説明

レーザ印字方法及び包装体並びに容器

【課題】 被印字体にレーザビームを照射して、当該被印字体に鮮明で、簡単に判読できる印字を行うことが可能なレーザ印字方法、鮮明で、簡単に判読できるレーザ印字が施されてなる包装体、並びにこの包装体から形成されてなる容器を提供する。
【解決手段】 第1のフィルム11と、第1のフィルム11上の所定位置に形成された第1のインク層12と、第1のインク層12上に形成された第2のインク層14と、を備えてなる被印字体10を用い、この被印字体10の第2のインク層14の所定部分にレーザビームを照射して第2のインク層14の所定部分を除去し、被印字体10の表面に第1のインク層12を出現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ印字方法に係り、特に、被印字体にレーザビームを照射して、当該被印字体に鮮明で判読が簡単な印字を行うレーザ印字方法、及び鮮明で判読が簡単なレーザ印字が施されてなる包装体、並びに被収容物を収容する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、食品、飲料、医薬品等の被収容物を収容するための容器や包装袋等として、柔軟性を備えたフィルムから構成されたものがある。このような柔軟性を備えたフィルムから構成された容器や包装袋には、通常、被収容物の名称やイメージ(画像やロゴ等)、あるいは成分や製造者の名称、製造年月日等、様々な情報を消費者に知らせる目的で印刷が施されている。
【0003】
この印刷は、通常、印刷インクを使用して行われているが、食品、飲料、医薬品等に前記印刷インクが混入することを防止する目的で、例えば、第1のフィルムに印刷を行い、この第1のフィルムの印刷が施された面に、第2のフィルムをラミネートする方法が採用されている。
【0004】
このような食品包装袋として、例えば、シーラント層、ポリエステル樹脂層、蒸着層、印刷層、二軸延伸ポリエステルフィルム層が、順に積層(ラミネート)されたものが紹介されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、様々な種類の被印字体にレーザビームを照射して、当該被印字体に印字するレーザ印字方法も紹介されている。例えば、日用品等に大量に汎用されるポリオレフィン系樹脂の成型物(被印字体)に、レーザビームを用いて非常に明瞭な印字を行う方法では、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、群青0.36重量部及びカーボンブラック0.07重量部を配合してなる樹脂組成物から成形されるキャップ表面の平滑面部及び粗面(梨地面)部に炭酸ガスレーザビームを照射して印字部を形成している。(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
そしてまた、対象物をマーキングするレーザ印字方法(マーキング方法)として、官能基と金属化合物または酸を含有し、レーザの放射により脱離反応を起こすことで対比可能な色の反応物を生成する物質を用い、レーザビームを前記対象物のマーキング領域に照射することを特徴とする方法も開示されている。この方法は、例えば、炭水化物及び金属塩を用いることで、錠剤やその他の食用物質のコーティング材に効果的に印字することができる。(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−1888号公報
【特許文献2】特開平7−290827号公報
【特許文献3】特表2004−524188公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した印刷層の両面を他のフィルム(層)でラミネートする方法は、手間がかかると共に、印刷内容を変更することが困難である。したがって、コストがかかると共に、汎用性に欠ける。
【0008】
また、レーザビームを用いて被印字体に印字するレーザ印字方法では、被印字体の所望位置にレーザビームを照射すると、被印字体の材質等により、当該被印字体の表面が変色したり、あるいは当該被印字体の表面に凹凸が形成されることによって印字が行われる。しかしながら、前記被印字体が、例えば、プラスチックや硝子等によって形成されている場合、その材質の組成によりレーザエネルギーに対して印字の大きさや、レーザエネルギーの大小により印字の状態が変化し、常に鮮明な印字を行うことが困難である。また、レーザビーム自身によって、印字に色を付けることができないため、被印字体によっては、印字の判読が困難となる場合もある。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みなされたものであり、被印字体にレーザビームを照射して、当該被印字体に鮮明で、簡単に判読できる印字を行うことが可能なレーザ印字方法、鮮明で、簡単に判読できるレーザ印字が施されてなる包装体、並びにこの包装体から形成されてなる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明は、被印字体にレーザビームを照射して、当該被印字体に印字を行うレーザ印字方法であって、第1の層と、当該第1の層上の所定位置に形成された第1のインク層と、当該第1のインク層上に形成された第2のインク層と、を備えてなる被印字体を用い、前記被印字体の前記第2のインク層の所定部分にレーザビームを照射して当該第2のインク層の当該所定部分を除去し、当該被印字体の表面に前記第1のインク層を出現させるレーザ印字方法を提供するものである。
【0011】
このレーザ印字方法によれば、被印字体における第2のインク層の印字したい部分にレーザビームを照射することで、当該第2のインク層の印字したい部分が除去されるため、この除去された部分から第1のインク層を出現させることができる。すなわち、この出現させられた第1のインク層が、前記被印字体の表面に印字として現れる。したがって、被印字体に鮮明で、簡単に判読できる印字を行うことができる。
【0012】
ここで、被印字体にレーザビームを照射して行うレーザ印字は、通常、上位のホストコンピュータから受け取った情報(印字内容や印字箇所等)により、被印字体に所望の印字を行うものであり、被印字体毎に印字(印刷)内容を変更することが容易である。したがって、被印字体毎に、それぞれ異なった内容の印字を簡単且つ低コストで行うことができる。
【0013】
また、本発明にかかるレーザ印字方法では、前記第1のインク層が形成された第1の層上に、当該第1のインク層を挟んで第2の層が配設されてなり、前記第2のインク層は、当該第2の層上に形成されてなる被印字体を用いることもできる。
【0014】
このような構成の被印字体を用いることで、例えば、第2の層の第2のインク層に対応する領域が透過性を備えている場合、前記レーザビームによって、第2のインク層の印字したい部分を除去するか、あるいは第2の層の途中まで除去する、または第2の層まで除去することで、被印字体の表面に、第1のインク層が印字として現れることになる。したがって、レーザビームの調整に幅を持たせることができ、レーザビームの照射に起因して生じるピンホール等が、被印字体に形成されることをより一層確実に防止することができる。
【0015】
また、第1のインク層が、第1の層と第2の層に挟まれて保護されることになるため、第1のインク層が傷ついたり、消失することを防止することができる。
【0016】
さらにまた、本発明にかかるレーザ印字方法では、前記第1の層及び第2の層の少なくとも一部が透過性を有する被印字体を用いることもできる。このような被印字体を用いることで、この被印字体を用いて、例えば、容器(袋等も含む)を製造し、この容器内に被収容物を収容した場合、前記透過性部分を介して前記被収容物の様子を外部から確認することができる。
【0017】
そしてまた、本発明にかかるレーザ印字方法では、前記第1の層及び第2の層をフィルムから構成することもできる。
【0018】
また、本発明にかかるレーザ印字方法では、前記被印字体は、前記第2のインク層が形成された第2の層上に、当該第2のインク層を挟んで第3の層が配設されてなり、前記第3の層及び第2のインク層の所定部分にレーザビームを照射して当該第3の層及び第2のインク層の当該所定部分を除去し、当該被印字体の表面に前記第1のインク層を出現させることもできる。
【0019】
前記第3の層は、その少なくとも一部が透過性を有していてもよい。また、前記第3の層は、フィルムから構成されていてもよい。
【0020】
また、本発明は、被印字体にレーザビームを照射して、当該被印字体に印字を行うレーザ印字方法であって、第1の層と、当該第1の層上の所定位置に形成された第1のインク層と、当該第1のインク層上に形成された透過性を有する発色用の層と、を備えてなる被印字体を用い、前記被印字体の発色用の層の所定部分にレーザビームを照射して当該発色用の層を発色させ、当該発色により前記第1のインク層を隠蔽するレーザ印字方法を提供するものである。
【0021】
このレーザ印字方法によれば、レーザビームが照射されていない発色用の層は、透過性を有しているため、前記被印字体の表面に第1のインク層を出現させるが、レーザビームが照射された部分は、発色して第1のインク層を隠蔽することになる。したがって、第1のインク層が、前記被印字体の表面に印字として現れるため、被印字体に鮮明で、簡単に判読できる印字を行うことができる。
【0022】
前記発色用の層は、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合系の樹脂(EVOH系樹脂)から形成することができる。
【0023】
また、前記被印字体は、前記第1のインク層が形成された第1の層上に、当該第1のインク層を挟んで第2の層が配設されてなり、前記発色用の層は、当該第2の層上に形成されていてもよい。
【0024】
また、本発明は、レーザ印字が施されてなる包装体であって、第1の層と、当該第1の層上の所定位置に形成された第1のインク層と、当該第1のインク層上に形成された第2のインク層と、を備えてなる被印字体を有し、前記被印字体の第2のインク層の所定部分にレーザビームを照射して、当該第2のインク層の当該所定部分を除去し、前記被印字体の表面に前記第1のインク層を出現させてなる包装体を提供するものである。
【0025】
この構成を備えた包装体は、レーザビームの照射によって出現させられた第1のインク層が、前記被印字体の表面に印字として現れるため、当該被印字体に鮮明で、簡単に判読できる印字を有することができる。
【0026】
また、本発明にかかる包装体の被印字体は、前記第1のインク層が形成された第1の層上に、当該第1のインク層を挟んで第2の層が配設されてなり、前記第2のインク層は、当該第2の層上に形成されてなる構成を備えることもできる。
【0027】
そしてまた、本発明にかかる包装体は、前記第1の層及び第2の層の少なくとも一部が透過性を有していてもよい。このように構成することで、この包装体で被収容物を包装(収容)した場合、前記透過性部分を介して前記被収容物の様子を外部から確認することができる。
【0028】
さらにまた、前記第1の層及び第2の層がフィルムから構成されていてもよい。
【0029】
また、本発明にかかる包装体では、前記被印字体は、前記第2のインク層が形成された第2の層上に、当該第2のインク層を挟んで第3の層が配設されてなり、前記第3の層及び第2のインク層の所定部分にレーザビームを照射して当該第3の層及び第2のインク層の当該所定部分を除去し、当該被印字体の表面に前記第1のインク層を出現させた構成を備えていてもよい。
【0030】
そしてまた、本発明にかかる包装体では、前記第3の層は、その少なくとも一部が透過性を有していてもよい。また、前記第3の層は、フィルムから構成されていてもよい。
【0031】
また、本発明は、レーザ印字が施されてなる包装体であって、第1の層と、当該第1の層上の所定位置に形成された第1のインク層と、当該第1のインク層上に形成された透過性を有する発色用の層と、を備えてなる被印字体を有し、前記被印字体の発色用の層の所定部分にレーザビームを照射して当該発色用の層を発色させ、当該発色により前記第1のインク層を隠蔽してなる包装体を提供するものである。
【0032】
この構成を備えた包装体は、レーザビームが照射されなかった領域にある第1のインク層が、前記被印字体の表面に印字として現れているため、当該被印字体に鮮明で、簡単に判読できる印字を有することができる。
【0033】
この包装体では、前記発色用の層は、エチレン−ビニルアルコール共重合系の樹脂(EVOH系樹脂)から形成されていてもよい。
【0034】
また、この包装体では、前記被印字体は、前記第1のインク層が形成された第1の層上に、当該第1のインク層を挟んで第2の層が配設されてなり、前記発色用の層は、当該第2の層上に形成されていてもよい。
【0035】
また、本発明は、被収容物を収容する容器であって、前述した包装体の第1の層が、前記被収容物と接触するよう構成された容器を提供するものである。この容器は、第1のインク層及び第2のインク層が、前記被収容物と接触することがないため、当該被収容物がインクの影響を受けることがない。
【0036】
なお、本発明でいう「容器」とは、被収容物を収容可能なものであれば、例えば、袋、箱等、特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0037】
本発明にかかるレーザ印字方法は、レーザビームの照射によって出現させられた第1のインク層が被印字体の表面に印字として現れるため、当該被印字体に鮮明で、簡単に判読できる印字を行うことができる。また、被印字体毎に、それぞれ異なった内容の印字を簡単且つ低コストで行うことができる。
【0038】
また、本発明にかかる包装体は、レーザビームの照射によって出現させられた第1のインク層が被印字体の表面に印字として現れるため、鮮明で、簡単に判読できる印字を備えることができる。
【0039】
そしてまた、本発明にかかる容器は、レーザビームの照射によって出現させられた第1のインク層が被印字体の表面に印字として現れるため、鮮明で、簡単に判読できる印字を備えることができると共に、第1のインク層及び第2のインク層が、前記被収容物と接触することがないため、当該被収容物がインクの影響を受けることがなく、当該被収容物を良好に収容・保存することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかるレーザ印字方法、及び包装体、並びに容器について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0041】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体の断面図、図2は、図1に示す被印字体の平面図、図3は、図1に示す被印字体に、レーザ印字装置から照射されるレーザビームによって印字を行う工程を模式的に示す図、図4は、図3に示す工程により印字が施された包装体の平面図である。
【0042】
図1及び図2に示すように、実施の形態1にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体10は、透明な第1のフィルム11と、第1のフィルム11上に形成された第1のインク層12と、第1のフィルム11上に第1のインク層12を挟んで積層された透明な第2のフィルム13と、第2のフィルム13上であって、第1のインク層12と対応する位置に形成された第2のインク層14と、を備えて構成されている。
【0043】
第1のフィルム11及び第2のフィルム13は、例えば、食品、飲料、医薬品等の包装体を構成することが可能なように、ガスバリア性、耐食性、耐薬品性等を備えている。このようなフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、PETフィルム等、様々な種類のフィルムが挙げられる。また、第1のフィルム11と第2のフィルム13は、同じ種類のフィルムから構成してもよく、異なった種類のフィルムから構成してもよい。
【0044】
第1のインク層12及び第2のインク層14は、通常の印刷で使用されるインクによって形成することができる。なお、実施の形態1では、第1のインク層12として、黒色インクを使用し、第2インク層14として、白色インクを使用した。
【0045】
なお、被印字体10は、レーザ印字が施される部分(実施の形態1では、第2のインク層14が形成されている部分)以外の領域に、所望の情報(例えば、商品名、商品のイメージ画像や写真、キャッチコピー、ロゴ、説明書き等)が記載されていてもよい。この所望の情報は、例えば、第1のフィルム11上に印刷し、この印刷がなされた第1のフィルム11上に第2のフィルム13を積層する(ラミネートする)ことによって、得ることができる。
【0046】
次に、被印字体10に印字を行うには、先ず、図3(1)に示すように、市販のレーザ印字装置100を用い、被印字体10の第2のインク層14の所望箇所にレーザビーム101を照射する。なお、このレーザビーム101の照射条件は、第2のインク層14の所望箇所を完全に除去可能であると共に、第2のフィルム13の所望箇所の一部または全部を除去する、あるいは、第2のインク層14の所望箇所のみを完全に除去するように設定する。したがって、レーザビームの調整に幅を持たせることができ、レーザビームの照射に起因して生じるピンホール等が、被印字体10に形成されること、より一層確実に防止することができる。
【0047】
また、レーザビーム101の照射は、例えば、上位のホストコンピュータから受け取った情報(印字内容や印字箇所等)により、被印字体10に所望の印字を行うものである。したがって、前記情報に応じて、印字内容を即座に変更することができる。このため、被印字体10毎に印字(印刷)内容を変更することが容易であり、被印字体10毎に、それぞれ異なった内容の印字を簡単且つ低コストで行うことができる。
【0048】
以上の条件で、レーザビーム101を照射することにより、図3(2)に示すように、第2のインク層14の所望箇所が完全に除去され、被印字体10の表面に第1のインク層12が現れる。この時、第2のフィルム13は、透明であるため、レーザビーム101によって除去されなくても、第1のインク層12は、第2のフィルム13を介して目視することができる。この目視可能な第1のインク層12が、図4に示すように、所望の情報(例えば、商品のLOT.No.、製造者、製造年月日、成分表示、発売元等)を表示するための印字となる。
【0049】
このようにして、所望の情報を表示するためのレーザ印字が施されてなる包装体20(図4参照)を得る。この包装体20は、白地部分(第2のインク層14部分)に、黒字(被印字体10の表面に出現した第1のインク層12)の印字がなされているため、鮮明であり、簡単に判読することができる。
【0050】
この包装体20は、袋状や箱状等に加工され、例えば、食品、飲料、医薬品等の被収容物を収容する容器を形成することができる。この容器は、その内側、すなわち、当該容器に収容される被収容物と接触する部分が、包装体20の第1のフィルム11から形成されており、第1のインク層12及び第2のインク層14が、前記被収容物と接触することがない。したがって、被収容物がインクの影響を受けることがなく、良好な収容・保存を行うことができる。
【0051】
なお、実施の形態1では、第1のフィルム11、第1のインク層12、第2のフィルム13及び第2のインク層14からなる被印字体10に、レーザビームによって印字を行った場合について説明したが、これに限らず、被印字体10は、例えば、図5に示すように、第2のフィルム13を配設せずに、第1のフィルム11、第1のインク層12及び第2のインク層14から形成してもよい。
【0052】
また、実施の形態1では、第1の層として第1のフィルム11を、第2の層として第2のフィルム13を使用し、これらのフィルムが透明である場合について説明したが、これに限らず、第1のフィルム11及び第2のフィルム13は、その一部が透過性を備えていてもよく、透過性を備えていなくてもよい。例えば、第2のフィルム13の第1のインク層12と対応する部分が透過性を備えていない場合は、レーザビームによって印字を行う際に、第2のフィルム13の所定箇所もレーザビームによって除去し、第1のインク層12を被印字体10の表面に出現させればよい。
【0053】
そしてまた、第1の層及び第2の層は、フィルムの他、紙、金属板、樹脂板等、任意のものを適用することができる。
【0054】
なお、第1のインク層12及び第2のインク層14は、印字をより鮮明にするため、異なった彩度や明度を有するインクを使用することが好ましいが、インク層の色の選択については、任意に行うことができる。
【0055】
また、包装体20の印字がなされていない面に粘着剤や接着剤を塗布し、包装体20をシールとして使用することもできる。また、被収容物を包装するための包装紙として使用してもよい。
【0056】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2にかかるレーザ印字方法、及び包装体、並びに容器について図面を参照して説明する。
【0057】
図6は、本発明の実施の形態2にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体の断面図、図7は、図6に示す被印字体に、レーザ印字装置から照射されるレーザビームによって印字を行う工程を模式的に示す図である。
【0058】
なお、実施の形態2では、実施の形態1にかかる被印字体と同様の部材には、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
図6に示すように、実施の形態2にかかる被印字体30の、実施の形態1にかかる被印字体10と異なる点は、第2のインク層14が形成された第2のフィルム13上に、第2のインク層14を挟んで第3のフィルム21が配設されている点である。
【0060】
すなわち、実施の形態2にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体30は、透明な第1のフィルム11と、第1のフィルム11上に形成された第1のインク層12と、第1のフィルム11上に第1のインク層12を挟んで積層された透明な第2のフィルム13と、第2のフィルム13上であって、第1のインク層12と対応する位置に形成された第2のインク層14と、第2のフィルム13上に第2のインク層14を挟んで積層された透明な第3のフィルム21と、を備えて構成されている。
【0061】
第3のフィルム21は、第1のフィルム11及び第2のフィルム13と同様に、食品、飲料、医薬品等の包装体を構成することが可能なように、ガスバリア性、耐食性、耐薬品性等を備えている。このようなフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、PETフィルム等、様々な種類のフィルムが挙げられる。また、第3のフィルム21は、第1のフィルム11及び第2のフィルム13と同じ種類のフィルムから構成してもよく、異なった種類のフィルムから構成してもよい。
【0062】
なお、被印字体30は、レーザ印字が施される部分(実施の形態2では、第2のインク層14が形成されている部分に対応する部分)以外の領域に、所望の情報(例えば、商品名、商品のイメージ画像や写真、キャッチコピー、ロゴ、説明書き等)が記載されていてもよい。
【0063】
次に、被印字体30に印字を行うには、先ず、図7(1)に示すように、実施の形態1と同様のレーザ印字装置100を用い、第3のフィルム21の第2のインク層14が配置された位置に対応する所望箇所にレーザビーム101を照射する。なお、このレーザビーム101の照射条件は、第3のフィルム21及び第2のインク層14の所望箇所を完全に除去可能であると共に、第2のフィルム13の所望箇所の一部または全部を除去する、あるいは、第3のフィルム21及び第2のインク層14の所望箇所のみを完全に除去するように設定する。したがって、レーザビームの調整に幅を持たせることができ、レーザビームの照射に起因して生じるピンホール等が、被印字体30に形成されること、より一層確実に防止することができる。
【0064】
以上の条件で、レーザビーム101を照射することにより、図7(2)に示すように、第3のフィルム21及び第2のインク層14の所望箇所が完全に除去され、被印字体30の表面に第1のインク層12が現れる。この時、第2のフィルム13は、透明であるため、レーザビーム101によって除去されなくても、第1のインク層12は、第2のフィルム13を介して目視することができる。この目視可能な第1のインク層12が、実施の形態1と同様に、所望の情報(例えば、商品のLOT.No.、製造者、製造年月日、成分表示、発売元等)を表示するための印字となる。(図4参照)。
【0065】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3にかかるレーザ印字方法、及び包装体、並びに容器について図面を参照して説明する。
【0066】
図8は、本発明の実施の形態3にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体の断面図、図9は、図8に示す被印字体に、レーザ印字装置から照射されるレーザビームによって印字を行う工程を模式的に示す図である。
【0067】
なお、実施の形態3では、実施の形態2にかかる被印字体と同様の部材には、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0068】
図8に示すように、実施の形態3にかかる被印字体50の、実施の形態2にかかる被印字体30と異なる点は、第2のインク層14の代わりに、発色用の層54を配設した点である。
【0069】
すなわち、実施の形態3にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体50は、透明な第1のフィルム11と、第1のフィルム11上に形成された第1のインク層12と、第1のフィルム11上に第1のインク層12を挟んで積層された透明な第2のフィルム13と、第2のフィルム13上であって、第1のインク層12と対応する位置に形成された発色用の層54と、第2のフィルム13上に発色用の層54を挟んで積層された透明な第3のフィルム21と、を備えて構成されている。
【0070】
発色用の層54は、通常は透明であるが、レーザビームが照射されると、その照射熱により白色に発色するエチレン−ビニルアルコール共重合系の樹脂層(EVOH系樹脂層)から構成されている。したがって、白色に発色した部分では、第1のインク層12を遮蔽して、被印字体50の表面に第1のインク層12が出現することが阻止される。
【0071】
なお、被印字体50は、実施の形態2と同様に、レーザ印字が施される部分(実施の形態3では、発色用の層54が形成されている部分に対応する部分)以外の領域に、所望の情報(例えば、商品名、商品のイメージ画像や写真、キャッチコピー、ロゴ、説明書き等)が記載されていてもよい。
【0072】
次に、被印字体50に印字を行うには、先ず、図9(1)に示すように、実施の形態2と同様のレーザ印字装置100を用い、第3のフィルム21の発色用の層54が配置された位置の、印字したくない領域に対応する所望箇所にレーザビーム101を照射する。なお、このレーザビーム101の照射条件は、発色用の層54を発色させて第1のインク層12を遮蔽することができるように設定する。したがって、レーザビームの調整に幅を持たせることができ、レーザビームの照射に起因して生じるピンホール等が、被印字体50に形成されること、より一層確実に防止することができる。
【0073】
以上の条件で、レーザビーム101を照射することにより、図9(2)に示すように、発色用の層54のうち、レーザビーム101が照射された領域54Aが白色に発色し、この領域54Aに対応する領域に形成されている第1のインク層12が遮蔽される。一方、発色用の層54のうち、領域54A以外の部分に、第1のインク層12が現れる。この被印字体50の表面に出現した第1のインク層12は、実施の形態2と同様に、所望の情報(例えば、商品のLOT.No.、製造者、製造年月日、成分表示、発売元等)を表示するための印字となる。(図4参照)。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体の断面図である。
【図2】図1に示す被印字体の平面図である。
【図3】図1に示す被印字体に、レーザ印字装置から照射されるレーザビームによって被印字体に印字を行う工程を模式的に示す図である。
【図4】図3に示す工程により印字が施された包装体の平面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体の断面図である。
【図7】図6に示す被印字体に、レーザ印字装置から照射されるレーザビームによって印字を行う工程を模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかるレーザ印字方法で使用される被印字体の断面図である。
【図9】図8に示す被印字体に、レーザ印字装置から照射されるレーザビームによって印字を行う工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10、30、50 被印字体
11 第1のフィルム
12 第1のインク層
13 第2のフィルム
14 第2のインク層
20 包装体
21 第3のフィルム
54 発色用の層
100 レーザ印字装置
101 レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字体にレーザビームを照射して、当該被印字体に印字を行うレーザ印字方法であって、
第1の層と、当該第1の層上の所定位置に形成された第1のインク層と、当該第1のインク層上に形成された第2のインク層と、を備えてなる被印字体を用い、
前記被印字体の前記第2のインク層の所定部分にレーザビームを照射して当該第2のインク層の当該所定部分を除去し、当該被印字体の表面に前記第1のインク層を出現させるレーザ印字方法。
【請求項2】
前記被印字体は、前記第1のインク層が形成された第1の層上に、当該第1のインク層を挟んで第2の層が配設されてなり、前記第2のインク層は、当該第2の層上に形成されてなる請求項1記載のレーザ印字方法。
【請求項3】
前記第1の層及び第2の層の少なくとも一部が透過性を有する請求項1または請求項2記載のレーザ印字方法。
【請求項4】
前記第1の層及び第2の層がフィルムからなる請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
【請求項5】
前記被印字体は、前記第2のインク層が形成された第2の層上に、当該第2のインク層を挟んで第3の層が配設されてなり、前記第3の層及び第2のインク層の所定部分にレーザビームを照射して当該第3の層及び第2のインク層の当該所定部分を除去し、当該被印字体の表面に前記第1のインク層を出現させる請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載のレーザ印字方法。
【請求項6】
前記第3の層の少なくとも一部が透過性を有する請求項5記載のレーザ印字方法。
【請求項7】
前記第3の層がフィルムからなる請求項5または請求項6記載のレーザ印字方法。
【請求項8】
被印字体にレーザビームを照射して、当該被印字体に印字を行うレーザ印字方法であって、
第1の層と、当該第1の層上の所定位置に形成された第1のインク層と、当該第1のインク層上に形成された透過性を有する発色用の層と、を備えてなる被印字体を用い、
前記被印字体の発色用の層の所定部分にレーザビームを照射して当該発色用の層を発色させ、当該発色により前記第1のインク層を隠蔽するレーザ印字方法。
【請求項9】
前記発色用の層が、エチレン−ビニルアルコール共重合系の樹脂からなる請求項8記載のレーザ印字方法。
【請求項10】
前記被印字体は、前記第1のインク層が形成された第1の層上に、当該第1のインク層を挟んで第2の層が配設されてなり、前記発色用の層は、当該第2の層上に形成されてなる請求項8または請求項9記載のレーザ印字方法。
【請求項11】
レーザ印字が施されてなる包装体であって、
第1の層と、当該第1の層上の所定位置に形成された第1のインク層と、当該第1のインク層上に形成された第2のインク層と、を備えてなる被印字体を有し、
前記被印字体の第2のインク層の所定部分にレーザビームを照射して、当該第2のインク層の当該所定部分を除去し、前記被印字体の表面に前記第1のインク層を出現させてなる包装体。
【請求項12】
前記被印字体は、前記第1のインク層が形成された第1の層上に、当該第1のインク層を挟んで第2の層が配設されてなり、前記第2のインク層は、当該第2の層上に形成されてなる請求項11記載の包装体。
【請求項13】
前記第1の層及び第2の層の少なくとも一部が透過性を有する請求項11または請求項12記載の包装体。
【請求項14】
前記第1の層及び第2の層がフィルムからなる請求項11ないし請求項13のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項15】
前記被印字体は、前記第2のインク層が形成された第2の層上に、当該第2のインク層を挟んで第3の層が配設されてなり、前記第3の層及び第2のインク層の所定部分にレーザビームを照射して当該第3の層及び第2のインク層の当該所定部分を除去し、当該被印字体の表面に前記第1のインク層を出現させてなる請求項12ないし請求項14のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項16】
前記第3の層の少なくとも一部が透過性を有する請求項15記載の包装体。
【請求項17】
前記第3の層がフィルムからなる請求項15または請求項16記載の包装体。
【請求項18】
レーザ印字が施されてなる包装体であって、
第1の層と、当該第1の層上の所定位置に形成された第1のインク層と、当該第1のインク層上に形成された透過性を有する発色用の層と、を備えてなる被印字体を有し、
前記被印字体の発色用の層の所定部分にレーザビームを照射して当該発色用の層を発色させ、当該発色により前記第1のインク層を隠蔽してなる包装体。
【請求項19】
前記発色用の層が、エチレン−ビニルアルコール共重合系の樹脂からなる請求項18記載の包装体。
【請求項20】
前記被印字体は、前記第1のインク層が形成された第1の層上に、当該第1のインク層を挟んで第2の層が配設されてなり、前記発色用の層は、当該第2の層上に形成されてなる請求項18または請求項19記載の包装体。
【請求項21】
被収容物を収容する容器であって、
請求項11ないし請求項20のいずれか一項に記載の包装体の第1の層が、前記被収容物と接触するよう構成された容器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−1281(P2007−1281A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244875(P2005−244875)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(503244365)
【Fターム(参考)】