説明

レーザー光を用いた刃物硬化装置及び刃物硬化方法

【課題】高品質の刃物を低コストで再現性よく得る。
【解決手段】
この刃物硬化装置は、容器100中の水(流体)20中に固定された固定台11と、超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界を持つパルスレーザー光を発するレーザー光源12を具備する。固定台11には、硬化処理される刃物30が機械的に固定される。レーザー光源12は超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界をもつパルスレーザー光121を発し、刃先面32を照射する。このパルスレーザー光121の照射によって、刃先面32の近傍において光学的及び熱的に圧縮応力を生成し、刃物30全体、あるいはこのパルスレーザー光121に照射される任意の箇所において、圧縮残留応力、高硬度、高剛性等の特性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザー光を用いて刃物を硬化させる装置、及びこれに用いられる刃物硬化方法に関する。特に、素材調整された特殊鋼である刃物素材又は刃物自体に、液体中あるいは気体中にて超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界を持つレーザーパルスを直接照射し、刃物全体、あるいは刃先端部等に局所的に圧縮残留応力、高硬度、高剛性等を付与する刃物硬化装置、刃物硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属を加工して製造される刃物は、切削具として様々な用途に用いられている。刃物においては、その刃先が鋭利であることに加え、使用に際しての耐久性を維持するためには、その硬度や剛性が充分に高いことが要求される。従って、例えば高精度な包丁、ナイフ等の製造は、こうした特性が実現できる加工方法によって行われている。
【0003】
刃物の刃先近傍においては、特に高硬度、高剛性が要求され、これによって長期間にわたり切れ味が維持される。熱間、温間、或は冷間の刃物製造工程においては、刃物を製作する作業の中で、素材金属を手動あるいは自動ハンマー等で叩いて成形することにより、併せて圧縮残留応力や硬度や剛性などが最適化される。また、こうした特性を付与するためには、局所高周波焼入れ、クラッディング、ビーム表面改質、局所合金化、局所窒化処理等も行われる。その後、例えば特許文献1に記載されるように、最終工程として刃付けや仕上げ工程により、刃先が精密に研磨され、鋭利な刃先が形成される。通常、高級な刃物においては、圧縮残留応力が存在し、硬く、剛性が高くなるように調整された素材が用いられる。
【0004】
刃付けや仕上げ研磨において、これらの素材が砥石で研磨される際には大量の水が用いられ、研磨の際の発熱を抑えながら、細心の注意を払って熟練した職人の手作業で時間をかけて仕上げられる。しかしながら、往々にしてこれらの刃物の最終工程までに、圧縮残留応力・硬度・剛性等の冶金的特性は、不注意や不適切な作業で損なわれる場合が多い。従来より、最高級の刃物においては、熱間、温間、冷間などの工程により圧縮応力が付与され、高硬度、高剛性を持つ刃物の製造は、熟練者の手作業により行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−106467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常の刃物の製造においては、前記の通り、素材の成形時に圧縮残留応力が付与され、硬度と剛性が適切な値にされる。一方、その後に行われる最終仕上げ工程である刃付け、仕上げ研磨では、刃物の表面の極めて微小な部分において、微細な砥粒と刃物との摩擦の際に発生する摩擦熱に伴う温度上昇は極めて大きい。従って、研磨は充分に注意深く行われ、例えば、粒度の異なる複数種類の砥石を段階的に用い、充分な流水量をもって研磨熱を除去しながら、時間をかけて行われる。この際、この研磨前に付与された上記の特性は、熟練者が注意深く行わなければ、刃付けや仕上げ研磨終了までに変質し、損なわれることが多い。この刃物製造工程の後半で失われた性質は、再びこの特性を付与する工程を行わない限り、得ることができず、再度最初の工程からやり直さなければ元に戻らない。従って、この研磨工程は、未熟練作業者によっては信頼性は低いものとなり、長時間を要する作業となる。
【0007】
あるいは、従来技術では、流水による研磨熱の除去が不十分となり、熱変性を受け、鋭利さと耐久性に欠ける刃物となる。上記のように時間をかけて慎重に研磨作業が行われた場合にはこの刃物は非常に高価となり、かつ、熟練者によってこれを行うことが困難であるような作業が必要となる。
【0008】
こうした刃物の最初の段階である素材調整から刃付け・仕上げ研磨等の工程は、およそ刃物が作られた時以来、行われてきた。こうした技術は、熟練の砥ぎ師が腕を磨いて、受け継がれてきた技術であって、製造コストが高い。あるいは、大量生産ができず、生産に長時間を要する。また、こうした研磨の技術は砥ぎ師あるいは砥ぎ職人の個人的技能のレベル、あるいはその職人の健康状況、疲労、意欲、環境等に依存するため、工程全体にわたり、刃付けの品質における再現性が乏しくなる。従って、一定の品質を得ることは困難である。
【0009】
すなわち、従来の技術においては、高品質の刃物、すなわち、長期間にわたり切れ味が保たれる耐久性の高い刃物、を低コストで再現性よく得ることは困難であった。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の刃物硬化装置は、刃物を硬化させる処理を行う刃物硬化装置であって、前記刃物を流体中で固定する固定台と、超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界を持つパルスレーザー光を発するレーザー光源と、を具備し、前記刃物に対して前記パルスレーザー光を照射して前記刃物の表面近傍で圧縮応力を生成し、前記刃物に圧縮残留応力を付与することによって、前記刃物の硬度及び剛性を高めることを特徴とする。
本発明の刃物硬化装置において、前記パルスレーザー光のパルス幅、ピーク強度、又は前記刃物に対するスキャン速度が調整されることにより、前記パルスレーザー光の照射後の前記刃物の温度が、前記刃物を構成する金属が蒸発、昇華、及び溶融をすることがない温度未満、かつ前記金属の相変態点となる温度未満、とされることを特徴とする。
本発明の刃物硬化装置は、前記圧縮残留応力を付与することにより、前記刃物の応力腐食割れ、孔食、又は腐食に対する耐性を高めることを特徴とする。
本発明の刃物硬化装置において、前記流体は前記刃物の表面に平行な方向に流れる構成とされることを特徴とする。
本発明の刃物硬化装置において、前記流体は、水又は不活性ガスを主成分とすることを特徴とする。
本発明の刃物硬化装置は、前記パルスレーザー光を分岐して前記パルスレーザー光の特性をモニターするレーザー照射モニターを具備することを特徴とする。
本発明の刃物硬化方法は、刃物を硬化させる処理を行う刃物硬化方法であって、前記刃物を流体中で固定し、超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界を持つパルスレーザー光を前記刃物に対して照射することにより、前記刃物の表面近傍で圧縮応力を生成し、前記刃物に圧縮残留応力を付与することによって、前記刃物の硬度及び剛性を高めることを特徴とする。
本発明の刃物硬化方法は、前記パルスレーザー光のパルス幅、ピーク強度、又は前記刃物に対するスキャン速度を調整することにより、前記パルスレーザー光の照射後の前記刃物の温度を、前記刃物を構成する金属が蒸発、昇華、及び溶融をすることがない温度未満、かつ前記金属の相変態点となる温度未満、とすることを特徴とする。
本発明の刃物硬化方法は、前記圧縮残留応力を付与することにより、前記刃物の応力腐食割れ、孔食、又は腐食に対する耐性を高めることを特徴とする。
本発明の刃物硬化方法において、前記流体を前記刃物の表面に平行な方向に流すことを特徴とする。
本発明の刃物硬化方法において、前記流体は、水又は不活性ガスを主成分とすることを特徴とする。
本発明の刃物硬化方法は、前記パルスレーザー光を分岐して前記パルスレーザー光の特性をモニターし、当該モニター結果を用いて前記パルスレーザー光の特性又は照射箇所を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、高品質の刃物を低コストで再現性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る刃物硬化装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る刃物硬化装置の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る刃物硬化装置及びこれによって実現される刃物硬化方法につき説明する。この刃物硬化装置は、特に刃物における刃先が精密に加工されて形成された後に特に好ましく用いられる。この刃物硬化装置の構成を図1に示す。
【0015】
この刃物硬化装置は、容器100中の水(流体)20中に固定された固定台11と、超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界を持つパルスレーザー光を発するレーザー光源12を具備する。固定台11には、硬化処理される刃物30が機械的に固定される。
【0016】
固定台11は、例えば強固な鋼材で構成され、刃物30の形状に応じ、固定台11上に刃物30が強固に固定できるような形状とされる。刃物30における刃先31は、刃先面32と刃先面33の2つの平面が鋭角をもって交差して構成される。図1は、刃先面32、33に垂直な方向の断面を示しており、一方の刃先面である刃先面32が図中で上方に向かって露出した構成とされる。固定台11への刃物30の固定方法は、刃先面32に有効に圧力を印加できる限りにおいて任意である。
【0017】
ここで硬化処理される刃物30は、素材調整された特殊鋼(刃物素材)で形成される。この硬化装置で硬化処理を行う前に、その刃付け作業は完了しているものとする。
【0018】
レーザー光源12は超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界をもつパルスレーザー光121を発し、刃先面32を照射する。レーザー光源12は、例えばチタンサファイアレーザーであり、波長800nmのレーザー光を発振する。なお、以下に説明する効果を奏する限りにおいて、レーザー光源12は、水20中に設置しても、水20の外側に設置してもよい。
【0019】
このパルスレーザー光121は、集光光学系(図示省略)を通り、刃先面32上で集光され、冷間で刃先面32を局所的に照射する。この照射箇所は可変であり、パルスレーザー光121が刃先面32上をスキャンできる構成とされる。なお、レーザー光源12の数は任意であり、適宜設定できる。
【0020】
このパルスレーザー光121を水20中で刃物30(刃先面32)に直接照射することにより、光学的、熱的に極めて高い圧力を短時間に印加することができる。この圧力は、パルスレーザー光121が照射された近傍の箇所(圧力印加層40)において発生する。これにより、刃物素材の硬度や剛性を高くし、その内部に圧縮残留応力を付与することができる。この際、パルス幅が極めて短く、このパルスレーザー光121で加熱される時間が極めて短いため、この熱がレーザー照射箇所の周辺領域に伝達される前にオフとなる。従って、実質的に発熱がない場合と同様の状況となる。すなわち、パルスレーザー光のパルス幅、ピーク強度、あるいは刃物30(刃先面32)に対するスキャン速度を調整することにより、パルスレーザー光121の照射後における刃物30の温度を充分低くした、冷間での処理を行うことができる。また、例えばスキャン速度を速めて温度上昇を抑制する場合のように、温度上昇を抑制することは、その処理速度を高めることにも直結する。すなわち、低コストでこの処理を行うことができる。
【0021】
すなわち、このパルスレーザー光121の照射によって、刃先面32の近傍において光学的及び熱的に圧縮応力を生成し、刃物30全体、あるいはこのパルスレーザー光121に照射される任意の箇所において、圧縮残留応力、高硬度、高剛性等の特性を付与することができる。特に、この特性が求められる刃先31近傍においてこれらの特性を付与することができる。この際、水20中で上記のパルスレーザー光121を照射することにより、これらの特性は冷間で付与されるため、刃物30全体を加熱することがない。従って、刃物30を構成する刃物素材(金属)の表面を蒸発、昇華、及び溶融させることがなく、刃物30を構成する刃物素材の相変態点以上の温度とすることもないために、刃物素材の結晶構造等の変化を生ずることもない。あるいは、上記の処理前に刃物素材に対して好ましい冶金特性が付与されていた場合でも、その冶金特性を損なうことがない。
【0022】
また、刃物素材においては、表面に発生した腐食(錆)と表面の引張応力とに起因して割れが発生する、いわゆる応力腐食割れという現象が問題になる。これに対して、上記の処理によって圧縮残留応力を表面近傍で付与する、あるいは、この処理前に存在していた引張残留応力を上記の処理によって打ち消すことができる。従って、応力腐食割れに対する耐性を高めることができる。
【0023】
従って、例えば刃付け工程によって精密に加工された刃先を得た後に、この刃物硬化装置(刃物硬化方法)を用いれば、精密に加工された刃先と同時に、高い機械的特性、耐久性も得ることができる。あるいは、鋭利でかつ高い硬度、剛性、耐久性をもった刃先を具備する刃物を低コストで製造することができる。また、例えば職人が手作業で行っていた場合と比較して、上記の処理の制御はパルスレーザー光を制御することによって行われるため、その制御もより精密に行うことが可能であり、再現性も高い。
【0024】
上記の刃物硬化装置の変形例の構成を図2に示す。この刃物硬化装置においては、上記の処理を更に高い精度で行うことができる。
【0025】
図2においては、容器100の記載は省略されており、レーザー光源12等も流体20中に設けた構成としている。この刃物硬化装置においても図1と同様の構成で、流体20中に固定台11、レーザー光源12、集光光学系13が設けられ、刃物30も同様に固定台11上に固定される。
【0026】
ここでは、集光光学系13と刃先面32との間の光路上に、レーザー照射モニター15が設置される。レーザー照射モニター15においては、ピームスプリッタ(半透過鏡)を設け、これによって分岐されたパルスレーザー光121を検出し、その特性(ピーク強度等)をモニターすることができる。従って、レーザー照射モニター15を用い、これらの測定結果をフィードバックしてレーザー光源12を制御し、パルスレーザー光121におけるピーク強度や照射位置、スキャン条件等を制御することができる。この制御を例えば外部のパーソナルコンピュータ等を用いて行うことができる。こうした制御により、上記の処理を、より高い制御性、再現性で行うことが可能である。
【0027】
また、レーザー照射モニター15の他にも、X線回折装置、硬度計、弾性計
等も適宜設置することができる。例えば、X線回折装置によってX線回折の測定を行うことにより、刃物30(刃先面32)の結晶構造や、内部応力を評価することができる。従って、上記の処理による刃物30の特性変化をリアルタイムで検出することができ、レーザー照射モニター15と同様に、その結果を用いてレーザー光源12の制御を行うことができる。
【0028】
なお、前記の通り、レーザー光源12は、刃先面32において特に高硬度、高剛性が要求される箇所をパルスレーザー光121が照射できるように適宜設定される。この際、スキャン速度は、上記の効果や刃先面32の温度上昇等に応じて適宜設定される。また、1本のパルスレーザー光121を多数の照射箇所に振り分ける、あるいは同時に多数本のパルスレーザー光121を用いることも可能である。
【0029】
また、図2に示されるように、刃先面32から、衝撃によって剥離した残渣等である除去物50が発生することがあり、これが刃先面32等に再付着することもある。更に、この除去物50は高温となることもあるため、この除去物50の再付着を抑制することが好ましい。このために、パルスレーザー光121を刃先面32に対して垂直入射でない、より水平に近い浅い角度で照射し、除去物50が反跳する方向をレーザー入射方向と大きく異なる方向とすることが好ましい。これによって、衝撃剥離する除去物50の自動的反跳除去が容易に実現される。また、流体20の流れは、刃先面32(刃物の表面)と平行な方向とすることが好ましい。
【0030】
また、こうした除去物50や照射された刃先面32が空気中の酸素と反応して酸化されたり、これらが高温となるのを抑制するためには、流体20を不活性ガスとして空気をこれらから隔離し、この不活性ガスを高速で噴射して除去物50を除去することができる。
【0031】
この作用を効率的に働かせるためには、流体20の流れとパルスレーザー光121の進行方向を同方向とすることが好ましい。また、流体20(不活性ガス)の有効な流れを妨げることがないように、図2の構成を容器100中に設ける、あるいは遮断ガス噴流等を用いて遮蔽隔離することが好ましい。
【0032】
また、噴射させる不活性ガス(流体20)の形態は、適宜設定できる。例えば、これを断熱膨張させ液化ミスト噴射として用い、あるいは別種の液体ミストとの混合噴射を用いることができる。これにより、特にその流れを高速とすることが可能であり、除去物50の除去、刃先面32の冷却、空気との遮蔽隔離をより効率的に行うことができる。
【0033】
上記の刃物硬化装置あるいは刃物硬化方法によれば、刃物の硬化処理を、高周波焼入れ、表面改質、合金化、窒化、クラッデング、鋼球鋼片、水、酸性腐食溶液、ブラスト装置、手動、自動機械式ハンマー、熱源、研磨剤等を必要とせず、簡易なレーザー光源(レーザー装置)等を用いて、再現性よく容易に実現できる。
【0034】
また、硬化処理を行う対象である刃物の重量、形状等によらず、この作業場所にもよらない処理が可能である。また、硬化させる箇所(高硬度、高剛性が要求される箇所)の面積に関わらず、パルスレーザー光をスキャンさせることにより、同一の刃物硬化装置を用いて処理を行うことが可能である。
【0035】
また、上記の刃物硬化装置で処理できる対象は、任意の刃物である。すなわち、例えば応力腐食割れを発生するおそれのある全ての刃物に対してこの刃物硬化方法は有効である。また、刃物の製造時に有効であるだけでなく、既に使用された刃物に対しても適用が可能であることは明らかである。例えば、刃物の保守点検等に際しても容易かつ安価に上記の処理を行うことが可能である。
【0036】
(実施例)
実際に、刃付け工程後にこの刃物硬化装置を用いて、刃物を製造した。これによれば、刃先のロックウェル硬度(HRC)として69が得られた。一方、従来の刃物硬化工程を用い、その後に手作業で刃付け工程を行った場合には、HRCは62であった。従って、この刃物硬化装置(刃物硬化方法)により、硬度の高い刃物を製造できることが確認できた。
【符号の説明】
【0037】
11 固定台
12 レーザー光源
13 集光光学系
15 レーザー照射モニター
20 流体
30 刃物
31 刃先
32、33 刃先面
40 圧力印加層
50 除去物
100 容器
121 パルスレーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃物を硬化させる処理を行う刃物硬化装置であって、
前記刃物を流体中で固定する固定台と、
超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界を持つパルスレーザー光を発するレーザー光源と、を具備し、
前記刃物に対して前記パルスレーザー光を照射して前記刃物の表面近傍で圧縮応力を生成し、前記刃物に圧縮残留応力を付与することによって、前記刃物の硬度及び剛性を高めることを特徴とする刃物硬化装置。
【請求項2】
前記パルスレーザー光のパルス幅、ピーク強度、又は前記刃物に対するスキャン速度が調整されることにより、前記パルスレーザー光の照射後の前記刃物の温度が、前記刃物を構成する金属が蒸発、昇華、及び溶融をすることがない温度未満、かつ前記金属の相変態点となる温度未満、とされることを特徴とする請求項1に記載の刃物硬化装置。
【請求項3】
前記圧縮残留応力を付与することにより、前記刃物の応力腐食割れ、孔食、又は腐食に対する耐性を高めることを特徴とする請求項1又は2に記載の刃物硬化装置。
【請求項4】
前記流体は前記刃物の表面に平行な方向に流れる構成とされることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の刃物硬化装置。
【請求項5】
前記流体は、水又は不活性ガスを主成分とすることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の刃物硬化装置。
【請求項6】
前記パルスレーザー光を分岐して前記パルスレーザー光の特性をモニターするレーザー照射モニターを具備することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の刃物硬化装置。
【請求項7】
刃物を硬化させる処理を行う刃物硬化方法であって、
前記刃物を流体中で固定し、
超短時間パルスの極高尖頭値の電磁界を持つパルスレーザー光を前記刃物に対して照射することにより、前記刃物の表面近傍で圧縮応力を生成し、
前記刃物に圧縮残留応力を付与することによって、前記刃物の硬度及び剛性を高めることを特徴とする刃物硬化方法。
【請求項8】
前記パルスレーザー光のパルス幅、ピーク強度、又は前記刃物に対するスキャン速度を調整することにより、
前記パルスレーザー光の照射後の前記刃物の温度を、前記刃物を構成する金属が蒸発、昇華、及び溶融をすることがない温度未満、かつ前記金属の相変態点となる温度未満、とすることを特徴とする請求項7に記載の刃物硬化方法。
【請求項9】
前記圧縮残留応力を付与することにより、前記刃物の応力腐食割れ、孔食、又は腐食に対する耐性を高めることを特徴とする請求項7又は8に記載の刃物硬化方法。
【請求項10】
前記流体を前記刃物の表面に平行な方向に流すことを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の刃物硬化方法。
【請求項11】
前記流体は、水又は不活性ガスを主成分とすることを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載の刃物硬化方法。
【請求項12】
前記パルスレーザー光を分岐して前記パルスレーザー光の特性をモニターし、当該モニター結果を用いて前記パルスレーザー光の特性又は照射箇所を制御することを特徴とする請求項7から請求項11までのいずれか1項に記載の刃物硬化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate