説明

レーザ光源装置およびその駆動方法

【構成】APC回路からの直流電流に、周波数200MHzの正弦波電流を重畳させた駆動電流をレーザダイオードに1msec間与えて発振させ、次に周波数300MHzの正弦波電流を重畳させた駆動電流を1msec間与えて発振させ、さらに周波数400MHzの正弦波電流を重畳させた駆動電流を1msec間与えて発振させる。その後、再び周波数200MHzの正弦波電流を重畳させた駆動電流を1msec間与えて発振させる。このように、1msecが経過するごとに、APC回路からの直流電流に周波数200MHz、300MHz、400MHzの正弦波電流を重畳した駆動電流をレーザダイオードに繰り返し循環して与えて、レーザダイオードを発振させる。
【効果】正弦波電流の周波数を変化させると、それに応じてレーザ光の縦モード波形が変化するので、スペックルノイズを時間的に平均化されて視覚的に認識できない程度まで低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光源装置およびその駆動方法に関し、特にレーザダイオードの駆動電流に高周波電流を重畳させてスペックルノイズを低減する、レーザ光源装置およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザディスプレイ装置の光源として、自然な色再現を可能とする広い色温度範囲を有し、また高出力であるために高輝度化が可能という優れた特長を備えたレーザダイオードが用いられる。
【0003】
このレーザダイオードから出射されるレーザ光は、時間的にも空間的にも位相が揃ったコヒーレントな光であるが、スクリーンで反射されると、その表面の凹凸によって散乱されて互いに位相の異なるレーザ光となる。このレーザ光が視聴者の眼に入ると、その網膜上で干渉するので、視聴者にはコントラストの高い斑点状の模様が映像とともに見える。この模様はスペックルノイズと言われ、視聴者が同じ位置から映像を見ていると、スペックルノイズもスクリーン上の同じ位置に同じ強度の模様として見える。このため、スペックルノイズは、視聴者の眼を非常に疲れさせてしまう。
【0004】
そこで、特許文献1では、レーザダイオードに単一周波数の高周波電流を重畳した駆動電流を注入することによって発振させている。この場合、レーザダイオードから出射されるレーザ光の縦モード波形はマルチモード化され、複数の縦モードからなるレーザ光が出射される。このように、マルチモード化されたレーザ光は、視聴者の網膜上で互いに干渉して打ち消し合いやすくなるため、シングルモードの場合に比較して、スペックルノイズを低減することができる。
【特許文献1】特開2001−102681号公報[H01S 5/062、B23K 26/00、26/06、26/08、G02F 1/03]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、スペックルノイズの低減に限界があるため、視聴者にはスペックルノイズがまだ見えるという問題がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、スペックルノイズを視覚的に認識できないレベルまで低減することができる、レーザ光源装置およびその駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、レーザダイオード(20)、映像信号に応じた直流電流を発生する直流電流発生手段(30)、高周波電流を発生する高周波電流発生手段(16、34、36)、直流電流発生手段によって発生された直流電流に高周波電流発生手段によって発生された高周波電流を重畳して駆動電流を生成する生成手段(32)、および生成手段によって生成された駆動電流によってレーザダイオードを駆動してレーザ光を出射させる駆動手段(18)を備える、レーザ光源装置において、高周波電流発生手段はレーザ光の縦モード波形が互いに異なる複数の周波数の高周波電流を順次発生する電流順次発生手段(16、34、36、S3、S11)を含み、生成手段は直流電流に複数の高周波電流を順次重畳して複数の駆動電流を生成し、および駆動手段は複数の駆動電流によってレーザダイオードを順次駆動することを特徴とする、レーザ光源装置である。
【0008】
請求項1の発明では、直流電流発生手段によって直流電流が発生されるとともに、高周波電流発生手段に含まれる電流順次発生手段によって、縦モード波形が互いに異なる複数の周波数の高周波電流が順次発生される。そして、生成手段によって直流電流に複数の周波数の高周波電流を順次重畳させて、周波数の異なる高周波電流が重畳された駆動電流を順次生成する。次に、周波数の異なる高周波電流が重畳された駆動電流をレーザダイオードに順次注入することにより、レーザダイオードからレーザ光を順次出射させる。
【0009】
このように、映像信号に応じた直流電流に、縦モード波形が互いに異なる周波数の高周波電流が順次重畳されて生成された駆動電流がレーザダイオードに順次注入されると、レーザダイオードから出射されるレーザ光の縦モード波形は重畳される高周波電流の周波数に応じて変化する。この順次出射されるレーザ光は互いに位相が揃ったコヒーレントな光ではないので、これらのレーザ光によって発生するスペックルノイズの位置およびその強度も変化する。このため、スペックルノイズは時間的に平均化されて、視覚的に認識できない程度まで低減される。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載のレーザ光源装置において、電流順次発生手段により発生される複数の周波数の高周波電流の各々の発生時間を計時する計時手段(16、38)、および計時手段によって計時された発生時間に基づいて複数の周波数に含まれる別の周波数の高周波電流に切り換える切換手段(16、S5)をさらに備える、レーザ光源装置である。
【0011】
請求項2の発明では、電流順次発生手段によって発生された複数の高周波電流の各々の発生時間を計時手段によって計時する。そして、計時された時間に基づいて、切換手段により、発生された複数の周波数に含まれる別の周波数の高周波電流に切り換える。この場合、高周波電流が重畳された直流電流によってレーザダイオードが駆動される時間を、高周波電流の周波数ごとに制御することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2記載のレーザ光源装置において、電流順次発生手段は複数の周波数の高周波電流を周波数の低い順に発生する昇順発生手段(16、34、36、S7、S11)、および最も高い周波数の高周波電流を発生した後に最も低い周波数の高周波電流を発生する第1循環手段(16、34、S9)を含む、レーザ光源装置である。
【0013】
請求項3の発明では、電流順次発生手段によって高周波電流を発生する場合、昇順発生手段によって複数の高周波電流を周波数の低い順に発生し、発生した高周波電流の周波数が最も高くなったとき、第1循環手段によって次に発生する高周波電流の周波数を最も低い周波数にする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1または2記載のレーザ光源装置において、電流順次発生手段は複数の周波数の高周波電流を周波数の高い順に発生する降順発生手段(16、34、36、S7、S11)、および最も低い周波数の高周波電流を発生した後に最も高い周波数の高周波電流を発生する第2循環手段(16、34、S9)を含む、レーザ光源装置である。
【0015】
請求項4の発明では、複数電流発生手段によって高周波電流を発生する場合、降順発生手段によって複数の高周波電流を周波数の高い順に順次発生し、発生した高周波電流の周波数が最も低くなったとき、第1循環手段によって次に発生する高周波電流の周波数を最も高い周波数にする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のレーザ光源装置において、複数の周波数はいずれも100MHzから1GHzの範囲に含まれる、レーザ光源装置である。この場合、出射されるレーザ光の縦モード波形を効率的に変化させることができるので、スペックルのノイズも効率的に低減することができる。
【0017】
請求項6の発明は、上記のレーザ光源装置のいずれかを備える、レーザディスプレイ装置である。この場合、レーザディスプレイ装置のスペックルノイズを時間的に平均化することによって視覚的に認識できないレベルにすることができる。
【0018】
請求項7の発明は、映像信号に応じた直流電流を発生する直流電流発生工程(30)、高周波電流を発生する高周波電流発生工程(16、34、36、S3、S11)直流電流に高周波電流を重畳して駆動電流を生成する生成工程(32)、および生成工程において生成された駆動電流によってレーザダイオード(20)を駆動してレーザ光を出射させる駆動工程(18)を備える、レーザ光源装置の駆動方法において、高周波電流発生工程は縦モード波形が互いに異なる複数の周波数の高周波電流を順次発生する電流順次発生工程(16、34、36、S3、S11)を含み、生成工程は直流電流に複数の高周波電流を順次重畳して複数の駆動電流を生成し、および駆動工程は複数の駆動電流によってレーザダイオードを順次駆動することを特徴とする、レーザ光源装置の駆動方法である。この請求項7の発明の作用および効果は、請求項1の作用および効果と同一なので省略する。
【0019】
請求項8の発明は、請求項6記載のレーザ光源装置の駆動方法において、電流順次発生工程において発生する複数の周波数の高周波電流の各々の発生時間を計時する計時工程(16、38)、および計時工程において計時された発生時間に基づいて複数の周波数に含まれる別の周波数の高周波電流に切り換える切換工程(16、S5)をさらに備える、レーザ光源装置の駆動方法である。この請求項8の発明の作用および効果は、請求項2の作用および効果と同一なので省略する。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、レーザダイオードの縦モード波形が互いに異なる複数の周波数の高周波電流が順次重畳された駆動電流をレーザダイオードに注入することにより、スペックルノイズを時間的に平均化して、視覚的に認識できない程度まで低減することができる。
【0021】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1を参照して、この発明の実施例であるレーザディスプレイ装置10は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色のレーザ光をスクリーン26に投射して映像を映す装置で、A/D変換回路12を含む。A/D変換回路12は、チューナ(図示せず)によって受信されたビデオ信号またはビデオ再生装置(図示せず)によって再生されたビデオ信号を、アナログ信号からデジタルデータである映像データに変換した後、変換された映像データを信号処理回路14に与える。信号処理回路14は、映像データを、コンピュータ16から与えられる同期信号に同期したRGB信号に変換する。変換されたR信号はR用レーザ駆動回路18aに、G信号はG用レーザ駆動回路18bに、B信号はB用レーザ駆動回路18cにそれぞれ与えられる。R用レーザ駆動回路18aは、信号処理回路14から与えられたR信号に後述する高周波信号を重畳した後、高周波信号が重畳されたR信号をR用レーザダイオード20aに与える。R用レーザダイオード20aは高周波信号が重畳されたR信号により駆動されて、赤色のレーザ光をミラー24に向けて出射する。同様に、G用レーザ駆動回路18bは高周波信号が重畳されたG信号によってG用レーザダイオード20bを駆動し、B用レーザ駆動回路18cは高周波信号が重畳されたB信号によってB用レーザダイオード20cを駆動する。そして、G用レーザダイオード20bおよびB用レーザダイオード20cも、緑色および青色のレーザ光をミラー24に向けてそれぞれ出射する。
【0023】
一方、コンピュータ16は、信号処理回路14に与えた同期信号と同じ同期信号をミラー駆動回路22にも与える。ミラー駆動回路22は、与えられた同期信号に同期させてミラー24の向きを変える。このため、各レーザダイオード20a、20b、20cから出射された赤色、緑色および青色の各レーザ光は、レーザ光に同期して動くミラー24によってスクリーン26に向けて反射される。この結果、スクリーン26上にレーザ光が順次走査されて、映像が映し出される。
【0024】
次に、図2を参照して、各レーザダイオード20a、20b、20cに高周波の正弦波電流Ioutが重畳された駆動電流Iopを注入する駆動電流注入回路28について説明する。この駆動電流注入回路28には、赤色、緑色、青色のレーザ光をそれぞれ出射するために、各色のレーザ駆動回路18a、18b、18cおよび各色のレーザダイオード20a、20b、20cが含まれている。しかし、これらは各色で同じであるため、図2には赤色のレーザ光を出射するための駆動電流注入回路28aのみを図示し、緑色および青色のレーザ光を出射するための駆動電流注入回路28b、28cについては図示を省略する。したがって、以下の説明も赤色のレーザを出射するための駆動電流注入回路28aについて説明する。
【0025】
信号処理回路14から与えられたR信号は、R用レーザダイオード20aの出力を一定に保つAPC(Auto Power Control)回路30に与えられる。R信号は赤色の映像データの階調レベルを表した信号であるため、APC回路30は、R信号の階調レベルに応じた直流電流Idcを重畳回路32に出力する。
【0026】
一方、掃引周波数制御回路34は、コンピュータ16からの命令を受けて、指定された周波数の正弦波電流Ioutが出力されるように掃引回路36を制御すると、掃引回路36は指定された周波数の正弦波電流Ioutを重畳回路32に出力する。重畳回路32は、APC回路30から出力された直流電流Idcに、掃引回路36から出力された正弦波電流Ioutを重畳して駆動電流Iopを生成する。この正弦波電流Ioutの重畳については後述する。正弦波電流Ioutが重畳された駆動電流IopはR用レーザダイオード20aに注入され、駆動電流IopはR用レーザダイオード20aのアノードから、接地されたカソードに流れる。この結果、R用レーザダイオード20aはR信号の信号レベルに応じた赤色レーザ光を出射する。同様にして、G用レーザダイオード20bおよびB用レーザダイオード20cも、それぞれ緑色レーザ光および青色レーザ光を出射する。
【0027】
掃引周波数制御回路34は、コンピュータ16からの命令に基づき、掃引回路36に複数の周波数の正弦波電流Ioutを順次出力させることができる。また、コンピュータ16は、掃引回路36からある周波数の正弦波電流Ioutが出力されている時間をタイマ38により計時し、所定の時間が経過した後に、掃引周波数制御回路34を制御して次の周波数の正弦波電流Ioutを出力させるように切り換えることができる。
【0028】
次に、図3〜図5を参照して、APC回路30から出力される直流電流Idcに高周波の正弦波電流Ioutを重畳させる場合について、正弦波電流Ioutの周波数と、R用レーザダイオード20a(以下の説明では「レーザダイオード20」と略す)から発振されるレーザ光の縦モード波形との関係を説明する。
【0029】
まず、図3(a)を参照して、電流値が発振開始電流値Ithである直流電流Idcに、周波数200MHzの正弦波電流Ioutを重畳して生成された駆動電流Iopを、レーザダイオード20に注入する場合について説明する。レーザダイオード20から出射されるレーザ光の出力は、駆動電流Iopが発振開始電流値Ithよりも大きくなるにつれて同じように大きくなり、駆動電流Iopが増加から減少に転じると、出力も同じように増加から減少に転じる。そして、駆動電流Iopが発振開始電流値Ithになると、出力もゼロとなり、さらに駆動電流Iopが発振開始電流値Ithよりも小さくなっても、出力はゼロのままである。再び駆動電流Iopが増加して発振開始電流値Ithよりも大きくなると、出力もそれにつれて増加する。
【0030】
図3(b)を参照して、周波数200MHzの正弦波電流Ioutを重畳して生成された駆動電流Iopをレーザダイオード20に与えた場合に、レーザダイオード20から出射されるレーザ光の縦モード波形について説明する。図3(b)の横軸はレーザ光の波長であり、その単位はnmである。一方、縦軸は出射されるレーザ光全体の出力を100%としたときの相対出力である。この場合の縦モード波形は、その波長が650nmで、出力が非常に大きなレーザ光と、波長がその前後に数nmずつずれた、出力の小さなレーザ光とから構成される。
【0031】
次に、図4(a)を参照して、電流値が発振開始電流値Ithである直流電流Idcに、周波数300MHzの正弦波電流Ioutを重畳して生成された駆動電流Iopを、レーザダイオード20に注入する場合について説明する。この場合も図3(a)の場合と同様に、駆動電流Iopが発振開始電流値Ithよりも大きいときには、駆動電流Iopの増加/減少につれて、レーザダイオード20から出射されるレーザ光の出力も増加/減少する。また、駆動電流Iopが発振開始電流値Ithよりも小さいときには、出力は駆動電流Iopの大きさにかかわらずゼロである。この場合の正弦波電流Ioutの周波数は300MHzと、図3(a)の場合よりも高いので、レーザダイオード20の出力の変化も激しくなる。
【0032】
図4(b)を参照して、周波数300MHzの正弦波電流Ioutを重畳して生成された駆動電流Iopをレーザダイオード20に注入した場合に、レーザダイオード20から出射されるレーザ光の縦モード波形について説明する。ここで、図4(b)の横軸および縦軸は、図3(b)の場合と同じである。この場合の縦モード波形は、波長が650nmであるレーザ光を中心として、波長が数nmずつずれた複数本のレーザ光から構成される。したがって、図3(b)の場合と比較すると、マルチモード化されて、レーザ光の縦モードの本数が増加するとともに、波長650nmのレーザ光の相対出力が小さくなり、小さくなった分だけその前後の波長の相対出力が大きくなる。
【0033】
次に、図5(a)を参照して、電流値が発振開始電流値Ithである直流電流Idcに、周波数400MHzの正弦波電流Ioutを重畳して生成された駆動電流Iopを、レーザダイオード20に注入する場合について説明する。この場合も図3(a)の場合と同様に、駆動電流Iopが発振開始電流値Ithよりも大きいときには、駆動電流Iopが増加/減少するにつれて、レーザダイオード20から射出されるレーザ光の出力も増加/減少する。また、駆動電流Iopが発振開始電流値Ithよりも小さくなると、出力は駆動電流Iopの大きさにかかわらずゼロである。このときの正弦波電流Ioutの周波数は400MHと、図4(a)の場合よりもさらに高いので、レーザダイオード20の出力の変化もさらに激しくなる。
【0034】
図5(b)を参照して、周波数400MHzの正弦波電流Ioutを重畳して生成された駆動電流Iopをレーザダイオード20に注入した場合に、レーザダイオード20から発振されるレーザ光の縦モード波形について説明する。ここで、図5(b)の横軸および縦軸も、図3(b)の場合と同じである。この場合の縦モード波形は、波長が650nmであるレーザ光を中心とし、さらに多く波長のレーザ光から構成される。つまり、図4(b)の場合に比べてさらにマルチモード化されて、レーザ光の縦モードの本数がさらに増加するとともに、各波長の相対出力の差が小さくなるように変化する。
【0035】
次に、図6を参照して、APC回路30から出力される直流電流Idcに、掃引回路36から出力される、周波数の異なる正弦波電流Ioutを順次重畳させて生成した駆動電流Iopを、レーザダイオード20に順次注入する場合について説明する。最初に、APC回路30からの直流電流Idcに周波数200MHzの正弦波電流Ioutを重畳させた駆動電流Iopをレーザダイオード20に1msec間注入する。1msec経過後、次にAPC回路30からの直流電流Idcに周波数300MHzの正弦波電流Ioutを重畳させた駆動電流Iopをレーザダイオード20に1msec間注入する。1msec経過後、さらにAPC回路30からの直流電流Idcに周波数400MHzの正弦波電流Ioutを重畳させた駆動電流Iopをレーザダイオード20に1msec間注入する。さらに、1msec経過後、APC回路30からの直流電流Idcに周波数200MHzの正弦波電流Ioutを重畳させた駆動電流Iopを再び1msec間注入する。このように、1msecが経過するごとに、APC回路30からの直流電流Iopに、周波数200MHz、300MHzおよび400MHzの正弦波電流Ioutをそれぞれ重畳した駆動電流Iopを、レーザダイオード20に繰り返し循環して注入する。
【0036】
その結果、まず、図3(b)に示される、縦モードの本数が最も少ないレーザ光が出射される。次に、図4(b)に示される、マルチモード化されて縦モードの本数が増加したレーザ光が出射される。そして、図5(b)に示される、さらにマルチモード化されて縦モードの本数が最も多いレーザ光が出射される。その後再び、図3(b)に示される、縦モードの本数が最も少ないレーザ光が出射される。以下同様にして、重畳される正弦波電流Ioutの周波数が200MHzから順次400MHz、600MHzになるにつれて、出射されるレーザ光の縦モードの本数は増加し、600MHzから200MHzになると、縦モードの本数は減少する。
【0037】
このように、レーザダイオード20から出射されるレーザ光の縦モード波形が1msecごとに変化するので、スクリーン26で反射されたレーザ光が視聴者の網膜上で干渉する状態もそれにともなって1msecごとに変化する。この結果、発生するスペックルノイズの位置およびその強度も1msecごとに変化するので、スペックルノイズは時間的に平均化されて視覚的に認識できない程度まで低減される。
【0038】
次に、コンピュータ16は、図7に示すフローに従って、1msecごとに、直流電流Idcに重畳する高周波の正弦波電流Ioutの周波数を循環的に変化させる処理を実行する。まず、ステップS1では、変数nを1とする。ステップS3では、そのときの正弦波電流Ioutの周波数f(1)を200MHzに設定する。ステップS5では、1msec間待機する。
【0039】
ステップS7では、変数nを1だけインクリメントする。ステップS9では、インクリメントされた変数nが3よりも大きいか否かを判定する。その結果、“YES”と判定した場合は、変数nは3よりも大きくなっているので、ステップS1に戻る。一方、“NO”と判定した場合は、ステップS11で正弦波電流Ioutの周波数f(n)を100MHzだけ大きい周波数に変更した後、ステップS5に戻る。
【0040】
なお、この実施例では正弦波電流Ioutの周波数を200MHz、300MHz、400MHzの順に循環的に変化させたが、逆に400MHz、300MHz、200MHzの順に循環的に変化させてもよく、またこれらの周波数をランダムに変化させてもよい。
【0041】
この実施例では正弦波電流Ioutの周波数を3段階に変化させたが、縦モード波形が互いに異なる周波数が複数含まれていれば、2段階以上何段階に変化させてもよい。さらに、各段階での周波数の変化量を小さくすることによって、周波数を実質的に連続して変化させてもよい。このとき、変化させる周波数の段階が多いほどスペックルノイズは平均化されて目立たなくなる。また、変化させる周波数の範囲は、視聴者の眼にフリッカとして感じられない周波数であればよいが、100MHz〜1GHzの範囲の周波数が好ましい。この場合、出射されるレーザ光の縦モード波形を効率的に変化させることができるので、スペックルのノイズも効率的に低減することができる。
【0042】
この実施例では、正弦波電流Ioutの振幅は、その周波数によらずすべて同じ大きさとしたが、周波数ごとに異ならせてもよい。
【0043】
この実施例では、APC回路30から出力される直流電流Idcに重畳される高周波電流Iopの周波数を1msecごとに変化させたが、スペックルノイズが平均化されて視覚的に認識されにくくなる時間であれば特に制限はなく、1msec〜10msecの範囲で変化させるのが好ましい。さらに、この時間は正弦波電流の周波数ごとに異なっていてもよい。
【0044】
さらに、この実施例では、APC回路30から出力される直流電流Idcに重畳される高周波電流は正弦波電流Ioutとしたが、矩形波電流であってもよく、そのデューティも50%でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の1実施例を示すブロック図である。
【図2】図1実施例に適用される駆動電流注入回路のブロック図である。
【図3】(A)は正弦波電流の周波数が200MHzの場合のレーザダイオードの出射出力を示し、(B)は射出されるレーザ光の縦モード波形を示す図解図である。
【図4】(A)は正弦波電流の周波数が300MHzの場合のレーザダイオードの出射出力を示し、(B)は射出されるレーザ光の縦モード波形を示す図解図である。
【図5】(A)は正弦波電流の周波数が400MHzの場合のレーザダイオードの出射出力を示し、(B)は射出されるレーザ光の縦モード波形を示す図解図である。
【図6】周波数の異なる高周波の正弦波電流が重畳された駆動電流がレーザダイオードに与えられる順序を示す図解図である。
【図7】図2に示す正弦波重畳回路の動作の一部を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0046】
10…レーザディスプレイ
16…コンピュータ
18a、18b、18c…レーザ駆動回路
20a、20b、20c…レーザダイオード
30…APC回路
32…重畳回路
32…掃引周波数制御回路
36…掃引回路
38…タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオード、映像信号に応じた直流電流を発生する直流電流発生手段、高周波電流を発生する高周波電流発生手段、前記直流電流発生手段によって発生された前記直流電流に前記高周波電流発生手段によって発生された前記高周波電流を重畳して駆動電流を生成する生成手段、および前記生成手段によって生成された前記駆動電流によって前記レーザダイオードを駆動してレーザ光を出射させる駆動手段を備える、レーザ光源装置において、
前記高周波電流発生手段は、前記レーザ光の縦モード波形が互いに異なる複数の周波数の高周波電流を順次発生する電流順次発生手段を含み、
前記生成手段は前記直流電流に前記複数の周波数の前記高周波電流を順次重畳して複数の駆動電流を順次生成し、
前記駆動手段は前記複数の駆動電流によって前記レーザダイオードを順次駆動することを特徴とする、レーザ光源装置。
【請求項2】
前記電流順次発生手段により発生される前記複数の周波数の前記高周波電流の各々の発生時間を計時する計時手段、および前記計時手段によって計時された前記発生時間に基づいて前記複数の周波数に含まれる別の周波数の前記高周波電流に切り換える切換手段をさらに備える、請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記電流順次発生手段は前記複数の周波数の前記高周波電流を周波数の低い順に発生する昇順発生手段、および最も高い周波数の前記高周波電流を発生した後に最も低い周波数の前記高周波電流を発生する第1循環手段を含む、請求項1または2記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
前記電流順次発生手段は前記複数の周波数の前記高周波電流を周波数の高い順に発生する降順発生手段、および最も低い周波数の前記高周波電流を発生した後に最も高い周波数の前記高周波電流を発生する第2循環手段を含む、請求項1または2記載のレーザ光源装置。
【請求項5】
前記複数の周波数はいずれも100MHzから1GHzの範囲に含まれる、請求項1ないし4のいずれかに記載のレーザ光源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の前記レーザ光源装置を備える、レーザディスプレイ装置。
【請求項7】
映像信号に応じた直流電流を発生する直流電流発生工程、高周波電流を発生する高周波電流発生工程、前記直流電流に前記高周波電流を重畳して駆動電流を生成する生成工程、および前記生成工程において生成された前記駆動電流によって前記レーザダイオードを駆動してレーザ光を出射させる駆動工程を備える、レーザ光源装置の駆動方法において、
前記高周波電流発生工程は、前記レーザ光の縦モード波形が互いに異なる複数の周波数の高周波電流を順次発生する電流順次発生工程を含み、
前記生成工程は前記直流電流に前記複数の周波数の前記高周波電流を順次重畳して複数の駆動電流を生成し、および
前記駆動工程は前記複数の駆動電流によって前記レーザダイオードを順次駆動することを特徴とする、レーザ光源装置の駆動方法。
【請求項8】
前記電流順次発生工程において発生する前記複数の周波数の前記高周波電流の各々の発生時間を計時する計時工程、および前記計時工程において計時された前記発生時間に基づいて前記複数の周波数に含まれる別の周波数の前記高周波電流に切り換える切換工程をさらに備える、請求項7記載のレーザ光源装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−103515(P2008−103515A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284482(P2006−284482)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】