説明

レンズ駆動装置

【課題】付属ユニットを付加しても、光軸方向の寸法を必要最小限の寸法にとどめることのできるレンズ駆動装置を提供すること。
【解決手段】本形態の付属ユニット8においては、シャッタ板駆動機構60およびフィルタ板駆動機構70のステータ61、71を構成するのに、矩形枠状の積層コア体が用いられ、シャッタ板81および減光フィルタ86は、積層コア体より被写体側に配置されているため、付属ユニット8の撮像素子30側には、その中央部分に空間80が形成されている。従って、移動レンズ体20が至近距離位置に移動した際、小径の先端部210は、付属ユニット8の空間80内に入り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどに用いられるレンズ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの携帯機器に搭載される撮像装置では、レンズを備えた移動レンズ体と、この移動レンズ体をレンズの光軸に沿って直線的に磁気駆動するためのレンズ駆動機構とを備えたレンズ駆動装置が用いられている。
【0003】
このようなレンズ駆動装置としては、レンズ移動体と、レンズ移動体がをレンズ光軸方向に移動可能に搭載された固定体とを備え、レンズ移動体に駆動マグネットが設けられ、固定体に駆動コイルと2個の磁性片(ヨーク)が設けられているものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−37865号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレンズ駆動装置において、例えば、シャッタ機構などの付属ユニットを搭載すれば、デジタルカメラで撮像しようとした際の手ぶれを防止することができる。また、絞り機構などの付属ユニットを載すれば、太陽光が強い場合でも品位の高い画像を撮影することができるなど、機能を高めることができる。
【0005】
しかしながら、このような付属ユニットを被写体側に付加すると、移動レンズ体を被写体側の至近距離位置まで駆動した際の移動レンズ体と付属ユニットとの干渉を避ける必要がある。また、付属ユニットを被写体側とは反対側(撮像素子側)に配置すると、移動レンズ体を撮像素子側の無限遠位置まで駆動した際の移動レンズ体と付属ユニットとの干渉を避ける必要がある。それ故、付属ユニットを付加した場合、レンズ駆動装置の光軸方向の寸法は、付属ユニットの厚さ寸法と、付属ユニットと移動レンズ体の干渉を避けるための寸法との和に相当する寸法だけ、大型化してしまうという問題点がある。
【0006】
また、特許文献1に開示されたレンズ駆動装置では、移動体の位置(すなわちレンズの位置)を決めるポイントが2個しかなく、中間の位置決めが困難であるという問題がある。すなわち、レンズ移動体は、2個の磁性片のいずれか近い方の位置に保持されるようになっていることから、接写撮影時のレンズ位置と通常撮影時のレンズ位置との間の所望の位置にレンズを位置決めするのは困難である。所望の位置にレンズを位置決めすることが困難であると、以下のような状況で使用しようとすると、結果的に、ピント調整機能の更なる向上が図れない。
【0007】
例えば、カメラ付き携帯電話機を用いて自分を撮影(自己撮影)する場合がある。すなわち、カメラのレンズと被写体との距離が、友人や風景などを撮影するときほど離れていない一方で、バスの時刻表や花びらを撮影するときほど近接していない、という場合である。この場合において、従来のカメラ付き携帯電話機では、通常撮影時のレンズ位置で撮影を行っているが(すなわち通常撮影時のレンズ位置で代用しているが)、よりピントの合った綺麗な撮影画像を得るためには、通常撮影時のレンズ位置と接写撮影時のレンズ位置との間の所望の位置にレンズを位置決めすることが望まれる。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、付属ユニットを付加しても光軸方向の寸法を必要最小限の寸法にとどめることのできるレンズ駆動装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の課題は、さらに、所望の位置にレンズを停止させることができるレンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、レンズを備えた移動レンズ体と、該移動レンズ体がレンズ光軸に沿って移動可能に搭載された固定体と、前記移動レンズ体を前記レンズの光軸に沿って往復移動させるためのレンズ駆動機構とを備えたレンズ駆動装置において、前記レンズ駆動機構は、前記レンズの光軸方向と直交する方向に着磁されたレンズ駆動用マグネットと、該レンズ駆動用マグネットに前記レンズの光軸方向で対向するように配置されたレンズ駆動用コイルとを備え、前記レンズ駆動用マグネットおよび前記レンズ駆動用コイルのうちのいずれか一方は前記移動レンズ体側に設けられるとともに、他方は前記固定体側に設けられ、前記移動レンズ体に対して被写体側には、板状の光学部材、および当該光学部材を光路上に出現した位置と光路上から退避した位置との間で駆動する光学部材駆動機構を備えた付属ユニットが配置され、当該付属ユニットには、前記移動レンズ体が被写体側の至近距離位置側に移動した際、当該移動レンズ体の被写体側端部が入り込む空間を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、移動レンズ体が至近距離位置に移動した際、移動レンズ体の先端部分は付属ユニットの空間内に入り込むため、移動レンズ体に対して被写体側に付属ユニットを配置した場合でも、レンズ駆動装置の光軸方向における寸法が短くて済む。また、付属ユニットを移動レンズ体に対して光路の狭い被写体側に配置するため、光路が広い撮像素子側に付属ユニットを配置した場合と比較して光学部材として小さなものを用いることができ、レンズ駆動装置の小型化に適している。
【0012】
本発明において、前記光学部材駆動機構は、コアと、該コアに巻回されたコイルと、該コイルによって回転駆動されるロータマグネットとを備え、当該ロータマグネットの回転によって前記光学部材を駆動するように構成され、前記光学部材は、前記コアより被写体側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、コアの厚さを移動レンズ体が入り込む空間として有効利用できるので、レンズ駆動装置の光軸方向における寸法を短くできる。
【0013】
本発明において、前記付属ユニットは、例えば、少なくとも、前記光学部材としてシャッタ板、絞り板、色変換板、減光フィルタ板、赤外線フィルタ板(赤外線カットフィルタ板あるいは赤外線透過フィルタ)、および紫外線フィルタ板(紫外線カットフィルタ板あるいは紫外線透過フィルタ)から選ばれた少なくとも1つの光学部材を備えている。
【0014】
本発明において、前記付属ユニットは、少なくとも、前記光学部材としてシャッタ板、絞り板、色変換板、減光フィルタ板、赤外線フィルタ板(赤外線カットフィルタ板あるいは赤外線透過フィルタ)、および紫外線フィルタ板(紫外線カットフィルタ板あるいは紫外線透過フィルタ)から選ばれた2つの光学部材を備えている場合があり、この場合、前記光学部材駆動機構として、前記2つの光学部材のうちの一方の光学部材を駆動する第1の光学部材駆動機構と、他方の光学部材を駆動する第2の光学部品駆動機構とを備えている。
【0015】
この場合も、前記第1の光学部品駆動機構は、第1のコア、および該第1のコアの一部分に巻回された第1のコイルを備えた第1のステータと、該第1のステータによって回転駆動される第1のロータマグネットとを備えるとともに、当該第1のロータマグネットの回転によって前記一方の光学部品を駆動するように構成され、前記第2の光学部品駆動機構は、第2のコア、および該第2のコアの一部分に巻回された第2のコイルを備えた第2のステータと、該第2のステータによって回転駆動される第2のロータマグネットとを備えるとともに、当該第2のロータマグネットの回転によって前記他方の光学部品を駆動するように構成され、前記第1のコアと前記第2のコアとは一体のコア体として構成され、前記一方の光学部品および前記他方の光学部品はいずれも、前記コア体より被写体側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、コアの厚さを移動レンズ体が入り込む空間として有効利用できるので、レンズ駆動装置の光軸方向における寸法を短くできる。
【0016】
本発明において、前記レンズ駆動機構は、さらに、前記レンズ駆動用コイルに電流を供給して電磁力を発生させたときに当該電磁力に基づく前記移動レンズ体の移動を規制する規制手段を備えていることが好ましい。このように構成すると、移動レンズ体を所望の位置に停止させることができる。すなわち、マグネットから出た磁束がコイルと鎖交するような状態で、コイルに電流を供給すると電磁力が発生する。そして、コイルが移動レンズ体に設けられていれば、その電磁力自体が移動レンズ体に作用して、移動レンズ体がレンズの光軸方向に移動し始める。また、コイルが固定体に設けられていれば、その電磁力に対する反作用の力が移動レンズ体に作用して、移動レンズ体がレンズの光軸方向に移動し始める。このとき、上述した規制手段によって、移動レンズ体の移動を規制する力が発生するため、移動レンズ体を移動させようとする力と、移動レンズ体の移動を規制する力とが釣り合ったとき、移動レンズ体は停止する。従って、コイルに流す電流量と、規制手段によって移動レンズ体に働く力とを調整することで、移動レンズ体を所望の位置に停止させることができる。それ故、接写撮影時のレンズ位置と通常撮影時のレンズ位置との間の所望の位置にレンズを位置決めすることができ、例えば自己撮影をするときであっても綺麗な撮影画像を得ることができ、レンズ駆動装置のピント調整機能を向上させることができる。また、レンズ駆動装置の薄型化を可能にすることができる。
【0017】
ここで、「規制手段」とは、移動レンズ体の移動向きとは反対向きの力を発生させる手段をいい、その力は、移動レンズ体の移動量に応じて変化するものが好ましい。例えば、板バネ、コイルバネ、磁気バネ、ゴム等の弾性部材であってもよいし、また、固定体にN極(S極)の磁石を設置し、移動レンズ体にN極(S極)の磁石を設置して、両者の磁気的反発力を利用したものであってもよいし、その種類の如何は問わない。また、「電磁力を発生させたとき」とあるが、これは、「電磁力を発生させていないとき」を排除する趣旨ではない。すなわち、上述した「規制手段」は、コイルに電流を供給せずに電磁力を発生させていないときに、移動レンズ体の移動を規制していても(何らかの弾性力が働いていても)構わない。
【0018】
本発明において、前記コイルについては、レンズの光軸方向に前記マグネットが介在するように複数配置されている構成を採用することができる。このように構成すると、レンズの光軸方向のうち一方向に出たマグネットの磁束と、その一方向とは逆方向に出たマグネットの磁束と、の双方の磁束を、複数のコイルによって電磁力に変換することができる。従って、効果的に移動レンズ体の推力を発生させることができ、ひいては、効率的に移動レンズ体を所望の位置に停止させることができる。
【0019】
本発明において、前記マグネットについては、レンズの光軸方向に前記コイルが介在するように複数配置されている構成を採用することができる。このように構成すると、1個のマグネットと複数個のコイルからなる方式に比べ、コイル周辺の磁束密度を高くすることができ、例えば推力を発生させるコイルが1個に減ったとしても同じ推力が出せるとともに、磁気回路の形状の扁平化も可能になる。従って、レンズ駆動装置の薄型化または小型化を実現しつつ、移動レンズ体を所望の位置に停止させることができる。また、例えばマグネットの間に介在するコイルを1個にすることで、コイル間の結線が不要になり、作業性を向上させることができる。
【0020】
本発明において、前記マグネットは、レンズの光軸方向に前記コイルと対向するように1個配置されている構成を採用してもよい。この場合、マグネットと対向するコイルを1個にすることによって、すなわち、マグネット1個、コイル1個の組み合わせにすることによって、レンズ駆動装置の更なる薄型化または小型化を図ることができる。
【0021】
本発明において、前記規制手段として、例えば、前記移動レンズ体をレンズの光軸方向に付勢する弾性部材を用いることができる。このように構成すると、移動レンズ体の移動量とコイルに流す電流との間のリニアリティを向上させることができる。すなわち、一般的に、板バネ等の弾性部材は、弾性力(応力)と変位量(歪み量)との間には線形関係が成立していることから、規制手段として弾性部材を採用した場合、上述したリニアリティを向上させることができる。
【0022】
本発明において、前記弾性部材は、前記移動レンズ体をレンズの光軸方向のうち一方向に付勢する第1弾性部材と、当該一方向とは逆方向に付勢する第2弾性部材と、から構成されている構成を採用することができる。このように構成すると、移動レンズ体の移動を規制する力を強めることができる。従って、移動レンズ体を所定の位置で停止させたとき、移動レンズ体を移動させようとする力と、移動レンズ体の移動を規制する力との双方が大きくなり、その位置に、より安定に停止させることができる。それ故、例えば、携帯電話機が振り回され、レンズの光軸方向に遠心力等の他の力が働いたとしても、より安定に停止させることができる。また、弾性部材を2個にすることで、遠心力等の他の力の悪影響を相対的に低減することができるので、上述したリニアリティの更なる向上を図ることができる。なお、弾性部材を2個にすることで、弾性部材が1個のときと比べて、弾性部材の経時的な劣化を防ぐことも可能である。
【0023】
本発明において、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材は、前記コイルを通電させる金属製の弾性部材であることが好ましい。このように構成すると、第1弾性部材と第2弾性部材を、コイルの通電用配線として機能させることができる。従って、レンズ駆動装置の電気回路構成(回路配線)を容易にすることができ、また、レンズ駆動装置全体の小型化に資することもできる。
【0024】
本発明においては、さらに、前記マグネットから出た磁束の向きを変えるヨークを備え、前記ヨークは、レンズの光軸方向の長さが、少なくとも前記コイルまたは前記マグネットの対向面間距離よりも長くなるように形成されているとともに、前記移動レンズ体および/または前記固定体に設けられている構成を採用することができる。このように構成すると、マグネットとコイル間で磁路から漏れ出る漏れ磁束を少なくすることができ、ひいては移動レンズ体の移動量とコイルに流す電流との間のリニアリティを更に向上させることができる。
【0025】
本発明において、前記移動レンズ体および前記固定体のうちのいずれか一方に、前記マグネットおよび前記ヨークが設けられている構成を採用することができる。このように構成すると、マグネットとヨークの相対的位置関係を不変とすることができ、マグネットとヨークとの間に働く吸引力に起因した悪影響を防ぐことができる。すなわち、ヨークは磁性体であることから、マグネットが付近にあるとヨークは磁化し、両者の間にはラジアル方向の吸引力が働く。そして、このような状態でマグネットとヨークとの相対的位置関係が変わると(例えばヨークが設けられた固定体に対し、マグネットが設けられた移動レンズ体が光軸方向に移動すると)、レンズ駆動装置は、この吸引力に起因した悪影響を受けることになる。一方、本発明のように、マグネットとヨークが共に移動レンズ体に設けられているか、或いは、共に固定体に設けられている、とすることで、両者は一体的に移動或いは不動となるので、両者の相対的位置関係を不変とすることができ、ひいてはマグネットとヨークの吸引力に起因した悪影響を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、移動レンズ体が至近距離位置に移動した際、移動レンズ体の先端部分は付属ユニットの空間内に入り込むため、移動レンズ体に対して被写体側に付属ユニットを配置した場合でも、レンズ駆動装置の光軸方向における寸法が短くて済む。また、付属ユニットを移動レンズ体に対して光路の狭い被写体側に配置するため、光路が広い撮像素子側に付属ユニットをを配置した場合と比較して、光学部材として小さなものを用いることができ、レンズ駆動装置の小型化に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したレンズ駆動装置を説明する。なお、以下に説明するレンズ駆動装置は、カメラ付き携帯電話機の他にも、様々な電子機器に取り付けることが可能である。例えば、PHS、PDA、バーコードリーダ、薄型のデジタルカメラ、監視カメラ、車の背後確認用カメラ、光学的認証機能を有するドア等に用いることができる。
【0028】
(全体構成)
図1および図2は、本発明を適用したレンズ駆動装置の要部をレンズ光軸に沿って切断したときの断面図、およびレンズ駆動装置本体の分解斜視図である。図3は、図1に示すレンズ駆動装置を図1のY−Y′線に沿って切断したときの平面断面図である。
【0029】
図1および図2において、本形態のレンズ駆動装置1は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話機などの薄型カメラにおいて、3枚のレンズ26、27、28をレンズ光軸Xに沿って被写体(物体側)に近づくA方向(前側)、および被写体とは反対側(像側)に近づくB方向(後側)の双方向に移動させるためのものであり、レンズ駆動装置本体2は、概ね、3枚のレンズ26、27、28および固定絞り29を円筒状のレンズホルダ24上に一体に保持した移動レンズ体20と、この移動レンズ体20をレンズ光軸Xに沿って移動させるレンズ駆動機構5と、レンズ駆動機構5および移動レンズ体20が搭載された固定体10とを有している。また、移動レンズ体20は、レンズホルダ24の外周面に固着されたスリーブ15を備えている。
【0030】
本形態において、固定体10は、像側で撮像素子(図示せず)を保持するためのベース19と、被写体側に位置するケース11とを備えており、ケース11の前側の中央には、被写体からの反射光をレンズ26に取り込むための円形の入射窓18が形成されている。
【0031】
(レンズ駆動機構5の構成)
ケース11とベース19は嵌め込み可能であって、その間には、レンズ駆動機構5に用いた円筒状のヨーク16が固定されている。ヨーク16の内周面にはリング状のレンズ駆動用マグネット17が固着され、レンズ駆動用マグネット17は、ヨーク16の内周面から内側に突出するようにヨーク16に固着されている。ヨーク16は、例えば鋼板などの強磁性体からなる。
【0032】
スリーブ15の外周において、被写体側(前側)にはリング状の第1のレンズ駆動用コイル14が固着され、撮像素子側(後側)にはリング状の第2のレンズ駆動用コイル14′が固着されている。ここで、第1のレンズ駆動用コイル14は、スリーブ15の外周側においてレンズ駆動用マグネット17よりも前側に位置し、レンズ光軸Xの方向において第1のレンズ駆動用コイル14との間にレンズ駆動用マグネット17が介在するように第2のレンズ駆動用コイル14′が配置されている。従って、第1のレンズ駆動用コイル14の後端面とレンズ駆動用マグネット17の前端面とが対向し、第2のレンズ駆動用コイル14′の前端面とレンズ駆動用マグネット17の後端面とが対向している。なお、スリーブ15に固着された第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′は、移動レンズ体20とともに、ヨーク16に対してレンズ光軸Xの方向に相対移動が可能となっている。
【0033】
このように構成したレンズ駆動装置1において、レンズ駆動用マグネット17は、レンズ光軸Xの方向と直交する方向に着磁されており、レンズ駆動用マグネット17のN極から出た磁束は、例えば、スリーブ15、第1のレンズ駆動用コイル14、ヨーク16を通過して、再びレンズ駆動用マグネット17に戻ってくる。また、レンズ駆動用マグネット17のN極から出た磁束は、例えば、スリーブ15、第2のレンズ駆動用コイル14′、ヨーク16を通過して、再びレンズ駆動用マグネット17に戻ってくる。従って、第1のレンズ駆動用コイル14、第2のレンズ駆動用コイル14′、ヨーク16、スリーブ15といった部材によって磁気回路(磁路)が形成されることになる。このため、スリーブ15の材料としては、磁性材料を用いることが好ましい。なお、スリーブ15については、磁気回路(磁路)を構成する材料から除くことも可能である。
【0034】
第1のレンズ駆動用コイル14と第2のレンズ駆動用コイル14′の対向面間距離は、レンズ駆動用マグネット17のレンズ光軸Xの方向の厚さよりも大きく、レンズ駆動用マグネット17と第1のレンズ駆動用コイル14との間、およびレンズ駆動用マグネット17と第2のレンズ駆動用コイル14′との間にはレンズ光軸Xの方向で間隙があり、この間隙の範囲内で、レンズ移動体20が、レンズ光軸Xの方向に移動することができる。
【0035】
また、ヨーク16は、レンズ光軸Xの方向の長さが、第1のレンズ駆動用コイル14と第2のレンズ駆動用コイル14′の対向面間距離よりも長くなるように形成されている。このため、レンズ駆動用マグネット17と第1のレンズ駆動用コイル14との間に構成される磁路、およびレンズ駆動用マグネット17と第2のレンズ駆動用コイル14′との間に構成される磁路からの漏れ磁束を少なくすることができ、スリーブ15の移動量と、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に流す電流との間のリニアリティを向上させることができる。
【0036】
また、本形態のレンズ駆動装置1において、レンズ駆動機構5には、図1、図2および図3に示すように、スリーブ15の移動を規制する第1の板バネ13および第2の板バネ13′(規制手段)が設けられている。これらの板バネ13、13′のうち、板バネ13′について、図3を用いて詳細に説明する。図3に示すように、板バネ13′はベース19に保持されており、ベース19に形成された回転防止溝19aと係合している。これにより、板バネ13′の回転が阻止されている。
【0037】
板バネ13′は、電流を流す金属製のバネであって、最も内側の円周部分13′aにスリーブ15の後端が載置されるようになっている。また、円周部分13′aには、第2のレンズ駆動用コイル14′を通電するための端子13′bが3箇所形成されており、端子13′bを通じて第2のレンズ駆動用コイル14′に電流を供給することができる。
【0038】
なお、詳細な説明は省略するが、板バネ13についても板バネ13′と同様に、第1のレンズ駆動用コイル14を通電するための端子が形成されており、その端子を通じて第1のレンズ駆動用コイル14に電流を流すことができる。これにより、板バネ13および板バネ13′を、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′の通電用配線として機能させることができ、ひいてはレンズ駆動装置1の電気回路構成(回路配線)を容易にし、レンズ駆動装置1全体の小型化を図ることができる。
【0039】
再び図1において、本形態では、スリーブ15の外周面には、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′の通電用配線140を設けている。これにより、第1のレンズ駆動用コイル14に流れる電流と第2のレンズ駆動用コイル14′に流れる電流とを等しくすることができ、電流制御が容易となる。
【0040】
このような構成からなるレンズ駆動装置1によれば、板バネ13、13′による弾性力を利用して、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′が固着されたスリーブ15を所望の位置に停止させることができる。この停止動作については、後述する。
【0041】
(組み立て方法)
次に、レンズ駆動装置1の製造方法のうち、レンズ駆動装置本体2の組み立て方法について説明する。なお、ここで説明する方法は、後述するレンズ駆動装置でも同様に採用することができる。
【0042】
本形態では、まず、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′は、予めスリーブ15の外周に固着させておくとともに、レンズ26、27,28を有するレンズホルダ24は、予めスリーブ15の内部に組み込んでおく。また、レンズ駆動用マグネット17は、予めヨーク16の内周面に固着させておく。なお、レンズ駆動用マグネット17およびヨーク16は、レンズ光軸Xの方向に割れ目が入っており、2個に分割可能となっている。
【0043】
このような構成の部材を用いてレンズ駆動装置本体2を組み立てる際には、まず、板バネ13′を、ベース19に形成された回転防止溝19aと係合するように、ベース19に取り付ける。次に、レンズ駆動用マグネット17およびヨーク16を2個に分割し、スリーブ15の外周に固着された第1のレンズ駆動用コイル14と第2のレンズ駆動用コイル14′との間にレンズ駆動用マグネット17が介在するようにして、レンズ駆動用マグネット17およびヨーク16を再び一体化(固着)させる。次に、スリーブ15が内部に組み込まれたヨーク16をベース19に固定する。このとき、スリーブ15の後端は、板バネ13′の最も内側の円周部分13′aに載置される。次に、板バネ13を、その最も内側の円周部分がスリーブ15の前端に当接するように載置した後、ケース11をベース19と係合させる。このようにして、図1に示すレンズ駆動装置1を組み立てることができる。なお、板バネ13および板バネ13′には、ラジアル方向外側に舌状のものが形成されており、これは、コイルへの給電部となる。
【0044】
(停止動作)
図4は、レンズ駆動装置1において、レンズ移動体20が所望の位置で停止動作する様子を示す説明図である。なお、図4(a)には、図1において、レンズ光軸Xより右半分に着目したときの機械構成を示してあり、レンズ移動体20のうち、スリーブ15のみを図示してある。また、レンズ駆動用マグネット17は、ラジアル方向内向きがN極、ラジアル方向外向きがS極となるように着磁されている。
【0045】
図4(a)において、レンズ駆動用マグネット17のN極から出た磁束は、スリーブ15→第1のレンズ駆動用コイル14→ヨーク16の順番で通過する(図4(b)の矢印参照)。なお、漏れ磁束を考慮すれば、レンズ駆動用マグネット17のN極から出た磁束は、第1のレンズ駆動用コイル14だけを通過して戻ってくるものもある。また、レンズ駆動用マグネット17のN極から出た磁束は、スリーブ15→第2のレンズ駆動用コイル14′→ヨーク16の順番で通過する(図4(b)の矢印参照)。なお、漏れ磁束を考慮すれば、レンズ駆動用マグネット17のN極から出た磁束は、第2のレンズ駆動用コイル14′だけを通過して戻ってくるものもある。従って、第1のレンズ駆動用コイル14、第2のレンズ駆動用コイル14′、ヨーク16、スリーブ15といった部材によって、磁気回路(磁路)が形成される。
【0046】
このような状態において、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に同方向の電流を流す。本実施形態では、図4(c)に示すように、紙面に向かって「奥側」から「手前側」へと電流を流す。その結果、磁界の中におかれた通電中の第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′は、それぞれ上向き(前側)の電磁力FHを受けることになる(図4(c)の矢印参照)。これにより、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′が固着されたスリーブ15は、被写体側(前側)に移動し始めることになる。なお、本実施形態では、上述したように、スリーブ15に通電用配線140を設けており、第1のレンズ駆動用コイル14に流れる電流と第2のレンズ駆動用コイル14′に流れる電流とを等しくしているので、第1のレンズ駆動用コイル14と第2のレンズ駆動用コイル14′には、ほぼ等しい電磁力FHが働くことになる。また、レンズ駆動装置1の大きさは大変小さいため(例えば、外径略10mm×高さ略5mm)、第1のレンズ駆動用コイル14を通過する磁束と第2のレンズ駆動用コイル14′を通過する磁束とは、ほぼ等しいものと考える。
【0047】
このとき、板バネ13とスリーブ15の前端との間、および板バネ13′とスリーブ15の後端との間には、それぞれスリーブ15の移動を規制する力(弾性力FS1、弾性力FS2)が発生する(図4(d)の矢印参照)。このため、スリーブ15を前側に移動させようとする電磁力FH+FHと、スリーブ15の移動を規制する弾性力FS1+FS2とが釣り合ったとき、スリーブ15は停止する。このようにして、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に流す電流量と、板バネ13および板バネ13′によってスリーブ15に働く弾性力とを調整することで、スリーブ15を所望の位置に停止させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、弾性力(応力)と変位量(歪み量)との間に線形関係が成立する板バネ13および板バネ13′を用いていることから、スリーブ15の移動量と第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に流す電流との間のリニアリティを向上させることができる。また、板バネ13と板バネ13′という2個の弾性部材を用いていることから、スリーブ15が停止したときにレンズ光軸Xの方向に大きな釣り合いの力が加わることになり、レンズ光軸Xの方向に遠心力等の他の力が働いたとしても、より安定にスリーブ15を停止させることができる。更に、レンズ駆動装置1では、スリーブ15を停止させるのに、衝突材(緩衝材)等に衝突させて停止させるのではなく、電磁力と弾性力との釣り合いを利用して停止させることとしているので、衝突音の発生を防ぐことも可能である。
【0049】
(付属ユニットの構成)
図5、図6および図7はそれぞれ、本形態のレンズ駆動装置に用いた付属ユニットを被写体側からみたときの平面図、付属ユニットを被写体側からみたときの斜視図、および付属ユニットを撮像素子側からみたときの斜視図である。
【0050】
図4(c)、(d)に示す状態で第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に給電すると、移動レンズ体20はレンズ光軸Xに沿って移動し、オートフォーカス動作が行われる。図1には、一点鎖線L1によって、移動レンズ体20が最も被写体側の至近距離位置に移動した様子を示し、二点鎖線L2によって、移動レンズ体20が最も撮像素子の側の無限遠位置に移動した様子を示してある。図1からわかるように、移動レンズ体20が至近距離位置に移動した状態で、移動レンズ体20の被写体側の小径の先端部210は、ケース11の上面から突出することになる。このような動作に対応して、本形態では、図1、図5〜図8を参照して説明する付属ユニット(付属装置)が固定体10に対して被写体側に配置されている。
【0051】
図1、図5〜図8に示すように、本形態のレンズ駆動装置1において、レンズ移動レンズ体20に対して被写体側(レンズ駆動装置本体2やケース11に対して被写体側)には、シャッタ板81(板状の光学部材)および減光フィルタ板86(板状の光学部材)を備えた付属ユニット8が積層されており、この付属ユニット8において被写体側には、光路を確保するための開口850が形成されたカバー85が配置されている。ここで、シャッタ板81は1枚の平板から構成され、減光フィルタ板86は、1枚の平板を2箇所で90°に折り曲げた構造を有している。
【0052】
付属ユニット8において、シャッタ板81に対しては、シャッタ板81に連結された回転軸83をレンズ光軸Xに平行な軸線L6周りに回転させてシャッタ板81を光路に出現した位置と光路から退避した位置とに駆動するシャッタ板駆動機構60(第1の光学部材駆動機構)が構成されている。シャッタ板駆動機構60は、コア板91およびコア板91に巻回されたコイル82を備えたステータ61と、このステータ61によって回転駆動されるロータマグネット84とを備えており、ロータマグネット84は回転軸83に固着されている。ここで、シャッタ板81は、シャッタ板駆動機構60より被写体側に配置されている。なお、ロータマグネット84は、周方向にN極とS極が形成されている。従って、コイル82に対する通電を制御すると、シャッタ板81を回転軸83の軸線L6周りに回転させることができ、シャッタ板81を光路に出現した状態と、光路から退避した位置とに切り換えることができる。
【0053】
また、付属ユニット8において、減光フィルタ板86に対しては、減光フィルタ板86が連結された回転軸88をレンズ光軸Xに平行な軸線L7周りに回転させて減光フィルタ板86を光路に出現した位置と光路から退避した位置とに駆動するフィルタ板駆動機構70(第2の光学部材駆動機構)が構成されている。フィルタ板駆動機構70は、コア板92およびコア板92に巻回されたコイル87を備えたステータ71と、このステータ71によって回転駆動されるロータマグネット89とを備えており、ロータマグネット89は回転軸88に固着されている。ここで、減光フィルタ板86は、フィルタ板駆動機構70より被写体側に配置されている。なお、ロータマグネット89は、周方向にN極とS極が形成されている。従って、コイル87に対する通電を制御すると、減光フィルタ板86を回転軸88の軸線L7周りに回転させることができ、減光フィルタ板86を光路に出現した状態と、光路から退避した位置とに切り換えることができる。
【0054】
このようなシャッタ板駆動機構60およびフィルタ板駆動機構70において、本形態では、ケース11の上面に平伏した状態に配置された地板90の上層側に5枚のコア板95、96、97、99、99を積層した矩形枠状の積層コア体94が用いられており、この積層コア体94において、コア板95、96、97、99、99は各々、所定のパターンで分割されている。また、地板90および5枚のコア板95、96、97、99、99は、図5および図6に示すように、磁性材料からなる4本のボルト71、72、73、74で連結されている。
【0055】
さらに本形態では、シャッタ板駆動機構60では、積層コア体94の上から3枚目のコア板97の一部分が、コイル82を巻回したコア板91として利用され、矢印L60で示す磁路が構成されている。また、フィルタ板駆動機構70でも、積層コア体94の上から3枚目のコア板97の一部分がコイル87を巻回したコア板92として利用され、矢印70で示す磁路が構成されている。
【0056】
(本形態の主な効果)
図8(a)、(b)、(c)は、本形態の効果を説明するための説明図である。以上説明したように、本形態の付属ユニット8においては、シャッタ板駆動機構60およびフィルタ板駆動機構70のステータ61、71を構成するのに、ケース11の被写体側の面に平伏した姿勢で配置された矩形枠状の積層コア体94が用いられている。また、シャッタ板81および減光フィルタ86は、積層コア体94より被写体側に配置されている。このため、付属ユニット8の撮像素子30側には、その中央部分に空間80が形成されている。
【0057】
このため、本形態のレンズ駆動装置1では、図1および図8(a)に示すように、移動レンズ体20が至近距離位置に移動した際、被写体側の小径の先端部210は、付属ユニット8の空間80内に入り込む。このため、本形態のレンズ駆動装置1では、レンズ駆動装置本体2の被写体側に付属ユニット8を重ねて機能を高めた場合でも、レンズ駆動装置1の光軸方向における寸法が短くて済む。
【0058】
また、本形態では、付属ユニット8をレンズ駆動装置本体2に対して被写体側に配置したため、シャッタ板81および減光フィルタ86としてサイズの小さなものを用いることができる。すなわち、本形態では、図8(b)に示すように、固定絞り29からみたとき、光路が狭い被写体側に付属ユニット8(シャッタ板81および減光フィルタ86)を配置したため、図8(c)に示すように、光路が広い撮像素子30側に付属ユニット8(シャッタ板および減光フィルタ)を配置した場合と比較して、シャッタ板81および減光フィルタ86として外径が小さなものを用いることができ、レンズ駆動装置1の小型化に適している。
【0059】
(付属ユニットの別の実施の形態)
上記形態では、付属ユニット8にシャッタ板81および減光フィルタ板86を配置した例であったが、このような板状の光学部材として、シャッタ板81や減光フィルタ板86に代えて、絞り板や色変換板、赤外線フィルタ板(赤外線カットフィルタ板あるいは赤外線透過フィルタ)、紫外線フィルタ板(紫外線カットフィルタ板あるいは紫外線透過フィルタ)を付属ユニットに搭載したレンズ駆動装置に本発明を適用してもよい。コアに付いては積層構造を取らない一体構造のコアでも良い。
【0060】
また、上記形態では、付属ユニット8に2枚の光学部材(シャッタ板81および減光フィルタ板86)を配置した例であったが、いずれか1枚の光学部材を配置した場合に本発明を適用してもよい。
【0061】
さらにまた、上記形態では、オートフォーカス機能を有するレンズ駆動装置に本発明を適用した例を説明したが、オートフォーカス機能に代えてズーム機能を有するレンズ駆動装置あるいは、オートフォーカス機能およびズーム機能の双方を有するレンズ駆動装置に本発明を適用してもよい。
【0062】
[レンズ駆動機構の別の実施の形態]
本発明に係るレンズ駆動装置1では、図1〜図4を参照して説明したレンズ駆動機構5に代えて、以下の構成を採用してもよい。
【0063】
(別の実施の形態1)
図9は、本発明の別の実施の形態1に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。図9において、レンズ駆動装置1Aは、スリーブ15の移動を規制するものとして、コイルバネ21と、コイルバネ21よりも長さが短いコイルバネ21′とを採用している。このように、図1〜図4に示すレンズ駆動装置1で用いた板バネ13、13′を、他の弾性部材(コイルバネ21およびコイルバネ21′)に代えた場合であっても、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に流す電流量を調整することで、コイルバネ21とコイルバネ21′に適当な弾性力を発生させ、スリーブ15に取り付けられたレンズ26,27、28の位置を所望の位置に停止制御することができる。なお、コイルバネ21とコイルバネ21′を通電用配線として用いることも可能である。また、本実施形態では、コイルバネ21′の長さをコイルバネ21の長さよりも短くしているが、これは、スリーブ15の基準位置が後ろ側にあるからである。例えば、スリーブ15の基準位置が前側にある場合には、コイルバネ21の方が短くなる。勿論、スリーブ15の基準位置が中央にある場合には、両者は同じ長さとなる。
【0064】
(別の実施の形態2)
図10は、本発明の別の実施の形態2に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。図10(a)において、レンズ駆動装置1Bは、ケース11とベース19によって円筒状の中ケース12が固定されている。そして、この中ケース12の内周面から内側に突出するようにレンズ駆動用マグネット17が固着されるとともに、このレンズ駆動用マグネット17にヨーク16が固着されている。このように、ヨーク16の位置を、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′よりもラジアル方向内側に配置してもよい。勿論、図10(b)に示すように、中ケース12をヨーク16に置き換えて、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に対してラジアル方向外側とラジアル方向内側の両側にヨーク16を配置してもよい。これにより、レンズ駆動用マグネット17と、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′との間で磁路から漏れ出る漏れ磁束をより少なくすることができ、スリーブ15の移動量と、第1のレンズ駆動用コイル14及び第2のレンズ駆動用コイル14′に流す電流と、の間のリニアリティを向上させることができる。
【0065】
なお、図10(b)においては、ラジアル方向内側の(レンズ駆動用マグネット17のN極に固着された)ヨーク16の長さの方が、ラジアル方向外側の(レンズ駆動用マグネット17のS極に固着された)ヨーク16の長さよりも短くなっているが、本発明はこれに限られず、例えばラジアル方向内側の(レンズ駆動用マグネット17のN極に固着された)ヨーク16の長さの方が長くなるようにしてもよい。勿論、これらが同じ長さであっても構わない。ただし、上述したように、漏れ磁束を考慮すれば、少なくとも第1のレンズ駆動用コイル14と第2のレンズ駆動用コイル14′の対向面間距離よりも長くなるように形成されていることが望ましい。
【0066】
また、上記形態のレンズ駆動装置のいずれにおいても、移動レンズ体20および固定体10のいずれか一方に、レンズ駆動用マグネット17およびヨーク16の両方が設けられている。従って、移動レンズ体20が固定体10に対して相対的に移動したとしても、レンズ駆動用マグネット17とヨーク16の相対的位置関係は不変であり、レンズ駆動用マグネット17とヨーク16との間に働くラジアル方向の吸引力に起因した悪影響を防ぐことができる。
【0067】
(別の実施の形態3)
なお、本発明は、レンズ駆動用マグネット17とヨーク16の相対的位置関係が不変となる場合だけに限定されるものではない。例えば、図11に示すレンズ駆動装置1Cを考えることも可能である。
【0068】
図11は、本発明の別の実施の形態3に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。図11(a)では、スリーブ15に、レンズ駆動用マグネット17を固着するとともに、ケース11とベース19によって固定されたヨーク16に、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′が固着されている。このような構成からなるレンズ駆動装置1Cは、上述したように、例えばヨーク16が固着された固定体10に対し、レンズ駆動用マグネット17が固着された移動レンズ体20がレンズ光軸Xの方向に移動すると、レンズ駆動用マグネット17とヨーク16との間に働くラジアル方向の吸引力に起因した悪影響を受けてしまう一方で、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′が移動レンズ体20ではなく固定体10の方に固着されているため、通電用の配線が複雑にならなくて済む、というメリットがある。また、図11(a)では、ヨーク16は、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に対してラジアル方向外側にのみ設けているが、勿論、ラジアル方向外側とラジアル方向内側の両側に配置してもよい(図11(b)参照)。なお、レンズ駆動装置1Cでは、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′がヨーク16に固着されていることから、スリーブ15には、第1のレンズ駆動用コイル14および第2のレンズ駆動用コイル14′に働く電磁力に対する反作用の力が作用し、スリーブ15をレンズ光軸Xの方向に移動させることができる。
【0069】
(別の実施の形態4)
次に、レンズ駆動装置の他の形態として、第2のレンズ駆動用コイル14′を除去した場合について詳述する。すなわち、第1のレンズ駆動用コイル14、ヨーク16、スリーブ15といった部材によって磁気回路が形成される場合について詳述する。図12および図13は、本発明の別の実施の形態4に係るレンズ駆動装置の要部をレンズ光軸に沿って切断したときの断面図、およびレンズ駆動装置の分解斜視図である。図14は、レンズ駆動装置において、スリーブ15が所望の位置で停止動作する様子を説明するための説明図である。なお、図14(a)は、図12において、レンズ光軸Xより右半分に着目したときの機械構成を示している。
【0070】
図12および図13に示すように、レンズ駆動装置1Dは、レンズ駆動装置1(図1参照)と異なり、第2のレンズ駆動用コイル14′を備えていない。このようなレンズ駆動装置1Dは、第1のレンズ駆動用コイル14のみをスリーブ15の外周に固着させることによって、簡易に製造することができる。図14(a)、(b)において、レンズ駆動装置1Dは、図4に示すレンズ駆動装置1の停止動作と同様の動作を行う。すなわち、レンズ駆動用マグネット17のN極から出た磁束は、スリーブ15→第1のレンズ駆動用コイル14→ヨーク16の順番で通過する(図14(a)→図14(b))。そして、第1のレンズ駆動用コイル14に紙面の「奥側」から「手前側」へと電流を流すと、磁界の中におかれた通電中の第1のレンズ駆動用コイル14は、上向き(前側)の電磁力FHを受けることになる(図14(c)の矢印参照)。一方で、板バネ13とスリーブ15の前端との間、板バネ13′とスリーブ15の後端との間には、それぞれスリーブ15の移動を規制する力(弾性力FS1、弾性力FS2)が発生する(図14(d)の矢印参照)。そして、スリーブ15を前側に移動させようとする電磁力FHと、スリーブ15の移動を規制する弾性力FS1+FS2とが釣り合ったとき、スリーブ15は停止する。このようにして、第1のレンズ駆動用コイル14に流す電流量と、板バネ13及び板バネ13′によってスリーブ15に働く弾性力とを調整することで、スリーブ15を所望の位置に停止させることができる。また、レンズ駆動装置1Dは、電流を流すコイルは第1のレンズ駆動用コイル14のみとしているので、装置全体の薄型化および小型化を図ることができる。
【0071】
(別の実施の形態5)
図15は、本発明の別の実施の形態6に係るレンズ駆動装置1Eの機械構成の概略を示す図である。図15に示すレンズ駆動装置1Eに示すように、第1のレンズ駆動用コイル14を、レンズ駆動用マグネット17と比べて板バネ13′側に設置して、スリーブ15を撮像素子側(後側)に移動させることも可能である。
【0072】
(別の実施の形態6)
図16は、本発明の別の実施の形態6に係るレンズ駆動装置1Fの機械構成の概略を示す図である。図16(a)に示すレンズ駆動装置1Fは、第5の実施の形態に係るレンズ駆動装置1D(図14(a)参照)と同様の部品を用いるが、レンズ駆動用マグネット17がスリーブ15に固着されていて、第1のレンズ駆動用コイル14がヨーク16に固着している。このように、レンズ駆動用マグネット17と第1のレンズ駆動用コイル14の配置関係を交換しても構わない。勿論、図16(b)に示すように、図15と同様に、スリーブ15をカメラボディの後ろ側に移動させるようにしても構わない。
【0073】
(別の実施の形態7)
図17は、本発明の別の実施の形態7に係るレンズ駆動装置1Gの機械構成の概略を示す図である。図17に示すレンズ駆動装置1Gは、第5の実施の形態に係るレンズ駆動装置1Dのレンズ駆動用マグネット17のN極近傍に、ヨーク16を設けている。このように、レンズ駆動装置1Bを用いて説明したように(図10(b)参照)、レンズ駆動装置1Gにおいても、レンズ駆動用マグネット17がヨーク16によって挟まれるような構成となっていてもよい。
【0074】
(別の実施の形態8)
次に、レンズ駆動装置の他の別の実施の形態として、図14(a)に示すレンズ駆動装置1Dをベースとして、レンズ駆動用マグネット17だけでなく、レンズ駆動用マグネット17とは別個のレンズ駆動用マグネット17′を設けたレンズ駆動装置1Hについて説明する。
【0075】
図18は、本発明の別の実施の形態8に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。図18(a)に示すように、レンズ駆動装置1Hは、2個のレンズ駆動用マグネット17、17′が、ヨーク16に固着されて、第1のレンズ駆動用コイル14を挟み込むように配置されている。なお、図18(b)に示すように、2個のレンズ駆動用マグネット17、17′が、スリーブ15のラジアル方向外側に固着されていて、第1のレンズ駆動用コイル14を挟み込むように配置されていてもよい。
【0076】
このように、レンズ駆動装置1Hでは、1個のマグネットと複数個のコイルからなる方式(図1参照)と比べて、コイル周辺の磁束密度を高くすることができる。そのため、たとえ推力を発生させるコイルが1個に減ったとしても図1に示す方式と同様の推力を得ることができ、ひいては磁気回路の形状の扁平化を可能にしつつ、移動レンズ体を所望の位置に停止させることができる。また、コイルを1個(第1のレンズ駆動用コイル14のみ)にしているので、コイル間の結線が不要になり、作業性を向上させることができる。
【0077】
(その他の別の実施の形態)
図19は、別の実施の形態4〜8において、第1のレンズ駆動用コイル14とレンズ駆動用マグネット17(およびレンズ駆動用マグネット17′)とヨーク16の配置パターンを説明するためのパターン図である。なお、図中の「コイル」は第1のレンズ駆動用コイル14を示しており、図中の「マグネット」はレンズ駆動用マグネット17(およびレンズ駆動用マグネット17′)を示しており、図中の「ヨーク」は、ヨーク16を示している。
【0078】
図19(a)〜図19(f)は、2個のマグネット(レンズ駆動用マグネット17およびレンズ駆動用マグネット17′)と1個のコイル(第1のレンズ駆動用コイル14)が設けられたパターンである。図19(a)、(d)と、図19(b)、(e)と、図19(c)、(f)とが示すように、可動部材がコイルであっても、マグネットおよびヨークであっても、マグネットのみであっても構わない。また、それぞれのパターンにおいて、図19(a)と図19(d)、図19(b)と図19(e)、図19(c)と図19(f)とが示すように、ヨーク16のラジアル方向の位置をかえても構わない。
【0079】
一方で、図19(g)〜図19(z)は、レンズ駆動用マグネット17と第1のレンズ駆動用コイル14が1個ずつ設けられたパターンである。図19(g)、(j)、(m)、(p)と、図19(h)、(k)、(n)、(q)と、図19(i)、(l)、(o)、(r)とが示すように、可動部材がコイルであっても、マグネットおよびヨークであっても、マグネットのみであっても構わない。また、図19(g)と図19(m)、図19(h)と図19(n)、図19(i)と図19(o)とが示すように、或いは、図19(j)と図19(p)、図19(k)と図19(q)、図19(l)と図19(r)とが示すように、ヨーク16のラジアル方向の位置をかえても構わない。また、図19(g)と図19(j)、図19(h)と図19(k)、図19(i)と図19(l)とが示すように、或いは、図19(m)と図19(p)、図19(n)と図19(q)、図19(o)と図19(r)とが示すように、コイルとマグネットの位置を交換してもよい。さらに、図19(s)〜図19(z)に示すように、マグネットの両側にヨークが固着しており、コイルを包み込むような配置にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明を適用したレンズ駆動装置の要部をレンズ光軸に沿って切断したときの断面図である。
【図2】図1に示すレンズ駆動装置の本体の分解斜視図である。
【図3】図1に示すレンズ駆動装置を図1のY−Y′線に沿って切断したときの平面断面図である。
【図4】図1に示すレンズ駆動装置において、スリーブが所望の位置で停止動作する様子を説明するための説明図である。
【図5】図1に示す付属ユニットを被写体側からみたときの平面図である。
【図6】図1に示す付属ユニットを被写体側からみたときの平面図、付属ユニットを被写体側からみたときの斜視図である。
【図7】図1に示す付属ユニットを撮像素子側からみたときの斜視図である。
【図8】図1に示すレンズ駆動装置の効果を説明するための説明図である。
【図9】本発明の別の実施の形態1に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。
【図10】本発明の別の実施の形態2に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。
【図11】本発明の別の実施の形態3に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。
【図12】本発明の別の実施の形態4に係るレンズ駆動装置の要部をレンズ光軸に沿って切断したときの断面図である。
【図13】図12に示すレンズ駆動装置の本体の分解斜視図である。
【図14】図12に示すレンズ駆動装置において、スリーブが所望の位置で停止動作する様子を説明するための説明図である。
【図15】本発明の別の実施の形態5に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。
【図16】本発明の別の実施の形態6に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。
【図17】本発明の別の実施の形態7に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。
【図18】本発明の別の実施の形態8に係るレンズ駆動装置の機械構成の概略を示す図である。
【図19】本発明の他の実施の形態に係るレンズ駆動装置において、コイルとマグネットとヨークの配置パターンを説明するためのパターン図である。
【符号の説明】
【0081】
1 レンズ駆動装置
2 レンズ駆動装置本体
5 レンズ駆動機構
8 付属ユニット
10 固定体
11 ケース
13、13′ 板バネ(規制手段)
14、14′ レンズ駆動用コイル
15 スリーブ
16 ヨーク
17 レンズ駆動用マグネット
18 入射窓
19 ベース
20 移動レンズ体
24 レンズホルダ
26、27、28 レンズ
60 シャッタ板駆動機構(第1の光学部材駆動機構)
70 フィルタ板駆動機構
80 付属ユニットの空間
81 シャッタ板(板状の光学部材)
86 減光フィルタ板(板状の光学部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを備えた移動レンズ体と、該移動レンズ体がレンズ光軸に沿って移動可能に搭載された固定体と、前記移動レンズ体を前記レンズの光軸に沿って往復移動させるためのレンズ駆動機構とを備えたレンズ駆動装置において、
前記レンズ駆動機構は、前記レンズの光軸方向と直交する方向に着磁されたレンズ駆動用マグネットと、該レンズ駆動用マグネットに前記レンズの光軸方向で対向するように配置されたレンズ駆動用コイルとを備え、
前記レンズ駆動用マグネットおよび前記レンズ駆動用コイルのうちのいずれか一方は前記移動レンズ体側に設けられるとともに、他方は前記固定体側に設けられ、
前記移動レンズ体に対して被写体側には、板状の光学部材、および当該光学部材を光路上に出現した位置と光路上から退避した位置との間で駆動する光学部材駆動機構を備えた付属ユニットが配置され、
当該付属ユニットには、前記移動レンズ体が被写体側の至近距離位置側に移動した際、当該移動レンズ体の被写体側端部が入り込む空間を備えていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記光学部材駆動機構は、コアと、該コアに巻回されたコイルと、該コイルによって回転駆動されるロータマグネットとを備え、当該ロータマグネットの回転によって前記光学部材を駆動するように構成され、
前記光学部材は、前記コアより被写体側に配置されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記付属ユニットは、少なくとも、前記光学部材としてシャッタ板、絞り板、色変換板、減光フィルタ板、赤外線フィルタ板、および紫外線フィルタ板から選ばれた少なくとも1つの光学部材を備えていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1において、前記付属ユニットは、少なくとも、前記光学部材としてシャッタ板、絞り板、色変換板、減光フィルタ板、赤外線フィルタ板、および紫外線フィルタ板から選ばれた2つの光学部材を備えているとともに、
前記光学部材駆動機構として、前記2つの光学部材のうちの一方の光学部材を駆動する第1の光学部材駆動機構と、他方の光学部材を駆動する第2の光学部品駆動機構とを備えていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項5】
請求項4において、前記第1の光学部品駆動機構は、第1のコア、および該第1のコアの一部分に巻回された第1のコイルを備えた第1のステータと、該第1のステータによって回転駆動される第1のロータマグネットとを備えるとともに、当該第1のロータマグネットの回転によって前記一方の光学部品を駆動するように構成され、
前記第2の光学部品駆動機構は、第2のコア、および該第2のコアの一部分に巻回された第2のコイルを備えた第2のステータと、該第2のステータによって回転駆動される第2のロータマグネットとを備えるとともに、当該第2のロータマグネットの回転によって前記他方の光学部品を駆動するように構成され、
前記第1のコアと前記第2のコアとは一体のコア体として構成され、
前記一方の光学部品および前記他方の光学部品はいずれも、前記コア体より被写体側に配置されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記レンズ駆動機構は、さらに、前記レンズ駆動用コイルに電流を供給して電磁力を発生させたときに当該電磁力に基づく前記移動レンズ体の移動を規制する規制手段を備えていることを特徴とするレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−310242(P2007−310242A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140782(P2006−140782)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】