説明

レンズ装置及び撮像装置

【課題】レンズ装置の大型化を伴うことなく、拡大撮像モードでのズーム撮像を容易に行えるようにする。
【解決手段】レンズ装置は、複数のレンズユニットL1〜L4を含む撮影光学系と、該複数のレンズユニットのうち少なくとも一部を光軸方向に移動させて撮影光学系の倍率を変更するズーム機構5,9とを有する。該レンズ装置は、倍率をテレ端とワイド端との間で変更する通常撮像モードと、該通常撮像モードよりも短い被写体距離で拡大撮像を行う拡大撮像モードとを有する。ズーム機構は、拡大撮像モードにおいて、ワイド端から倍率を連続的に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高倍率での撮像が可能なレンズ装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置はズーム機能を有することが多いが、汎用的な撮像装置では数百倍といった高倍率の拡大映像まで得ることはできない。
【0003】
一方、材料や物質の表面を拡大観察する目的のために、それ専用の撮像装置や拡大アダプタを追加可能な撮像装置が提案されている。
【0004】
特許文献1には、拡大倍率を有する補助レンズを有し、被写体像を拡大して撮像装置に入射させる拡大アダプタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3981376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて開示された拡大アダプタを撮像装置に取り付けると、拡大アダプタを含む撮像装置全体の長さが増大し、撮像装置の取り扱いが困難になる。
【0007】
また、拡大映像を鮮明に撮像するためには、被写体を明るく照明する必要があるが、特許文献1にて開示された拡大アダプタは、照明ユニットが補助レンズの後方に設けられている。このため、照明光の照射効率が低く、被写体を明るく照明することが期待できない。照明ユニットの発光輝度を高くしたり光の利用効率を上げたりすると、照明ユニットの構成の複雑化や大型化、さらには消費電力の増加が問題となる。
本発明は、大型化を伴うことなく、拡大撮像モードでのズーム撮像を容易に行えるようにしたレンズ装置及び撮像装置を提供することを第1の目的とする。
【0008】
さらに本発明は、上記レンズ装置及び撮像装置において、照明ユニットの複雑化や大型化および消費電力の増加を伴うことなく、被写体を明るく照明しながら撮像することができるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、複数のレンズユニットを含む撮影光学系と、該複数のレンズユニットのうち少なくとも一部を光軸方向に移動させて撮影光学系の倍率を変更するズーム機構とを有する。該レンズ装置は、倍率をテレ端とワイド端との間で変更する通常撮像モードと、該通常撮像モードよりも短い被写体距離で拡大撮像を行う拡大撮像モードとを有する。ズーム機構は、拡大撮像モードにおいて、ワイド端から倍率を連続的に変更することを特徴とする。
なお、撮影光学系よりも被写体側に、複数の発光体が撮影光学系の光軸回り方向に配置された照明ユニットを配置してもよい。
【0010】
また、上記レンズ装置と、撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する撮像素子とを有する撮像装置も本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レンズ装置又は撮像装置を大型化することなく、拡大撮像モードでのズーム撮像を容易に行うことができる。また、照明ユニットを複雑化、大型化したり消費電力を増加させたりすることなく、被写体を明るく照明しながら撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例であるカメラシステムの構成を示す断面図。
【図2】図1に示したカメラシステムの変形例を示す断面図。
【図3】実施例における鏡筒ユニットに設けられたマウントを示す背面図。
【図4】実施例における鏡筒ユニットに設けられた照明ユニットの構成を示す正面図。
【図5】実施例のカメラシステムの電気回路構成を示すブロック図。
【図6】実施例のカメラシステムで実行される照明ユニットの制御処理を示すフローチャート。
【図7】実施例における鏡筒ユニットの構成を示す断面図。
【図8】実施例における鏡筒ユニットのカム曲線を示す図。
【図9】実施例における鏡筒ユニットにおけるズーム領域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
図1には、本発明の実施例であるカメラシステムを光軸を含む平面で切ったときの断面を示している。カメラシステム(撮像装置)は、レンズ装置としての鏡筒ユニット2と、該鏡筒ユニット2が着脱可能に装着されるカメラ本体1とにより構成される。
【0015】
鏡筒ユニット2内には、カメラ本体1の内部に配置された撮像素子3上に被写体像を形成するための撮影光学系が設けられている。撮像素子3は、CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成される。
【0016】
撮影光学系は、被写体側(物体側)から順に、第1レンズユニットL1、第2レンズユニットL2、第3レンズユニットL3及び第4レンズユニットL4により構成されている。第1レンズユニットL1、第2レンズユニットL2、第3レンズユニットL3及び第4レンズユニットL4はそれぞれ、正のパワー(屈折力)、負のパワー、正のパワー及び正のパワーを有する。なお、撮影光学系は、光量を調節するための不図示の絞りを含む。
鏡筒ユニット2は、撮影光学系の焦点距離(倍率)を変更するズーム操作のために使用者により回転操作(マニュアル操作)されるズーム操作環5を有する。なお、鏡筒ユニット2にズームモータを設け、カメラ本体1に設けられたズームスイッチ(図5の53参照)の操作に応じて該ズームモータを動作させ、該ズームモータによりズーム操作環5を回転させるようにしてもよい。
また、鏡筒ユニット2のうち最も被写体側の部分(前端部)、すなわち撮影光学系よりも被写体側の部分には、リング状の台座10に複数のLED発光体4が設けられた照明ユニット13が、ねじ込み方式又は止め具使用方式で脱着自在に装着されている。
照明ユニット13は、後述する顕微鏡モード(言い換えれば、拡大撮像モード又はマクロ撮像モード)で被写体を拡大接写する場合に、該被写体を照明する。一方、風景や人物等を撮像する通常撮像モード(以下、カメラモードという)では鏡筒ユニット2から取り外される。照明ユニット13は、ズーム操作に応じて光軸方向に移動可能である。
【0017】
また、鏡筒ユニット2の前端部外周には、外光が撮影光学系に入射することを防ぐためのフード14が着脱可能に装着されている。フード14の内側に照明ユニット13を取り付けておくことで、フード14と照明ユニット13を一体的に鏡筒ユニット2に対して着脱することもできる。
フード14は、顕微鏡モードにおいて、ズーム操作環5の回転に連動して光軸方向に移動する。これについては後述する。
カム筒9は、ズーム操作環5に連結されており、ズーム操作環5とともに鏡筒ユニット2の固定筒2aに対して光軸回りで回転する。
カム筒9には、図8(a),(b),(c)に示すカム溝12a〜12dが形成されている。カム溝12aには、第1レンズユニットL1を保持する第1鏡筒21に取り付けられたカムフォロア8aが係合し、カム溝12bには、第2レンズユニットL2を保持する第2鏡筒22に取り付けられたカムフォロア8bが係合している。また、カム溝12cには、第3レンズユニットL3を保持する第3保持枠23に取り付けられたカムフォロア8cが係合し、カム溝12dには、第4レンズユニットL4を保持する第4保持枠24に取り付けられたカムフォロア8dが係合している。
カム筒9が回転すると、第1〜第4レンズユニットL1〜L4はそれぞれ、カム溝12a〜12dによって各カムフォロアが移動されることで光軸方向に移動され、これにより撮影光学系の倍率が変更される。ズーム操作環5とカム筒9により、ズーム機構が構成される。なお、本実施例では、カム筒9の回転により第1〜第4レンズユニットL1〜L4の全てが光軸方向に移動して倍率が変更される場合について説明するが、第1〜第4レンズユニットL1〜L4のうち少なくとも一部が光軸方向に移動して倍率が変更されればよい。
本実施例の鏡筒ユニット2は、ワイド端とテレ端との間でズームを行うカメラモードと、ワイド端(最小倍率端)と最大倍率端との間でズームを行う顕微鏡モードとを有する。顕微鏡モードは、カメラモードに比べて短い被写体距離での拡大撮像を行うことができる。
鏡筒ユニット2の最もカメラ側の部分(後端部)には、図3に示すマウント6が設けられている。鏡筒ユニット2は、該マウント6をカメラ本体1に設けられた不図示のマウントに対してバヨネット結合させることで、カメラ本体1に着脱可能に装着される。
マウント6には電気接点6aが複数設けられており、カメラ本体1から該電気接点6a及び鏡筒ユニット2の内部配線を介して照明ユニット13のLED発光体4に電力が供給される。図2に示すように、カメラ本体1に専用の電源供給接点7を設け、ケーブル11を介して照明ユニット13のLED発光体4に電力を供給することも可能である。また、カメラ本体1に設けられた不図示のインターフェース(例えば、USB端子)から、ケーブルを介してLED発光体4に電力を供給することも可能である。
図4には、被写体側から見た照明ユニット13を示している。照明ユニット13は、リング状の台座10と、該台座10の全周にわたる複数箇所(撮影光学系の光軸回り方向の複数箇所)に配置されたLED発光体4とにより構成されている。図4には、R(赤)、G(緑)、B(青)のLED発光体の間にW(白)のLED発光体が配置された例を示している。ただし、これは例であり、各色のLED発光体の配置はこれ以外のものであってもよい。
【0018】
カメラ本体1に設けられたLED選択スイッチ(図5の52)の操作により、任意の色のLED発光体を選択的に発光させることができる。これにより、被写体を色によって部分的に際立たせて撮像することができる。例えば、顕微鏡モードでの被写体が人間の皮膚である場合は、R色のLED発光体を発光させることで、皮下の組織を際立たせることができる。この場合、鏡筒ユニット2の前端に偏光フィルタを設けることで、皮膚の表面で反射した光を遮断して皮下の組織をより鮮明に撮像することができる。
なお、図4では、LED発光体4を台座10の周方向に一列に並べて配置した場合を示しているが、LED発光体4を台座10の周方向に複数列で並ぶように配置してもよい。
2列に並べる場合に、内側の列のLED発光体の照射方向をレンズの法線方向に平行とすれば、深いところからの反射光による映像を撮像することができる。また、外側の列のLED発光体の照射方向をレンズの法線方向に対して斜めとすることで、被写体の表面からの反射光による映像を撮像することができる。特に、外側の列のLED発光体からの光により表面上の影を撮像することができ、立体感のある映像が得られる。
このように、発光させるLED発光体の列と色を選択することで、所望の映像を撮像することができる。
顕微鏡モードでの最大倍率を選択したときに照度が不足気味であれば、全ての列のW色のLED発光体を選択して点灯させることで、狭い視野内の被写体に対して十分な照度を与えることができる。
【0019】
顕微鏡モードにおいて、ズーム操作環5の回転位置(つまりは倍率)に応じて発光するLED発光体が自動的に選択されるようにしてもよい。例えば、倍率が高くなるほど照明光量が増加して被写体を明るく照らすように発光するLED発光体の数を増やしてもよい。なお、LED発光体への印加電圧を変えることで、照明光量を変えることも可能である。また、倍率に応じて発光色(照明色)が切り替わるようにして、皮下血管等の皮膚の下の組織の映像も明瞭に撮像できるようにしてもよい。
【0020】
図5には、本実施例のカメラシステムの電気的構成を示している。ここでは、ズーム操作環5及びカム筒9がズームモータ65によって駆動される場合の電気的構成を示す。
撮像素子3は、撮影光学系(第1〜第4レンズユニットL1〜L4及び絞り)により形成された被写体像を光電変換して撮像信号を出力する。59は撮像素子3から出力される撮像信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/Dコンバータである。58はA/Dコンバータ59から出力されたデジタル撮像信号に対して各種画像処理を行うことで画像を生成する画像処理回路である。
56はカメラ本体1の各部の動作を制御するカメラ制御部である。カメラ制御部56は、鏡筒ユニット2に設けられたレンズ系制御部61を通じてズームモータ65や不図示の絞りを制御する。
52は先に説明したLED選択スイッチであり、53は先に説明したズームスイッチである。60は撮像動作(画像の記録動作)を行わせるための撮像スイッチである。54はLCD等により構成され、画像処理回路18により生成された画像や他の情報を表示する表示器である。55はカメラ制御部56とLED選択スイッチ52、ズームスイッチ53、撮像スイッチ60及び表示器54とのインターフェースである。57は画像処理回路58により生成された画像や他の情報を記憶するメモリである。
ズームスイッチ53が操作されると、その操作時間に応じてズームモータが駆動され、不図示の駆動伝達機構を介してズーム操作環5及びカム筒9が回転され、各レンズユニットの位置が制御される。これにより、カメラモード及び顕微鏡モードでの撮影光学系の倍率が変化する。これらのモードの選択は不図示の操作によっても可能である。
そして、顕微鏡モードにおいては、ズームスイッチ53が操作されて、該操作が解除されるまでの時間(この操作時間と倍率とを対応させておく)又は不図示の回転位置検出器により検出されたズーム操作環5又はカム筒9の回転位置の情報(つまりは撮影光学系の倍率)がカメラ制御部56に入力される。カメラ制御部56は、ズームスイッチ53の操作時間又はズーム操作環5の回転位置の情報に応じて照明ユニット13において発光させるLED発光体4を選択する。これにより、顕微鏡モードにおいて撮影光学系の倍率に適した以下のような被写体照明が行われる。
51は照明制御部である。照明制御部51は、予めLED選択スイッチ52からのLEDの選択指示があった場合は、顕微鏡モードにおいてカメラ制御部56から照明制御信号を受けることに応じて、LED発光体4のON(点灯)/OFFや発光色を選択制御する。R、G、B及びWの各LED発光体を単独で発光させてもよいし、例えばRとGのLED発光体を点灯させて黄色の照明を行ってもよい。
また、予めメモリ57に倍率と照明条件(例えば光量)との関係をテーブルにして記憶させておけば、カメラ制御部56は、顕微鏡モードにおけるズーム動作での倍率に従って、そのときの倍率に対応するメモリ57に記憶された照明光量に基づいて、照明制御部51を介して照明光量を調節する。なお、照明光量の調節は、例えば、ズーム倍率が高倍率の場合は10個のLED発光体4を点灯させ、低倍率の場合は5個のLED発光体4を点灯させるというように行えばよい。なお、この場合の倍率の情報は、前述したようにズーム操作環5やカム筒9の回転位置の検知によって得られる。
また、カメラ制御部56は、ズーム操作環5又はカム筒9やズームスイッチ53から得られる各レンズユニットの位置情報から、カメラモードから顕微鏡モードへ移行又その逆方向へ移行したことが判定できるので、それに基づいて、照明制御部51を介してLED発光体4のON/OFFを制御することができる。この構成により、カメラモードでは点灯させず、カメラモードから顕微鏡モードに切り替わった際にLED発光体4を点灯させることができ、逆の場合は消灯させることができる。
【0021】
なお、本実施例では、LED選択スイッチ52及びズームスイッチ53をカメラ本体1に設けた場合について説明しているが、これらの機能を鏡筒ユニット2に設けてもよい。
【0022】
次に図6のフローチャートを用いて、本実施例のカメラシステムにおける照明ユニット2の制御処理について説明する。
【0023】
まず、ステップS61では、カメラ制御部56は、撮像スイッチ60が操作されたか否か、すなわち使用者による撮像指示があったか否かを判定する。撮像指示がない場合はステップS61での判定を繰り返し、撮像指示があった場合はステップS62に進む。
ステップS62では、カメラ制御部56は、ズーム操作環5又はズームスイッチ53が操作されたか否か、すなわち使用者によるズーム指示があったか否かを判定する。ズーム指示がない場合はステップS62での判定を繰り返し、ズーム指示があった場合はステップS63に進む。
ステップS63では、カメラ制御部56は、予めメモリ57にズーム指示に対応する照明条件が保存されているか否かを判定する。ズーム指示に対応する照明条件とは、例えば、カメラモードから顕微鏡モードに切り替わったときに照明ユニット13(LED発光体4)をONにしたり、低倍率のズーム指示がなされた場合に発光させるLED発光体4を制限して照明光量を小さくしたりするという条件である。このような照明条件が保存されていない場合は本制御処理を終了し、保存されている場合はステップS64に進む。
ステップS64では、カメラ制御部56は、照明制御部51を通じて、上記照明条件に従って照明ユニット13(LED発光体4)をONにしたり、照明光量を調節したりする。
そして、次のステップS65では、カメラ制御部56は、ステップS62で得られたズーム指示が顕微鏡モードでのズーム指示であるか否かを判定する。顕微鏡モードでのズーム指示でない場合は本制御処理を終了し、顕微鏡モードでのズーム指示である場合はステップS66に進む。
ステップS66では、カメラ制御部56は、LED選択スイッチ52からの選択指示があるか否かを判定する。選択指示がない場合は本制御処理を終了し、選択指示がある場合はステップS67に進む。
【0024】
ステップS67では、カメラ制御部56は、照明制御部51を通じて、LED選択スイッチ52からの選択指示に対応する色又は数のLED発光体4をONにする。そして、本制御処理を終了する。
図7には、鏡筒ユニット2の(a)カメラモードにおけるテレ端、(b)カメラモードにおけるワイド端、及び(c)顕微鏡モードでの最大倍率端での第1〜第4レンズユニットL1〜L4の位置関係を示している。
【0025】
カメラモードにおいては、ワイド端からテレ端までの間で第2〜第4レンズユニットL2〜L4が光軸方向に移動することでズームが行われる。また、第1レンズユニットL1が光軸方向に移動することにより焦点調節が行われる。この焦点調節は、ズーム操作環5を動かすことなく第1鏡筒ユニット21を不図示の把持部を介して前後に移動させることで行うことができる。これは顕微鏡モードにおいても同様である。
カメラモードでのズームでは、鏡筒ユニット2の光軸方向全長は変化しない。
顕微鏡モードにおいても、ワイド端(最小倍率端)と最大倍率端との間で第1〜第4レンズユニットL1〜L4が光軸方向に移動することでズームが行われる。ただし、顕微鏡モードでのズームでは、最小倍率端から最大倍率端に向かって鏡筒ユニット2が被写体側に伸びる。
本実施例では、ズーム操作環5もしくはズームスイッチ53の操作によってカメラモードと顕微鏡モードとの間の切り替えを行うことができる。したがって、カメラモードでの風景撮像や人物撮像等の通常撮像から、顕微鏡モードでの接写拡大撮像(マクロ撮像又は顕微鏡撮像)までを容易に行うことができる。
【0026】
図8には、(a)ズーム操作環5に形成されたカム溝5aと、(b)カム筒9の外周面に形成されたカム溝12aと、(c)カム筒9の内周面に形成されたカム溝12b〜12dの具体的な形状(カム曲線)を示している。
ズーム操作環5に形成されたカム溝5aには、フード14に設けられたカムフォロアが係合している。カム溝5aは、カメラモードのワイド端Wとテレ端Tの間ではフード14を光軸方向に移動させず、顕微鏡モードにおいて最小倍率端Wから最大倍率端Mに向かってフード14を被写体側に移動させる(ただし、最大倍率端Mの直前で一旦、被写体側とは反対側に若干移動させた後、被写体側に再び移動させる)ように形成されている。
カム筒9のカム溝12aには、前述したように第1鏡筒21に設けられたカムフォロア8aが係合している。カム溝12aは、カメラモードのワイド端Wとテレ端Tの間では第1鏡筒21(第1レンズユニットL1)を光軸方向に移動させず、顕微鏡モードにおいて最小倍率端Wから最大倍率端Mに向かって第1鏡筒21を被写体側に移動させるように形成されている。
カム筒9のカム溝12b〜12dにはそれぞれ、前述したように図1の第2鏡筒22、第3保持枠23及び第4保持枠24のカムフォロア8b〜8dが係合している。カム溝12b〜12dは、カメラモードのワイド端Wとテレ端Tの間及び顕微鏡モードにおける最小倍率端Wと最大倍率端Mとの間でこれら第2鏡筒22(第2レンズユニットL2)、第3保持枠23(第3レンズユニットL3)及び第4保持枠24(第4レンズユニットL4)を光軸方向に移動させるように形成されている。なお、第3および第4レンズユニットL3,L4用のカム溝とフォロワはそれぞれ二重に構成されている。また、それぞれのカム溝に対応するカムフォロワアの位置関係は、例えば、ワイド端Wでの位置関係から分かるように、回転方向に対して相対的にずれている。
【0027】
このように、カム溝は、カメラモードの延長上で顕微鏡モードの操作ができるよう連続している。また、第3および第4レンズユニットL3,L4用のカム溝を、ワイド端Wを中心として対称形状としている。このため、顕微鏡モードでは、第3および第4レンズユニットL3,L4を、ワイド端から、カメラモードでのテレ端への光軸上の移動方向と同じ方向(被写体方向)に移動させて倍率を高める。また、この動きに同期して、第1レンズユニットL1も光軸上を同じ方向に移動し、被写体に接近する。
なお、顕微鏡モードにおいて、ズーム操作環5を通じてズーム操作をした際、被写体とカメラ本体1(撮像素子3)との位置関係を保持したまま倍率を変更できるように、ズーム機構を利用してのレンズユニットの移動構成とすることも可能である。それにより、カメラ本体1を三脚等により固定した状態で拡大撮影ができる。
図9には、本実施例の鏡筒ユニット2のカメラモード及び顕微鏡モードでの撮像可能範囲(ズーム可能範囲)を示している。縦軸は被写体距離を示し、横軸は焦点距離及び倍率を示す。ハッチング領域は撮像可能範囲を示す。ただし、図9は撮像可能範囲を示す一例にすぎず、本発明のレンズ装置の撮像可能範囲はこれに限られない。
図に示すように、鏡筒ユニット2は、カメラモードにおいてワイド端からテレ端まで5倍の倍率変更が可能である。一方、顕微鏡モードにおいては、カメラモードよりも短い被写体距離での撮像が可能であるとともに、ワイド端で得られる0.1倍(最小倍率端)から3倍(最大倍率端)までの連続的な倍率変更が可能である。
また、本実施例では、顕微鏡モードにおける最大倍率端においても、被写体とレンズ前端との距離であるワークディスタンスWDがある程度広くとれる。しかも、顕微鏡モードでの焦点深度(被写界深度)をある程度深く確保している。これにより、最大倍率端においても立体物を容易に観察することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、カメラシステム(特に鏡筒ユニット2)を大型化することなく、顕微鏡モードでのズーム撮像を容易に行うことができる。特に、カメラモードから顕微鏡モードへの移行がシームレスで行うことができ、該移行のための操作が簡単である。
また、照明ユニット13が鏡筒ユニット2の前端(第1レンズユニットL1よりも被写体側)に配置されているので、照明ユニット13を複雑化、大型化したり消費電力を増加させたりすることなく、被写体を明るく照明しながら顕微鏡撮像を行うことができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
なお、本実施例では、撮像装置に対してレンズ装置が着脱される場合について説明するが、本発明は、レンズ装置が一体に設けられた撮像装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
通常撮像時にズームを行えるとともに、拡大撮像時にもズームを行えるレンズ装置及び撮像装置を提供できる。
【符号の説明】
【0029】
1 カメラ本体
2 鏡筒ユニット
3 撮像素子
4 LED発光体
5 ズーム操作環
9 カム筒
13 照明ユニット
14 フード
L1〜L4 レンズユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズユニットを含む撮影光学系と、前記複数のレンズユニットのうち少なくとも一部を光軸方向に移動させて前記撮影光学系の倍率を変更するズーム機構とを有するレンズ装置であって、
該レンズ装置は、前記倍率をテレ端とワイド端との間で変更する通常撮像モードと、該通常撮像モードよりも短い被写体距離で拡大撮像を行う拡大撮像モードとを有し、
前記ズーム機構は、前記拡大撮像モードにおいて、前記ワイド端から前記倍率を連続的に変更することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記拡大撮像モードにおいて、前記通常撮影モードでは移動しない被写体側のレンズユニットを光軸方向に移動させることで倍率を変化させることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置
【請求項3】
前記拡大撮像モードにおいて、被写体側のレンズユニットを光軸方向に、他のレンズユニットを移動させることなく移動させて焦点調節を行うことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置
【請求項4】
前記拡大撮像モードにおいて、前記ズーム機構は特定のレンズユニットを、前記通常撮影モードで倍率を高める移動方向と同じ光軸方向に、ワイド端から移動させて倍率を高めることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ装置
【請求項5】
前記撮影光学系よりも被写体側に設けられた、複数の発光体が前記撮影光学系の光軸回り方向に配置された照明ユニットを有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記通常撮像モードから前記拡大撮像モードへの切り替えに応じて前記照明ユニットを点灯させる制御手段を有することを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記拡大撮像モードにおける前記倍率に応じて前記照明ユニットの照明光量及び照明色のうち少なくとも一方を変更することを特徴とする請求項3に記載のレンズ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のレンズ装置と、
前記撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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