説明

レーザー彫刻用組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法、レリーフ印刷版の製版方法及びレリーフ印刷版

【課題】インキ着肉性に優れたレリーフ印刷版を得ることができ、レーザー彫刻後のリンス性に優れるレーザー彫刻用組成物を提供する。
【解決手段】(成分A)アクリレートオリゴマーと、(成分B)熱重合開始剤と、(成分C)特定のエステル化合物の少なくとも一つと、を含有し、(成分D)重量平均分子量10,000以上の樹脂を含有しないか、又は、組成物の全重量に対して、0重量%を超え2重量%未満含有するレーザー彫刻用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法、レリーフ印刷版の製版方法及びレリーフ印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。この方式では、フレキソ原版に直接レーザーを照射し、光熱変換により熱分解及び揮発を生じさせ、凹部を形成する。直彫りCTP方式は、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができる。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、又は、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をすることなども可能である。この方式に用いられるレーザーは高出力の炭酸ガスレーザーが用いられることが一般的である。炭酸ガスレーザーの場合、全ての有機化合物が照射エネルギーを吸収して熱に変換できる。一方、安価で小型の半導体レーザーが開発されてきているが、これらは可視及び近赤外光であるため、該レーザー光を吸収して熱に変換することが必要となる。
従来のレーザー彫刻用組成物としては、例えば、特許文献1及び2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/076061号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/283187号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、インキ着肉性に優れたレリーフ印刷版を得ることができ、レーザー彫刻後のリンス性に優れるレーザー彫刻用組成物、前記レーザー彫刻用組成物を用いたレリーフ印刷版原版、前記レリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法、及び、前記製版方法により得られたレリーフ印刷版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の解決手段<1>、<10>、<13>及び<14>により解決された。好ましい実施形態である<2>〜<9>、<11>、<12>、<15>及び<16>と共に列記する。
<1>(成分A)アクリレートオリゴマーと、(成分B)熱重合開始剤と、(成分C)式(1)〜式(7)で表される化合物の少なくとも一つと、を含有し、(成分D)重量平均分子量10,000以上の樹脂を含有しないか、又は、組成物の全重量に対して、0重量%を超え2重量%未満含有することを特徴とするレーザー彫刻用組成物、
【0006】
【化1】

(式(1)〜式(7)中、R1〜R18は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール又はヘテロ環基を表し、L2は2価の有機基を表し、L3は3価の有機基を表し、L4は4価の有機基を表す。)
【0007】
<2>成分Aが、分子内に2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する、上記<1>に記載のレーザー彫刻用組成物、
<3>成分Aが、ウレタンアクリレートオリゴマーである、上記<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用組成物、
<4>成分Bが、過酸化物である、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物、
<5>成分Cの含有量が、組成分の全重量に対して、2〜40重量%である、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物、
<6>(成分E)単官能(メタ)アクリレート化合物を更に含有する、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物、
<7>(成分F)光熱変換剤を更に含有する、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物、
<8>(成分G)フィラーを更に含有する、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物、
<9>(成分F)光熱変換剤及び(成分G)フィラーを更に含有する、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物、
<10>支持体上に、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物から形成されたレリーフ形成層を備えるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<11>支持体上に、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物から形成されたレリーフ形成層を熱架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<12>上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を熱により架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含むレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<13>上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱により架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、並びに、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含むレリーフ印刷版の製版方法、
<14>上記<13>に記載の製版方法により製造されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版、
<15>前記レリーフ層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である、上記<14>に記載のレリーフ印刷版、
<16>前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、上記<14>又は<15>に記載のレリーフ印刷版。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インキ着肉性に優れたレリーフ印刷版を得ることができ、レーザー彫刻後のリンス性に優れるレーザー彫刻用組成物、前記レーザー彫刻用組成物を用いたレリーフ印刷版原版、前記レリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法、及び、前記製版方法により得られたレリーフ印刷版を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。また、本発明において、「(成分A)アクリレートオリゴマー」等を単に「成分A」等ともいう。
【0010】
(レーザー彫刻用組成物)
本発明のレーザー彫刻用組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、(成分A)アクリレートオリゴマーと、(成分B)熱重合開始剤と、(成分C)式(1)〜式(7)で表される化合物の少なくとも一つと、を含有し、(成分D)重量平均分子量10,000以上の樹脂を含有しないか、又は、組成物の全重量に対して、0重量%を超え2重量%未満含有することを特徴とする。
本発明のレーザー彫刻用組成物においては、(成分A)アクリレートオリゴマーのオリゴマー部分と(成分C)式(1)〜式(7)で表される化合物の構造とが相互作用しやすく、架橋膜を柔軟にすることでインキ着肉性が改良されると推定される。また、レーザー彫刻後は、(成分A)アクリレートオリゴマーのオリゴマー部分と(成分C)式(1)〜式(7)で表される化合物の構造とが相互作用し、(成分C)式(1)〜式(7)で表される化合物によって彫刻カス等の架橋物の分解物が希釈されることにより低粘度化し、リンス性が良化すると推定される。
【0011】
【化2】

(式(1)〜式(7)中、R1〜R18は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール又はヘテロ環基を表し、L2は2価の有機基を表し、L3は3価の有機基を表し、L4は4価の有機基を表す。)
【0012】
本発明のレーザー彫刻用組成物は、レーザー彫刻が施されるレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層用途以外にも、特に限定なく、他の用途にも広範囲に適用することができる。例えば、以下に詳述する凸状のレリーフ形成をレーザー彫刻により行う印刷版原版のレリーフ形成層のみならず、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により画像形成される各種印刷版や各種成形体の形成に適用することができる。
中でも、適切な支持体上に設けられるレリーフ形成層の形成に適用することが好ましい態様である。
【0013】
なお、本明細書では、レリーフ印刷版原版の説明に関し、前記成分A〜成分Cを含有し、レーザー彫刻に供する画像形成層としての、表面が平坦な層であり、かつ未架橋の架橋性層をレリーフ形成層といい、前記レリーフ形成層を架橋した層を架橋レリーフ形成層といい、これをレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層をレリーフ層という。
以下、レーザー彫刻用組成物の構成成分について説明する。
【0014】
(成分A)アクリレートオリゴマー
本発明のレーザー彫刻用組成物は、(成分A)アクリレートオリゴマーを含有する。
本発明に用いることができるアクリレートオリゴマーは、エチレン性不飽和基を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜12個、更に好ましくは2〜6個有するオリゴマーの中から任意に選択することができる。また、エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることが好ましい。
また、前記アクリレートオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、300〜10,000の化合物であることが好ましく、500〜7,000の化合物であることがより好ましく、1,000〜5,000の化合物であることが更に好ましい。
前記アクリレートオリゴマーにおけるオリゴマーとしては、如何なるオリゴマーでも構わないが、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマー、ブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマーアクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。
これらの中でも、前記アクリレートオリゴマーとしては、オリゴエステルアクリレートが好ましく、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートが更に好ましく、ウレタンアクリレートが特に好ましい。
ウレタンアクリレートとしては、脂肪族系ウレタンアクリレート、芳香族系ウレタンアクリレートなどが挙げられる。詳しくは、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、(株)化学工業日報社)を参照することができる。
【0015】
また、オリゴマーの市販品としては、ウレタンアクリレートとして、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEbecrylシリーズ(例えば、Ebecryl 230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U−200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。
ポリエステルアクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEbecrylシリーズ(例えば、Ebecryl770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。
また、エポキシアクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEbecrylシリーズ(例えば、Ebecry600、860、2958、3105、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182,6040等)等が挙げられる。
【0016】
本発明のレーザー彫刻用組成物中における成分Aの含有量は、架橋レリーフ形成層の柔軟性や脆性の観点から、全不揮発成分中、0.5〜50重量%が好ましく、2〜40重量%がより好ましく、5〜30重量%が更に好ましい。上記範囲であると、架橋レリーフ形成層中における(成分D)重量平均分子量10,000以上の樹脂(単に「バインダーポリマー」ともいう。)の含有量が2重量%未満であっても、印刷版として必要なゴム弾性を発現させることができる。
【0017】
(成分B)熱重合開始剤
本発明のレーザー彫刻用組成物は、(成分B)熱重合開始剤を含有する。
本発明に用いることができる熱重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、特開2008−63554号公報の段落0074〜0118に記載されている化合物を好ましく例示できる。
ラジカル重合開始剤としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アゾ系化合物等が挙げられる。中でも彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、有機過酸化物又はアゾ系化合物がより好ましく、有機過酸化物が特に好ましい。
【0018】
好ましい有機過酸化物としては、3,3’4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、クメンヒドロパーオキサイド、過安息香酸t−ブチルなど挙げられる。
【0019】
好ましいアゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0020】
熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
本発明のレーザー彫刻用組成物中における熱重合開始剤の含有量は、全不揮発成分中、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。熱重合開始剤の含有量を0.01重量%以上とすることで、これを添加した効果が得られ、レリーフ形成層の架橋が速やかに行われる。また、含有量を10重量%以下とすることで他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られる。
【0021】
(成分C)式(1)〜式(7)で表される化合物
本発明のレーザー彫刻用組成物は、下記式(1)〜(7)で表される化合物(以下、「特定可塑剤」又は単に「可塑剤」ともいう。)を含有する。
【0022】
【化3】

(式(1)〜式(7)中、R1〜R18は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール又はヘテロ環基を表し、L2は2価の有機基を表し、L3は3価の有機基を表し、L4は4価の有機基を表す。)
【0023】
式(1)中、R1〜R18は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール又はヘテロ環基又は置換ヘテロ環基を表す。
前記アルキル基としては、炭素数1〜30であることが好ましく、炭素数1〜24であることがより好ましく、炭素数1〜18であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状アルキル基でもよく、また、環状アルキル基でもよい。
【0024】
置換アルキル基が有する置換基としては、アルキル基(炭素数1〜30であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜24であり、更に好ましくは炭素数1〜18である。)、水酸基、アリール基(炭素数6〜20であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜14であり、更に好ましくは炭素数6〜12である。)、ヘテロ環基(ヘテロ原子として酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく例示され、3〜20員環であることが好ましく、3〜14員環であることがより好ましく、3〜10員環であることが更に好ましく、3〜6員環であることが特に好ましい。)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。)、アルコキシ基(炭素数1〜30であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜24であり、更に好ましくは炭素数1〜18である。)、アリールオキシ基(炭素数6〜20であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜14であり、更に好ましくは炭素数6〜12である。)、カルボキシ基、アシル基(炭素数2〜30が好ましく、より好ましくは炭素数2〜24であり、更に好ましくは炭素数2〜18である。)、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜31であることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜25であり、更に好ましくは炭素数2〜19である。)等が例示できる。また、例えば、アルキル基の任意の位置にエポキシ環が形成されていてもよい。
これらの中でも、好ましい置換基としては、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基が例示できる。また、上記の置換基は、更に上記の置換基のいずれかで置換されていてもよい。
【0025】
前記アリール基としては、炭素数6〜20であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜14であり、さらに好ましくは炭素数6〜12である。また、置換アリール基が有する置換基は、上記置換アルキル基における置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
ヘテロ環基の有するヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく例示され、これらの中でも、酸素原子がより好ましい。ヘテロ環基は、3〜20員環であることが好ましく、3〜14員環であることがより好ましく、3〜10員環であることがさらに好ましい。ヘテロ環は、単環でも多環でもよく、特に限定されない。ヘテロ環基として具体的には、エポキシ基、オキセタニル基が例示される。
置換へテロ環基が有する置換基は、上記置換アルキル基における置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0026】
1〜R18としては、炭素数2〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、炭素数3〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が特に好ましい。
【0027】
2は2価の有機基を表し、特に限定されないが、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基が好ましく例示され、R1〜R18で例示したアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基から1つの水素原子を除いた2価の基が好ましく例示される。
3は3価の有機基を表し、L2で示した基から1つの水素原子を除いた3価の基が好ましい。L4は4価の有機基を表し、L2で示した基から2つの水素原子を除いた4価の基が好ましい。
また、L2〜L4は、上記の有機基の中に、窒素原子、硫黄原子、酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよく、例えば、アルキレン基の途中にチオエーテル結合(−S−)、エーテル結合(−O−)等を有する態様が例示される。
【0028】
成分Cは、製膜時に揮発しにくい性質を有することが好ましく、かつ、可塑効果を十分に発揮させるのには、特定可塑剤自身が液体の性質を有することが好ましい。上記の観点から、成分Cの分子量は、100〜1,000であることが好ましく、200〜800であることがより好ましく、300〜500であることが更に好ましい。
成分Cは、(成分A)アクリレートオリゴマーや他の重合性化合物などと相溶しやすいことが好ましいため、適切なCLogP(CLogP法により算出したオクタノール−水分配係数)を有する観点から、成分CのCLogPは、0〜10であることが好ましく、3〜6であることがより好ましい。
成分Cの融点は、室温(20℃)以下であることが好ましく、−50〜30℃であることが好ましく、−30〜20℃であることがよりに好ましい。
成分Cの沸点は、120〜600℃であることが好ましく、150〜500℃であることがより好ましく、180〜400℃であることが更に好ましい。成分Cの沸点が上記範囲内であると、版を形成する際の加熱による揮発が生じにくく、また、レーザー彫刻時の熱での揮発性に優れ、高感度化及び彫刻カスへの残留等の問題が生じない。
【0029】
また、本発明のレーザー彫刻用組成物における成分Cの含有量は、全不揮発成分中、1〜50重量%であることが好ましく、2〜40重量%であることがより好ましく、5〜30重量%であることが更に好ましい。成分Cの含有量が上記範囲内であると、版からの泣き出しが抑制され、かつ、十分な可塑効果が得られる。
【0030】
本発明において、成分Cとしては、式(2)、式(3)又は式(7)で表される可塑剤がより好ましい。
また、成分Cは、1種単独で用いてもよいが、2種以上を併用することも好ましい。なお、例えば、式(2)で表される化合物を2種以上使用してもよいが、式(2)で表される化合物と、式(7)で表される化合物とを併用してもよい。
これらの中でも、式(2)、式(3)又は式(7)で表される化合物よりなる群から選択される化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0031】
具体的な成分Cとしては以下の化合物が例示されるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
式(1)で表される化合物としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、オレイン酸ブチル、モノオレイン、酢酸n−デシル、酢酸n−ドデシル、酢酸3−メトキシブチル、没食子酸メチル、没食子酸ブチル、没食子酸ステアリル、アセト酢酸エチル、エポキシステアリン酸ベンジルが例示される。
【0032】
式(2)で表される化合物としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ベンジル2−エチルヘキシル、エチルフタリルエチルグリコレート、フタル酸ビス(2−ブトキシエチル)、イソフタル酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジベンジル、こはく酸ジブチル、こはく酸ジオクチル、(L)−酒石酸ジブチル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジn−ブチル、マレイン酸ジブチル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、チオジプロピオン酸ジドデシル、チオジプロピオン酸ジメチル、ジチオグリコール酸、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、アジピン酸オリゴエステル、オリゴコハク酸ポリプロピレングリコールが例示される。
なお、アジピン酸オリゴエステルとしてはアデカサイザーPN150((株)ADEKA製)が例示でき、オリゴコハク酸ポリプロピレングリコールとしてはノムコート102(日清オイリオグループ(株)製)が例示できる。
【0033】
式(3)で表される化合物としては、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリブチル、トリアセチン、トリブチリン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチルが例示される。
【0034】
式(4)で表される化合物としては、ビフェニルテトラカルボン酸メチル、ビフェニルテトラカルボン酸ブチルが例示される。
【0035】
式(5)で表される化合物としては、N−(n−ブトキシメチル)アセトアミドが例示される。
式(6)で表される化合物としては、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミドが例示される。
【0036】
式(7)で表される化合物としては、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリブトキシエチル、リン酸トリシクロヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリベンジル、リン酸トリクレジル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリス(イソプロピルフェニル)、リン酸トリス(1,3−ジクロロ−2−プロピル)、リン酸トリス(2−クロロエチル)が例示される。
【0037】
以下の好ましい成分Cを構造式で示す。なお、以下の化学式において、炭素(C)及び水素(H)の一部を省略している。
【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
これらの中でも、成分Cとしては、(1−1)、(1−9)、(2−3)、(2−6)、(2−7)、(2−8)、(2−15)、(2−18)、(2−19)、(2−21)、(2−22)、(2−28)、(3−1)、(3−3)、(3−4)、(3−7)、(6−1)、(6−2)、(7−2)、(7−4)、(7−5)、(7−6)、(7−8)、(7−9)、(7−10)が好ましい。
【0048】
(成分D)重量平均分子量10,000以上の樹脂
本発明のレーザー彫刻用組成物は、重量平均分子量10,000以上の樹脂(バインダーポリマー)を含有しないか、又は、組成物の全重量に対して、0重量%を超え2重量%未満含有する。
バインダーポリマーを含有する場合には、バインダーポリマーは非エラストマーであることが好ましい。エラストマーとは、ガラス転移温度が常温以下のポリマーである(科学大辞典 第2版、編者 国際科学振興財団、発行 丸善株式会社、P154参照)。従って、非エラストマーとはガラス転移温度が常温(20℃)を超える温度であるポリマーを指す。非エラストマーのガラス転移温度としては、彫刻感度と皮膜性のバランスの観点から、20〜200℃が好ましく、20〜170℃がより好ましく、25〜150℃が更に好ましい。
皮膜性の観点から、バインダーポリマーとしては、ポリビニルブチラール(PVB)及びその誘導体、アルコール可溶性ポリアミド、水不溶性セルロース誘導体、側鎖に極性基を有するアクリル樹脂が挙げられる。バインダーポリマーとしては、特開2009−262526号公報の段落0017〜0139に記載された、ポリビニルブチラール及びその誘導体、アルコール可溶性ポリアミド、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等を好ましく用いることができる。中でも、ポリビニルブチラール及びその誘導体が好ましい。
バインダーポリマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明のレーザー彫刻用組成物中に含まれる成分Dの含有量は、リンス性と柔軟性の観点から、含有しないか、又は、組成物の全重量に対して、0重量%を超え1重量%未満含有することが好ましく、含有しないか、又は、組成物の全重量に対して、0重量%を超え0.05重量%未満含有することがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0050】
(成分E)単官能(メタ)アクリレート化合物
本発明のレーザー彫刻用組成物は、(成分E)単官能(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、単官能脂肪族(メタ)アクリレート化合物、単官能脂環式(メタ)アクリレート化合物、単官能芳香族(メタ)アクリレート化合物等が例示できる。
成分Eとして具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体のモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及び、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、成分Eとしては、膜の強度の観点から、脂環式(メタ)アクリレート化合物が好ましく、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸イソボルニル、又は、メタクリル酸イソボルニルが特に好ましい。
【0051】
本発明のレーザー彫刻用組成物中における成分Eの含有量は、架橋レリーフ形成層の柔軟性や脆性の観点から、全不揮発成分中、0.5〜50重量%が好ましく、2〜40重量%がより好ましく、5〜30重量%が更に好ましい。
【0052】
(成分F)光熱変換剤
本発明のレーザー彫刻用組成物は、(成分F)光熱変換剤を更に含有することが好ましい。すなわち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
【0053】
本発明のレーザー彫刻用組成物を用いて製造したレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を、700〜1,300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700〜1,300nmに極大吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0054】
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、700〜1,300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が好ましく挙げられる。本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落0124〜0137に記載の染料を挙げることができる。
【0055】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。また、顔料としては、特開2009−178869号公報の段落0122〜0125に記載の顔料が例示できる。
これらの顔料のうち、好ましいものはカーボンブラックである。
【0056】
カーボンブラックは、レーザー彫刻用組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができる。このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。また、カーボンブラックとしては、特開2009−178869号公報の段落0130〜0134に記載されたものが例示できる。
【0057】
本発明のレーザー彫刻用組成物中における光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該組成物の全不揮発成分中、0.01〜30重量%が好ましく、0.05〜20重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が特に好ましい。
【0058】
(成分G)フィラー
本発明のレーザー彫刻用組成物は、(成分G)フィラーを更に含有することが好ましい。
フィラーを添加することにより、レーザー彫刻用組成物の粘度、レリーフ形成層の濡れ性、粘弾性特性等の機械的特性が調整され、また、レリーフ形成層表面のタックの低減、彫刻カスのリンス性の向上、及び、レリーフ印刷版による印刷品質の向上が実現される。更に、フィラーを使用することにより、レリーフ形成層の破断強度を向上すると共に、インキ転移性に優れるレリーフ印刷版を得ることができる。また、得られたレリーフ形成層の耐溶剤特性を向上させる目的で、フィラーを添加することもできる。
なお、本発明において、カーボンブラック等の光熱変換剤ともなりうるフィラーについては、(成分G)フィラーとしては分類せず、(成分F)光熱変換剤と分類することとする。
本発明に用いることができるフィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーが挙げられる。
【0059】
有機フィラーとしては、低密度ポリエチレン粒子、高密度ポリエチレン粒子、ポリスチレン粒子、各種有機顔料、マイクロバルーン、尿素−ホルマリンフィラー、ポリエステルパーティクル、セルロースフィラー、有機金属等が挙げられる。
前記有機顔料としては、公知のものが挙げられ、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料等が使用できる。また、無機顔料を含有していてもよい。
無機フィラーとしては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、カオリン、焼成カオリン、タルク、ロウ石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、リトポン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、焼成石コウ、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ等が挙げられる。
これらの中でも、シリカ、又は、アルミナが好ましく、シリカが特に好ましい。
【0060】
レーザー彫刻法によりレリーフ形成層表面又はレリーフ形成層を貫通したパターンを形成するためには、レーザー彫刻時に発生する粘着性の液状カスの吸着除去特性に優れる数平均粒子径が5nm以上10μm以下の多孔質無機粒子又は1次粒子の数平均粒子径が5nm以上100nm以下の無孔質無機粒子を添加することが好ましい。
【0061】
「多孔質無機粒子」とは、細孔容積が0.1ml/g以上の無機粒子を意味する。細孔容積は、窒素吸着法を用いて、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
多孔質無機粒子の細孔容積の好ましい範囲は、0.1〜10ml/gであり、より好ましくは、0.2〜5ml/gである。細孔容積が0.1ml/g以上である多孔質無機粒子を用いることにより、レーザー彫刻時に発生する粘着性の液状カスの吸収量が十分なものとなる。また、細孔容積が10ml/g以下であることにより、多孔質無機粒子の機械的強度を確保することができる。
多孔質無機粒子の数平均粒径は、100nm以上10μm以下であることが好ましく、300nm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0062】
多孔質無機粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス、ゼオライトなどが挙げられる。
多孔質無機粒子は1種類又は2種類以上のものを併用することができる。
【0063】
一方、「無孔質無機粒子」とは、細孔容積が0.1ml/g未満の無機粒子を意味する。
無孔質無機粒子の数平均粒子径は、10〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。
無孔質無機粒子の材質としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化錫、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、ホウ素酸アルミニウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化鉄、及び酸化セリウムから選択される少なくとも1種類を主成分とすることが好ましい。
無孔質無機粒子は、上記材質を用い、火炎加水分解法、アーク法、プラズマ法、沈降法、ゲル化法、溶融固体法のいずれかの方法で製造される無孔質無機粒子であることが好ましい。火炎加水分解法、アーク法、プラズマ法は、熱分解法又は高熱法(乾式法)とも呼ばれている。また、沈降法、ゲル化法は湿式法とも呼ばれる方法である。これらのうち、乾式法、特に火炎加水分解法によるものが好ましい。
無孔質無機粒子は1種類又は2種類以上のものを併用することができ、また、多孔質無機粒子と併用することもできる。
【0064】
数平均粒子径が上述した範囲内にある多孔質又は無孔質無機粒子を用いた場合、粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の大量発生などの不都合を生じることなく、レリーフ形成層表面に凹凸が発生することもない。
なお、フィラーの数平均粒子径は、公知の測定方法により測定することができるが、例えば、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0065】
フィラーの粒子形状は、特に限定されるものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、又は表面に突起のある粒子などを使用することができる。特に耐磨耗性の観点からは、球状粒子が好ましい。
また、フィラーの表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化又は疎水性化した粒子を用いることもできる。これらのフィラーは、1種単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
本発明のレーザー彫刻用組成物にフィラーを用いる場合、カスの除去性と膜の柔軟性の両立の観点から、フィラーの含有量は、レーザー彫刻用組成物の全不揮発成分中、0.01〜30重量%以下が好ましく、0.05〜15重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が更に好ましい。
【0067】
<溶剤>
本発明のレーザー彫刻用組成物は、溶剤を含有していてもよいが、含有しないことが好ましい。なお、本発明のレーザー彫刻用組成物の全不揮発成分とは、溶剤を除いた他の全成分のことを表す。
溶剤の好ましい具体例としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが挙げられる。
【0068】
<その他の添加剤>
本発明のレーザー彫刻用組成物には、前記成分A〜成分Gや溶剤以外の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、香料、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、熱重合防止剤、着色剤等が挙げられる。
これら添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、本発明のレーザー彫刻用組成物に共増感剤を用いることで、レーザー彫刻用組成物を光硬化させる際の感度を更に向上させることができる。
更に、組成物の製造中あるいは保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合禁止剤を添加することが好ましい。
レーザー彫刻用組成物の着色を目的として、染料又は顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させることができる。
【0069】
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版)
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を有する。
また、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有する。
本発明において「レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、架橋される前の状態、及び、光又は熱により硬化された状態の両方又はいずれか一方のものをいう。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいい、すなわち、本発明のレーザー彫刻用組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。
架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。
本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、前記レリーフ形成層を架橋した層をいう。前記架橋は、熱により行うことができる。また、前記架橋は、組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、成分A同士の反応、成分Aと成分Eとの反応、成分E同士の反応などによる架橋構造を含む概念であるが、成分Aと他の成分との反応による架橋構造を形成することが好ましい。
また、本発明において「レリーフ層」とは、レリーフ印刷版におけるレーザーにより彫刻された層、すなわち、レーザー彫刻後の前記架橋レリーフ形成層をいう。
【0070】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、前記のような成分を含有するレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を有する。(架橋)レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
【0071】
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、前記本発明のレーザー彫刻用組成物からなる層であり、熱架橋性の層である。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版によるレリーフ印刷版の作製態様としては、レリーフ形成層を架橋させて架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版とした後、架橋レリーフ形成層(硬質のレリーフ形成層)をレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成してレリーフ印刷版を作製する態様であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
【0072】
レリーフ形成層は、レリーフ形成層用の前記の如き成分を有するレーザー彫刻用組成物を、シート状又はスリーブ状に成形することで形成することができる。レリーフ形成層は、通常、後述する支持体上に設けられるが、製版、印刷用の装置に備えられたシリンダーなどの部材表面に直接形成したり、そこに配置して固定化したりすることもでき、必ずしも支持体を必要としない。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
【0073】
<支持体>
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
【0074】
<接着層>
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に使用し得る材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0075】
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
【0076】
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0077】
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法)
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の形成は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用塗布液組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいは、レーザー彫刻用組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して組成物から溶剤を除去する方法でもよい。
中でも、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることが好ましい。
【0078】
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしてもよい。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶剤を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることによって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
【0079】
<層形成工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含むことが好ましい。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明のレーザー彫刻用組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明のレーザー彫刻用組成物を調製し、本発明のレーザー彫刻用組成物を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶剤を除去する方法が好ましく例示できる。
レーザー彫刻用組成物は、例えば、成分A〜成分C、並びに、任意成分として、成分D〜成分G等を適当な溶剤に溶解又は分散させ、次いで、これらの液を混合することによって、又は、成分A〜成分C、並びに、任意成分として、成分D〜成分G等そのまま混合して製造できる。溶剤成分のほとんどは、レリーフ印刷版原版を製造する段階で除去することが好ましいので、溶剤としては、揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル)等を用い、かつ温度を調整するなどして溶剤の全添加量をできるだけ少なく抑えることが好ましい。
【0080】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版における(架橋)レリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、0.05mm以上7mm以下がより好ましく、0.05mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0081】
<架橋工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、前記レリーフ形成層を熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法であることが好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱架橋工程)。熱により架橋を行うための加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
レリーフ形成層を熱架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
【0082】
(レリーフ印刷版及びその製版方法)
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱で架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、本発明のレーザー彫刻用組成物からなる層を架橋及びレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するレリーフ印刷版であり、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたレリーフ印刷版であることが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法における層形成工程及び架橋工程は、前記レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法における層形成工程及び架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0083】
<彫刻工程>
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましい。
彫刻工程は、前記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
【0084】
彫刻工程に用いられる赤外線レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)又は半導体レーザーが好ましい。特に、ファイバー付き半導体赤外線レーザー(FC−LD)が好ましく用いられる。一般に、半導体レーザーは、CO2レーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
【0085】
また、ファイバー付き半導体レーザーは、更に光ファイバーを取り付けることで効率よくレーザー光を出力できるため、本発明における彫刻工程には有効である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。例えば、ビームプロファイルはトップハット形状とすることができ、安定に版面にエネルギーを与えることができる。半導体レーザーの詳細は、「レーザーハンドブック第2版」レーザー学会編、「実用レーザー技術」電子通信学会編等に記載されている。
また、本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法に好適に使用し得るファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るレリーフ印刷版の製版に使用することができる。
【0086】
本発明のレリーフ印刷版の製版方法では、彫刻工程に次いで、更に、必要に応じて下記リンス工程、乾燥工程、及び/又は、後架橋工程を含んでもよい。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
前記工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ形成層を更に架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0087】
本発明に用いることができるリンス液のpHは、2以上14以下であることが好ましく、3以上13.5以下であることがより好ましく、4以上13.2以下であることが更に好ましく、5以上12.5以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、取り扱いが容易である。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶剤として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶剤を含有していてもよい。
【0088】
リンス液は、界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、レリーフ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
前記ベタイン化合物としては、下記式(Be−1)で表される化合物及び/又は下記式(Be−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0089】
【化13】

(式(Be−1)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、一価の有機基を表し、R4は単結合、又は、二価の連結基を表し、AはPO(OR5)O-、OPO(OR5)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、R5は、水素原子、又は、一価の有機基を表し、R1〜R3のうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよい。)
【0090】
【化14】

(式(Be−2)中、R6〜R8はそれぞれ独立に、一価の有機基を表し、R9は単結合、又は、二価の連結基を表し、BはPO(OR10)O-、OPO(OR10)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、R10は、水素原子、又は、一価の有機基を表し、R6〜R8のうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよい。)
【0091】
前記式(Be−1)で表される化合物又は前記式(Be−2)で表される化合物は、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。なお、本発明において、アミンオキシド化合物のN=O、及び、ホスフィンオキシド化合物のP=Oの構造はそれぞれ、N+−O-、P+−O-と見なすものとする。
前記式(Be−1)におけるR1〜R3はそれぞれ独立に、一価の有機基を表す。また、R1〜R3のうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
1〜R3における一価の有機基としては、特に制限はないが、アルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル基、アルキル鎖中にアミド結合を有するアルキル基、又は、アルキル鎖中にエーテル結合を有するアルキル基であることが好ましく、アルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル基、又は、アルキル鎖中にアミド結合を有するアルキル基であることがより好ましい。
また、前記一価の有機基におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、R1〜R3のうちの2つがメチル基である、すなわち、式(Be−1)で表される化合物がN,N−ジメチル構造を有することが特に好ましい。上記構造であると、特に良好なリンス性を示す。
【0092】
前記式(Be−1)におけるR4は、単結合、又は、二価の連結基を表し、式(Be−1)で表される化合物がアミンオキシド化合物である場合は単結合である。
4における二価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜3のアルキレン基であることが更に好ましい。
前記式(Be−1)におけるAは、PO(OR5)O-、OPO(OR5)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、O-、COO-、又は、SO3-であることが好ましく、COO-であることがより好ましい。
-がO-である場合、R4は単結合であることが好ましい。
PO(OR5)O-及びOPO(OR5)O-におけるR5は、水素原子、又は、一価の有機基を表し、水素原子、又は、1以上の不飽和脂肪酸エステル構造を有するアルキル基であることが好ましい。
また、R4は、PO(OR5)O-、OPO(OR5)O-、O-、COO-、及び、SO3-を有していない基であることが好ましい。
【0093】
前記式(Be−2)におけるR6〜R8はそれぞれ独立に、一価の有機基を表す。また、R6〜R8のうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
6〜R8における一価の有機基としては、特に制限はないが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基であることが好ましく、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基であることがより好ましい。
また、前記一価の有機基におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、R6〜R8のうちの2つがアリール基であることが特に好ましい。
【0094】
前記式(Be−2)におけるR9は、単結合、又は、二価の連結基を表し、式(Be−2)で表される化合物がホスフィンオキシド化合物である場合は単結合である。
9における二価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜3のアルキレン基であることが更に好ましい。
前記式(Be−2)におけるBは、PO(OR10)O-、OPO(OR10)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、O-であることが好ましい。
-がO-である場合、R9は単結合であることが好ましい。
PO(OR10)O-及びOPO(OR10)O-おけるR10は、水素原子、又は、一価の有機基を表し、水素原子、又は、1以上の不飽和脂肪酸エステル構造を有するアルキル基であることが好ましい。
また、R9は、PO(OR10)O-、OPO(OR10)O-、O-、COO-、及び、SO3-を有していない基であることが好ましい。
式(Be−1)で表される化合物としては、下記式(Be−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0095】
【化15】

(式(Be−3)中、R1は一価の有機基を表し、R4は単結合、又は、二価の連結基を表し、AはPO(OR5)O-、OPO(OR5)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、R5は、水素原子、又は、一価の有機基を表す。)
【0096】
式(Be−3)におけるR1、A、R4、及び、R5は、前記式(Be−1)におけるR1、A、R4、及び、R5と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(Be−2)で表される化合物としては、下記式(Be−4)で表される化合物であることが好ましい。
【0097】
【化16】

(式(Be−4)中、R6〜R8はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基を表す。ただし、R6〜R8の全てが同じ基となることはない。)
【0098】
前記式(Be−4)におけるR6〜R8はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基を表し、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基であることが好ましい。
式(Be−1)で表される化合物又は式(Be−2)で表される化合物として具体的には、下記の化合物が好ましく例示できる。
【0099】
【化17】

【0100】
【化18】

【0101】
【化19】

【0102】
また、界面活性剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等も挙げられる。更に、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、リンス液の全重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましい。
【0103】
以上のようにして、支持体等の任意の基材表面にレリーフ層を有するレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0104】
また、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
【0105】
本発明のレリーフ印刷版は、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ、及び、UVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。本発明のレリーフ印刷版は、リンス性に優れており彫刻カスの残存がなく、かつ、得られたレリーフ層が耐刷性に優れ、長期間にわたりレリーフ層の塑性変形や耐刷性低下の懸念がなく、印刷が実施できる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
<レーザー彫刻用印刷版原版の作製>
EBECRYL 230(20.0重量部)、パーブチルZ(2.5重量部)、フタル酸ジ−n−オクチル(15.0重量部)、アクリル酸イソボルニル(25.0重量部)、EC600JD(10.0重量部)、AEROSIL R8200(7.0重量部)を混合し、厚さがおよそ1.0mmとなるように型に流し込んだ。これをオーブンに入れ、100℃で3時間加熱することでレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を得た。
【0108】
<レリーフ印刷版の作製>
炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)彫刻機として、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ((株)キーエンス製)を用いた。レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版から保護フィルムを剥離後、炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
また、レリーフ層のショアA硬度を、前述の測定方法により測定したところ、70°であった。なお、ショア硬度Aの測定は、後述する各実施例及び比較例においても同様に行った。
【0109】
<リンス性の評価>
リンス液は、水、及び、下記ベタイン化合物(1−B)を混合し、ベタイン化合物(1−B)の含有量がリンス液全体の1重量%になるように調製した。
前記方法にて彫刻したレリーフ印刷版上に、上記リンス液を版表面が均一に濡れる様にスポイトで滴下(約100ml/m2)し、直ちにハブラシ(ライオン(株)製、クリニカハブラシ フラット)を用い、荷重100gfで版と平行に10回(15秒)こすった。その後、流水にて版面を洗浄し、版面の水分を除去し、1時間ほど自然乾燥した。
リンス工程後、自然乾燥済みの版の表面を倍率100倍のマイクロスコープ((株)キーエンス製)で観察し、版上の取れ残りカスを評価した。評価基準は以下の通りである。
カスがないものを○、少し残存しているものを△、カスが殆ど除去できていないものを×とし、×でないものを合格とした。
【0110】
【化20】

【0111】
<インキ着肉性の評価>
得られたレリーフ印刷版を印刷機(ITM−4型、(株)伊予機械製作所製)にセットし、インクとして、水性インキ アクアSPZ16紅(東洋インキ製造(株))を希釈せずに用いて、印刷紙として、フルカラーフォームM 70(日本製紙(株)製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、印刷開始から1,000mにおける印刷物上のベタ部のインキの付着度合いを目視で比較した。
濃度ムラなく均一なものを○、僅かにムラがあるものを△、明らかにムラがあるものを×とし、×でないものを合格とした。
【0112】
<耐刷性の評価>
得られたレリーフ印刷版を印刷機(ITM−4型、(株)伊予機械製作所製)にセットし、インクとして、水性インキ アクアSPZ16紅(東洋インキ製造(株)製)を希釈せずに用いて、印刷紙として、フルカラーフォームM 70(日本製紙(株)製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、ハイライト1〜10%を印刷物で確認した。印刷されない網点が生じたところを刷了とし、刷了時までに印刷した紙の長さ(m;メートル)を指標とした。数値が大きいほど耐刷性に優れると評価する。
【0113】
(実施例2〜45、及び、比較例1〜4)
成分A〜成分Gを表1に記載の成分とした以外は、実施例1と同様の方法により、レーザー彫刻用組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、及び、レリーフ印刷版を、実施例2〜45及び比較例1〜5について、それぞれ作製した。
また、実施例1と同様な方法により、リンス性、インク着肉性及び耐刷性の評価をそれぞれ行った。
更に、実施例1と同様な方法により、得られたレリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度を測定した。
評価結果をまとめて表2に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
なお、前記実施例1で前述した以外の前記表1における略号が示す化合物は、以下の通りである。
<(成分A)アクリレートオリゴマー>
以下の表3に示す化合物を、実施例及び比較例において使用した。なお、これらは全てダイセル・サイテック(株)製である。なお、HDDAは、単なる二官能アクリレート化合物であり、(成分A)アクリレートオリゴマーには該当しない。
【0117】
【表3】

【0118】
<(成分B)熱重合開始剤>
パーブチルZ(t−ブチルパーオキシベンゾエート、日油(株)製)
クメンヒドロペルオキシド(東京化成工業(株)製)
VAm−110(2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、和光純薬工業(株)製)
VAm−111(2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、和光純薬工業(株)製)
【0119】
<(成分C)式(1)〜式(7)で表される化合物(可塑剤)>
以下の表4に示す化合物を、実施例及び比較例において使用した。
【0120】
【表4】

【0121】
<ピロメリット酸テトラ−n−ブチルの合成>
ディーン・スターク装置をつけたナス型フラスコ中にピロメリット酸(東京化成工業(株)製、50.00重量部)とn−ブタノール(和光純薬工業(株)製、200.00重量部)、濃硫酸(和光純薬工業(株)製、5.00重量部)を入れた。この溶液を110℃のオイルバスに漬け、マグネチックスターラーを用いて5時間撹拌した後、窒素ガスを流して過剰量のn−ブタノールを留去した。得られた組成生物に酢酸エチル200重量部を加えた後、水、続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水した後、ろ過によって不溶物を除き、減圧下で溶媒を除去することでピロメリット酸テトラ−n−ブチル(91.03重量部)を得た。ピロメリット酸テトラ−n−ブチルの構造は1H−NMRで確認した。
【0122】
<安息香酸オクチルアミドの合成>
撹拌羽を付けた三ツ口フラスコ中に塩化ベンゾイル(東京化成工業(株)製、30.00重量部)とテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製、270重量部)を入れて溶解させた。これを氷浴につけて冷却しながら、n−オクチルアミン(東京化成工業(株)製、27.85重量部)を滴下した。滴下終了後、氷浴を外して室温で更に3時間撹拌させた後、水(100重量部)を加えた。酢酸エチルで有機層を抽出し、有機層を水、2M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の順で洗浄した。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水した後、ろ過によって不溶物を除き、減圧下で溶媒を除去することで安息香酸オクチルアミド(44.70重量部)を得た。安息香酸オクチルアミドの構造は1H−NMRで確認した。
【0123】
<(成分D)重量平均分子量10,000以上の樹脂(バインダーポリマー)>
#3000−2(ポリビニルブチラール、電気化学工業(株)製)
【0124】
<(成分E)単官能(メタ)アクリレート化合物>
IBOA(アクリル酸イソボルニル、東京化成工業(株)製)
IBOM(メタクリル酸イソボルニル、東京化成工業(株)製)
DCPA(アクリル酸ジシクロペンタニル、東京化成工業(株)製)
DCPM(メタクリル酸ジシクロペンタニル、東京化成工業(株)製)
DDM(メタクリル酸ドデシル、和光純薬工業(株)製)
【0125】
<(成分F)光熱変換剤>
EC600JD(カーボンブラック、ライオン(株)製、平均一次粒径34.0nm)
#40(カーボンブラック、三菱化学(株)製、算術平均一次粒径24nm)
【0126】
<(成分G)フィラー>
R8200(シリカ粒子、AEROSIL R8200、日本アエロジル(株)製)
200(シリカ粒子、AEROSIL 200、日本アエロジル(株)製)
【0127】
また、実施例3及び実施例32において得られたレリーフ印刷版について、以下に記載の彫刻深さの評価をそれぞれ行った。
【0128】
<彫刻深さ評価>
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の「彫刻深さ」をそれぞれ、以下のように測定した。ここで、「彫刻深さ」とは、レリーフ層の断面を観察した場合の、彫刻された位置(高さ)と彫刻されていない位置(高さ)との差をいう。本実施例における「彫刻深さ」は、レリーフ層の断面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK9510((株)キーエンス製)にて観察することにより測定した。彫刻深さが大きいことは、彫刻感度が高いことを意味する。
【0129】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)アクリレートオリゴマーと、
(成分B)熱重合開始剤と、
(成分C)式(1)〜式(7)で表される化合物の少なくとも一つと、を含有し、
(成分D)重量平均分子量10,000以上の樹脂を含有しないか、又は、組成物の全重量に対して、0重量%を超え2重量%未満含有することを特徴とする
レーザー彫刻用組成物。
【化1】

(式(1)〜式(7)中、R1〜R18は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール又はヘテロ環基を表し、L2は2価の有機基を表し、L3は3価の有機基を表し、L4は4価の有機基を表す。)
【請求項2】
成分Aが、分子内に2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する、請求項1に記載のレーザー彫刻用組成物。
【請求項3】
成分Aが、ウレタンアクリレートオリゴマーである、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用組成物。
【請求項4】
成分Bが、過酸化物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物。
【請求項5】
成分Cの含有量が、組成分の全重量に対して、2〜40重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物。
【請求項6】
(成分E)単官能(メタ)アクリレート化合物を更に含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物。
【請求項7】
(成分F)光熱変換剤を更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物。
【請求項8】
(成分G)フィラーを更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物。
【請求項9】
(成分F)光熱変換剤及び(成分G)フィラーを更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物。
【請求項10】
支持体上に、請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物から形成されたレリーフ形成層を備えるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項11】
支持体上に、請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物から形成されたレリーフ形成層を熱架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、
前記レリーフ形成層を熱により架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、
前記レリーフ形成層を熱により架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、並びに、
前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含むレリーフ印刷版の製版方法。
【請求項14】
請求項13に記載の製版方法により製造されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版。
【請求項15】
前記レリーフ層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である、請求項14に記載のレリーフ印刷版。
【請求項16】
前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、請求項14又は15に記載のレリーフ印刷版。

【公開番号】特開2013−28064(P2013−28064A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165413(P2011−165413)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】