説明

レーザー光を用いた粘着シートの剥離方法

【課題】 板状体同士を強粘着シートによって面接着した複合板状体において、簡易な設備で、板状体を傷つけず、また、強粘着シートを板状体に残存させることなく強粘着シートを剥離し、板状体を有効に再利用可能にする方法の提供。
【解決手段】 少なくとも一方が特定波長のレーザー光を透過する板状体からなる一対の板状体を対向して粘着シートにより貼着した複合板状体から粘着シートを剥離する方法であって、前記複合板状体の前記レーザー光を透過する板状体面に対して、前記特定波長のレーザー光を照射することを特徴とするレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に関し、より詳しくは、板状体同士を強粘着シートによって面接着した複合板状体にレーザー光を照射して強粘着シートを剥離し、板状体を有効に再利用可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートを使用した製品は、用途の違いなどにより様々なものが存在するが、その中において、粘着シートにより被着体同士を半永久的に貼着することを目的としているものがある。
このような製品として、例えば、プラズマテレビのディスプレイパネルを例示することができる。
【0003】
プラズマディスプレイパネルは、表示画面に使用されるガラス基板からなるパネル体と、画面表示の際にパネル体より発生する熱を効率良く外部に放熱する金属板とを強粘着シートによって貼着することにより構成されている。
また、この強粘着シートは、パネル体より発生する熱によって、パネル体と金属板が熱膨張による寸法変化を起こすことを考慮して、柔軟且つ所定の厚みをもって形成されている。
【0004】
ところで、上記プラズマディスプレイパネルは、実用化されてまだ間もないこともあり寿命等による廃棄処分はまだ多くはないのが現状ではあるが、今後、ブラウン管テレビのように多量に廃棄処分されることが予測されることは言うまでもない。
しかしながら、近年、廃棄処分場の不足、また、廃棄による有害物質に起因する環境汚染が深刻化しており、利用済みの製品を効率良く再資源化するための技術が切望されている。特に、プラズマディスプレイパネルの大部分を占めるガラス基板を、効率良く再資源化することは重要である。
また、プラズマディスプレイパネルは、面接着によって形成されているため、貼着性には優れているが、分離には非常に困難を極めるという問題も有している。
【0005】
上記実情を鑑みて、例えば、下記特許文献1には、ディスプレイパネルを加熱処理することで粘着シートを軟化させ、ディスプレイパネルを構成するガラス材の自重によって粘着シートを剥離させる方法が開示されている。
しかしながら、このような剥離方法では、粘着シート全面が熱軟化するため、剥離後のガラス材に粘着シートが残存してしまい、再度分離したガラス材より粘着シートを除去するという後工程を必要とする。また、加熱による熱応力によって、ガラス材が破壊されてしまう虞がある。
【0006】
下記特許文献2には、ディスプレイパネルを加熱した後、パネルとシャーシ部材との接合部に棒状或いは板状の分離部材を挿入すると共にパネルとシャーシ部材とを引き離す方法が開示されている。
しかしながら、この方法でディスプレイパネルの分離を行うと、接合部の間隔が非常に狭いため、分離部材を挿入する際にパネルに衝突し、パネルを破壊してしまう虞がある。
また、分離部材がパネルに衝突しないように精密に制御するためには、種々多様な制御機構を必要とするため、装置自体が複雑になってしまうという問題が生じる。
【0007】
また、下記特許文献3には、ディスプレイパネルを液体窒素等の低温液状体に浸漬した後、衝撃を与え分離を行う方法が開示されている。
しかしながら、このような方法では、大量の低温液状体を必要とし、また、この液状体を収容するための大掛かりな設備を必要としてしまう問題が生じる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−367516号公報
【特許文献2】特開2005−129318号公報
【特許文献3】特開2001−293464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであって、板状体同士を強粘着シートによって面接着した複合板状体において、簡易な設備で、板状体を傷つけず、また、強粘着シートを板状体に残存させることなく強粘着シートを剥離し、板状体を有効に再利用可能にする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、少なくとも一方が特定波長のレーザー光を透過する板状体からなる一対の板状体を対向して粘着シートにより貼着した複合板状体から前記粘着シートを剥離する方法であって、前記複合板状体の前記レーザー光を透過する板状体面に対して、前記特定波長のレーザー光を照射することを特徴とするレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に関する。
請求項2に係る発明は、前記特定波長のレーザー光を照射する工程において、前記複合板状体の粘着シートに格子状の溝を形成し、該複合板状体の粘着シートに格子状の溝を形成した後、当該複合板状体を有機溶剤に浸漬させることを特徴とする請求項1記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に関する。
請求項3に係る発明は、前記特定波長のレーザー光を照射する工程において、該レーザー光を前記粘着シート全面に亘って照射することを特徴とする請求項1記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記特定波長のレーザー光を透過する板状体がガラス素材からなることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に関する。
請求項5に係る発明は、前記粘着シートが、アクリル系粘着シート、ウレタン系粘着シート、シリコーン系粘着シートのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に関する。
請求項6に係る発明は、前記レーザー光が可視光であることを特徴とする請求項4記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、複合板状体のレーザー光を透過する板状体面に対して、特定波長のレーザー光を照射することにより、粘着シートに直接レーザー光を照射することが可能となり、板状体を傷つけることなく粘着シートを焼き融かすことが可能となる。
請求項2に係る発明によれば、特定波長のレーザー光を照射する工程において、複合板状体の粘着シートに格子状の溝を形成し、該複合板状体の粘着シートに格子状の溝を形成した後、当該複合板状体を有機溶剤に浸漬させることにより、レーザーによって形成された格子状の溝部に有機溶剤を浸漬させることが可能となる。これにより、粘着シートの粘着力が効率良く低下し、剥離性を向上させることが可能となる。
請求項3に係る発明によれば、特定波長のレーザー光を照射する工程において、該レーザー光を粘着シート全面に亘って照射することにより、粘着シート全面が焼き融かされるため、板状体から粘着シートを容易に且つ板状体表面に残存することなく剥離することが可能となる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、特定波長のレーザー光を透過する板状体がガラス素材からなることにより、プラズマディスプレイパネルの解体方法に応用することが可能となり、利用価値が向上する。
請求項5に係る発明によれば、粘着シートが、アクリル系粘着シート、ウレタン系粘着シート、シリコーン系粘着シートのいずれかであることにより、多種多様な高分子系粘着シートの剥離が可能となり、応用範囲の拡大がなされ、利用価値の向上につながる。
請求項6に係る発明によれば、レーザー光が可視光であることにより、ガラス素材を透過することが可能となる。また、紫外線・赤外線といった目視できないレーザー光に比して、極めて安全である。更に、レーザー照射を目視により確認することができるので、レーザー成形を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に使用される複合板状体(以下、パネル体と称する)の概略断面図を示している。
【0015】
パネル体(1)は、少なくとも一方が特定波長のレーザー光を透過する板状体からなる一対の板状体を対向して粘着シートにより貼着した薄板体である。ここでは、一例として、一方の板状体にガラス板、もう一方の板状体に金属板を使用した薄板体を用いた場合について説明するが、この他にも、例えば、ガラス板とガラス板、ガラス板と合成樹脂板、合成樹脂板と合成樹脂板等、少なくとも一方が特定波長のレーザー光を透過する板状体で構成されるパネル体であれば本発明を適用することは可能である。
パネル体(1)は、ガラス板(11)と、金属板(12)と、粘着シート(13)とから構成されており、ガラス板(11)と金属板(12)とを対向させ、この間に粘着シート(13)を介装して、ガラス板(11)と金属板(12)とを強固に貼着させることにより形成される。
粘着シート(13)は、常温・常圧状態では固体状態であるが、低圧力下では被着体に濡れていく液体的性質を有しており、室温・無溶剤の状態において、指圧程度の圧力での接着を可能としている。
【0016】
ガラス板(11)としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス等を例示することができる。
金属板(12)を構成する金属としては、例えば、プラズマディスプレイパネルに使用される熱伝導率の高い金属、アルミニウム、タングステン、金、銀、銅等を例示することができる。
粘着シート(13)としては、例えば、不織布、アクリルフォーム等の基材両面に、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系等の粘着剤を貼着させたものを例示することができる。
【0017】
アクリル系粘着剤とは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルモノマーを共重合、グラフト重合、ブロック共重合等、各種重合することにより構成されており、主な形態として、溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型を挙げることができる。
ウレタン系粘着剤とは、分子中に1つ以上のウレタン結合を含むエラストマー、ポリマーもしくはオリゴマーより構成されており、主な形態、物性等はアクリル系粘着剤とほぼ同じである。
シリコーン系粘着剤とは、シリコーンガムと呼ばれる2次元状に高分子量化されたシリコーンと、シリコーンレジンと呼ばれる3次元状に高分子量化されたシリコーンから構成されており、通常、固体状態であるので溶解させるために有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン)を使用している。
【0018】
図2は、本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法の工程を示す概略フローチャートである。
以下、図2を参照しつつ、粘着シートの剥離方法について説明する。
【0019】
本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法としては、二種類の手段を挙げることができる。
第一の剥離手段(A)としては、先ず、第一工程として、粘着シート(13)に格子状のレーザー溝を形成する処理を行う。
続いて、第二の工程として、格子状のレーザー溝が形成されたパネル体(1)を有機溶剤に浸漬させる処理を行う。
以上の工程により、ガラス板(11)より粘着シート(13)を剥離する。
【0020】
第二の剥離手段(B)としては、粘着シート(13)の表面全体に亘ってレーザー光を照射し、ガラス板(11)より粘着シート(13)の剥離を行う。
【0021】
以下、本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法について、図を参照しつつ説明する。尚、本発明は以下に説明する方法に限定されるものではない。
先ず、本発明において使用される光学系について以下に説明する。
【0022】
図3は、本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に使用される光学系の概略構成図である。
本発明に係る光学系は、被照射体となるパネル体(1)と、パネル体(1)にレーザー光を照射するレーザー装置(2)と、レーザー装置(2)より照射されるレーザー光を集光する集光レンズ(3)とから構成される。
【0023】
配置方法としては、先ず、レーザー装置(2)を安定した場所に水準器等を用いて略水平になるようにして設置する。
次いで、集光レンズ(3)をレーザー装置(2)より所定の間隔をもって光学台(図示せず)に配設する。この際、レーザー装置(2)より照射されるレーザー光が集光レンズ(3)の略中央を通り、且つレーザー光が屈折しないようにすることが好ましい。
【0024】
この後、レーザー装置(2)より集光レンズ(3)を介して照射されるレーザー光と略垂直となるようにしてパネル体(1)を配置する。この際、パネル体(1)のガラス板(11)面が集光レンズ(3)に対向するように且つ所定の間隔をもって配置する。
より具体的には、パネル体(1)のガラス板(11)面を集光レンズ(3)に対向させ、二次元ステージ等の駆動機構(図示せず)に固定し、この駆動機構を上記した光学台に配設する。このことにより、パネル体(1)をレーザー光に対して上下左右の二次元的に移動させることが可能となる。
またこの際、駆動機構は、照射されるレーザー光がパネル体(1)の全面に行き渡ることができるだけの移動幅を有するものを選択する。これにより、後述する粘着シート(13)へのレーザー光の格子状照射或いは全面照射が可能となる。
【0025】
ここで、レーザー装置(2)は、ガラス板(11)を透過する波長(例えば、400〜700nm)のレーザー光を照射できるものを選択する。これにより、レーザー光が、ガラス板(11)を透過し、直接、粘着シート(13)に照射され、ガラス板(11)を傷つけることなく粘着シート(13)を焼き融かすことが可能となる。
また、パネル体(1)と集光レンズ(3)との距離は、集光したレーザー光が粘着シート(13)を焼き融かせるエネルギー密度(例えば、3〜5J/cm)を有する距離に設定することが重要であり、エネルギー密度が充分であれば、レーザー光の焦点が粘着シートの表面から外れていても問題はない。
【0026】
レーザー装置(2)としては、ガラス板(11)を透過する波長のレーザー光を照射できるものであれば特に限定はなく、例えば、第二高調波のパルスNd−YAGレーザー(波長532nm、パルス幅10ms)を用いることができる。
集光レンズ(3)としては、レーザー装置(2)より照射されるレーザー光を粘着シートを焼き融かすエネルギー密度に集光できるものであれば特に限定はなく、例えば、焦点距離200mmのレンズを例示することができる。
【0027】
次に、図2及び図3を参照しつつ、本発明に係る粘着シートの剥離方法について具体的に説明する。
先ず、第一の手段(A)及び第二の手段(B)に共通するレーザー照射方法について説明する。
【0028】
先ず、レーザー装置(2)よりレーザー光を集光レンズ(3)を介してパネル体(1)のガラス板(11)面に照射する。ここで、レーザー光の波長はガラス板(11)を透過する波長(例えば、400〜700nm)に調整する。波長の調整ができない場合は、ガラス板(11)を透過する波長のレーザーを照射できるレーザー装置(2)を使用すれば問題ない。
より好ましくは、ガラス板(11)の透過率と粘着シート(13)の吸収率の積が最大になる波長近傍のレーザー光(例えば、500〜700nm)を照射することが望ましい。
これにより、レーザー光はガラス板(11)を透過し、直接、粘着シート(13)に照射され、ガラス板(11)を傷つけることなく粘着シート(13)を効率良く焼き融かすことが可能となる。
次いで、パネル体(1)を駆動機構によりレーザー光軸から見て上下左右の二次元方向に機械的に移動させる。これにより、粘着シート(13)にレーザー溝が形成される。
ここで、ガラス板(11)を透過する波長のレーザー光は可視光であるため、紫外線・赤外線といった目視できないレーザー光に比して、極めて安全である。また、レーザー照射を目視により確認することができるので、レーザー溝の形成を容易に行うことが可能となる。
【0029】
続いて、第一の剥離手段(A)について詳述する。
図4(a)は、パネル体の粘着シートに格子状のレーザー溝を形成した一例を示す平面図であり、(b)はその正面図である。また、図5は格子状のレーザー溝が形成されたパネル体を有機溶剤に浸漬している状態を示す外観図である。
【0030】
第一の剥離手段(A)では、先ず、被照射体となるパネル体(1)のガラス板(11)側の面に対してレーザー光を照射する。
次いで、上記駆動機構を操作して、パネル体(1)の粘着シート(13)に対して格子状にレーザー溝を形成する(図4参照)。この際、粘着シート(13)の縁部に至るまでレーザー溝(4)が形成されるようにする。
この後、図5に示す如く、粘着シート(13)に格子状のレーザー溝(4)が形成されたパネル体(1)をガラス製容器(6)に収容した有機溶剤(5)に浸漬させる。この際、パネル体(1)が有機溶剤(5)に完全に浸漬するようにする。
有機溶剤は粘着シート(13)の粘着力を低下させる作用があるため、粘着シート(13)に格子状のレーザー溝(4)をその縁部に至るまで形成しておくことで、有機溶剤(5)と粘着シート(13)との接触面積が広くなり、剥離性を大きく向上させることができる。
これにより、ガラス板(11)から粘着シート(13)を容易に剥離することが可能となる。
【0031】
また、図4において、格子状のレーザー溝(4)は、縦方向及び横方向に二本ずつ等間隔に形成されているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、レーザー溝(4)の間隔が1〜数mmとなるような細かい網目状にレーザー溝(4)を形成することにより、粘着シート(13)と有機溶剤(5)との接触面積をより拡大し、剥離性を大きく向上させることも可能である。
尚、有機溶剤としては、例えば、アセトン、トルエン、キシレン、クレゾー等を例示することができる。
【0032】
次に、第二の剥離手段(B)について詳述する。
第二の剥離手段(B)では、駆動機構により被照射体となるパネル体(1)を操作して、パネル体(1)のガラス板(11)側の面全面、正確には、粘着シート(13)の全面に亘ってレーザー光を照射する。
上述したように、レーザー光の波長を予め設定することで、直接粘着シート(13)を焼き融かすことが可能であるので、このレーザー光をガラス板(11)側の面全面に亘って照射することにより、粘着シート全面を焼き融かすことが可能となる。
これにより、ガラス板(11)から粘着シート(13)を残存させることなく容易に剥離することが可能となる。
また、この際、レーザー出力は高ければ高いほど好ましい。これは、レーザー出力が高ければ、エネルギー密度を保ったまま粘着シート(13)表面へのレーザー照射面積を広くすることができ、レーザー溝(4)を形成する工程を、より短時間に省略することができるからである。
【0033】
以上、上記第一・第二の剥離手段(A、B)を活用して、ガラス板(11)を傷つけることなく、粘着シート(13)を剥離することが可能となる。
また、粘着シート(13)と共にガラス板(11)より剥離された金属板(12)においては、従来同様、機械研磨等を行うことによって、容易に粘着シート(13)を剥離することができる。
これにより、ガラス板(11)及び金属板(12)を効率良く再利用することが可能となる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて、本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法について詳述する。
【0035】
(実施例)
被照射体となる試料(約100mm×100mm)として、ガラス板(厚さ約3mm)とアルミ板(厚さ約3.5mm)をポリアクリル酸エステル系粘着シート(厚さ約2mm)により貼着したものを用意した。
次いで、第二高調波のパルスNd−YAGレーザー(波長532nm、パルス幅10ms)を配置し、光軸上に焦点距離200mmの集光レンズを設置した。また、集光レンズより約195mmの位置において、ガラス板面がレーザーに対向するようにして、二次元ステージに試料を固定した。
【0036】
次いで、照射フル−エンス3J/cm、繰り返し周波数4Hzの条件にてレーザー光を照射し、粘着シート表面上で約2mm×2mmに集光させた。
この後、二次元ステージを操作し、粘着シート表面において縦方向・横方向共に二本ずつ略等間隔になるようにレーザー溝を形成させた。
以上により得られた試料を、約一日の間、アセトンに浸漬させた後、取り出した。
結果として、粘着シートの中心部においても軟化・粘着力の低下が確認でき、粘着シートの約80%を剥離することができた。
【0037】
(比較例)
実施例と同様の試料を用いて、レーザー光による処理は施さずに、約二日間、アセトンに浸漬させた後、取り出した。
結果として、粘着シートの縁部のみが軟化し粘着力が低下したが、大部分が剥離できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、プラズマディスプレイ等の強粘着シートにより貼着された複合板状体の分離手段として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に使用される複合板状体の概略断面図である。
【図2】本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法の工程を示す概略フローチャートである。
【図3】本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に使用される光学系の概略構成図である。
【図4】本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法に使用される複合板状体の粘着シートに格子状のレーザー溝を形成した一例を示す平面図である。
【図5】本発明に係るレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法において格子状のレーザー溝が形成されたパネル体を有機溶剤に浸漬している状態を示す外観図である。
【符号の説明】
【0040】
1 パネル体
11 ガラス板
12 金属板
13 粘着シート
2 レーザー装置
3 集光レンズ
4 レーザー溝
5 有機溶剤
6 ガラス製容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が特定波長のレーザー光を透過する板状体からなる一対の板状体を対向して粘着シートにより貼着した複合板状体から前記粘着シートを剥離する方法であって、
前記複合板状体の前記レーザー光を透過する板状体面に対して、前記特定波長のレーザー光を照射することを特徴とするレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法。
【請求項2】
前記特定波長のレーザー光を照射する工程において、前記複合板状体の粘着シートに格子状の溝を形成し、
該複合板状体の粘着シートに格子状の溝を形成した後、当該複合板状体を有機溶剤に浸漬させることを特徴とする請求項1記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法。
【請求項3】
前記特定波長のレーザー光を照射する工程において、該レーザー光を前記粘着シート全面に亘って照射することを特徴とする請求項1記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法。
【請求項4】
前記特定波長のレーザー光を透過する板状体がガラス素材からなることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法。
【請求項5】
前記粘着シートが、アクリル系粘着シート、ウレタン系粘着シート、シリコーン系粘着シートのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法。
【請求項6】
前記レーザー光が可視光であることを特徴とする請求項4記載のレーザー光を用いた粘着シートの剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−204706(P2007−204706A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28350(P2006−28350)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年11月4日 平成17年電機関係学会 関西支部連合大会実行委員会発行の「平成17年電気関係学会関西支部連合大会講演論文集」に発表
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】