説明

レーザ熱転写方法及びこれを利用した有機発光素子の製造方法

【課題】レーザ熱転写方法によってドナーフィルムとアクセプタ基板をラミネーションする時に、磁性力によって効果的にラミネーションさせることができるようにしたレーザ熱転写方法及びこれを利用した有機発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】工程チャンバ内の基板ステージ上に少なくとも一面に磁性体が形成されたアクセプタ基板を位置させる段階と、前記アクセプタ基板上に電磁石を含むドナーフィルムを位置させる段階と、前記ドナーフィルムに形成された電磁石と前記アクセプタ基板の磁性体の間に作用する磁気力によって前記ドナーフィルムと前記アクセプタ基板をラミネーションする段階と、前記ドナーフィルム上にレーザを照射して転写層の少なくとも一領域をアクセプタ基板上に転写させる段階と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ熱転写方法及びこれを利用した有機発光素子の製造方法に関し、より具体的には、レーザ熱転写方法を利用してアクセプタ基板上に有機膜層を形成する時、磁気力によってドナーフィルムとアクセプタ基板をラミネーションさせることができるレーザ熱転写方法及びこれを利用した有機発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子の有機膜層を形成する方法中、蒸着法はシャドウマスクを利用して有機発光物質を真空蒸着して有機膜層を形成する方法で、マスクの変形などによって高精細の微細パターンを形成し難く、大面積表示装置に適用し難い。
【0003】
蒸着法の問題点を解決するために、直接有機膜層をパターニングするインクジェット方式が提案された。インクジェット方式は、発光材料を溶媒に溶解または分散させて吐出液としてインクジェットプリント装置のヘッドから吐出させて有機膜層を形成する方法である。インクジェット方式は、工程が比較的簡単であるが、歩留まり低下や膜厚さの不均一性が発生されて、大面積の表示装置に適用し難いという問題点がある。
【0004】
一方、レーザ熱転写方法を利用して有機膜層を形成する方法が提案された。レーザ熱転写方法は、基材基板、光-熱変換層及び転写層を含むドナーフィルムにレーザを照射させて基材基板を通過したレーザを光-熱変換層から熱に変換させて光-熱変換層を膨脹させることで、隣接した転写層を膨脹させ、アクセプタ基板に転写層が接着されて転写させる方法である。
【0005】
レーザ熱転写方法は、レーザで誘導されたイメージングプロセスで、高解像度のパターン形成、フィルム厚さの均一性、マルチレイヤー積層能力、大型マザーガラスへの拡張性のような固有の利点を持っている。
【0006】
従来のレーザ熱転写方法を行う場合、発光層の転写がなされるチャンバ内部は、発光表示素子形成の時他の蒸着工程と同調されるようにするために真空状態でなされることが好ましいので、主に真空状態でなされるが、従来の方法によって真空状態でレーザ熱転写を行う場合、ドナーフィルムとアクセプタ基板の間に接合力が弱くなって転写層の転写特性が悪くなるという問題点がある。よって、レーザ熱転写方法において、ドナーフィルムとアクセプタ基板をラミネーションさせる方法は、重要な意味を持っており、これを解決するためのさまざまな方案が研究されている。
【0007】
以下では図面を参照して従来の技術によるレーザ熱転写方法及びレーザ熱転写装置を具体的に説明する。
図1は、従来の技術によるレーザ熱転写装置の部分断面図である。
図1を参照すれば、レーザ熱転写装置100は、チャンバ110内部に位置する基板ステージ120及びチャンバ110上部に位置したレーザ照射装置130を含んで構成される。
【0008】
基板ステージ120は、チャンバ110で導入されるアクセプタ基板140とドナーフィルム150をそれぞれ順次位置させるためのもので、基板ステージ120にはアクセプタ基板140とドナーフィルム150をそれぞれ整列されるようにするための第1装着ホーム121及び第2装着ホーム123が形成されている。
【0009】
第1装着ホーム121がアクセプタ基板140の周方向に沿って形成されて、第2装着ホーム123はドナーフィルム150の周方向に沿って形成される。通常では、アクセプタ基板140は、ドナーフィルム150より面積が小さいので、第2装着ホーム123より第1装着ホーム121を小さく形成する。
【0010】
この時、アクセプタ基板140とドナーフィルム150の間に異物や空間なしにラミネーションさせるために、レーザ熱転写がなされるチャンバ110内部を真空で維持せず、第1装着ホーム121及び第2装着ホーム123の下部一区間にパイプ161、163を連結し、真空ポンプPで吸いこんでアクセプタ基板140とドナーフィルム150を合着させる。
【0011】
しかし、真空ポンプによってアクセプタ基板とドナーフィルムを密着させる方法は、有機発光素子を製作する他の工程が真空状態を維持することと違ってチャンバ内部の真空状態を維持することができなくなることにより、製品の信頼性と寿命に良くない影響を及ぼすという問題点がある。
【0012】
一方、前記従来のレーザ熱転法及びこれを利用した有機発光素子の製造方法に関する技術を記載した文献としては、下記特許文献1ないし3等がある。
【特許文献1】特開2004−296224号公報
【特許文献2】特開2004−355949号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第4,377,339号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明は、前記従来の問題点を解決するために考案された発明で、その目的は、レーザ熱転写が真空状態でなされながらドナーフィルムとアクセプタ基板の間に異物や空間が生じることなく、磁気力によってドナーフィルムとアクセプタ基板をラミネーションするレーザ熱転写方法及びこれを利用した有機発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を果たすために、本発明によるレーザ熱転写方法は、工程チャンバ内の基板ステージ上に少なくとも一面に磁性体が形成されたアクセプタ基板を位置させる段階と、前記アクセプタ基板上に電磁石を含むドナーフィルムを位置させる段階と、前記ドナーフィルムに形成された電磁石と前記アクセプタ基板の磁性体の間に作用する磁気力によって前記ドナーフィルムと前記アクセプタ基板をラミネーションする段階、及び前記ドナーフィルム上にレーザを照射して転写層の少なくとも一領域をアクセプタ基板上に転写させる段階とを含む。
【0015】
好ましくは、前記ドナーフィルムは基材基板と、前記基材基板上に形成される光-熱変換層と、前記光-熱変換層上に形成される転写層及び前記光-熱変換層の少なくともいずれか一面に形成された電磁石を含む。
【0016】
前記光-熱変換層と前記転写層の間に層間挿入層をさらに含み、前記電磁石は基材基板または光-熱変換層内部に少なくとも一つの棒または円筒状で形成する。また、前記電磁石は電圧を印加するための電気配線が含まれる。
【0017】
そして、前記磁性体は、Fe、Ni、Cr、FeO、FeO、CoFeO、磁性ナノ粒子及びその混合物で構成されるグループより選ばれるいずれか一つであり、前記磁性ナノ粒子はスピンコーティング、電子ビーム蒸着(E-Beam蒸着)、またはインクジェット方法を利用して形成する。
【0018】
また、前記アクセプタ基板に形成された駆動電源外郭領域と、画像表示部の画素領域以外の領域の中で少なくともいずれか一つ以上の面に形成される磁力支持用メタルラインを含み、前記工程チャンバは真空チャンバである。
【0019】
また、本発明によるレーザ熱転写方法によって第1電極と第2電極の間に発光層が形成される有機発光素子の製造方法において、基板ステージ上に画素領域が形成されて、磁性体を含むアクセプタ基板を位置させるアクセプタ基板移送段階と、前記アクセプタ基板上に電磁石を含んで発光層を具備したドナーフィルムを移送させるドナーフィルム移送段階と、前記アクセプタ基板に形成された前記磁性体と前記ドナーフィルムに含まれた前記電磁石の間の磁気力によって前記アクセプタ基板と前記ドナーフィルムを接合するラミネーション段階及び前記ドナーフィルムにレーザを照射して前記アクセプタ基板の前記画素領域に前記発光層を転写する転写段階とを含む。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、レーザ熱転写方法によってドナーフィルムとアクセプタ基板をラミネーションする時に、レーザ熱転写が真空状態でなされながらドナーフィルムとアクセプタ基板の間に異物及び空間が生じないようにすると同時に、ドナーフィルムに形成された電磁石と、アクセプタ基板に形成された磁性体の間に発生する磁気力によってドナーフィルムとアクセプタ基板をラミネーションすることで、密着性及び有機発光素子の寿命、歩留まり及び信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では本発明の実施例を示した図面を参照して本発明によるレーザ熱転写方法及びこれを利用した有機発光素子の製造方法を具体的に説明する。
図2aないし図2hを参照し、本発明によるレーザ熱転写方法の一実施例を説明する。本発明によるレーザ熱転写方法を進行するレーザ熱転写装置は、工程チャンバ200a、200b、基板ステージ220、レーザオシレータ210を含んで構成される。
【0022】
チャンバは、通常のレーザ熱転写装置で使われる工程チャンバ200aを使うことができ、工程チャンバ200a外部には電磁石(図示せず)を含むドナーフィルム280または磁性体271を含むアクセプタ基板270を工程チャンバ200a内部に移送するためのロボット腕260及びエンドエフェクタ(end-effector)261などを含む移送チャンバ200bが具備される。工程チャンバ200aと移送チャンバ200bの間にはゲートバルブ250が存在する。ゲートバルブ250は工程チャンバ200aと移送チャンバ200bを遮断する役割をする。
【0023】
一方、基板ステージ220は移動されるための駆動手段(図示せず)をさらに具備することができる。例えば、レーザが縦長方向に照射される場合、横長方向に基板ステージ220を移動させる駆動手段をさらに具備することができる。
【0024】
また、基板ステージ220は、アクセプタ基板270及びドナーフィルム280を収納して装着させるそれぞれの装着手段を具備することができる。装着手段は、移送チャンバ200b内のロボット腕260及びエンドエフェクタ261のような移送手段によって工程チャンバ200a内に移送されたアクセプタ基板270が基板ステージ220の決まった位置に正確に装着されるようにする。
【0025】
本実施例で、装着手段は貫通ホール(図示せず)、ガイドバー231、241、移動プレート230、240、支持台(図示せず)及び装着ホーム221、222を含んで構成されうる。この時、ガイドバー231、241は移動プレート230、240及び支持台に伴って上昇または下降運動するが、ガイドバー231、241が貫通ホールを通過して上昇しながらアクセプタ基板270を収容して、下降しながらアクセプタ基板270を装着ホーム221、222に安着させるようになる構造である。この時、アクセプタ基板270及びドナーフィルム280を正確な位置に安着させるために装着ホーム221、222は壁面が斜めに形成されることが好ましい。
【0026】
前記貫通ホールは、ドナーフィルム280及びアクセプタ基板270を支持するガイドバー231、241が上下移動可能になるように基板ステージ220に形成されたホールである。そして、支持台は、ガイドバー231、241と移動プレート230、240を支持しながら上下移動可能にさせる役割をし、別途のモーター(図示せず)と連結されている。
【0027】
レーザオシレータ210は、工程チャンバ200aの外部または内部に設置されうるし、レーザが上部から照らされうるように設置されることが好ましい。
【0028】
有機発光素子の製作に適用された本実施例でレーザ熱転写方法は、アクセプタ基板270移送段階、ドナーフィルム280移送段階、ラミネーション段階及び転写段階を含む。
アクセプタ基板270移送段階は、レーザ熱転写装置の工程チャンバ200a内にアクセプタ基板200aを位置させる段階で、この時、磁性体271を含むアクセプタ基板270を移送チャンバ200aの移送手段であるエンドエフェクタ261上に位置させる(図2a)。
【0029】
そして、ロボット腕260によってエンドエフェクタ261を工程チャンバ200a内部に進入させて基板ステージ220上部に位置させる(図2b)。
【0030】
工程チャンバ200a内に移送されたアクセプタ基板270は、貫通ホールを通じて上昇したガイドバー231によって支えられる。その後、エンドエフェクタ261は工程チャンバ200aを抜け出て再度移送チャンバ200bに移動する(図2c)。
【0031】
アクセプタ基板270を支えているガイドバー231は、再度下降しながらアクセプタ基板270を基板ステージ220の第1装着ホーム222上に正確に位置させる(図2d)。
【0032】
ドナーフィルム280移送段階は、アクセプタ基板270移送段階と同様に、移送チャンバ200b内に位置したロボット腕260に付着されたエンドエフェクタ261などの移送手段によって工程チャンバ200a内に移送される(図2e)。
【0033】
この時、ドナーフィルム280は、移送の時にフィルムトレイ290によって移送されることが好ましい。工程チャンバ200a内に移送されたドナーフィルム280は、貫通ホールを通じて上昇したガイドバー241によって支えられる。ドナーフィルム280がガイドバー241に支えられれば、ロボット腕260によってエンドエフェクタ261は、工程チャンバ200aを抜け出て再度移送チャンバ200bに移動する(図2f)。
【0034】
ドナーフィルム280を支えているガイドバー241は再度下降しながら、ドナーフィルム280を基板ステージ220の第2装着ホーム221上に正確に位置させる(図2g)。
【0035】
ラミネーション段階は、アクセプタ基板270に形成された磁性体271とドナーフィルム280に形成された電磁石(図示せず)に形成された電気配線に電力を印加させることで、前記アクセプタ基板270と前記ドナーフィルムの間に形成される磁気的引力でアクセプタ基板270とドナーフィルム280の間を接合させる段階である。
【0036】
前記電磁石は、基材基板または光-熱変換層内部に少なくとも一つの棒または円筒状に形成される。この時、工程チャンバ200a内部は、真空状態を維持するので、ドナーフィルム280とアクセプタ基板270の間には異物や空間の発生が極小化され、転写効率が高くなる。
【0037】
転写段階は、アクセプタ基板270とラミネーションされたドナーフィルム280上にレーザ照射装置210でレーザを照射してドナーフィルム280に形成された発光層をアクセプタ基板270の画素規定膜の一領域及び開口部に転写する段階である。レーザを照射する場合、ドナーフィルム280の光-熱変換層が膨れ上がるようになり、これによって、隣接した発光層もアクセプタ基板270方向に膨れ上がるようになって発光層がアクセプタ基板270に接触するようになることで転写がなされる(図2h)。
【0038】
以下では本発明による電磁石が含まれるレーザ熱転写ドナーフィルムを説明する。
ドナーフィルムは、アクセプタ基板に転写される転写層が具備されたフィルムで、順次積層された基材基板、光-熱変換層及び転写層を含んで構成される。この時、性能向上のために光-熱変換層と転写層の間にバッファー層(図示せず)及び層間挿入層などがさらに含まれることができる。
【0039】
本発明によるレーザ熱転写ドナーフィルムには電磁石が含まれる。この場合、ドナーフィルムを成す多くの層の間に少なくとも一つの電磁石が形成される。
【0040】
図3は、本発明によるレーザ転写用ドナーフィルムの第1実施例を示した断面図である。
図3を参照すれば、ドナーフィルムは基材基板310、光-熱変換層320、電磁石330、層間挿入層340及び転写層350で構成される。
【0041】
基材基板310は、ドナーフィルムの支持体役割を遂行する基板で、透明性高分子からなり、厚さは10μmないし500μmであることが好ましい。この時、ポリエステル、ポリアクリル、ポリエポキシ、ポリエチレン、ポリスチレンなどを透明性高分子として使用することができるがこれに制限されない。
【0042】
光-熱変換層320は、レーザ光を吸収して熱に変換させる光吸収性物質からなる層で、光-熱変換層320の厚さは、使われる光吸収性物質及び形成方法によって異なるが、金属または金属の酸化物などからなる場合には、真空蒸着法、電子ビーム蒸着方、またはスパッタリングで100Åないし5000Åに形成され、有機膜に形成される場合には、圧出、グラビア、スピン、ナイフコーティング法で0.1μmないし2μmで形成されることが好ましい。
【0043】
光-熱変換層320の厚さが前記範囲より薄く形成される場合には、エネルギー吸収率が低くて光に熱に変換されるエネルギーの量が少なくなって膨脹圧力が低くなり、前記範囲より厚く形成される場合には、ドナーフィルムとアクセプタ基板の間で発生する段差によるエッジオープン不良(bad edge open)が発生し得る。
【0044】
金属または金属の酸化物などからなる光吸収性物質としては、光学濃度が0.1ないし0.4のもので、アルミニウム、銀、クロム、タングステン、スズ、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、金、銅、モリブデン、鉛及びその酸化物等がある。
【0045】
また、有機膜からなる光合性物質では、カーボンブラック、黒鉛または赤外線染料が添加された高分子がある。この時、高分子結合樹脂を形成する物質では、例示的にアクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなどのような(メタ)アクリレートオリゴマー、または前記オリゴマー(メタ)アクリレートモノマーの混合物があり、これに制限されるのではない。
【0046】
磁石330は、後述するアクセプタ基板に挿入される磁性体と互いに磁気力を形成させるために挿入される層である。
【0047】
図面には示されなかったが、バッファー層は、転写層の転写特性向上及び転写後のデバイス寿命向上のために磁石330と転写層350の間に導入される層で、金属酸化物、金属硫化物または非金属無機化合物や高分子または低分子有機物が使用されうる。
【0048】
中間挿入層340は、光-熱変換層320を保護するためのもので、高い熱抵抗を持つことが好ましく、有機または無機膜で構成されうる。
【0049】
転写層350は、ドナーフィルムから分離してアクセプタ基板に転写される層で、有機発光素子の製作に利用される場合、発光層を形成するためには高分子または低分子有機発光物質からなることができる。また、電子輸送層ETL、電子注入層EIL、正孔輸送層HTL、正孔注入層HILを形成するためには、それぞれに適する材料からなることができる。この時、各転写層の材料は限定的ではなく、当業者が容易に追求できるどんな材料も可能であり、圧出、グラビア、スピン、ナイフコーティング、真空蒸着、CVD等の方法によって形成可能である。
【0050】
前述したように、磁石330をドナーフィルムに挿入させることで、ドナーフィルムは磁性を持つようになって、アクセプタ基板上部に位置される時磁性体が挿入されたアクセプタ基板と相互磁気的引力を形成する。よって、ドナーフィルムとアクセプタ基板を磁力によって密着されるようにする。
【0051】
図4は、本発明によるレーザ転写用ドナーフィルムの第2実施例を示した断面図である。図4を参照すれば、図3で電磁石330が光-熱変換層320と層間挿入層340の間に形成されるものとは異なって、基材基板410と光-熱変換層430の間に電磁石420が形成されている。各層の機能は図3と同様であるから、これに対する詳細な説明は略する。
【0052】
図5は、本発明によるアクセプタ基板の第1実施例を示した断面図である。
図5を参照してアクセプタ基板上の構造を説明すれば、基板500上にはバッファー層502が形成され、前記バッファー層502が形成された面と対向する基板500の他面に磁性体501を含む層が形成されている。
【0053】
前記磁性体501は、Fe、Ni、Cr、FeO、FeO、CoFeO、磁性ナノ粒子及びその混合物で構成されるグループより選ばれるいずれか一つである。この中で、磁性ナノ粒子はスピンコーティング、E-Beam蒸着、またはインクジェット方法を利用して形成する。
【0054】
そして、前記バッファー層502の一領域上には、アクティブチャンネル層503aとオーミックコンタクト層503bの間にLDD層(図示せず)を含む半導体層が形成される。前記半導体層上には、ゲート絶縁層504とゲート電極505がパターニングされて順次形成される。前記ゲート電極505上に形成され、前記半導体層の中でオーミックコンタクト層503bが露出するように形成された層間絶縁膜506と、露出した前記オーミックコンタクト層503bに接触されるようにソース及びドレイン電極507a、507bが前記層間絶縁膜506の一領域上に形成される。
【0055】
また、層間絶縁膜506上に平坦化膜508を形成し、前記平坦化膜508上には前記平坦化膜508の一領域をエッチングして前記ドレイン電極507bが露出するように形成されたビアホール(図示せず)を通じて前記ドレイン電極507bと第1電極層509が電気的に連結される。前記第1電極層509は、前記平坦化膜508の一領域に形成され、前記平坦化膜508上に前記第1電極層509を少なくとも部分的に露出させる開口部511が形成された画素規定膜510が形成されている。
【0056】
図6及び図7は、本発明によるアクセプタ基板の他の実施例を示した断面図で、図5と同じ構成に対する説明は略する。
図6は、本発明によるアクセプタ基板の第2実施例を示した断面図である。図6は、基板600とバッファー層602の間にFe、Ni、Cr、FeO、FeO、CoFeO、磁性ナノ粒子及びその混合物で構成されるグループより選ばれるいずれか一つに形成される磁性体801が形成されている。
【0057】
図7は、本発明によるアクセプタ基板の第3実施例を示した断面図である。図7を参照すれば、アクセプタ基板700上には少なくとも一つの画素領域770を具備する画像表示部760、走査駆動部740、データ駆動部730、駆動電源710、基底電源720などが形成されている。
【0058】
アクセプタ基板700上に形成された駆動電源710外郭領域と、画像表示部760の画素領域770以外の領域の中で少なくともいずれか一つ以上の面に磁力支持用メタルライン750が形成される。磁力支持用メタルライン750は磁性体で、前記磁性体はFe、Ni、Cr、FeO、FeO、CoFeO、磁性ナノ粒子及びその混合物で構成されるグループより選ばれるいずれか一つである。
【0059】
走査駆動部740は、各画素領域770内の有機発光素子(図示せず)を駆動するための選択信号を制御し、制御された選択信号を走査線に供給する。選択信号は、走査線を通じて各画素領域770内のスイッチング素子(図示せず)に伝達されてスイッチング素子がターンオンまたはターンオプされるように機能する。
【0060】
そして、データ駆動部730は、各画素領域770の画像信号を示したデータ電圧または電流を制御し、制御されたデータ電圧または電流を各データ線に供給する役割をする。
【0061】
図8aないし図8eは、本発明による有機発光素子の製造方法を説明するための断面図である。
図8aのように、本発明によるレーザ熱転写方法によって発光層を形成する時には、まず、磁性体801が含まれたアクセプタ基板を準備する。
【0062】
アクセプタ基板は、前述したように、基板800上に薄膜トランジスターが形成され、前記薄膜トランジスターと対向する基板800の他面に磁性体801が形成されている。前記磁性体801は、ナノ粒子からなることができ、スピンコーティング、E-Beam蒸着、またはインクジェット方法を利用して形成する。そして、前記薄膜トランジスター上に第1電極層809及び前記第1電極層809の少なくとも一領域が露出された開口部810を具備する画素規定膜811が形成されている。
【0063】
その後、図8bのように、アクセプタ基板上にドナーフィルム820をラミネーションさせる。ドナーフィルム820と基板の間に密着特性が良いほど後続転写工程での転写効率が向上するので、ドナーフィルム820の電磁石822とアクセプタ基板の磁性体801の間に作用する磁気力によって密着特性がよくなる。
【0064】
本発明の実施例によるドナーフィルム820は、基材基板821、電磁石822、光-熱変換層823、層間挿入層824、転写層825で構成されているが、電磁石を含むことができるドナーフィルムの他の構造を適用しても良いのは勿論である。
【0065】
以後、図8cのように、アクセプタ基板とドナーフィルム820がラミネーションされた状態で、ドナーフィルム820上から発光層825が転写される領域のみに局所的にレーザを照射する。レーザが照射されれば、前記光-熱変換層823がアクセプタ基板方向に膨脹することによって転写層825も膨脹され、レーザが照射された領域の転写層825がドナーフィルム820から分離しながらアクセプタ基板に転写される。
【0066】
そして、図8dのように、アクセプタ基板上に転写層825bが転写されれば、ドナーフィルム820とアクセプタ基板を分離させる。分離されたアクセプタ基板上には、画素規定膜811の少なくとも一領域及び開口部に転写層825bが形成されており、ドナーフィルム820上にはレーザが照射された領域の転写層825bのみ転写されて残りの部分825aはそのままドナーフィルム820上に残される。
【0067】
最後に、図8eのように、アクセプタ基板上に転写層825bが転写された後、前記転写層である発光層825b上に第2電極層832を形成し、有機発光素子を保護できるように封止膜830を形成する。前記封止膜830の内面には吸収部材831が形成されており、前記吸収部材831は、有機発光素子に浸透する水気などを吸収する役割をする。これによって、有機発光素子の発光層825bが水気などによって損傷及び腐食されることを防止することができる。
【0068】
前記実施例ではアクセプタ基板下部に磁性体が形成されたことを説明したが、アクセプタ基板上部に磁性体が形成されても良いのは勿論である。
【0069】
以上添付した図面を参照して本発明について詳細に説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということを理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来の技術によるレーザ熱転写装置の部分断面図である。
【図2a】本発明の一側面によるレーザ熱転写方法を説明するための工程の段階別断面図である。
【図2b】本発明の一側面によるレーザ熱転写方法を説明するための工程の段階別断面図である。
【図2c】本発明の一側面によるレーザ熱転写方法を説明するための工程の段階別断面図である。
【図2d】本発明の一側面によるレーザ熱転写方法を説明するための工程の段階別断面図である。
【図2e】本発明の一側面によるレーザ熱転写方法を説明するための工程の段階別断面図である。
【図2f】本発明の一側面によるレーザ熱転写方法を説明するための工程の段階別断面図である。
【図2g】本発明の一側面によるレーザ熱転写方法を説明するための工程の段階別断面図である。
【図2h】本発明の一側面によるレーザ熱転写方法を説明するための工程の段階別断面図である。
【図3】本発明によるレーザ転写用ドナーフィルムの第1実施例を示した断面図である。
【図4】本発明によるレーザ転写用ドナーフィルムの第2実施例を示した断面図である。
【図5】本発明によるアクセプタ基板の第1実施例を示した断面図である。
【図6】本発明によるアクセプタ基板の第2実施例を示した断面図である。
【図7】本発明によるアクセプタ基板の第3実施例を示した断面図である。
【図8a】本発明の他の側面による有機発光素子の製造方法を説明するための断面図である。
【図8b】本発明の他の側面による有機発光素子の製造方法を説明するための断面図である。
【図8c】本発明の他の側面による有機発光素子の製造方法を説明するための断面図である。
【図8d】本発明の他の側面による有機発光素子の製造方法を説明するための断面図である。
【図8e】本発明の他の側面による有機発光素子の製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0071】
200a:工程チャンバ
200b:移送チャンバ
222:第1装着ホーム
221:第2装着ホーム
270:アクセプタ基板
271:磁性体
280、820:ドナーフィルム
330、420:電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程チャンバ内の基板ステージ上に少なくとも一面に磁性体が形成されたアクセプタ基板を位置させる段階と、
前記アクセプタ基板上に電磁石を含むドナーフィルムを位置させる段階と、
前記ドナーフィルムに形成された電磁石と前記アクセプタ基板の磁性体の間に作用する磁気力によって前記ドナーフィルムと前記アクセプタ基板をラミネーションする段階と、
前記ドナーフィルム上にレーザを照射して転写層の少なくとも一領域をアクセプタ基板上に転写させる段階と、
を含むことを特徴とするレーザ熱転写方法。
【請求項2】
前記ドナーフィルムは、
基材基板と、
前記基材基板上に形成される光-熱変換層と、
前記光-熱変換層上に形成される転写層と、
前記光-熱変換層の少なくともいずれか一面に形成された電磁石を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写方法。
【請求項3】
前記光-熱変換層と前記転写層の間に層間挿入層をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のレーザ熱転写方法。
【請求項4】
前記電磁石を基材基板または光-熱変換層内部に少なくとも一つの棒または円筒状で形成することを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写方法。
【請求項5】
前記電磁石は、
電圧を印加するための電気配線が含まれることを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写方法。
【請求項6】
前記磁性体は、
Fe、Ni、Cr、FeO、FeO、CoFeO、磁性ナノ粒子及びその混合物で構成されるグループより選ばれるいずれかひとつであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写方法。
【請求項7】
前記磁性ナノ粒子は、
スピンコーティング、電子ビーム蒸着、またはインクジェット方法を利用して形成することを特徴とする請求項6に記載のレーザ熱転写方法。
【請求項8】
前記アクセプタ基板に形成された駆動電源外郭領域と、
画像表示部の画素領域以外の領域の中で少なくともいずれか一つ以上の面に形成される磁力支持用メタルラインを含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写方法。
【請求項9】
前記工程チャンバは、
真空チャンバであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写方法。
【請求項10】
レーザ熱転写方法によって第1電極と第2電極の間に発光層が形成される有機発光素子の製造方法において、
基板ステージ上に画素領域が形成されて、磁性体を含むアクセプタ基板を位置させるアクセプタ基板移送段階と、
前記アクセプタ基板上に電磁石を含み、発光層を具備したドナーフィルムを移送させるドナーフィルム移送段階と、
前記アクセプタ基板に形成された前記磁性体と前記ドナーフィルムに含まれた前記電磁石の間の磁気力によって前記アクセプタ基板と前記ドナーフィルムとを接合するラミネーション段階と、
前記ドナーフィルムにレーザを照射して前記アクセプタ基板の前記画素領域に前記発光層を転写する転写段階と、
を含むことを特徴とするレーザ熱転写方法を利用した有機発光素子の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【公開番号】特開2007−141808(P2007−141808A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99087(P2006−99087)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】