説明

レーダー装置の軸調整方法および軸調整装置

【課題】低コストで車両に備えられた複数のレーダー装置の基準軸を各々調整可能とするレーダー装置の軸調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】車両に搭載されたレーダー装置の軸調整方法であって、車両に搭載された第1のレーダー装置の物体検出可能エリアと当該車両に搭載された第2のレーダー装置の物体検出可能エリアとの重複エリアに軸調整用のターゲットを1つだけ配置するターゲット配置工程、第1のレーダー装置および第2のレーダー装置によって、当該第1のレーダー装置および当該第2のレーダー装置から見たターゲットの方向をそれぞれ検出するターゲット方向検出工程、および、ターゲット方向検出工程の検出結果にもとづいて第1のレーダー装置および第2のレーダー装置の軸調整を行う調整工程を備える、レーダー装置の軸調整方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダー装置の軸調整方法および軸調整装置に関し、より特定的には、車両に備えられた複数のレーダー装置の軸を、ターゲットを用いて調整する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両周囲の物体を検出するレーダー装置、および当該レーダー装置を用いた衝突防止システムが開発されている。このようなシステムに用いられるレーダー装置の一例として、ミリ波レーダー装置がある。一般的なミリ波レーダー装置は、所定の方向へ電磁波を送信する送信部と、当該電磁波の反射波を受信する受信部を備える。そして、上記ミリ波レーダー装置は、定められた検出エリア内で物体に反射された反射波にもとづいて当該物体の位置を、基準軸を基準として検出する。
【0003】
図9に示すように車両10の前方中央に備えられた前方レーダー11が物体Bの位置を検出する例について説明する。なお、図9は車両10に備えられた前方レーダー11が物体を検出する様子を示す上面図である。前方レーダー11は典型的な既知のミリ波レーダー装置であり、受信部および送信部が一体的に構成されている。説明を簡単にするため、以下では前方レーダー11が物体の水平方向の位置を検出する場合について説明する。
【0004】
前方レーダーの検出エリアA1内に物体Bが存在するものとする。物体Bは前方レーダー11の電磁波を反射する任意の物体である。前方レーダー11は、検出エリアA1内部に存在する物体Bからの反射波にもとづいて、前方レーダー11から物体Bまでの距離DB、および物体が存在する方向を示す角度(以下、検出角と呼称する)θを検出する。前方レーダー11は、距離Kを物体Bからの反射波の強度Fや、送信波と物体Bからの反射波の周波数差にもとづいて検出する。また、前方レーダー11は、検出角θを物体Bからの反射波の位相にもとづいて検出する。なお、角度θは、前方レーダー11の基準軸J1(図9中の1点鎖線)と、物体Bおよび前方レーダー11の受信部を結ぶ直線とが成す角度である。前方レーダー11の基準軸J1とは、検出角θを上記の通り定義するために前方レーダー11の受信部中心から前方へ向けて仮想的に設定される軸線である。
【0005】
ここで、図10を参照して前方レーダー11が物体の位置を検出する原理についてより詳細に説明する。なお、以下に説明する原理は、位相モノパルス方式などの原理と同様である。図10は物体からの反射波を受信する前方レーダー11の受信部の拡大図である。前方レーダー11の受信部には、複数の受信アンテナが定められた間隔を隔てて配置される。例として図10では、受信アンテナR1および受信アンテナR2が間隔dを隔てて配置される様子を示す。受信アンテナR1および受信アンテナR2は、各々物体Bからの反射波を受信する。受信アンテナR1で受信する物体Bからの反射波を反射波W1とし、受信アンテナR2で受信する反射波を反射波W2とする。
【0006】
受信アンテナR1および受信アンテナR2が間隔dを隔てて配置されているため、物体Bから受信アンテナR1まで反射波W1が伝搬する距離と、物体Bから受信アンテナR2まで反射波W2が伝搬する距離とは長さが異なる。以下、反射波W1と反射波W2との伝搬距離の差をVとする。伝搬距離の差Vの長さは、反射波を反射した物体が位置する方向に応じて変化する。ここで、図10に示すように、間隔dを斜辺とする直角三角形において、1辺の長さは伝搬距離の差Vに相当し、当該辺の対角の大きさは検出角θに相当する。したがって検出角θは下式で算出することができる。
sinθ=d/V
【0007】
受信アンテナR2で受信される反射波W2の位相と、受信アンテナR1で受信される反射波W1の位相とは、伝搬距離の差Vの長さに応じてずれる。したがって、前方レーダー11は、伝搬距離の差Vを、受信アンテナR2で受信される反射波W2と、受信アンテナR1で受信される反射波W1の位相差にもとづいて算出することができる。前方レーダー11において認識可能な、受信アンテナR1で受信される反射波W1の位相と、受信アンテナR2で受信される反射波W2の位相との差(以下、認識位相差と呼称する)をΔωとすると、前方レーダー11は、伝搬距離の差Vを認識位相差Δωおよび反射波の波長λにもとづいて下式で算出する。
V=λ*Δω/π
【0008】
以上より、前方レーダー11は、算出した伝搬距離の差V、および既知の間隔dにもとづいて検出角θを算出することができる。
【0009】
但し、伝搬距離の差Vは1周期以上ずれている場合がある。すなわち、実際の位相差をΔφとすると、位相差Δφの値は360°以上である場合がある。一方で、前方レーダー11において認識される認識位相差Δωの値は1周期の範囲内、すなわち0°以上360°未満である。したがって、例えば、前方レーダー11は、実際の位相差Δφの値が12°、372°、732°などの、N周期(Nは整数)ずれた反射波を受信した場合、何れの反射波についても認識位相差Δωの値が12°であると認識する。したがって、前方レーダー11は、このようなN周期ずれた反射波による虚像(以下、ゴーストと呼称する)を認識してしまう場合がある。前方レーダー11は、このようなゴーストを発生させる位相差ΔφがN周期ずれた反射波と、本当の物体からの反射波とを、認識位相差Δω以外の反射波の情報にもとづいて判別する。
【0010】
例えば、前方レーダー11は、反射波の強度Fにもとづいて、本当の物体からの反射波と、当該反射波と位相差ΔφがN周期ずれた反射波との到来方向を判別する。物体からの反射波は伝搬距離が長いほど減衰して強度Fの値が小さくなる性質を有する。そのため、実際の位相差ΔφがN周期ずれた反射波であっても、異なる方向からの反射波であれば、前方レーダー11までの伝搬距離が異なり、当該反射波のアンテナゲインも広角側ゴーストの方向は小さい。すなわち、前方レーダー11は、位相差ΔφがN周期ずれた反射波で且つ、異なる方向からの反射波は、異なる強度を有すると認識する。そこで、前方レーダー11は、認識位相差Δωの値毎に、認識する強度Fの値の範囲(以下、強度認識範囲と呼称する)を予め記憶しておき、受信した反射波の強度Fが強度認識範囲内の大きさである場合のみ、当該反射波を物体の検出処理の対象とする。このような処理によれば、位相差ΔφがN周期ずれた反射波のうち、任意の強度の反射波のみを物体検出処理の対象として認識することができる。
【0011】
さらに、前方レーダー11は、受信した反射波のうち、定められた範囲内の強度を有する反射波のみを、物体からの反射波として検出処理の対象とする。具体的には、前方レーダー11は、受信した反射波のうち、強度閾値FT以上の強度を有する反射波のみを、物体からの反射波として検出処理の対象とする。また、前方レーダー11は、受信した反射波のうち、定められた範囲内の位相差を有する反射波のみを、物体からの反射波として検出処理の対象とする。具体的には、前方レーダー11は、受信した反射波のうち、位相差Δωの値が±ωTの範囲内である反射波のみを、物体からの反射波として上記物体の検出処理の対象とする。なお、以下ではωTの値を位相差閾値と呼称する。
【0012】
前方レーダー11は、上記のように定められた範囲の距離および方向からの反射波のみを物体の検出処理に用いる。そのため前方レーダー11の検出エリアA1は、図9に示すように前方レーダー11を中心として車両前方へ略扇形に設定される。
【0013】
上記前方レーダー11のようなミリ波レーダーは、物体の位置を基準軸にもとづいて検出する。したがって、基準軸が正しい位置に設定されていなければ、先行車や障害物など、車両周囲の物体の位置が誤って検出されてしまう場合がある。そして、車両周囲の物体の位置が誤って検出された場合、衝突防止システムなどの、当該物体の検出位置にもとづいて車両を制御するシステムが、正常に作動しなくなり、適切な車両制御が実行されなくなる恐れがある。このような問題を解決するために、ミリ波レーダーの基準軸を予め正しい位置に調整しておく必要がある。
【0014】
上記ミリ波レーダーのようなレーダー装置の基準軸を調整する方法の一例が、特許文献1にて開示されている。特許文献1に開示される軸調整方法では、ターゲットの近傍に電磁波吸収体を配置し、当該ターゲットの位置をレーダー装置で検出する。そして、ターゲットが所定の位置で検出されるようにレーダー装置の取り付け位置を調整して、基準軸を調整する。このような調整方法によれば、通常より省スペースでレーダー装置の基準軸を調整することができる。
【特許文献1】特開2003−240837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、近年、車両周囲のより広い範囲で物体を正確に検出するため、上記のようなレーダー装置を複数搭載する車両が開発されている。例えば、図11に示す車両10は、前方中央に前方レーダー11を、前方左側に左前方レーダー12を、前方右側に右前方レーダー13を搭載する。なお、図11は、前方レーダー11、左前方レーダー12、および右前方レーダー13を搭載する車両10の上面図である。左前方レーダー12および右前方レーダー13は、何れも前方レーダー11と同様の典型的な既知のミリ波レーダーである。また、左前方レーダー12および右前方レーダー13が物体を検出する原理は、上記に説明した前方レーダー11が物体を検出する原理と同様である。以下では、前方レーダー11、左前方レーダー12、および、右前方レーダー13を総称して車載レーダーと呼称する。
【0016】
左前方レーダー12の検出エリアA2は、左前方レーダー12を中心として車両左前方へ略扇形に設定される。また、左前方レーダー12の基準軸J2は、左前方レーダー12の受信部を中心に左前方に設定される。一方、右前方レーダー13の検出エリアA2は、右前方レーダー13を中心として車両右前方へ略扇形に設定される。また、一方、右前方レーダー13の基準軸J3は、右前方レーダー13の受信部中心から右前方へ向けて設定される。
【0017】
上記のような車両10に搭載された車載レーダーの基準軸J1、J2、およびJ3を、例えば特許文献1の手法などを用いて各々調整する場合、図11に示すように複数のターゲット30を、基準軸J1、J2、およびJ3の軸線上に配置して、調整を実施する必要がある。すなわち、レーダーの搭載数に応じて、複数のターゲットを用意する必要がある。そのため、車両に搭載するレーダーの数の増加に伴い、ターゲットなどの基準軸を調整するための設備に投じる費用が増加する問題がある。
【0018】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、低コストで車両に備えられた複数のレーダー装置の基準軸を各々調整可能とするレーダー装置の軸調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を採用した。
【0020】
第1の発明は、車両に搭載されたレーダー装置の軸調整方法であって、車両に搭載された第1のレーダー装置の物体検出可能エリアと、当該車両に搭載された第2のレーダー装置の物体検出可能エリアとの重複エリアに軸調整用のターゲットを1つだけ配置するターゲット配置工程、第1のレーダー装置および第2のレーダー装置によって、当該第1のレーダー装置および当該第2のレーダー装置から見たターゲットの方向をそれぞれ検出するターゲット方向検出工程、および、ターゲット方向検出工程の検出結果にもとづいて第1のレーダー装置および第2のレーダー装置の軸調整を行う調整工程を備える、レーダー装置の軸調整方法である。
【0021】
第2の発明は、第1の発明において、ターゲット方向検出工程の前に、レーダー装置各々の物体検出可能エリアが互いに重なるように、レーダー装置の少なくとも何れか1つの物体検出可能エリアを変更する検出エリア変更工程をさらに含むレーダー装置の軸調整方法である。
【0022】
第3の発明は、第2の発明において、ターゲット方向検出工程において、レーダー装置は、電磁波をターゲットに向け送出し、ターゲットに反射された電磁波の反射波を受信し、反射波にもとづいてターゲットの方向を検出し、検出エリア変更工程では、レーダー装置における反射波の受信感度を、当該レーダー装置が本来の用途で使用される時より相対的に高くすることによって、当該レーダー装置の物体検出可能エリアを一時的に広げるレーダー装置の軸調整方法である。
【0023】
第4の発明は、ターゲット方向検出工程において、レーダー装置は、電磁波をターゲットに向け送出し、ターゲットに反射された電磁波の反射波を受信し、反射波にもとづいてターゲットの方向を検出し、ターゲット方向検出工程において、レーダー装置は、当該レーダー装置によって検出されるターゲットの虚像の方向にもとづいて、ターゲットの本当の方向を検出する、レーダー装置の軸調整方法である。
【0024】
第5の発明は、第1の発明において、調整工程の前に、ターゲットが正常な位置に配置されているか否かを、レーダー装置毎に検出されたターゲットの方向にもとづいて判定するターゲット配置判定工程と、ターゲット配置判定工程において、ターゲットが正常な位置に配置されていないと判定された場合、調整工程を行うことなくその旨を報知する報知工程とをさらに備えるレーダー装置の軸調整方法である。
【0025】
第6の発明は、第5の発明において、ターゲット配置判定工程において、第1のレーダー装置により検出されたターゲットの方向を示す第1の角度、および第2のレーダー装置により検出されたターゲットの方向を示す第2の角度の差分値を算出し、差分値が定められた範囲内である場合、ターゲットが正常な位置に配置されていると判定し、差分値が定められた範囲外である場合、ターゲットが正常な位置に配置されていないと判定する、レーダー装置の軸調整方法である。
【0026】
第7の発明は、第1の発明において、ターゲット配置工程において、ターゲットは第1のレーダー装置の物体検出可能エリアと、車両に搭載された第3のレーダー装置の物体検出可能エリアとの重複エリア内、且つ、第3のレーダー装置の正面に配置され、軸調整工程は、第3のレーダー装置により測定したターゲットまでの距離、および、第3のレーダー装置と第1のレーダー装置との相対位置にもとづいて第1のレーダー装置の目標方向を設定する目標方向設定工程と、目標方向設定工程の後に、第1のレーダー装置に検出されたターゲットの方向が、第1のレーダー装置の目標方向に合致するように、第1のレーダー装置の軸を合わせこむ、方向合わせ工程とを含む、レーダー装置の軸調整方法である。
【0027】
なお、第1の発明における第1のレーダー装置および第2のレーダー装置の何れかに、後述第7の発明における第3のレーダーを置き換えて適用しても構わない。
【0028】
第8の発明は、第1から第7の発明の何れかにおいて、第1のレーダー装置の物体検出可能エリアは車両の前方に定められ、第2のレーダー装置の物体検出可能エリアは車両の前側方に定められる、レーダー装置の軸調整方法である。
【0029】
第9の発明は、第1から第7の発明の何れかにおいて、第1のレーダー装置の物体検出可能エリアは車両の後方に定められ、第2のレーダー装置の物体検出可能エリアは車両の後側方に定められる、レーダー装置の軸調整方法である。
【0030】
第10の発明は、第1または第2の発明の何れかにおいて、第1のレーダー装置の物体検出可能エリアは車両の近傍に予め定められ、第2のレーダー装置の物体検出可能エリアは第1のレーダー装置のより遠方に予め定められる、レーダー装置の軸調整方法である。
【発明の効果】
【0031】
第1の発明によれば、車両に備えられた複数のレーダー装置の基準軸を1つのターゲットで各々調整することができる。この際、ターゲットを移動させる必要が無く、また、レーダー装置毎にターゲットを複数用意する必要も無いため、低コストで複数のレーダー装置の基準軸を各々調整することができる。
【0032】
第2の発明によれば、本来のレーダー装置の検出エリア内にターゲットが存在していない場合であっても、当該検出エリアを変更して、ターゲットを検出することができる。
【0033】
第3の発明によれば、電磁波式のレーダー装置において、検出エリアを容易に変更して重複エリアを生成することができる。
【0034】
第4の発明によれば、ターゲットの虚像にもとづいて本当のターゲットの方向を検出できるため、ターゲットが本来の検出エリア外に配置されていても、ターゲットの方向を検出することができる。
【0035】
第5の発明によれば、ターゲットが正常な位置に配置されているか否かを自動的に判断した後に、レーダー装置の基準軸の調整を実行することができる。そのため、ターゲットが正常に配置されていない状態で、謝った調整を実行することを未然に防ぐことができる。
【0036】
第6の発明によれば、ターゲットが第1のレーダー装置と第2のレーダー装置を結ぶ線分の垂直二等分線上に配置されている場合、ターゲットが正しく配置されていると判定することができる。
【0037】
第7の発明によれば、ターゲットが第3のレーダー装置の正面に配置されていれば、第1のレーダー装置の目標方向を予め設定しておく必要がなく、ターゲットの位置に応じて自動で第1のレーダー装置の軸調整を行うことができる。
【0038】
第8の発明によれば、車両前方の物体を検出するレーダー装置、および車両前側方の物体を検出するレーダー装置を1つのターゲットで調整することができる。
【0039】
第9の発明によれば、車両後方の物体を検出するレーダー装置、および車両後側方の物体を検出するレーダー装置を1つのターゲットで調整することができる。
【0040】
第10の発明によれば、車両近傍の物体を検出するレーダー装置、および当該レーダー装置よりも遠方の物体を検出するレーダー装置を1つのターゲットで調整することができる。
【0041】
第11の発明によれば、車両後方の物体を検出するレーダー、および車両後側方の物体を検出するレーダーを1つのターゲットで調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態に係るレーダー装置の軸調整方法について説明する。本実施形態では、車両10に備えられた3つのレーダー装置各々の基準軸を、1つのターゲット30で調整する例について説明する。図1に示すように、車両10には、前方レーダー11、左前方レーダー12、および、右前方レーダー13の3つのレーダー装置が備えられる。図1は、前方レーダー11、左前方レーダー12、および、右前方レーダー13の搭載図である。前方レーダー11、左前方レーダー12、および、右前方レーダー13は、何れも、前述の[背景技術]の欄において説明した原理にもとづいて物体を検出するミリ波レーダー装置である。以下、前述の[背景技術]の欄での説明と同様に、前方レーダー11、左前方レーダー12、および、右前方レーダー13を総称して車載レーダーと呼称する。前方レーダー11は、車両の前方中央のフロントグリル内側に配置される。また、左前方レーダー12は、車両のフロントバンパー左端に配置される。また、右前方レーダー13は、車両のフロントバンパー左端に配置される。このようにして、前方レーダー11は車両10を前後に貫通する中心線(以下、車両中心線と呼称する)上に配置され、左前方レーダー12および右前方レーダー13は各々当該中心線を中心として左右略対称に配置される。
【0043】
次に、図2を参照して、車載レーダーを調整するシステムの機能構成について説明する。図2は、車載レーダーを調整するシステムの機能構成を示すブロック図である。図2に示すように車載レーダーを調整するシステムは大分して車両10および調整設備20により構成される。
【0044】
車両10は、前方レーダー11、左前方レーダー12、右前方レーダー13、およびレーダー制御ECU14を備える。前方レーダー11、左前方レーダー12、右前方レーダー13、およびレーダー制御ECU14は、何れも車両10のIG電源がON状態である場合に動作する。
【0045】
前方レーダー11、左前方レーダー12、および、右前方レーダー13は、各々レーダー制御ECU14に接続される。そして、各車載レーダーは、検出した物体までの距離、および検出した物体の検出角をレーダー制御ECU14へ出力する。なお、前方レーダー11が検出するターゲット30までの距離をターゲット検出距離T1とし、前方レーダー11が検出するターゲット30の検出角度を検出角θMとする。また、左前方レーダー12が検出するターゲット30の検出角度を検出角θLとする。また、右前方レーダー13が検出するターゲット30の検出角度を検出角θRとする。
【0046】
レーダー制御ECU14は、典型的には、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)などの情報処理装置、メモリなどの記憶装置、およびインターフェース回路などを備える制御装置である。レーダー制御ECU14は、設備制御装置21に接続される。
【0047】
レーダー制御ECU14は、各車載レーダーに対して、検出エリアを拡大する指示信号、および、調整量に応じて基準軸を調整する指示信号を出力する。調整量は、基準軸を正しい方向へ移動させるための回転量である。詳細は後述するが、各車載レーダーは、基準軸をレーダーの受信部を中心として調整量だけ回転させることで、基準軸を正しい位置へ調整する。なお、左前方レーダー12の調整量をΔθLとする。
【0048】
また、レーダー制御ECU14は、設備制御装置21に対して車載レーダーの調整が完了したことを示す信号(以下、調整完了信号と呼称する)、およびターゲット30の再配置を指示する信号(以下、ターゲット再配置信号と呼称する)を出力する。
【0049】
調整設備20は、設備制御装置21、ターゲット移動装置22、車両配置確認装置23、および警告装置24を備える設備である。
【0050】
設備制御装置21は、典型的には、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)などの情報処理装置、メモリなどの記憶装置、インターフェース回路、および操作盤などを備える制御装置である。設備制御装置21は、レーダー制御ECU14、ターゲット移動装置22、車両配置確認装置23、および警告装置24と各々接続される。
【0051】
設備制御装置21は、レーダー制御ECU14に対して車載レーダーの調整を開始する指示信号(以下、調整開始信号と呼称する)を出力する。また、設備制御装置21は、ターゲット移動装置22に対してターゲット30を移動する指示信号(以下、ターゲット移動信号と呼称する)を出力する。また、設備制御装置21は、ターゲット再配置信号を受信すると、警告装置24に対して警報を発報する指示信号(以下、警報信号と呼称する)を出力する。なお、作業者は、設備制御装置21を操作して、上記の調整開始信号およびターゲット移動信号を任意に出力させることができる。
【0052】
ターゲット移動装置22は、車載レーダーの調整に用いるターゲット30を定められた位置(以下、ターゲット原位置と呼称する)へ設備制御装置21の指示にしたがって移動させる移動装置である。ターゲット移動装置22は、典型的には、ターゲット30を移動部位に備え付けた既知の位置決め装置である。なお、ターゲット移動装置22は、ターゲット30を定められた位置へ移動させることが可能な装置であれば、既知の各種移動装置を用いて良い。
【0053】
車両配置確認装置23は、車両10が定められた位置(以下、車両原位置と呼称する)に配置されたことを検出する装置である。車両配置確認装置23は、典型的には、車両原位置近傍に備えられた既知の近接センサである。車両配置確認装置23は、車両10が車両原位置に配置されたことを検出すると、車両10が車両原位置に配置されたことを示す信号(以下、車両配置完了信号と呼称する)を設備制御装置21に対して出力する。なお、車両配置確認装置23は、車両10が車両原位置に配置されたことを検出可能であれば、近接センサに限らず、既知の装置を用いて良い。
【0054】
警告装置24は、典型的にはランプやブザーなどの警報装置である。警告装置24は、設備制御装置21の指示に従い警報を発報する。詳細は後述のレーダー制御ECU14が実行するステップS4からS6の処理の説明にて述べるが、レーダー制御ECU14は、ターゲットが正しく配置されているか否かを判定し、ターゲット30が正しく配置されていない場合、ターゲット再配置信号を設備制御装置21に対して出力する。設備制御装置21は、ターゲット再配置信号を受信すると、警報信号を警告装置24に対して出力する。警告装置24は、警告信号を受信すると警報を発報する。すなわち、ターゲット30が正しく配置されていない場合、警告装置24は、警報を発報する。
【0055】
ターゲット30は、典型的には、1面を開口した正四面体形状を成す構造物である。ターゲット30の各面は、アルミ板により構成される。ターゲット30は、各車載レーダーから開口部が見えるように配置される。なお、車載レーダーから送信される電磁波を良好に反射可能であれば、ターゲット30の形状および構成材料は上記に限らない。
【0056】
次に、図3を参照して車載レーダーの調整作業の手順について説明する。図3は車載レーダーの調整作業の手順を示すフローチャートの一例である。図3のフローチャートに示す作業は、工程P6の処理を除き調整設備20に備えられた設備制御装置21が実行する処理である。なお、以下では設備制御装置21およびレーダー制御ECU14の制御処理により、車両10に搭載された車載レーダーの軸調整作業が半自動的に実行される例について説明するが、各工程での作業は作業者が実行しても構わない。
【0057】
工程P1において、設備制御装置21は、車両配置完了信号を受信しているか否かを判定する処理を実行する。具体的には、設備制御装置21は、車両配置確認装置23から車両配置完了信号を受信しているか否かを判定する。設備制御装置21が車両配置完了信号を受信していると判定した場合、調整作業は、工程P2へ移行する。一方、設備制御装置21が車両配置完了信号を受信していないと判定した場合、調整作業は、再度工程P1に戻る。
【0058】
なお、車両10を車両原位置まで移動させる作業は、作業者が車両10を運転して実行しても良いし、車両を搬送する運搬装置により実行されても構わない。
【0059】
また、上記工程P1の説明では、設備制御装置21が実行する処理は、設備制御装置21の代わりに作業者が実行しても構わない。具体的には、作業者は、車両が車両原位置に配置されているか否かを目視などで確認して判定しても構わない。
【0060】
工程P2において、設備制御装置21は、ターゲット30をターゲット原位置に配置する。具体的には、設備制御装置21は、ターゲット移動装置22に対してターゲット移動信号を出力する。設備制御装置21が処理を完了すると、調整作業は、工程P3へ移行する。
【0061】
なお、上記に説明した工程P2におけるターゲット移動信号の出力は、設備制御装置21が工程P1の処理を完了した後に自動的に開始しても良いし、作業者が設備制御装置21を操作して当該信号の出力を開始しても良い。また、上記工程P2の説明では、ターゲット30の移動は、ターゲット移動装置22により実行される例を示したが、作業者がターゲット30をターゲット原位置まで運搬しても構わない。
【0062】
ここで、図4を参照して、車両原位置およびターゲット原位置について説明する。図4は車載レーダー調整時におけるターゲット30および車両10の配置図である。
【0063】
前方レーダー11、左前方レーダー12、および、右前方レーダー13各々の検出エリアは、前述の[背景技術]の欄での図9の説明と同様に、検出エリアA1、検出エリアA2、および検出エリアA3である。また、前方レーダー11、左前方レーダー12、および、右前方レーダー13各々の基準軸は、[背景技術]の欄での図9の説明と同様に、基準軸J1、基準軸J2、および基準軸J3である。
【0064】
図4に示すように本実施形態では後述の処理により、図9に比べ検出エリアA2、および検出エリアA3が拡大され、各検出エリアA1、A2、およびA3が重複する領域(以下、重複エリアと呼称する)が形成される。図4において、重複エリアは、ハッチング表示された領域である。ターゲット原位置および車両原位置は、ターゲット原位置が重複エリア内部に位置するよう、各々予め定められる。すなわち、ターゲット30は、重複エリア内部に1つだけ配置される。なお、本実施形態ではターゲット原位置が、車両10の中心前方に位置する例について説明する。
【0065】
上記工程P1および工程P2の調整作業により、車両10を車両原位置に、ターゲット30をターゲット原位置に各々配置する。
【0066】
図3の説明に戻り、工程P3において、設備制御装置21は、調整開始信号を出力する。具体的には、設備制御装置21は、調整開始信号をレーダー制御ECU14へ出力する。レーダー制御ECU14は、調整開始信号を受信すると、図5に示す処理を実行して自動的に車載レーダーの基準軸を調整する。図5はレーダー制御ECU14により実行される処理の一例を示すフローチャートである。なお、図5のフローチャートの詳細は後述する。設備制御装置21が工程P3の処理を完了すると、調整作業は、工程P4へ移行する。
【0067】
なお、上記に説明した工程P3における調整開始信号の出力は、設備制御装置21が工程P2の処理を完了した後に自動的に開始しても良いし、作業者が設備制御装置21を操作して当該信号の出力を開始しても構わない。
【0068】
工程P4において、作業者は、ターゲットの再配置を指示する警報が警告装置24から発報されているか否かを判定する。警告装置24から警報が発報されていない場合、調整作業は自動的に工程P5へ移行する。詳細は後述するが、警告装置24から警報が発報されていない場合とは、すなわち、レーダー制御ECU14が、ターゲット30が正しく配置されていると判定している(図5のステップS7の処理参照)場合である。したがって、警告装置24から警報が発報されていない場合、レーダー制御ECU14が、図5のステップS9からステップS11の処理を実行する。一方、作業者が、警報の発報を確認した場合、調整作業は工程P6へ移行する。詳細は後述するが、警告装置24から警報が発報されている場合とは、すなわち、レーダー制御ECU14が、ターゲットが正しく配置されていないと判定した後(図5のステップS7の処理参照)、ターゲット再配置信号を出力している(図5のステップS8の処理参照)場合である。
【0069】
工程P5において、設備制御装置21は、調整完了信号を受信しているか否かを判定する。具体的には、設備制御装置21は、レーダー制御ECU14から出力される調整完了信号(図5のステップS11の処理参照)を受信しているか否かを判定する。設備制御装置21は、調整完了信号を受信していると判定した場合、調整作業を終了する。一方、設備制御装置21は、調整完了信号を受信していないと判定した場合、処理を工程P5へ戻す。
【0070】
なお、上記に説明した工程P5における調整完了信号を受信しているか否かを判定する作業は、設備制御装置21が工程P4の処理を完了した後に自動的に開始しても良いし、予め設備制御装置21に調整完了信号を受信していることを表示するランプ等の表示装置を備えておき、作業者が当該表示を確認して判定しても良い。
【0071】
以下、図5を参照して、レーダー制御ECU14が実行する処理について説明する。レーダー制御ECU14は、上記工程P3において調整開始信号を受信すると、下記の処理にもとづいて各車載レーダーの基準軸の調整を実行する。
【0072】
ステップS1において、レーダー制御ECU14は、IG電源がオンであるか否かを判定する。レーダー制御ECU14は、IG電源がオンであると判断した場合、処理をステップS2へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、IG電源がオフであると判断した場合、処理を終了する。
【0073】
上記ステップS1の処理により、IG電源がオンである間、下記のステップS2からステップS11の処理が繰り返される。
【0074】
ステップS2において、レーダー制御ECU14は、調整開始信号を受信したか否かを判定する。レーダー制御ECU14は、調整開始信号を受信したと判定した場合、処理をステップS3へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、調整開始信号を受信したと判定した場合、処理をステップS1へ戻す。
【0075】
上記ステップS2の処理により、レーダー制御ECU14は、工程P3で設備制御装置21が調整開始信号を出力するまで、後述するステップS3からステップS11の処理の実行を待機する。
【0076】
ステップS3において、レーダー制御ECU14は、ターゲット再配置信号を出力しているか否かを判定する。レーダー制御ECU14は、ターゲット再配置信号を出力していると判定した場合、処理をステップS4へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、ターゲット配置信号を出力していないと判定した場合、処理をステップS5へ進める。
【0077】
ステップS4において、レーダー制御ECU14は、ターゲット再配置信号の出力を停止する。レーダー制御ECU14は、ステップS4の処理を完了すると、処理をステップS5へ進める。
【0078】
上記ステップS3およびステップS4の処理により、調整開始信号が出力された時点で警告装置24がターゲット再配置の警報を発報していた場合、当該警報が停止する。
【0079】
ステップS5において、レーダー制御ECU14は、車載レーダーの検出範囲を変更する。具体的には、レーダー制御ECU14は、各車載レーダーに対して、受信感度を高くする指示信号を出力する。
【0080】
反射波の受信感度を高める方法としては、例えば、反射波の強度を増幅するゲイン値を大きくして、ターゲット30を検出する範囲を拡大する方法がある。ゲイン値が大きくなるほど、各車載レーダーにおいて認識される反射波の強度は、大きくなる。反射波の強度は反射位置が車載レーダーから遠く離れるほど小さくなるが、車載レーダーは、本来ならば車載レーダーから遠く離れた位置で反射された強度閾値FTを超えない強度の反射波を、ゲイン値を大きくすることによって、強度閾値FTを超える強度を有する反射波として認識することができる。このような処理によって、車載レーダーは、より遠く離れた位置で反射された反射波を物体検出処理の対象とすることができる。
【0081】
レーダー制御ECU14は、ステップS5の処理を完了すると処理をステップS6へ進める。
【0082】
上記に説明したように、ターゲット原位置は予め重複エリア内部に位置するよう定められるが、例えば、図11に示すように、各車載レーダーの検出が重複しないように各車載レーダーの検出エリアが予め設定されている場合がある。このような場合、ステップS5の処理により、車載レーダーの検出エリアを拡大して、図4に示すように重複エリアを形成することができる。
【0083】
ステップS6において、レーダー制御ECU14は、ターゲット配置フラグを算出する。ターゲット配置フラグとは、ターゲットがターゲット原位置近傍に配置されているか否かを判定するためのフラグである。ターゲットがターゲット原位置近傍に配置されている場合、ターゲット配置フラグは1に設定される。一方、ターゲットがターゲット原位置近傍に配置されていない場合、ターゲット配置フラグは0に設定される。
【0084】
具体的には、レーダー制御ECU14は、図6に示すターゲット配置フラグ算出のサブルーチン処理を実行する。図6はターゲット配置フラグ算出のサブルーチン処理の詳細を示すフローチャートの一例である。以下、図6を参照してターゲット配置フラグ算出のサブルーチン処理について説明する。
【0085】
ステップS601において、レーダー制御ECU14はθLおよびθRを測定する。具体的には、レーダー制御ECU14は、左前方レーダー12および右前方レーダー13各々に対してターゲット30の検出角を測定する指示を出力し、測定結果を取得する。レーダー制御ECU14は、ステップS601の処理を完了すると、処理をステップS602へ進める。
【0086】
ステップS602において、レーダー制御ECU14はΔθを算出する。具体的にはレーダー制御ECU14は、Δθの値を下式で算出する。
Δθ=|θL―θR|
レーダー制御ECU14は、ステップS602の処理を完了すると、処理をステップS603へ進める。
【0087】
ステップS603において、レーダー制御ECU14は、Δθの値が閾値θT以下であるか否かを判定する。閾値θTはΔθの閾値であり、任意の数値に予め設定される。レーダー制御ECU14は、Δθの値が閾値θT以下であると判定した場合、処理をステップS604へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、Δθの値が閾値θTより大きいと判定した場合、処理をステップS605へ進める。
【0088】
ステップS604において、レーダー制御ECU14は、自動調整フラグの値を1に設定する。レーダー制御ECU14は、ステップS604の処理を完了すると、ターゲット配置フラグ算出処理のサブルーチンを完了し、処理を図5のフローチャートのステップS7へ進める。
【0089】
ステップS605において、レーダー制御ECU14は、自動調整フラグの値を0に設定する。レーダー制御ECU14は、ステップS605の処理を完了すると、ターゲット配置フラグ算出処理のサブルーチンを完了し、処理を図5のフローチャートのステップS7へ進める。
【0090】
上記のステップS601からステップS603の処理によれば、ターゲット30が左前方レーダー12および右前方レーダー13を結ぶ線分の垂直二等分線上に配置されているか否かを判定することができる。本実施形態では、左前方レーダー12および右前方レーダー13が車両中心線を中心として略対称に配置されているため、上記垂直二等分線は車両中心線に相当する、すなわち、ターゲット30が車両中心線上近傍に配置されているか否かを判定することができる。
【0091】
レーダー制御ECU14は、ステップS6の処理を完了すると処理をステップS7へ進める。
【0092】
ステップS7において、レーダー制御ECU14は、ターゲット30が正しく配置されているか否かを判定する。具体的には、レーダー制御ECU14は、ターゲット配置フラグが1であるか否かを判定する。レーダー制御ECU14は、ターゲット配置フラグが1である場合、ターゲット30が正しく配置していると判定し、処理をステップS9へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、ターゲット配置フラグが0である場合、ターゲット30が正しく配置されていないと判定し、処理をステップS8へ進める。
【0093】
ステップS8において、レーダー制御ECU14は、ターゲット再配置信号を設備制御装置21に対して出力する。詳細は後述するが、上記ステップS8の処理によりターゲット再配置信号を受信した設備制御装置21は、図3に示す工程P4においてターゲットの再配置を指示する警報を発報させる。レーダー制御ECU14は、ステップS8の処理を完了すると、処理をステップS1へ戻す。
【0094】
ステップS9において、レーダー制御ECU14は、自動軸調整を実行する。具体的には、図7に示す自動軸調整のサブルーチン処理を実行する。図7は、自動軸調整のサブルーチン処理の詳細を示すフローチャートの一例である。以下、図7を参照して自動軸調整のサブルーチン処理について説明する。
【0095】
ステップS901において、レーダー制御ECU14は、レーダーを1つ選択する。レーダー制御ECU14は、ステップS901の処理を完了すると、処理をステップS902へ進める。
【0096】
ステップS902において、レーダー制御ECU14は、前方レーダー11を選択しているか否かを判定する。レーダー制御ECU14は、前方レーダー11を選択していると判定した場合、処理をステップS903へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、前方レーダー11を選択していないと判定した場合、処理をステップS905へ進める。
【0097】
ステップS903において、レーダー制御ECU14は、検出角θMを測定する。具体的には、レーダー制御ECU14は、検出角θMを測定する指示を前方レーダー11へ出力し、前方レーダー11から検出角θMの値を取得する。レーダー制御ECU14は、ステップS903の処理を完了すると、処理をステップS904へ進める。
【0098】
ステップS904において、レーダー制御ECU14は、理想ターゲット角θiMの値を0とする。理想ターゲット角とは、理想的なターゲット検出角の値であり、車載レーダー毎に設定される。各車載レーダーは、ターゲット検出角が各々の理想ターゲット角に一致している場合、基準軸が調整された状態になっている。なお、理想ターゲット角θiMは前方レーダー11の理想ターゲット角の値である。上記ステップS7ターゲット30が車両中心線上に配置されるため、理想ターゲット角θiMの値を0とすることで、基準軸J1を車両中心線と重なるよう設定することができる。レーダー制御ECU14は、ステップS904の処理を完了すると、処理をステップS910へ進める。
【0099】
ステップS905において、レーダー制御ECU14は、ターゲット検出距離T1を測定する。具体的には、レーダー制御ECU14は、ターゲット検出距離T1を測定する指示を前方レーダー11へ出力し、前方レーダー11からターゲット検出距離T1の値を取得する。レーダー制御ECU14は、ステップS905の処理を完了すると、処理をステップS906へ進める。
【0100】
ステップS906において、レーダー制御ECU14は、左前方レーダー12を選択しているか否かを判定する。レーダー制御ECU14は、左前方レーダー12を選択していると判定した場合、処理をステップS907へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、左前方レーダー12を選択していないと判定した場合、処理をステップS908へ進める。
【0101】
ステップS907において、レーダー制御ECU14は、理想ターゲット角θiLの値を算出する。理想ターゲット角θiLは左前方レーダー12の理想ターゲット角の値である。以下、図8を参照して理想ターゲット角θiLを算出する方法について説明する。図8は理想ターゲット角θiLの算出に用いる寸法を図示した車両上面図である。以下、図8を参照してθiLの算出方法について説明する。
【0102】
図7において、左前方レーダー12を原点として、車両中心線と平行な方向(車両の前後方向)をY軸、同Y軸を通る水平面内で同Y軸に対し垂直な方向(車両の左右方向)をX軸とする座標系を設定する。ここで、左前方レーダー12とターゲット30とを結ぶ線分と、Y軸とが成す角度をαLとする。また、Y軸と基準軸J2とが成す角度をβLとすると、理想ターゲット角θiLは下式で表すことができる。
θiL=αL+βL
【0103】
角度αLは、左前方レーダー12からターゲット30までのX座標成分の距離をXL、Y座標成分の距離YLとすると、下式で表すことができる。
tanαL=XL/YL
【0104】
ここで、距離XLの長さは、左前方レーダー12から前方レーダー11までのX方向の距離Hと等しいと見なし、下式により算出する。なお、距離Hの値は設計事項であり、既知である。
XL=H
【0105】
また、距離YLの長さは、左前方レーダー12から前方レーダー11までのY方向の距離Gおよび、前方レーダー11のターゲット検出距離T1を用いて下式により算出する。なお、ターゲット検出距離T1の値は、上記ステップS905において測定された値を用いる。また、距離Gの値は設計事項であり、既知である。
YL=T1+G
【0106】
角度βLの値は、設計的に決定される任意の定数である。角度βLの値は、予めレーダー制御ECU14の記憶装置に記憶される。
【0107】
レーダー制御ECU14は、各々既知の値である距離H、距離G、およびターゲット検出距離T1を用いて上記の式にもとづき角度αLを算出する。そして、レーダー制御ECU14は、算出した角度αL、および予め記憶している角度βLの値を加算して理想ターゲット角θiLの値を算出する。レーダー制御ECU14は、ステップS907の処理を完了すると、処理をステップS910へ進める。
【0108】
図7の説明に戻り、ステップS908において、右前方レーダーを選択レーダー制御ECU14は、右前方レーダー13を選択しているか否かを判定する。レーダー制御ECU14は、右前方レーダー13を選択していると判定した場合、処理をステップS908へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、右前方レーダー13を選択していないと判定した場合、自動軸調整処理を終了し、処理を図5に示す処理のステップS10へ進める。
【0109】
ステップS909において、レーダー制御ECU14は、理想ターゲット角θiRの値を算出する。理想ターゲット角θiRは右前方レーダー13の理想的なターゲット検出角の値である。詳細は後述するが、右前方レーダー13は、ターゲット検出角θRが、理想ターゲット角θiRの値に一致するように基準軸J3の位置を調整する。なお、理想ターゲット角θiRの算出方法は、上記ステップS907において説明した理想ターゲット角θiLの算出方法と同様であり、当該算出方法を左前方レーダー12の位置を、右前方レーダー13の位置に置き換えて適用すれば良い。したがって、理想ターゲット角θiRの算出方法については詳細な説明を省略する。なお、上記に説明したように、理想ターゲット角θiLおよび理想ターゲット角θiRの算出においては、前方レーダー11により測定されたターゲット検出距離T1の値を用いるため、ステップS905において前方レーダー11は既に調整され状態であり、ターゲット検出距離T1が正確に測定されていることが望ましい。すなわち、ステップS901の処理において、レーダー制御ECU14は、最初に前方レーダー11を選択することが望ましい。レーダー制御ECU14は、ステップS909の処理を完了すると、処理をステップS910へ進める。
【0110】
ステップS910において、レーダー制御ECU14は、基準軸合わせの処理を実行する。具体的には、まず、レーダー制御ECU14は、ステップS901において選択された車載レーダーによりターゲット30の検出角を取得する。次に当該選択された車載レーダーの理想ターゲット角を読み出し、検出角が理想ターゲット角に一致するよう基準軸の方向を変更する。以下、左前方レーダー12が選択されている場合を例として、基準軸合わせの処理を詳細に説明する。
【0111】
左前方レーダー12が選択されている場合、まず、レーダー制御ECU14は、検出角θLおよび理想ターゲット角θiLを減算して調整量ΔθLを下式で算出する。
ΔθL=|θiL−θL|
次に、レーダー制御ECU14は、左前方レーダー12に対して、基準軸J2をターゲット30が検出された方向へ調整量ΔθLだけ回転させる指示信号を出力する。
【0112】
例えば、検出角θL=30°であり、且つ、理想ターゲット角θiL=32°であったとすると、調整量ΔθLの値は2°と算出される。したがって、レーダー制御ECU14は、基準軸J2をターゲット30が検出された方向へ2°回転させる指示信号を出力する。
【0113】
レーダー制御ECU14は、選択した車載レーダーの基準軸の設定を終えると、選択した車載レーダーの基準軸が調整済みであることを示すフラグ(以下、調整済フラグと呼称する)を立て、当該フラグの状態を記憶装置に記憶させる。
【0114】
なお、上記では左前方レーダー12が選択された場合を例としたが、レーダー制御ECU14は、前方レーダー11および右前方レーダー13が選択されている場合も同様にして各車載レーダーに対して基準軸を調整する指示信号を出力する。レーダー制御ECU14は、ステップS910の処理を完了すると、処理をステップS911へ進める。
【0115】
ステップS911において、レーダー制御ECU14は、全車載レーダーの軸調整が完了したか否かを判定する。具体的には、各車載レーダーの調整済フラグの状態を記憶装置から読み出し、当該フラグが全て立っているか否かを判定する。レーダー制御ECU14は、全車載レーダーの調整済フラグが立っている場合、全車載レーダーの軸調整が完了したと判定して自動軸調整処理を終了し、処理を図5に示す処理のステップS10へ進める。一方、レーダー制御ECU14は、各車載レーダーの調整済フラグが何れか1つでも立っていない場合、処理をステップS901へ戻す。
【0116】
図5の説明に戻り、ステップS10において、レーダー制御ECU14は、検出エリアをもとに戻す。具体的には、レーダー制御ECU14は、上記ステップS5において検出エリアを拡大していた車載レーダーに対して、検出エリアをもとの範囲に戻す指示信号を出力する。本ステップS10の処理により、車載レーダーは、検出エリアをもとに戻す。レーダー制御ECU14は、ステップS11の処理を完了すると、処理をステップS11へ進める。
【0117】
ステップS11において、レーダー制御ECU14は、調整完了信号を設備制御装置21に対して出力する。詳細は後述するが、調整完了信号を受信した設備制御装置21は図3の工程P5の調整作業を完了して全ての調整作業を完了する。レーダー制御ECU14は、ステップS11の処理を完了すると、処理をステップS1へ戻す。
【0118】
以上に説明した本実施形態に係るレーダーの基準軸調整方法によれば、3つの車載レーダーを調整する際に、ターゲット30を複数用意しなくて済む。また、ターゲット30が正しく配置されているか否かを自動的に判定することができる。
【0119】
なお、上記ステップS5の説明では、各車載レーダーの受信ゲインを大きくして車載レーダーの検出範囲を変更する例を示したが、レーダー制御ECU14は、各車載レーダーに対して、送信する電磁波の送信強度を大きくする指示信号を出力しても構わない。送信する電磁波の送信強度を大きくすることによって反射波の強度が強くなり、各車載レーダーの検出エリアを拡大することができる。
【0120】
また、レーダー制御ECU14は、車載レーダー毎に設定される強度閾値FTの値を変更して、ターゲット30を検出する範囲を拡大しても構わない。具体的には、反射波の強度は反射位置が車載レーダーから離れているほど小さくなるため、強度閾値FTの値を小さくするほど、車載レーダーは、より遠く離れた位置で反射された反射波を物体検出処理の対象することができる。すなわち、当該車載レーダーの検出エリアの半径を拡大して、ターゲット30を検出する範囲を広げることができる。
【0121】
また、レーダー制御ECU14は、車載レーダー毎に設定される位相差閾値ωTの値を変更することで、検出エリアA1の中心角を変更することができる。具体的には、基準軸J1から離れた角度から反射された反射波ほど位相差の絶対値が大きくなるため、位相差閾値ωTの値を大きくするほど、検出エリアA1の中心角が大きくなり、検出エリアA1が広くなる。但し、位相差閾値ωTの最大値は360°である。
【0122】
また、レーダー制御ECU14は、各車載レーダーにおいてターゲット30のゴースト(特許請求の範囲における虚像)にもとづいて、車載レーダーの軸調整を行っても構わない。なお、ゴーストの定義は前述の[背景技術]の欄を参照されたい。
【0123】
上記のように受信感度を上げるなどして検出エリアを拡大させると、ターゲット30が通常の検出エリアの外に位置するときに、ターゲット30のゴーストが検出される場合がある。レーダーで検出されるターゲット(ゴースト)の方向は、ターゲットの本当の方向とは異なる。しかしながら、ゴーストは、ターゲット30からの反射波とN周期(Nは整数)ずれた反射波が到来する方向に検出される。すなわち、ゴーストは、ターゲットの本当の方向に対して一定の角度だけずれた方向に検出されるので、レーダーで検出されたターゲット(ゴースト)の方向にもとづいて、レーダー装置から見たターゲットの本当の方向を算出して軸調整を行うことができる。
【0124】
具体的には、まず、レーダー制御ECU14は、調整する車載レーダーにおいて、強度認識範囲(前述の[背景技術]の欄参照)を変更して、ゴーストとして認識対象から除外していた強度認識範囲からの反射波を認識対象とする。なお、ターゲット原位置は既知であるため、予めターゲット原位置方向に配置されたターゲット30からの反射波の認識位相差Δωおよび強度Fを測定しておき、これらの値が含まれるよう強度認識範囲を変更することが望ましい。この処理により、車載レーダーは、通常時検出していないゴーストを検出することができる。次に、レーダー制御ECU14は、ゴーストの検出角を本来のターゲット30の検出角と見なして、上述の方法で当該ゴーストの検出角が理想ターゲット角と合致するよう基準軸を調整する。
【0125】
また、上記ステップS6およびステップS7の処理の説明では、ターゲット30が正しく配置されているか否かをΔθの値にもとづいて判定する例を示したが、検出角θL、検出角θR、および検出角θM各々の値にもとづいてターゲット30が正しく配置されているか否かを判定しても構わない。具体的には、検出角θL、検出角θR、および検出角θM各々の閾値を予め設定し、検出角θL、検出角θR、および検出角θMの値が各閾値の範囲内である場合にターゲット30が正しく配置されていると判定しても良い。
【0126】
また、上記ステップS9の処理の説明では、全ての車載レーダーが順次選択されて、全ての車載レーダーの軸調整を自動的に実行する例を示したが、作業者が設備制御装置を操作して調整する車載レーダーを個別に選択可能としても構わない。この場合、ステップS901およびステップS911の処理は省略する。
【0127】
また、本実施形態では、レーダー制御ECU14が設備制御装置21に接続されて、車載レーダーの軸調整が実行される例について説明したが、設備制御装置21を搭載する調整設備が無い場合であっても上記の調整方法は適用可能である。例えば、整備工場などで車載レーダーを調整する場合、予め作業者が操作可能な小型の端末装置を用意し、当該端末装置とレーダー制御ECU14とを接続する。なお、当該端末装置は、調整開始信号の出力、ターゲット再配置警告の受信、および調整完了信号の受信が可能である。そして、作業者が車両10およびターゲット30を配置した後、端末装置を用いて調整開始信号の出力操作、ターゲット再配置警告の受信確認、および調整完了信号の受信確認を行えば、上記と同様の方法で車載レーダーの基準軸を調整することができる。
【0128】
また、本実施形態では、車両の前方に搭載された3つのミリ波レーダーの各基準軸を調整する例について説明したが、レーダー装置の数は3つに限らず、車両に備えられた複数のレーダー装置のうち少なくとも2つ以上のレーダー装置の検出エリアが重複する範囲内に1つのターゲットを配置して上記の調整を実施して良い。
【0129】
また、本実施形態では、図4に示すように、左前方レーダー12および右前方レーダー13は、広視野角で近距離の物体を検出するように検出エリアA2、および検出エリアA3が設定され、前方レーダー11は、左前方レーダー12および右前方レーダー13に比べ、狭い視野角で遠距離の物体を検出するように検出エリアA1が設定されているが、重複エリアが形成可能ならば各車載レーダーの検出エリアの大きさは上記に限らない。例えば、検知エリアA1の視野角が、より広くても良いし、左前方レーダー12および右前方レーダー13の検知距離が、より長くても構わない。
【0130】
また、本実施形態では、車両前方に備えられた複数のレーダー装置を調整する例について説明したが、上記レーダー装置の調整方法は、車両の側方や後方に備えられたレーダー装置を調整するように適用しても構わない。例えば、車両後方の障害物を監視するために、複数のレーダー装置が、車両後方中央、車両左後方、および車両右後方などに備えられた場合であっても、上記と同様にして各レーダー装置の基準軸を調整することができる。
【0131】
また、本実施形態では、レーダー装置の一例として、ミリ波レーダーを用いる例について説明したが、ミリ波レーダーに限らず、上記に説明した原理を用いて物体を検出するレーダー装置を用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明に係るレーダー装置の軸調整方法は、低コストで車両に備えられた複数のレーダー装置の基準軸を各々調整する方法などとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】車載レーダーの搭載図
【図2】車載レーダーを調整するシステムの機能構成を示すブロック図
【図3】車載レーダーの調整作業の手順を示すフローチャート
【図4】車載レーダー調整時におけるターゲットおよび車両の配置図
【図5】レーダー制御ECUにより実行される処理の一例を示すフローチャート
【図6】ターゲット配置フラグ算出のサブルーチン処理の詳細を示すフローチャートの一例
【図7】自動軸調整のサブルーチン処理の詳細を示すフローチャートの一例
【図8】理想ターゲット角θiLの算出に必要なパラメータを図示した車両上面図
【図9】車両に備えられた前方レーダーが物体を検出する様子を示す上面図
【図10】物体からの反射波を受信する前方レーダー11の受信部の拡大図
【図11】前方レーダー、左前方レーダー、および右前方レーダーを搭載する車両の上面図
【符号の説明】
【0134】
10 車両
11 前方レーダー
12 左前方レーダー
13 右前方レーダー
14 レーダー制御ECU
20 調整設備
21 設備制御装置
22 ターゲット移動装置
23 車両配置確認装置
24 警告装置
30 ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたレーダー装置の軸調整方法であって、
車両に搭載された第1のレーダー装置の物体検出可能エリアと、当該車両に搭載された第2のレーダー装置の物体検出可能エリアとの重複エリアに軸調整用のターゲットを1つだけ配置するターゲット配置工程、
前記第1のレーダー装置および前記第2のレーダー装置によって、当該第1のレーダー装置および当該第2のレーダー装置から見た前記ターゲットの方向をそれぞれ検出するターゲット方向検出工程、および、
前記ターゲット方向検出工程の検出結果にもとづいて前記第1のレーダー装置および前記第2のレーダー装置の軸調整を行う調整工程を備える、レーダー装置の軸調整方法。
【請求項2】
前記ターゲット方向検出工程の前に、前記レーダー装置各々の物体検出可能エリアが互いに重なるように、前記レーダー装置の少なくとも何れか1つの物体検出可能エリアを変更する検出エリア変更工程をさらに含む、請求項1に記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項3】
前記ターゲット方向検出工程において、前記レーダー装置は、電磁波を前記ターゲットに向け送出し、前記ターゲットに反射された前記電磁波の反射波を受信し、前記反射波にもとづいて前記ターゲットの方向を検出し、
前記検出エリア変更工程では、前記レーダー装置における前記反射波の受信感度を、当該レーダー装置が本来の用途で使用される時より相対的に高くすることによって、当該レーダー装置の物体検出可能エリアを一時的に広げる、請求項2に記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項4】
前記ターゲット方向検出工程において、前記レーダー装置は、電磁波を前記ターゲットに向け送出し、前記ターゲットに反射された前記電磁波の反射波を受信し、前記反射波にもとづいて前記ターゲットの方向を検出し、
前記ターゲット方向検出工程において、前記レーダー装置は、当該レーダー装置によって検出される前記ターゲットの虚像の方向にもとづいて、前記ターゲットの本当の方向を検出する、請求項2に記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項5】
前記調整工程の前に、前記ターゲットが正常な位置に配置されているか否かを、前記レーダー装置毎に検出された前記ターゲットの方向にもとづいて判定するターゲット配置判定工程と、
前記ターゲット配置判定工程において、前記ターゲットが正常な位置に配置されていないと判定された場合、前記調整工程を行うことなくその旨を報知する報知工程とをさらに備える、請求項1に記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項6】
前記ターゲット配置判定工程において、前記第1のレーダー装置により検出された前記ターゲットの方向を示す第1の角度、および前記第2のレーダー装置により検出された前記ターゲットの方向を示す第2の角度の差分値を算出し、前記差分値が定められた範囲内である場合、前記ターゲットが正常な位置に配置されていると判定し、前記差分値が定められた範囲外である場合、前記ターゲットが正常な位置に配置されていないと判定する、請求項5に記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項7】
前記ターゲット配置工程において、前記ターゲットは第1のレーダー装置の物体検出可能エリアと、前記車両に搭載された第3のレーダー装置の物体検出可能エリアとの重複エリア内、且つ、前記第3のレーダー装置の正面に配置され、
前記軸調整工程は、第3のレーダー装置により測定した前記ターゲットまでの距離、および、前記第3のレーダー装置と第1のレーダー装置との相対位置にもとづいて第1のレーダー装置の目標方向を設定する目標方向設定工程と、
前記目標方向設定工程の後に、前記第1のレーダー装置に検出された前記ターゲットの方向が、前記第1のレーダー装置の目標方向に合致するように、前記第1のレーダー装置の軸を合わせこむ、方向合わせ工程とを含む、請求項1に記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項8】
前記第1のレーダー装置の物体検出可能エリアは前記車両の前方に定められ、
前記第2のレーダー装置の物体検出可能エリアは前記車両の前側方に定められる、請求項1から請求項7の何れか1つに記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項9】
前記第1のレーダー装置の物体検出可能エリアは前記車両の後方に定められ、
前記第2のレーダー装置の物体検出可能エリアは前記車両の後側方に定められる、請求項1から請求項7の何れか1つに記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項10】
前記第1のレーダー装置の物体検出可能エリアは前記車両の遠方に予め定められ、
前記第2のレーダー装置の物体検出可能エリアは前記第1のレーダー装置の物体検出可能エリアより近傍に予め定められる、請求項1または請求項2に記載のレーダー装置の軸調整方法。
【請求項11】
車両に搭載された複数のレーダー装置の軸調整を行う軸調整装置であって、
前記検出工程の前に、前記レーダー装置各々の物体検出可能エリアが互いに重なるように、前記レーダー装置の少なくとも何れか1つの物体検出可能エリアを変更する検出エリア変更手段と、
第1のレーダー装置および前記第2のレーダー装置によって、当該第1のレーダー装置および当該第2のレーダー装置から見た前記ターゲットの方向をそれぞれ検出するターゲット方向検出手段と、
前記レーダー装置毎に検出された前記ターゲットの方向にもとづいてターゲットが正常に配置されているか否かを判定するターゲット配置判定手段と、
ターゲットが正常に配置されていると判定した場合、前記レーダー装置の軸調整を行う調整手段とを備える軸調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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