説明

レーザ加工機

【課題】高加減速加工時の加工ヘッドの振動を防止し、加工ヘッドが障害物に衝突した場合、加工機本体にダメージを与えず衝突を検知したアラームで、運転を停止させて破損部品を出さずにコストを削減し、衝突後の復旧も容易に行えるレーザ加工機を提供することを目的とする。
【解決手段】加工残留物を除去するガスが注入され、X,Y,Z軸方向に移動可能な加工ヘッドが障害物に衝突した際、検知信号を出力する検知センサを有するレーザ加工機であって、加工ヘッドが上部ヘッドと下部ヘッドの分割構造を具備し、フランジを有するブロックが上部ヘッド、下部ヘッドのいずれかに取付けられて上部ヘッドと下部ヘッドがフランジで保持される構造を有し、加工ヘッドの衝突時は、上部ヘッドまたは下部ヘッドがフランジから外れたことを検知し、検知センサの検知信号により運転が停止されることを特徴とするレーザ加工機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工ヘッドへの二次元方向からの衝突に対する衝突緩和機能を備えたレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ加工機では、製品の加工工程において移動する加工ヘッドが加工ワーク等の障害物Wに衝突した際、ワークやレーザ加工機の加工ヘッド等の主要部品に重大な損傷を与える可能性がある。そのため加工ヘッドや加工ワーク等に損傷を与えない様々な衝突防止策が講じられている。
【0003】
例えば、図8(a)に示す従来のレーザ加工機50の加工ヘッド51には、軸送りにおいて障害物Wに衝突した際、加工機本体にダメージを与えないよう連結部53のZ軸方向にバネによる懸架構造を備え、図8(b)に示す衝突の際には、連結部53のバネ部52が傾き衝撃を逃がす衝撃吸収手段が講じられている。
【0004】
また、レーザ加工機のキャリッジ等の移動体が誤ってワーク等に接触/衝突した場合、ワーク及びレーザ加工機の主要部に重大な損傷を与える可能性が高い。そのため衝突による損傷を防止する手段として、キャリッジとキャリッジを軸に固定しているキャリッジ脚のシャーピン兼用の取付けボルトが、衝突部を中心とする回転モーメントの反力が大きい場合は、シャーピン兼用の取付けボルトが剪断されることでモーメントの反力を吸収する構成が紹介されている(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
また、レーザ加工機のレーザヘッド部とヘッド支持部との連結部に、押圧付勢力を与えるバネを介挿することで、レーザヘッド部が外力に相応して自由に逃げられる連結部の構成が紹介されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−320167号公報
【特許文献2】実公昭62−10985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、高速化の趨勢の昨今では、従来のレーザ加工機50は、製品の加工工程においてより高速で移動する加工ヘッド51が加工ワーク等の障害物Wに衝突した際、ワークやレーザ加工機50の加工ヘッド51等の主要部品に重大な損傷を与える可能性がある。損傷を免れたとしても、加工ヘッド51の位置決め精度がずれてしまう等のダメージの可能性から点検整備の必要があり、運用面でもコストが掛かってしまうという問題がある。
【0008】
また、図8に示す従来のレーザ加工機50において、加工ヘッド51とヘッド支持部54とを連結する連結部53に外力に相応するバネで吊る懸架構造の場合、レーザ加工時の加工ヘッド51の加減速が大きいと、重量のある加工ヘッド51の慣性力により加工中のバネ部52で振動が発生することがある。バネ部52に振動が発生すると加工ヘッド51の先端も振動し、且つその振れ幅も拡大されるだけでなく、加工ヘッドの振動はX軸、Y軸及びZ軸の3次元方向に生じるため加工切断面にうねりが生じて、高加減速での高品質なレーザ加工できないという問題が発生する。
【0009】
また、加工ヘッドの高加減速加工対策としてリジッド方式のボルト固定の場合は、加工ヘッド先端をシャーピン構造のボルトで固定した加工ヘッドが衝突した際に、ボルトが破断して衝突時の加工機本体へのダメージを防ぐ構成となっているが、シャーピン部品は高価であり、交換部品のコストが高くなってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は以上の点に着目し成されたもので、加工ヘッドの高加減速加工対策として、Z軸方向をリジッド方式で固定することで加工ヘッドの振動を防止し、加工ヘッドが障害物に衝突した場合、加工機本体にダメージを与えないため、衝突を検知してアラームで衝突を知らせ、且つ運転を停止させることでシャーピン部品等の破損部品を出さずにコストを削減し、衝突後の復旧も容易に行えることを可能としたレーザ加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の目的を達成するため、以下(1)〜(6)の構成を備えるものである。
【0012】
(1)加工残留物を除去するためのアシストガスまたはエアからなるガスが注入され、且つレーザ装置を具備したX,Y,Z軸方向に移動可能な加工ヘッドと、該加工ヘッドが障害物に衝突したことを検知して検知信号を出力する検知センサとを有するレーザ加工機であって、前記加工ヘッドが、上部ヘッドと下部ヘッドに分割する分割構造を具備し、フランジを有する複数のブロックが回転軸で回転自在に前記上部ヘッドまたは下部ヘッドのいずれか一方に取付けられ、分割された前記上部ヘッドと前記下部ヘッドとが前記フランジで保持される構造を有し、前記加工ヘッドの衝突時には、前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドが前記フランジから外れることで前記下部ヘッドが落下し、且つ前記検知センサから前記下部ヘッドが外れたことで衝突を検知して出力される前記検知信号によって運転が停止されることを特徴とするレーザ加工機。
【0013】
(2)前記分割構造を具備した前記加工ヘッドは、前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドのいずれか一方に取付けられた複数の前記ブロックが有する前記フランジで前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドを保持する際、注入される前記ガスの圧力で前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドを前記フランジに押付けて固定されることを特徴とする前記(1)記載のレーザ加工機。
【0014】
(3)前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドのいずれか一方に取付けられた前記ブロックには、前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドとの接合面に凹溝を有し、該凹溝に対応する前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドの接合面には2面が所定の角度のテーパ面の凸部が形成されて前記凹溝と前記凸部とが嵌合され、前記加工ヘッドの衝突時には、前記凸部に形成された前記テーパ面が前記ブロックを押し広げることを特徴とする前記(1)または(2)記載のレーザ加工機。
【0015】
(4)前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドいずれか一方に取付けられる複数の前記ブロックが、所定の抗力を有する弾性材で前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドいずれか一方に固定されていることを特徴とする前記(1)乃至(3)いずれか1項に記載のレーザ加工機。
【0016】
(5)前記上部ヘッドまたは下部ヘッドに取付けられる複数の前記ブロックが、所定の応力で破断する樹脂ボルトで前記上部ヘッドまたは下部ヘッドに固定されていることを特徴とする前記(1)乃至(4)いずれか1項に記載のレーザ加工機。
【0017】
(6)衝突を検知する前記検知センサが、前記上部ヘッドと前記下部ヘッドとの接合面に前記ガスのガス導路とガス溜りが形成され、且つ該ガス溜りには前記ガスの流れを検知し前記検知信号を出力する流量センサを有し、前記加工ヘッドの衝突時には、前記下部ヘッドが外れて前記ガス溜りから前記ガスが流出し、且つ前記流量センサによって流出する前記ガスの流れで衝突を検知して出力される前記検知信号により運転が停止されることを特徴とする前記(1)乃至(5)いずれか1項に記載のレーザ加工機。
【発明の効果】
【0018】
本発明のレーザ加工機によれば、高加減速加工時の慣性力による加工ヘッドの振動を防止し、振動により3次元方向に生じる加工切断面のうねりを無くして、高品質のレーザ加工を行うことができる。
【0019】
また、加工ヘッドが障害物に衝突しても、2分割構造の下部ヘッドを落下させ、その下部ヘッドの落下を検知センサが検知して運転を速やかに停止することで加工機本体のダメージを防止する。上部ヘッドまたは下部ヘッドに取付けられた押さえブロックのフランジで上部ヘッドに下部ヘッドを固定する構造により、加工ヘッド衝突時に生じる破損部品を無くすことが可能で部品コストを削減し、且つ下部ヘッドを元の位置に装着することで簡単に復旧可能な衝突緩和機能を備えたレーザ加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施例に係るレーザ加工機の上部ヘッドに押さえブロックが取付けられた加工ヘッドの断面図
【図2】本実施例に係るレーザ加工機の下部ヘッドに押さえブロックが取付けられた加工ヘッドの断面図
【図3】Y軸方向での加工ヘッド衝突時の衝突緩和機能の動作図
【図4】X軸方向での加工ヘッド衝突時の衝突緩和機能の動作図
【図5】加工ヘッドの押さえブロックの固定にバネを使用した例を示す図
【図6】加工ヘッドの押さえブロックの固定に樹脂ボルトを使用した例を示す図
【図7】加工ヘッドの衝突検知に流量センサを使用した加工ヘッドの断面図
【図8】従来のレーザ加工機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本実施例に係るレーザ加工機の上部ヘッドに押さえブロックが取付けられた加工ヘッドの構成を示す断面図であり、図1(a)に示すガス圧によって下部ヘッドが上部ヘッドの押さえブロックのフランジに更に固定され、図1(b)に示す上部ヘッドと下部ヘッドとが分離する2分割構造を具備する加工ヘッドを示す図である。
【0023】
図2は、本実施例に係るレーザ加工機の下部ヘッドに押さえブロックが取付けられた加工ヘッドの構成を示す断面図であり、図1とは押さえブロックの取付け位置が逆になっている。図2(a)に示すように上部ヘッドに下部ヘッドの押さえブロックのフランジで懸架し、更にアシストガス圧によって固定される。図2(b)は、上部ヘッドと下部ヘッドとが分離する2分割構造の加工ヘッドを示す図である。
【0024】
図中において、1は本実施例に係るレーザ加工機であり、2は上部ヘッド2aと下部ヘッド2bの分割構造を有する加工ヘッドで、3は上部ヘッド2aまたは下部ヘッド2bの対向面に回転軸となるピン2cで回転自在に取付けられた押さえブロックである。押さえブロック3の接合面には凹溝3bが設けられ、下部ヘッド2bまたは上部ヘッド2aの対向面には2面がテーパ面を形成された凸部2dと嵌合され、凸部2dのテーパ面には、衝突の際に押さえブロック3の凹溝3bを押し上げることでフランジ3aが外れる構造となっている。4は衝突時の下部ヘッド2bの落下を検知するタッチセンサである。5はガス圧で、アシストガス圧とエア圧から成り、アシストガスには、加工ワークの材料によって酸素、窒素、アルゴン、空気、各種混合ガス等が使用されている。レーザ加工時には、アシストガスによって加工時に発生する加工残留物のドロスや蒸発ガスを強制的に除去するため加工ヘッド2に加圧して注入されるアシストガスの圧力を利用して、分割構造の加工ヘッド2を構成する上部ヘッド2aと下部ヘッド2bとのフランジ3aによる固定を更に強固にしている。しかし加工ヘッド2が高速移動する際は、加工用のアシストガスの供給が停止されるため、その替わりに別系統で圧縮空気(以下「エア」と記す)を供給して、上部ヘッド2aと下部ヘッド2bをエア圧より固定を行っている。
【0025】
特にこの実施例の説明においては、図1に示した押さえブロック3が上部ヘッド2aに繋がって設置されている場合を主に説明するものであるが、図2に示した下部ヘッド2bに繋がっている場合も同様である。またガス圧5に付いては、レーザ加工時は、アシストガス、高速移動時は高圧のエアが連続して供給されているものとする。
【0026】
<加工ヘッドの構造>
図1(a)において、加工ヘッド2に供給されるガス圧5は、加工ヘッド2に対してZ軸方向に働くため、ガス圧5の圧力で下方向へ押出される下部ヘッド2bを押さえブロック3のL字状のフランジ3aが受け止める構造によって、上部ヘッド2aに下部ヘッド2bを更に固定している。その結果、従来のレーザ加工機50のバネで吊る懸架構造の場合に発生する高加減速加工時の慣性力による加工ヘッド2の振動を防止して、振動により3次元方向に生じる加工切断面のうねりを無くすことが可能となる。
【0027】
また、加工工程でX軸、Y軸方向に移動中の加工ヘッド2の衝突時には、X軸、Y軸方向に力が作用するため、上部ヘッド2aに取付けられたピン2cを中心に回転する押さえブロック3を下部ヘッド2bが押して逃げる力として作用する。押さえブロック3が逃げることでL字状のフランジ3aが外れ、2分割構造の下部ヘッド2bが落下(口開き状態)してレーザ加工機本体へのダメージを防止する衝突緩和機能が働く。押さえブロック3が逃げて下部ヘッド2bが落下する際に、上部ヘッド2aに取付けられたタッチセンサ4が下部ヘッド2bの落下を検知し、検知信号であるアラームを出力して直ちに加工ヘッド2のX,Y,Z軸方向のサーボ機能等のレーザ加工機1の運転を停止する。その結果、衝突による破損部品が生じないという効果がある。
【0028】
尚、分割構造の下部ヘッド2bを固定する押さえブロック3は、本実施例では対辺2ヶ所に設けた構造となっているが、4辺4ヶ所に押さえブロック3を設けることも可能であり、本発明を制限するものではない。
【0029】
<Y軸方向の軸送り時の加工ヘッド衝突>
図3は加工ヘッド2のY軸方向での衝突時の衝突緩和機能の動作図である。図3(a)に示すY軸移動方向(Y軸方向)へ加工ヘッド2が高速移動中、或いはレーザ加工中に加工ワーク等の障害物Wと加工ヘッド2が衝突した場合、下部ヘッド2bが障害物Wに押されて移動することで、図3(b)に示す左側の押さえブロック3のフランジ3aから下部ヘッド2bが外れて、図右側の押さえブロック3は下部ヘッド2bに押されることでピン2cを中心に回転して傾いた状態となり、ガス圧5の圧力も加わって下部ヘッド2bが落下する。下部ヘッド2bの装着状態を検知するタッチセンサ4は、下部ヘッド2bの落下を検知して検知信号であるアラームを出力して直ちにレーザ加工機1の運転を停止することで加工機本体へのダメージを回避している。落下した下部ヘッド2bは、元の位置に装着することで簡単にレーザ加工機1を復旧することが可能な構造となっている。
【0030】
<X軸方向の軸送り時の加工ヘッド衝突>
図4は加工ヘッド2のX軸方向での衝突時の衝突緩和機能の動作図であり、下部ヘッド2bと押さえブロック3との接合面の構成は、押さえブロック3の内壁には凹溝3bが設けられ、凹溝3bに当接する下部ヘッド2bの側面には、2方向が30度テーパ形状の凸部2dが設けられて嵌合している。
【0031】
図4(a)に示すX軸移動方向(X軸方向)へ加工ヘッド2が高速移動中、或いはレーザ加工中に障害物Wと加工ヘッド2が衝突した場合、下部ヘッド2bが障害物Wに押されて移動すると、図4(b)に示す30度テーパ形状の凸部2dが押さえブロック3の凹溝3bから外れて左右のブロック内壁を押し上げる状態となる。Y軸方向の衝突と同様、押さえブロック3のフランジ3aが外れてガス圧5に押され、図4(c)に示すように下部ヘッド2bが落下する。この時タッチセンサ4が下部ヘッド2bの落下を検知して検知信号であるアラームを出力することによって直ちにレーザ加工機1の運転を停止し加工機本体へのダメージを回避している。
【0032】
上述した押さえブロック3の凹溝3bと下部ヘッド2bの凸部2dとの嵌合構造により、2分割構造の下部ヘッド2bを固定する押さえブロック3を対辺2ヶ所に設けた構造であってもX軸、Y軸方向の何れの方向からの衝突が発生しても対応できる構成とすることが可能である。また、図2に示す押さえブロック3が下部ヘッド2bに取付けられている場合でも、押さえブロック3の凹溝3bと上部ヘッド2aの凸部2dとの嵌合構造は、同一の機能を果す。
【0033】
尚、上部ヘッド2aまたは下部ヘッド2bの凸部2dに形成されたテーパ形状の角度は、本実施例では30度としているが、加工ヘッド2のサイズにより形成する角度を変更することが可能であり本発明を限定するものではない。
【0034】
以上、本実施例に係るレーザ加工機により、高速移動時、或いはレーザ加工時の高加減速加工時の慣性力による加工ヘッドの振動を防止し、振動により3次元方向に生じる加工切断面のうねりを無くして、高品質のレーザ加工を行うことができる。また加工ヘッドが障害物に衝突しても、2分割構造の下部ヘッドの落下を検知センサが検知して出力されるアラームによって運転を速やかに停止することで加工機本体のダメージを防止する。押さえブロックのフランジのみで下部ヘッドを固定する構造により、加工ヘッド衝突時の破損部品をなくして交換部品のコストを削減し、且つ落下した下部ヘッドを元の位置に装着することで簡単に加工機を復旧可能な衝突緩和機能を備えたレーザ加工機を提供することができる。
【実施例2】
【0035】
図5は押さえブロックを弾性材で固定する構成図である。ガス圧5で下部ヘッド2bと押さえブロック3のフランジ3aに固定している実施例1の構成において、押さえブロック3をバネ等の弾性材で押さえる構造を更に具備している。供給されるガス圧5に圧力変動が発生した場合、加工ヘッド2の上部ヘッド2aに回転軸のピン2cで取付けられた押さえブロック3が、高加減速による慣性力で不用意にずれたり或いは外れることを防止する機能を付加することができる。加工ヘッド2の上部ヘッド2aと下部ヘッド2bの固定は、ブロック3のフランジ3aとアシストガスまたはエアのガス圧5によるもので弾性材は補助機能を有するだけで取付けても振動が発生することはない。
【0036】
図5(a)に示す板バネ6aや図5(b)に示すコイルバネ6bを取付けることで、高加減速による慣性力によって発生した下部ヘッド2bの微小ズレ量を、バネ6の抗力で自動的に元の位置に戻す機能を具備し高品質のレーザ加工を行うことができる。
【0037】
また、図6は押さえブロック3を固定する高価なシャーピン部品の替わりに、安価で所定の応力で破断する樹脂ボルト7で固定する構造となっている。高加減速の慣性力によって発生する下部ヘッド2bの微小ズレ量を防止するため、押さえブロック3の固定を図り、且つ加工ヘッド衝突時には樹脂ボルト7が所定の応力で折れて破断して押さえブロック3が逃げる衝突緩和機能を備えた構造とすることが可能である。樹脂ボルト7による固定方法であれば、高加減速による慣性力による振動を無くし、且つ下部ヘッド2bを確実に固定することで高品質のレーザ加工を行うことが可能であり、高価なシャーピン部品に比べて非常に安価な樹脂ボルト7を使って同一の効果を付加することができる。
【0038】
尚、図2に示す押さえブロック3が下部ヘッド2bに取付けられている場合でも、上述した押さえブロック3の固定方法は同一の機能を果すことができる。
【0039】
また、加工ヘッド衝突時の衝突検知方法として、実施例1で使用したタッチセンサ4の代わりに、アシストガスまたはエアからなるガスの流れを検知する流量センサ8を使用することも可能である。図7の加工ヘッドの断面図で示すようにガス圧5の流出を検知するため、上部ヘッド2aと下部ヘッド2bとの接合面にガス圧5のガス導路5aとガス溜り5bを設け、ガス溜り5bには流量センサ8(不図示)が接続される構造となっている。
【0040】
通常、上部ヘッド2aに下部ヘッド2bがガス圧5の圧力で固定されている場合は、ガス溜り5bは所定の圧力を保って密閉されているが、加工ヘッド衝突時には、押さえブロック3から下部ヘッド2bが落下することで密閉されたガス溜り5bからアシストガス或いは高圧のエアが流出する。このガスの流出により流量センサ8が加工ヘッドの衝突を検知し、検知信号であるアラームを出力して直ちに加工機の加工ヘッド2のX,Y,Z軸方向のサーボ機能等のレーザ加工機1の運転を停止し、加工機本体へのダメージを回避する衝突検知方法を提供することができる。
【0041】
また実施例1で上述したように、通常の加工ヘッド2の早送り動作では、アシストガスの注入は停止されているため、ガス圧5による加工ヘッド2の固定機能と、アシストガスの流れで衝突検知を行う流量センサ8の検知機能は期待できない。そのため、加工ヘッド2の早送り動作の場合は、アシストガスに替わり別系統で高圧のエアを供給することで、ガス圧5を確保することにより上部ヘッド2aと下部ヘッド2bの固定機能と、ガス導路5aとガス溜り5bにエアが連続して供給されていることで衝突を検知する流量センサ8の効果は、アシストガスの場合と同様に確保されている。その他のレーザ加工機1の構成は実施例1と同一のため、説明は省略する。
【0042】
以上、本実施例に係るレーザ加工機は、ガス圧に変動が発生した場合、高加減速加工時の慣性力による加工ヘッドの振動を抑えて振動により3次元方向に生じる加工切断面のうねりを無くし、高品質のレーザ加工を行うことができる。また加工ヘッドが障害物に衝突しても、2分割構造の加工ヘッドの下部ヘッドが落下してアシストガスまたはエアが流出したことを検知する流量センサの働きで加工ヘッド衝突を検知し、検知信号であるアラームによって加工機の運転を速やかに停止して加工機本体のダメージを防止する衝突緩和機能を備えたレーザ加工機を提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 レーザ加工機
2 加工ヘッド
2a 上部ヘッド
2b 下部ヘッド
2c ピン(回転軸に対応)
2d 凸部
3 押さえブロック(ブロックに対応)
3a フランジ
3b 凹溝
4 タッチセンサ(検知センサに対応)
5 ガス圧
6 バネ
6a 板バネ
6b コイルバネ
7 樹脂ボルト
8 流量センサ(検知センサに対応)
W 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工残留物を除去するためのアシストガスまたはエアからなるガスが注入され、且つレーザ装置を具備したX,Y,Z軸方向に移動可能な加工ヘッドと、該加工ヘッドが障害物に衝突したことを検知して検知信号を出力する検知センサとを有するレーザ加工機であって、
前記加工ヘッドが、上部ヘッドと下部ヘッドに分割する分割構造を具備し、フランジを有する複数のブロックが回転軸で回転自在に前記上部ヘッドまたは下部ヘッドのいずれか一方に取付けられ、分割された前記上部ヘッドと前記下部ヘッドとが前記フランジで保持される構造を有し、
前記加工ヘッドの衝突時には、前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドが前記フランジから外れることで前記下部ヘッドが落下し、且つ前記検知センサから前記下部ヘッドが外れたことで衝突を検知して出力される前記検知信号によって運転が停止されることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記分割構造を具備した前記加工ヘッドは、前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドのいずれか一方に取付けられた複数の前記ブロックが有する前記フランジで前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドを保持する際、注入される前記ガスの圧力で前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドを前記フランジに押付けて固定されることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドのいずれか一方に取付けられた前記ブロックには、前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドとの接合面に凹溝を有し、該凹溝に対応する前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドの接合面には2面が所定の角度のテーパ面の凸部が形成されて前記凹溝と前記凸部とが嵌合され、前記加工ヘッドの衝突時には、前記凸部に形成された前記テーパ面が前記ブロックを押し広げることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドいずれか一方に取付けられる複数の前記ブロックが、所定の抗力を有する弾性材で前記上部ヘッドまたは前記下部ヘッドいずれか一方に固定されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記上部ヘッドまたは下部ヘッドに取付けられる複数の前記ブロックが、所定の応力で破断する樹脂ボルトで前記上部ヘッドまたは下部ヘッドに固定されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載のレーザ加工機。
【請求項6】
衝突を検知する前記検知センサが、前記上部ヘッドと前記下部ヘッドとの接合面に前記ガスのガス導路とガス溜りが形成され、且つ該ガス溜りには前記ガスの流れを検知し前記検知信号を出力する流量センサを有し、前記加工ヘッドの衝突時には、前記下部ヘッドが外れて前記ガス溜りから前記ガスが流出し、且つ前記流量センサによって流出する前記ガスの流れで衝突を検知して出力される前記検知信号により運転が停止されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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