説明

レーザ加工装置での光ファイバーケーブル保持機構

【課題】レーザービームトーチの動作や姿勢制御における制約を少なくすることができる光ファイバーケーブル保持機構を提供する。
【解決手段】レーザービームトーチが全方位に向うように作動するレーザ加工装置で、レーザービームトーチ3の動作や姿勢制御における制約を少なくすることができる光ファイバーケーブル保持機構を提供するものであって、レーザ発振器とレーザービームトーチ3とを光学的に接続している光ファイバーケーブル4の途中を少なくとも2つのスプリングバランサ7で吊持する。レーザー加工装置対して相対固定されているガイドレール6に前記各スプリングバランサ7をレーザービームトーチの運動と連動可能な状態でそれぞれ独立して移動自在に支持させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザピームの照射により、ワークの加工を行うロボット等の自動加工機械に関するものであり、特に、レーザービームトーチを全方向に作動させることのできる自動加工機械での光ファイバーケーブルの保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばYAGレーザ等のレーザービームを集光することにより得られた高いエネルギーを被加工物(ワーク)上に集中して溶接、溶断、穿孔等の加工を自動的に連続して行うレーザ加工ロボット等の加工装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−248687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、レーザ加工装置では、レーザをレーザ発振器から加工装置先端に配置されているレーザービームトーチに光ファイバーケーブルが用いられている。この光ファイバーケーブルは柔軟性を持つものであるが、電気配線に比べると、曲げに対する強度が少なく、また、加工装置本体や加工装置のアームなどにぶつかった時の衝撃に弱いという欠点を有している。
【0005】
特に、レーザービームトーチを全方位に向けて作動させるように設定されている多関節ロボットなどの加工装置では、光ファイバーケーブルの曲がりが少なくなるように姿勢を制御するなど、その使用に際して制約が生じているのが現状である。
【0006】
本発明は、このような点に着目して、レーザービームトーチが全方位に向うように作動するレーザ加工装置で、レーザービームトーチの動作や姿勢制御における制約を少なくすることができる光ファイバーケーブル保持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載した本発明は、レーザ発振器とレーザービームトーチとを光学的に接続している光ファイバーケーブルの途中を少なくとも2つのスプリングバランサで吊持し、レーザー加工装置に対して相対固定されているガイドレールに前記各スプリングバランサをレーザービームトーチの運動と連動可能な状態でそれぞれ独立して移動自在に支持させてあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、光ファイバーケーブルの途中をスプリングバランサで吊持し、このスプリングバランサをレーザー加工装置に対して相対固定されているガイドレールに前記各スプリングバランサをレーザービームトーチの運動と連動可能な状態でそれぞれ独立して移動可能に吊持していることから、レーザービームトーチの姿勢変更に対応して、スプリングバランサがその配設個所の相対位置を変えることになるから、スプリングバランサで吊持されている光ファイバーケーブルが極端な曲率で曲げられることによって光ファイバーケーブルに無理な曲げ力が作用したり、光ファイバーケーブルが周辺の機器類に衝突して衝撃を受けたりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用したレーザ加工装置の一実施態様を示す全体斜視図である。
【図2】要部取り出し正面図である。
【図3】要部取り出し側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
このレーザ加工装置は、ベース(1)上に装着した多関節型レーザ溶接ロボット(2)と、図示を省略したレーザ発振器と、レーザ発振器と前記多関節型レーザ溶接ロボット(2)のレーザービームトーチ(3)とを接続する光ファイバーケーブル(4)とを有している。
【0011】
ベース(1)からは、一対の逆L字型のケーブルハンガー(5)が立設してあり、このケーブルハンガー(5)の上部突出片部分(5a)に所定の間隔を隔てて平行に配置した一対のガイドレール(6)が装着してある。この一対のガイドレール(6)にスプリングバランサ(7)がそれぞれ独立して進退移動自在に支持してある。
【0012】
前記したレーザ発振器と多関節型レーザ溶接ロボット(2)のレーザービームトーチ(3)とを接続している光ファイバーケーブル(4)がその中間部分を前記スプリングバランス(7)で受け止め支持されている。
【0013】
ここで光ファイバーケーブル(4)とは、光ファイバー素線をナイロン繊維で被覆した光ファイバー芯線を高抗張力繊維と外皮で被覆した光ファイバーコード、あるいは複数の光ファイバー芯線に保護用のシースと呼ばれる被覆をしたものを含む概念である。
【0014】
なお、レーザビームを伝送する光ファイバーケーブル(4)では、200mm以上の曲げ半径が必要とされることから、光ファイバーケーブル(4)の中間部分の2箇所をスプリングバランス(7)で受け止めることにより、充分大きな曲げ半径を確保できるようにしてある。そして、このようにレーザービームトーチ(3)の近傍部分で光ファイバーケーブル(4)を2箇所で支持することで、光ファイバーケーブル(4)の曲がり半径を大きくすることができる。
【0015】
このように構成したレーザ加工装置では、溶接作業時でのレーザービームトーチ(3)の姿勢変更に伴い光ファイバーケーブル(4)が引っ張られて緊張したり緩められて弛んだりするが、その緊張や弛みをスプリングバランサ(7)の伸縮と移動で吸収し、光ファイバーケーブル(4)に常時適度なテンションを与え続けることになるから、光ファイバーケーブル(4)が極度に曲げられることがなくなるうえ、スプリングバランサ(7)がレーザービームトーチ(3)の運動に連動して支持位置を変位させることになるから光ファイバーケーブル(4)が周辺の機器類に接触して衝撃を受けることもなくなる。
【0016】
上述の実施態様では、レーザ加工装置として多関節型レーザ溶接ロボットを例に説明したが、レーザ加工装置としては、全自動型の溶接装置や、溶断装置、穿孔装置などの各種金属加工装置であってもよい。
【0017】
更に、上記の実施態様では、光ファイバーケーブル(4)の支持機構として、ガイドレール(6)を一対配置し、各ガイドレール(6)にスプリングバランス(7)をそれぞれ独立して進退移動可能な状態に装着したものについて説明したが、光ファイバーケーブル(4)の支持機構は、それぞれスプリングバランスを独立して進退移動可能な状態に装着している3本以上のガイドレールを平行に配置したものであってもよい。
【0018】
また、上記の実施態様では、各ガイドレール(6)をレーザ加工装置である多関節型レーザ溶接ロボットを固定しているベース(1)にケーブルハンガー(5)を介して支持するものについて説明したが、レーザ加工装置が固定型の場合には、レーザ加工装置の固定ベース部分からケーブルハンガーを立設したり、ガイドレールを天井や側壁などの壁面に支持させたりするようにしてもよい。また、レーザ加工装置がベースに対して直線移動可能に構成されているスライドベースに固定されている場合には、スライドベースからケーブルハンガーを立設するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、レーザービームを集光することにより得られた高いエネルギーを被加工物(ワーク)上に集中させて加工するレーザ加工装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0020】
3…レーザービームトーチ、4…光ファイバーケーブル、6…ガイドレール、7…スプリングバランサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームによりワーク加工を行うレーザー加工装置において、
レーザ発振器とレーザービームトーチ(3)とを光学的に接続している光ファイバーケーブル(4)の途中を少なくとも2つのスプリングバランサ(7)で吊持し、レーザー加工装置に対して相対固定されているガイドレール(6)に前記各スプリングバランサ(7)をレーザービームトーチ(3)の運動と連動可能な状態でそれぞれ独立して移動自在に支持させてあることを特徴とするレーザ加工装置での光ファイバーケーブル保持機構。
【請求項2】
レーザ加工装置が多関節ロボットである請求項1に記載したレーザ加工装置での光ファイバーケーブル保持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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