イヌの攻撃モデルを用いて、ワクチン接種の6カ月間後における、15μg/用量および60μg/用量のp68ボルデテライヌワクチンの有効性を試験した。両ワクチンは、正常な直腸温および最小の注射部位反応によって安全であったことが実証された。p68ELISA力価によって測定された際に、15μg/用量および60μg/用量を用いてワクチン接種したイヌは両方とも、ワクチン接種に対し良好な血清学的応答を示したが、この反応は、60μg/用量を用いてワクチン接種したイヌにおける臨床的な防御とは相関していなかった。60μg/用量を用いてワクチン接種したイヌは、ワクチン接種していない対照と比較して、咳嗽に有意な差を示さなかった。15μg/用量のワクチンの良好な有効性は、対照と比較して、咳嗽に50%を超える減少があったことによって実証された。60μg/用量ワクチン中にある高レベルのSDSが、示された防御の相違をもたらしているのかもしれないと推論されている。SAA値の比較は、ワクチン接種した動物と対照との相違を実証した。
【0270】
(実施例4)
VANGUARD(登録商標)Plus 5/CV−Lの安全性および有効性
VANGUARD Plus 5/CV−Lは、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、およびCPVの弱毒化株の凍結乾燥調製物、ならびにレプトスピラカニコーラおよびレプトスピライクテロヘモリジアの不活性化全培養物に、アジュバントを含む不活性化CCVの液体調製物を加えたものである。すべてのウイルスを樹立細胞系で増殖させた。CPV分画は、イヌ細胞系での低継代によって弱毒化した。そのため、CPV分画は、表38に示すレベルの、移行抗体の干渉を受けずに作用できる免疫特性を有した。上記液体成分を用いて凍結乾燥成分を再水和させた。液体成分は、真空の代わりに不活性ガスと共に包装されていた。
【0271】
試験室評価は、VANGUARD Plus 5/CV−Lが、CD、ICH、CAV−2、およびCPI呼吸器疾患と、CCVおよびCPVによって引き起こされる小腸炎と、レプトスピラカニコーラおよびレプトスピライクテロヘモリジアによって引き起こされるレプトスピラ症とに対してイヌを免疫化すること、ならびにワクチン分画間で免疫学的干渉が存在しなかったことを実証した。大規模な野外安全性試験は、正常な使用条件下で、このワクチンが6週齢という若いイヌでも安全であり、かつ本質的に反応を引き起こさないことを示した。
【0272】
CAV−2ワクチンが、CAV−1によって引き起こされるICHに対して交差防御することも示された。CAV−2は、ICHに対する防御だけでなく、CAV−2呼吸器疾患に対する防御も行うことが研究によって実証された。実施された試験では、抗原投与したイヌアデノウイルス2型ウイルスが、CAV−2ワクチン接種したイヌから回収されなかった。
【0273】
VANGUARD Plus 5/CV−L中のCPV分画に関する包括的な安全性および有効性試験を行った。この分画は、試験室試験および野外条件下での臨床試験で、安全であって、かつ本質的に反応を引き起こさないことが示された。多回用量のワクチン株を感受性のイヌに経口投与することを含めたバックパッセージ試験(backpassage study)によって、製品安全性をさらに実証した。それらのイヌはすべて正常なままであった。
【0274】
高CPVウイルス力価を有する3用量のワクチンが、移行抗体に関連した血清中和(SN)力価を克服できることを、試験は実証した。1:4という低い血清中和力価でも、従来の改変生ワクチンを用いた能動免疫に干渉することが他の研究者によって示された。6週齢の子イヌ50匹を用いて臨床試験を行った[25匹のワクチン接種動物(SN力価範囲〜256)および25匹の非接種対照(SN力価範囲4〜1024)](表37)。ワクチン接種動物群には3用量を投与し、ワクチン接種は6週齢で開始し、3週間の間隔をおいて行った。1用量のワクチンを接種した後、13/25匹の子イヌが4倍以上のCPV SN力価の増大を示した(抗体陽転)(表38)。これら13匹の子イヌのうち12匹は、初回ワクチン接種の時点で、≦1:16の母性SN力価を有し、残りの子イヌは1:64のSN力価を有していた。別の9匹の子イヌでは、初期のSN力価が1:16と1:256との間であり、2回目のワクチン接種の後に抗体陽転した。それらの移行抗体SN力価は、2回目のワクチン接種の時点では、≦1:64に低下していた。同様に、最終3匹のワクチン接種動物は、初期のSN力価が1:128であり、それらの移行抗体CPV力価が≦1:64に低下した後、3回目のワクチン接種の後に抗体陽転した。したがって、この試験では、3用量のワクチン投与を6週齢に開始して行った際に、25匹のワクチン接種動物はすべて、移行抗体レベルが最も高かったものでさえ、能動免疫化された(GM=1:1176、SN力価128〜4096の範囲)。50匹のイヌすべてが、3回目のワクチン接種の3週間後に異種CPV攻撃ウイルスに曝露された。25匹の非接種対照イヌのうち14匹は、死亡したか、あるいは安楽死させるのに十分なほどに重度な疾病を示し、一方、25匹のワクチン接種動物すべてが本質的に健康なままであった。したがって、VANGUARD Plus 5/CV−L中の高力価、抵継代のワクチンウイルスは免疫原性が強く、移行抗体の存在下でも能動免疫を刺激することができる。
【0275】
VANGUARD Plus 5/CV−LのCCV分画の有効性を、大規模なワクチン接種攻撃試験によって実証した。7〜8週齢の子イヌ16匹にVANGUARD Plus 5/CV−Lを用いてワクチン接種し(ワクチン接種動物)、17匹にVANGUARD Plus 5/Lを用いてワクチン接種した(対照)。すべての子イヌに、1mLの用量を3週間おきに3回投与した。3回目のワクチン接種の3週間後に、CCV(CV−6)の毒性株を用いて子イヌに攻撃した。感染後、21日間にわたって臨床知見、体温、体重、および血液パラメータをモニターした。CCVワクチン接種動物は、対照と比較して、下痢発症および病原性CCV出芽量の低減を示した。攻撃の21日後に、小腸切片における病原性CCVの蛍光抗体染色を行ったところ、CCVワクチン接種動物と対照との間における、検出可能なCCV抗原の有意な減少(P)を示した(表39)。
【0276】
【表40】

【0277】
【表41】

【0278】
【表42】

【0279】
結論
この試験では、CDウイルス、CAV−2、CPIウイルス、CPV、ならびにレプトスピラカニコーラおよびレプトスピライクテロヘモリジアの不活性化全培養物、ならびにCCVを含有するアジュバント含有混合ワクチンが、子イヌで使用された際に、ワクチンとして安全かつ効果的であることを示した。この混合ワクチンが、移行抗体に関連した血清中和(SN)力価を克服することも示した。
【0280】
(実施例5)
イヌにおける未変性ボルデテラp68の免疫原性試験
動物
この試験は、2腹のSPFビーグル犬同腹仔と、2腹の、出自が無作為なイヌ同腹仔とを含んでいた。イヌを、ワクチン接種群または非接種群に無作為に割り付けた。この試験は、合計で10匹のワクチン接種したイヌと、11匹の非接種のイヌとを含んでいた。
【0281】
実験ワクチンの調製
気管支敗血症菌(110H株)を、播種してから48時間のBordet−Gengou血液寒天プレートから、5〜10mlの熱抽出緩衝液でプレート表面を洗い流すことによって採集した。別法では、液体培養(Charlotte Parkerの合成培地)中の生育細胞を遠心法によって採集し、上清分画を除去した。採取した細胞を、25mMのTris−HCL、pH8.8に懸濁し、60℃で1時間インキュベートした。4℃、20000×g、30分間の遠心によって細胞片を熱抽出物から分離した。熱抽出された上清画分にアジ化ナトリウム(0.01%)を添加し、次にそれを、微細孔ろ過によってさらに浄化した。
【0282】
標準手順を用いて、モノクローナル抗体(Bord2−7と名付けられた)をCNBr活性化セファロース4Bに結合させることによって、モノクローナル抗体親和性樹脂を調製した。約30.35mgのモノクローナル抗体を1グラムの親和性樹脂に結合させた。浄化した熱抽出上清分画(上記)およびBrod2−7親和性樹脂を、20mlの樹脂に対して約1リットルの割合で結合させた。
【0283】
この混合物を穏やかに震動させながら、外界温度で終夜インキュベートすることによって、樹脂への非変性p68の結合を促進させ、その後、樹脂を定着させ、上清画分を吸引した。その後、この樹脂を直径2.6cmのカラムに充填し、カラムをpH7.5のPBSおよびpH8.0の10mMリン酸緩衝液で順次に流速5ml/分で洗浄した。280nmの吸光度がベースラインレベルに達したときに、100mMトリエチルアミンを用いて結合物質を溶出し、280nmの吸光度が大きな単一ピークを示している分画を収集し、ELISAによってp68の存在を試験した。p68を含有する分画をプールし、PBSに対して透析してトリエチルアミンを除去した。
【0284】
実験ワクチンは、精製されたp68約100μgと、1%水酸化アルミニウムゲルとを含有するように連続処方した。保存剤としてホルマリン(0.01%)を使用し、最終ワクチン用量容積を1mlとした。
【0285】
抗原接種原
攻撃物質は、本質的に、上記の実施例に記載した通りに調製した。
【0286】
試験手順
21匹の血清陰性かつ培養陰性の子イヌを無作為に2つの治療群の1つに割り当てた。11匹のイヌを非接種対照群に割り付け、10匹のイヌをワクチン接種群に割り付けた。初回ワクチン接種の日を0日目とした。0日目に、1mLのワクチンを皮下投与し、21日後にこれを繰り返した。初回および2回目のワクチン接種の前に、血液を血清学的p68ELISA用に採集した。
【0287】
2回目のワクチン接種の14日後である35日目に、上述の通り、すべてのイヌに気管支敗血症菌のエアゾール攻撃を行った。上記の実施例に記載した通り、攻撃後の14日間、動物の咳嗽をモニターした。
【0288】
結果
臨床知見およびp68に対する血清学的反応の要約を表40に示す。
【0289】
【表43】

【0290】
考察
この試験では、10匹の対照イヌのうち10匹が少なくとも2日間連続して咳をした。イヌが2日間連続して咳をした場合に、そのイヌは臨床的に病気であるとする。この判定規準で、非接種対照イヌの100%が病気であった。ワクチン接種群では、1匹のイヌが攻撃後4日目に咳をし、1匹のイヌが攻撃後4日目および6日目に咳をした。2匹のイヌが14日目に咳をした。ワクチン接種したイヌで、2日間連続して咳をしたイヌはいなかった。したがって、未変性p68ワクチンを接種したイヌの100%が攻撃後にも正常なままであったと判定された。
【0291】
結論
この試験は、未変性p68ワクチンが気管支敗血症菌疾患に対して防御する能力を実証するものである。
【0292】
(実施例6)
レプトスピラブラティスラバ攻撃に対する多価イヌワクチンの有効性
この試験の目的は、イヌにおけるレプトスピラブラティスラバ攻撃に対する、レプトスピラ血清型であるブラティスラバ血清型、カニコーラ血清型、グリポティフォーサ血清型、黄だん出血病血清型、およびポモナ血清型の分画を含有するワクチンの有効性を実証することであった。
【0293】
材料
ワクチン:使用したワクチンは以下の通りであった。
1.イヌジステンパー、アデノウイルス2型、パラインフルエンザ、およびパルボウイルス抗原を含む凍結乾燥ワクチン(VANGUARD PLUS 5)を使用した。このワクチンは放出抗原レベルの抗原を含有していた。製品コード13D1.22。
2.液体希釈製剤(FIRSTDOSE(登録商標)CV)中のイヌコロナウイルスワクチンを使用した。このワクチンは放出抗原レベルの抗原を含有していた。製品コード14P5.20。
3.イヌジステンパー、アデノウイルス2型、パラインフルエンザ、パルボウイルス、ブラティスラバ、カニコーラ、グリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびポモナ抗原を含有する凍結乾燥ワクチンを使用した。このワクチンは、およそ600濁度単位(nephlos)の各レプトスピラ血清型と、放出抗原レベルの改変生ウイルス分画(イヌアデノウイルス、ジステンパーウイルス、パラインフルエンザウイルス、パルボウイルス)とを含有していた。製品コード4637.2A。
【0294】
試験動物:いずれかの性別の約5〜6週齢のビーグル犬の子イヌを用いた。子イヌは、ワクチン接種の際に、レプトスピラの血清型であるブラティスラバ血清型、カニコーラ血清型、グリポティフォーサ血清型、イクテロヘモリジア血清型、およびポモナ血清型に対して血清陰性(<1:8)であった。流通飼料および水道水を、子イヌが自由に(ad libitum)得られるようにした。
【0295】
抗原生物:約2mLのレプトスピラブラティスラバ(感染したハムスター肝臓組織の10−1希釈)1用量を、各動物に腹腔内注射として投与した。
【0296】
研究設計
【0297】
【表44】

【0298】
操作手順
ワクチン接種フェーズ:試験0および21日目に、以下に概説する通りの対照または試験ワクチンを、4つのワクチン接種動物群の40匹のイヌ(動物10匹/群)に注射した。
T1:イヌコロナウイルス希釈剤で再構成された、イヌジステンパー、アデノウイルス2型、パラインフルエンザ、パルボウイルスを含有する対照ワクチン1mLを皮下(SQ)注射した(製品コード13D1.22を製品コード14P5.20で再構成した)。
T2:イヌコロナウイルス希釈剤で再構成された、イヌジステンパー、アデノウイルス2型、パラインフルエンザ、パルボウイルスを含有する対照ワクチン1mLを筋肉内(IM)注射した(製品コード13D1.22を製品コード14P5.20で再構成した)。
T3:イヌコロナウイルス希釈剤で再構成された、イヌジステンパー、アデノウイルス2型、パラインフルエンザ、パルボウイルス、ブラティスラバ、カニコーラ、グリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびポモナを含有するレプトスピラワクチン1mLをSQ注射した(製品コード46J7.2A;製品コード4637.2Aおよび14P5.20の組合せ)。
T4:イヌコロナウイルス希釈剤で再構成された、イヌジステンパー、アデノウイルス2型、パラインフルエンザ、パルボウイルス、ブラティスラバ、カニコーラ、グリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびポモナを含有するレプトスピラワクチン1mLをIM注射した(製品コード46J7.2A;製品コード4637.2Aおよび14P5.20の組合せ)。
【0299】
ワクチン接種の約1時間後および5時間後に、有害な全身性反応のワクチン接種後観察を行った。
【0300】
レプトスピラ攻撃:試験49日目に、腹腔内注射によって、試験動物に約2mL用量のレプトスピラブラティスラバを攻撃した。
【0301】
血液試料採集:試験0、21、35、48、50、52、55、58、61、64、67および70日目に、利用可能な動物から血清試料を採集した。同様に、試験48、50、52、55、58、61、64、67および70日目に血漿試料を採集した。
【0302】
細菌血清学:試験0、21、35、48、58、および70日目に採取した血清試料における、レプトスピラブラティスラバに対する循環抗体の存在を、微細凝集試験によってアッセイした。
【0303】
スピロヘータ血症:試験48、50、52、55、58、61、64、67、および70日目に採取した血漿試料におけるスピロヘータの存在を、暗視野顕微鏡によって試験し、レプトスピラを再単離するためにそれらの試料の培養を行った。
【0304】
全血球計算値/血清化学パネル:48、50、52、55、58、61、64、67、および70日目に採取した血漿試料の血小板数および沈降速度をアッセイしたが、アッセイはこれらに限定されない。同じそれらの期間に得られた血清試料における、アミラーゼ、アラニン−アミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスアミラーゼ(AST)、およびクレアチニンをアッセイしたが、アッセイはこれらに限定されない。採集された血漿試料が試験の前に凝固したので、CBCおよび沈降速度は、試験55日目の2匹の動物(番号QPH3、RVG3)でも、試験58日目の1匹の動物(番号RBH3)でも、試験61日目の3匹の動物(番号OLH3、OUH3、PTG3)でも、試験70日目の1匹の動物(番号OWG3)でも完遂されなかった。試験67日目には、血漿サンプル量が試験に不十分であったので、2匹の動物(番号OUH3、SAG3)で沈降速度が完遂されなかった。それらの結果は、これらの試験パラメータに影響しなかった。
【0305】
直腸体温:試験47〜70日目に直腸体温を記録した。攻撃後(試験50日目)に、≧39.2℃に上昇した体温を、レプトスピラ症を示すものとした。
【0306】
尿培養:試験48、55、および70日目に採取した尿試料を、レプトスピラ用に培養し、尿分析に用いた。試験48日目には、採集時における利用可能な尿の量が試験に不十分であったので、1匹の動物(番号CBC3)で尿分析が完遂されなかった。試験55日目には、採集時における利用可能な尿の量が試験に不十分であったので、2匹の動物(番号OPH3、RXG3)で尿分析が完遂されなかった。試験70日目には、採集時における利用可能な尿の量が試験に不十分であったので、10匹の動物(番号OYG3、PIG3、PUG3、QHG3、QQH3、QSG3、RDG3、RUG3、RVG3、RYG3)で尿分析が完遂されなかった。それらの結果は、この試験パラメータに影響しなかった。
【0307】
検死およびレプトスピラの単離:攻撃後期間中、ならびにその終局において安楽死させられた動物の検死を行った。体液および組織(すなわち、肝臓、腎臓、および尿)を採集し、レプトスピラを再単離するために、BCLに提出した。試験55日目には、採集時における利用可能な尿の量が試験に不十分であったので、2匹の動物(番号OPH3、RXG3)で細菌の再単離が完遂されなかった。試験70日目には、採集時における利用可能な尿の量が試験に不十分であったので、4匹の動物(番号OYG3、PUG3、QSG3、RUG3)で細菌の再単離が完遂されなかった。それらの結果は、この試験パラメータに影響しなかった。
【0308】
健康状態の観察:動物の全体的健康状態を毎日モニターした。
【0309】
データの要約および分析
データは、混合モデルまたはカテゴリカルプロシージャ(SAS/STAT Software Changes and Enhancements through Release 6.12、SAS Institute、米国ノースカロライナ州Cary所在)を用いて分析した。
【0310】
一般線型反復測定混合モデル(固定効果モデル項は治療、試験、および治療による試験)を用いて、体温、血清抗体価、血液血小板数、沈降速度、アミラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスアミナーゼ(AST)、およびクレアチニンを分析した。治療または試験による治療の有意な(P≦0.05)相互作用効果を検出した後に、対象とする対比を行った。力価の対数変換が分析に適している場合にはそれを実施し、変換を実施した場合には、最小二乗平均を相乗平均に逆変換して提示した。分析されなかった観察(すなわち、検死結果およびワクチン接種後観察)は、要約用のデータベースに入力しなかった。
【0311】
各治療について、<200の血小板数を少なくとも1回有した動物、および39.2℃以上の直腸温を有した動物の度数分布を計算した。
【0312】
攻撃した後、試験中毎日、動物を正常なものと、病気のものとに分類した。以下の徴候、すなわち、結膜炎、うつ病、食欲不振、筋肉振戦、鼻水、発熱(≧39.2℃)または流涙のいずれかが存在した場合に、病気であると分類した。
【0313】
一般線型混合モデル(固定効果モデル項は治療である)を用いて、攻撃後における、動物が病気として分類された日数を分析した。死亡または安楽死の二項変数をフィッシャーの正確確率検定で分析した。治療群を比較するために、スピロヘータ血症、ならびに尿、腎臓、および肝臓中の細菌の再単離に関して、フィッシャーの正確確率検定を用いて分析した。
【0314】
投与経路と、治療相互作用による経路との間に有意な差が存在しなかった場合(両側P≦0.05)、治療T1およびT2の平均と、治療T3およびT4の平均とを比較するように対比を用いた(片側P≦0.05)。分析が反復測定分析であった場合は、データが収集された各時点で比較を行った。そうでない場合は、対比を用い、T1とT3との比較、およびT2とT4との比較を行った(片側P≦0.05)。分析が反復測定分析であった場合はデータが収集された各時点でこれらの比較を行った。
【0315】
レプトスピラブラティスラバに対するレプトスピラワクチンの有効性は、ワクチン接種した動物における疾患発症率が低いことによって実証された(片側、P≦0.05)。以下の変数がレプトスピラワクチンの有効性を支持した。(1)平均血小板数は、ワクチン接種動物の方が有意に(片側、P≦0.05)高かった。(2)平均沈降速度は、ワクチン接種動物の方が有意に(片側、P≦0.05)と低かった。(3)スピロヘータ血症の発症率は、ワクチン接種動物の方が有意に(片側、P≦0.05)低下していた。
【0316】
結果
攻撃後における臨床的徴候:レプトスピラ症を示す臨床徴候(例えば、結膜炎、うつ病、下痢、血尿、黄だん、食欲不振、瀕死、筋肉振戦、発熱、嘔吐)を試験動物が示した平均日数を表1に示す。攻撃後(試験50〜70日目)における、T1およびT2対照が病気であった平均日数は、それぞれ4.3および3.3であった。逆に、T3およびT4ワクチン接種動物の平均は0.7および0.5であり、それらの結果は、T1〜T2対照と比較して有意に改善されていた(P<0.05)。攻撃後における、臨床徴候を示した動物のパーセントを表1に示す。T1〜T2対照の75%がレプトスピラ症の徴候を示したが、同様な徴候は、T3〜T4ワクチン接種動物の30%のみで観測された。試験の攻撃後フェーズ中に安楽死を必要とした感染動物の数も表1に示す。T1〜T2対照群のうち5匹の動物(25%)が、レプトスピラ症の重度な徴候を示し、安楽死させられた。逆に、T3〜T4ワクチン接種動物は、その同じ期間中に、他の点では健康なままでおり、その比較(T1〜T2対T3〜T4)は、ワクチン接種動物における有意な改善(P<0.05)を示した。攻撃後における平均体温の表を表2に示す。攻撃後の最初9日間(試験50〜58日目)における、T1〜T2対照の平均体温は37.8〜39.4℃の範囲にあった。その同じ期間中、T3〜T4ワクチン接種動物の平均体温は38.2〜38.7℃の範囲にあった。注目すべきことに、攻撃の2、3、および5日後における、T3〜T4ワクチン接種動物の平均体温は、T1〜T2の平均体温と比較して有意に低かった(P<0.05)。≧39.2℃の体温を少なくとも1回有した動物の頻度も表2に示す。≧39.2℃に上昇した体温は、レプトスピラ感染を示すものとした。攻撃後観測期間の経過中、T1〜T2対照の60〜70%が≧39.2℃の体温を示した。逆に、T3〜T4ワクチン接種動物の30%のみがその臨床徴候を示した。
【0317】
攻撃後におけるスピロヘータ血症:スピロヘータ血症の頻度を表3に示す。血液中のスピロヘータの存在(細菌培養によって検出した)は、レプトスピラ症を実証する臨床結果である。攻撃後1日目(試験50日目)に、T1対照の90%、T2対照の60%、T3ワクチン接種動物の60%、およびT4ワクチン接種動物の70%でスピロヘータ血症が確認された。細菌の再単離は、ワクチン接種の状態にかかわらずに、腹腔内注射の24時間後に血液から行われることが予測されていた。T1対照におけるスピロヘータ血症は、その後、以下の通り、すなわち、攻撃後の3日目(試験52日目)に100%、6日目(試験55日目)に56%、9日目(試験58日目)に33%と確認された。同様に、T2対照におけるスピロヘータ血症は、以下の通り、すなわち、攻撃後の3日目に60%、6日目に50%、9日目に29%と確認された。逆に、T3〜T4ワクチン接種動物では、その同じ攻撃後期間中にも、攻撃後期間の残りの期間中(すなわち試験50〜70日目)にも確認されなかった。
【0318】
総合すると、攻撃後の1日目を含めて(試験50〜70日目)、スピロヘータ血症に関して陽性であった動物の割合はT1〜T2対照では60%〜100%、T3〜T4ワクチン接種動物では60%〜70%であった。対照的に、攻撃後1日目を除外した場合(試験52〜70日目)、陽性であった動物の割合は、T1〜T2対照では60%〜100%、T3〜T4ワクチン接種動物では0%であった。
【0319】
攻撃後における、体液および組織からのレプトスピラの再単離:血液、尿、腎臓、および肝臓試料からのレプトスピラの再単離を表4に示す。血液からのレプトスピラ再単離の結果の要約を以下の部分に示す。攻撃後の3日目から始めて(すなわち攻撃後1日目を除外した)、T1〜T2対照の60〜100%でスピロヘータ血症が確認され、その同じ期間中、T3〜T4ワクチン接種動物では確認されなかった。注目すべきことに、その比較(T1〜T2対T3〜T4)は、ワクチン接種動物における有意な改善(P<0.05)を示した。
【0320】
腎臓試料は、検死で収集した。T1およびT2対照から採取された腎臓試料の50%からレプトスピラが再単離された。T3〜T4ワクチン接種動物から採取された試料からは、レプトスピラが再単離されなかった。その比較(T1〜T2対T3〜T4)は、ワクチン接種動物における有意な改善(P<0.05)を示した。
【0321】
肝臓試料は検死で収集した。T1およびT2対照から採取された肝臓試料のそれぞれ10%および20%からレプトスピラが再単離された。T3〜T4ワクチン接種動物から採取された試料からは、レプトスピラが再単離されなかった。その比較(T1〜T2対T3〜T4)は、ワクチン接種動物における有意な改善(P<0.05)を示した。
【0322】
尿試料は、攻撃後に2回、間隔をおいて、検死において採集した。レプトスピラは、攻撃後の6日目(試験55日目)に、2匹のT1対照から再単離された。レプトスピラは、T2対照のいずれの試料からも、T3〜T4ワクチン接種動物からも再単離されなかった。
【0323】
攻撃後における血小板数:平均血小板数を表5に示す。血液血小板数の減少(血小板減少症)は、レプトスピラ症を示す臨床結果である。T1〜T2対照の平均濃度は、61から937の範囲にあった。同じ期間中、T3〜T4ワクチン接種動物の平均数は400から566の範囲にあった。注目すべきことに、攻撃の3、6、および9日後における、T3〜T4ワクチン接種動物の血小板数は、T1〜T2対照と比較して有意に改善されていた(P<0.05)。
【0324】
<200の血小板数を少なくとも1回有した動物の頻度も表5に示す。攻撃後期間の経過中、T1対照の90%およびT2対照の60%が血小板減少症である(血小板数<200)と判定された。逆に、感染後、T3ワクチン接種動物の10%のみが血小板減少症になり、T4ワクチン接種動物はまったく血小板減少症にならなかった。
【0325】
攻撃後における沈降速度:平均沈降速度を表6に示す。沈降速度の増大は、レプトスピラ症を示す臨床結果である。
【0326】
T1〜T2対照の平均速度は、2.4から16.0の範囲にあった。同じ期間中、T3〜T4ワクチン接種動物の平均速度は、1.5から6.3の範囲にあった。注目すべきことに、攻撃の3、6、9、12、15、18、および21日後における、T3〜T4ワクチン接種動物の速度は、T1〜T2対照と比較して有意に低かった(P<0.05)。
【0327】
攻撃後におけるALT濃度:平均アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)濃度を表7に示す。ALTの増大は、細菌感染を示す臨床結果である(すなわち、肝臓機能が悪化するのに従ってALTレベルは上昇する)。T1〜T2対照の平均濃度は、22から79の範囲にあった。同じ期間中、T3〜T4ワクチン接種動物の平均濃度は21から61の範囲にあった。注目すべきことに、攻撃の3、6、9、および12日後における、T3〜T4ワクチン接種動物の濃度は、T1〜T2対照と比較して有意に低かった(P<0.05)。
【0328】
攻撃後におけるクレアチニン濃度:平均クレアチニン濃度を表8に示す。クレアチニン濃度の増大は細菌感染を示す臨床結果である(すなわち、レプトスピラ症によって腎臓機能が悪化するのに従って、クレアチニンレベルが上昇する)。T1対照(すなわちSQ投与)の平均濃度は、0.30から0.99の範囲にあった。同じ期間中、T3ワクチン接種動物(すなわちSQ投与)の平均濃度は0.26〜0.40の範囲にあった。注目すべきことに、攻撃の1、6、9、12、15、18、および21日後における、T3ワクチン接種動物の濃度は、T1対照と比較して有意に低かった(P<0.05)。T2対照(すなわちIM投与)の平均濃度は0.30から1.31の範囲にあった。同じ期間中、T4ワクチン接種動物(すなわちIM投与)の平均濃度は、0.32から0.46の範囲にあった。攻撃後における、T2およびT4の値の間には、有意な差がなかった。
【0329】
攻撃後におけるアミラーゼ、AST、および尿分析:T3〜T4ワクチン接種動物の平均濃度は、T1〜T2対照と比較して、有意な差がなかった。しかし、全般的に、攻撃後の濃度は、T1〜T2対照のものより劇的に増大した。概して、攻撃後における、AST(アスパラギン酸アミノトランスアミラーゼ)の変化および尿分析結果は、T1〜T4試験動物では観測されなかった。これら3つのパラメータの結果は、ここでは別段に表にしていない。
【0330】
血清抗体力価:平均血清レプトスピラブラティスラバ抗体力価を表9に示す。この試験のワクチン接種フェーズ中(試験0〜48日目)、T1〜T2対照の平均力価は約2であった(すなわち血清陰性)。これに対応して、T3〜T4ワクチン接種動物の平均は2(ワクチン接種前)から1181(ワクチン接種後)の範囲にあった。注目すべきことに、ワクチン接種の21、35、および48日後における、T3〜T4ワクチン接種動物の平均力価は、T1〜T2の平均力価と比較して有意に高かった(P<0.05)。
【0331】
この試験の攻撃後フェーズ中(試験58および70日目)、T1〜T2対照の平均力価は2135から41160の範囲にあった。これに対応して、T3およびT4ワクチン接種動物の平均力価は、727から10891の範囲にあり、試験58日目(すなわち攻撃後の9日目)およびワクチン接種後の70日目(すなわち攻撃後の21日目)には、T1〜T2対照と比較して有意に低かった(P<0.05)。その結果、対照は、攻撃後に、レプトスピラブラティスラバに対する劇的な一次応答を示し(すなわち感染の確認)、一方、T3〜T4ワクチン接種動物の反応は、それほど活発ではなかった(すなわち典型的な既往反応)。
【0332】
ワクチン接種後の全身性反応:一次およびブースターワクチン接種の約1時間後および5時間後に評価した際には、T1〜T4の試験動物で、ワクチン接種後の全身性反応が観測されなかった。その結果は、ここでは表にしていない。
【0333】
結論
レプトスピラブラティスラバに対する、SQまたはIM注射で投与した多価レプトスピラワクチンの有効性は、中でも、攻撃後における、対照と比較して(1)有意に低いレプトスピラ関連疾患発症率、(2)有意に低いスピロヘータ血症発症率、(3)有意に高い血小板数、および(4)有意に低い平均沈降速度によって実証された。
【0334】
【表45】

【0335】
【表46】


【0336】
【表47】

【0337】
【表48】

【0338】
【表49】

【0339】
【表50】

【0340】
【表51】

【0341】
【表52】

【0342】
【表53】

【図面の簡単な説明】
【0343】
【図1】ワクチン接種していないイヌおよびボルデテラp68(15μg/用量)をワクチン接種−気管支敗血症菌のエアゾール攻撃−されたイヌにおける、p68ELISAエンドポイント力価の相乗平均の要約を示す図である。
【図2】気管支敗血症菌をエアゾール攻撃した後における、イヌの血清アミロイドA力価の要約を示す図である。
【図3】ワクチン接種および気管支敗血症菌のエアゾール攻撃の後における、ワクチン接種していないイヌおよびボルデテラp68をワクチン接種したイヌでの、p68ELISAエンドポイント力価の相乗平均の要約を示す図である。
【図4】気管支敗血症菌をエアゾール攻撃した後における、イヌの血清アミロイドA力価の要約を示す図である。
【図5】p68全細胞溶解物に対する、p68モノクローナル抗体Bord 2−7の反応性を示すウェスタンブロットの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌの病原体に対してイヌを免疫化する混合ワクチンであって、レプトスピラカニコーラ、レプトスピラグリポティフォーサ、レプトスピライクテロヘモリジア、およびレプトスピラポモナのレプトスピラ細胞調製物を含み、かつ、イヌジステンパー(CD)ウイルスの弱毒化株、イヌアデノウイルス2型(CAV−2)の弱毒化株、イヌパラインフルエンザ(CPI)ウイルスの弱毒化株、イヌパルボウイルス(CPV)の弱毒化株、および担体をさらに含む混合ワクチン。
【請求項2】
ワクチン中の各レプトスピラ株の量が、ワクチン用量あたり約100〜3500濁度単位の範囲にある、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項3】
ワクチン中の各レプトスピラ株の量が、用量あたり約200〜2000濁度単位の範囲にある、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項4】
前記ワクチン中の前記CDウイルスの弱毒化株の量が、用量あたり10から10TCID50の範囲にある、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項5】
前記ワクチン中の前記CAV−2の弱毒化株の量が、用量あたり10から10TCID50の範囲にある、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項6】
前記ワクチン中の前記CPIウイルスの弱毒化株の量が、用量あたり10から10TCID50の範囲にある、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項7】
前記ワクチン中の前記CPVの弱毒化株の量が、用量あたり10から10TCID50の範囲にある、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項8】
前記担体がサポニンおよび界面活性物質を含む、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項9】
前記サポニンがQuil Aであり、前記界面活性物質がコレステロールである、請求項8に記載の混合ワクチン。
【請求項10】
Quil Aの量が用量あたり1から1000μgの範囲にあり、コレステロールの量が用量あたり1から1000μgの範囲にある、請求項9に記載の混合ワクチン。
【請求項11】
担体が水酸化アルミニウムを含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
イヌの病原体に対してイヌを免疫化する方法であって、請求項1に記載の混合ワクチンをイヌに投与するステップを含む方法。
【請求項13】
前記混合ワクチンを静脈内、鼻腔内、経口、筋肉内、または皮下経路で投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イヌに前記混合ワクチンを、投与間隔約2から3週間で2回または3回投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
イヌコロナウイルス(CCV)株の不活性化全細胞調製物または部分細胞調製物をさらに含む、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項16】
ワクチン中の各レプトスピラ株の量が、ワクチン用量あたり約100〜3500濁度単位の範囲にある、請求項15に記載の混合ワクチン。
【請求項17】
ワクチン中の各レプトスピラ株の量が、用量あたり約200〜2000濁度単位の範囲にある、請求項15に記載の混合ワクチン。
【請求項18】
前記ワクチン中の前記CDウイルスの弱毒化株の量が、用量あたり10から10TCID50の範囲にある、請求項15に記載の混合ワクチン。
【請求項19】
前記ワクチン中の前記CAV−2の弱毒化株の量が、用量あたり10から10TCID50の範囲にある、請求項15に記載の混合ワクチン。
【請求項20】
前記ワクチン中の前記CPIウイルスの弱毒化株の量が、用量あたり10から10TCID50の範囲にある、請求項15に記載の混合ワクチン。
【請求項21】
前記ワクチン中の前記CPVの弱毒化株の量が、用量あたり10から10TCID50の範囲にある、請求項15に記載の混合ワクチン。
【請求項22】
前記ワクチン中の前記CCV株の細胞調製物の量が、用量あたり少なくとも約100相対単位である、請求項15に記載の混合ワクチン。
【請求項23】
前記担体がサポニンおよび界面活性物質を含む、請求項15に記載の混合ワクチン。
【請求項24】
前記サポニンがQuil Aであり、前記界面活性物質がコレステロールである、請求項23に記載の混合ワクチン。
【請求項25】
Quil Aの量が用量あたり1から1000μgの範囲にあり、コレステロールの量が用量あたり1から1000μgの範囲にある、請求項24に記載の混合ワクチン。
【請求項26】
担体が水酸化アルミニウムを含む、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
イヌの病原体に対してイヌを免疫化する方法であって、請求項15に記載の混合ワクチンをイヌに投与するステップを含む方法。
【請求項28】
前記混合ワクチンを静脈内、鼻腔内、経口、筋肉内、または皮下経路で投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記イヌに前記混合ワクチンを、投与間隔約2から3週間で2回または3回投与する、請求項27に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−239627(P2008−239627A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105332(P2008−105332)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【分割の表示】特願2007−535271(P2007−535271)の分割
【原出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】