説明

レーザレーダ及びレーザレーダによる計測方法

【課題】レーザ光走査の高速化,装置の小型化及びコスト低減を実現することが可能であるレーザレーダ及びレーザレーダによる計測方法を提供する。
【解決手段】投光部2と、投光部2から発したレーザ光LTを走査する走査部3と、投光部2にレーザ光LTの投光指令を発すると共に走査部3による走査を制御する制御部4と、走査部3によるレーザ光LTの走査により走査範囲E内の計測対象Pで反射して戻る反射レーザ光LRのみを制御部4からの指令に基づいて選択するデジタルマイクロミラーデバイス5と、このデジタルマイクロミラーデバイス5で選択された反射レーザ光LRを受ける受光部6と、制御部4から与えられるレーザ光LTの投光タイミング及び受光部6から与えられる反射レーザ光LRの受光タイミングに基づいて計測対象Pの距離情報を取得する距離演算部7を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、交差点内や踏切内における人の存否を監視するのに利用されるレーザレーダ及びレーザレーダによる計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したレーザレーダとしては、例えば、レーザ光を発する投光部と、この投光部から発したレーザ光を二次元的に走査する走査部と、この走査部によるレーザ光走査により計測対象で反射して戻るレーザ光を受ける受光部と、投光部にレーザ光の投光指令を発すると共に走査部による走査を制御する制御部と、この制御部から与えられるレーザ光の投光タイミング及び前記受光部から与えられる反射レーザ光の受光タイミングに基づいて前記計測対象の三次元情報を取得する距離演算部を備えたものがある。
【0003】
このようなレーザレーダにおいて、一般的に、走査部は、投光部から発したレーザ光を水平方向に走査するポリゴンミラーと、このポリゴンミラーからのレーザ光を垂直方向に走査する揺動ミラーを具備したものとなっており、受光部は、計測対象で反射して戻るレーザ光を走査部の揺動ミラー及びポリゴンミラーを介して受けるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005-69975号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したレーザレーダでは、受光部が、計測対象で反射して戻るレーザ光を走査部の機械的に駆動される揺動ミラー及びポリゴンミラーを介して受けるようになっているので、ポリゴンミラー及び揺動ミラーの寸法がいずれも大きくなってしまい、その分だけ、レーザ光走査の高速化及び装置の小型化が困難であると共に、コストの上昇を避け得ないという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題に着目してなされたもので、レーザ光走査の高速化及び装置の小型化を実現することができると共に、コスト低減をも実現することが可能であるレーザレーダ及びレーザレーダによる計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るレーザレーダは、レーザ光を発する投光部と、この投光部から発したレーザ光を二次元的に走査する走査部と、前記投光部にレーザ光の投光指令を発すると共に前記走査部による走査を制御する制御部と、前記走査部によるレーザ光走査により計測対象で反射して戻る反射レーザ光のみを前記制御部からの指令に基づいて選択する選択手段と、この選択手段で選択された反射レーザ光を受ける受光部と、前記制御部から与えられるレーザ光の投光タイミング及び前記受光部から与えられる反射レーザ光の受光タイミングに基づいて前記計測対象の距離情報を取得する距離演算部を備えた構成としたことを特徴としており、このレーザレーダの構成を前述の従来の課題を解決するための手段としている。
【0007】
また、本発明の請求項2に係るレーザレーダは、面の向きを個別に2値制御可能な微小ミラーを多数マトリクス状に並べて成り、前記制御部から指定される微小ミラーの面の向きを変更操作することで、計測対象から反射して戻る反射レーザ光のみを選択的に反射して前記受光部に送るデジタルマイクロミラーデバイスを選択手段とした構成としている。
さらに、本発明の請求項3に係るレーザレーダは、個別に遮光透過の制御が可能な画素を多数マトリクス状に並べて成り、前記制御部から指定される画素を透過状態とすることで、計測対象から反射して戻る反射レーザ光のみを選択的に透過して前記受光部に送る液晶シャッタを選択手段とした構成としている。
【0008】
一方、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のレーザレーダにより計測を行うに際して、制御部から指令を発して、走査部を動作させつつ投光部からレーザ光を投光して、適宜方向にレーザ光を走査し、この走査部によるレーザ光走査により計測対象から反射して戻る反射レーザ光のみを制御部からの指令により選択手段で選択させて受光部に送り、距離演算部において、前記制御部から与えられるレーザ光の投光タイミング及び前記受光部から与えられる反射レーザ光の受光タイミングに基づいて前記計測対象までの距離情報を取得する構成としたことを特徴としており、このレーザレーダによる計測方法の構成を前述の従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
本発明のレーザレーダ及びレーザレーダによる計測方法において、投光部から発するレーザ光としては、半導体レーザや固体レーザやガスレーザなどを用いることができ、信号波形がパルス状や振幅変調した正弦波状を成すレーザ光が使用される。
本発明のレーザレーダでは、計測を行う場合、制御部から指令を発して、走査部を動作させつつ投光部からパルス状や振幅変調した正弦波状のレーザ光を投光して、適宜方向に対するレーザ光の走査を開始する。
【0010】
これと同時に、制御部から指令を発して選択手段を動作させ、走査部によるレーザ光走査により計測対象から反射して戻る反射レーザ光のみを選択して受光部に送るようにし、このとき、制御部から与えられるレーザ光の投光タイミング及び受光部から与えられる反射レーザ光の受光タイミングに基づいて距離演算部により処理することで、計測対象までの距離情報を求め得ることとなる。
【0011】
つまり、このレーザレーダでは、計測対象から反射して戻る反射レーザ光のみを選択し得る選択手段を受光部側に配置することで、機械的に駆動される揺動ミラーやポリゴンミラーを有する走査部を介さずに、受光部が計測対象から反射して戻る反射レーザ光を受けることができるようにしているので、走査部のポリゴンミラーや揺動ミラーに大きなものを用いる必要がなく、したがって、レーザ光走査の高速化及び装置の小型化が図られるうえ、低コスト化も図られることとなる。
【0012】
そして、上記したように、選択手段としてデジタルマイクロミラーデバイスを採用した場合には、受光率が良くなって高精度の計測を行い得ることとなり、一方、選択手段として液晶シャッタを採用した場合には、より一層の低コスト化が図られることとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係るレーザレーダでは、上記した構成としたから、レーザ光走査の高速化及び装置の小型化を実現することができると共に、低コスト化をも実現可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
また、本発明の請求項2に係るレーザレーダでは、上記した構成としているので、請求項1に係るレーザレーダと同じ効果が得られるのに加えて、計測精度の向上を実現することが可能であり、本発明の請求項3に係るレーザレーダでは、上記した構成としているので、より一層の低コスト化を実現することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0014】
一方、本発明の請求項4に係るレーザレーダによる計測方法では、上記した構成としたから、レーザ光走査の高速化,装置の小型化及び低コスト化をいずれも実現したうえで、従来と同様ないしそれ以上の精度で計測を行うことが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るレーザレーダ及びレーザレーダによる計測方法を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明に係るレーザレーダの一実施形態を示している。
図1に示すように、このレーザレーダ1は、パルス状のレーザ光LTを発する投光部2と、この投光部2から発したレーザ光LTを二次元的に走査する走査部3と、投光部2にレーザ光LTの投光指令を発すると共に走査部3による走査を制御する制御部4と、走査部3によるレーザ光LTの走査により走査範囲内の計測対象で反射して戻る反射レーザ光LRのみを制御部4からの指令に基づいて選択するデジタルマイクロミラーデバイス(選択手段)5と、このデジタルマイクロミラーデバイス5で選択された反射レーザ光LRを受ける受光部6と、制御部4から与えられるレーザ光LTの投光タイミング及び受光部6から与えられる反射レーザ光LRの受光タイミングに基づいて計測対象の距離情報を取得する距離演算部7を備えている。
【0016】
この場合、走査部3は、モータ3aの出力により回転するポリゴンミラー3bと、モータ3cの出力により揺動してポリゴンミラー3bで反射した投光部2からのレーザ光LTを計測対象に走査する揺動ミラー3dを具備している。
また、選択手段としてのデジタルマイクロミラーデバイス5は、図2に示すように、面の向きを個別に2値制御可能な微小ミラー5aを多数マトリクス状に並べて成るものであり、このデジタルマイクロミラーデバイス5の走査範囲E側及び受光部6側には、受光レンズ8,9がそれぞれ配置してある。
【0017】
この実施形態において、走査範囲E側の受光レンズ8を通して入射した光を受光部6側の受光レンズ9に向けて反射させるべく微小ミラー5aの面の向きを変更する場合をオン操作とし、受光レンズ8を通して入射した光を受光レンズ9から外れた向きに反射させるべく微小ミラー5aの面の向きを保持する場合をオフ操作としている。
つまり、図3に示すように、制御部4から指定される微小ミラー5aのみをオン操作することで、計測対象Pで反射して受光レンズ8を介して戻る反射レーザ光LRのみを微小ミラー5aで反射して受光レンズ9に送るようにしており、この受光レンズ9では、デジタルマイクロミラーデバイス5で選択された反射レーザ光LRを受光部6の受光素子に送って結像させるようになっている。
【0018】
この実施形態に係るレーザレーダ1では、計測を行う場合、制御部4から投光指令及び速度指令を発して、走査部3を動作させつつ投光部2からパルス状のレーザ光LTを投光して、走査範囲Eに対するレーザ光LTの走査を開始する。
これと同時に、投光側である走査部3のポリゴンミラー3b(垂直走査)及び揺動ミラー3d(水平走査)から各角度情報を得た制御部4からデジタルマイクロミラーデバイス5に選択指令を発して、ポリゴンミラー3b及び揺動ミラー3dの各向きに対応する微小ミラー5aのみをオン操作し、計測対象Pから受光レンズ8を介して戻る反射レーザ光LRのみをオン操作された微小ミラー5aで反射して受光レンズ9に送る。
【0019】
そして、この受光レンズ9を通して送られた反射レーザ光LRが受光部6の受光素子上で結像した時点で、制御部4から与えられるレーザ光LTの投光タイミング及び受光部6から与えられる反射レーザ光LRの受光タイミングに基づいて距離演算部7により処理することで、計測対象Pまでの距離情報を求め得ることとなる。
このように、上記したレーザレーダ1では、計測対象Pから反射して戻る反射レーザ光LRのみを選択し得るデジタルマイクロミラーデバイス5を受光部6側に配置するようにしているので、機械的に駆動される揺動ミラー3dやポリゴンミラー3bを有する走査部3を介さずに、受光部6が計測対象Pから反射して戻る反射レーザ光LRを受けることができ、したがって、走査部3のポリゴンミラー3bや揺動ミラー3dに大型のものを用いる必要がなくなる分だけ、レーザ光走査の高速化及び装置の小型化が図られるのに加えて、低コスト化も図られることとなる。
【0020】
また、この実施形態では、選択手段としてデジタルマイクロミラーデバイス5を採用しているので、レスポンスが早まる分だけ受光率が良くなり、その結果、計測精度の向上が図られることとなる。
図4〜図6は、本発明に係るレーザレーダの他の実施形態を示している。
図4に示すように、このレーザレーダ11が、先の実施形態に係るレーザレーダ1と相違するところは、選択手段として液晶シャッタ15を採用した点にあり、他の構成は先の実施形態に係るレーザレーダ1と同じである。
【0021】
選択手段としての液晶シャッタ15は、図5に示すように、個別に遮光透過の制御が可能な画素15aを多数マトリクス状に並べて成るものであり、この液晶シャッタ15の走査範囲E側には受光レンズ12が配置してあると共に、受光部6側には受光レンズ13,14が配置してある。
この実施形態において、走査範囲E側の受光レンズ12を通して入射した光を受光部6側の受光レンズ13,14に向かわせる場合には、画素15aを透過状態とし、受光レンズ12を通して入射した光を受光レンズ13,14に向かわせないようにする場合には、画素15aの遮光状態を維持するようにしている。
【0022】
つまり、図6に示すように、制御部4から指定される画素15aのみを透過状態とすることで、計測対象Pで反射して受光レンズ12を介して戻る反射レーザ光LRのみを画素15aを通して受光レンズ13,14に向かわせるようにしており、これらの受光レンズ13,14を通過した反射レーザ光LRは、受光部6の受光素子に結像されるようになっている。
【0023】
この実施形態に係るレーザレーダ11では、計測を行う場合、制御部4から投光指令及び速度指令を発して、走査部3を動作させつつ投光部2からパルス状のレーザ光LTを投光して、走査範囲Eに対するレーザ光LTの走査を開始する。
これと同時に、投光側である走査部3のポリゴンミラー3b(垂直走査)及び揺動ミラー3d(水平走査)から各角度情報を得た制御部4から液晶シャッタ15に選択指令を発して、ポリゴンミラー3b及び揺動ミラー3dの各向きに対応する画素15aのみを透過状態とし、計測対象Pから受光レンズ12を介して戻る反射レーザ光LRのみを透過状態とした画素15aを通過させて受光レンズ13,14に送る。
【0024】
そして、これらの受光レンズ13,14を通して送られた反射レーザ光LRが受光部6の受光素子上で結像した時点で、制御部4から与えられるレーザ光LTの投光タイミング及び受光部6から与えられる反射レーザ光LRの受光タイミングに基づいて距離演算部7により処理することで、計測対象Pまでの距離情報を求め得ることとなる。
上記したレーザレーダ11においても、計測対象Pから反射して戻る反射レーザ光LRのみを透過し得る液晶シャッタ15を受光部6側に配置するようにしているので、走査部3のポリゴンミラー3bや揺動ミラー3dに大型のものを用いる必要がなくなる分だけ、レーザ光走査の高速化及び装置の小型化が図られるのに加えて、低コスト化も図られることとなり、この実施形態では、選択手段として液晶シャッタ15を採用しているので、より一層の低コスト化が図られることとなる。
【0025】
本発明に係るレーザレーダは、例えば、踏み切りや交差点の監視に用いることができるほか、工場などの施設領域と外部とを仕切るフェンスの近傍を監視するのに用いることも可能である。
また、本発明に係るレーザレーダの構成は、上記した実施形態によるレーザレーダ1,11の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るレーザレーダの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1におけるレーザレーダの走査範囲に対するデジタルマイクロミラーデバイス及び受光部の位置関係説明図である。
【図3】図1におけるレーザレーダのデジタルマイクロミラーデバイスによる反射レーザ光の選択要領説明図である。
【図4】本発明に係るレーザレーダの他の実施形態を示すブロック図である。
【図5】図4におけるレーザレーダの走査範囲に対する液晶シャッタ及び受光部の位置関係説明図である。
【図6】図4におけるレーザレーダの液晶シャッタによる反射レーザ光の選択要領説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1,11 レーザレーダ
2 投光部
3 走査部
4 制御部
5 デジタルマイクロミラーデバイス(選択手段)
5a 微小ミラー
6 受光部
7 距離演算部
15 液晶シャッタ(選択手段)
15a 画素
E 走査範囲
LR 反射レーザ光
LT 投光レーザ光
P 計測対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発する投光部と、
この投光部から発したレーザ光を二次元的に走査する走査部と、
前記投光部にレーザ光の投光指令を発すると共に前記走査部による走査を制御する制御部と、
前記走査部によるレーザ光走査により計測対象で反射して戻る反射レーザ光のみを前記制御部からの指令に基づいて選択する選択手段と、
この選択手段で選択された反射レーザ光を受ける受光部と、
前記制御部から与えられるレーザ光の投光タイミング及び前記受光部から与えられる反射レーザ光の受光タイミングに基づいて前記計測対象の距離情報を取得する距離演算部を備えた
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項2】
面の向きを個別に2値制御可能な微小ミラーを多数マトリクス状に並べて成り、前記制御部から指定される微小ミラーの面の向きを変更操作することで、計測対象から反射して戻る反射レーザ光のみを選択的に反射して前記受光部に送るデジタルマイクロミラーデバイスを選択手段とした請求項1に記載のレーザレーダ。
【請求項3】
個別に遮光透過の制御が可能な画素を多数マトリクス状に並べて成り、前記制御部から指定される画素を透過状態とすることで、計測対象から反射して戻る反射レーザ光のみを選択的に透過して前記受光部に送る液晶シャッタを選択手段とした請求項1に記載のレーザレーダ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のレーザレーダにより計測を行うに際して、
制御部から指令を発して、走査部を動作させつつ投光部からレーザ光を投光して、適宜方向にレーザ光を走査し、
この走査部によるレーザ光走査により計測対象から反射して戻る反射レーザ光のみを制御部からの指令により選択手段で選択させて受光部に送り、
距離演算部において、前記制御部から与えられるレーザ光の投光タイミング及び前記受光部から与えられる反射レーザ光の受光タイミングに基づいて前記計測対象までの距離情報を取得する
ことを特徴とするレーザレーダによる計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−96574(P2010−96574A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266258(P2008−266258)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】