レーザ発振装置とレーザ加工機
【課題】より短い起動時間で安定した加工性能を発揮できるレーザ発振装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内部でレーザ媒質3に放電を行う放電管1と、前記放電管1を挟む方向に配置した全反射鏡6と部分透過鏡5とで前記レーザ媒質3からのレーザビームをレーザ発振する光共振器と、前記全反射鏡6と前記部分透過鏡5をそれぞれ保持するフランジ7と、前記フランジ7に冷却媒質14を循環させる冷却配管13と、前記冷却配管13に接続した冷却装置12を備え、前記冷却配管13に前記冷却媒質14の流量を調整する流量調整器15を設けたものである。
【解決手段】内部でレーザ媒質3に放電を行う放電管1と、前記放電管1を挟む方向に配置した全反射鏡6と部分透過鏡5とで前記レーザ媒質3からのレーザビームをレーザ発振する光共振器と、前記全反射鏡6と前記部分透過鏡5をそれぞれ保持するフランジ7と、前記フランジ7に冷却媒質14を循環させる冷却配管13と、前記冷却配管13に接続した冷却装置12を備え、前記冷却配管13に前記冷却媒質14の流量を調整する流量調整器15を設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ発振装置とレーザ加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ発振装置ならびにレーザ加工機は、レーザビームの品質が良いことから、金属材料や樹脂、木材などの非金属材料にいたるまで、切断、溶接・溶着、スクライビングといった広範囲に渡る加工に応用されてきている。特にガス溶断、プラズマ切断、金属バイトによる切断加工、型を用いた抜き加工などと比較し、レーザ加工は高精度、高品質、金型不要など、多くの長所を備えており、幅広い業界に導入されつつある。
【0003】
そのような中で、レーザ発振装置はレーザビームを作り出すためのミラーの相対位置を精密に保持することが必要であるが、周囲温度が高温の場合や低温の場合においては、ミラーを保持する部品の温度変化による膨張、収縮により相対位置が変動するという問題点が存在した。ミラーの相対位置が変動することにより、レーザビームの品質悪化、出力低下などを引き起こし、レーザ加工能力を低下させることとなっていた。
【0004】
従来のレーザ発振装置は、ミラー相対位置の安定化のため、ミラー保持部品の一部に冷却媒質を通過させ温度を均一にすることで、温度変化による膨張、収縮を防止していた。(例えば特許文献1参照)
図16は従来のレーザ発振装置を示しており、この従来のレーザ発振装置は、放電管101、電極102、放電管101内部に充填されたレーザ媒質103、電極102に接続された電源104、部分透過鏡105、全反射鏡106、フランジ107、フランジ107同士を接続する結合棒108、フランジ107、結合棒108などを支える支持体109、部分透過鏡105、全反射鏡106を保持するホルダ110、放電管101を保持するブロック111、冷却装置112、冷却装置112に接続された冷却配管113、冷却配管113内部を循環する冷却媒質114を備えている。
【0005】
以上のように構成されたレーザ発振装置について、その動作を説明する。
【0006】
放電管101には電極102を介して電源104が接続されており、電源104により放電管101内に充填されているレーザ媒質103に電力が注入され、放電が発生する。この放電の電気エネルギーによりレーザ媒質103が励起され反転分布となり、部分透過鏡105と全反射鏡106の間を光が往復することによりレーザ発振状態となる。発生したレーザビームの一部は部分透過鏡105から外部へと取り出され、レーザ加工に用いられる。
【0007】
部分透過鏡105と全反射鏡106の間でレーザビームを反射、往復させるために、両者は平行に配置される必要がある。そのため、部分透過鏡105と全反射鏡106は、それぞれホルダ110に嵌め込まれたうえで、ホルダ110をフランジ107に取付けて固定している。さらにフランジ107同士を結合棒108により、平行となるように固定している。
【0008】
部分透過鏡105と全反射鏡106の間には、放電管101が設けられるが、放電の電気エネルギーを効率よくレーザビームに変換するために、放電管101は部分透過鏡105と全反射鏡106と同心軸上となるように、ブロック111によって保持している。そしてこれら各構成部品は、全体を支える基礎となる支持体109によって支持される構成となっていた。
【0009】
また、このとき部分透過鏡105と全反射鏡106付近でのレーザビームの散乱光により、各部品の温度が上昇していた。その温度上昇を抑制するために、フランジ107、ホルダ110を冷却媒質114により冷却していた。
【0010】
この制御として、まず冷却装置112を運転開始して、冷却配管113を通して冷却媒質114の循環を始めていた。通常、レーザ発振を行うとレーザビームの散乱光により、部分透過鏡105と全反射鏡106付近の部品の温度が上昇するので、レーザ発振前に冷却装置112を運転させるよう制御していた。
【特許文献1】特開平11−54818号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来のレーザ発振装置では、通常運転時における安定状態の温度に対して、周囲温度が高温あるいは低温の状態で装置を起動させた場合に、部分透過鏡105と全反射鏡106の平行度が悪化し、レーザビームの品質低下、出力低下などを引き起こし、レーザ加工能力を低下させる、という課題を有していた。
【0012】
また、上記のような制御では、起動前の構成部品の温度が、冷却媒質114の温度に対して、高温あるいは低温のように大きく差が生じている場合に、冷却媒質114が冷却している部品が温度変化を生じることとなっていた。
【0013】
例えば、通常冷却媒質114は20〜25℃の温度で設定されている。これに対し、周囲温度が50℃などのように高温になっていた場合、停止時のレーザ発振装置内部の構成部品も同様に50℃となっている。この状態で、冷却装置112を運転させると、フランジ107、ホルダ110に冷却媒質114が流れるが、50℃となっていたフランジ107、ホルダ110に、20〜25℃の冷却媒質114が流れるため、冷却媒質114に近い部分と離れている部分の間で温度差が生じ、ホルダ110、フランジ117の形状に歪みが発生する。
【0014】
これらホルダ110、フランジ117は、部分透過鏡105と全反射鏡106を保持し平行度を保っている部品であるが、その形状が歪むため平行度も悪化する。このようにして起動直後において過渡的に部分透過鏡105、全反射鏡106の平行度が悪化するため、レーザビームが充分に往復、反射することができず出力低下を招いたり、あるいはレーザビームの強度分布の均一性が崩れ、レーザビームの品質低下を発生させるなどして、レーザ加工能力を低下させることとなっていた。
【0015】
起動後、数十分経過するとホルダ110、フランジ117はじめ各部品が熱的に安定した状態に戻るので、部分透過鏡105と全反射鏡106の平行度も正常となるが、レーザ発振装置の性能を十分に発揮させるためには、このような待機時間が必要となる場合も存在していた。
【0016】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、より短い起動時間で安定した加工性能を発揮できるレーザ発振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明のレーザ発振装置は、内部でレーザ媒質に放電を行う放電管と、前記放電管を挟む方向に配置した全反射鏡と部分透過鏡とで前記レーザ媒質からのレーザビームをレーザ発振する光共振器と、前記全反射鏡と前記部分透過鏡をそれぞれ保持するフランジと、前記フランジに冷却媒質を循環させる冷却配管と、前記冷却配管に接続した冷却装置を備え、前記フランジに温度検出器を2つ以上設け、前記冷却配管に前記冷却媒質の流量を調整する流量調整器を設け、前記それぞれの温度検出器の検出した温度に応じて、前記流量調整器を制御するものである。
【0018】
そしてこの構成により、フランジの温度変化を検出して流量調整器により冷却媒質の流れを制御できるので安定した加工性能を発揮できる。また。起動時に冷却媒質が急激に流れることを防止できるため、より短い起動時間で安定した加工性能を発揮できるレーザ発振装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明は、起動時のフランジなどの温度変化による形状の歪み発生を防止でき、レーザ発振装置を短い起動時間で安定した加工性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態1のレーザ発振装置を示しており、実施の形態1のレーザ発振装置は、内部でレーザ媒質3に放電を行う放電管1、放電管1の内部に配置した電極2、放電管1内部に充填されたレーザ媒質3、電極2に接続した電源4、放電管1を挟む方向に配置し光共振器を構成する部分透過鏡5と全反射鏡6、部分透過鏡5と全反射鏡6をホルダ10を介して保持するフランジ7、フランジ7同士を接続する結合棒8、フランジ7と結合棒8などを支える支持体9、部分透過鏡5と全反射鏡6を保持しフランジ7に取り付けたホルダ10、放電管1を保持するブロック11、冷却装置12、冷却装置12に接続してフランジ7に冷却媒質14を循環させる冷却配管13、冷却配管13内部を循環する冷却媒質14、冷却配管13の途中に設けて冷却媒質14の流量を調整する流量調整器15を備えている。
【0022】
この放電管1には電極2を介して電源4が接続されており、電源4により放電管1内に充填されているレーザ媒質3に電力が注入され放電が発生し、レーザ媒質3が励起され反転分布となり、部分透過鏡5と全反射鏡6の間を光が往復することによりレーザ発振状態となる。発生したレーザビームの一部は部分透過鏡5から外部へと取り出され、レーザ加工に用いられる。
【0023】
部分透過鏡5と全反射鏡6の間でレーザビームを反射、往復させるために、両者は平行に配置される必要がある。そのため、部分透過鏡5と全反射鏡6は、それぞれホルダ10に嵌め込まれたうえで、ホルダ10をフランジ7に取付けて固定している。さらにフランジ7同士を結合棒8により、平行となるように固定している。
【0024】
部分透過鏡5と全反射鏡6の間には、放電管1が設けられるが、放電の電気エネルギーを効率よくレーザビームに変換するために、放電管1は部分透過鏡5と全反射鏡6と同心軸上となるように、ブロック11によって保持している。そしてこれら各構成部品は、全体を支える基礎となる支持体9によって支持される構成となっていた。
【0025】
また、部分透過鏡5と全反射鏡6付近で発生するレーザビームの散乱光による、各部品の温度上昇を抑制するために、流量調整器15を通過した後の冷却媒質14により、フランジ7、ホルダ10を冷却している。
【0026】
そして、フランジ7には温度検出器25を2つ以上設け、それぞれの温度検出器25の検出した温度に応じて、冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けている。
【0027】
なお、この制御部21は、それぞれの温度検出器25と接続し、流量調整器15と接続している。
【0028】
従来のレーザ発振装置では、通常運転時における安定状態の温度に対して、周囲温度が高温あるいは低温の状態で装置を起動させた場合に、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度が悪化し、レーザビームの品質低下、出力低下などを引き起こし、レーザ加工能力を低下させるという問題を発生させていた。これは、冷却媒質14の温度に対して、フランジ7、ホルダ10が高温あるいは低温のように大きく差が生じていることにより、フランジ7、ホルダ10自身に熱勾配が生じ、熱膨張により変形するためであった。フランジ7、ホルダ10は部分透過鏡5と全反射鏡6を保持し平行度を保っている部品であるため、それらが変形することで、平行度が悪化しレーザビームの品質低下、出力低下を発生させていた。
【0029】
これに対して本発明の実施の形態1では、フランジ7に2つ以上の温度検出器25を配置して、フランジ7の温度購買を検出し、更に冷却媒質14が循環する冷却配管13の途中に、流量調整器15を設けた構成としている。そのため、冷却媒質14が起動時に急激に流れることを防止できるため、フランジ7、ホルダ10が極端な熱勾配を生じて変形を起さないように、制御を行うことが可能となる。
【0030】
したがって、レーザ発振装置を周囲温度が高温あるいは低温の状態で装置を起動させた場合においても、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度の悪化を発生させることがなく、レーザビームの品質低下、出力低下など防止でき、安定したレーザ加工能力を実現できる。
【0031】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図2を用いて説明する。
【0032】
なお、本実施の形態2において実施の形態1と同様な構成については図1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図2に示すように、本実施の形態2の特徴とする点は、放電管1が放電している場合のみ冷却媒質14を流すように流量調整器15を開閉する点である。
【0034】
通常、レーザ発振装置の起動と同時に冷却装置12の運転を開始する。従来のレーザ発振装置では、冷却装置12の運転により、フランジ7、ホルダ10にも冷却媒質14が流れる。しかし実施の形態2においては冷却配管13途中に流量調整器15を設けているため、冷却装置12を運転しただけではフランジ7、ホルダ10に冷却媒質14は流れない。放電管1が放電している場合のみ流量調整器15が開くシーケンスとしている。
【0035】
レーザ発振中はレーザ媒質3に電力が注入される。この注入された電力は、一部がレーザビームに変換されるが残りのエネルギーは熱となる。放電管1が放電しレーザ発振させているときはレーザ発振装置が発熱することとなる。そのため、レーザ発振装置が熱的に安定した状態において、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を保持する必要がある。元来、冷却媒質14はレーザ発振中の部分透過鏡5と全反射鏡6近傍で発生する散乱光による温度上昇を防止するためのものであるので、放電、発振時のみに流せばよい。放電時以外のタイミングで冷却媒質14が流れていると、フランジ7、ホルダ10の温度分布が放電中の状態と異なるので、熱膨張により部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度が悪化するという問題点が存在する。
【0036】
本発明の実施の形態2では、放電管1が放電している場合のみ流量調整器15が開くシーケンスとしているので、上記問題点を防止し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0037】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図3を用いて説明する。
【0038】
なお、本実施の形態3において実施の形態1、2と同様な構成については図1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
本実施の形態3の特徴とする点は、流量調整器15として、電気的信号で開閉する弁を使用する点である。
【0040】
図3に示すように、冷却配管13途中に設けられた流量調整器15は、電磁コイル16、電気配線17、弁18、ケース19、バネ20を備えている。
【0041】
電気配線17は流量調整器15を制御する回路(図示せず)に接続され、電力が回路から供給される。この電力が電磁コイル16に供給されることにより、磁力が発生する。弁18の成分は磁性体であり、電磁コイル16に発生する磁力により上方向に引き上げられる。電磁コイル16に磁力が発生していない場合は、弁18はバネ20の力により下方向に押さえつけられている。弁18はケース19の冷却媒質14通過部を開閉する場所に設けられているため、上記回路からの電気的信号による制御で弁を容易に開閉させることができ、流量調整器15の操作性を向上させることが可能となる。
【0042】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図4を用いて説明する。
【0043】
なお、本実施の形態4において実施の形態1から3と同様な構成については図1から図3と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、本実施の形態4の特徴とする点は、放電管1の放電開始後の経過時間を計測し、放電管1の放電開始から一定時間経過後に、7フランジに冷却媒質14を流すように流量調整器15を制御する制御部21を設けたことである。
【0045】
この制御部21は、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0046】
実施の形態2で述べたように、放電時以外のタイミングで冷却媒質14が流れていると、フランジ7、ホルダ10の温度分布が放電中の状態と異なるので、熱膨張により部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度が悪化する。実施の形態2では、放電管1が放電している場合のみ流量調整器15が開くシーケンスとすることで、上記平行度の悪化を防止していたが、実際にはレーザ発振装置の温度上昇は、放電からしばらく時間が経過してから発生する。
【0047】
そこで、本実施の形態4では、制御部21に放電開始後の経過時間を計測する機能を持たせ、放電開始後一定時間が経過してから、流量調整器15を開くよう制御することで、フランジ7、ホルダ10の熱収縮による変形を、よりきめ細かく防止することができ、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0048】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図5を用いて説明する。
【0049】
なお、本実施の形態5において実施の形態1から4と同様な構成については図1から図4と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
本実施の形態5の特徴とする点は、流量調整器15として、冷却媒質14の流量を全閉から全開まで連続的に調節できるものを用いた点である。
【0051】
図5に示すように、冷却配管13途中に設けられた流量調整器15は、本体にオネジが設けられた弁22、ケース19に設けられたメネジ部23を備えている。
【0052】
実施の形態1または3における流量調整器15は開閉のみで、冷却媒質14の制御を行っていた。この場合だと、冷却媒質14は流れているか、流れていないかの2種類の状態のみであり、制御が大雑把なものとなっていた。
【0053】
本実施の形態5では、流量調整器15の弁22にオネジが設けられ、弁22が取り付けられているケース19側にメネジ23が設けられている。このため、弁22を回転させることにより、冷却媒質14の流量を連続的に変化させることができるので、フランジ7、ホルダ10の温度分布を、よりきめ細かく制御し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0054】
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、図6を用いて説明する。
【0055】
なお、本実施の形態6において実施の形態1から5と同様な構成については図1から図5と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
本実施の形態6の特徴とする点は、流量調整器15として、冷却媒質14の流量を全閉から全開まで連続的に調節できる電気的信号で開閉する弁を使用する点である。
【0057】
図6に示すように、冷却配管13途中に設けられた流量調整器15は、制御部21(図示せず)に接続した電気配線17、ケース19、本体にオネジが設けられた弁22、ケース19に設けられたメネジ部23、弁22に取り付けられたモータ24を備えている。
【0058】
このように、流量調整器15の弁22にオネジが設けられ、弁22が取り付けられているケース19側にメネジ23が設けられている。このため、弁22をモータ24で回転させることにより、冷却媒質14の流量を連続的に変化させることができる。
【0059】
そして、このモータ24を制御部21に接続しているので、例えばレーザ発振装置内部の温度に応じて、冷却媒質14流量を変化させることができるなど、よりきめ細かくフランジ7、ホルダ10の温度分布制御でき、さらにモータ24により、弁22を電気的信号により開閉させることができるため、流量調整器15の操作性を向上させることが可能となる。
【0060】
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7について、図7を用いて説明する。
【0061】
なお、本実施の形態7において実施の形態1から6と同様な構成については図1から図6と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
本実施の形態7の特徴とする点は、フランジ7に温度検出器25を2つ設け、温度検出器25で検出した温度に応じ、フランジ7に冷却媒質14を流すように流量調整器15を制御する制御部21を設けた点である。
【0063】
図7に示すように、この制御部21は、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15とともに温度検出器25と接続している。
【0064】
この温度検出器25により、フランジ7の温度を検知する。この温度の情報は制御部21に送られ、レーザ発振装置が熱的平衡状態にあるかどうかが計算される。
【0065】
そして、熱的平衡状態よりも温度が高ければ、制御部21からの信号により、流量調整器15が開となり、冷却媒質14がフランジ7に流れ冷却する。また熱的平衡状態よりも温度が低ければ、制御部21からの信号により、流量調整器15が閉となり、冷却媒質14は流れない。
【0066】
このようにして、フランジ7の表面温度を一定に制御することができるので、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0067】
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8について、図8を用いて説明する。
【0068】
なお、本実施の形態8において実施の形態1から7と同様な構成については図1から図7と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図8に示すように、本実施の形態8の特徴とする点は、フランジ7に温度検出器25を2つ設け、温度検出器25で検出した温度に応じ、フランジ7に流れる冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けた点である。
【0070】
この制御部21は、温度検出器25と接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15(具体的には、流量調整器15を駆動するモータ24)と接続している。
【0071】
本実施の形態8では、流量調整器15として上述した実施の形態5、6に示した連続的に冷却媒質14の流量を調整できる流量調整器15を用い、制御部21により温度検出器25で検知したフランジ7表面の温度状態により、弁22をモータ24などで制御する構成としている。
【0072】
実施の形態7では、冷却媒質14が流れているか、流れていないかの2種類のみであったが、本実施の形態8では、冷却媒質14流量を連続的に制御できるので、よりきめ細かく制御し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0073】
(実施の形態9)
以下、本発明の実施の形態9について説明する。
【0074】
なお、本実施の形態9において実施の形態1から8と同様な構成については図1から図8と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
本実施の形態9の特徴とする点は、上述した実施の形態7の温度検出器25として、熱電対を使用したことを特長としている。
【0076】
熱電対であれば、一般に広く普及しているため安価なコストで調達することが可能となり、性能の向上したレーザ発振装置を低価格で供給することができる。
【0077】
(実施の形態10)
以下、本発明の実施の形態10について、図9を用いて説明する。
【0078】
なお、本実施の形態10において実施の形態1から9と同様な構成については図1から図8と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
本実施の形態10の特徴とする点は、冷却媒質14の温度を検出する温度検出器26を設け、フランジ7に設けた温度検出器25と冷却媒質14の温度を検出する温度検出器26の温度差により冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けたことである。
【0080】
この制御部21は、温度検出器25と温度検出器26と接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0081】
また、図9に示すように、冷却媒質14の温度を検出する温度検出器26は、冷却配管13途中に設けている。
【0082】
上述した実施の形態7で、フランジ7の温度に応じて冷却媒質14の流量を制御したが、冷却媒質14とフランジ7の温度差が大きいと、流量調整器15を閉じても、フランジ7の温度変化が目標値に対してオーバーシュートする場合が存在する。
【0083】
このため本実施の形態10では、温度検出器26により冷却媒質14の温度も検知し、フランジ7との温度差に応じて流量調整器15の開閉のタイミングを変化させることができるようにしたものである。
【0084】
これにより、フランジ7の温度変化が目標値に対してオーバーシュートを起こしそうな場合には、流量調整器15を閉じるタイミングを早めるなどの対応ができ、よりきめ細かく制御し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0085】
(実施の形態11)
以下、本発明の実施の形態11について、図10を用いて説明する。
【0086】
なお、本実施の形態11において実施の形態1から10と同様な構成については図1から図9と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
図10に示すように、本実施の形態11の特徴とする点は、フランジ7、冷却配管13、冷却装置12を結ぶ冷却媒質14の経路を2つ以上備え、全ての冷却媒質14の経路の途中に流量調整器15を配置したことである。
【0088】
上述した実施の形態1において冷却媒質14の経路は、各フランジ7などを直列に接続していた。
【0089】
本実施の形態11では、冷却配管13、流量調整器15を、フランジ7ごとに独立した経路としている。
【0090】
レーザ発振装置内部は、通常、一定温度になるように冷却されているが、厳密には、内部において温度分布が全く均一とはなっていない。そのためフランジ7、ホルダ10などが複数存在する場合には、その配置されている場所によって、個々の温度が異なっている。本実施の形態11では個々の経路毎に、各部品を独立して冷却、温度制御することができるので、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
(実施の形態12)
以下、本発明の実施の形態12について、図11を用いて説明する。
【0091】
なお、本実施の形態12において実施の形態1から11と同様な構成については図1から図10と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
図11に示すように、本実施の形態12の特徴とする点は、フランジ7に温度検出器25を2つ以上設け、それぞれの温度検出器25の検出した温度に応じて、それぞれの経路の冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けたことである。
【0093】
この制御部21は、それぞれの温度検出器25と接続し、また、電源4による放電や、それぞれの流量調整器15などを制御するように電源4、それぞれの流量調整器15と接続している。
【0094】
フランジ7自身の温度分布は、その場所によって差が生じている。フランジ7の温度分布に差があると、熱膨張により変形が発生し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を悪化させる原因となっていることは既に述べたとおりである。より厳密に、フランジ7の温度分布を均一化させるために、本実施の形態12は、フランジ7に2つ以上の温度検出器25を設け、さらにその温度差によって、フランジ7に設けられた2つ以上の冷却配管13に流れる冷却媒質14の流量を、流量調整器15によって、独立して制御する構成としているので、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度をより精度良く維持することが可能となる。
【0095】
(実施の形態13)
以下、本発明の実施の形態13について、図12を用いて説明する。
【0096】
なお、本実施の形態13において実施の形態1から12と同様な構成については図1から図11と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
図12に示すように、本実施の形態13の特徴とする点は、フランジ7にレーザ発振に必要な全反射鏡6と部分透過鏡5の平行度を検出する平行度検出器27を設け、その平行度に応じてそれぞれの経路の冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けたことである。
【0098】
この制御部21は、平行度検出器27と接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0099】
また、平行度検出器27は、フランジ7に取り付けてフランジ7の平行度を全反射鏡6と部分透過鏡5の平行度として検出するようにしている。
【0100】
上述した実施の形態11は、フランジ7、ホルダ10など各部品を独立して冷却する構成としていた。元来、これは部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持するためである。部分透過鏡5と全反射鏡6はフランジ7に取り付けられているので、これはつまりフランジ7の平行度を維持するためであった。
【0101】
本実施の形態13は、フランジ7の平行度を平行度検出器27によって検知できるので、その平行度に応じて各フランジ7に流れる冷却媒質14の流量を制御し、平行度を直接監視しながら制御することが可能となる。
【0102】
(実施の形態14)
以下、本発明の実施の形態14について説明する。
【0103】
本実施の形態14は、上述した実施の形態13の平行度検出器27として、レーザ変位計を使用したことを特長としている。
【0104】
レーザ変位計は、一般に1〜2ミクロンの分解能を有している。フランジ7の平行度に求められる精度は数ミクロン単位であり、これを検出するには高精度の検出器が必要となるが、レーザ変位計であれば、その要求を満たすことができる。
【0105】
また一般に広く普及しているため安価なコストで調達することが可能となり、性能の向上したレーザ発振装置を低価格で供給することができる。
【0106】
(実施の形態15)
以下、本発明の実施の形態15について、図13を用いて説明する。
【0107】
なお、本実施の形態15において実施の形態1から14と同様な構成については図1から図12と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
図13に示すように、本実施の形態15の特徴とする点は、放電管1の内部のレーザ媒質3に放電を行うレーザ出力指令信号出力部21aからのレーザ出力指令信号により、冷却媒質14の流量調整を行う制御部21を設けたことである。
【0109】
この制御部21は、レーザ出力指令信号出力部21aからのレーザ出力指令信号を入力するように接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0110】
実施の形態1において、冷却媒質14の流量を流量調整器15により制御する構成としているが、これは部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持するためであった。フランジ7の温度が変化すると熱膨張による変形により、上記平行度が変化していた。フランジ7の温度を変化させる要因の一つとして、上述した実施の形態2で述べているように、レーザ媒質3に注入された電力のうちレーザビームに変換されなかった残りのエネルギーの熱があげられる。
【0111】
この熱はレーザ出力と相関があり、レーザ出力が高いほど、発生する熱も増大する関係がある。
【0112】
本実施の形態15では、レーザの出力指令信号を監視し、その信号に応じて冷却媒質14の流量を流量調整器15により調節することで、フランジ7の温度を周囲環境が変化しても安定させることができ、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0113】
(実施の形態16)
以下、本発明の実施の形態16について、図14を用いて説明する。
【0114】
なお、本実施の形態16において実施の形態1から15と同様な構成については図1から図13と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0115】
図14に示すように、本実施の形態16の特徴とする点は、放電管1の内部で発生する放電の電流信号を電流検出器(図示せず)で検出し、この検出により冷却媒質14の流量調整を行う制御部21を設けたことである。
【0116】
この制御部21は、電流検出器(図示せず)からの電流検出信号を入力するように接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0117】
前記実施の形態15において、レーザ出力指令信号に応じて冷却媒質14の流量を制御する構成としていた。
【0118】
実際には、レーザ出力は放電管1内部を流れる放電電流に依存している。つまり、レーザビームに変換されない残りのエネルギーの熱も、放電電流に依存していることとなる。
【0119】
そこで本実施の形態16では、放電管1内部の放電電流を制御する指令信号を監視し、その信号に応じて冷却媒質14の流量を流量調整器15により調節することで、フランジ7の温度を周囲環境が変化してもより安定させることができ、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0120】
(実施の形態17)
以下、本発明の実施の形態17について、図15を用いて説明する。
【0121】
図15は本実施の形態17におけるレーザ加工機の概要を示すもので、本実施の形態17におけるレーザ加工機は、上述した実施の形態1から16のいずれかのレーザ発振装置28と、このレーザ発振装置28からのレーザビーム32を被加工物31に反射して導く全反射鏡29と、全反射鏡29で反射したレーザビーム32を被加工物31に集光するレンズなどの集光手段30を備えている。
【0122】
レーザ発振装置28から出たレーザビーム32は全反射鏡29により集光手段30に導かれる。集光手段30により集光されたレーザビームは被加工物31に照射され、切断、溶接などが行われる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のレーザ発振装置およびレーザ加工機は、レーザ発振装置内部の全反射鏡や部分透過鏡を保持するフランジの冷却媒質配管途中に流量調整器を具備することにより、起動時のフランジなどの温度変化による形状の歪み発生を防止できるレーザ発振装置およびレーザ加工機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施の形態1におけるレーザ発振装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態2におけるシーケンス図
【図3】本発明の実施の形態3における流量調整器の詳細図
【図4】本発明の実施の形態4におけるレーザ発振装置の構成図
【図5】本発明の実施の形態5における流量調整器の詳細図
【図6】本発明の実施の形態6における流量調整器の詳細図
【図7】本発明の実施の形態7におけるレーザ発振装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態8におけるレーザ発振装置の構成図
【図9】本発明の実施の形態10におけるレーザ発振装置の構成図
【図10】本発明の実施の形態11におけるレーザ発振装置の構成図
【図11】本発明の実施の形態12おけるレーザ発振装置の構成図
【図12】本発明の実施の形態13におけるレーザ発振装置の構成図
【図13】本発明の実施の形態15におけるレーザ発振装置の構成図
【図14】本発明の実施の形態16におけるレーザ発振装置の構成図
【図15】本発明の実施の形態17におけるレーザ加工機の構成図
【図16】従来のレーザ発振装置の構成図
【符号の説明】
【0125】
1 放電管
2 電極
3 レーザ媒質
4 電源
5 部分透過鏡
6 全反射鏡
7 フランジ
8 結合棒
9 支持体
10 ホルダ
11 ブロック
12 冷却装置
13 冷却配管
14 冷却媒質
15 流量調整器
16 電磁コイル
17 電気配線
18 弁
19 ケース
20 バネ
21 制御部
22 弁
23 ケースメネジ部
24 モータ
25、26 温度検出器
27 平行度検出器
28 レーザ発振装置
29 全反射鏡
30 集光手段
31 被加工物
32 レーザビーム
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ発振装置とレーザ加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ発振装置ならびにレーザ加工機は、レーザビームの品質が良いことから、金属材料や樹脂、木材などの非金属材料にいたるまで、切断、溶接・溶着、スクライビングといった広範囲に渡る加工に応用されてきている。特にガス溶断、プラズマ切断、金属バイトによる切断加工、型を用いた抜き加工などと比較し、レーザ加工は高精度、高品質、金型不要など、多くの長所を備えており、幅広い業界に導入されつつある。
【0003】
そのような中で、レーザ発振装置はレーザビームを作り出すためのミラーの相対位置を精密に保持することが必要であるが、周囲温度が高温の場合や低温の場合においては、ミラーを保持する部品の温度変化による膨張、収縮により相対位置が変動するという問題点が存在した。ミラーの相対位置が変動することにより、レーザビームの品質悪化、出力低下などを引き起こし、レーザ加工能力を低下させることとなっていた。
【0004】
従来のレーザ発振装置は、ミラー相対位置の安定化のため、ミラー保持部品の一部に冷却媒質を通過させ温度を均一にすることで、温度変化による膨張、収縮を防止していた。(例えば特許文献1参照)
図16は従来のレーザ発振装置を示しており、この従来のレーザ発振装置は、放電管101、電極102、放電管101内部に充填されたレーザ媒質103、電極102に接続された電源104、部分透過鏡105、全反射鏡106、フランジ107、フランジ107同士を接続する結合棒108、フランジ107、結合棒108などを支える支持体109、部分透過鏡105、全反射鏡106を保持するホルダ110、放電管101を保持するブロック111、冷却装置112、冷却装置112に接続された冷却配管113、冷却配管113内部を循環する冷却媒質114を備えている。
【0005】
以上のように構成されたレーザ発振装置について、その動作を説明する。
【0006】
放電管101には電極102を介して電源104が接続されており、電源104により放電管101内に充填されているレーザ媒質103に電力が注入され、放電が発生する。この放電の電気エネルギーによりレーザ媒質103が励起され反転分布となり、部分透過鏡105と全反射鏡106の間を光が往復することによりレーザ発振状態となる。発生したレーザビームの一部は部分透過鏡105から外部へと取り出され、レーザ加工に用いられる。
【0007】
部分透過鏡105と全反射鏡106の間でレーザビームを反射、往復させるために、両者は平行に配置される必要がある。そのため、部分透過鏡105と全反射鏡106は、それぞれホルダ110に嵌め込まれたうえで、ホルダ110をフランジ107に取付けて固定している。さらにフランジ107同士を結合棒108により、平行となるように固定している。
【0008】
部分透過鏡105と全反射鏡106の間には、放電管101が設けられるが、放電の電気エネルギーを効率よくレーザビームに変換するために、放電管101は部分透過鏡105と全反射鏡106と同心軸上となるように、ブロック111によって保持している。そしてこれら各構成部品は、全体を支える基礎となる支持体109によって支持される構成となっていた。
【0009】
また、このとき部分透過鏡105と全反射鏡106付近でのレーザビームの散乱光により、各部品の温度が上昇していた。その温度上昇を抑制するために、フランジ107、ホルダ110を冷却媒質114により冷却していた。
【0010】
この制御として、まず冷却装置112を運転開始して、冷却配管113を通して冷却媒質114の循環を始めていた。通常、レーザ発振を行うとレーザビームの散乱光により、部分透過鏡105と全反射鏡106付近の部品の温度が上昇するので、レーザ発振前に冷却装置112を運転させるよう制御していた。
【特許文献1】特開平11−54818号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来のレーザ発振装置では、通常運転時における安定状態の温度に対して、周囲温度が高温あるいは低温の状態で装置を起動させた場合に、部分透過鏡105と全反射鏡106の平行度が悪化し、レーザビームの品質低下、出力低下などを引き起こし、レーザ加工能力を低下させる、という課題を有していた。
【0012】
また、上記のような制御では、起動前の構成部品の温度が、冷却媒質114の温度に対して、高温あるいは低温のように大きく差が生じている場合に、冷却媒質114が冷却している部品が温度変化を生じることとなっていた。
【0013】
例えば、通常冷却媒質114は20〜25℃の温度で設定されている。これに対し、周囲温度が50℃などのように高温になっていた場合、停止時のレーザ発振装置内部の構成部品も同様に50℃となっている。この状態で、冷却装置112を運転させると、フランジ107、ホルダ110に冷却媒質114が流れるが、50℃となっていたフランジ107、ホルダ110に、20〜25℃の冷却媒質114が流れるため、冷却媒質114に近い部分と離れている部分の間で温度差が生じ、ホルダ110、フランジ117の形状に歪みが発生する。
【0014】
これらホルダ110、フランジ117は、部分透過鏡105と全反射鏡106を保持し平行度を保っている部品であるが、その形状が歪むため平行度も悪化する。このようにして起動直後において過渡的に部分透過鏡105、全反射鏡106の平行度が悪化するため、レーザビームが充分に往復、反射することができず出力低下を招いたり、あるいはレーザビームの強度分布の均一性が崩れ、レーザビームの品質低下を発生させるなどして、レーザ加工能力を低下させることとなっていた。
【0015】
起動後、数十分経過するとホルダ110、フランジ117はじめ各部品が熱的に安定した状態に戻るので、部分透過鏡105と全反射鏡106の平行度も正常となるが、レーザ発振装置の性能を十分に発揮させるためには、このような待機時間が必要となる場合も存在していた。
【0016】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、より短い起動時間で安定した加工性能を発揮できるレーザ発振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明のレーザ発振装置は、内部でレーザ媒質に放電を行う放電管と、前記放電管を挟む方向に配置した全反射鏡と部分透過鏡とで前記レーザ媒質からのレーザビームをレーザ発振する光共振器と、前記全反射鏡と前記部分透過鏡をそれぞれ保持するフランジと、前記フランジに冷却媒質を循環させる冷却配管と、前記冷却配管に接続した冷却装置を備え、前記フランジに温度検出器を2つ以上設け、前記冷却配管に前記冷却媒質の流量を調整する流量調整器を設け、前記それぞれの温度検出器の検出した温度に応じて、前記流量調整器を制御するものである。
【0018】
そしてこの構成により、フランジの温度変化を検出して流量調整器により冷却媒質の流れを制御できるので安定した加工性能を発揮できる。また。起動時に冷却媒質が急激に流れることを防止できるため、より短い起動時間で安定した加工性能を発揮できるレーザ発振装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明は、起動時のフランジなどの温度変化による形状の歪み発生を防止でき、レーザ発振装置を短い起動時間で安定した加工性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態1のレーザ発振装置を示しており、実施の形態1のレーザ発振装置は、内部でレーザ媒質3に放電を行う放電管1、放電管1の内部に配置した電極2、放電管1内部に充填されたレーザ媒質3、電極2に接続した電源4、放電管1を挟む方向に配置し光共振器を構成する部分透過鏡5と全反射鏡6、部分透過鏡5と全反射鏡6をホルダ10を介して保持するフランジ7、フランジ7同士を接続する結合棒8、フランジ7と結合棒8などを支える支持体9、部分透過鏡5と全反射鏡6を保持しフランジ7に取り付けたホルダ10、放電管1を保持するブロック11、冷却装置12、冷却装置12に接続してフランジ7に冷却媒質14を循環させる冷却配管13、冷却配管13内部を循環する冷却媒質14、冷却配管13の途中に設けて冷却媒質14の流量を調整する流量調整器15を備えている。
【0022】
この放電管1には電極2を介して電源4が接続されており、電源4により放電管1内に充填されているレーザ媒質3に電力が注入され放電が発生し、レーザ媒質3が励起され反転分布となり、部分透過鏡5と全反射鏡6の間を光が往復することによりレーザ発振状態となる。発生したレーザビームの一部は部分透過鏡5から外部へと取り出され、レーザ加工に用いられる。
【0023】
部分透過鏡5と全反射鏡6の間でレーザビームを反射、往復させるために、両者は平行に配置される必要がある。そのため、部分透過鏡5と全反射鏡6は、それぞれホルダ10に嵌め込まれたうえで、ホルダ10をフランジ7に取付けて固定している。さらにフランジ7同士を結合棒8により、平行となるように固定している。
【0024】
部分透過鏡5と全反射鏡6の間には、放電管1が設けられるが、放電の電気エネルギーを効率よくレーザビームに変換するために、放電管1は部分透過鏡5と全反射鏡6と同心軸上となるように、ブロック11によって保持している。そしてこれら各構成部品は、全体を支える基礎となる支持体9によって支持される構成となっていた。
【0025】
また、部分透過鏡5と全反射鏡6付近で発生するレーザビームの散乱光による、各部品の温度上昇を抑制するために、流量調整器15を通過した後の冷却媒質14により、フランジ7、ホルダ10を冷却している。
【0026】
そして、フランジ7には温度検出器25を2つ以上設け、それぞれの温度検出器25の検出した温度に応じて、冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けている。
【0027】
なお、この制御部21は、それぞれの温度検出器25と接続し、流量調整器15と接続している。
【0028】
従来のレーザ発振装置では、通常運転時における安定状態の温度に対して、周囲温度が高温あるいは低温の状態で装置を起動させた場合に、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度が悪化し、レーザビームの品質低下、出力低下などを引き起こし、レーザ加工能力を低下させるという問題を発生させていた。これは、冷却媒質14の温度に対して、フランジ7、ホルダ10が高温あるいは低温のように大きく差が生じていることにより、フランジ7、ホルダ10自身に熱勾配が生じ、熱膨張により変形するためであった。フランジ7、ホルダ10は部分透過鏡5と全反射鏡6を保持し平行度を保っている部品であるため、それらが変形することで、平行度が悪化しレーザビームの品質低下、出力低下を発生させていた。
【0029】
これに対して本発明の実施の形態1では、フランジ7に2つ以上の温度検出器25を配置して、フランジ7の温度購買を検出し、更に冷却媒質14が循環する冷却配管13の途中に、流量調整器15を設けた構成としている。そのため、冷却媒質14が起動時に急激に流れることを防止できるため、フランジ7、ホルダ10が極端な熱勾配を生じて変形を起さないように、制御を行うことが可能となる。
【0030】
したがって、レーザ発振装置を周囲温度が高温あるいは低温の状態で装置を起動させた場合においても、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度の悪化を発生させることがなく、レーザビームの品質低下、出力低下など防止でき、安定したレーザ加工能力を実現できる。
【0031】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図2を用いて説明する。
【0032】
なお、本実施の形態2において実施の形態1と同様な構成については図1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図2に示すように、本実施の形態2の特徴とする点は、放電管1が放電している場合のみ冷却媒質14を流すように流量調整器15を開閉する点である。
【0034】
通常、レーザ発振装置の起動と同時に冷却装置12の運転を開始する。従来のレーザ発振装置では、冷却装置12の運転により、フランジ7、ホルダ10にも冷却媒質14が流れる。しかし実施の形態2においては冷却配管13途中に流量調整器15を設けているため、冷却装置12を運転しただけではフランジ7、ホルダ10に冷却媒質14は流れない。放電管1が放電している場合のみ流量調整器15が開くシーケンスとしている。
【0035】
レーザ発振中はレーザ媒質3に電力が注入される。この注入された電力は、一部がレーザビームに変換されるが残りのエネルギーは熱となる。放電管1が放電しレーザ発振させているときはレーザ発振装置が発熱することとなる。そのため、レーザ発振装置が熱的に安定した状態において、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を保持する必要がある。元来、冷却媒質14はレーザ発振中の部分透過鏡5と全反射鏡6近傍で発生する散乱光による温度上昇を防止するためのものであるので、放電、発振時のみに流せばよい。放電時以外のタイミングで冷却媒質14が流れていると、フランジ7、ホルダ10の温度分布が放電中の状態と異なるので、熱膨張により部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度が悪化するという問題点が存在する。
【0036】
本発明の実施の形態2では、放電管1が放電している場合のみ流量調整器15が開くシーケンスとしているので、上記問題点を防止し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0037】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図3を用いて説明する。
【0038】
なお、本実施の形態3において実施の形態1、2と同様な構成については図1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
本実施の形態3の特徴とする点は、流量調整器15として、電気的信号で開閉する弁を使用する点である。
【0040】
図3に示すように、冷却配管13途中に設けられた流量調整器15は、電磁コイル16、電気配線17、弁18、ケース19、バネ20を備えている。
【0041】
電気配線17は流量調整器15を制御する回路(図示せず)に接続され、電力が回路から供給される。この電力が電磁コイル16に供給されることにより、磁力が発生する。弁18の成分は磁性体であり、電磁コイル16に発生する磁力により上方向に引き上げられる。電磁コイル16に磁力が発生していない場合は、弁18はバネ20の力により下方向に押さえつけられている。弁18はケース19の冷却媒質14通過部を開閉する場所に設けられているため、上記回路からの電気的信号による制御で弁を容易に開閉させることができ、流量調整器15の操作性を向上させることが可能となる。
【0042】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図4を用いて説明する。
【0043】
なお、本実施の形態4において実施の形態1から3と同様な構成については図1から図3と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、本実施の形態4の特徴とする点は、放電管1の放電開始後の経過時間を計測し、放電管1の放電開始から一定時間経過後に、7フランジに冷却媒質14を流すように流量調整器15を制御する制御部21を設けたことである。
【0045】
この制御部21は、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0046】
実施の形態2で述べたように、放電時以外のタイミングで冷却媒質14が流れていると、フランジ7、ホルダ10の温度分布が放電中の状態と異なるので、熱膨張により部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度が悪化する。実施の形態2では、放電管1が放電している場合のみ流量調整器15が開くシーケンスとすることで、上記平行度の悪化を防止していたが、実際にはレーザ発振装置の温度上昇は、放電からしばらく時間が経過してから発生する。
【0047】
そこで、本実施の形態4では、制御部21に放電開始後の経過時間を計測する機能を持たせ、放電開始後一定時間が経過してから、流量調整器15を開くよう制御することで、フランジ7、ホルダ10の熱収縮による変形を、よりきめ細かく防止することができ、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0048】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図5を用いて説明する。
【0049】
なお、本実施の形態5において実施の形態1から4と同様な構成については図1から図4と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
本実施の形態5の特徴とする点は、流量調整器15として、冷却媒質14の流量を全閉から全開まで連続的に調節できるものを用いた点である。
【0051】
図5に示すように、冷却配管13途中に設けられた流量調整器15は、本体にオネジが設けられた弁22、ケース19に設けられたメネジ部23を備えている。
【0052】
実施の形態1または3における流量調整器15は開閉のみで、冷却媒質14の制御を行っていた。この場合だと、冷却媒質14は流れているか、流れていないかの2種類の状態のみであり、制御が大雑把なものとなっていた。
【0053】
本実施の形態5では、流量調整器15の弁22にオネジが設けられ、弁22が取り付けられているケース19側にメネジ23が設けられている。このため、弁22を回転させることにより、冷却媒質14の流量を連続的に変化させることができるので、フランジ7、ホルダ10の温度分布を、よりきめ細かく制御し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0054】
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、図6を用いて説明する。
【0055】
なお、本実施の形態6において実施の形態1から5と同様な構成については図1から図5と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
本実施の形態6の特徴とする点は、流量調整器15として、冷却媒質14の流量を全閉から全開まで連続的に調節できる電気的信号で開閉する弁を使用する点である。
【0057】
図6に示すように、冷却配管13途中に設けられた流量調整器15は、制御部21(図示せず)に接続した電気配線17、ケース19、本体にオネジが設けられた弁22、ケース19に設けられたメネジ部23、弁22に取り付けられたモータ24を備えている。
【0058】
このように、流量調整器15の弁22にオネジが設けられ、弁22が取り付けられているケース19側にメネジ23が設けられている。このため、弁22をモータ24で回転させることにより、冷却媒質14の流量を連続的に変化させることができる。
【0059】
そして、このモータ24を制御部21に接続しているので、例えばレーザ発振装置内部の温度に応じて、冷却媒質14流量を変化させることができるなど、よりきめ細かくフランジ7、ホルダ10の温度分布制御でき、さらにモータ24により、弁22を電気的信号により開閉させることができるため、流量調整器15の操作性を向上させることが可能となる。
【0060】
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7について、図7を用いて説明する。
【0061】
なお、本実施の形態7において実施の形態1から6と同様な構成については図1から図6と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
本実施の形態7の特徴とする点は、フランジ7に温度検出器25を2つ設け、温度検出器25で検出した温度に応じ、フランジ7に冷却媒質14を流すように流量調整器15を制御する制御部21を設けた点である。
【0063】
図7に示すように、この制御部21は、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15とともに温度検出器25と接続している。
【0064】
この温度検出器25により、フランジ7の温度を検知する。この温度の情報は制御部21に送られ、レーザ発振装置が熱的平衡状態にあるかどうかが計算される。
【0065】
そして、熱的平衡状態よりも温度が高ければ、制御部21からの信号により、流量調整器15が開となり、冷却媒質14がフランジ7に流れ冷却する。また熱的平衡状態よりも温度が低ければ、制御部21からの信号により、流量調整器15が閉となり、冷却媒質14は流れない。
【0066】
このようにして、フランジ7の表面温度を一定に制御することができるので、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0067】
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8について、図8を用いて説明する。
【0068】
なお、本実施の形態8において実施の形態1から7と同様な構成については図1から図7と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図8に示すように、本実施の形態8の特徴とする点は、フランジ7に温度検出器25を2つ設け、温度検出器25で検出した温度に応じ、フランジ7に流れる冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けた点である。
【0070】
この制御部21は、温度検出器25と接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15(具体的には、流量調整器15を駆動するモータ24)と接続している。
【0071】
本実施の形態8では、流量調整器15として上述した実施の形態5、6に示した連続的に冷却媒質14の流量を調整できる流量調整器15を用い、制御部21により温度検出器25で検知したフランジ7表面の温度状態により、弁22をモータ24などで制御する構成としている。
【0072】
実施の形態7では、冷却媒質14が流れているか、流れていないかの2種類のみであったが、本実施の形態8では、冷却媒質14流量を連続的に制御できるので、よりきめ細かく制御し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0073】
(実施の形態9)
以下、本発明の実施の形態9について説明する。
【0074】
なお、本実施の形態9において実施の形態1から8と同様な構成については図1から図8と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
本実施の形態9の特徴とする点は、上述した実施の形態7の温度検出器25として、熱電対を使用したことを特長としている。
【0076】
熱電対であれば、一般に広く普及しているため安価なコストで調達することが可能となり、性能の向上したレーザ発振装置を低価格で供給することができる。
【0077】
(実施の形態10)
以下、本発明の実施の形態10について、図9を用いて説明する。
【0078】
なお、本実施の形態10において実施の形態1から9と同様な構成については図1から図8と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
本実施の形態10の特徴とする点は、冷却媒質14の温度を検出する温度検出器26を設け、フランジ7に設けた温度検出器25と冷却媒質14の温度を検出する温度検出器26の温度差により冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けたことである。
【0080】
この制御部21は、温度検出器25と温度検出器26と接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0081】
また、図9に示すように、冷却媒質14の温度を検出する温度検出器26は、冷却配管13途中に設けている。
【0082】
上述した実施の形態7で、フランジ7の温度に応じて冷却媒質14の流量を制御したが、冷却媒質14とフランジ7の温度差が大きいと、流量調整器15を閉じても、フランジ7の温度変化が目標値に対してオーバーシュートする場合が存在する。
【0083】
このため本実施の形態10では、温度検出器26により冷却媒質14の温度も検知し、フランジ7との温度差に応じて流量調整器15の開閉のタイミングを変化させることができるようにしたものである。
【0084】
これにより、フランジ7の温度変化が目標値に対してオーバーシュートを起こしそうな場合には、流量調整器15を閉じるタイミングを早めるなどの対応ができ、よりきめ細かく制御し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0085】
(実施の形態11)
以下、本発明の実施の形態11について、図10を用いて説明する。
【0086】
なお、本実施の形態11において実施の形態1から10と同様な構成については図1から図9と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
図10に示すように、本実施の形態11の特徴とする点は、フランジ7、冷却配管13、冷却装置12を結ぶ冷却媒質14の経路を2つ以上備え、全ての冷却媒質14の経路の途中に流量調整器15を配置したことである。
【0088】
上述した実施の形態1において冷却媒質14の経路は、各フランジ7などを直列に接続していた。
【0089】
本実施の形態11では、冷却配管13、流量調整器15を、フランジ7ごとに独立した経路としている。
【0090】
レーザ発振装置内部は、通常、一定温度になるように冷却されているが、厳密には、内部において温度分布が全く均一とはなっていない。そのためフランジ7、ホルダ10などが複数存在する場合には、その配置されている場所によって、個々の温度が異なっている。本実施の形態11では個々の経路毎に、各部品を独立して冷却、温度制御することができるので、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
(実施の形態12)
以下、本発明の実施の形態12について、図11を用いて説明する。
【0091】
なお、本実施の形態12において実施の形態1から11と同様な構成については図1から図10と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
図11に示すように、本実施の形態12の特徴とする点は、フランジ7に温度検出器25を2つ以上設け、それぞれの温度検出器25の検出した温度に応じて、それぞれの経路の冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けたことである。
【0093】
この制御部21は、それぞれの温度検出器25と接続し、また、電源4による放電や、それぞれの流量調整器15などを制御するように電源4、それぞれの流量調整器15と接続している。
【0094】
フランジ7自身の温度分布は、その場所によって差が生じている。フランジ7の温度分布に差があると、熱膨張により変形が発生し、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を悪化させる原因となっていることは既に述べたとおりである。より厳密に、フランジ7の温度分布を均一化させるために、本実施の形態12は、フランジ7に2つ以上の温度検出器25を設け、さらにその温度差によって、フランジ7に設けられた2つ以上の冷却配管13に流れる冷却媒質14の流量を、流量調整器15によって、独立して制御する構成としているので、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度をより精度良く維持することが可能となる。
【0095】
(実施の形態13)
以下、本発明の実施の形態13について、図12を用いて説明する。
【0096】
なお、本実施の形態13において実施の形態1から12と同様な構成については図1から図11と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
図12に示すように、本実施の形態13の特徴とする点は、フランジ7にレーザ発振に必要な全反射鏡6と部分透過鏡5の平行度を検出する平行度検出器27を設け、その平行度に応じてそれぞれの経路の冷却媒質14の流量を制御する制御部21を設けたことである。
【0098】
この制御部21は、平行度検出器27と接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0099】
また、平行度検出器27は、フランジ7に取り付けてフランジ7の平行度を全反射鏡6と部分透過鏡5の平行度として検出するようにしている。
【0100】
上述した実施の形態11は、フランジ7、ホルダ10など各部品を独立して冷却する構成としていた。元来、これは部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持するためである。部分透過鏡5と全反射鏡6はフランジ7に取り付けられているので、これはつまりフランジ7の平行度を維持するためであった。
【0101】
本実施の形態13は、フランジ7の平行度を平行度検出器27によって検知できるので、その平行度に応じて各フランジ7に流れる冷却媒質14の流量を制御し、平行度を直接監視しながら制御することが可能となる。
【0102】
(実施の形態14)
以下、本発明の実施の形態14について説明する。
【0103】
本実施の形態14は、上述した実施の形態13の平行度検出器27として、レーザ変位計を使用したことを特長としている。
【0104】
レーザ変位計は、一般に1〜2ミクロンの分解能を有している。フランジ7の平行度に求められる精度は数ミクロン単位であり、これを検出するには高精度の検出器が必要となるが、レーザ変位計であれば、その要求を満たすことができる。
【0105】
また一般に広く普及しているため安価なコストで調達することが可能となり、性能の向上したレーザ発振装置を低価格で供給することができる。
【0106】
(実施の形態15)
以下、本発明の実施の形態15について、図13を用いて説明する。
【0107】
なお、本実施の形態15において実施の形態1から14と同様な構成については図1から図12と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
図13に示すように、本実施の形態15の特徴とする点は、放電管1の内部のレーザ媒質3に放電を行うレーザ出力指令信号出力部21aからのレーザ出力指令信号により、冷却媒質14の流量調整を行う制御部21を設けたことである。
【0109】
この制御部21は、レーザ出力指令信号出力部21aからのレーザ出力指令信号を入力するように接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0110】
実施の形態1において、冷却媒質14の流量を流量調整器15により制御する構成としているが、これは部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持するためであった。フランジ7の温度が変化すると熱膨張による変形により、上記平行度が変化していた。フランジ7の温度を変化させる要因の一つとして、上述した実施の形態2で述べているように、レーザ媒質3に注入された電力のうちレーザビームに変換されなかった残りのエネルギーの熱があげられる。
【0111】
この熱はレーザ出力と相関があり、レーザ出力が高いほど、発生する熱も増大する関係がある。
【0112】
本実施の形態15では、レーザの出力指令信号を監視し、その信号に応じて冷却媒質14の流量を流量調整器15により調節することで、フランジ7の温度を周囲環境が変化しても安定させることができ、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0113】
(実施の形態16)
以下、本発明の実施の形態16について、図14を用いて説明する。
【0114】
なお、本実施の形態16において実施の形態1から15と同様な構成については図1から図13と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0115】
図14に示すように、本実施の形態16の特徴とする点は、放電管1の内部で発生する放電の電流信号を電流検出器(図示せず)で検出し、この検出により冷却媒質14の流量調整を行う制御部21を設けたことである。
【0116】
この制御部21は、電流検出器(図示せず)からの電流検出信号を入力するように接続し、また、電源4による放電や、流量調整器15などを制御するように電源4、流量調整器15と接続している。
【0117】
前記実施の形態15において、レーザ出力指令信号に応じて冷却媒質14の流量を制御する構成としていた。
【0118】
実際には、レーザ出力は放電管1内部を流れる放電電流に依存している。つまり、レーザビームに変換されない残りのエネルギーの熱も、放電電流に依存していることとなる。
【0119】
そこで本実施の形態16では、放電管1内部の放電電流を制御する指令信号を監視し、その信号に応じて冷却媒質14の流量を流量調整器15により調節することで、フランジ7の温度を周囲環境が変化してもより安定させることができ、部分透過鏡5と全反射鏡6の平行度を精度良く維持することが可能となる。
【0120】
(実施の形態17)
以下、本発明の実施の形態17について、図15を用いて説明する。
【0121】
図15は本実施の形態17におけるレーザ加工機の概要を示すもので、本実施の形態17におけるレーザ加工機は、上述した実施の形態1から16のいずれかのレーザ発振装置28と、このレーザ発振装置28からのレーザビーム32を被加工物31に反射して導く全反射鏡29と、全反射鏡29で反射したレーザビーム32を被加工物31に集光するレンズなどの集光手段30を備えている。
【0122】
レーザ発振装置28から出たレーザビーム32は全反射鏡29により集光手段30に導かれる。集光手段30により集光されたレーザビームは被加工物31に照射され、切断、溶接などが行われる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のレーザ発振装置およびレーザ加工機は、レーザ発振装置内部の全反射鏡や部分透過鏡を保持するフランジの冷却媒質配管途中に流量調整器を具備することにより、起動時のフランジなどの温度変化による形状の歪み発生を防止できるレーザ発振装置およびレーザ加工機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施の形態1におけるレーザ発振装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態2におけるシーケンス図
【図3】本発明の実施の形態3における流量調整器の詳細図
【図4】本発明の実施の形態4におけるレーザ発振装置の構成図
【図5】本発明の実施の形態5における流量調整器の詳細図
【図6】本発明の実施の形態6における流量調整器の詳細図
【図7】本発明の実施の形態7におけるレーザ発振装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態8におけるレーザ発振装置の構成図
【図9】本発明の実施の形態10におけるレーザ発振装置の構成図
【図10】本発明の実施の形態11におけるレーザ発振装置の構成図
【図11】本発明の実施の形態12おけるレーザ発振装置の構成図
【図12】本発明の実施の形態13におけるレーザ発振装置の構成図
【図13】本発明の実施の形態15におけるレーザ発振装置の構成図
【図14】本発明の実施の形態16におけるレーザ発振装置の構成図
【図15】本発明の実施の形態17におけるレーザ加工機の構成図
【図16】従来のレーザ発振装置の構成図
【符号の説明】
【0125】
1 放電管
2 電極
3 レーザ媒質
4 電源
5 部分透過鏡
6 全反射鏡
7 フランジ
8 結合棒
9 支持体
10 ホルダ
11 ブロック
12 冷却装置
13 冷却配管
14 冷却媒質
15 流量調整器
16 電磁コイル
17 電気配線
18 弁
19 ケース
20 バネ
21 制御部
22 弁
23 ケースメネジ部
24 モータ
25、26 温度検出器
27 平行度検出器
28 レーザ発振装置
29 全反射鏡
30 集光手段
31 被加工物
32 レーザビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部でレーザ媒質に放電を行う放電管と、前記放電管を挟む方向に配置した全反射鏡と部分透過鏡とで前記レーザ媒質からのレーザビームをレーザ発振する光共振器と、前記全反射鏡と前記部分透過鏡をそれぞれ保持するフランジと、前記フランジに冷却媒質を循環させる冷却配管と、前記冷却配管に接続した冷却装置を備え、前記フランジに温度検出器を2つ以上設け、前記冷却配管に前記冷却媒質の流量を調整する流量調整器を設け、前記それぞれの温度検出器の検出した温度に応じて、前記流量調整器を制御するレーザ発振装置。
【請求項2】
前記流量調整器は、前記放電管が放電している場合のみ前記フランジに前記冷却媒質を流す請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項3】
前記流量調整器として、電気的信号で開閉する弁を使用する請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項4】
前記放電管の放電開始後の経過時間を計測し、前記放電管の放電開始から一定時間経過後に、前記フランジに冷却媒質を流すように前記流量調整器を制御する制御部を設けた請求項2記載のレーザ発振装置。
【請求項5】
前記流量調整器として、前記冷却媒質の流量を全閉から全開まで連続的に調節できるものを用いた請求項1記載のガスレーザ発振装置。
【請求項6】
前記流量調整器として、電気的信号で開閉する弁を使用する請求項5記載のレーザ発振装置。
【請求項7】
前記フランジに温度検出器を設け、前記温度検出器で検出した温度に応じ、前記フランジに前記冷却媒質を流すように前記流量調整器を制御する制御部を設けた請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項8】
前記フランジに温度検出器を設け、前記温度検出器で検出した温度に応じ、前記フランジに流れる前記冷却媒質の流量を制御する制御部を設けた請求項5記載のレーザ発振装置。
【請求項9】
前記温度検出器として、熱電対を使用する請求項7記載のレーザ発振装置。
【請求項10】
前記冷却媒質の温度を検出する温度検出器を設け、前記フランジ設けた温度検出器と前記冷却媒質の温度を検出する温度検出器の温度差により前記冷却媒質の流量を制御する制御部を設けた請求項7記載のレーザ発振装置。
【請求項11】
前記フランジ、前記冷却配管、前記冷却装置を結ぶ冷却媒質の経路を2つ以上備え、全ての前記冷却媒質の経路の途中に前記流量調整器を配置した請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項12】
前記フランジに設けた2つ以上の温度検出器の検出した温度に応じて、それぞれの前記経路の冷却媒質流量を制御する制御部を設けた請求項11記載のレーザ発振装置。
【請求項13】
前記フランジにレーザ発振に必要な前記全反射鏡と前記部分透過鏡の平行度を検出する検出器を設け、その平行度に応じてそれぞれの前記経路の冷却媒質流量を制御する制御部を設けた請求項11記載のレーザ発振装置。
【請求項14】
前記前記全反射鏡と前記部分透過鏡の平行度を検出する検出器として、レーザ干渉計を用いた請求項13記載のレーザ発振装置。
【請求項15】
前記放電管の内部のレーザ媒質に放電を行うレーザ出力指令信号により、前記冷却媒質の流量調整を行う制御部を設けた請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項16】
前記放電管の内部で発生する放電の電流信号により、前記冷却媒質の流量調整を行う制御部を設けた請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載のレーザ発振装置と、被加工物に前記レーザ発振装置からのレーザビームを集光する集光手段を備えたレーザ加工機。
【請求項1】
内部でレーザ媒質に放電を行う放電管と、前記放電管を挟む方向に配置した全反射鏡と部分透過鏡とで前記レーザ媒質からのレーザビームをレーザ発振する光共振器と、前記全反射鏡と前記部分透過鏡をそれぞれ保持するフランジと、前記フランジに冷却媒質を循環させる冷却配管と、前記冷却配管に接続した冷却装置を備え、前記フランジに温度検出器を2つ以上設け、前記冷却配管に前記冷却媒質の流量を調整する流量調整器を設け、前記それぞれの温度検出器の検出した温度に応じて、前記流量調整器を制御するレーザ発振装置。
【請求項2】
前記流量調整器は、前記放電管が放電している場合のみ前記フランジに前記冷却媒質を流す請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項3】
前記流量調整器として、電気的信号で開閉する弁を使用する請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項4】
前記放電管の放電開始後の経過時間を計測し、前記放電管の放電開始から一定時間経過後に、前記フランジに冷却媒質を流すように前記流量調整器を制御する制御部を設けた請求項2記載のレーザ発振装置。
【請求項5】
前記流量調整器として、前記冷却媒質の流量を全閉から全開まで連続的に調節できるものを用いた請求項1記載のガスレーザ発振装置。
【請求項6】
前記流量調整器として、電気的信号で開閉する弁を使用する請求項5記載のレーザ発振装置。
【請求項7】
前記フランジに温度検出器を設け、前記温度検出器で検出した温度に応じ、前記フランジに前記冷却媒質を流すように前記流量調整器を制御する制御部を設けた請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項8】
前記フランジに温度検出器を設け、前記温度検出器で検出した温度に応じ、前記フランジに流れる前記冷却媒質の流量を制御する制御部を設けた請求項5記載のレーザ発振装置。
【請求項9】
前記温度検出器として、熱電対を使用する請求項7記載のレーザ発振装置。
【請求項10】
前記冷却媒質の温度を検出する温度検出器を設け、前記フランジ設けた温度検出器と前記冷却媒質の温度を検出する温度検出器の温度差により前記冷却媒質の流量を制御する制御部を設けた請求項7記載のレーザ発振装置。
【請求項11】
前記フランジ、前記冷却配管、前記冷却装置を結ぶ冷却媒質の経路を2つ以上備え、全ての前記冷却媒質の経路の途中に前記流量調整器を配置した請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項12】
前記フランジに設けた2つ以上の温度検出器の検出した温度に応じて、それぞれの前記経路の冷却媒質流量を制御する制御部を設けた請求項11記載のレーザ発振装置。
【請求項13】
前記フランジにレーザ発振に必要な前記全反射鏡と前記部分透過鏡の平行度を検出する検出器を設け、その平行度に応じてそれぞれの前記経路の冷却媒質流量を制御する制御部を設けた請求項11記載のレーザ発振装置。
【請求項14】
前記前記全反射鏡と前記部分透過鏡の平行度を検出する検出器として、レーザ干渉計を用いた請求項13記載のレーザ発振装置。
【請求項15】
前記放電管の内部のレーザ媒質に放電を行うレーザ出力指令信号により、前記冷却媒質の流量調整を行う制御部を設けた請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項16】
前記放電管の内部で発生する放電の電流信号により、前記冷却媒質の流量調整を行う制御部を設けた請求項1記載のレーザ発振装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載のレーザ発振装置と、被加工物に前記レーザ発振装置からのレーザビームを集光する集光手段を備えたレーザ加工機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−212565(P2010−212565A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59102(P2009−59102)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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