説明

レンズとファイバーの接合方法

【課題】実際の生産に適した接合損失の少ないレンズ・ファイバー一体型接合体を製造する方法を高い接合効率で実現し、安価な完成品を提供する。
【解決手段】ファイバーより屈折率の低いガラスレンズの表面を加熱溶融し、ファイバー先端を接触させることにより接合損失の少ないレンズ・ファイバー一体型接合体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファイバーコリメーターやモジュールなど光信号に使用するレンズとファイバーの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、既に、光通信用石英シングルモードファイバーと多成分系ガラスを用いたガラスモールとレンズを、その軟化点の違いを利用して、アーク放電により、直接接合する技術が開発されている。この方法は接着剤が介在しない接合方法であるため、長期安定性と高いパワー耐性が得られる。また、この方法によれば、部品数や工数削減による低コスト化が期待されている。
(第92回微小光学研究会pp13(2004))
【0003】
ところが、この方法によれば、ファイバーとレンズ境界で屈折率差に起因する約30dBの戻り光が発生するため、光通信用デバイスに求められる60dB以上の反射損失は実現できていなかった。(Optics Japan 2004 4pH1(2004))
【0004】
これらの欠点を解決するため、斜めカットしたファイバーとレンズの接合条件を最適化することにより、これらの問題を解決しようとする試みもなされている。(応用物理2006年No.8BVol.45pp.6687-6690)しかし、この方法によれば、斜め処理したファイバーを用いるため、屈折によるファイバー射出光の傾きが生じ、アライメント時にレンズとファイバーの光軸がずれてしまうと言う問題点があった。
【0005】
このため、ファイバー射出光の傾きを小さくするため、ファイバーとレンズの間にガラスに近い屈折率を持つ液体を滴下してアライメントを行う方法等も提案されている。
しかしこれらの方法は実験的には有効であるが、アライメントの難しさなどから実際生産するには困難な方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は第一に実際の生産に適した接合損失の少ないレンズ・ファイバー一体型接合体を製造する方法を提供することにある。
【0007】
そして、本発明が解決しようとする課題は第二に本方法によるレンズ表面を溶融しファイバーを接合する際、最も接着強度を維持し、量産加工に適した溶融方法を提供することにある。
【0008】
そして、本発明が解決しようとする課題は第三に本発明の方法において最も適したレンズの屈折率の値の範囲を示すことにある。
【0009】
そして、本発明が解決しようとする課題は第四に本発明の方法を採用するに当たり最も適したファイバーの種類を特定することにある。
【0010】
そして、本発明が解決しようとする課題は第五に本発明の方法を採用するに当たり、最も適したレンズのガラス組成系を特定することにある。
【0011】
そして、本発明が解決しようとする課題は第六に本発明を採用するに当たり、レンズの屈折率を下げるための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決する手段としては第一にレンズ表面を加熱、溶融しファイバー先端を接触して接合する方法において、レンズの屈折率をファイバーの屈折率より低くしたことを特徴とするレンズとファイバーの接合方法である。
【0013】
この課題を解決する手段としては第二にファイバーの屈折率より低い屈折率を持つレンズ表面をアーク放電によって加熱・溶融することを特徴とするレンズとファイバーの接合方法である。
【0014】
この課題を解決する手段としては第三にレンズとファイバーの屈折率の差が3000〜6000であることを特徴とするレンズとファイバーの接合方法である。
【0015】
この課題を解決する手段としては第四にファイバーが石英ガラスであることを特徴とするレンズとファイバーの接合方法である。
【0016】
この課題を解決する手段としてはレンズが光学ガラスであり、フッ素を含む硼珪酸ガラスであることを特徴とするレンズとファイバーの接合方法である。
【0017】
この課題を解決する手段としてはガラスのF,SiO2,Al2O3の少なくとも一つの含有量を調節することにより、レンズの屈折率を低下させることを特徴とすることを特徴とするレンズとファイバーの接合方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法によれば、接着剤が介在しない接合方法であるため、長期安定性と高いパワー耐性が得られ、アーク放電を用いて溶融接合するため、部品数や工数削減による低コスト化が期待される。
【0019】
さらにアライメントの難しさなどから実際生産するには困難な方法ではなく実際の生産に適した接合損失の少ないレンズ・ファイバー一体型接合体を製造することが可能となる。

【実施例】
【0020】
重量%でSiO2が59.9、B2O3が9.7、Al2O3が3.0、K2O2.6、KHF2が24.6、As2O3が0.2の組成の硼素珪酸光学ガラスを、図2に示すようにレンズ1に成形加工して、石英ファイバー2とを調芯後、アーク放電用電極3の間に配置し、アーク放電電極3より放電させ、レンズ表面を約650℃程度に加熱した後、ファイバー2の先端を加熱されたレンズ1の接合部4に接触させて融着させた。
【0021】
こうして得られたレンズ・ファイバー接合体の斜視図を図1に示す。このレンズ・ファイバー接合体の反射損失は60dB、接合損失は0.2dBであった。このとき、接合前のガラスレンズの波長1500nmでの屈折率は1.390であった。そして使用した石英ファイバーのコアの波長1500nmでの屈折率は1.440であった。
【0022】
一方、重量%でSiO2が56.9、B2O3が15.7、K2Oが5.6、KHF2が21.6、As2O3が0.2の組成の硼素珪酸光学ガラスを、実施例と同様、図1に示すようにレンズ1に成形加工して、石英ファイバー2とを調芯後、アーク放電用電極3の間に配置し、アーク放電電極3より放電させ、レンズ表面を約500℃程度に加熱した後、ファイバー2の先端を加熱されたレンズ1の接合部4に接触させて融着させた。
【0023】
こうして得られたレンズ・ファイバー接合体の反射損失は30dB、接合損失は0.5dBであった。このとき、接合前のガラスレンズの波長1500nmでの屈折率は1.475であった。そして使用した石英ファイバーのコアの波長1500nmでの屈折率は1.440であった。
【0024】
このように、石英ファイバーのコアの波長1500nmでの屈折率より5000屈折率を下げた光学ガラスを用いて石英ファイバーに融着接合することにより、従来の融着接合法によって得られたものに比較して、反射損失を30dBから60dB、接合損失を0.5dBから0.2dBに改善することに成功した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明で取得可能なファイバー接合レンズの一般的な形状を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例で使用したアーク放電加熱溶融によるレンズとファイバーの接合方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0026】
1・・・レンズ
2・・・石英ファイバー
3・・・アーク放電用電極
4・・・接合部









【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ表面を加熱、溶融しファイバー先端を接触して接合する方法において、レンズの屈折率をファイバーの屈折率より低くしたことを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。
【請求項2】
請求項1においてレンズ表面をアーク放電によって加熱・溶融することを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。
【請求項3】
請求項1におけるレンズとファイバーの屈折率の差が3000〜6000であることを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。
【請求項4】
請求項3におけるファイバーが石英ガラスであることを特徴とするレンズとファイバーの接合方法
【請求項5】
請求項3及び請求項4におけるレンズが光学ガラスであり、フッ素を含む硼珪酸ガラスであることを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。
【請求項6】
請求項5においてガラスのF,SiO2,Al2O3の少なくとも一つの含有量を調節することにより、レンズの屈折率を低下させることを特徴とするレンズとファイバーの接合方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−204661(P2009−204661A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44001(P2008−44001)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(507187857)株式会社日本アステック (16)
【Fターム(参考)】