説明

レンズモジュール及びカメラモジュール

【課題】モード切替機能が付いたカメラモジュールにおいて、モード切替時の光軸のずれを許容範囲内に抑えて、良好な撮影品質を維持したレンズモジュール等を提供する。
【解決手段】外部から入射される光を集光して出射する第1及び第2のレンズ4,6と、第1及び第2のレンズ4,6を保持するバレル2aと、略円筒形状を有し、バレル2aを内部に保持するバレル保持部8と、バレル保持部8を第1及び第2のレンズ4,6の光軸方向に移動させる移動手段と、バレル保持部8を摺動可能な状態にて収納するレンズ収納部3aを有する台座3とを有し、台座3は、台座3のレンズ収納部3aの内壁面が複数の線で接触してバレル保持部8を収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等に搭載されるモード切替機能付のレンズモジュール等に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影機能付き携帯電話機や監視用カメラ等に用いられる小型カメラモジュールには、簡易な方法で標準撮影モード(無限遠モード)と接写モードとを切り替えるモード切替機能付のカメラモジュールが登場してきている。
撮影モードの切替機能が付いたカメラモジュールに関する公報記載の従来技術として、例えば、光学ユニットを内側に収納保持する円筒状のリード枠体と、このリード枠体と内側で螺合する本体部と、この本体部の底部に取り付けられる固体撮像素子とを有し、リード枠体を回転させることによって本体部内で軸方向に移動して光学ユニットの焦点距離を変化させるカメラにおいて、リード枠体の外周に周方向に断続的でかつ軸方向でずれた複数条のねじ山またはねじ溝を形成し、この多条のねじ山またはねじ溝と螺合するねじ溝またはねじ山を本体部の内周に形成したカメラの技術が存在する(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−157290号公報(特に段落〔0086〕参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モード切替機能が付いたカメラモジュールは、撮像素子に対するレンズの位置(撮像素子とレンズとの距離)を変化させてモードの切り替えを実現するのが一般的である。カメラモジュール内でレンズの位置を移動させ、且つ、移動後の位置にてレンズを固定するには、レンズを基準となる面に対して摺動させることが最も簡易かつ確実な方法である。
しかし、摺動部分を有する場合、摺動によって生じた磨耗塵が受光領域へ侵入して磨耗塵が画像に大きく写り込む恐れがある。
一方、発生する磨耗塵を抑制するために摺動部分を少なくすると、レンズの光軸がずれる恐れもある。
【0005】
本発明は、モード切替機能が付いたカメラモジュールにおいて、モード切替時の光軸のずれを許容範囲内に抑えて、良好な撮影品質を維持したレンズモジュール等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかるレンズモジュールは、外部から入射される光を集光して出射するレンズと、レンズを保持するバレルと、略円筒形状を有し、バレルを内部に保持するバレル保持部と、バレル保持部をレンズの光軸方向に移動させる移動手段と、バレル保持部を摺動可能な状態にて収納する収納部を有する台座マウントとを有し、台座マウントは、台座マウントの収納部の内壁面が複数の線で接触してバレル保持部を収納することを特徴とする。
【0007】
ここで、台座マウントの収納部の内壁面がバレル保持部に接触する線の間隔は、接触する複数の線を結んで形成される仮想の内接円の径とバレル保持部の外径とレンズの光軸に許容されるずれ量とに基づいて決定されることを特徴とすれば、バレル保持部に接触する線を許容範囲内で少なくでき、バレル保持部の摺動時の摩擦も少なくすることができる。
また、台座マウントは、台座マウントの収納部の内壁面に複数の突起部が形成され、突起部が接触してバレル保持部を収納することを特徴とすれば、簡易な構成で線接触を実現できる。
更に、台座マウントの収納部は、多角形状の内壁面を有することを特徴とすれば、簡易な構成で線接触を実現できる。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるレンズモジュールは、外部から入射される光を集光して出射するレンズと、レンズを保持するバレルと、略円筒形状を有し、バレルを内部に保持するバレル保持部と、バレル保持部をレンズの光軸方向に移動させる移動手段と、バレル保持部を収納する収納部を有し、収納部の内壁面に形成された複数の突起部に接触してバレル保持部を摺動可能な状態にて収納する台座マウントとを含むことを特徴とする。
【0009】
ここで、移動手段は、バレル保持部の下端面に形成され、台座マウントの収納部の内底面に接触する凹部又は凸部と、台座マウントの収納部の内底面に形成され、バレル保持部の下端面の凹部又は凸部に対応する凸部又は凹部とにより構成され、バレル保持部が回転されてバレル保持部の凹部又は凸部が台座マウントの凸部又は凹部に係合するとき、バレル保持部をレンズの光軸方向の第1の位置に移動させ、バレル保持部が回転されてバレル保持部の凹部又は凸部が台座マウントの凸部又は凹部に係合しないとき、バレル保持部を光軸方向の第2の位置に移動させることを特徴とすれば、バレル保持部を光軸方向の第1又は第2の位置に移動させることができる。
また、バレル保持部の下端面を台座マウントの収納部の内底面に押し付ける弾性部材を更に有することを特徴とすれば、モード切替時にバレル保持部の位置決めを確実に行うことができる。
更に、バレル保持部に連結されたレバーを更に有し、台座マウントは、バレル保持部のレバーの移動範囲を制限する2つのストッパーが所定間隔を有して形成され、レバーがストッパーのいずれか一方に当接するとき、バレル保持部は光軸方向の第1又は第2のいずれかの位置にて保持されることを特徴とすれば、レバーの操作でモード切替を行うことができる。
更にまた、台座マウントは、バレル保持部の下端面が入り込む環状凹部が台座マウントの収納部の内底面に形成されており、バレル保持部の下端面が台座マウントの環状凹部に入り込んだ状態において、バレル保持部の内壁面と環状凹部の内周側壁面との間の隙間はバレル保持部が台座マウントの収納部内の摺動で生じる小片よりも小さいことを特徴とすれば、摺動によって発生する小片を閉じ込めることができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカメラモジュールは、外部から入射される光を集光して出射するレンズと、レンズを保持するバレルと、略円筒形状を有し、バレルを内部に保持するバレル保持部と、バレル保持部をレンズの光軸方向に移動させる移動手段と、バレル保持部を収納する収納部を有し、収納部の内壁面に形成された複数の突起部に接触してバレル保持部を摺動可能な状態にて収納する台座マウントと、台座マウントに収納され、レンズにより出射された光を受光領域にて受光して電気信号に変換して出力する撮像素子とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モード切替機能が付いたカメラモジュールにおいて、モード切替時の光軸のずれを許容範囲内に抑えて、良好な撮影品質を維持したレンズモジュール等を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態にかかるカメラモジュール1を示す外観斜視図であり、図2は、本実施形態にかかるカメラモジュール1の分解斜視図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、カメラモジュール1は、複数のレンズを収納して保持し(図3参照)、センサ16(図3参照)の受光領域(撮像エリア)16a(図3参照)上に入射光を結像するレンズユニット2と、レンズユニット2を保持する台座マウントの一例としての台座3とを備えている。台座3には、ばね押さえ9が嵌め込まれて取り付けられている。そして、ばね押さえ9と台座3との間から後述するバレル保持部8(図3参照)のレバー8a(図3参照)が突出している。
台座3は、接着剤(図示省略)を使って回路基板20に接着されている。回路基板20において、台座3が接着された位置とは反対側の端にコネクタ21が接続されている。台座3は、回路基板20に埋め込まれた図示しない回路パターンによってコネクタ21に電気的に接続されている。
【0014】
図2に示すように、カメラモジュール1は、複数のレンズを収納して保持するレンズユニット2と、レンズユニット2を螺合して保持するバレル保持部8とを有している。また、カメラモジュール1は、バレル保持部8に取り付けられる弾性部材の一例としてのばね10と、ばね10を押さえるばね押さえ9とを有している。ばね押さえ9は、台座3に嵌め込まれて固定される。
レンズユニット2が螺合されるバレル保持部8は、台座3に収納される。また、カメラモジュール1は、外光の特定の周波数成分を除去するフィルタ15と、受光領域16aに入射した光を電気信号に変換する撮像素子の一例としてのセンサ16(図3参照)と、フィルタ15とセンサ16との間に配置された方形のガラスカバー17とを備えている。
【0015】
図3は、図1の断面X−X’の位置におけるカメラモジュール1の縦断面図である。
図3に示すように、レンズユニット2は、レンズユニット2本体を構成するバレル2a内に、入射側に配置される第1のレンズ4と出射側に配置される第2のレンズ6とを保持している。また、レンズユニット2は、第1及び第2のレンズ4,6の間に中間環5を備えている。更に、レンズユニット2は、レンズ押さえ7を有しており、第2のレンズ6を所定位置に保持している。
【0016】
バレル2aは、略円筒形状を有している。バレル2aは、外光が入射する端面側に開口部2bが形成されている。バレル2aの外周面には、雄ねじ2cが形成されている。
バレル2aは、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフタルアミド(PFA)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂等の遮光性を有する合成樹脂により構成される。
【0017】
第1及び第2のレンズ4,6は、外光を透過してセンサ16の受光領域(撮像エリア)16aに結像させるための光学素子である。即ち、バレル2aの開口部2bから入射した外光が第1及び第2のレンズ4,6によってセンサ16の受光領域16aに結像させるように、第1及び第2のレンズ4,6が所定の光学系を形成する。尚、本実施形態では、レンズユニット2は、第1及び第2のレンズ4,6という2枚のレンズで構成されるが、レンズは1枚或いは3枚であっても構わない。所定の光学系は、単一のレンズ又は複数枚のレンズ群で構成される。
第1及び第2のレンズ4,6は、例えば、透明なポリカーボネート(PC)樹脂や環状オレフィン(COP)樹脂等の熱可塑性樹脂、或いは、シリコーン樹脂やガラスなど透光性を有する材料で構成される。
【0018】
中間環5は、薄板円環形状を有している。中間環5は、例えば、カーボンブラックを練り込んだ延伸ポリエステル(PET)等の合成樹脂フィルムで構成されている。中間環5は、第1のレンズ4と第2のレンズ6の面間距離を一定に保つと共に、通過光量を制限する絞り機能を有しており、光学系の開口径を決定する光学絞り、或いは、ゴースト、フレア等の不要光を遮光する遮光絞りとして使われる。
レンズ押さえ7は、略円環形状を有している。レンズ押さえ7は、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂等で構成される。図示しない接着剤にてバレル2aの内壁面に接着されている。
レンズユニット2は、バレル保持部8にねじ込まれる。バレル保持部8の上部にはばね10が取り付けられ、ばね押さえ9が台座3の所定位置に嵌め込まれることによって、レンズユニット2が螺合されたバレル保持部8は台座3のレンズ収納部3aに収納される。
【0019】
ここで、バレル保持部8の形状を図面を用いて説明する。
図4は、バレル保持部8の斜視図である。
バレル保持部8は、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフタルアミド(PFA)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等の遮光性を有する合成樹脂により構成される。
【0020】
図4に示すように、バレル保持部8は、概ね円筒形状であって、外周面にレバー8aが突出して形成されている。このレバー8aを操作することにより、バレル保持部8は台座3(図3参照)のレンズ収納部3a(図3参照)内で摺動して回転する。また、バレル保持部8は、内壁面にバレル2aの雄ねじ2cと螺合する雌ねじ8bが形成されている。
バレル保持部8は、側壁部の下端面8cに3つの凹部8dが周方向にほぼ均等に形成されている。
【0021】
図3に戻って説明を続ける。
バレル保持部8は、レンズユニット2を収納した状態で台座3にセットされる。このとき、バレル保持部8の下端面8c(図4参照)が台座3のレンズ収納部3aに形成された環状凹部3eの底面に当接する。バレル保持部8の下端面8cが台座3の環状凹部3eに入り込んだ状態において、バレル保持部8の内壁面と環状凹部3eの内周側壁面との間の隙間は、バレル保持部8が台座3のレンズ収納部3a内の摺動で生じる小片(磨耗塵)よりも小さくなるように形成されている。これにより、摺動により発生する磨耗塵を閉じ込めて、受光領域16aへ入り込むことを防いでいる。
台座3のレンズ収納部3aの内底面には、バレル保持部8の凹部8d(図4参照)に対応して、凸部3f(図5参照)が形成されている。これについては後述する。
【0022】
ばね押さえ9は、後述するばね10を押さえるように覆いかぶさった状態で取り付けられる円環部と、その円環部の周囲に形成されたスカート部とを有している。そして、スカート部が台座3に嵌まり込むことで、ばね押さえ9は固定される。
ばね押さえ9は、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフタルアミド(PFA)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等の遮光性を有する合成樹脂により構成される。ばね押さえ9は、後述する台座3に嵌め込まれ固定されて使用されるので、カメラモジュール1の使用環境下の温度における台座3との膨張差を考慮して材料が選択される。例えば、台座3と同じ材料が好ましい。
ばね10は、略円環形状で、周方向に山と谷とが交互に且つ等間隔に複数形成された波状の薄板である。例えば、板厚が0.05mm程度のリン青銅やSUS鋼板等の一般的なばね材で構成される。ばね10は、ばね押さえ9と共に、バレル保持部8を上方から下方に向かって押し付ける機能を有している。これにより、バレル保持部8の下端面8cが台座3の環状凹部3e(後述)の底面に当接する。
【0023】
台座3は、レンズユニット2が取り付けられる収納部の一例としてのレンズ収納部3aと、フィルタ15やセンサ16、ガラスカバー17を収容保持する素子収納部3bとが一体に構成されている。また、台座3は、レンズ収納部3aの内部空間と素子収納部3bの内部空間とが連続するように構成されている。また、台座3は、内面から延びて内部空間を狭めるように形成されたフランジ部3cを有する。
更に、台座3のレンズ収納部3aには、内壁面に凸部3dが形成されている。更にまた、フランジ部3cのレンズ収納部3a側の底面でバレル保持部8の下端面8cが当接する位置には、全周にわたって環状凹部3eが形成されている。
【0024】
ここで、台座3の形状を図面を用いて説明する。
図5は、台座3の斜視図である。
図5に示すように、台座3は、レンズ収納部3a(図3参照)の内壁面には突起部の一例としての複数の凸部3dが形成されている。そして、この凸部3dがバレル保持部8(図3参照)の外壁面に接触している。ここで、本実施形態では、凸部3dの断面は円弧状に図示されているが、これに限定されるものではなく、断面が、例えば、矩形状であっても良い。
【0025】
また、台座3は、レンズ収納部3aの底面(図3におけるレンズ収納部3aの下面)に、内壁面に沿って全周にわたって、環状凹部3eが形成されている。環状凹部3eの底面には、3つの凸部3fが周方向にほぼ均等に形成されている。この凸部3fは、バレル保持部8の下端面8cに形成された3つの凹部8dに対応して形成されている。これについては、焦点調節機能として後述する。更に、台座3は、レバー8aの移動範囲を制限する2つのストッパー3g,3hが形成されている。
台座3は、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフタルアミド(PFA)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂等の遮光性を有する合成樹脂により構成される。
【0026】
図3に戻って説明を続ける。
フィルタ15は、外光の特定の波長成分を除去する薄板の部材である。本実施形態では、多層膜による光の干渉によって赤外光をカットする赤外線除去フィルタ(IRCF:Infrared Cut Filter)を用いている。フィルタ15は、台座3のフランジ部3cに取り付けられる。フィルタ15がフランジ部3cに取り付けられたとき、台座3の内部空間はレンズ収納部3aと素子収納部3bの2つに仕切られる。このフィルタ15は、センサ16の近傍に配置されており、センサ16側を密閉して異物がセンサ16側に浸入することを防止している。
センサ16は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ(撮像素子)である。本実施形態では、CSP(Chip Scale Package)構造を有するセンサを用いている。センサ16は、レンズユニット2を介して受光領域16aに結像した光に応じて電気信号を生成し、出力する。
【0027】
ガラスカバー17は、フィルタ15とセンサ16との間に配置されている。ガラスカバー17には、センサ16の受光領域16a側の面をガラスカバー17に向けた状態でセンサ16が固着されている。これにより、センサ16の受光領域16aに埃等が直接落ちることを防いでいる。
ガラスカバー17は、方形を有している。ガラスカバー17は、例えば、ガラス又は石英ガラス等の可視光に対して透光性を有する透明体により構成される。このガラスカバー17の撮像素子側の面(図3における下側)には、配線パターン17aが形成されている。
【0028】
ガラスカバー17の出射面(図3における下面)側には、配線パターン17aが予め設けられている。そして、この配線パターン17aの電極とセンサ16とをつなぐように複数の半田バンプ18が位置している。電極の位置に取り付けられた半田バンプ18によって、センサ16はガラスカバー17に固定されると共に、ガラスカバー17の電極と電気的に接続されている。
ここで、センサ16とガラスカバー17との離間距離は、半田バンプ18の大きさによって決定される。半田バンプ18の大きさを制御することは容易であるから、センサ16とガラスカバー17との位置決めを正確に行うことが可能である。また、複数の半田バンプ18により位置決めすることから、センサ16とガラスカバー17との離間距離が平均化される。
【0029】
ガラスカバー17の出射面側の電極の別の位置には、半田バンプ19が配置されている。この半田バンプ19により、ガラスカバー17と回路基板20との間の電気的な接続が確保される。この半田バンプ19は、ガラスカバー17に固定されているセンサ16と回路基板20とが互いに離間するためのスペーサとしても用いられている。
回路基板20は、例えば、ガラス繊維とエポキシ樹脂を主材とする絶縁性材料で構成され、表面に銅等の導体箔層を形成し、更に導体箔層の上に絶縁体層を被せて保護している。本実施形態に使用する回路基板20は、厚さが約0.3mm以上である。尚、ポリイミド樹脂を主体とするフレキシブルプリント基板で構成されても良い。
【0030】
(焦点調節機能)
以上の構成を有するカメラモジュール1における焦点調節機能について説明する。
レバー8aが操作されてバレル保持部8が台座3のレンズ収納部3a内で回転されると、バレル保持部8の下端面8cが台座3の環状凹部3eに当接された状態で摺動して回転する。このとき、ばね押さえ9とばね10とによってバレル保持部8は台座3に押し付けられる方向の力を受けるので、バレル保持部8が浮き上がることはない。
レバー8aが操作されてバレル保持部8が回転されて、バレル保持部8の凹部8dは台座3のレンズ収納部3aの環状凹部3eに形成された凸部3fの対応する位置となる。バレル保持部8はばね10の力によって下側に押されて、バレル保持部8の下端面8cに形成された凹部8dが台座3の環状凹部3eに形成された凸部3fに嵌まり込む。これにより、レンズユニット2は、センサ16の側に近い位置(第1の位置)となる。このとき、レンズユニット2は、焦点位置が無限遠モード(標準撮影モード)となるように調整される。
【0031】
レバー8aが反対方向に操作されてバレル保持部8を逆方向に回転摺動させる。バレル保持部8の下端面8cが台座3の環状凹部3eに形成された凸部3fに乗り上げて、バレル保持部8はセンサ16から離れる位置(第2の位置)に持ち上げられる。このときのレンズユニット2は、焦点位置が接写モードとなるように調整される。
このように、レバー8aを操作することによって、レンズユニット2を無限遠モード又は接写モードにセットすることができる。よって、台座3の環状凹部3eに形成された凸部3fとバレル保持部8の凹部8dとは、バレル保持部8をレンズユニット2の光軸方向に移動させる移動手段の一例として機能する。尚、カメラモジュール1は、部品をすべて組み立てた後に焦点調節を行い、図示しない接着剤で接着することで、無限遠モードと接写モードの設定を確実にしている。尚、台座3の環状凹部3eに凹部が形成され、バレル保持部8に凸部が形成されて、バレル保持部8をレンズユニット2の光軸方向に移動させてもよい。
【0032】
(光軸のずれ対策)
次に、台座3のレンズ収納部3a及びバレル保持部8とレンズユニット2の光軸のずれとの関係について以下に説明する。
図6は、図1に示すカメラモジュール1の光軸のずれを説明するための図である。ここで、図5では、レンズ収納部3aの内側壁に9個の凸部3dが形成された図を示しているが、図6では、図示の簡略化と説明の都合上、凸部3dを3つとしている。
【0033】
図6に示すように、バレル保持部8の側壁面が、台座3のレンズ収納部3aの内壁面に形成された凸部3dに接触する。このとき、台座3のレンズ収納部3aの内壁面に形成された凸部3dに内接する仮想の内接円(図6では破線にて表示)の中心と、バレル保持部8の中心(即ちレンズユニット2の光軸)との距離が、光軸のずれに相当する。光軸のずれは撮像品質に影響を与えるため、仮想の内接円とバレル保持部8との中心間距離を極力小さくすることが好ましい。この中心間距離を小さくする方法として、(1)台座3のレンズ収納部3aの内壁面に形成される凸部3dの数を増やして隣接する凸部3dの間にバレル保持部8が入り込む量を少なくする方法、或いは、(2)台座3のレンズ収納部3aに形成された複数の凸部3dに内接する仮想の内接円の径とバレル保持部8の外径との差を小さくする方法、等が考えられる。
【0034】
(1)凸部3dの数を増やす方法
バレル保持部8の外径をφ7.00mmとし、台座3のレンズ収納部3aの内壁面に形成される凸部3dに内接する内接円の径をφ7.05mmとして、凸部3dの数と光軸のずれ量との関係を算出した。結果を表1に示す。光軸のずれ量が撮像品質に影響を与えない5μm以下となるのは、凸部3dが6個以上形成されたときであることが判る。このように、バレル保持部8の外径と複数の凸部3dに内接する仮想の内接円の径と許容される光軸のずれ量とが決定されれば、レンズ収納部3aの内壁面に形成する凸部3dの数を決定できる。
【0035】
【表1】

【0036】
(2)凸部3dに内接する仮想の内接円の径とバレル保持部8の外径との差を小さくする方法
台座3のレンズ収納部3aに形成された複数の凸部3dに内接する仮想の内接円の径とバレル保持部8の外径との差を小さくするために、本実施形態では、台座3のレンズ収納部3aの内壁面に形成した凸部3dに内接する仮想の内接円の径とバレル保持部8の外径との差を0〜0.025mmとした。バレル保持部8は、台座3のレンズ収納部3aの内壁面に形成された複数の凸部3dに接触して保持されるので、凸部3dとバレル保持部8の外壁面とは面と線との接触となって、摩擦を軽減することができる。バレル保持部8の外径と台座3の凸部3dが形成する仮想の内接円の径とが同一寸法となっても、摩擦を軽減できることが確認できた。
尚、台座3のレンズ収納部3aの内壁面に凸部3dを形成したことにより、磨耗により発生する磨耗塵(小片)は隣り合う凸部3dの隙間に入り込むので、バレル保持部8と台座3との摺動の妨げとはならない。
【0037】
比較のために、従来の台座の形状を示す。
図7は、従来の台座33の斜視図である。
図7に示すように、従来の台座33は、内壁面から延びて内部空間を狭めるように形成されたフランジ部33cを有する。また、内壁面に沿って全周にわたって、環状凹部33eが形成されている。環状凹部33eの底面には、3つの凸部33fが周方向にほぼ均等に形成されている。フランジ部33c、環状凹部33e、凸部33fはいずれも、図5に示す台座3のフランジ部3c、環状凹部3e、凸部3fと同じ機能を果たす。台座33は、レンズ収納部の内壁面に凸部が形成されていないので、バレル保持部8(図4参照)と台座33のレンズ収納部とは面と面との接触となって接触面積が大きくなる。また、バレル保持部8の外壁面と台座33のレンズ収納部の内壁面との隙間がないと、バレル保持部8は台座33のレンズ収納部内で回転することができない。無理に回転させると、レバー8a(図2,4参照)が折れたり、磨耗によって多くの磨耗塵が発生する恐れがある。
【0038】
(変形例)
図5に示す凸部3dは半円形状の突起であるが、本発明はこれに限定されるものではない。バレル保持部8と台座3のレンズ収納部3aとの接触面積が減るのであれば形状に限定されない。例えば、台座3のレンズ収納部3aの内側形状を矩形(角柱)であっても良い(図示省略)。
図8は、変形例としての台座43の斜視図である。台座43のレンズ収納部の形状が、円形穴ではなく角形状の穴である点が、図5に示した台座3と相違する。
表1に示したようにバレル保持部8の外周面との接触箇所の数は、所定条件下で6以上が好ましいので、台座43のレンズ収納部の内側形状は、同じ条件下では六角形以上が望ましい。
【0039】
図5に示した本実施形態では、台座3のレンズ収納部3aの内壁面に形成された凸部3dは、内壁面に対して等間隔に形成されていたが、本発明はこれに限定されるのものではない。例えば、レバー8aの操作によって、バレル保持部8がレバー8aとは反対側に押される傾向があるときには、レバー8aに近い側の間隔を広くし反対側で狭くすることで、凸部3dの数を減らすようにしても良い(図示省略)。バレル保持部8が凸部3dに接触する数が減るので、発生する磨耗塵を減らすことができる。
【0040】
図9は、レンズユニットの変形例を示す縦断面図である。
図9に示すバレル保持部8は、雌ねじ8bが形成された内壁面から底面部分が更に形成され、その底面部分に環状凹部8eが形成されている点が、図3に示すバレル保持部8と相違する。バレル2aとこの環状凹部8eとの隙間は狭小に形成されている。即ち、バレル2aの下端面がバレル保持部8の環状凹部8eに入り込んだ状態において、バレル2aの内壁面と環状凹部8eの内周側壁面との間の隙間は、バレル2aの雄ねじ2cとバレル保持部8の雌ねじ8bとの螺合で生じる小片(磨耗塵)よりも小さくなるように形成されている。これにより、螺合する際に発生する小片(磨耗塵)や、バレル2aをバレル保持部8に接着する際の余剰の接着剤(図示省略)を受け止めて閉じ込める機能を果たしている。
【0041】
このように、本実施形態にかかるカメラモジュール1によれば、バレル保持部8は、バレル保持部8の外壁面がレンズ収納部3aの内壁面に形成された複数の凸部3dに接触して保持される。このとき、台座3のレンズ収納部3aに形成された複数の凸部3dに内接する仮想の内接円の径と、バレル保持部8の外径と、レンズユニット2の光軸に許容されるずれ量とによって、台座3のレンズ収納部3aの内壁面に形成される凸部3dの数(即ち、隣り合う凸部3dの間隔)が決定される。よって、レンズユニット2の光軸に許容されるずれ量に従って凸部3dの数が決定されるので、凸部3dの数を少なくすることができる。これにより、バレル保持部8の回転摺動時の摩擦も少なくすることができる。
また、台座3のレンズ収納部3aの内壁面とバレル保持部8の外壁面とは線により接触し、バレル保持部8は保持される。これにより、従来の面と面との接触から面と線との接触となるので、簡易な構成で接触面積を少なくすることが可能となり、バレル保持部8の回転摺動時の摩擦を減らすことができる。これにより、モード切替時の摺動による磨耗塵の発生を抑えることが可能となる。
【0042】
台座3のレンズ収納部3aの凸部3dとバレル保持部8との摺動により発生する小片(磨耗塵)を、レンズ収納部3aの環状凹部3e(凹部)とバレル保持部8の下端面8cとが形成する閉空間に閉じ込めるので、小片がフィルタ15上に落ちて発生する画像シミを抑止できる。これにより、カメラモジュール1の内部の構造を工夫するだけで、製造原価をほとんど上げることなく、撮影品質の高いカメラモジュール1を提供できる。
また、図8に示す台座43では、台座43のレンズ収納部の内壁面に内接する仮想の内接円の径と、バレル保持部の外径と、レンズユニット2の光軸に許容されるずれ量とによって、台座43のレンズ収納部の内側形状が決定される。よって、レンズユニット2の光軸に許容されるずれ量に従って接触の数が決定されるので、簡易な構成で接触の数を極力少なくすることができる。これにより、バレル保持部の回転摺動時の摩擦も少なくすることができる。
図9に示す変形例では、バレル2aの雄ねじ2cとバレル保持部8の雌ねじ8bとの螺合によって発生する小片(磨耗塵)を、バレル2aの下端面とバレル保持部8の環状凹部8eとが形成する閉空間に閉じ込めるので、小片がフィルタ15上に落ちて発生する画像シミを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態にかかるカメラモジュールの外観斜視図である。
【図2】図1に示すカメラモジュールの分解斜視図である。
【図3】図1に示す断面X−X’位置でのカメラモジュールの縦断面図である。
【図4】図1に示すカメラモジュールのバレル保持部の斜視図である。
【図5】図1に示すカメラモジュールの台座の斜視図である。
【図6】図1に示すカメラモジュールの光軸のずれを説明するための図である。
【図7】従来の台座の斜視図である。
【図8】台座の変形例の斜視図である。
【図9】レンズユニットの変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…カメラモジュール、2…レンズユニット、2a…バレル、2c…雄ねじ、3,33,43…台座(台座マウント)、3a…レンズ収納部(収納部)、3b…素子収納部、3e…環状凹部、3g,3h…ストッパー、4…第1のレンズ、5…中間環、6…第2のレンズ、7…レンズ押さえ、8…バレル保持部、8a…レバー、9…ばね押さえ、10…ばね(弾性部材)、16…センサ(撮像素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入射される光を集光して出射するレンズと、
前記レンズを保持するバレルと、
略円筒形状を有し、前記バレルを内部に保持するバレル保持部と、
前記バレル保持部を前記レンズの光軸方向に移動させる移動手段と、
前記バレル保持部を摺動可能な状態にて収納する収納部を有する台座マウントと
を有し、
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記収納部の内壁面が複数の線で接触して前記バレル保持部を収納することを特徴とするレンズモジュール。
【請求項2】
前記台座マウントの前記収納部の前記内壁面が前記バレル保持部に接触する線の間隔は、当該接触する複数の線を結んで形成される仮想の内接円の径と当該バレル保持部の外径と前記レンズの光軸に許容されるズレ量とに基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項3】
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記収納部の前記内壁面に複数の突起部が形成され、当該突起部が接触して前記バレル保持部を収納することを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
前記台座マウントの前記収納部は、多角形状の内壁面を有することを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項5】
外部から入射される光を集光して出射するレンズと、
前記レンズを保持するバレルと、
略円筒形状を有し、前記バレルを内部に保持するバレル保持部と、
前記バレル保持部を前記レンズの光軸方向に移動させる移動手段と、
前記バレル保持部を収納する収納部を有し、当該収納部の内壁面に形成された複数の突起部に接触して当該バレル保持部を摺動可能な状態にて収納する台座マウントと
を含むことを特徴とするレンズモジュール。
【請求項6】
前記移動手段は、
前記バレル保持部の下端面に形成され、前記台座マウントの前記収納部の内底面に接触する凹部又は凸部と、
前記台座マウントの前記収納部の内底面に形成され、前記バレル保持部の前記下端面の前記凹部又は凸部に対応する凸部又は凹部と
により構成され、
前記バレル保持部が回転されて当該バレル保持部の前記凹部又は凸部が前記台座マウントの前記凸部又は凹部に係合するとき、当該バレル保持部を前記レンズの光軸方向の第1の位置に移動させ、
前記バレル保持部が回転されて当該バレル保持部の前記凹部又は凸部が前記台座マウントの前記凸部又は凹部に係合しないとき、当該バレル保持部を前記光軸方向の第2の位置に移動させることを特徴とする請求項5に記載のレンズモジュール。
【請求項7】
前記バレル保持部の前記下端面を前記台座マウントの前記収納部の前記内底面に押し付ける弾性部材を更に有することを特徴とする請求項6に記載のレンズモジュール。
【請求項8】
前記バレル保持部に連結されたレバーを更に有し、
前記台座マウントは、前記バレル保持部の前記レバーの移動範囲を制限する2つのストッパーが所定間隔を有して形成され、
前記レバーが前記ストッパーのいずれか一方に当接するとき、前記バレル保持部は前記光軸方向の第1又は第2のいずれかの位置にて保持されることを特徴とする請求項5に記載のレンズモジュール。
【請求項9】
前記台座マウントは、前記バレル保持部の下端面が入り込む環状凹部が当該台座マウントの前記収納部の内底面に形成されており、
前記バレル保持部の前記下端面が前記台座マウントの前記環状凹部に入り込んだ状態において、当該バレル保持部の内壁面と当該環状凹部の内周側壁面との間の隙間は当該バレル保持部が当該台座マウントの前記収納部内の摺動で生じる小片よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載のレンズモジュール。
【請求項10】
外部から入射される光を集光して出射するレンズと、
前記レンズを保持するバレルと、
略円筒形状を有し、前記バレルを内部に保持するバレル保持部と、
前記バレル保持部を前記レンズの光軸方向に移動させる移動手段と、
前記バレル保持部を収納する収納部を有し、当該収納部の内壁面に形成された複数の突起部に接触して前記バレル保持部を摺動可能な状態にて収納する台座マウントと、
前記台座マウントに収納され、前記レンズにより出射された光を受光領域にて受光して電気信号に変換して出力する撮像素子と
を有することを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−75271(P2009−75271A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243103(P2007−243103)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】