説明

レーザ装置、露光装置及び検査装置

【課題】耐光強度マップ等の作成に多大な工数を要することなく、波長変換光学素子を効率的に利用可能なレーザ装置を提供する。
【解決手段】レーザ装置LSは、基本波レーザ光Laを出力するレーザ光出力部1と、基本波レーザ光を波長変換して変換光Lvを出力する波長変換部3とを備える。波長変換部3には、波長変換光学素子から放射される光の状態変化を検出することにより、波長変換光学素子のビーム伝播領域で損傷が発生したことを検出して検出信号を出力する損傷検出装置60(70)が備えられて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を出力するレーザ光出力部と、レーザ光出力部から出力されたレーザ光を波長変換して出力する波長変換部とを備えて構成されるレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなレーザ装置として、露光装置や各種検査装置、光治療装置などに好適に用いられる全固体型のレーザ装置が知られている。このようなレーザ装置は、所定波長の基本波レーザ光を出力するレーザ光出力部と、レーザ光出力部から出力された基本波レーザ光を波長変換する波長変換部とを備えて構成される。波長変換部には波長変換光学素子が設けられており、例えば、赤外領域の基本波レーザ光を複数の波長変換光学素子により順次波長変換し、紫外領域のレーザ光を出力するように構成される(特許文献1、特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたレーザ装置の概要構成を図9に示す。このレーザ装置は、波長1.5μm程度の基本波レーザ光を出力するレーザ光出力部901と、レーザ光出力部901から出力された基本波レーザ光を波長変換して波長200nm以下の紫外レーザ光を出力する波長変換部903とを備えて構成される。レーザ光出力部901には、基本波レーザ光の種光を発生するレーザ光源911と、レーザ光源911により発生された種光を増幅するファイバ光増幅器921とが設けられている。波長変換部903には、波長変換光学素子931〜936、偏光ビームスプリッタやミラー等の光学素子941〜945、レンズ951〜958などが設けられている。
【0004】
レーザ光源911により発生されファイバ光増幅器921により増幅された波長1.5μm程度の基本波レーザ光は、レーザ光出力部901から出力され、波長変換部903の偏光ビームスプリッタ941に入射する。偏光ビームスプリッタ941に入射した基本波レーザ光のうち、p偏光成分の光は偏光ビームスプリッタ941を透過し、レンズ951を介して波長変換光学素子931に集光入射する。一方、偏光ビームスプリッタ941に入射した基本波レーザ光のうち、s偏光成分の光は偏光ビームスプリッタ941により反射され、ミラー942,943及びレンズ956を介して波長変換光学素子934に集光入射する。
【0005】
波長変換光学素子931ではp偏光の基本波(基本波レーザ光)の第2高調波発生が行われ、波長が基本波の1/2、周波数が基本波の2倍の2倍波(第2高調波)が発生する。波長変換光学素子931として、例えばPPLN(Periodically Poled LiNbO3)結晶が用いられる。波長変換光学素子931で発生したp偏光の2倍波と、波長変換光学素子931を透過したp偏光の基本波は、レンズ952を介して波長変換光学素子932に集光入射する。
【0006】
波長変換光学素子932では基本波と2倍波との和周波発生が行われ、3倍波(第3高調波)が発生する。波長変換光学素子932として、例えばLBO(LiB35)結晶が用いられる。波長変換光学素子932で発生したs偏光の3倍波と、波長変換光学素子932を透過したp偏光の2倍波は、2波長波長板945を通して2倍波のみ偏光面を回転させ、レンズ953を介して波長変換光学素子933に集光入射する。
【0007】
波長変換光学素子933では2倍波と3倍波との和周波発生が行われ、5倍波(第5高調波)が発生する。波長変換光学素子933として、例えばBBO(β-BaB24)結晶が用いられる。波長変換光学素子933で発生したp偏光の5倍波は、レンズ954,955を介してダイクロイックミラー944に入射する。
【0008】
波長変換光学素子934ではs偏光の基本波(基本波レーザ光)の第2高調波発生が行われ、2倍波が発生する。波長変換光学素子934として、例えばLBO結晶が用いられる。波長変換光学素子934で発生したp偏光の2倍波と、波長変換光学素子934を透過したs偏光の基本波は、レンズ957,958を介してダイクロイックミラー944に入射する。
【0009】
ダイクロイックミラー944は、5倍波の波長帯域の光を透過し、基本波及び2倍波の波長帯域の光を反射するように構成されている。そのため、波長変換光学素子933により発生されたp偏光の5倍波はダイクロイックミラー944を透過して波長変換光学素子935に集光入射する。また、波長変換光学素子934で発生したp偏光の2倍波及び波長変換光学素子934を透過したs偏光の基本波は、ダイクロイックミラー944により反射されて5倍波と同軸に重ね合わされ、波長変換光学素子935に集光入射する。
【0010】
波長変換光学素子935では5倍波と2倍波との和周波発生が行われ、7倍波(第7高調波)が発生する。波長変換光学素子935で発生したs偏光の7倍波と、波長変換光学素子935を透過したs偏光の基本波は、波長変換光学素子936に入射して和周波発生が行われ、波長が基本波の1/8、周波数が基本波の8倍の8倍波(第8高調波)が発生する。波長変換光学素子935,936として、例えばCLBO(CsLiB610)結晶が用いられる。8倍波は波長が200nm以下の紫外領域のレーザ光であり、このようにして発生された紫外レーザ光がレーザ装置から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−308908号公報
【特許文献2】特開2004−86193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
波長変換光学素子の波長変換効率は、一般的に入射光のパワー密度に比例するため、各波長変換光学素子に入射するレーザ光は集光レンズを介して集光入射される。ところが、レーザ装置に対する高出力化の要請に伴い、波長変換部に入射する基本波レーザ光のパワーを高めてゆくと、レーザ光が透過する波長変換光学素子のビーム伝搬領域で損傷が発生し、その結果、出力光のパワーが低下するという問題が生じていた。
【0013】
例えば、前述した波長変換部903において、基本波を2倍波に変換する波長変換光学素子931は、PPLN結晶等の疑似位相整合(QPM:Quasi Phase Matching)型の波長変換光学素子(以下、QPM結晶と称する)が用いられている。このようなQPM結晶は、入射光のパワー密度が高くなると、フォトリフラクティブ効果によって結晶内部の屈折率が変化する光損傷(optical damage)が発生する。
【0014】
また、波長変換光学素子932〜936は、LBO,BBO,CLBO等のバルク結晶が用いられるが、これらの結晶では、結晶の育成段階で内包された不純物や結晶構造の不完全性などにより、入射光のパワー密度が高くなってくると、これらの欠陥部で損傷が発生する。欠陥に基づく損傷はQPM結晶についても同様に発生し得る。
【0015】
上記のような高パワー領域での損傷の発生は、一般的に、結晶の種類や製造ロット等によって相違するが、同一結晶内でも、比較的短時間のレーザ光入射で損傷が発生する(耐久性が低い)場所と、長時間レーザ光を入射しても損傷が発生しにくい(耐久性が高い)場所とが存在する。
【0016】
このような状況に対処する手法として、個々の波長変換光学素子について耐久性を予め計測しておき、計測結果に基づいて各波長変換光学素子を入射面内でシフトさせることが考えられる。すなわち、個々の波長変換光学素子について、レーザ光の入射位置を変えて所定パワーのレーザ光を入射し、各位置で損傷が発生するまでの時間(耐久性)を予め計測しておく。そして、計測された各部の耐久性に応じて、所定時間ごとに波長変換光学素子をシフトして(あるいは所定速度で波長変換光学素子を移動させて)、損傷が発生する以前に常に新しい結晶面にレーザ光が入射するように構成する。
【0017】
しかしながら、仮に波長変換光学素子を一定時間ごとにシフトさせるとすれば、その周期は最も耐久性が低い位置での損傷発生時間以内とする必要があり、比較的高価な波長変換光学素子の効率的な利用が図れない。一方、耐久性が高い場所と低い場所とでシフトさせる周期(若しくは移動速度)を変化させるとすれば、各部の耐久性を比較的細かく計測してマッピングしておく必要があり、多大な工数を要するとともに、波長変換光学素子の継時変化による耐久性の低下に対応することができない。
【0018】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、多大な工数を要することなく、波長変換光学素子を効率的に利用可能なレーザ装置を提供することを目的とする。また、これにより効率的な稼働を可能とした露光装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決して目的を達成するため、本発明を例示する第1の態様はレーザ装置である。レーザ装置は、レーザ光を出力するレーザ光出力部と、レーザ光出力部から出力されたレーザ光を波長変換して出力する波長変換部とを備える。波長変換部には、入射したレーザ光を波長変換して出射する波長変換光学素子と、波長変換光学素子から放射される光の状態変化を検出することにより、波長変換光学素子を透過するレーザ光のビーム伝播領域において損傷が発生したことを検出して検出信号を出力する損傷検出手段(例えば、実施形態における損傷検出装置60,70)とを備えて構成される。
【0020】
なお、前記損傷検出手段は、前記波長変換光学素子から出射されるレーザ光のビーム径が、波長変換を開始した初期状態のビーム径から所定以上増加したときに、当該ビーム径の増加状態を検出して検出信号を出力するように構成することができる。あるいは、前記損傷検出手段は、前記ビーム伝播領域において散乱光が発生したときに、当該散乱光を検出して検出信号を出力するように構成することができる。
【0021】
ビーム径の増加状態を検出する場合、損傷検出手段は、前記初期状態において波長変換光学素子から出射されたレーザ光がそのまま通過し、前記ビーム径の増加状態において波長変換光学素子から出射されたレーザ光の外周部が掛かるように設定された開口(例えば、実施形態におけるアパーチャ61の開口)と、波長変換光学素子から出射され開口で反射されたレーザ光を検出する反射光検出器とから構成することができる。なお、ビーム径の増加状態を検出する場合の一つの形態は、波長変換光学素子が疑似位相整合型の波長変換光学結晶である場合である。
【0022】
本発明を例示する第2の態様は露光装置である。この露光装置は、上記いずれかのレーザ装置と、所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを保持するマスク支持部と、露光対象物を保持する露光対象物支持部と、レーザ装置から出力されたレーザ光をマスク支持部に保持されたフォトマスクに照射する照明光学系と、フォトマスクを透過した光を露光対象物支持部に保持された露光対象物に投影する投影光学系とを備えて構成される。
【0023】
本発明を例示する第3の態様は検査装置である。この検査装置は、上記いずれかのレーザ装置と、被検物を保持する被検物支持部と、レーザ装置から出力されたレーザ光を被検物支持部に保持された被検物に照射する照明光学系と、被検物からの光を検出する検出器とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0024】
第1の態様のレーザ装置は、波長変換部に、波長変換光学素子から放射される光の状態変化を検出することにより、波長変換光学素子を透過するレーザ光のビーム伝播領域において損傷が発生したことを検出して検出信号を出力する損傷検出手段を備えて構成される。そのため、波長変換光学素子のビーム伝播領域において損傷が発生するまで波長変換光学素子をシフト等させることなく使用することができる。また損傷が発生したときには損傷検出手段から検出信号が出力されるため、当該検出信号に基づいて直ちに波長変換光学素子をシフト等させることができる。従って、個々の波長変換光学素子について予め結晶各部の耐久性を計測してマッピングしておくような多大な工数を要することなく、波長変換光学素子を最大限効率的に利用可能なレーザ装置を提供することができる。
【0025】
第2の態様の露光装置は、上記のような損傷検出手段を有するレーザ装置を備えて構成される。そのため、波長変換光学素子のビーム伝播領域において損傷が発生するまで波長変換光学素子をシフト等させることなくレーザ装置を使用することができ、損傷が発生したときには損傷検出手段から出力される検出信号に基づいて波長変換光学素子をシフト等させることができる。従って、本露光装置では、レーザ装置において波長変換光学素子を交換するたびに多大な工数を要するようなことがなく、かつ各波長変換光学素子を最大限効率的に利用することができ、これにより効率的な稼働を可能とした露光装置を提供することができる。
【0026】
第3の態様の検査装置は、上記のような損傷検出手段を有するレーザ装置を備えて構成される。そのため、波長変換光学素子のビーム伝播領域において損傷が発生するまで波長変換光学素子をシフト等させることなくレーザ装置を使用することができ、損傷が発生したときには損傷検出手段から出力される検出信号に基づいて波長変換光学素子をシフト等させることができる。従って、本検査装置では、レーザ装置において波長変換光学素子を交換するたびに多大な工数を要するようなことがなく、かつ各波長変換光学素子を最大限効率的に利用することができ、これにより効率的な稼働を可能とした検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】レーザ装置の全体構成を例示する概要構成図である。
【図2】上記レーザ装置における波長変換光学系の概要構成図である。
【図3】第1構成形態の損傷検出装置の概要構成図である。
【図4】波長変換光学素子で損傷が発生する前後におけるビームプロファイルの変化を模式的に表した説明図である。
【図5】第2構成形態の損傷検出装置の概要構成図である。
【図6】波長変換光学素子で損傷が発生する前後における散乱光の発生状況を模式的に表した説明図である。
【図7】レーザ装置を備えたシステムの第1の適用例として示す露光装置の概要構成図である。
【図8】レーザ装置を備えたシステムの第2の適用例として示す検査装置の概要構成図である。
【図9】従来のレーザ装置における波長変換光学系の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1に本発明を適用したレーザ装置LSの概要構成を示す。レーザ装置LSは、基本波レーザ光を出力するレーザ光出力部1、レーザ光出力部1から出力された基本波レーザ光を所定波長のレーザ光に波長変換して出力する波長変換部3、レーザ光出力部1及び波長変換部3の作動を制御する制御部8などを備えて構成される。
【0029】
レーザ光出力部1及び波長変換部3は、このレーザ装置LSを用いて構成されるシステムの用途及び機能に応じて適宜に設定可能である。本実施形態では、レーザ光出力部1から波長1547nmの基本波レーザ光Laを出力し、これを波長変換部3において波長変換して、最短波長193nmの紫外レーザ光Lvを出力する場合を例として説明する。
【0030】
本実施形態では、レーザ光出力部1を、基本波レーザ光の種光であるシード光を出力するレーザ光発生部10と、レーザ光発生部10にから出力されたシード光を増幅する増幅部20とにより構成した形態を示す。レーザ光発生部10には、波長1547nmのシード光Lsを発生するレーザ光源11が設けられ、増幅部20には、レーザ光源11により発生されたシード光Lsを増幅して所定強度の基本波レーザ光Laを出力するファイバ光増幅器21が設けられている。
【0031】
レーザ光源11は、発振波長が1.5μm帯のDFB(Distributed Feedback)半導体レーザを好適に用いることができる。DFB半導体レーザは、CW発振及びパルス発振させることができ、励起電流を制御することによりパルス波形を高速で制御することができる。またDFB半導体レーザは、温度制御することにより狭帯域化された波長1547nmのシード光を出力させることができる。なお、レーザ光発生部10にEOM(Electro Optic Modulator)等の外部変調器を設け、CWまたはパルス発振させたDFB半導体レーザの出力光を外部変調器により切り出して所要波形のパルス光を出力するように構成しても良い。
【0032】
ファイバ光増幅器21は、増幅する波長帯域に応じて適宜な媒質がドープされたものを用いることができる。波長1.5μm帯のシード光を増幅するファイバ光増幅器として、コアにエルビウム(Er)がドープされたエルビウム・ドープ・ファイバー光増幅器(EDFA)を好適に用いることができる。ファイバ光増幅器21から出射した基本波レーザ光Laはレーザ光出力部1から出力され、波長変換部3に入力される。
【0033】
波長変換部3には、複数の波長変換光学素子やミラー等からなる波長変換光学系30が設けられている。波長変換光学系30の概要構成を図2に示す。図中には、偏光面が紙面に平行なp偏光の光を上下方向の矢印で、偏光面が紙面に垂直なs偏光の光をドット付きの○印で示す。また、基本波をω、そのn次高調波をnωで示す。
【0034】
波長変換光学系30は、レーザ光出力部1から出力された基本波レーザ光Laのうち、第1の基本波レーザ光La1が入射して伝播する第1系列I、第2の基本波レーザ光La2が入射して伝播する第2系列II、及び第1,第2系列を伝播したレーザ光が同軸に重ね合わされて入射し伝播する第3系列IIIからなり、これら3つの系列に配設された波長変換光学素子31〜36、偏光ビームスプリッタやミラー等の光学素子41〜45、レンズ51〜58などにより構成される。
【0035】
第1系列Iでは、波長1547nm、周波数ωの第1の基本波レーザ光La1が、この系列に設けられた波長変換光学素子31,32,33により順次ω→2ω→3ω→5ωに波長変換され、発生した5倍波(5倍波)5ωが第3系列IIIに入射する。第2系列IIでは、波長1547nm、周波数ωの第2の基本波レーザ光La2が、この系列に設けられた波長変換光学素子34によってω→2ωに波長変換され、発生した2倍波(第2高調波)2ωと波長変換されずに透過した基本波ωが第3系列IIIに入射する。
【0036】
第3系列IIIでは、波長変換光学素子35において、第1系列で発生した5倍波5ωと第2系列で発生した2倍波2ωとの和周波発生により7倍波(第7高調波)7ωが発生し、波長変換光学素子36において、7倍波7ωと基本波ωとの和周波発生により8倍波(第8高調波)8ωが発生する。そして、このようにして発生した波長193nmの紫外レーザ光Lvが波長変換部3から出力される。以下、波長変換部3の構成及び各部におけるレーザ光の状態について詳細に説明する。
【0037】
波長変換部3の入力部には偏光ビームスプリッタ41が設けられており、波長変換部3に入射した基本波レーザ光Laが、偏光ビームスプリッタ41によって第1の基本波レーザ光La1と第2の基本波レーザ光La2とに分割される。すなわち、波長変換部3に入射した基本波レーザ光Laのうち、p偏光成分は偏光ビームスプリッタ41を透過し、第1の基本波レーザ光La1となって第1系列Iに入射する。また、波長変換部3に入射した基本波レーザ光Laのうち、s偏光成分は偏光ビームスプリッタ41により反射され、第2の基本波レーザ光La2となって第2系列IIに入射する。
【0038】
第1系列に入射した第1の基本波レーザ光La1は、レンズ51を介して波長変換光学素子31に集光入射し、第2高調波発生により2倍波2ωを発生させる。波長変換光学素子31で発生したp偏光の2倍波2ωと、波長変換光学素子31を透過したp偏光の基本波ωは、レンズ52を介して波長変換光学素子32に集光入射し、和周波発生によりs偏光の3倍波3ωを発生させる。
【0039】
2倍波発生用の波長変換光学素子31は、PPLN(Periodically Poled LiNbO3)結晶や、PPLT(Periodically Poled LiTaO3)結晶、PPKTP(Periodically Poled KTiOPO4)結晶等の疑似位相整合型の波長変換結晶(QPM結晶)が好適に用いられる。また、3倍波発生用の波長変換光学素子32は、LBO(LiB35)結晶が好適に用いられる。なお、波長変換光学素子31としてLBO結晶を用いることもできる。
【0040】
波長変換光学素子32で発生したs偏光の3倍波3ω及び波長変換光学素子32を透過したp偏光の2倍波2ωは、2波長波長板45を透過させて2倍波2ωのみをs偏光に変換する。2波長波長板45は、例えば、結晶の光学軸と平行にカットした一軸性結晶の平板からなる波長板が用いられる。この波長板は、一方の波長の光(2倍波2ω)に対して偏光面を回転させ、他方の波長の光(3倍波3ω)に対しては偏光面が回転しないように、波長板の厚さを一方の波長の光に対してλ/2の整数倍で、他方の波長の光に対しては、λの整数倍になるようにカットすることにより構成される。
【0041】
ともにs偏光になった2倍波2ω及び3倍波3ωは、レンズ53を介して波長変換光学素子33に集光入射し、和周波発生により周波数が基本波の5倍、波長が1/5(309nm)の5倍波5ωを発生させる。5倍波発生用の波長変換光学素子33として、例えばBBO(β-BaB24)結晶が好適に用いられる。なお、波長変換光学素子33として、CLBO(CsLiB610)結晶を用いることも可能である。
【0042】
BBO結晶から出射されたp偏光の5倍波5ωは、ウォークオフに起因してビーム断面が楕円形になっているため、シリンドリカルレンズ54,55によりビーム断面を円形に整形し、ダイクロイックミラー44に入射させる。
【0043】
第2系列IIに入射した第2の基本波レーザ光La2は、ミラー42,43及びレンズ56を介して波長変換光学素子34に集光入射し、第2高調波発生により2倍波2ωを発生させる。波長変換光学素子34としてLBO結晶が好適に用いられる。なお、波長変換光学素子34は、前述した波長変換光学素子31と同様のQPM結晶を用いることもできる。波長変換光学素子34で発生したp偏光の2倍波2ω、及び波長変換光学素子34を透過したs偏光の基本波ωは、レンズ57,58を介してダイクロイックミラー44に入射させる。
【0044】
ダイクロイックミラー44は、5倍波の波長帯域の光を透過し、基本波及び2倍波の波長帯域の光を反射する波長選択性を有して構成される。そのため、波長変換光学素子33で発生した5倍波5ωはダイクロイックミラー44を透過して第3系列IIIに入射する。一方、波長変換光学素子34で発生した2倍波2ω及び波長変換光学素子34を透過した基本波ωはダイクロイックミラー44で反射され、5倍波5ωと同軸に重ね合わされて第3系列IIIに入射する。
【0045】
第3系列IIIには、波長変換光学素子35と波長変換光学素子36が配設されている。波長変換光学素子35では、第1系列Iから入射したp偏光の5倍波5ωと、第2系列IIから入射したp偏光の2倍波2ωの和周波発生が行われ、周波数が基本波の7倍、波長が1/7(221nm)の7倍波7ωが発生する。7倍波発生用の波長変換光学素子35は、CLBO結晶が好適に用いられる。
【0046】
波長変換光学素子35で発生したs偏光の7倍波7ωと、第2系列IIから入射して波長変換光学素子35を透過したs偏光の基本波ωは、波長変換光学素子36に入射し、和周波発生により周波数が基本波の8倍、波長が1/8(193nm)の8倍波8ωが発生する。8倍波発生用の波長変換光学素子36は、CLBO結晶が好適に用いられる。
【0047】
そして、波長変換光学素子36で発生した波長193nmの紫外レーザ光Lv(8倍波8ω)が波長変換部3から出力される。
【0048】
本実施形態に例示するレーザ装置LSでは、レーザ光出力部1から高いパワーレベルの基本波レーザ光Laが出射され、波長変換部3の各波長変換光学素子31〜36では、レンズを介して集光入射されるレーザ光のパワー密度(パルス光の場合には、ピークパワーを集光断面積で除した値)がMW/cm2オーダーの極めて高い値となる。
【0049】
このようなパワーレベルで用いられる波長変換光学素子では、高いパワー密度のレーザ光が透過するレーザ光の伝播領域で損傷が発生しやすく、損傷が発生するとビームプロファイルの変化や波長変換効率の低下等により紫外レーザ光Lvの出力が低下し得る。一方、波長変換部に設けられた個々の波長変換光学素子について、予め各部の耐久性を計測してマッピングしておき、マップに基づいて波長変換光学素子をシフトするような手法では、多大な工数を要するとともに波長変換光学素子の効率的な利用が図れない。
【0050】
そこで、レーザ装置LSにおいては、波長変換部3に、波長変換光学素子のビーム伝播領域で損傷が発生したことを検出して検出信号を出力する損傷検出装置が設けられている。損傷検出装置60,70は、波長変換光学素子から放射される光の状態変化を検出することによって、波長変換光学素子のビーム伝播領域で損傷が発生したことを検出するように構成される。なお、損傷検出装置60は後に詳述する第1構成形態の損傷検出装置、損傷検出装置70は第2構成形態の損傷検出装置である。
【0051】
「波長変換光学素子から放射される光の状態」は、例えば、波長変換光学素子から出射されるレーザ光のビームプロファイルや、波長変換光学素子から放出される散乱光の発生状況などをいう。すなわち、損傷検出装置60,70は、波長変換光学素子のビーム伝播領域で損傷が発生したときに、損傷の発生に伴って生じる光の状態変化を検出して検出信号を出力するように構成される。
【0052】
損傷検出装置60,70の信号は制御部8に入力されており、制御部8は損傷検出装置60,70から検出信号が入力されたときに、所定の対応動作を実行する。対応動作として、例えば、レーザ装置の制御パネルに波長変換光学素子で損傷が発生した旨表示する警報動作や、損傷が発生した波長変換光学素子を、図示省略する結晶シフト機構により所定量移動させて、波長変換光学素子に入射するレーザ光が損傷を受けていない新たな領域を透過するようにシフトさせる結晶シフト動作などが例示される。
【0053】
図3に第1構成形態の損傷検出装置60の概要構成図、図5に第2構成形態の損傷検出装置70の概要構成図を示しており、以下、各構成形態の損傷検出装置について詳細に説明する。
【0054】
(第1構成形態)
第1構成形態の損傷検出装置60は、波長変換光学素子から出射されるレーザ光のビーム径が、波長変換を開始した初期状態のビーム径から所定以上増加したときに、そのビーム径の増加状態を検出して検出信号(ビーム径増加検出信号)を出力するように構成される。図3には、波長変換光学素子31から出射されたレーザ光の光路上に設けたアパーチャ61と、このアパーチャ61で反射されたレーザ光を検出する反射光検出器65とから損傷検出装置60を構成した場合を例示する。
【0055】
本実施形態レーザ装置LSにおいて、波長変換光学素子31は、PPLNあるいはPPLT等のQPM結晶が好適に用いられる。既述したように、QPM結晶では、入射光のパワー密度が高くなるとフォトリフラクティブ効果により光損傷(optical damage)が発生しやすくなる。光損傷が発生すると結晶内部においてビーム伝播領域の屈折率が変化し、これに伴って出力光のビームプロファイルが変化する。
【0056】
波長変換光学素子31で光損傷が発生すると、この波長変換光学素子31における波長変換効率が低下するのみならず、ビームプロファイルの変化に起因して次段以降の波長変換光学素子32,33,35,36で集光スポット位置やスポット径が変化し、紫外レーザ光Lvの出力が大きく低下する要因となる。
【0057】
図4は、波長変換光学素子31で光損傷が発生する前後におけるビームプロファイルの変化を模式的に表したものであり、(a)波長変換を開始した初期状態(光損傷が発生する前)の入出射光のビームプロファイルと、(b)光損傷が発生した後の入出射光のビームプロファイルとを示す。(b)の図中には、初期状態の出射光のビームプロファイルを二点鎖線で付記している。図示するように、波長変換光学素子31において光損傷が発生すると、出射光のビームプロファイルはビーム径が増大する方向に変化する。
【0058】
損傷検出装置60のアパーチャ61は、光損傷が発生する前のレーザ光がそのまま(有意な反射や回折等を生じることなく)通過し、光損傷の発生によりビーム径が増加したときにレーザ光の外周部が開口縁部に掛かる(反射ないし散乱が発生する)ように設定される。
【0059】
具体的には、アパーチャ61の開口径は、アパーチャ61の配設位置における初期状態のビーム径の1.8〜2.2倍程度に設定される。そして、例えば開口径を初期状態のビーム径の2倍としたときには、波長変換光学素子31から出射される出射光のビーム径が僅かに増大したときにレーザ光の外周部が開口縁部に掛かってレーザ光が反射(散乱)されるようになり、ビーム径が初期状態の1.1倍まで増加する以前に反射光検出器65によって検出される。反射光検出器65は、波長変換光学素子31から出射される基本波及び2倍波の少なくともいずれかの波長の光を検出可能であればよく、例えば、赤外〜可視領域の光に対して検出感度を有するフォトダイオードを用いることができる。
【0060】
反射光検出器65により反射光が検出されることは、波長変換光学素子31から出射されたレーザ光のビーム径が初期状態よりも増大したこと、すなわち波長変換光学素子31のビーム伝播領域で光損傷が発生したことを意味する。
【0061】
このように、損傷検出装置60では、波長変換光学素子31に代表されるQPM結晶で光損傷が発生したときに、その状態が直ちに検出され検出信号が出力される。そのため、使用中のビーム伝播領域で損傷が発生するまで波長変換光学素子31をシフトさせることなく使用することができる。また損傷が発生すると反射光検出器65から検出信号が出力されるため、当該検出信号に基づいて直ちに波長変換光学素子31をシフトさせることができる。従って、予め結晶各部の耐久性を計測してマッピングしておくような多大な工数を要することなく、波長変換光学素子を最大限効率的に利用することができる。
【0062】
以上では、波長変換光学素子から出射されるレーザ光のビーム径が初期状態のビーム径から所定以上増加したときに、その増加状態を検出する手段の一例として、アパーチャ61と、アパーチャ61からの反射光を検出する反射光検出器65とを用いた構成を例示した。しかし、本技術はかかる構成例に限定されるものではなく、波長変換光学素子から出射されるレーザ光のビーム径の増加状態を検出可能な構成であればよい。例えば、所定開口径のアパーチャ61に変えて所定開口幅のスリットを用い、あるいは出射光の光軸から所定寸法離間した位置に反射針や散乱部材を配置するように構成しても良い。また、出射光の光軸から所定寸法離間した位置にミラーや光ファイバ等を配置して反射光検出器65に導くように構成しても良い。
【0063】
(第2構成形態)
第2構成形態の損傷検出装置70は、波長変換光学素子のビーム伝播領域において散乱光が発生したときに、この散乱光を検出して検出信号(散乱光検出信号)を出力するように構成される。図5は、波長変換光学素子33に近接して、波長変換光学素子33のビーム伝播領域で発生した散乱光を検出する散乱光検出器75を配置した構成を例示する。
【0064】
本実施形態のレーザ装置LSにおいて、波長変換光学素子32〜36はバルク結晶が用いられる。バルク結晶では、結晶の育成段階で内包された不純物や結晶構造の不完全性などにより、入射光のパワー密度が高くなるとこれらの欠陥部で損傷が発生する。また、5倍波発生用の波長変換光学素子33はBBO結晶が用いられるが、このBBO結晶はハイパワーレベルで損傷を受けやすいことが経験的に確認されている。
【0065】
図6は、波長変換光学素子33で損傷が発生する前後における散乱光の発生状況を模式的に表したものであり、(a)波長変換を開始した初期状態(損傷が発生する前)と、(b)損傷が発生した後の状態とを示している。図示するように、波長変換光学素子33で損傷が発生すると、その損傷部近傍を透過するレーザ光が散乱を受け、散乱光が周囲に放出される。散乱光の出射方位や強度分布は、発生した損傷の大きさや透過するレーザ光の波長等によって変化するが、一般的には損傷部を中心として広い立体角度範囲に放出される。
【0066】
散乱光検出器75は、波長変換光学素子33のビーム伝播領域で損傷が発生したときに損傷部から放出される散乱光が検出されるように、波長変換光学素子33に近接して配設される。図6は波長変換光学素子33の出射面側に近接して散乱光検出器75を配置した構成例を示す。反射光検出器75は、波長変換光学素子33から放出される散乱光を検出可能であればよい。
【0067】
具体的には、本構成形態において波長変換光学素子33を透過するレーザ光は、2倍波、3倍波及び5倍波が主体であり、これらのうち少なくともいずれかの波長の光を検出可能な光検出器を用いることができる。このとき、2倍波及び3倍波は可視領域にあることから、可視領域の光に対して検出感度を有するフォトダイオードを用いることができる。これにより簡明且つ低コストで損傷検出装置70を構成することができる。
【0068】
このように、損傷検出装置70では、波長変換光学素子33に代表されるバルク結晶やQPM結晶において結晶構造の欠陥に基づく損傷が発生したときに、その状態が直ちに検出され検出信号が出力される。そのため、使用中のビーム伝播領域で損傷が発生するまで波長変換光学素子をシフトさせることなく使用することができる。また損傷が発生すると反射光検出器75から検出信号が出力されるため、当該検出信号に基づいて直ちに波長変換光学素子をシフトさせることができる。従って、予め結晶各部の耐久性を計測してマッピングしておくような多大な工数を要することなく、波長変換光学素子を最大限効率的に利用することができる。
【0069】
なお、実施形態では、損傷検出装置70を波長変換光学素子33の損傷検出に適用した場合を例示したが、以上の説明から明らかなように、本構成形態の損傷検出装置70はバルク結晶であるかQPM結晶であるかを問わず、他の波長変換光学素子31,32,34〜36の損傷検出にも適用可能である。
【0070】
また、以上説明した実施形態では、レーザ光出力部1から出力された基本波レーザ光Laを偏光ビームスプリッタ41により2分割して波長変換部3の第1,第2系列に入射させた構成を例示した。しかしながら、レーザ光出力部1及び波長変換部3の具体的な構成はレーザ装置の用途や機能等に応じて適宜に偏光することができる。例えば、レーザ光出力部1から第1,第2の基本波レーザ光La1,La2を出射させて波長変換部3の第1,第2系列に直接入射させるように構成し、あるいはレーザ光出力部1から第1,第2,第3の基本波レーザ光La1,La2,La3を出射させ、第1系列で発生させた5倍波、第2系列で発生させた2倍波、及び第3の基本波レーザ光La3を重ね合わせて第3系列に入射させるように構成しても良い。さらに、波長変換部3に波長1.5μm帯の基本波レーザ光を入射し波長変換光学系30で波長193nmに波長変換する構成を例示したが、波長変換部3への入出射光の波長や波長変換光学系30の具体的な構成等は、公知の種々の形態を適用することができる。
【0071】
以上説明したようなレーザ装置LSは、小型軽量であるとともに取り扱いが容易であり、露光装置や光造形装置等の光加工装置、フォトマスクやウェハ等の検査装置、顕微鏡や望遠鏡等の観察装置、測長器や形状測定器等の測定装置、光治療装置などのシステムに好適に適用することができる。
【0072】
レーザ装置LSを備えたシステムの第1の適用例として、半導体製造や液晶パネル製造のフォトリソグラフィエ程で用いられる露光装置について、その概要構成を示す図7を参照して説明する。露光装置100は、原理的には写真製版と同じであり、石英ガラス製のフォトマスク113に精密に描かれたデバイスパターンを、フォトレジストを塗布した半導体ウェハやガラス基板などの露光対象物115に光学的に投影して転写する。
【0073】
露光装置100は、上述したレーザ装置LSと、照明光学系102と、フォトマスク113を保持するマスク支持台103と、投影光学系104と、露光対象物115を保持する露光対象物支持テーブル105と、露光対象物支持テーブル105を水平面内で移動させる駆動機構106とを備えて構成される。照明光学系102は複数のレンズ群からなり、レーザ装置LSから出力されたレーザ光を、マスク支持部103に保持されたフォトマスク113に照射する。投影光学系104も複数のレンズ群により構成され、フォトマスク113を透過した光を露光対象物支持テーブル上の露光対象物115に投影する。
【0074】
このような構成の露光装置100においては、レーザ装置LSから出力されたレーザ光が照明光学系102に入力され、所定光束に調整されたレーザ光がマスク支持台103に保持されたフォトマスク113に照射される。フォトマスク113を通過した光はフォトマスク113に描かれたデバイスパターンの像を有しており、この光が投影光学系104を介して露光対象物支持テーブル105に保持された露光対象物115の所定位置に照射される。これにより、フォトマスク113のデバイスパターンの像が、半導体ウェハや液晶パネル等の露光対象物115の上に所定倍率で結像露光される。
【0075】
このような露光装置100によれば、レーザ装置LSにおいて波長変換光学素子を交換するたびに多大な工数を要するようなことがなく、かつ各波長変換光学素子を最大限効率的に利用することができ、これにより、効率的な稼働を可能とした露光装置を提供することができる。
【0076】
次に、レーザ装置LSを備えたシステムの第2の適用例として、フォトマスクや液晶パネル、ウェハ等(被検物)の検査工程で使用される検査装置について、その概要構成を示す図8を参照して説明する。図8に例示する検査装置200は、フォトマスク等の光透過性を有する被検物213に描かれた微細なデバイスパターンの検査に好適に使用される。
【0077】
検査装置200は、前述したレーザ装置LSと、照明光学系202と、被検物213を保持する被検物支持台203と、投影光学系204と、被検物213からの光を検出するTDI(Time Delay and Integration)センサ215と、被検物支持台203を水平面内で移動させる駆動機構206とを備えて構成される。照明光学系202は複数のレンズ群からなり、レーザ装置LSから出力されたレーザ光を、所定光束に調整して被検物支持部203に保持された被検物213に照射する。投影光学系204も複数のレンズ群により構成され、被検物213を透過した光をTDIセンサ215に投影する。
【0078】
このような構成の検査装置200においては、レーザ装置LSから出力されたレーザ光が照明光学系202に入力され、所定光束に調整されたレーザ光が被検物支持台203に保持されたフォトマスク等の被検物213に照射される。被検物213からの光(本構成例においては透過光)は、被検物213に描かれたデバイスパターンの像を有しており、この光が投影光学系204を介してTDIセンサ215に投影され結像する。このとき、駆動機構206による被検物支持台203の水平移動速度と、TDIセンサ215の転送クロックとは同期して制御される。
【0079】
そのため、被検物213のデバイスパターンの像がTDIセンサ215により検出され、このようにして検出された被検物213の検出画像と、予め設定された所定の参照画像とを比較することにより、被検物に描かれた微細パターンの欠陥が抽出される。
【0080】
このような検査装置200によれば、レーザ装置LSにおいて波長変換光学素子を交換するたびに多大な工数を要するようなことがなく、かつ各波長変換光学素子を最大限効率的に利用することができ、これにより効率的な稼働を可能とした検査装置を提供することができる。なお、被検物213がウェハ等のように光透過性を有さない場合には、被検物からの反射光を投影光学系204に入射してTDIセンサ215に導くことにより、同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0081】
LS レーザ装置
La 基本波レーザ光
Lv 紫外レーザ光
1 レーザ光出力部
3 波長変換部
10 レーザ光発生部
20 増幅部
30 波長変換光学系
31〜36 波長変換光学素子(31 疑似位相整合型の波長変換光学結晶)
60 第1構成形態の損傷検出装置(損傷検出手段)
61 アパーチャ(開口)
65 反射光検出器
70 第2構成形態の損傷検出装置(損傷検出手段)
75 散乱光検出器
100 露光装置
102 照明光学系
103 マスク支持台
104 投影光学系
105 露光対象物支持テーブル
113 フォトマスク
115 露光対象物
200 検査装置
202 照明光学系
203 被検物支持台
204 投影光学系
213 被検物
215 TDIセンサ(検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力するレーザ光出力部と、前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光を波長変換して出力する波長変換部とを備え、
前記波長変換部には、
入射したレーザ光を波長変換して出射する波長変換光学素子と、
前記波長変換光学素子から放射される光の状態変化を検出することにより、前記波長変換光学素子を透過するレーザ光のビーム伝播領域において損傷が発生したことを検出して検出信号を出力する損傷検出手段と
を備えたことを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記損傷検出手段は、
前記波長変換光学素子から出射されるレーザ光のビーム径が、波長変換を開始した初期状態のビーム径から増加したときに、当該ビーム径の増加状態を検出して前記検出信号を出力するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記損傷検出手段は、
前記ビーム伝播領域において散乱光が発生したときに、当該散乱光を検出して前記検出信号を出力するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記損傷検出手段は、
前記初期状態において前記波長変換光学素子から出射されたレーザ光がそのまま通過し、前記ビーム径の増加状態において前記波長変換光学素子から出射されたレーザ光の外周部が掛かるように設定された開口と、
前記波長変換光学素子から出射され前記開口で反射されたレーザ光を検出する反射光検出器と
からなることを特徴とする請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記波長変換光学素子が、疑似位相整合型の波長変換光学結晶であることを特徴とする請求項2または4に記載のレーザ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを保持するマスク支持部と、
露光対象物を保持する露光対象物支持部と、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記マスク支持部に保持されたフォトマスクに照射する照明光学系と、
前記フォトマスクを透過した光を露光対象物支持部に保持された露光対象物に投影する投影光学系と
を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
被検物を保持する被検物支持部と、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記被検物支持部に保持された被検物に照射する照明光学系と、
前記被検物からの光を検出する検出器と
を備えたことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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