説明

レーザ治療装置

【課題】 レーザ照射器を安定して人体頚部に接触させてレーザ光を人体脊髄に照射することができ、更に施療中に両手を開放することができるレーザ治療装置を提供すること。
【解決手段】 レーザ発光素子11からの光を照射するレーザ照射器2と、レーザ照射器2を人体頚部60に固定する装着バンド3とを備えたレーザ治療装置1であって、レーザ照射器2は光を出射するプローブ4と、装着バンド3の固定部25とを有し、装着バンド3は人体頚部60を囲んでリング状を形成すると共に、人体頚部60に装着した状態でレーザ照射器2のプローブ4を人体脊髄61の方向に向ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身の痛みや懲りなどの不定愁訴を改善するため、レーザ発光素子からのレーザ光を頚部の人体脊髄に照射することにより各種の治療を行なうレーザ治療装置に関し、特にレーザ光を出射するレーザ照射器の安定した固定が可能で、かつ無用な照射を防止した医療安全性の高いレーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既に、人体が光を浴びると、酵素やホルモンが特定の波長の光によって刺激を受け、体内にダイナミックな反応を引き起こして生物学的な機能を変えることができることは知られており(例えば非特許文献1参照)、これを応用したPDT(光ダイナミック療法)がなされている。本発明者は更にこれを発展させ、単色性、可干渉性、指向性に優れた低出力のレーザ光を内科的に頚部の付け根に照射すると、全身の種々の部位で発生する痛みや懲りなどの不快症状を改善できることを見出した(例えば非特許文献2参照)。これは本発明者により中枢優先治療と名づけられているものであるが、全身のどの部位で発生した痛みも、それを感知するのは大脳皮質であり、また各部位に命令を下すのも大脳皮質であるということに基づく。
【非特許文献1】ジェイコブ・リバーマン著、飯村大助訳「光の医学」日本教文社、平成12年5月25日、p.8
【非特許文献2】大城俊夫著「中枢優先治療で慢性の痛みが治る」ごま書房、2002年7月27日、p.63−77
【0003】
更に、慢性的に痛みなどの不定愁訴を抱えている個人においては、それが普通の状態であると脳が認識(誤解)しているため、元の健康な状態に戻ろうとする働きを忘れている。従って単に痛みを感じる部位を改善するだけでなく、この脳の作動を正常の状態に戻さないと痛みはなくならないというものである。この理論に基づき、本発明者は鋭意研究した結果、頚部の付け根にレーザ光を照射することによって頭の血行を改善し、痛みを感じる部位のストレッチと併用することにより、痛みを解消出来ることを見出した。
【0004】
上述のレーザ治療に用いられる装置としては、レーザ発光素子からの光を照射するレーザ照射器をハンドピース型とし、レーザ照射器からのレーザの出力、照射時間、波長帯を設定制御する治療装置本体とをコードで接続したものがある。このようなレーザ治療装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【特許文献1】特開2004−298208号公報
【0005】
このような構成においては、治療装置本体からの発振指令があるとレーザ発光素子が発光する構造となっているが、特許文献1に記載の装置は生体の疼痛部位に照射してそれを緩和させるものであり、本発明に関わる上述の中枢優先治療を何ら示唆するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように本治療の骨子は、人体頚部の内部にレーザ光を透過させて脊髄に至らしめるものである。しかし従来のレーザ治療装置を本発明に関わる中枢優先治療に用いただけでは、レーザ照射器を手持ちにより人体頚部に固定して治療を行うため、レーザ照射器を安定して人体頚部に接触させることが困難であった。レーザ光は指向性をもって直進するため、装着が不安定であれば、正確に脊髄に到達できない。
【0007】
また後述するように、患部のケアを並行して実施するとより効果が得られる。また頭を前後・左右にストレッチすることは、頚部の筋肉を解すことになり、本治療の効果を一層発揮させるものであるが、そのためには両手が開放されていることが必要である。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、レーザ照射器を安定して人体頚部に接触させてレーザ光を人体脊髄に照射することができ、更に施療中に両手を開放することができるレーザ治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るレーザ治療装置は、レーザ発光素子からの光を照射するレーザ照射器と、該レーザ照射器を人体頚部に固定する装着バンドとを備えたレーザ治療装置であって、
上記レーザ照射器は光を出射するプローブと、上記装着バンドの固定部とを有し、上記装着バンドは人体頚部を囲んでリング状を形成すると共に、人体頚部に装着した状態で上記レーザ照射器のプローブを人体脊髄の方向に向けることを特徴として構成されている。
【0010】
また、本発明に係るレーザ治療装置は、上記レーザ照射器は上記プローブ近傍に接触検知スイッチを備え、該接触検知スイッチによりプローブが人体頚部に接触したことを検知した場合に上記レーザ発光素子を発光させることを特徴として構成されている。
【0011】
さらに、本発明に係るレーザ治療装置は、上記レーザ照射器は上記プローブおよび/または上記装着バンドの少なくとも離れた2ヶ所に接触検知スイッチを備え、該複数個の全ての接触検知スイッチが人体頚部に接触したことを検知した場合に上記レーザ発光素子を発光させることを特徴として構成されている。
【0012】
さらにまた、本発明に係るレーザ治療装置は、上記接触検知スイッチは生物物理学的特性により人体頚部に対する接触を検出することを特徴として構成されている。
【0013】
そして、本発明に係るレーザ治療装置は、上記装着バンドは帯状に形成され、両端部に互いに連結自在な固定部を有し、該固定部には連結状態を検出する連結検出スイッチが設けられると共に、該連結検出スイッチにより上記固定部が固定状態にあることを検知した場合に上記レーザ発光素子を発光させることを特徴として構成されている。
【0014】
また、本発明に係るレーザ治療装置は、上記レーザ照射器は箱状に形成されて上記レーザ発光素子を納め、上記プローブの先端部を外部に突出させると共に、上記レーザ発光素子の電源を内蔵してなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るレーザ治療装置によれば、レーザ照射器は光を出射するプローブと、装着バンドの固定部とを有し、装着バンドは人体頚部を囲んでリング状を形成すると共に、人体頚部に装着した状態でレーザ照射器のプローブを人体脊髄の方向に向けることにより、レーザ照射器を人体頚部に対し安定して固定することができると共に、人体脊髄に向かって確実に光を照射することができ、利用者本人のみで容易に治療することができる。
【0016】
また、本発明に係るレーザ治療装置によれば、レーザ照射器はプローブ近傍に接触検知スイッチを備え、接触検知スイッチによりプローブが人体頚部に接触したことを検知した場合にレーザ発光素子を発光させることにより、プローブが人体頚部に接触しないとレーザ発光素子は発光しないので、施療時以外のレーザ発光を防止することができ、装置の安全性を向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明に係るレーザ治療装置によれば、レーザ照射器はプローブおよび/または装着バンドの少なくとも離れた2ヶ所に接触検知スイッチを備え、複数個の全ての接触検知スイッチが人体頚部に接触したことを検知した場合にレーザ発光素子を発光させることにより、レーザ光の誤出射を確実に防止することができ、装置の安全性を向上させることができる。複数個のタッチ端子を発射穴近傍に設置する装置は、例えば特開平11−104252で提案されているが、非常に近接されて設置されているため、例えば発射穴を塞がずに、片手で全てのタッチ端子を押さえることも起こりえるものであり、依然として無用なレーザ光照射に対する安全性に不安が残る。本発明では離れた2ヶ所に接触検知スイッチが設けられているため、両手でなければ全ての接触検知スイッチに接触することができず、一層安全性を向上できる。
【0018】
さらにまた、本発明に係るレーザ治療装置によれば、接触検知スイッチは生物物理学的特性により人体頚部に対する接触を検出することにより、人体頚部に対する接触を確実に検出することができ、装置の安全性をさらに向上させることができる。
【0019】
そして、本発明に係るレーザ治療装置によれば、装着バンドは帯状に形成され、両端部に互いに連結自在な固定部を有し、固定部には連結検出スイッチが設けられると共に、連結検出スイッチにより固定部が固定状態にあることを検知した場合にレーザ発光素子を発光させることにより、レーザ照射器の装着時以外にレーザ発光素子が発光することがないので、装置の安全性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明に係るレーザ治療装置によれば、レーザ照射器は箱状に形成されてレーザ発光素子を納め、プローブの先端部を外部に突出させると共に、レーザ発光素子の電源を内蔵してなることにより、プローブの先端部を人体頚部に確実に接触させることができる電源一体型の装置とすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面に添って詳細に説明する。図1は本実施形態におけるレーザ治療装置1と人体頚部60との関係を示した図、図2はレーザ照射器2の内部構成を示す断面図である。これら各図に示すように、本実施形態におけるレーザ治療装置1は人体脊髄61にレーザ光70を照射することによって痛みや懲りなどの不快症状の治療を行うものであり、レーザ発光素子11からのレーザ光70を照射するレーザ照射器2と、レーザ照射器2を人体頚部60に固定する装着バンド3とから構成される。
【0022】
レーザ照射器2は、図1に示すように治療用の低出力のレーザ光70を人体に照射するものであり、図2に示すように、レーザ光70を出射するプローブ4と、箱状の収納筐体5とから形成されており、収納筐体5内にプローブ4を納める構成とする。
【0023】
プローブ4は、図2に示すように、レーザ光70を発光するレーザ発光素子11と、レーザ発光素子11からのレーザ光70を集光し人体内部に照射する集光レンズ12とを、合成樹脂材等で形成された外被円筒13内に納め、レーザ発光素子11からのレーザ光70の出射を制御する発振制御回路基板10上に配置することによって形成される。そして、発振制御回路基板10は電源コード7を介して電源(図示せず)に接続され、レーザ発光素子11に電気が供給される。なお電源コード7から発振制御回路基板10との間に、電源をON/OFFするためのスイッチ(図示せず)を筐体本体20に取付けることもできる。
【0024】
本実施形態におけるプローブ4に使用するレーザ発光素子11は、例えばGaAlAs半導体レーザ素子であり、光の波長は400〜1400nmの可視光線あるいは近赤外線である。出力は0.1mW〜1Wと、大型スクリーン映像での特定箇所指示に使用されるレーザポインタと同じ出力レベルの家庭で治療可能なレベルのものから、医療機関での治療に使用される出力レベルのものまでが利用可能である。また波長については、医療機関で治療する場合は、人体内への透過性(遠くにまで減衰せずに到達すること)の面から波長の長い770〜1400nmの近赤外領域が利用可能である。一方家庭で治療するものは、安全性(光が漏洩している時に肉眼で見えること)の面から、640〜770nmの赤色光が望ましい。これにより家庭での使用の際、レーザ光を可視化でき、また低出力であるため不注意な取り扱いによる眼への誤照射などに対する安全性も高い。
【0025】
プローブ4を内部に納める収納筐体5は、図2に示す上方に開放した筐体本体20と、筐体本体20の開放した部分を覆うように形成される蓋部21とから箱状に形成される。蓋部21は、収納筐体20に対し取外し自在に形成されると共に、略中央に筐体本体5内に収容されるプローブ4の先端部4aが貫通する貫通部22を有している。貫通部22は外皮円筒13と略同じ大きさを有しており、プローブ4の先端部4aが蓋部21外面から突出する。
【0026】
レーザ照射器2は、レーザ光70が人体外部に漏れることがないよう、先端を人体皮膚に接触させて固定される。本実施形態では、図2に示すように、レーザ光70を出射するプローブ4の先端部4aを収納筐体5の外部に突出させているので、図1に示すようにレーザ照射器2を人体頚部60に装着した状態では、プローブ4の先端部4aが人体頚部60に圧接した状態となる。すなわち、プローブ4の先端部4aを確実に人体頚部60に接触させることができ、プローブ4からのレーザ光70が外部に漏れることなく照射されるので、安全に施療することができる。なお、プローブの先端部4aは丸められており、接触時に違和感はない。
【0027】
また、人体頚部60と接触する収納筐体5の蓋部21を筐体本体20に対し取外し自在としているので、殺菌消毒等が必要な人体皮膚との接触部のみを容易に取り替えることができる。また装着バンド3も取外し可能であり、洗浄することができる。
【0028】
また、レーザ照射器2は、プローブ4近傍に接触検知スイッチ26を有している。そして、接触検知スイッチ26が人体頚部60に接触したことを検知した場合に、レーザ発光素子11はレーザ光70を発光する。本実施形態においては、図1に示すように、接触検知スイッチ26をプローブ4の先端部4aに設けた。これにより、接触検知スイッチ26が人体頚部60に接触した場合には、プローブ4の先端部4aも人体頚部60に接触することになる。すなわち、プローブ4の先端部4aが人体頚部60に接触した状態でないとレーザ光70が出射されないので、施療時以外のレーザ光70の出射を排除することができ、装置の安全性を向上させることができる。
【0029】
本実施形態においては、接触検知スイッチ26の先端から光を発光し、フォトダイオード等により外部光を検出することによって、人体頚部60との接触を検知する。これは、予めプローブ4の先端部4aが人体頚部60に接触した状態における光の皮膚からの散乱係数又は吸収係数を測定しておき、実際に検出した外部光と比較することによって、プローブ4の先端部4aに人体頚部60が接触しているか否かを判断する。すなわち、人体頚部60との接触状態の検知を生物物理学的特性に基づいて行うので、レーザ照射器2が正しく装着されていない時や、人体以外の物と接触した場合などに起こり得る誤判断を防止することができ、装置の安全性をさらに向上させることができる。
【0030】
ただし、接触検知スイッチ26については、例えば汎用リミットスイッチを使用したり、又は人体からの誘起電圧を検出することによって人体頚部60との接触を検知する等、本実施形態には制限されない。ここで、接触検知スイッチ26の位置については、プローブ4の先端部4aと人体頚部60との接触を検知可能な位置であればどの位置に設けてもよい。
【0031】
また、プローブ4の先端部4a近傍に複数の接触検知スイッチ26、26を設け、各接触検知スイッチ26がそれぞれ人体頚部60に接触した場合にレーザ発光素子11を発光させることとすると、より確実にレーザ光70の誤出射を防止することができる。ただしこの場合には、各接触検知スイッチ26はプローブ4の先端部4a近傍に設けられ、この先端部4a近傍は人体皮膚との接触面積が狭いので、各接触検知スイッチ26を互いに離れた位置に配置することができない。したがって、施療時以外に誤って全ての接触検知スイッチ26、26に手などが接触し、レーザ光70が出射するおそれがある。
【0032】
そこで、複数の接触検知スイッチ26、26を装着バンド3の内面の、例えば互いに180度離れた位置に設けることとすると、接触検知スイッチ26、26間の距離を大きくとることができるので、故意に両手で各接触検知スイッチ26に接触する等の動作を取らない限り、レーザ光70が誤って出射することはない。また、レーザ照射器2を装着バンド3により人体頚部60に固定した場合には、装着バンド3の内面に設けた全ての接触検知スイッチ26、26が確実に皮膚に接触するため、レーザ光70を出射することができる。なお、接触検知スイッチ26の配置及び数の組み合わせについては、接触検知スイッチ26をプローブ4近傍及び装着バンド3の内面の両方に設ける等、適宜変更可能である。
【0033】
プローブ4を収容する筐体本体20は、図2に示すようにレーザ光70の出射方向に開放した箱状に形成され、内部にプローブ4を固定する固定板23を有している。固定板23は平板状に形成され、中央部に直径がプローブ4の外皮円筒13と略同じ大きさの貫通孔24を有する。
【0034】
固定板23は、筐体本体20の側面に有する開口から挿入されて、筐体本体20の蓋部21に対し略水平に配置される。水平に設置する目的は、頚部60に接触する蓋部21に対してレーザ光70が確実に人体脊髄61に到達するように垂直に発光するためであり、装着バンド3との組み合わせで、蓋部21は人体頚部60に対して略接線方向に取付けられる。さらにこの接線方向への装着性を確実にするため、蓋部21(さらには固定板23)は凹状に湾曲していてもよい。外被円筒13は固定板23の貫通孔24を介して配置され、外被円筒13の縁部14を固定板23に取り付けることによって、筐体本体20内に固定される。これにより、蓋部21を筐体本体20から取り外した際にプローブ4も共に外れることがないので、容易に蓋部21のみを交換することができる。なお蓋部21は洗浄あるいは殺菌消毒のために取り外すものであり、プローブ4や固定板23を含めて、人体皮膚と接触する全ての部分を取り外し可能な構造とすることも容易であり、これも本発明に含まれる。
【0035】
また、固定板23は筐体本体20の両側面の外側まで張出すように形成され、筐体本体20の外部に突出する両端部に装着バンド3の固定部25、25が形成される。図2に示すように固定部25、25は、装着バンド3を通すバンド通し部27、27を有している。
【0036】
レーザ照射器2を人体頚部60に固定する装着バンド3は布材により帯状に形成される。また伸縮可能なスパンボンドのような合成繊維などで形成してもよい。そして、装着バンド3の両端を固定部25のバンド通し部27、27に通し、装着バンド3の略中間部が図1に示すレーザ照射器2の下側の面に当接するように引っ張ることによって、装着バンド3がレーザ照射器2に取り付けられる。すなわち、装着バンド3は、固定部25でレーザ照射器2に固定されると共に、固定部25のバンド通し部27から人体頚部60に沿って巻きつけられる。
【0037】
そして、装着バンド3の両端部には、互いに接離自在な面固定部31、31が形成される。装着バンド3は、レーザ照射器2を人体頚部60に当接した状態で、人体頚部60を囲んでリング状を形成し、レーザ照射器2を人体頚部60に固定することができる。
【0038】
装着バンド3は人体頚部60を囲んでリング状を形成し、レーザ照射器2を人体頚部60に対し所定圧力で当接させた状態で固定することができるので、プローブ4の先端部4aを人体脊髄61の方向に向けた状態で人体頚部60に固定することができる。これにより、プローブ4からのレーザ光70を人体脊髄61に照射することができ、施療を確実に行うことができる。
【0039】
また、図3に示すように、レーザ照射器2を人体頚部60周りのどの位置に配置しても、装着バンド3によりレーザ照射器2を所定圧力で当接させて固定することにより、プローブ4を人体脊髄61の方向に向けることができるので、レーザ光70を確実に人体脊髄61に照射することができる。
【0040】
本実施形態では、面固定部31、31を面ファスナにより形成し、重ね合わせることで互いに接合可能とする。これにより、レーザ照射器2の人体頚部60に対する位置決めが容易となると共に、互いに接合位置を変化させることによってレーザ照射器2の圧接具合の調整が可能となる。ただし、装着バンド3については、例えばゴムバンド等によりレーザ照射器2を人体頚部60に固定又は固定解除する等、本実施形態に限られず様々適用可能である。
【0041】
また、装着バンド3は両端部の面固定部31、31に互いの連結状態を検知する連結検出スイッチ32、32がそれぞれ設けられる。そして、連結検出スイッチ32、32が互いに連結したことを検知した場合に、レーザ発光素子11はレーザ光70を発光する。
【0042】
レーザ照射器2を装着バンド3で人体頚部60に固定された状態でないと、プローブ4はレーザ光70を出射できない。このため、レーザ照射器2の装着時以外でのレーザ光70の出射を排除することができ、装置の安全性を向上させることができる。
【0043】
更に装着バンド3を互いに係脱自在な一対の係合部材を介して連結する形状とすると、面固定部31、31の接触状態を確保することができ、両端部をより確実に固定することができる。そして、連結検出スイッチ32により一対の係合部材が互いに係止したことを検知した場合にレーザ発光素子11がレーザ光70を発光することとすると、レーザ照射器2の装着中におけるレーザ光70の出射を排除することができるので、装置の安全性をより向上させることができる。
【0044】
更に別の実施形態としては、装着バンド3の両端部をバックルなどのオスメスのベルト連結部とし、この中に同時に電気的な接続が可能なピンを備えてもよい。更にベルト連結部の外側に第2段の固定用フックボタンを設け、ボタンを留めたときに電気的な結合が可能なようにすると上述と同様の効果を得ることができる。本発明の狙いとするところは、装着バンド3が連結固定されたことを別の手段によって検知するのではなく、装着バンド3の連結操作自体に連結されたことを確認できる検知手段を含んでいることにある。従って装着バンド3が連結検知のための新たな操作手順を必要とせず、またその操作手順を忘れる心配も無い。
【0045】
本実施形態では、装着バンド3によってレーザ照射器2を人体頚部60に固定すると共に、プローブ4からのレーザ光70を確実に人体脊髄61に照射することができるので、利用者本人のみで治療を行うことができる。そして、施療中は利用者の両手が解放されるので、痛みが発生している部位のストレッチなどの処置がし易くなる。また装着バンド3は細いバンド状の形態であるため首自体の回転・前後・左右運動が可能となり、頚椎を取り囲む筋肉の硬直がなくなることにより当該動脈への圧迫を取り除き、一層血行の改善を図ることができる。また頚椎動脈血管を拡張できることにより、痛みの発生物質(発痛物質)を取り除き易くなる。更には椎骨間の広がりが得られることにより、神経系統への圧迫も解除できる。
【0046】
また、本実施形態ではプローブ4を電源コード7を介して電源と接続することとしたが、レーザ照射器2内にボタン電池を内蔵して電源一体型とすることで、小型で容易に施療可能な装置とすることができる。またレーザ発光素子11は筐体本体20に収納するのではなく、例えば腰のベルトに装着する電源部に取り付け、レーザ光70は電源部から光ファイバによりプローブ4まで導光してもよい。
【0047】
次に本実施形態におけるレーザ照射器2を人体頚部60に対して取り付ける過程について図4に沿って説明する。図4はレーザ照射器2を人体頚部60に対し位置決めし、装着バンド3により固定するまでの過程を示したものである。図4(a)はレーザ照射器2の人体頚部60に対する位置決めを行っている状態を示している。この図に示すように、レーザ照射器2を人体頚部60に対し位置決めする際には、装着バンド3の面固定部31、31をそれぞれ離した状態とする。そして、レーザ光70が出射するプローブ4の先端部4aを人体頚部60に対して位置決めする。
【0048】
図4(b)は、人体頚部60に対し位置決めされたレーザ照射器2を圧接固定する状態を示している。レーザ照射器2を人体頚部60に対し位置決めした後は、装着バンド3を人体頚部60に巻きつけることにより固定する。
【0049】
具体的には、図4(b)に示すように、位置決めされたレーザ照射器2を保持しながら、装着バンド3を両側から人体頚部60に巻きつけ、装着バンド3の面固定部31、31を互いに重ね合わせるように接合する。このとき、プローブ4を人体頚部60に圧接させるように面固定部31、31の接合位置を調整することによって、レーザ照射器2を一定の圧力で人体頚部60に当接する。これにより、図4(c)に示すように、プローブ4の先端部4aが確実に皮膚に接触すると共に、人体脊髄61の方向に向いた状態とすることができる。これにより、レーザ照射器2を持ちながら施療する必要がないので、容易に治療することができる。
【0050】
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態においては発振制御回路基板10によりレーザ発光素子11からのレーザ光70を制御することとしたが、本実施形態ではレーザ照射器2から電源及び制御部分を分離し、レーザ光70の出射条件を設定制御する治療装置本体40を設ける。図5に本実施形態におけるレーザ治療装置1のブロック図を示す。
【0051】
レーザ照射器2と治療装置本体40は、図5に示すようにコード6を介して接続され、治療装置本体40からのレーザ光70の制御信号はレーザ照射器2に送信される。治療装置本体40からの制御信号は、レーザ照射器2の発信制御回路基板10で受信され、この信号に基づきレーザ発光素子11を発光させる。
【0052】
また、図5に示すように、治療装置本体にはCPU41が内蔵されており、レーザ照射器2から出射されるレーザ光70の出力、照射時間、波長帯等の出射条件は、CPU41の演算処理部42で設定される。演算処理部42からの指令は制御部43に送られ、制御部43はこの指令に基づきレーザ照射器2に制御信号を送信する。レーザ光70の出射条件は操作盤44により選択指定するものとし、表示盤45を設けてこれらのデータを表示する形式とすると使い易い。また治療装置本体40にUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)などの記憶媒体の読み取り機能を設け、別所でUSBに入力されたユーザに最も適した処方を読み取らせるようにしてもよい。また本実施形態では、上述のように電源80を治療装置本体40に接続され、電源スイッチ(図示せず)も治療装置本体40に備えられる。また段落0046に記載したボタン電池をレーザ照射器2内に収納した電源一体型の装置においては、併せてレーザ照射器2内に光、電波あるいは超音波などの信号の解読機能を持たせ、外部から治療に関わる情報を無線で送信し、レーザ照射器2で受診することもできる。これにより頚部60から電線が垂れ下がることの煩わしさを解消できる。
【0053】
このように、レーザ照射器2から電源80及びレーザ光70の制御部分を分離することによって、レーザ照射器2自体を小型化することができ、個人ユーザにとっての自由度をより高くできる。
【0054】
また、治療装置本体40でレーザ光70の出力、照射時間、波長帯等をそれぞれ設定することにより、症状の種類や程度に合わせて選択制御することができ、効率よく施療することができる。また、出射条件の設定は、施療中においても容易に変更することができる。さらに、CPU41に記憶部を設け、複数の出射条件を組み合わせたものを記憶させておくこととすると、さらに効率のよい施療を行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、装着バンド3は固定部25のバンド通し部27を介してレーザ照射器2に巻き付ける構成としたが、例えば、筐体本体21の外側面に直接取り付けるようにすることもできる。また、装着バンド3とレーザ照射器2とを別体としておき、装着バンド3にレーザ照射器2をネジ係合などで接続固定できる固定部を形成し、この固定部に対してレーザ照射器2を取付固定することで、プローブ4を人体脊髄61の方向に向けるようにしてもよい。なおこの実施形態においては、固定部に対してレーザ照射器2を接続した時に接触検知スイッチを作動させ、安全性を維持することもできる。さらに本発明で使用した発光素子はレーザ発光素子としたが、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などのような、レーザ光に比較しては若干コヒーレンス性が低くても、スペクトルの半値幅が±15nm以内の、実質的なコヒーレンス性を有しながら高輝度が得られる発光素子も利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態におけるレーザ治療装置と人体頚部との関係を示した図である。
【図2】レーザ照射器の内部構成を示した断面図である。
【図3】レーザ照射器の人体頚部への装着について示した図である。
【図4】レーザ照射器の人体頚部への装着の過程を示した図である。
【図5】第2の実施形態におけるレーザ治療装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1 レーザ治療装置
2 レーザ照射器
3 装着バンド
4 プローブ
4a 先端部
7 電源コード
10 発振制御回路基板
11 レーザ発光素子
22 貫通部
25 固定部
26 接触検知スイッチ
27 バンド通し部
31 面固定部
32 連結検出スイッチ
40 治療装置本体
41 CPU
60 人体頚部
61 人体脊髄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発光素子からの光を照射するレーザ照射器と、該レーザ照射器を人体頚部に固定する装着バンドとを備えたレーザ治療装置であって、
上記レーザ照射器は光を出射するプローブと、上記装着バンドの固定部とを有し、上記装着バンドは人体頚部を囲んでリング状を形成すると共に、人体頚部に装着した状態で上記レーザ照射器のプローブを人体脊髄の方向に向けることを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項2】
上記レーザ照射器は上記プローブ近傍に接触検知スイッチを備え、該接触検知スイッチによりプローブが人体頚部に接触したことを検知した場合に上記レーザ発光素子を発光させることを特徴とする請求項1記載のレーザ治療装置。
【請求項3】
上記レーザ照射器は上記プローブおよび/または上記装着バンドの少なくとも離れた2ヶ所に接触検知スイッチを備え、該複数個の全ての接触検知スイッチが人体頚部に接触したことを検知した場合に上記レーザ発光素子を発光させることを特徴とする請求項1記載のレーザ治療装置。
【請求項4】
上記接触検知スイッチは生物物理学的特性により人体頚部に対する接触を検出することを特徴とする請求項2または3記載のレーザ治療装置。
【請求項5】
上記装着バンドは帯状に形成され、両端部に互いに連結自在な固定部を有し、該固定部には連結状態を検出する連結検出スイッチが設けられると共に、該連結検出スイッチにより上記固定部が固定状態にあることを検知した場合に上記レーザ発光素子を発光させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ治療装置。
【請求項6】
上記レーザ照射器は箱状に形成されて上記レーザ発光素子を納め、上記プローブの先端部を外部に突出させると共に、上記レーザ発光素子の電源を内蔵してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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