説明

レーザー印刷用積層体、およびレーザー印刷方法

【課題】細密な図形や文字をレーザー光照射によって印刷しうるレーザー印刷用積層体を提供する。
【解決手段】少なくとも透明基材フィルム層の一の面に、酸化チタン顔料を含有する白インキ層からなる下地層とカーボン顔料を含有する黒インキ層とがこの順に積層されたレーザー用印刷層が形成されたことを特徴とする、レーザー印刷用積層体である。前記透明基材フィルム層の前記下地層と対向する面に、淡色インキ層からなる遮蔽層が形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細密な図形や文字をレーザー光照射によって印刷しうるレーザー印刷用積層体、前記レーザー印刷用積層体を用いた、食品、医薬品、医薬部外品、および医療器具等の包装に使用される袋体、前記袋体に、液体、粘調体、固体、粉体、顆粒状等の内容物を収納した包装体、および、レーザー光による印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートシール性を有する積層体を用いて周縁端部をヒートシールして袋体を調製し、これに内容物を収納した包装体が流通している。これらの包装体には、商品名、内容物、使用上の注意などの消費者による目視確認が可能な文字や図柄が印刷され、また、生産者、商品名等を数字化した後に図柄化したバーコードが当該商品の固定情報として印刷されている。このような固定情報は、包装材料を製造する段階で印刷されるが、一方、消費期限、ロットナンバー等の日々変化しうる変動情報は、サーマルプリンタ、インクジェットプリンタ、およびレーザー印刷機等を用いて積層体に直接印刷したり、予め前記印刷手段を用いて調整したラベルを商品やその包装体に貼付されることが多い。
【0003】
このような変動情報として、消費期限の他に製造年月日、製造時、ロットナンバーがあり、更に近年の「安全・安心」に対する国民的関心の高まりにより、商品の原材料情報等のトレーサビリティに関する情報を個々の商品に記載する要望があり、特に食品、医薬品、医薬部外品または医療器具の分野でその要望が高まっている。これに対応して、多くの情報を載せることが可能なGS1DataBar等、二次元バーコードを含むバーコードの印刷が実施されつつある。
【0004】
包装用積層体に固定情報と変動情報とを表示する方法として、固定情報が印刷された包装用積層体に変動情報を包装機上で直接印刷する方法や、包装用積層体に変動情報と固定情報とを包装機上で直接印刷する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
一般的な印刷手段として、サーマルプリンタやインクジェットプリンタを用いて積層体表面に直接インキを載せる方法があり多用されているが、サーマルプリンタのインクリボンやインクジェットプリンタのインキ等の消耗品は高価であり、多くの変動情報を印刷するにはランニングコストが高額になるという問題がある。また、これら消耗品の交換を徒過すると印刷忘れが発生する場合もある。更に、UV硬化型インキを用いたオフセット印刷による包装用積層体への変動情報直接印刷も行われているが、包装用積層体表面の汚れや包装用積層体の厚みむらなどによって、印刷カスレや文字欠け等が発生する場合がある。
【0006】
これらの問題を解消する方法として、レーザー光を照射して印刷する方法がある。例えば、アルミ蒸着紙のアルミ蒸着面上に、白インキ、黒インキおよびOPニスを塗布して製造したレーザー印刷用積層体が開示されている(特許文献2)。特許文献2記載の方法は、従来技術の問題点、即ち、予め印刷したレーザー発色タイプのインキにレーザー光を照射して発色する印刷方法は、高速印刷が可能であるがインキが耐光性や耐薬品性などに劣ること、ラベル紙基材上に着色インキ層を形成し、レーザー光を照射して着色インキ層を除去し、下地のラベル紙基材の色との対比で印刷を行う方法では印刷の鮮明さが不足し、印刷部分のオーバーコート層及びインキ層が完全に除かれるため、印刷部分が耐擦傷性、耐水性などに欠ける場合があることなどに鑑みてなされたものであり、上記構成により、レーザー光の照射によって鮮明な印刷を高速で行うことができ、かつ、印刷された部分の耐光性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性などの性能に優れる、という。
【0007】
また、透明容器にラベルを貼着する方法も考案され、離型シート上、粘着層、透明基材シートが積層され、前記透明基材シートの表面に不透明な塗膜からなる表示部が形成され、前記透明基材シートの裏面に前記不透明な塗膜とは異なる色の塗膜からなる遮蔽部が形成され、前記表示部にレーザー光の照射により上記所定事項が印刷されたラベルが開示されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−181721号公報
【特許文献2】特開平9−123607号公報
【特許文献3】特開2006−220695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2記載の技術は、その実施例に示すように、アルミ蒸着紙のアルミ蒸着面上にレーザー用印刷部分を形成するものである。アルミ蒸着紙は不透明であり、これを用いて製造された袋体は、外観から内容物を肉眼で確認することができない。特に、医療器具、医薬品、食品等の高度な安全性が要求される分野では、内容物が肉眼で確認できうる透明性が強く要求されているが、未だ実現されていない。
【0009】
更に、特許文献3記載の方法は、レーザー印刷の際に、ラベルに形成された粘着剤がレーザー光により加熱され臭気を発生する場合があり、作業環境を確保するための設備投資も必要となる。
【0010】
また、バーコードは、1回の読み取りで全ての情報が得られるように変動情報と固定情報とを含み、各包装体に1箇所印刷されることが好ましい。このためには、倍率1.0の最小バー幅0.33mmや倍率0.76倍の最小バー幅0.25mmのGS1DataBar等の複雑かつ細密なシンボルを印刷しうることが要求される。
【0011】
しかしながら、レーザー印刷はインキ層を除去することにより印刷を施す手段であり、インキ層の厚さのバラつきや、レーザー出力の変動によりインキ層の均一な除去が困難であり、細密な印刷が困難となる場合がある。特に、透明性を有する包装用積層体の表面に塗布したインキ層の場合には、積層体が透明であるためインキ層の除去制御がより困難となり印刷が難しく、またレーザー印刷を行っても、印刷部から内容物が透けたり、内容物の色や陰影によってレーザー印刷の判読が困難となり、機械によるバーコードの読み取り時にエラーが発生する場合がある。また、透明基材フィルムを透過したレーザー光が裏面の遮蔽層に到達し、ダメージによりガスを発生し、層間で発泡した外観を呈する場合があり、バーコードなどが印刷された場合に機械による判読が困難となる場合がある。このような問題は、波長が長く、透明基材フィルムに吸収されやすい二酸化炭素ガスレーザーで発生するが、YVO4レーザーやYAGレーザーのように波長が短く、透明基材フィルムに吸収され難い場合には、透明基材フィルムの裏側に形成された遮蔽層がダメージを受けやすくなる。
【0012】
また、ガスバリア性を有する包装用積層体にレーザー印刷を行う場合には、レーザー印刷の際にバリア層を破壊する場合があるが、透明基材フィルムの場合には、光学的検査でバリア層の破壊を検出する方法がなく、すなわち透明包装用積層体のバリア性を確保することが極めて困難な状況にある。
【0013】
更に、迅速に多くの情報を獲得するため、例えばGS1DataBar等のシンボルは機械読み取りが前提となるが、包装用積層体の剛性が低いと内容物入りの包装体から微細なシンボルを読み取ることが困難となる。
【0014】
上記現状に鑑み、本発明は、透明基材フィルムに細密かつ読み取りやすいバーコードなどをレーザー印刷しうるレーザー印刷用積層体を提供するものである。
加えて、バリア性を有する透明積層体にレーザー印刷を施した場合にもバリア性にダメージを与えず、またバリア性にダメージが与えられた可能性があるレーザー印刷部を容易に検出できるレーザー印刷用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、レーザー印刷用積層体について詳細に検討した結果、透明基材フィルムに酸化チタン顔料を含有する白インキ層(以下、単に白インキ層と称する)からなる下地層とカーボン顔料を含有する黒インキ層(以下、単に黒インキ層と称する)とを積層してなるレーザー印刷用積層体は、例えばYVO4レーザー光などを照射することで細密なレーザー印刷が可能であり、得られたレーザー印刷は機械読み取りが可能であること、前記透明基材フィルムの下地層に対向する面に淡色インキ層からなる遮蔽層を形成すると、たとえ透明基材フィルムがガスバリア性フィルムであってもガスバリアの確保が容易であること、更に、最内層にヒートシール層が形成されるものは、外周をヒートシールすることで袋体を製造しうること、また、透明基材フィルムに白インキ層からなる下地層と黒インキ層とを積層してなるレーザー印刷用積層体を用いてラベルを調整すれば、予め粘着層を形成した透明基材フィルムにレーザー印刷を行ってもレーザー光が粘着層に影響を与えず、このため臭気などの発生を抑制しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち本発明は、少なくとも透明基材フィルム層の一の面に、白インキ層からなる下地層と黒インキ層とがこの順に積層されたレーザー用印刷層が形成されたことを特徴とする、レーザー印刷用積層体を提供するものである。
【0017】
また、前記レーザー印刷用積層体のレーザー用印刷層にレーザー光が照射され、前記黒インキの少なくとも一部が除去されて下地層が露出され、意匠が形成されたことを特徴とするレーザー印刷付き積層体を提供するものである。
【0018】
また、前記レーザー印刷用積層体、または前記レーザー印刷付き積層体の前記最内層のヒートシール層を対向して積層し、外周を袋状に溶着してなる、袋体を提供するものである。
【0019】
更に、前記袋体に内容物を収納し、前記開口部をヒートシールしたことを特徴とする包装体を提供するものである。
また、前記レーザー印刷用積層体の最内層に、粘着層を介して剥離シートが積層され、前記レーザー用印刷層にレーザー光が照射され、前記黒インキの少なくとも一部が除去されて下地層が露出され、意匠が形成されたことを特徴とする、ラベルを提供するものである。
【0020】
加えて、前記レーザー印刷用積層体の前記レーザー用印刷層に、レーザー光を照射して黒インキ層の少なくも一部を除去し、前記下地層を露出させて意匠を印刷することを特徴とする、レーザー印刷方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のレーザー印刷用積層体は、透明基材フィルムを使用するため内容物を肉眼で観察することができ、医療器具、医薬品、医薬部外品、食品などの安全性に対する要求の強い分野に好適に使用することができる。
【0022】
本発明のレーザー印刷用積層体は、包装機で連続的にレーザー印刷が可能であるため、大量生産に適する。
本発明のレーザー印刷付き積層体は、これを用いて袋体、内容物が包含された包装体、裏面に粘着層が形成されたラベルに調製することができ、各種の用途に好適に使用することができる。
【0023】
本発明のレーザー印刷用積層体は、細密なバーコードなどを高精度にレーザー印刷することができるため、単位面積当たり多くの情報を提供することができ、かつ機械読み取りが確実である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の第一は、少なくとも透明基材フィルム層の一の面に、白インキ層からなる下地層と黒インキ層とがこの順に積層されたレーザー用印刷層が形成されたことを特徴とする、レーザー印刷用積層体である。以下、本発明について、図面等を用いて詳細に説明する。
【0025】
本発明のレーザー印刷用積層体は、図1に示すように、透明基材フィルム(10)の上に白インキ層からなる下地層(23)と黒インキ塗膜(25)とが形成され、前記下地層(23)と黒インキ層(25)とによりレーザー用印刷層(20)が形成される。前記レーザー用印刷層(20)は、透明基材フィルム(10)の一部に形成されることが好ましい。レーザー印刷用積層体を用いて袋体を製造した場合、内容物の肉眼での確認が容易だからである。なお、前記透明基材フィルム(10)には、レーザー用印刷層(20)以外の部分に更にデザイン印刷層(70)が形成されていてもよい。この際、デザイン印刷層(70)は、図1に示すように透明基材フィルム(10)のレーザー用印刷層(20)のある側に形成してもよく、レーザー用印刷層(20)のない側に裏刷りで形成してもよい。
【0026】
更に、図2に示すように、透明基材フィルム(10)の前記下地層(23)と対向する面に、淡色インキ層からなる遮蔽層(30)が形成されていてもよい。遮蔽層(30)の存在によって、レーザー印刷の機械読み取りが容易になる。なお、図3に示すように、淡色インキ層からなる前記遮蔽層(30)は、淡色インク層(33)と淡色インク層(35)との2層など、多層からなるものであってもよい。
【0027】
更に、透明基材フィルム(10)は、単層に限定されず、図4に示すように、透明基材フィルム(13)と透明基材フィルム(15)など、2層以上のフィルムの積層フィルムであってもよい。
【0028】
本発明のレーザー印刷用積層体は、図5に示すように、前記透明基材フィルム(10)または前記遮蔽層(30)より内側に、透明ガスバリア層(40)が積層されたものであってもよい。これによりレーザー光がガスバリア層(40)を透過することを回避でき、ガスバリア性が確保され、内容物の変質を効率的に回避することができる。更に、図6に示すように、最内層にヒートシール層(50)が形成されていてもよい。ヒートシール層の形成によって、外周部をヒートシールすることで簡便に袋体を形成することができる。なお、ヒートシール層に代えて粘着層と剥離シートとを積層させると、透明ガスバリア性ラベルとして使用することができる。
【0029】
(1)透明基材フィルム
本発明で使用する透明基材フィルムとしては、可視光透過性を有するものであり、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;6,6−ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアクリロニトリルフィルム;ポリイミドフィルム等を用いることができる。上記透明基材フィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械強度や寸法安定性を有するものが好ましい。なお、本発明では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを好適に使用することができる。耐熱性や機械的強度に優れるからである。特に、透明フィルムに吸収され易く、かつエネルギー出力の調整が困難な炭酸ガスレーザーを使用した場合にも、レーザー用印刷層を透過したレーザー光によりフィルムが分解して生じる臭気の発生を極力回避することができる。
【0030】
本発明で使用する透明基材フィルムは、上記樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては数10%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0031】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を内容物の視認性が損なわれない範囲内で使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0032】
また、透明基材フィルムは、単層に限定されず積層フィルムであってもよい。好ましくは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたは二軸延伸ポリプロピレンフィルムと他の透明基材フィルムとの積層フィルムである。例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、接着層を介して他の2層以上のフィルムを積層した積層フィルムであっても構わない。積層可能な他のフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコールフィルム、ポリアミドフィルム、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルを主成分とするアクリル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアセタールフィルム、アセチル・ジ又はトリ・セルロースの繊維素誘導体フィルムや、ポリカーボネートフィルムなどを例示することができる。
【0033】
本発明のレーザー印刷用積層体は、これを用いて包装材に調製することができ、内容物を収納して包装体として使用することができる。内容物の形状によっては、包装体の表面に凸凹が発生し、レーザー印刷の機械読み取りが困難となり、または誤読が発生する場合があるが、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと他の透明基材フィルムとの積層フィルムを使用すれば、透明基材フィルム層(10)の剛性を確保することができ、レーザー印刷の機械読み取りを円滑に行うことができる。更に、包装体のレーザー印刷が、ヒートシール時の熱収縮により生じるヒートシール部の波打ち現象の影響を受け易い場合には、耐熱性が大きい二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することが好ましい。
【0034】
フィルムの積層順は特に限定することは無いが、可能な限り表面側を二軸延伸ポリプロピレンフィルムとすれば、レーザー光照射時の臭気発生を抑制することができ、好都合である。
【0035】
透明基材フィルムを積層材中に積層するには、透明基材フィルムを構成する上記フィルムを、2液反応硬化型接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼り合わせるノンソルベントラミネート法、上述した樹脂を加熱溶融させて押し出し貼り合わせるエキストルージョンラミネート法等の公知の積層方法によって形成することができる。Tダイ押し出しラミネーション法の場合は必要に応じてアンカーコート剤を用いることができる。
【0036】
本発明で使用する透明基材フィルムの厚さは、特に制限を受けるものではないが、包装用積層材としての適性及び加工性を考慮すると、単層、多層に係わらず20〜120μmであることが好ましく、より好ましくは20〜80μmである。フィルムの厚さは、収納する内容物の重量、種類や形状、レーザー印刷の際に使用するレーザー光の出力や波長、照射時間、透明基材フィルムの種類などによって適宜選択することができる。例えば、炭酸ガスレーザーの場合、出力によっては透明基材フィルムの表面が5〜50μmの深さに掘り込まれる場合があり、透明基材フィルムとしては20〜60μmの厚さのものを使用することが好ましい。透明基材フィルムが多層の場合には、厚さ30〜120μm、好ましくは30〜80μmが好適である。
【0037】
なお、透明基材フィルム(10)は、透明性が確保されれば無色に限定されず、透明赤色、透明黄色、透明茶色であってもよい。
(2)レーザー用印刷層
レーザー用印刷層(20)は、白インキ層からなる下地層(23)と黒インキ層(25)とからなる。白インキ層を構成する酸化チタン顔料は、レーザー光による変色が少なく、レーザー印刷の判読が容易だからである。また、黒インキ層(25)としてカーボン系顔料を用いると、レーザー光照射による除去が容易であり、好ましい。
【0038】
レーザー印刷の場合、レーザー用印刷層(20)の色は、レーザー光を照射して黒インキ層(25)を除去し、その下に存在する下地層(23)とのコントラストによりレーザー印刷を表示するものであり、理論上コントラストが大きければ、赤色と緑色、青色と黄色等の色の組み合わせを用いることもできる。しかしながら、印刷をCCDカメラで読み取ることを前提とする場合には、実際には上記白色の下地層と黒色の黒インキ層との組み合わせに限定される。なお、赤色LEDのリーダーで印刷を読み取る場合は、白黒以外の組合せでも識別可能である。
【0039】
なお、レーザー用印刷層(20)のサイズは、用途に応じて適宜選択することができる。また、下地層(23)は、図1に示すように同サイズを積層したものであってもよいが、黒インキ層(25)で下地層(23)の表面を被覆することが外観上好ましい。
【0040】
レーザー用印刷層(20)の厚さは、レーザー印刷方法、レーザー光の種類、出力などによって適宜選択することができる。一般には、下地層(23)の厚さは、1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。1μmを下回ると、レーザー印刷の際に、白色度が低下し、レーザー用印刷層のコントラストが低く、機械読み取りが困難となる場合がある。また、5μmを超えても白色度はそれ以上、向上せず、無駄である。また、黒インキ層(25)の厚さは、0.1〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜2μmである。0.1μmを下回ると下地層(23)を破損し易くなり、不利である。一方、3μmを超えるとレーザー印刷の際の照射時間が長くなったり、出力を向上させる必要があり、無駄である。上記範囲で、黒インキ層(25)を除去し、下層の白インキ層を露出させ、明瞭なコントラストを発生させて判読し易いレーザー印刷を行うことができる。
【0041】
レーザー用印刷層(20)は、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
なお、レーザー用印刷層(20)は、透明基材フィルム(10)の一部に形成されればよいため、他の個所にデザイン印刷層(70)を形成することができる。デザイン印刷層(70)は、レーザー用印刷層(20)に重複しないことが好ましい。
【0042】
(3)遮蔽層
本発明のレーザー印刷用積層体は、前記透明基材フィルム(10)の下地層(23)と対向する面に、淡色インキ層からなる遮蔽層(30)が形成されることが好ましい。
【0043】
レーザー印刷用積層体は、図7に示すように、レーザー用印刷層(20)にレーザー光を照射し、黒インキ層(25)を除去し、下地層の白インキ層(23)を露出させ、黒インキ層(25)と下地層の白インキ層(23)とのコントラストにより、文字、図柄、およびシンボル等を発現させるものである。レーザー光の照射により黒インキ層(25)を除去する際、通常、その下部にある白インキ層(23)も部分的に除去される。この白インキ層(23)の除去により白インキ層(23)の白色度が低下し、読み取りランクが低下する場合があるが、図7に示すように、透明基材フィルム(10)の下地層(23)に対抗する面に遮蔽層(30)を形成することで、下地層(23)の白色度が低下した場合でもレーザー用印刷層(20)のレーザー印刷のコントラストを高く維持することができる。また、遮蔽層(30)を形成することで、レーザー光の照射制御をより簡便に行うことができる。すなわち、本来は、レーザー光照射によってレーザー用印刷層(20)の黒インキ層(25)のみを除去し、黒インキ層(25)と白インキ層(23)とのコントラストによりレーザー印刷を行えばよいが、黒インキ層(25)のみの除去は困難であるため白インキ層(23)の除去の程度によっては白色度が低下し、コントラストも低下する。更に、レーザー光の出力が高過ぎたり、レーザー用印刷層(20)のインキの塗布量がばらついて、塗布量が少なかったりした場合には、図8に示すように、白インキ層(23)が完全に除去される場合もある。このような場合であっても、遮蔽層(30)が存在すれば、淡色インキ層(30)と黒インキ層(25)のコントラストにより、レーザー印刷の読み取りを可能にすることができる。
【0044】
遮蔽層(30)を構成する淡色インキ層としては、レーザー用印刷層(20)のコントラストの確保ができればよく、白色インキ、白色インキと他の色インキとの混合であって、明度の高いインキが例示される。遮蔽層(30)は、これらの単色からなる場合であってもよいが、たとえば白色インキと銀色インキなどの2種以上のインキの積層であってもよい。なお、本発明では、遮蔽層(30)として、酸化チタン顔料を含有する白インキ層を使用することが好ましい。黒インキ層とのコントラストに優れ、かつレーザー光による劣化を回避することができるからである。より好ましくは、白インキと銀色インキとの積層である。レーザー用印刷層(20)に、より大きなコントラストを付与することができるからである。
【0045】
なお、レーザー印刷の読み取り方式には、赤色LEDを用いるものと、CCDカメラ(可視光)を用いるものとがあるが、CCDカメラを用いた読み取り方式は高度のコントラストを要求するため、遮蔽層は白色単色インキであることが、より好ましい。
【0046】
遮蔽層(30)の厚さは、1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。
遮蔽層(30)は、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。また、遮蔽層(30)は下地層(23)によって被覆され、外部から判別しえないことが外観上好ましい。
【0047】
(4)透明ガスバリア層
透明ガスバリア層(40)としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂やポリビニルアルコールを主成分とする組成物をコーティングした樹脂フィルム、メタキシレンジアミン(MXD)ナイロンなどの延伸ポリアミド系樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂層を含む二軸延伸多層ポリアミドフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなるフィルム、基材層に酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物の透明蒸着膜を有する樹脂のフィルム等がある。
【0048】
なお、金属酸化物の蒸着膜を有するフィルムの基材層としては、ポリエチレンテレフタレイト等のポリエステル系樹脂フィルム、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブデン樹脂フィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレイト樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アセタール系樹脂フィルム、フッ素系樹脂、その他がある。また、無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、厚さ50〜3000Å、より好ましくは100〜1000Åのものを好適に使用することができる。このようなフィルムとしては、市販品を使用することもでき、例えば、大日本印刷株式会社製、製品名「IB−PET−WUB」、「IB−ON−FWRC」などを好適に使用することができる。
【0049】
透明ガスバリア層(40)の厚さは、12〜100μmであることが好ましく、より好ましくは12〜30μmである。
なお、本発明では、前記透明基材フィルム(10)または前記遮蔽層(30)より内側に、透明ガスバリア層(40)を積層することを特徴とする。透明基材フィルム(10)にガスバリア性フィルムを使用することも可能であるが、レーザー印刷の際の発熱やレーザー光のエネルギーにより、ガスバリア性が低下する場合がある。このため、レーザー光の影響が少ない透明基材フィルム(10)または遮蔽層(30)より内側に積層することにしたものである。
【0050】
本発明のレーザー印刷用積層体は、レーザー光の照射によってレーザー用印刷層に印刷するものであり、レーザー光によって透明ガスバリア層(40)が損傷を受ける場合がある。透明ガスバリア層(40)の損傷の程度とレーザー用印刷層(20)の読み取りの可否とは直接連動しないが、前記遮蔽層(30)がレーザー光によって損傷を受けた場合には、それに隣接する透明ガスバリア層(40)も損傷を受けたと推察しうる。逆に、判読可能であれば、それよりレーザー光照射側から遠方にある透明ガスバリア層(40)は損傷を受けなかったと判断しうる。したがって、前記遮蔽層(30)を存在させ、レーザー印刷の判読性を評価することで、透明バリア性層(40)の損傷の簡易な評価基準とすることができる。
【0051】
なお、ガスバリア性層が金属箔等のように不透明であれば、光を当てることでガスがリア性層の破壊を確認することができるが、透明である場合には、ガスバリア性層が破壊されても光学的検査で発見することができない。このためインラインで検査することが困難であり、ガスバリア性を有する透明な包装用積層体へのレーザー印刷の適用は、ガスバリア性を保証することが困難なため、実施も困難であった。しかしながら、本発明によれば、遮光層(30)を配設することでガスアリア性を簡便に保証することができる。
【0052】
(5)ヒートシール層および粘着層
最内層を構成しうるヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種の熱融着性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。
【0053】
具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、及びそれらの金属架橋物等の樹脂、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。上記のヒートシール層には、内容物の視認性が損なわれない範囲内で、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0054】
ヒートシール層は、一般には、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜することができる。
【0055】
なお、ヒートシール層(50)として、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、環状ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル等の、ヒートシール性を有すると共にバリア性を有するフィルムを用いてもよい。
【0056】
本発明において、ヒートシール層の厚みは特に限定されないが、一般的には10〜200μmの範囲である。
本発明では、レーザー印刷用積層体やレーザー印刷付き積層体の最内層として、粘着層を介して積層された剥離シートであってもよい。これにより、上記積層体を透明ラベルとして使用することができる。このような粘着層や剥離シートは、従来のラベルに使用されるものを同様に使用することができる。
【0057】
(6)中間層
本発明では、上記に構成に加え、剛性や他の特性を付与するために、透明基材フィルム(10)や透明ガスバリア層(40)とヒートシール層(50)との間に、透明フィルムからなる他の中間層を積層してもよい。このような中間層は単層でも多層であってもよく、ガスバリア性、耐熱性、その他の特性を有していてもよい。
【0058】
(7)デザイン印刷層
本発明のレーザー印刷用積層体は、透明基材フィルム(10)の内側や外側にデザイン印刷層(70)を有するものであってもよい。
【0059】
デザイン印刷層(70)としては、樹脂と溶媒から通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を調製し、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の助剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。
【0060】
このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。インクビヒクルは、版から被印刷物に着色剤を運び、被膜として固着させる働きをする。
【0061】
また、溶剤によってインキの乾燥性が異なる。印刷インキに使用される主な溶剤は、トルエン、MEK、酢酸エチル、IPAであり、速く乾燥させるために沸点の低い溶剤を用いるが、乾燥が速すぎると印刷物がかすれたり、うまく印刷できない場合があり、沸点の高い溶剤を適宜混合することができる。これによって、細かい文字もきれいに印刷できるようになる。着色剤には、溶剤に溶ける染料と、溶剤には溶けない顔料とがあり、グラビアインキでは顔料を使用する。顔料は無機顔料と有機顔料に分けられ、無機顔料としては酸化チタン(白色)、カーボンブラック(黒色)、アルミ粉末(金銀色)などがあり、有機顔料としてはアゾ系のものを好適に使用することができる。
【0062】
デザイン印刷層(70)は、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。また、印刷は、裏印刷でも、表印刷でもよい。
【0063】
(8)外層
本発明のレーザー印刷用積層体は、前記透明基材フィルム(10)の表面側に更に外層を設けてもよい。このような外層としては、透明基材フィルム(10)の用途や意匠性などによって適宜選択することができ、レーザー印刷用積層体表面の滑り性を付与する場合には透明なOPニスを使用することが好ましい。なお、外層は、2層以上の積層とすることができ、外層にデザイン印刷層を形成してもよい。
【0064】
また、レーザー印刷用積層体のヒートシール温度が高い場合等、透明基材フィルム(10)の表面に、例えば透明基材フィルムとして使用する二軸延伸ポリプロピレンフィルム以上の耐熱性、または熱安定性を持たせようとする場合、表面に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することが好ましい。特に、表面をコロナ処理面とすることによってインキの脱落防止を図ることができる。また、易接着性を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層することで、更に多くの種類のインキを使用することもできる。さらに、流通時のインキ落ちや表示部のインキの脱落を保護する目的で、ニス等の透明インキをオーバーコートしてもよい。
【0065】
(9)レーザー印刷方法
本発明に係るレーザー印刷用積層体は、レーザー用印刷層(20)にレーザー光を照射し、黒インキ層(25)を除去し、下地層の白インキ層(23)を露出させ、黒インキ層(25)と下地層の白インキ層(23)とのコントラストにより、文字、図柄、およびシンボル等が発現するものである。
【0066】
上記コントラストによって表現できるのであれば、レーザー印刷は文字に限定されず、記号、図形その他のいずれであってもよい。特に、レーザー印刷は商品ごとの変動情報を個別に印刷することが可能であり、変動情報の記載に好適に使用することができる。なお、レーザー印刷がバーコードである場合には、1回の読み取りで全ての情報が得られるように変動情報と固定情報とを含ませることも可能である。単位面積当たりの情報量を増加させるためには、コントラストを明瞭に出現させる必要があり、かつ細密な線描で印刷できることが望まれる。本発明では、倍率1.0の最小バー幅0.33mmや倍率0.76倍の最小バー幅0.25mmのGS1DataBar等の複雑かつ細密なシンボルを印刷することができる。
【0067】
本発明において、レーザー印刷の際のレーザー光の走査方式としては、ガルバノスキャニング方式が好適であるが、これに限定されるものではない。また、レーザーとしては、YVO4レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー、半導体レーザー光などがあり、半導体レーザー光、YVO4レーザーやYAGレーザーは波長が約1μmであり、炭酸ガスレーザーは、波長が約10μmである。本発明では、これらのいずれも使用することができるが、特にYVO4レーザーを好適に使用することができる。なお、レーザー印刷条件は、印字内容、透明基材フィルム層(10)の厚さや種類、レーザー用印刷層(20)の厚さ、使用するレーザーの種類や波長の種類等に応じて、適宜選択することができる。
【0068】
本発明では、レーザー印刷の後に、前記レーザー用印刷層(20)の背景色を暗色として印刷内容を検査することで印刷不良を検出することができる。印刷の検査時に背景を暗色とし、故意にレーザー印刷部の白色度を低下させると、実際の使用時の読み取り精度を向上させることができる。すなわち、レーザー印刷層付き積層体からなる袋体に内容物を収納して包装体を製造した場合、レーザー印刷自体は規格通りに行われているが、内容物の陰影や色によってリーダーでの読み取りが不能となる場合が発生する。コントラストの低い環境で印刷検査を行うことで、このようなレーザー印刷を排除することができ、流通過程や使用時における包装体における印刷内容の読み取り確度を向上させることができる。したがって、暗色の程度は、このような印刷不良を排除しうるものであればよく、一般には、黒色、灰色、褐色、濃紺色などであり、印刷部の下部に上記色の光不透過の紙板、金属板などの部材を配置することで達成される。
【0069】
なお、レーザー光は、その種類にかかわらず多少は透明基材フィルムを透過するため、その下層に形成された遮蔽層(30)にダメージを与える場合がある。しかしながら、レーザー用印刷層(20)の背景を暗色として印刷検査の際の印刷部のコントラストを故意に低下させ、これにより遮蔽層(30)、さらにガスバリア性層(40)を有する場合には、これらの損傷した可能性のある印刷部を有する包装体、または袋体を効率的に排除することができる。また、本発明のレーザー印刷用積層体が、最内層に粘着層介して剥離シートを積層してラベルとして使用される場合でも、剥離シートの色を暗色とすることにより、同様の効果を得る事ができる。
【0070】
なお、本発明に係るレーザー印刷用積層体にレーザー印刷されたものを、レーザー印刷付き積層体という。
(10)原反
本発明のレーザー印刷付き積層体は、上記透明基材フィルム(10)に下地層(23)、黒インキ層(25)、デザイン印刷層(70)、遮蔽層(30)を形成し、必要に応じて透明ガスバリア層(40)、ヒートシール層(50)、粘着層、剥離シートなどを適宜積層して原反とすることできる。また、前記レーザー印刷用積層体に上記条件でレーザー印刷し、レーザー印刷付き積層体を原反としてもよい。
【0071】
本発明ではこれらの原反を、袋体を成型するための包装材やラベル材として使用することができる。例えば、レーザー印刷用積層体の原反を、図9に示すように切断部(80)で切断し、両端の不要部を除去しつつ巻き取ることによって、図10に示す巻取り状積層体が得られる。本発明では、前記積層体を包装機に装着して包装体やラベルを製造することができるが、原反を製袋機に装着し、製袋機上で不要部分を除去して包装体やラベルを製造してもよい。
【0072】
なお、レーザー印刷前の巻取り状積層体を使用して製袋し、得られた袋体のレーザー用印刷層にレーザー印刷を行う方法も理論的には可能であるが、レーザー光照射の制御は容易でない。そこで、レーザー用印刷層にレーザー印刷を行った後に製袋し、又は裁断してラベルを調製することが好ましい。したがって、レーザー印刷前の巻取り状積層体を製袋機に装着し、製袋機でレーザー用印刷層にレーザー印刷を行い、ついで製袋して袋体を製造することができる。
【0073】
(11)袋体、包装体およびラベル
また、本発明に係る袋体は、レーザー印刷付き積層体の最内層のヒートシール層を対向して積層し、一端に開口部を残して他の周縁端部をヒートシールして形成したものである。袋体の形態としては、筒状タイプ、三方シールタイプ、四方シールタイプ、スタンディングパウチ、ガセットタイプ、封筒貼りシールタイプ、縦ピロー、横ピローなどのピロー包装形態等を任意に選ぶことができ、特に限定されるものではない。
【0074】
また、ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の周知の方法で行うことができる。なお、袋体のヒートシール部には易開封性手段として開封用ノッチを設けてもよい。
【0075】
また、本発明に係る包装体は、上記袋体に内容物を収納し、前記開口部にヒートシールを施して密封したものであり、当該レーザー印刷付き積層体が透明バリア性層を有する場合には、更に脱酸素剤を同封することで、包装体内の酸素を吸収し、好気性微生物の繁殖を防止し、および内容物の酸化劣化を防止することができる。なお、内容物としては固体に限定されず、液体、粘調体、粉体、顆粒状等のいずれであってもよい。
【0076】
更に、本発明のレーザー印刷付き積層体を一部に使用して、包装体を調製することができる。例えば、図11の側面図で示すように、開口部をヒートシールしうるプラスチック製容器(90)にシリンジなどの内容物(93)や、必要に応じて併用しうる脱酸素剤(95)を同封し、前記開口部に前記レーザー印刷付き積層体(100)の最内層のヒートシール層を対向して積層してヒートシールし、前記開口部に溶着部(97)を形成して、包装体を調製することができる。このような包装体としてブリスターパックなどがある。図10の包装体の平面透視図を図11に示す。プラスチックで内容物の形状に適した形状の容器(90)を調製し、内容物(93)などを収納し、レーザー用印刷層(20)を有するレーザー印刷付き積層体(100)を蓋材として使用すると、ヒートシール層にイージーピールシーラントを使用すれば、易開封性を付与することができる。
【0077】
プラスチック製容器(90)は、インジェクション成形、シート成形、ブロー成形等などの成形方法で調製することができる。なお、容器(90)は、開口部をヒートシールして密封容器とするため、少なくとも開口部はヒートシール性の樹脂で調製する必要がある。シリンジなどの医療器具は、安全、安心への要求が極めて高く、商品の原材料情報等のトレーサビリティに関する情報提供の要望が強い。GS1DataBar等の二次元バーコードその他をレーザー印刷することができれば、変動情報を簡便、明瞭かつ迅速に記載することができ、上記要求を担保することができる。
【0078】
また、上記レーザー印刷付き積層体(100)を蓋材として使用することで、レーザー印刷により変動情報の記載が可能であると共に、容器全体を透明にできるため、内容物の確認を容易に行うことができ、安全性の確保が強く求められる医療器具、食品、医薬品、医薬部外品等の分野に好適に使用することができる。
【0079】
また、本発明のレーザー印刷用積層体やレーザー印刷付き積層体を使用してなるラベルは、固定情報や変動情報を記載し、製品に添付することでこれらの情報を製品ごとに提供することができる。
【0080】
(12)包装体の製造方法
本発明の包装体は、本発明のレーザー印刷用積層体を使用し、従来公知の方法で包装体を調製することができる。例えば、横ピロー包装体(180)を製造する場合には、図13に示すように、レーザー印刷前の巻取り状積層体(100)を横ピロー包装機に装着し、定量送りローラー(135a)によって印刷絵柄1単位毎に間歇送りを行い、受け台(115)でレーザー印刷用積層体を平面状とし、その上部に設けたレーザー光照射装置(110)からレーザー光を照射してレーザー用印刷層にレーザー印刷を行い、次いで、印刷検査装置(120)で、前記印刷が正常であったかどうか確認し、その後に、レーザー印刷付き積層体をダンサーロール(130)を上下させながら通過させ、間歇送りから定量送りローラー(135b)に切り換えて連続的に送りだし、次いでフォーマー(140)で筒状に形成し、ヒートシール装置(150)により背シールを施すと共に内容物(93)を内包させ、次いでヒートシール装置(160)によって開口部をヒートシールおよび切断して包装体を製造し、排出コンベア(170)から製造した包装体を系外に排出させる。
【0081】
上記のようにレーザー印刷工程についで印刷検査工程を設けることで、所定の基準に達しないレーザー印刷を有する個所を系外に除去し、製品の品質を向上させることができる。このような検査工程では、例えばレーザー印刷用積層体に予め光電管マーク等を印刷しておき、別途のセンサーで光電管マークの位置を読み取り、印刷検査装置(120)の検査位置に印刷部を停止させる。印刷検査装置(120)は、赤色LEDやCCDカメラ等を用いて印刷内容を検査するものであり、コントラストなどの所定項目を測定し評価する。このような評価基準は適宜選択することができるが、たとえば、実施例に示す米国基準ANSI X3.182は、などに準じて評価することができる。所定の基準に到達しない印刷不良を発見した場合はアラーム信号を出力して、当該不良印刷部を含む積層体に目印となるラベルを貼ったり、内容物の包装を止めて前記の不良積層体で空の袋体を製造したりすることができる。尚、一次元バーコード、二次元バーコードのいずれも、赤色LED、または、CCDカメラで読み取ることができ、バーコードの評価はCCDカメラで実施することができる。
【0082】
また、レーザー印刷付き積層体を蓋材として用いる場合には、開口部をヒートシールしうるプラスチック製容器として、射出成形容器、ブロー成形容器、シート成形容器等のトレーシーラー、またはフォーム−フィル−シール方式のインライン成形充填機等の成形容器の開口部をヒートシールして密封とすればよい。更に、開口部がヒートシールしうるものであれば透明容器である場合に限定されず、滅菌紙や不透明なフィルムを積層し、または他の異材質との組み合わせにより外観が不透明なものであってもよい。少なくも開口部がヒートシール可能であれば、透明性を有する本発明のレーザー印刷付き積層体を蓋材として使用することで、密封容器とすることができ、かつ蓋材が透明であるため、内容物を外部から肉眼で確認することができる。なお、製袋機においても前記包装機と同様にレーザー用印刷層にレーザー印刷を行うことができる。
【実施例】
【0083】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
透明基材フィルムとして、厚さ40μm、幅780mmの両面コロナ処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FOS−BT」)を使用し、グラビア両面印刷機を用いて、前記透明基材フィルムの裏面の所定位置に、酸化チタン顔料の白色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)を用いて、18mm×48mmで印刷して遮蔽層を形成し、前記透明基材フィルムの前記遮蔽層に対向する面に、酸化チタン顔料の白色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)で前記遮蔽層を隠すように19mm×49mmの白インキ層を印刷し、次いで、前記白インキ層を隠すように、カーボン系顔料の黒色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)で20mm×50mmの範囲に黒インキ層を印刷してレーザー用印刷層を形成して、レーザー印刷用積層体Iを製造した。
【0084】
次いで、レーザー印刷用積層体Iの前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの遮蔽層が形成された面の側に、厚さ40μm、幅780mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FHK2」)を二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせ、幅780mmの巻取り状積層体原反Iを製造した。
【0085】
(実施例2)
透明基材フィルムとして、厚さ20μm、幅780mmの片面コロナ処理の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FOR」)を使用し、グラビア両面印刷機を用いて、前記透明基材フィルムのコロナ未処理面の所定位置に、酸化チタン顔料の白色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)を用いて、18mm×48mmで印刷して遮蔽層を形成し、前記透明基材フィルムの前記遮蔽層に対向するコロナ処理面に、酸化チタン顔料の白色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)で前記遮蔽層を隠すように19mm×49mmの白インキ層を印刷し、次いで、前記白インキ層を隠すように、カーボン系顔料の黒色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)で20mm×50mmの範囲に黒インキ層を印刷してレーザー用印刷層を形成して、レーザー印刷用積層体IIを製造した。
【0086】
次いで、レーザー印刷用積層体IIの前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの遮蔽層が形成された面の側に、バリア性層として厚さ12μm、幅780mmのアルミナ蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(大日本印刷株式会社製、製品名「IB−PET−WUB」)と、厚さ40μm、幅780mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FHK2」)を二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせ、幅780mmの巻取り状積層体原反IIを製造した。
【0087】
(実施例3)
透明基材フィルムとして、厚さ20μm、幅780mmの片面コロナ処理の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FOR」)を使用し、グラビア両面印刷機を用いて、前記透明基材フィルムのコロナ未処理面の所定位置に、酸化チタン顔料の白色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)を用いて、18mm×48mmで白インキ層を印刷し、前記白インキ層の上にアルミ粉含有銀色インキ(ザ・インクテック株式会社製、製品名「CLIOS高輝度銀」)を用いて前記白インキ層からはみ出さないように、17mm×47mmの範囲で銀インキ層を印刷して遮蔽層を形成し、前記透明基材フィルムの前記遮蔽層に対向するコロナ処理面に、酸化チタン顔料の白色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)で前記遮蔽層を隠すように19mm×49mmの白インキ層を印刷し、次いで、前記白インキ層を隠すように、カーボン系顔料の黒色インキ(大日精化工業株式会社製、製品名「NT−HRカラー」)で20mm×50mmの範囲に黒インキ層を印刷してレーザー用印刷層を形成して、レーザー印刷用積層体IIIを製造した。
【0088】
次いで、レーザー印刷用積層体IIIの前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの遮蔽層が形成された面の側に、厚さ40μm、幅780mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FHK2」)を二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせ、幅780mmの巻取り状積層体原反IIIを製造した。
【0089】
(実施例4)
透明基材フィルムとして、厚さ25μm、幅780mmの両面コロナ処理二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、製品名「E5202」)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、レーザー印刷用積層体IVを製造した。
【0090】
次いで、レーザー印刷用積層体IVの前記両面コロナ処理二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遮蔽層が形成された面の側に、厚さ15μm、幅780mmの二軸延伸ポリアミドフィルム(株式会社興人製、製品名「ボニールW」)と、厚さ40μm、幅780mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FHK2」)を二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせ、幅780mmの巻取り状積層体原反IVを製造した。
【0091】
(実施例5)
厚さ20μm、幅780mmの両面コロナ処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FOR−BT」)と、厚さ12μm、幅780mmの両面処理二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、製品名「E5202」)とを、二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせ、幅780mmの透明基材フィルムを製造した。
【0092】
前記透明基材フィルムを使用し、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム面に前記遮蔽層を、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム面にレーザー用印刷層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して、レーザー印刷用積層体Vを製造した。
【0093】
前記レーザー印刷用積層体Vの遮蔽層が形成された面の側に、厚さ30μm、幅800mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FNC」)を二液硬化型ウレタン樹脂系アンカー剤を用いて、厚さ15μmの溶融ポリエチレン樹脂による押し出しラミネートにより貼り合わせ、押出し機上で耳落しを施して、幅780mmの巻取り状積層体原反を製造した。
【0094】
(実施例6)
両面コロナ処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FOS−BT」)の裏面に遮蔽層を形成しない以外は、実施例1と同様に操作して、レーザー印刷用積層体VIを製造した。
【0095】
次いで、レーザー印刷用積層体VIの前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのレーザー用印刷層がない面の側に、厚さ40μm、幅780mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FHK2」)を二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせ、幅780mmの巻取り状積層体原反VIを製造した。
【0096】
(実施例7)
片面コロナ処理の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FOR」)の裏面に遮蔽層を形成しない以外は、実施例2と同様に操作して、レーザー印刷用積層体VIIを製造した。
【0097】
次いで、レーザー印刷用積層体VIIの前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのレーザー用印刷層がない面の側に、バリア性層として厚さ12μm、幅780mmのアルミナ蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(大日本印刷株式会社製、製品名「IB−PET−WUB」)と、厚さ40μm、幅780mmの未延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、製品名「FHK2」)を二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせ、幅780mmの巻取り状積層体原反VIIを製造した。
【0098】
(実験1)
前記実施例1〜7で作成した巻取り状積層体原反I〜VIIのレーザー用印刷層に、YVO4レーザー印刷機(株式会社キーエンス製、商品名「MD−V9900」)を用いて、波数40kHz、出力:平均出力(13W)の30%、スキャンスピード1000mm/sの条件で、一次元バーコード(RSSリミテッド)と二次元バーコード(CCA)とで構成されるRSSリミテッドCCAを、最小バー幅0.33mmで印刷した。上記条件で、レーザー用印刷層の黒色インキ層が除去され白色インキ層が露出して上記RSSリミテッドCCAが印刷された。
【0099】
また、炭酸ガスレーザー印刷機(株式会社キーエンス製、商品名「ML−Z9500」)を用いて、出力:平均出力(30W)の50%、スキャンスピード800mm/sの条件で、一次元バーコード(RSSリミテッド)と二次元バーコード(CCA)とで構成されるRSSリミテッドCCAを、最小バー幅0.33mmで印刷した。上記条件で、レーザー用印刷層の黒色インキ層が除去され白色インキ層が露出して上記RSSリミテッドCCAが印刷された。
【0100】
(実験2)
実験1で印刷を行った後に、YVO4レーザー印刷機にて印刷したRSSリミテッドCCAの印刷部分の下部に白色板を敷き、印刷の背景を白色にして検証機(ムナゾウ株式会社製、商品名「TC201−RL」)でRSSリミテッドとCCAとの印刷品質の検証を行い、米国基準ANSI X3.182の規定に準じて評価した。なお、米国基準ANSI X3.182は、エレメント判定/エッジ判定(Element/Edge)、復号(Decode)、デコーダビリティ(復号容易度;Decodability)、最小反射率(Reference Minimum)、シンボルコントラスト(Symbol Contrast)、最小エッジコントラスト(ECmin)、モジュレーション(変位幅;Modulation)、欠陥(ポイド/スポット;Defects)の8つの項目を評価したのち所定の基準で総合評価し、その結果をA、B、C、D、Fの5段階で示すものである。Aが最高グレードであり、B,C、Dの順にグレードが低下し、Fは欠陥を示す。結果を表1に示す。
【0101】
(実験3)
巻取り状積層体原反I〜Vについて、印刷部分の下部に黒色板を敷き、印刷の背景を黒色にした以外は、実験2と同様に操作して印刷品質の測定を行い、米国基準ANSI X3.182で評価した。結果を表2に示す。
【0102】
表1と表2の結果を比較すると、背景を黒色にすることで印刷グレードが低下する傾向があった。一方、実施例3の巻取り状積層体原反IIIは、背景を黒色としてレーザー印刷を読み取った場合でも印刷グレードがAであり、銀インキと白インキとから遮蔽層を形成することで、よりコントラストを明瞭にできることが判明した。
【0103】
(実験4)
前記実施例1の巻取り状積層体Iの印刷部に、前記YVO4レーザー印刷機を用い、波数40kHz、出力:平均出力(13W)の40%、スキャンスピード1000mm/sの条件で、一次元バーコード(RSSリミテッド)と二次元バーコード(CCA)とで構成されるRSSリミテッドCCAを、最小バー幅0.33mmで印刷し、レーザー印刷付き巻取り状積層体を製造した。
【0104】
(実験5)
印刷後、レーザー印刷付き巻取り状積層体の印刷部分の下部に白色板または黒色板を敷き、印刷の背景を白色または黒色にして、実験2と同様に操作してRSSリミテッドとCCAとの印刷品質の測定を行い、米国基準ANSI X3.182で評価した。結果を表3に示す。
【0105】
表1と表3とを比較すると、YVO4レーザー印刷機を使用すると出力を増加させると、読み取りランクが低下したがいずれも読み取り可能なランクD以上であった。このことから、本発明に係るレーザー印刷用積層体は、レーザー光出力やインキ塗布量にバラつきがあっても、読み取り可能な印刷ができる範囲が広いことが判明した。また、実験3と同様に、レーザー印刷を評価する際、背景色を黒色とすると印刷の評価グレードが低下した。これは、内容物の色や陰影、および、ユーザーが包装体のシンボルを読み取る際の背景色によっては読み取り不能となるシンボルを検出しうることを示すものであり、インラインで数多くの透明包材に印刷を施す際のインライン検査方法として有効であることが判明した。
【0106】
(実験6)
実験4で調製したレーザー印刷付き巻取り状積層体を長さ240mmに切り取り、ヒートシール巾10mmの背シールと底シールをヒートシールして、縦240mm、横180mmのピロー状袋体を作製した。
【0107】
上記ピロー状袋体に市販のめんつゆ250mlを充填した後、開口部に巾10mmのヒートシールを施して密封した。
前記包装体の印刷部を、ハンディリーダー(株式会社キーエンス製、商品名「BT−951」)を用いて読み取り操作を行った結果、RSSリミテッド、およびCCAの双方のデータを読み取ることができた。
【0108】
(実験7)
前記実験2で作成した巻取り状積層体原反IIを用い、YVO4レーザー印刷機のレーザー印刷条件を出力:平均出力(13W)の40%、および60%に変更した以外は実験4と同様に操作して、レーザー印刷付き巻取り状積層体を製造した。
【0109】
(実験8)
印刷後、レーザー印刷付き巻取り状積層体の印刷部分の下部に白色板または黒色板を敷き、印刷の背景を白色または黒色にして、実験2と同様に操作して印刷品質の測定を行い、米国基準ANSI X3.182で評価した。結果を表4に示す。なお、表中、「−」は、読み取り不能を示す。
【0110】
表4に示すように、出力40%の場合、実験2と同様の評価結果が得られ、印刷部の白色インキが除去されてしまっても、遮蔽層の白インキが残る実施例2は全て読み取り可能であった。一方、出力60%の場合、遮蔽層を設けた実施例2でも、背景色が白色の場合はグレードF、背景が黒色の場合は、読み取り不能であった。これにより、特に出力60%でレーザー印刷した場合には、特に背景を黒色とすることで読み取り困難なレーザー印刷をより有効に排除しうることが判明した。
【0111】
(実験9)
実験7の出力40%、60%で印刷を施して調製したレーザー印刷付き巻取り状積層体のレーザー印刷部分、およびレーザー印刷以外の部分の酸素透過度を、温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OXTRAN)〕にて測定した。結果を表5に示す。
【0112】
表4の結果と総合すると、黒色背景で読み取り不能と判断された出力60%のレーザー印刷部は、ガスバリア性が低下していた。背景を黒色にしてレーザー印刷の検査を実施することでレーザー印刷の良否と共にガスバリア性の確保も評価することができることが判明した。
【0113】
(実験10)
実施例2の巻取り状積層体を前記YVO4レーザー印刷機を装着した横ピロー包装機に装着し、波数40kHz、出力:平均出力(13W)の40%、スキャンスピード1000mm/sの条件で、一次元バーコード(RSSリミテッド)と二次元バーコード(CCA)とで構成されるRSSリミテッドCCAを、最小バー幅0.33mmで印刷し、レーザー印刷付き巻取り状積層体を得た。次いで、ヒートシール巾15mmの背シールと、ヒートシール巾10mmの天地シールを有する縦240mm、横170mmのピロー袋を形成した。上記ピロー袋に、内容物として青カビ胞子懸濁液を塗布したポテトデキストロース寒天培地入りプラスチックシャーレ1枚と、脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製、製品名「エージレスFX−50」)とを包装して包装体を得た。
【0114】
(実験11)
実験10の包装体の印刷部を、ハンディリーダー(株式会社キーエンス製、商品名「BT−951」)を用いて読み取り操作を行った。
【0115】
結果、パワー40%で印刷した積層体を用いた包装体は、RSSリミテッド、および、CCAの双方のデータを読み取ることができた。
(実験12)
実験10において、パワー40%で印刷した印刷付き積層体を使用して調製した包装体を28℃で2週間培養した。その結果、ポテトデキストロース寒天培地に青カビの繁殖は認められなかった。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、レーザー光の照射によりRSSリミテッドCCA(シンボル)を印刷しうるレーザー印刷用積層体であり、バー幅0.33mmの細密な印刷を行うことができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明のレーザー印刷用積層体の構成を示す概略断面図であり、透明基材フィルムに下地層、黒インキ層からなるレーザー用印刷層、およびデザイン印刷層が形成されたものを示す。
【図2】本発明のレーザー印刷用積層体の構成を示す概略断面図であり、図1の構成において、更に透明基材フィルムの前記下地層と対向する面に、淡色インキ層からなる遮蔽層が形成されたものを示す。
【図3】本発明のレーザー印刷用積層体の構成を示す概略断面図であり、図2の構成において、遮蔽層が2層からなる場合を示すものである。
【図4】本発明のレーザー印刷用積層体の構成を示す概略断面図であり、透明基材フィルムが2層からなる場合を示すものである。
【図5】本発明のレーザー印刷用積層体の構成を示す概略断面図であり、前記透明基材フィルムや前記遮蔽層より内側に、透明ガスバリア層が積層された構成を示すものである。
【図6】本発明のレーザー印刷用積層体の構成を示す概略断面図であり、最内層にヒートシール層を有する構成を示すものである。
【図7】図6に示す本発明のレーザー印刷用積層体において、レーザー光の照射によって黒インキ層よび下地層の一部が除去された状態を示す概略断面図である。
【図8】図6に示す本発明のレーザー印刷用積層体において、レーザー光の照射によって黒インキ層および下地層が除去され、透明基材フィルム層の一部が除去された状態を示す概略断面図である。
【図9】本発明のレーザー印刷用積層体が複数列連続されてなる巻取り状積層体原反の斜視図である。
【図10】図9に示す巻取り状積層体原反を切断個所で切断した巻取り状積層体の斜視図である。
【図11】開口部をヒートシールしうるプラスチック製容器に、本発明のレーザー印刷付き積層体を蓋材として使用して密封してなる包装体の側面図であり、内容物と共に脱酸素剤を収納した状態を示すものである。
【図12】図11の包装体の正面図である。
【図13】本発明のレーザー印刷用積層体、またはレーザー印刷付き積層体を装着して包装体を形成する横ピロー包装機の概略外観図である。
【符号の説明】
【0123】
10・・・透明基材フィルム、
23・・・白色インキ層、
25・・・黒インキ層、
20・・・レーザー用印刷層、
30・・・遮蔽層、
40・・・ガスバリア性フィルム、
50・・・ヒートシール層、
70・・・デザイン印刷層、
80・・・切断部、
90・・・プラスチック製容器、
93・・・内容物、
95・・・脱酸素剤、
97・・・溶着部、
100・・・巻取り状積層体
110・・・レーザー光照射装置、
115・・・受け台、
120・・・印刷検査装置、
130・・・ダンサーロール、
135a・・・定量送りローラー、
135b・・・定量送りローラー、
140・・・フォーマー、
150・・・ヒートシール装置、
160・・・ヒートシール装置、
170・・・排出コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも透明基材フィルム層の一の面に、酸化チタン顔料を含有する白インキ層からなる下地層とカーボン顔料を含有する黒インキ層とがこの順に積層されたレーザー用印刷層が形成されたことを特徴とする、レーザー印刷用積層体。
【請求項2】
前記レーザー用印刷層が、前記透明基材フィルムの一部に形成されたことを特徴とする、請求項1記載のレーザー印刷用積層体。
【請求項3】
前記透明基材フィルム層において、前記下地層と対向する面に、淡色インキ層からなる遮蔽層が形成されたことを特徴とする、請求項1または2記載のレーザー印刷用積層体。
【請求項4】
前記透明基材フィルムまたは前記遮蔽層より内側に、透明ガスバリア層が積層されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の、レーザー印刷用積層体。
【請求項5】
前記透明基材フィルムが、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたは二軸延伸ポリプロピレンフィルムと他の透明基材フィルムとの積層フィルムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の、レーザー印刷用積層体。
【請求項6】
更に、最内層にヒートシール層が形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の、レーザー印刷用積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のレーザー印刷用積層体のレーザー用印刷層にレーザー光が照射され、前記黒インキの少なくとも一部が除去されて下地層が露出され、意匠が形成されたことを特徴とするレーザー印刷付き積層体。
【請求項8】
請求項7に記載されるレーザー印刷付き積層体の、前記最内層のヒートシール層を対向して積層し、外周を袋状に溶着してなる、袋体。
【請求項9】
請求項8記載の袋体に内容物を収納し、前記開口部をヒートシールしたことを特徴とする包装体。
【請求項10】
開口部をヒートシールしうるプラスチック製容器に内容物を収納し、前記開口部に請求項7に記載されるレーザー印刷付き積層体の前記最内層のヒートシール層を対向して積層し、ヒートシールしたことを特徴とする、包装体。
【請求項11】
前記内容物が、食品、化粧品、医薬品、医薬部外品および医療器具からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項9または10記載の包装体。
【請求項12】
請求項1〜5記載のレーザー印刷用積層体の最内層に、粘着層を介して剥離シートが積層され、前記レーザー用印刷層にレーザー光が照射され、前記黒インキの少なくとも一部が除去されて下地層が露出され、意匠が印刷されたことを特徴とする、ラベル。
【請求項13】
請求項1〜6記載のレーザー印刷用積層体の前記レーザー用印刷層に、レーザー光を照射して黒インキ層の少なくも一部を除去し、前記下地層を露出させて意匠を印刷することを特徴とする、レーザー印刷方法。
【請求項14】
前記レーザー光の照射による意匠の印刷に次いで、前記レーザー用印刷層の背景色を暗色として印刷内容を検査することを特徴とする、請求項13記載のレーザー印刷方法。
【請求項15】
前記レーザー光が、YVO4レーザー光であることを特徴とする、請求項13または14記載のレーザー印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−119658(P2009−119658A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294445(P2007−294445)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】