説明

レーザ加工装置

【課題】本発明は、本発明は、モールドの残留厚さをモニタしながらレーザ加工を行うことにより、ICにダメージを与えない最小厚さまでモールドをレーザ加工できるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のレーザ加工装置は、レーザ光の反射率の異なる複数の材料からなる複合材料を加工対象物としてレーザ加工する装置において、加工対象物の加工を行うための加工用レーザ光と加工対象物へ照射されるとともに加工用レーザ光よりも出力の小さな計測用レーザ光とを出射するレーザ光出射手段と、加工対象物で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定するための反射光量測定手段と、該反射光量に基づいて制御する制御手段を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置、特に、ICモールド樹脂およびプリント基板等のレーザ光の反射率の異なる複数の材料からなる複合材料を加工対象物としてレーザ加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工対象物(以下「ワーク」ともいう。)に対して加工用レーザ光で除去加工等の微細なレーザ加工を行うレーザ加工装置が利用されている。この種のレーザ加工装置として、加工用レーザ光を出射する加工用レーザ光源に加え、加工用レーザ光の焦点とワークとの位置合せを行うため、加工用レーザ光と波長の異なる計測用レーザ光を出射する計測用レーザ光源を有するレーザ加工装置が知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のレーザ加工装置では、ワークで反射された計測用レーザ光は、ピンホールマスクを介してフォトディテクタに入射する。また、特許文献2に記載のレーザ加工装置では、計測用レーザ光源から出射されワークで反射された計測用レーザ光は、CCDカメラに入射する。そして、CCDカメラでの撮影結果やフォトディテクタでの受光量に基づいて、計測用レーザ光の焦点とワークとの位置合せが行われる。なお、特許文献1および2に記載のレーザ加工装置では、加工用レーザ光源からワークまでの光路の一部と、計測用レーザ光源からワークまでの光路の一部とが共通になっている。
【0004】
また、金属材料のレーザ加工の加工状態判断方法であって、加工用の第1次レーザ光を照射した後に、前記第1次レーザ光よりもエネルギー密度の低い第2次レーザ光を加工部に照射して、前記第2次レーザ光の反射光を計測することにより加工状態を判定するレーザ加工の加工状態判断方法において、前記第2次レーザ光の反射光を第1の所定時間計測して、この後に前記第2次レーザ光の反射光を第2の所定時間計測することにより加工状態を判定するレーザ加工の加工状態判断方法が知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−321080号公報
【特許文献2】特開2005−161387号公報
【特許文献3】特開2005−131645号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載のレーザ加工装置では、基本的にZ方向の位置情報のみ計測可能であり、モールド厚の計測はできない。
【0006】
また、特許文献3記載のレーザ加工の加工状態判断方法では、加工対象物の高さ、位置情報の計測ができない。計測に散乱,反射光強度を用いる場合、加工用レーザ出力の時間変化が原因で安定した強度測定ができない。特に出力を弱める場合、このばらつきは大きくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トランジスタ、ダイオード、抵抗、キャパシタなどの数多くの超小型素子を一つの基板上に一体的に作り込み、相互に電気的に接続または絶縁して作成したIC(Integrated Circuit)の故障解析のためにプラスチックモールドを除去し、開封する必要がある。
開封には薬液、ドライエッチング等が用いられているが、薬液では廃液処理や装置腐食の問題があり、また、ドライエッチングでは加工速度が遅いという問題がある。
もし、レーザ加工によりプラスチックモールドを除去可能であれば、薬液を用いず、高速に開封処理可能である。しかし、レーザ加工は熱加工であるために、モールド除去と同時にICを傷つけてしまう恐れがある。また、ICサンプルが傾いて設置されている場合、あるいは、チップが傾いてモールド内に存在している場合には、ワーク位置、あるいは、チップ位置の計測は必須である。
【0008】
そこで、本発明は、モールドの残留厚さをモニタしながらレーザ加工を行うことにより、ICにダメージを与えない最小厚さまでモールドをレーザ加工できるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のレーザ加工装置は、レーザ光の反射率の異なる複数の材料からなる複合材料を加工対象物としてレーザ加工する装置において、加工対象物の加工を行うための加工用レーザ光と加工対象物へ照射されるとともに加工用レーザ光よりも出力の小さな計測用レーザ光とを出射するレーザ光出射手段と、加工対象物で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定するための反射光量測定手段と、該反射光量に基づいて制御する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明のレーザ加工装置では、トランジスタ、ダイオード、抵抗、キャパシタなどのICチップとこれを覆うところのプラスチックモールドとのレーザ光の反射率が異なり、プラスチックモールド厚が小さくなるとICチップが現れ、プラスチックモールド表面に照射したレーザの反射率が変化するため、加工対象物で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定していれば、モールドの厚さを測定することができる。
したがって、ICチップを損傷させることなく、プラスチックモールドを高速に開封処理可能である。また、ICサンプルが傾いて設置されている場合、あるいは、チップが傾いてモールド内に存在している場合でも、ICチップを損傷させることがない。
さらに、前記モールドの最小厚さで薬液、ドライエッチングを用いる必要がある場合においても、従来工法に比べ飛躍的な薬液使用料の減少、加工時間の短縮が可能である。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明のレーザ加工装置は、加工用レーザ光と計測用レーザ光とを出射するレーザ光出射手段を共通のものとし、レーザ光出射手段から出射された計測用レーザ光の出射光量を測定するための出射光量測定手段を備え、出射光量測定手段で測定される出射光量に基づいて、反射光量測定手段で測定される反射光量を補正する光量補正手段を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明のレーザ加工装置では、加工用レーザ光と計測用レーザ光とが共通のレーザ光出射手段から出射されているため、加工用レーザ光の焦点と計測用レーザ光の焦点とを一致させることが可能になる。また、本発明のレーザ加工装置は、計測用レーザ光の出射光量を測定するための出射光量測定手段を備えているため、計測用レーザ光の出力が変動し、出射光量が変動する場合であっても、変動後の出射光量を測定できる。したがって、共通のレーザ光出射手段から出力の小さな計測用レーザ光が出射されるために、計測用レーザ光の出射光量が変動する場合であっても、出射光量の変動を考慮して反射光量を補正できる。その結果、加工用レーザ光の焦点と一致させることが可能な計測用レーザ光の焦点の光軸方向の位置を高精度で検出でき、検出された計測用レーザ光の焦点に基づいて、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能になる。
【0013】
本発明において、レーザ加工装置は、反射光量測定手段で測定される反射光量の変化に基づいて、加工対象物の加工状態を検知する加工状態検知手段を備えることが好ましい。このように構成すると、加工対象物の加工状態を検知する加工状態検知手段で検知された加工状態に基づいて、加工用レーザ光の加工対象物への照射を的確に制御することができる。
【0014】
本発明において、レーザ加工装置は、反射光量測定手段は、加工対象物で反射された計測用レーザ光の反射光の一部が通過する孔部が形成される遮蔽部材と、孔部を通過する反射光の光量を測定する受光素子とを備えることが好ましい。
このように構成すると、孔部を微小孔にするとともに、反射光が結像する位置(合焦位置)に孔部が位置するように遮蔽部材を配置することで、出力が安定しにくい焦点外の余分な反射光を除去することが可能になる。その結果、受光素子によって、反射光量をより精度良く測定できる。
【0015】
本発明において、レーザ加工装置は、反射光量測定手段は、加工用レーザ光が照射される加工対象物を撮影可能な撮像素子であることが好ましい。このように構成すると、加工対象物に照射される加工用レーザ光の光軸に直交する方向での加工対象物の位置検出が可能になる。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明のレーザ加工装置は、計測用レーザ光を加工対象物の表面領域に照射し、反射光量測定手段で測定される反射光量に基づいて加工が必要とされる位置を検出し、該検出結果に基づいて加工用レーザを照射することを特徴としている。
このように構成すると、開封処理が必要であると判断された個所にのみ、加工用レーザを照射することができ、迅速・的確にプラスチックモールドの開封処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)ICチップを損傷させることなく、プラスチックモールドを高速に開封処理可能である。また、ICサンプルが傾いて設置されている場合、あるいは、チップが傾いてモールド内に存在している場合でも、ICチップを損傷させることがない。
さらに、前記モールドの最小厚さで薬液、ドライエッチングを用いる必要がある場合においても、従来工法に比べ飛躍的な薬液使用料の減少、加工時間の短縮が可能である。
【0018】
(2)加工用レーザ光と計測用レーザ光とを出射するレーザ光出射手段を共通のものとし、計測用レーザ光の出射光量を測定するための出射光量測定手段を備え、出射光量測定手段で測定される出射光量に基づいて、反射光量測定手段で測定される反射光量を補正する光量補正手段を備えることにより、加工用レーザ光の焦点と計測用レーザ光の焦点とを一致させることが可能になり、また、計測用レーザ光の出射光量が変動する場合であっても、出射光量の変動を考慮して反射光量を補正できる。その結果、加工用レーザ光の焦点と一致させることが可能な計測用レーザ光の焦点の光軸方向の位置を高精度で検出でき、検出された計測用レーザ光の焦点に基づいて、加工用レーザ光の焦点と加工対象物との位置合せを高精度で行うことが可能になる。
(3)反射光量測定手段で測定される反射光量に基づいて、加工対象物の加工量(または加工状態)を検知する加工量検知手段(または加工状態検知手段)を備えることにより、加工用レーザ光の加工対象物への照射を的確に行うことができる。
(4)加工対象物で反射された計測用レーザ光の反射光の一部が通過する孔部が形成される遮蔽部材と、孔部を通過する反射光の光量を測定する受光素子とを備えることにより、出力が安定しにくい焦点外の余分な反射光を除去することが可能になる。その結果、受光素子によって、反射光量をより精度良く測定できる。
(5)反射光量測定手段を、加工用レーザ光が照射される加工対象物を撮影可能な撮像素子とすることにより、加工対象物に照射される加工用レーザ光の光軸に直交する方向での加工対象物の位置検出が可能になる。
【0019】
(6)計測用レーザ光を加工対象物の表面領域に照射し、反射光量測定手段で測定される反射光量に基づいて加工が必要とされる位置を検出し、該検出結果に基づいて加工用レーザを照射することにより、開封処理が必要であると判断された個所にのみ、加工用レーザを照射することができ、迅速・的確にプラスチックモールドの開封処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(レーザ加工装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレーザ加工装置1の概略構成を模式的に示す図である。図2は、図1に示すワーク2がX方向で計測用レーザ光の焦点Fから外れた位置にあるときの状態を示す図である。
【0022】
本形態のレーザ加工装置1は、所定の加工対象物(以下「ワーク」ということがある。)2に対して除去加工や接合加工等の微細なレーザ加工を行うレーザ微細加工装置である。特に、本形態のレーザ加工装置1は、卓上への設置が可能な軽量かつ小型の加工装置である。このレーザ加工装置1は、図1に示すように、ワーク2の加工を行うための加工用レーザ光および加工用レーザ光の焦点とワーク2との位置合せ等を行うための計測用レーザ光を出射するレーザ光出射手段としてのレーザ光源3と、レーザ光源3から出射された計測用レーザ光の出射光量を測定するための出射光量測定手段としての第1受光素子4と、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定するための反射光量測定手段としての第2受光素子5および遮蔽部材6と、計測用レーザ光の反射光を用いてワーク2を撮影可能な撮像素子7と、レーザ光源3から出射された加工用レーザ光や計測用レーザ光の光路を形成するための光学系8とを備えている。
なお、加工用レーザ光および計測用レーザ光の光源を、それぞれ別個の専用光源とし、これらの光源を同軸に配置してもよい。その場合には、計測用レーザ光の出射光量を測定するための出射光量測定手段としての第1受光素子4を省略することができる。
また、レーザ加工装置1は、加工用レーザ光および計測用レーザ光の光軸方向で、レーザ光源3に対して、ワーク2よりも離れた位置に配置され、計測用レーザ光を反射する反射板9と、ワーク2を移動可能に保持する移動機構10と、レーザ加工装置1の各種の制御を行う制御部11とを備えている。
【0023】
なお、以下では、加工用レーザ光および計測用レーザ光をまとめて表す場合には「レーザ光」と表記する。また、以下では、図1の左右方向をX方向、紙面垂直方向をY方向、上下方向(すなわち、ワーク2に照射されるレーザ光の光軸方向)をZ方向と表記する。
また、本形態では、ワーク2に照射されるレーザ光の光軸方向を加工表面に対して垂直にしているが、角度をつけ斜めに照射しても実施可能である。
【0024】
光学系8は、凹レンズ14および凸レンズ15を有するビームエキスパンダー16と、凹レンズ14と凸レンズ15との間に配置された第1ビームサンプラー17と、撮像素子7と第1ビームサンプラー17との間に配置された第2ビームサンプラー18と、ワーク2の配置位置とビームエキスパンダー16との間に配置された対物レンズ19とを備えている。
【0025】
ビームエキスパンダー16では、凹レンズ14がレーザ光源3側に配置され、凸レンズ15が対物レンズ19側に配置されている。このビームエキスパンダー16は、レーザ光源3から出射されるレーザ光の径を拡大する。第1ビームサンプラー17は、レーザ光源3から出射され、凹レンズ14を透過したレーザ光の大半を凸レンズ15に向かって透過させるとともに、その一部を第1受光素子4に向かって反射する。また、第1ビームサンプラー17は、ワーク2や反射板9で反射された計測用レーザ光の一部を撮像素子7に向かって反射する。第2ビームサンプラー18は、第1ビームサンプラー17で反射され撮像素子7へ向かう計測用レーザ光の一部を第2受光素子5に向かって反射する。対物レンズ19は、凸レンズ15を透過したレーザ光をワーク2に集光する。
【0026】
レーザ光源3は、たとえばファイバーレーザであり、上述のように、加工用レーザ光と計測用レーザ光とを出力する。計測用レーザ光の出力は、加工用レーザ光の出力よりも非常に小さくなっている。たとえば、計測用レーザ光の出力は、加工用レーザ光の出力の20分の1程度である。また、本形態のレーザ光源3は、ワーク2の適切な加工を行うため、出力の安定した加工用レーザ光を出射する。 その一方で、レーザ光源3の特性上、加工用レーザ光よりも出力の非常に小さな計測用レーザ光のレーザ光源3からの出力は安定しない。すなわち、レーザ光源3から出射される計測用レーザ光の出力は、経時的に変動する。また、本形態では、加工用レーザ光の波長と計測用レーザ光の波長とがほぼ等しくなっており、加工用レーザ光の焦点位置と計測用レーザ光の焦点位置とはほぼ一致する。
なお、加工用レーザ光および計測用レーザ光の光源を、それぞれ別個の専用光源とした場合は、計測用レーザ光の出力は安定したものとなる。
【0027】
第1受光素子4および第2受光素子5は、フォトダイオードやフォトトランジスタ等の素子で構成されている。第1受光素子4は、その受光量を電気量に変換することで、レーザ光源3から出射された計測用レーザ光の出射光量を測定する。 また、第2受光素子5は、その受光量を電気量に変換することで、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定する。
【0028】
遮蔽部材6には、第2ビームサンプラー18で反射された計測用レーザ光が通過する孔部としての微小孔(ピンホール)6aが形成されている。本形態では、ワーク2(具体的には、たとえば、図1のおけるワーク2の上面2a)が計測用レーザ光の焦点Fの位置にあるときに、ワーク2の反射光が結像する位置(合焦位置)が微小孔6aの形成位置となるように、遮蔽部材6が配置されている。すなわち、本形態の第2受光素子5は、出力が安定しにくい焦点外の余分な反射光を除去する共焦点効果を利用して、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定する。
【0029】
撮像素子7は、CCDやCMOS等のイメージセンサである。この撮像素子7は、ワーク2が計測用レーザ光の焦点Fの位置にあるときに、ワーク2の反射光が結像する位置が撮像素子7の受光面となるように配置されている。
【0030】
反射板9は、図2に示すように、ワーク2が、Z方向に直交する方向で計測用レーザ光の焦点Fから外れた位置にあるときに、計測用レーザ光を反射する。この反射板9は、後述のように、ワーク2のX、Y方向(Z方向に直交する方向)の端部を検出するために用いられる。本形態の反射板9は、セラミック部材や金属部材で形成されている。また、反射板9の反射面(図1の上面)9aは、入射された計測用レーザ光を乱反射させる乱反射面(粗面)となっている。すなわち、反射面9aには、粗面加工が施されている。なお、反射面9aは、鏡面であっても良い。
【0031】
移動機構10は、ワーク2を保持する保持部21と、保持部21を駆動する駆動部22とを備えている。駆動部22は、保持部21をX、Y、Z方向の3軸方向へ駆動する。
【0032】
制御部11には、レーザ光源3と第1受光素子4と第2受光素子5と撮像素子7と移動機構10とが接続されている。制御部11は、上述のように、レーザ加工装置1の各種の制御を行う。たとえば、制御部11は、レーザ光源3に対して、レーザ光の出射指令、または、停止指令を出力する。また、制御部11は、後述のように、第1受光素子4で測定された出射光量と第2受光素子5で測定された反射光量とに基づいて(専用の計測用レーザ光源を設けている場合は第2受光素子5で測定された反射光量に基づいて)、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を特定し、移動機構10を駆動させて焦点Fの位置までワーク2を移動する。また、制御部11は、上記反射光量の変化に基づいて加工対象物の加工状態を検知しする加工状態検知手段を備え、加工状態に応じてレーザ光の停止指令等の制御を行う。
【0033】
(計測用レーザ光の焦点のZ方向位置の検出原理)
図3は、図1に示すワーク2のZ方向の位置と、第2受光素子5で測定される反射光量との関係を示すグラフである。
【0034】
本形態では、第1受光素子4で測定された計測用レーザ光の出射光量と、第2受光素子5で測定された計測用レーザ光の反射光量とに基づいて、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出される。以下、本形態の計測用レーザ光の焦点のZ方向位置の検出原理を説明する。
【0035】
レーザ光源3から出射される計測用レーザ光の出力が一定である場合には、第2受光素子5で測定される計測用レーザ光の反射光量と、ワーク2のZ方向位置との関係は、図3の実線で示すグラフGのように略正規分布状になる。すなわち、Z方向で、ワーク2が計測用レーザ光の焦点Fの位置にあるときには、第2受光素子5で測定される反射光量は極大値Lとなり、ワーク2が焦点Fから対物レンズ19側または反射板9側に向かって離れるにしたがって、第2受光素子5で測定される反射光量は小さくなる。
【0036】
したがって、計測用レーザ光の出力が一定である場合には、移動機構10でZ方向にワーク2を移動させながら、第2受光素子5で計測用レーザ光の反射光量を測定して、極大点Mを特定し、極大点Mに対応するワーク2のZ方向位置を測定することで、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出される。
【0037】
しかしながら、上述のように、本形態のレーザ光源3から出射される計測用レーザ光の出力は安定せず、経時的に変動する。そのため、第2受光素子5で測定される反射光量とワーク2のZ方向位置との関係は略正規分布状にはならず、たとえば、図3の二点鎖線で示すグラフG10のように変動する。したがって、第2受光素子5で測定される反射光量をそのまま用いて、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を検出すると、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置の検出精度が低下する。
【0038】
そこで、本形態では、第1受光素子4で測定された計測用レーザ光の出射光量に基づいて、第2受光素子5で測定された反射光量を補正した補正光量が算出される。すなわち、第1受光素子4によって、計測用レーザ光の現状の出力を把握し、第2受光素子5で測定された反射光量から出力の変動分をキャンセルした補正光量が算出される。そして、この補正光量に基づいて計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出される。
【0039】
具体的には、第1受光素子4で測定される出射光量と計測用レーザ光の出力との関係(第1受光素子4の特性)、および、第2受光素子5で測定される反射光量と計測用レーザ光の出力との関係(第2受光素子5の特性)を予め求め、これらの関係から計測用レーザ光の出力の変動分をキャンセルした補正光量が算出される。たとえば、第1受光素子4の特性と第2受光素子5の特性とが同じであれば、補正光量は下記のように算出される。
(補正光量)=(第2受光素子5での反射光量)/(第1受光素子4での出射光量)
そして、ワーク2のZ方向位置との関係で、この補正光量が極大となる点を特定し、この極大点に対応するワーク2のZ方向位置を測定することで、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出される。
【0040】
本形態では、補正光量の算出は制御部11で行われる。すなわち、制御部11は、第1受光素子4で測定される出射光量に基づいて、第2受光素子5で測定される反射光量を補正して、補正光量を算出する光量補正手段となっている。また、計測用レーザ光の焦点Fの位置の検出も制御部11で行われている。
なお、加工用レーザ光および計測用レーザ光の光源を、それぞれ別個の専用光源とした場合は、計測用レーザ光の出力は安定したものとなるので、計測用レーザ光の出射光量に基づいて、第2受光素子5で測定された反射光量を補正する必要はない。
【0041】
(ワークのX、Y方向端部の検出原理)
図4は、図1に示す反射板9で計測用レーザ光が反射されたときに撮像素子7で撮影される映像の一例を示す図である。
【0042】
本形態では、反射板9で反射された計測用レーザ光を用いて、ワーク2のX、Y方向の端部が検出される。以下、直方体状のワーク2のX方向端部2b(図2参照)が検出される場合を例に、本形態のワーク2のX、Y方向端部の検出原理を説明する。
【0043】
ワーク2のX方向端部2bの検出前に、まず、上述の方法で計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置が検出され、ワーク2と焦点Fとの位置合せが行われる。すなわち、図1に示すように、Z方向で、ワーク2の上面2aと焦点Fとの位置合せが行われる。この状態で、撮像素子7によって撮影された映像上に、焦点Fに対応する焦点対応点F1が設定される(図4参照)。その後、図2に示すように、移動機構10によってワーク2がX方向へ移動され、X方向で焦点Fから外れた位置に配置される。
【0044】
ワーク2がX方向で焦点Fから外れると、撮像素子7によってたとえば、図4に示す映像が撮影される。すなわち、反射板9で乱反射された計測用レーザ光の一部がワーク2によって遮られるため、撮像素子7によって撮影された映像上の、ワーク2に対応するワーク対応エリア21が暗くなり、その他のエリアは明るくなる。また、Z方向で、ワーク2の上面2aと焦点Fとの位置合せが行われているため、ワーク2のX方向端部2bに対応する端部対応線211は、撮像素子7によって撮影された映像上で明確に特定される。すなわち、ワーク2のX方向端部2bが検出される。
【0045】
端部対応線211が明確に特定されると、端部対応線211と焦点対応点F1とのX方向の距離X1が算出される。すなわち、X方向端部2bと焦点Fとの距離が算出される。また、X方向端部2bとワーク2の加工部位と距離は予め、設計上でわかっているため、焦点Fとワーク2の加工部位までのX方向の距離が算出される。同様に、ワーク2のY方向の端部も検出され、焦点Fとワーク2の加工部位までのY方向の距離が算出される。また、焦点Fとワーク2の加工部位までの距離の算出は、制御部11で行われている。なお、反射板9の反射面9aが鏡面である場合には、端部対応線211が撮像素子7によって撮影された映像上に現れるように、反射面9aの傾きを調整する必要がある。
【0046】
(ワークの高さ計測)
図5は、図1に示すレーザ加工装置1でのワーク2の高さ計測の手順を示すフローチャートである。以上のように構成されたレーザ加工装置1では、以下のように、ワーク2の高さ計測を行う。
【0047】
まず、移動機構10によって、ワーク2をX、Y方向へ移動させて、レーザ光源3から出射されるレーザ光が照射される位置にワーク2を配置する(ステップS1)。その後、レーザ光源3から計測用レーザ光を出射し(ステップS2)、第1受光素子4で出射光量を測定するとともに、第2受光素子5で反射光量を測定する(ステップS3)。
【0048】
その後、第1受光素子4で測定された出射光量と第2受光素子5で測定された反射光量とから、補正光量を算出して記憶する(ステップS4)。その後、ワーク2をZ方向の所定範囲に配置して、各配置位置で出射光量および反射光量を測定したか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、ステップS5では、Z方向で計測用レーザ光の焦点Fの位置を含む所定範囲にワーク2を配置して、各配置位置で出射光量および反射光量を測定したか否かを判断する。所定範囲で測定が行われていない場合には、ステップS3へ戻る。
【0049】
一方、所定範囲で出射光量および反射光量を測定している場合には、ステップS4で算出、記憶された補正光量から計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を検出する(ステップS7)。具体的には、ワーク2の各位置に対応する補正光量から近似曲線を作成し、ワーク2のZ方向位置との関係で補正光量が極大となる点を特定して、焦点FのZ方向位置を検出する。このときの計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置がそのY、Y方向におけるワーク2の高さを表している。
【0050】
その後、移動機構10でワーク2をX、Y方向へ移動させ、各X、Y方向におけるワーク2の高さを計測する(ステップ8)。X、Y方向のある領域についてワーク2の高さを検出したら、加工が必要と判断された位置にフラグを立て、加工位置を特定する(ステップS9)。ワーク2の加工位置の特定後には、特定された加工位置にレーザ光源3から加工用レーザ光を出射してワーク2のレーザ加工を行う。また、加工用レーザ光に計測用レーザ光を混入し、規定の反射・散乱光量まで操作を繰り返してもよい。
【0051】
なお、本形態では、ステップS2は、レーザ光源3から計測用レーザ光を出射する計測用レーザ光出射ステップであり、ステップS3は、出射された計測用レーザ光の特性の1つである出射光量を測定する出射光特性測定ステップおよびワーク2で反射された計測用レーザ光の特性の1つである反射光量を測定する反射光特性測定ステップであり、ステップS4は、ステップS3での測定結果に基づいて第2受光素子5で測定された反射光量を補正する反射光特性補正ステップであり、ステップS7は、ステップS4で補正された補正光量に基づいて、計測用レーザ光の焦点Fの位置を検出する焦点検出ステップである。
【0052】
上記したワーク高さの計測には、ワーク2のXYZ位置計測工程が含まれているが、加工対象であるワークの加工に厳密な精度が要求されない場合、例えば、事前にワークの形状・構造が既知で、あらかじめ設定した加工位置および加工量を加工すればよいような場合には、XYZ位置計測工程(上記のS3〜S7)を省略して以下の要領でワークの焦点位置を決定することができる。
(1)図5におけるS2の後、ワークの形状・寸法から算出して加工が可能な位置にワークを設置する。
(2)加工の進行に伴う加工深さ変化に起因する照射レーザスポット変化が残留加工厚の測定に致命的な影響を及ぼさない光学系(焦点距離の長い集光レンズ等を配置)を用いる。
(3)ワークの形状・寸法から事前にワークの加工位置および加工量を決定し、加工の進行に伴い残留加工厚の測定に致命的な影響を与えない範囲で適宜Z方向にワークを移動させる。
【0053】
(加工対象であるワークの概要)
図6は、加工対象物であるワークとして、例えば、ICを示したもので、(A)は、レーザ加工前のワークの断面の状態を、(B)は、レーザ加工途中のワークの断面状態を、(C)は、レーザ加工によりプラスチックモールドが開封されたワークの断面状態を示している。
図6(A)に示すように、IC30は、概略、トランジスタ、ダイオード、抵抗、キャパシタなどのICチップ31、ICチップを相互に電気的に接続する配線部材32、および、ICチップ31を覆うプラスチックモールド33から構成されている。
YAGレーザ(波長1064nm)、CO2レーザ(波長10.64μm)はICのモールド材料、基板用樹脂材料に吸収されるため型番マーキング等に多く利用されている。
一方、配線材料である銅、アルミの反射率を図7に示すと、YAGレーザでは銅、アルミ共に80%以上、CO2レーザでは95%以上と非常に高い反射率である。また、シリコン等からなるICチップ31もモールド材料にくらべてこれらのレーザ光をよく反射する。
なお、本発明の加工対象であるワークとしては、図6に示した多層複合材料に限らず、例えば、セラミックなどバルク材を混入した複合材料にも適用可能である。
【0054】
(レーザ加工)
今、図6(A)に示すIC30について、故障解析のため、ICチップ31の上方から開封するにあたり、IC30の上面34からレーザ加工を施すと、図6(B)および図6(C)に示すように、プラスチックモールド33が漸次除去されてICチップ31が露出、あるいは、それに近い状態までプラスチックモールド33の被覆が薄くなる。
図8に示すように、プラスチックモールド33の厚が大きい場合、照射された計測用レーザ光は、プラスチックモールド33に吸収され、比較的小さい光量の反射・散乱光が生ずる。加工が進行するとプラスチックモールド33からの反射・散乱光に加えプラスチックモールド33を透過したレーザがチップ31表面で反射・散乱される。これにより第2受光素子で受光する計測光量は増加する。プラスチックモールド33が無くなると反射率が比較的高いチップ31表面での反射・散乱光のみが計測されるため、計測光量は最大値を取る。この計測光量の変化を制御部11の加工状態検知手段でモニタすることで加工状態を把握することができる。
プラスチックモールド33の除去を、図6(C)のように完全に行う場合は図8のCで示す反射光量になるまで、また、図6(B)のように一部のプラスチックモールドを残す場合は図8(B)で示す反射光量になるまで、レーザ加工を行う。
今、XY方向の所定位置に置いてレーザ加工を行うと、プラスチックモールド33は順次除去されZ方向の高さが小さくなるが、新しい加工面にレーザの焦点が位置するように制御部11からの指令に基づき移動機構10がIC30を順次Z方向に移動する。 プラスチックモールド33のZ方向の除去割合が所定値に達すると、制御部11の指令に基づきレーザ照射は停止される。プラスチックモールド33の除去面積がレーザ光の照射面積に比べて広くXY方向の他の位置のレーザ加工が必要な場合は、制御部11からの指令に基づき移動機構10がIC30を所定のXY方向およびZ方向に移動し、続いて、レーザ照射が開始され、同様に加工を行う。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ICチップを損傷させることなく、プラスチックモールドを高速に開封処理可能である。また、ICサンプルが傾いて設置されている場合、あるいは、チップが傾いてモールド内に存在している場合でも、ICチップを損傷させることがない。
さらに、前記モールドの最小厚さで薬液、ドライエッチングを用いる必要がある場合においても、従来工法に比べ飛躍的な薬液使用料の減少、加工時間の短縮が可能である。
【0056】
また、本形態では、ワーク2に対して除去加工が行われる場合に、レーザ加工の途中で、除去加工部位の加工量を測定できる。すなわち、まず、加工前の除去加工部位が焦点Fと一致するときのワーク2のZ方向位置を特定し、記憶する。また、除去加工途中のワーク2に対して、ステップS2からステップS7までの処理を行い、加工中の除去加工部位が焦点Fと一致するときのワーク2のZ方向位置を特定する。そして、それぞれ特定されたZ方向位置の差から、除去加工部位の加工量を算出する。このように、本形態では、加工用レーザ光が出射されるレーザ光源3から計測用レーザ光が出射されるため、加工途中のワーク2をX、Y方向へずらすことなく、除去加工部位の加工量を測定できる。
【0057】
さらに、本形態では、波長がほぼ等しい加工用レーザ光と計測用レーザ光とが共通のレーザ光源3から出射されている。そのため、加工用レーザ光の焦点と計測用レーザ光の焦点とがほぼ一致する。また、本形態では、第1受光素子4によって、レーザ光源3から出射された計測用レーザ光の出射光量を測定できる。そのため、計測用レーザ光の出力が変動し、出射光量が変動する場合であっても、変動後の出射光量を測定できる。したがって、共通のレーザ光源3から出力の安定しない計測用レーザ光が出射され、計測用レーザ光の出射光量が変動する場合であっても、出射光量の変動を考慮して反射光量を補正した補正光量を算出できる。その結果、補正光量に基づいて、計測用レーザ光の焦点のZ方向位置を高精度で検出できる。したがって、検出された計測用レーザ光の焦点に基づいて、加工用レーザ光の焦点とワーク2との位置合せを高精度で行うことができる。
なお、加工用レーザ光および計測用レーザ光の光源を、それぞれ別個の専用光源とした場合は、計測用レーザ光の出力は安定したものとなるので、計測用レーザ光の出射光量に基づいて、第2受光素子5で測定された反射光量を補正する必要はない。
【0058】
本形態では、第2受光素子5は、共焦点効果を利用して、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量を測定している。そのため、出力が安定しにくい焦点外の余分な反射光を除去することができ、第2受光素子5によって、反射光量を精度良く測定できる。
【0059】
(他の実施の形態)
上述した形態では、ワーク2で反射された計測用レーザ光の反射光量は、第2受光素子5で測定されているが、計測用レーザ光の反射光量は、撮像素子7で測定されても良い。
また、計測用レーザ光の反射光量は、第2受光素子5と撮像素子7との両者で測定されても良い。ここで、撮像素子7に入射する反射光は、図9の実線で示すように、反射光の中心部が一番明るく、中心部から離れるにしたがって次第に暗くなる。そして、撮像素子7で撮影される反射光の映像において、所定の閾値t以上の明るさを有する領域が反射光のスポットとして特定され、特定されたスポットの明るさの総和が撮像素子7で測定される計測用レーザ光の反射光量となる。 また、第2受光素子5で反射光量が測定される場合と同様に、移動機構10でZ方向にワーク2を移動させながら、撮像素子7で計測用レーザ光の反射光量を測定して、ワーク2のZ方向位置との関係で、反射光量の極大点を特定することで、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置の検出が可能である。
【0060】
この場合にも、計測用レーザ光の出力が経時的に変動すると、ワーク2のZ方向の位置が一定であっても、撮像素子7で測定される反射光量は変動する。たとえば、図9の二点鎖線で示すように、計測用レーザ光の出力が低下すると、撮像素子7に入射する反射光の明るさも低下して、スポットが小さくなり、その結果、測定される反射光量も低下する。そのため、上述した形態と同様に、第1受光素子4での測定結果から、出射光量の変動を考慮して撮像素子7で測定される反射光量を補正することで、計測用レーザ光の焦点FのZ方向位置を高精度で検出できる。なお、撮像素子7のみで反射光量を測定する場合には、図10に示すように、第2受光素子5、遮蔽部材6および第2ビームサンプラー18が不要となるため、レーザ加工装置1の構成を簡素化できる。また、第2受光素子5のみで反射光量を測定する場合には、撮像素子7を省略することも可能である。
【0061】
上述した形態では、レーザ加工装置1は反射板9を備えているが、図11に示すように、反射板9を設けずに、移動機構50にワーク2が載置されても良い。この場合には、ワーク2のX、Y方向端部の検出は、以下のように行えば良い。すなわち、まず、図11に示すように、X、Y、Z方向で、ワーク2が計測用レーザ光の焦点Fの位置に配置され、レーザ光源3から所定の基準出力で計測用レーザ光が出射されたときの基準反射光量を第2受光素子5または撮像素子7で測定する。そして、ワーク2をX方向またはY方向へ移動させながら、第2受光素子5または撮像素子7で測定される反射光量が基準反射光量に対してある割合(たとえば、基準反射光量の50%)になったときにワーク2のX方向またはY方向の端部が検出されたと判断する。この場合にも、レーザ光源3から出射される計測用レーザ光の出力が経時的に変動すると、ワーク2の位置が一定であっても、第2受光素子5または撮像素子7で測定される反射光量は変動するが、第1受光素子4での測定結果から、出射光量の変動を考慮して反射光量を補正することで、ワーク2のX、Y方向の端部を精度良く検出することが可能になる。その結果、X、Y方向でワーク2の加工部位と、加工用レーザ光の焦点位置とを精度良く位置合せすることが可能になる。
【0062】
上述した形態では、移動機構10でZ方向にワーク2を移動させながら、補正光量を算出して、焦点Fの位置を検出するとともにワーク2の位置合せを行っている。この他にもたとえば、レーザ光源3から所定の基準出力で計測用レーザ光を出射した状態でワーク2をZ方向に移動させ、ワーク2のZ方向位置と反射光量との関係を予め把握するとともに、この把握された関係に基づいて、第2受光素子5または撮像素子7で測定される反射光量から、ワーク2と焦点Fとの位置合せを行っても良い。この場合には、予め把握された関係に基づいて、反射光量からワーク2のZ方向位置を検出することも可能になる。
【0063】
上述した形態では、第1受光素子4で計測用レーザ光の出射光量が測定され、第2受光素子5で計測用レーザ光の反射光量が測定されている。また、測定された出射光量に基づいて、計測用レーザ光の出力の変動分をキャンセルした補正光量が算出されている。この他にもたとえば、出射光量に代えて、計測用レーザ光の出力、強度あるいは所定の光学系を介して形成されるスポットの大きさ等の計測用レーザ光の出力の変動を検出できる他の特性を測定し、これらの特性に基づいて、計測用レーザ光の出力の変動分をキャンセルした補正光量が算出されても良い。また、撮像素子7で検出されるスポットの大きさから計測用レーザ光の焦点Fの位置を検出するとともに、レーザ光源3から出射される計測用レーザ光の特性に基づいて、撮像素子7で検出されるスポットの大きさを補正しても良い。
【0064】
なお、加工用レーザ光の出力が非常に大きく、第1ビームサンプラー17で反射された加工用レーザ光によって、第1受光素子4が破壊されるおそれがある場合、あるいは、ワーク2等で反射された加工用レーザ光によって、第2受光素子5や撮像素子7が破壊されるおそれがある場合には、第1ビームサンプラー17と第1受光素子4との間や、第1ビームサンプラー17と第2ビームサンプラー18との間に、シャッタ、減光用フィルムあるいは、減光を目的としたビームサンプラーを配置することが好ましい。
【0065】
図12は、レーザ光のX、Y方向のスキャニングにガルバノスキャナ40を、また、Z方向に移動可能な移動機構50を複合して用いたレーザ加工装置を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態のレーザ加工装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示すワークがX方向で計測用レーザ光の焦点から外れた位置にあるときの状態を示す図である。
【図3】図1に示すワークのZ方向の位置と、第2受光素子で測定される反射光量との関係を示すグラフである。
【図4】図1に示す反射板で計測用レーザ光が反射されたときに撮像素子で撮影される映像の一例を示す図である。
【図5】図1に示すレーザ加工装置でのワークの高さ計測の手順を示すフローチャート。
【図6】加工対象物であるワークとして、ICを示したもので、(A)は、レーザ加工前のワークの断面の状態を、(B)は、レーザ加工途中のワークの断面状態を、(C)は、レーザ加工によりプラスチックモールドが開封されたワークの断面状態を示している。
【図7】YAGレーザ、および、CO2レーザに対する銅、アルミの反射率を示す図である。
【図8】図6の(A)、(B)、(C)のそれぞれの状態における計測用レーザ光の反射光量を示すものである。
【図9】図1に示すワークで反射された反射光の明るさと反射光の中心部からの距離との関係を示す図である。
【図10】本発明の他の形態にかかるレーザ加工装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図11】本発明の他の形態にかかる移動機構の概略構成を模式的に示す図である。
【図12】本発明のさらに他の形態にかかるレーザ加工装置の概略構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 レーザ加工装置
2 ワーク(加工対象物)
3 レーザ光源(レーザ光出射手段)
4 第1受光素子(出射光特性測定手段、出射光量測定手段)
5 第2受光素子(反射光特性測定手段の一部、反射光量測定手段の一部、受光素子)
6 遮蔽部材(反射光特性測定手段の一部、反射光量測定手段の一部)
6a 微小孔(孔部)
7 撮像素子(反射光特性測定手段、反射光量測定手段)
8 光学系
9 反射板
10 移動機構
11 制御部(制御手段))
14 凹レンズ
15 凸レンズ
16 ビームエキスパンダー
17 第1ビームサンプラー
18 第2ビームサンプラー
19 対物レンズ
21 保持部
22 駆動部
30 IC
31 ICチップ
32 配線部材
33 プラスチックモールド
34 ICの上面
40 ガルバノスキャナ
50 移動機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の反射率の異なる複数の材料からなる複合材料を加工対象物としてレーザ加工する装置において、上記加工対象物の加工を行うための加工用レーザ光と上記加工対象物へ照射されるとともに上記加工用レーザ光よりも出力の小さな計測用レーザ光とを出射するレーザ光出射手段と、上記加工対象物で反射された上記計測用レーザ光の反射光量を測定するための反射光量測定手段と、該反射光量に基づいて制御する制御手段とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記加工用レーザ光と前記計測用レーザ光とを出射するレーザ光出射手段を共通のものとし、上記レーザ光出射手段から出射された上記計測用レーザ光の出射光量を測定するための出射光量測定手段を備え、前記出射光量測定手段で測定される前記出射光量に基づいて、前記反射光量測定手段で測定される前記反射光量を補正する光量補正手段を備えることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記反射光量測定手段で測定される前記反射光量の変化に基づいて、前記加工対象物の加工状態を検知する加工状態検知手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記反射光量測定手段は、前記加工対象物で反射された前記計測用レーザ光の反射光の一部が通過する孔部が形成される遮蔽部材と、上記孔部を通過する上記反射光の光量を測定する受光素子とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記反射光量測定手段は、前記加工用レーザ光が照射される前記加工対象物を撮影可能な撮像素子であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記計測用レーザ光を加工対象物の表面領域に照射し、前記反射光量測定手段で測定される反射光量に基づいて加工が必要とされる位置を検出し、該検出結果に基づいて加工用レーザを照射することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−290117(P2008−290117A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138312(P2007−138312)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】