説明

レーザ超音波受信装置

【課題】現場での使用に適した装置状態の監視機能および装置状態の最適化機能を有し、安定した状態で長期間に渡って高精度の探傷操作が可能なレーザ超音波受信装置を提供する。
【解決手段】超音波信号を検出すべき被測定物ТPの表面に照射するレーザ光ILを発振するシードレーザ発振手段1と、前記シードレーザ発振手段1の発振光をパルス状に増幅する光増幅手段2とから構成されるレーザ発振手段PLDと、前記レーザ光ILが被測定物ТP表面で反射・散乱された信号光から、超音波信号を抽出する光学干渉手段FPと、前記光学干渉手段FPの出力信号を処理する信号処理手段12と、前記レーザ発振手段PLDの状態を検出する状態検出手段16とを備えたことを特徴とするレーザ超音波受信装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ超音波受信装置に係り、特に現場での使用に適した装置状態の監視機能および装置状態の最適化機能を有し、安定した状態で長期間に渡って高精度の探傷操作が可能なレーザ超音波受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(公知技術の説明)
超音波技術は材料表面に発生した亀裂や内在欠陥の検出、あるいは材料特性の分析を行う上で極めて有効な手法である。通常の検出操作において、超音波の受信は、例えば圧電素子などの受信素子を超音波の伝播媒質に接触させて行うが、これをレーザ光と受信用光学系を用いて代替することも可能である(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
レーザ光による超音波受信手法は原理的に非接触であり、被測定物が高温状態にあったり、高所に配置されていたり、高放射線場に配置されていたり、小型で複雑形状部であったりして検査器具の接触が困難な場合や、近接性が悪く遠隔非接触の測定手法が要求される部位などの種々の産業技術分野への応用が期待されている。
【0004】
レーザによる超音波受信技術は、連続発振または超音波の伝播時間に比べて十分長いパルスを発振レーザ光を受信点に照射し、その直進性や可干渉性を利用して超音波によって誘起される受信点の表面変位または振動速度を検出する技術である(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
上記レーザ超音波受信法において使用する光学系としては、マイケルソン干渉法、マッハツェンダ干渉法、ファブリ・ペロー法、位相共役素子による2光波混合法、ナイフエッジ法などが提案されている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、特に産業的な観点から応用が期待されている手法がファブリ・ペロー法である。
【0006】
ここで、パルスレーザ光とファブリ・ペロー法とを組み合わせた従来の典型的なレーザ超音波受信方法および装置について、以下に説明する。図7は従来の代表的なレーザ超音波受信装置の構成を示すブロック図である。
【0007】
図7において、任意の発生過程あるいは伝播過程に基づく超音波信号USが被測定物TPの表面上における任意の点Pに到達し、その部位に振動を生じるとする。ここで、受信パルスレーザ光源PDLは超音波信号USと適切に同期してパルスレーザ光ILを発振する。
【0008】
受信パルスレーザ光源PDL内に設置されたシードレーザ1から発振したシードレーザ光は光アイソレータ5aおよび全反射ミラーM1,M2を経由して光増幅器2(MOPA:Master Oscillator Pulsed Amplifier)に入射し、パルス状に出力を増幅される。ここで、上記シードレーザ1としては、出力数10mW〜1W程度の周波数安定化機能を有する連続発振Nd:YAGレーザ光源などが用いられる。MOPAは、光増幅媒質を電源3で励駆動されるフラッシュランプあるいは半導体レーザで励起するものであり、冷却水入口Winから冷却水出口Woutに還流する冷却水Wによって冷却されている。
【0009】
増幅後の受信パルスレーザ光ILはコリメータレンズL1によって第一の光ファイバ4に入射し、照射ヘッドH内に設置された第1の対物レンズL2によって被測定物TP上の測定点Pに照射される。ここで、各光学素子の端面で反射した反射光がシードレーザ1や光増幅器2に入射すると光学的なノイズが発生するため、シードレーザ1や光増幅器2へ反射光が混入することを防止できる位置に光アイソレータ5a、5bを設置する場合もある。また、被測定物TPに照射する光出力を調整するための光アッテネータ6を設置する場合もある。
【0010】
図8に示すように、照射されたレーザ光ILは超音波信号USに起因する表面振動により±vだけその光周波数に変調を受け(ドップラーシフト)、その散乱成分の一部SLが照射ヘッドH内に設置された第2の対物レンズL3で集光され、第2の光ファイバー7、コリメータレンズL4を介してファブリ・ペロー干渉計FPに入射する。ここで、ファブリ・ペロー干渉計FPに入射されるレーザ光SLの一部は部分透過ミラーPM1で反射され、リファレンス用光検出器8でその光量が測定される。
【0011】
上記ファブリ・ペロー干渉計FPは、多くの場合共焦点を有する2枚の部分反射ミラーCPM1、CPM2で構成された共振器であり、入射された光の光周波数と透過する光強度との間には図8に示す関係が成立する。ここで、図8の横軸は光周波数v、縦軸は透過する光強度Iを示す。図8に示す通り、ファブリ・ペロー干渉計FPは、その透過光強度Iが特定の光周波数においてピークを有し、その前後で速やかに減衰する狭帯域の光周波数フィルタとして動作する。ピークを与える光周波数はファブリ・ペロー干渉計FPの共振器長(すなわちミラーCPM1、CPM2の間隔)を調整することによって変えることができる。そこで、ファブリ・ペロー干渉計FPの入射光量および透過光量の測定値から、図8に示す曲線の傾きが最大となる光周波数(例えば図8のA点)をパルスレーザ光ILの光周波数と一致するように、圧電素子9でミラーCPM1あるいはCPM2を駆動制御すれば、超音波信号USによる光周波数の変化±vを、比較的大きな透過光強度の変化±Iに変換することが出来る。
【0012】
ファブリ・ペロー干渉計FPを透過した光信号を、レンズL5を介して光検出器10で検出し、超音波周波数USに応じた周波数フィルタ(多くの場合にハイパスフィルタを用いる)11で処理することにより、超音波信号USに応じた電気信号を得ることができる。検出された電気信号は信号処理装置12にて適宜、信号変換、信号処理、表示、記録される。ここで、光検出器8および10としてはフォトダイオード(PD)、PIN型フォトダイオード(PIN−PD)、あるいはアバランシェフォトダイオード(APD)が多く用いられる。
【0013】
なお、光検出器10の出力信号は分岐され、透過光量変化を観察するための周波数フィルタ(多くの場合ローパスフィルタ)13で処理して圧電素子駆動制御装置14に入力され、上述の通り共振器長の制御に供給される。
【0014】
また、上述の説明は、簡単のため、ファブリ・ペロー干渉計FPの透過光に着目して説明したが、ファブリ・ペロー干渉計FPの反射光に関しても類似の動作により超音波信号USの検出が可能である(例えば、非特許文献4参照)。
【0015】
また図9に示すように、照射ヘッドH内に設置された1枚の対物レンズL6および1本の光ファイバ15を用いて受信レーザ光ILの被測定物TPへの照射と、被測定物TP表面における散乱成分SLの集光を行う構造も既に公知である(例えば特許文献1参照)。この場合、光ファイバー15で被測定物TP側からファブリ・ペロー干渉計FPへと伝送される散乱光SLは、ビームスプリッタ16で受信用レーザ光ILの光路から分岐され、その後、カプリングレンズL7、光ファイバー17を介してファブリ・ペロー干渉計FPへと導かれる。散乱光SLと超音波受信用レーザ光ILの分岐を効率的に行うため、波長板など偏向制御用の光学素子と偏向ビームスプリッタとを用いた偏向による分岐制御が採用される場合もある。
【0016】
上記従来のレーザ超音波受信装置は、検査器具が原理的に非接触であるために、被測定物が高温度状態にあったり、高所に配置されたり、高放射線場に配置されたり、小型で複雑形状部を有して検査器具の接触が困難な場合や、近接性が悪く遠隔非接触の測定手法が求められる部位など、様々な技術分野への応用が期待されている。また、公知技術のレーザ超音波受信方法および装置は基本原理としては確立されており、実験室環境など整備された環境下、あるいは短時間の利用には十分に適用できる。
【特許文献1】特開2001−318081号公報
【非特許文献1】Monchalin, J. -P., et al., “Optical detection of ultrasound,” IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control 33, 1986, pp. 485-499.
【非特許文献2】Choquet, M., et al., “Laser-ultrasonic inspection of the composite structure of an aircraft in a maintenance hanger,” Review of Progress in Quantitative Nondestructive Evaluation, vol.14, 1995, pp. 545-552.
【非特許文献3】山脇:“レーザー超音波と非接触材料評価”、溶接学会誌、第64巻、No.2、P.104-108(1995)
【非特許文献4】Dewhurst, R. J., et al., “Modelling of confocal Fabry-Perot interferometer for the measurement of ultrasound,” Meas. Sci. Technol. 5 (1994) pp. 655-662.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記のような従来のレーザ超音波受信方法および装置を発電プラントや製造ラインなどの現場環境において、超音波による欠陥探傷や測定作業に長時間使用した場合には、装置設置環境における温度変化や振動による光学素子の位置ずれ、および装置で使用する冷却水の水量または温度変化、またレーザ超音波受信方法および装置に用いる受信レーザの励起用フラッシュランプの経時劣化により下記のような装置状態の悪化が提起されていた。
【0018】
(1)シードレーザ光の出力低下または発振異常
(2)パルスレーザ光の出力低下または波形歪みの発生
(3)光ファイバーカプリング損失の増加
(4)ファブリ・ペロー干渉計の共振器長さの制御不安定または制御不能
【0019】
すなわち、上記のような装置状態の悪化に起因して探傷操作が不安定になり探傷精度が低下する致命的な問題点があった。また長時間に亘り一定の装置状態を確保するためには頻繁に運転条件を調整する必要があるために運転操作が複雑になり探傷コストが大幅に増加してしまう問題も発生していた。より安定した状態で長期間に渡って高精度の探傷操作を可能とするためには、上記装置状態を適切に監視し、必要に応じて最適条件に再設定する必要がある。
【0020】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、現場での使用に適した装置状態の監視機能および装置状態の最適化機能を有し、安定した状態で長期間に渡って高精度の探傷操作が可能なレーザ超音波受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために請求項1記載のレーザ超音波受信装置は、超音波信号を検出すべき被測定物の表面に照射するシードレーザ光を発振するシードレーザ発振手段と、前記シードレーザ発振手段の発振光をパルス状に増幅する光増幅手段とから構成されるレーザ発振手段と、前記レーザ光が被測定物表面で反射・散乱された信号光から、超音波信号を抽出する光学干渉手段と、前記光学干渉手段の出力信号を処理する信号処理手段と、前記レーザ発振手段の状態を検出する状態検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項2記載のレーザ超音波受信装置は、前記状態検出手段は、前記シードレーザ発振手段の発振状態を検出することを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項3記載のレーザ超音波受信装置は、前記状態検出手段は、前記光増幅手段からパルス発振されるレーザ光の状態を検出することを特徴とする。
【0024】
また、請求項4記載のレーザ超音波受信装置は、前記光増幅手段に含まれる光増幅媒質を励起する励起光源に冷却水を供給し冷却する冷却水供給手段を備え、前記状態検出手段が前記冷却水供給手段から供給される冷却水の状態を検出する操作および冷却水の状態を制御する操作の少なくとも一方の操作を実行することを特徴とする。
【0025】
さらに、請求項5記載のレーザ超音波受信装置は、超音波信号を検出すべき被測定物の表面に照射するシードレーザ光を発振するシードレーザ発振手段と、前記シードレーザ発振手段の発振光をパルス状に増幅する光増幅手段とから構成されるレーザ発振手段と、入射光量を検出する入射光量検出手段と、出力光量を検出する出力光量検出手段とを有し、前記レーザ光が被測定物表面で反射・散乱された信号光から、超音波信号を抽出するファブリ・ペロー干渉計と、前記光学干渉手段の出力信号を処理する信号処理手段と、上記入射光量検出手段の出力信号および上記出力光量検出手段の出力信号の少なくとも1つを上記信号処理手段の超音波信号と同時性をもって表示および記録する状態検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0026】
さらに、請求項6記載のレーザ超音波受信装置は、前記レーザ発振手段から前記被測定物に照射されるレーザ光を伝送する光ファイバと、この光ファイバの入射端面を検出する画像センサと、この画像センサの検出結果から上記光ファイバへのレーザ光の入射状態を検出する画像処理手段と、この画像処理手段で検出されたレーザ光の入射状態結果から上記レーザ光の上記光ファイバへの入射状態を制御するための制御駆動手段とを備え、前記状態検出手段が上記画像処理手段で検出されたレーザ光の入射状態を表示および記録することを特徴とする。
【0027】
また、請求項7記載のレーザ超音波受信装置は、前記レーザ発振手段から前記被測定物に照射されるレーザ光を伝送する光ファイバと、この光ファイバからの後方散乱・反射光を検出する端面反射検出手段と、この端面反射検出手段で検出されたレーザ光の入射状態結果から上記レーザ光の上記光ファイバへの入射状態を制御するための制御駆動手段とを備え、前記状態検出手段が上記端面反射検出手段で検出されたレーザ光の入射状態を表示および記録することを特徴とする。
【0028】
また、請求項8記載のレーザ超音波受信装置は、前記光増幅手段に含まれる光増幅媒質を励起する励起光源を駆動するパルス電源手段を備え、前記状態検出手段が前記パルス電源手段の発振状態を検出する操作および発振状態を制御する操作の少なくとも一方を実行することを特徴とする。
【0029】
さらに請求項9記載のレーザ超音波受信装置は、前記状態検出手段の出力信号あるいはその特徴量の一部または全部を装置内部に保存するデータ保存手段と、このデータ保存手段に蓄積された信号の一部または全部の読み出し、あるいは制御信号の伝送を行うための通信手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
上記構成を有する本発明に係るレーザ超音波受信装置によれば、レーザ超音波受信装置の状態量が適切に監視検出され、外乱による変動が生じた場合においても、その状態量が常に適正値となるように制御されるために、より安定した状態で長期間に渡って高精度の探傷操作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係るレーザ超音波受信装置の実施例について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0032】
[実施例1]
図1は本実施例に係るレーザ超音波受信装置の構成を示すブロック図である。なお図7に示す従来のレーザ超音波受信装置における基本構成要素と同一の要素には同一符合を付している。図において、TPは被測定物、USは超音波信号、Hは受信レーザ光の照射ヘッドである。
【0033】
受信パルスレーザ光源PDL内のシードレーザ1から発振したレーザ光を光増幅器2でパルス増幅し、カプリングレンズL1を介して光ファイバ4に入射する。光ファイバ4の出力光ILは照射ヘッドH内の対物レンズL2で被測定物TPの照射点Pに照射される。ここで被測定物TPの表面に照射された光ファイバ4の出力光ILは超音波信号USに起因する表面振動により周波数シフトを受け、かつ表面で反射・散乱されて対物レンズL3で集光される。集光された散乱光SLは光ファイバ7を経由して受信用干渉計DOPに導かれる。
【0034】
散乱光SLの一部は部分反射ミラーPM1で反射され、光検出器8で検出される。一方、部分反射ミラーPM1を透過した光成分は圧電素子9によって共振器長を制御されるファブリ・ペロー干渉計FPに入射され、その透過光はレンズL5によって光検出器10に入力され、ここで超音波信号USに応じた電気信号に変換される。電気信号に変換された超音波信号は、一方で周波数フィルタ13、駆動制御装置14を経由してファブリ・ペロー干渉計FPの共振器長を駆動制御する圧電素子9の駆動信号となる。他方、電気信号に変換された超音波信号は周波数フィルタ11を経由して超音波信号が抽出され、信号処理装置12にて適宜、信号変換、信号処理、表示、記録される。
【0035】
ここで本実施例における第一の特徴は、シードレーザ光源1の出力光の一部(多くの場合、10%以下)を反射する部分反射ミラーPM2と、それを測定するための光検出器15を具備し、光検出器15の出力信号を状態監視装置19にて適宜、信号変換、信号処理、リアルタイム数値表示またはトレンド表示、記録するとともに、その信号が規定値を逸脱した場合にはその旨の警告、あるいは装置への停止信号を出力することにある。光検出器15の出力信号とは、光パワー(光エネルギー)、光周波数(波長)などである。
【0036】
上記のように構成することにより、シードレーザ光源1の経時変化あるいは異常、光学素子の位置ずれによる端面反射のシードレーザ光源1への混入等によるシードレーザ光の出力低下または発振異常などを監視すると共に、装置に何らかの異常が発生した場合には適切かつ迅速に装置運転にフィードバックすることができる。
【0037】
また本実施例における第二の特徴は、光増幅器2でパルス状に増幅され、光アッテネータ6で適切なパワーに調整された受信レーザ光ILの一部(多くの場合、10%以下)を反射する部分反射ミラーPM3と、それを測定するための光検出器16を具備し、光検出器16の出力信号を状態監視装置19aにて適宜、信号変換、信号処理、リアルタイム数値表示またはトレンド表示、記録すると共に、その出力信号が規定値を逸脱した場合にはその旨の警告、あるいは装置への停止信号を出力することにある。上記光検出器16の出力信号とは、パルス光の時間波形、光パワー(光エネルギー)、光周波数(波長)、パルス幅、発振周波数などである。
【0038】
上記のように構成することにより、光増幅器2の経時変化あるいは異常、フラッシュランプの経時劣化、光学素子の位置ずれによる端面反射の光増幅器への混入等による受信パルスレーザ光の出力低下または波形歪みの発生などが監視できると共に、装置に何らかの異常が発生した場合には適切かつ迅速に装置運転にフィードバックすることができる。
【0039】
本実施例における第三の特徴は、受信レーザ光をパルス状に増幅する光増幅器2において、その励起源を冷却するための冷却水系Wの状態量を測定する冷却水測定器17を具備し、冷却水測定器17の出力信号を状態監視装置19aにて適宜、信号変換、信号処理、リアルタイム数値表示またはトレンド表示、記録するとともに、その信号が規定値を逸脱した場合にはその旨の警告、あるいは装置への停止信号を出力することにある。ここで上記冷却水測定器17の出力信号とは、冷却水の流量および温度などである。
【0040】
上記のように構成することにより、冷却水量および温度の異常等による受信パルスレーザ光の出力低下または装置の劣化・故障につながる異常高温条件下での運転が監視できると共に、冷却水測定器17の出力信号とバルブ制御駆動装置18とにより冷却水を調整するバルブVの運転または開度を調整することにより、冷却水系に何らかの異常が発生した場合には適切かつ迅速に装置運転にフィードバックすることができる。
【0041】
本実施例における第四の特徴は、光検出器8および周波数フィルタ13の2つの出力信号を状態監視装置19aにて適宜、信号変換、信号処理、リアルタイムの数値表示またはトレンド表示、記録するとともに、その信号が規定値を逸脱した場合にはその旨の警告、あるいは装置の停止信号を出力することにある。光検出器8および周波数フィルタ13の2つの出力信号の比率は、装置が健全であれば一定値であるが、何らかの原因で共振器長の制御が不安定になると周波数フィルタ13の出力値が変動し2つの出力信号の比率が変化する。そのため、このように2信号の比率を常時監視することにより、環境温度変化や環境振動によるファブリ・ペロー干渉計の共振器制御の安定性を監視するとともに、制御が不安定になった場合には適切かつ迅速に装置運転制御にフィードバックすることができる。
【0042】
さらに、本実施例に示した少なくとも一つの出力信号と、信号処理装置12にて信号変換または信号処理された超音波信号とを、状態監視装置19aにて同時性をもって表示、記録することにより、連続的に採取した超音波信号の個々の波形に対し、それを測定した際の装置状態を把握することが出来る。
【0043】
[実施例2]
次に、本発明に係るレーザ超音波受信装置の実施例2について図2を参照して説明する。なお実施例1と同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
本実施例の特徴は、受信レーザ光ILを入射する光ファイバ4の入射端面を観察するための結像用光学系L8およびCCDカメラ20と、このCCDカメラ20で得られた画像情報から受信レーザ光ILの光ファイバ4への入射位置を検出し、その結果から入射位置を光ファイバ4端面のコア内の適正な位置に制御するための制御信号を生成する画像処理装置21と、光ファイバ4の端面位置を上述の適正な位置に移動するための移動機構22とを具備した構成にある。
【0045】
上記光ファイバ4の入射端面を2次元画像で観察すると、例えば図3に示すように、光ファイバ4の入射端面(中心:C1)と、受信レーザ光ILの入射位置(中心:C2)を同時に観察できる。ここで、図3の左側に示す画像処理装置21によってそれらのずれ量(C1−C2)を定量的に測定し、このずれ量を、図3の右側に示すように、移動機構22により両中心(C1,C2)が一致するように補正することにより、常に一定の光ファイバカプリング性能を得ることが出来る。なお上記移動機構22としては、水平垂直2軸に自由度を有する移動機構、あるいはそれに回転方向の自由度を有する移動機構が使用できる。なお、上記のような光ファイバ4の端面位置でなく、固定された光ファイバ4の端面に対する受信レーザ光ILの入射位置を、図示しない光学系を用いて制御駆動することも可能である。
【0046】
上記のように構成することにより、装置設置環境の温度変化や振動による光学素子の位置ずれ等による光ファイバカプリング損失の増加が監視できると共に、位置ずれが予め設定した許容範囲を超える場合には、適切かつ迅速にその位置を適正に復帰させることが可能になる。
【0047】
なお、位置ずれ補正の信号を状態監視装置19bにて適宜、信号変換、信号処理、リアルタイムの数値表示またはトレンド表示、記録するとともに、その信号が規定値を逸脱した場合にはその旨の警告、あるいは装置の停止信号を出力することもできる。
【0048】
[実施例3]
次に、本発明に係るレーザ超音波受信装置の実施例3について添付した図4を参照して説明する。なお実施例1〜2と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
本実施例における特徴的構成は、受信レーザ光ILを入射する光ファイバ4から光増幅器2方向に後方反射・散乱される光量(以降、「端面反射光量」と呼ぶ)を測定するための光検出器23と、その出力信号を一定値に保持するよう受信レーザ光ILの入射位置を光ファイバ4端面のコア内の適正な位置に制御するための制御信号を生成する制御装置24と、光ファイバ4の端面位置を上述の適正な位置に移動するための移動機構22とを具備した点にある。上記移動機構22としては水平垂直2軸方向に自由度を有する移動機構、あるいはそれに回転方向の自由度を有する移動機構が使用できる。
【0050】
上記受信レーザ光ILは光ファイバ4から照射ヘッドHを伝播する間、光ファイバ4の入射端面および出射端面、対物レンズL2の端面等において、その一部(例えば、光ファイバの材質が石英ガラスで、設置環境が空気中であると仮定すると、約3〜5%の光量)が後方に散乱、反射される。これらの散乱・反射量は装置の状態が定常的であれば常に一定値となるべき数値である。ここで、制御装置24によって端面反射光量を一定値に保持するように光ファイバ4のカプリングを移動機構22で補正することにより、常に一定の光ファイバカプリング性能を得ることが出来る。なお、光ファイバ4の端面位置でなく、固定された光ファイバ4の端面に対する受信レーザ光ILの入射位置を、図示しない光学系を用いて制御駆動することも可能である。
【0051】
上記のように構成することにより、装置設置環境の温度変化や振動による光学素子の位置ずれ等による光ファイバーカプリング損失の増加が監視できるとともに、その位置ずれが予め設定した許容範囲を超える場合には、適切かつ迅速にその適正位置に復帰させることができる。また、移動機構22の動作によっても光検出器23の出力信号が正常値に復帰しない場合には、受信レーザ光ILの伝送経路(図4において光ファイバ4や対物レンズL2)に何らかの異常があると推定することもできる。
【0052】
なお、光検出器23の信号を状態監視装置19cにて適宜、信号変換、信号処理、リアルタイムの数値表示またはトレンド表示、記録すると共に、その信号が規定値を逸脱した場合にはその旨の警告、あるいは装置の停止信号を出力することも可能である。また、この信号と受信用干渉計に入射する散乱光SLの出力を示す光検出器8の出力信号を、同時性をもって観察、記録することにより、光ファイバ4または7あるいは照射ヘッドHの健全性を推定することもできる。
【0053】
[実施例4]
次に、本発明に係るレーザ超音波受信装置の実施例4について添付した図5を参照して説明する。なお実施例1〜3と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
本実施例の特徴的構成は、シードレーザ光源1から発振したレーザ光をパルス増幅する光増幅器2の電源3の発振状態を測定・制御する電源監視制御装置25を具備し、電源監視制御装置25の出力信号を状態監視装置19cにて適宜、信号変換、信号処理、リアルタイム数値表示またはトレンド表示、記録するとともに、その信号が規定値を逸脱した場合にはその旨の警告、あるいは装置への停止信号を出力することにある。電源監視制御装置25の出力信号とは、パルス電源の発振周波数、ピーク電圧、発振パルス数などである。
【0055】
上記のように構成することにより、励起用フラッシュランプの経時劣化が監視できると共に、受信レーザ光ILの発振出力を絞る場合には、図1に示すような光アッテネータ6に依らずに、電源3の出力を低下させて発振出力を絞ることが可能であり、電源3及びフラッシュランプの寿命の延長を図ることができる。
【0056】
[実施例5]
次に、本発明に係るレーザ超音波受信装置の実施例5について添付した図6を参照して説明する。なお前記実施例1〜4と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0057】
本実施例の特徴的構成は、受信パルスレーザ光源PDL内および受信用干渉計DOP内の少なくとも一方に、実施例1〜4で説明した各監視・制御機能の出力信号あるいはその特徴量の一部または全部を記憶するデータ記憶装置25と、そのデータを読み出すためのインターフェース26a、26bとを具備すると共に、状態監視装置19dにてインターフェース26a、26bを用いて、適宜そのデータを読み出し、信号変換、信号処理、リアルタイム数値表示またはトレンド表示、記録するとともに、その信号が規定値を逸脱した場合にはその旨の警告、あるいは装置への停止信号を出力するように構成した点にある。インターフェース26a、26bとしては、有線、無線のアナログ形式、デジタル形式のいずれの組合せも考えられる。また、制御信号を状態監視装置19dから受信パルスレーザ光源PDL内および受信用干渉計DOPに伝送し、駆動機構22の動作、バルブVの開度、電源監視制御装置25による発振状態を遠隔で制御することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るレーザ超音波受信装置の第一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係るレーザ超音波受信装置の第二実施例の構成を示すブロック図。
【図3】光ファイバへの受信レーザ光の入射状態を示す断面図。
【図4】本発明に係るレーザ超音波受信装置の第三実施例の構成を示すブロック図。
【図5】本発明に係るレーザ超音波受信装置の第四実施例の構成を示すブロック図。
【図6】本発明に係るレーザ超音波受信装置の第五実施例の構成を示すブロック図。
【図7】従来のレーザ超音波受信装置の構成を示すブロック図。
【図8】ファブリ・ペロー干渉計の動作を示す説明図。
【図9】従来のレーザ超音波受信装置の他の構成例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0059】
1 シードレーザ光源
2 光増幅器
3 電源
4、7、15、17 光ファイバ
8、10、15、16、23 光検出器
11、13 周波数フィルタ
12 信号処理装置
17 冷却水測定器
18 バルブ制御駆動装置
19、19a、19b、19c、19d 状態監視装置
20 CCDカメラ
21 画像処理装置
22 入射状態調整用駆動機構
TP 被検査体
V 冷却水調整用バルブ
PDL 受信パルスレーザ光源
DOP 受信用干渉計
H 照射ヘッド
US 超音波信号
W 冷却水
FP ファブリ・ペロー干渉計
PM1、PM2 部分反射ミラー
L レンズ(あるいはレンズ群)
M ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号を検出すべき被測定物の表面に照射するシードレーザ光を発振するシードレーザ発振手段と、前記シードレーザ発振手段の発振光をパルス状に増幅する光増幅手段とから構成されるレーザ発振手段と、
前記レーザ光が被測定物表面で反射・散乱された信号光から、超音波信号を抽出する光学干渉手段と、
前記光学干渉手段の出力信号を処理する信号処理手段と、
前記レーザ発振手段の状態を検出する状態検出手段とを備えたことを特徴とするレーザ超音波受信装置。
【請求項2】
前記状態検出手段は、前記シードレーザ発振手段の発振状態を検出することを特徴とする請求項1記載のレーザ超音波受信装置。
【請求項3】
前記状態検出手段は、前記光増幅手段からパルス発振されるレーザ光の状態を検出することを特徴とする請求項1記載のレーザ超音波受信装置。
【請求項4】
前記光増幅手段に含まれる光増幅媒質を励起する励起光源に冷却水を供給し冷却する冷却水供給手段を備え、
前記状態検出手段が前記冷却水供給手段から供給される冷却水の状態を検出する操作および冷却水の状態を制御する操作の少なくとも一方の操作を実行することを特徴とする請求項1記載のレーザ超音波受信装置。
【請求項5】
超音波信号を検出すべき被測定物の表面に照射するシードレーザ光を発振するシードレーザ発振手段と、前記シードレーザ発振手段の発振光をパルス状に増幅する光増幅手段とから構成されるレーザ発振手段と、
入射光量を検出する入射光量検出手段と、出力光量を検出する出力光量検出手段とを有し、前記レーザ光が被測定物表面で反射・散乱された信号光から、超音波信号を抽出するファブリ・ペロー干渉計と、
前記光学干渉手段の出力信号を処理する信号処理手段と、
上記入射光量検出手段の出力信号および上記出力光量検出手段の出力信号の少なくとも1つを上記信号処理手段の超音波信号と同時性をもって表示および記録する状態検出手段とを備えたことを特徴とするレーザ超音波受信装置。
【請求項6】
前記レーザ発振手段から前記被測定物に照射されるレーザ光を伝送する光ファイバと、
この光ファイバの入射端面を検出する画像センサと、
この画像センサの検出結果から上記光ファイバへのレーザ光の入射状態を検出する画像処理手段と、
この画像処理手段で検出されたレーザ光の入射状態結果から上記レーザ光の上記光ファイバへの入射状態を制御するための制御駆動手段と
を備え、
前記状態検出手段が上記画像処理手段で検出されたレーザ光の入射状態を表示および記録することを特徴とする請求項1記載のレーザ超音波受信装置。
【請求項7】
前記レーザ発振手段から前記被測定物に照射されるレーザ光を伝送する光ファイバと、
この光ファイバからの後方散乱・反射光を検出する端面反射検出手段と、
この端面反射検出手段で検出されたレーザ光の入射状態結果から上記レーザ光の上記光ファイバへの入射状態を制御するための制御駆動手段と
を備え、
前記状態検出手段が上記端面反射検出手段で検出されたレーザ光の入射状態を表示および記録することを特徴とする請求項1記載のレーザ超音波受信装置。
【請求項8】
前記光増幅手段に含まれる光増幅媒質を励起する励起光源を駆動するパルス電源手段を備え、
前記状態検出手段が前記パルス電源手段の発振状態を検出する操作および発振状態を制御する操作の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項1記載のレーザ超音波受信装置。
【請求項9】
前記状態検出手段の出力信号あるいはその特徴量の一部または全部を装置内部に保存するデータ保存手段と、
このデータ保存手段に蓄積された信号の一部または全部の読み出し、あるいは制御信号の伝送を行うための通信手段と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のレーザ超音波受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate