説明

レーダ表示装置及びレーダ表示方法

【課題】ターゲット表示距離に応じて、ターゲットを最適なパルス幅で表示し得るレーダ表示装置を提供する。
【解決手段】モニタ16に対するターゲットのビデオ信号の表示処理の実行に先立ち、距離検出部14にて送受信部11から出力されるタイミング信号をもとに、ターゲットまでの距離を検出し、この検出結果に基づいて、ビデオ幅調整部13及びビデオ幅制御部15にて最大探知距離に位置するターゲットのビデオ信号のパルス幅については最大のパルス幅に制御し、近距離に位置するターゲットのビデオ信号のパルス幅については狭いパルス幅に制御するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば航空機の着陸誘導に使用するレーダ表示装置及びレーダ表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各地の空港には、旅客機などの航空機の着陸を支援するために、PAR(Precision Approach Radar)等のレーダ装置が利用されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
このレーダ装置は、着陸しようとする航空機に対しレーダ波を送信し、航空機からのレーダ反射波を受信検波することで、航空機の飛行位置の検出及び追尾を行なうものである。
【非特許文献1】レーダ技術 財団法人電子情報通信学会。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記レーダ装置による表示方法では、受信したレーダビデオ信号をそのまま対数変換して表示器に表示するため、遠距離ではパルス幅が狭くなってターゲットを見つけ難く、近距離ではパルス幅が広くなってターゲット中心が判断し難い状態となる。
【0005】
そこで、この発明の目的は、ターゲット表示距離に応じて、ターゲットを最適なパルス幅で表示し得るレーダ表示装置及びレーダ表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明は、移動目標に対しレーダパルス信号を送信し、移動目標から反射されるレーダパルス信号を受信処理し、この受信処理結果から得られる移動目標のビデオ信号を表示器に表示するレーダ表示装置において、受信処理結果に基づいて、移動目標までの距離を検出する検出手段と、この検出手段による検出結果に基づいて、ビデオ信号のパルス幅を制御する制御手段とを備えるようにしたものである。
【0007】
制御手段は、最大探知距離に位置する第1の移動目標のビデオ信号のパルス幅を所定の第1のパルス幅に制御し、第1の移動目標より近い距離に位置する第2の移動目標のビデオ信号のパルス幅を第1のパルス幅に比して狭い第2のパルス幅に制御することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、表示器に対する移動目標のビデオ信号の表示処理の実行に先立ち、受信処理結果をもとに、移動目標までの距離を検出し、この検出結果に基づいて、最大探知距離に位置する移動目標のビデオ信号のパルス幅については所定の第1のパルス幅に制御し、近距離に位置する移動目標のビデオ信号のパルス幅については第1のパルス幅に比して狭い第2のパルス幅に制御するようにしている。
【0009】
従って、移動目標までの距離ごとに最適なパルス幅で移動目標のビデオ信号を表示器に表示することができ、これにより監視者は見やすい表示画面で移動目標を確認できる。また、移動目標の移動に同期して自動的にビデオ信号のパルス幅を制御できる。
【0010】
さらに、複数のビデオ信号のパルス幅データを、移動目標までの距離データに対応付けたテーブルを格納する記憶手段をさらに備え、制御手段は、検出結果に基づいて、テーブルから該当するパルス幅データを読み出し、このパルス幅データに基づいてビデオ信号のパルス幅を制御することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、複数のビデオ信号のパルス幅データを、移動目標までの距離データに対応付けたテーブルを用意したことにより、検出される移動目標までの距離に対応するパルス幅データをテーブルから読み出して、このパルス幅データを用いて表示器に表示すべくビデオ信号のパルス幅の制御が行われるので、簡単な手順で最適なビデオ信号のパルス幅で移動目標を表示器に表示できる。
【0012】
記憶手段は、精度ごとに異なる複数のテーブルを格納し、制御手段は、指示入力に応じて、該当する精度のテーブルを選択することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、使用状況ごとに監視者が自身で移動目標のビデオ信号の表示精度を変更することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上詳述したようにこの発明によれば、ターゲット表示距離に応じて、ターゲットを最適なパルス幅で表示し得るレーダ表示装置及びレーダ表示方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わるレーダ表示装置の構成を示すブロック図である。図1において、送受信部11で発生されたパルス信号は空中線装置12に供給されレーダ波として空間に放射される。そして、ターゲットとなる航空機にて反射されたレーダ受信波は、空中線装置12にて受信され、送受信部11に入力される。送受信部11では、受信信号の増幅、周波数変換等の受信処理が行われた後、その受信処理結果となるターゲットのビデオ信号をビデオ幅調整部13に出力する。
【0016】
一方、送受信部11では、パルス信号の送信時からターゲットからのレーダ反射波の受信時までのタイミングを計っており、そのタイミング信号を距離検出部14に出力する。距離検出部14は、入力されるタイミング信号に基づいて、ターゲットまでの距離を検出する。この検出結果は、ビデオ幅制御部15に供給される。
【0017】
ビデオ幅制御部15には、距離ごとのパルス幅データを記憶しかつ互いに表示精度の異なる複数のテーブル171〜17nが接続されている。図2は、テーブル171の記憶内容の一例を示すものである。ここでは、パルス幅データはa<d<zの関係を満たす。そして、ビデオ幅制御部15は、距離検出部14による検出結果に基づいて、テーブル171から該当するパルス幅データを読み出してビデオ幅調整部13にセットする。
【0018】
そうすると、ビデオ幅調整部13は、入力されたビデオ信号のパルス幅をセットされたパルス幅データに合致するように制御してモニタ16に供給する。モニタ16には、ビデオ幅調整部13でパルス幅が調整されたビデオ信号をもとに、ターゲットの飛行位置を示す情報が対数変換されて表示される。
【0019】
次に、上記構成において、その運用動作を説明する。
まず、空中線装置12においては、送信時に、図3(a)に示すように、送信パルス信号が最大探知距離に相当する間隔で所定電力に増幅されて送出される。そして、次の送信パルス信号が送出されるまでに、空中線装置12は、図3(b)に示すように、近距離に位置するターゲットTAに当たって反射するパルス信号及び遠距離に位置するターゲットTBに当たって反射するパルス信号を受信する。これら受信パルス信号は、送受信部11にて信号処理が施された後、ビデオ信号としてモニタ16に供給されることになる。すると、モニタ16では、図4に示すように、レーダ表示装置から見たターゲットの飛行位置がレンジマーク上に表示されることになる。
【0020】
しかしながら、モニタ16の表示画面では、進入してくるターゲットのエコーが近距離ではボテッとしてターゲット中心を判別し難く、また進入してくるターゲットのエコーが遠距離ではシャープとなりレンジマークと重なって見つけ難くなる。
【0021】
そこで、本実施形態では、予め距離ごとに最適なパルス幅データを求めてテーブル171〜17nに記憶しておき、距離検出部14にて図3(c)に示すタイミング信号からターゲットまでの距離を検出し、ビデオ幅制御部15にて距離検出部14の検出結果に基づいて該当するパルス幅データをテーブル171から読み出してビデオ幅調整部13にセットするようにしている。
【0022】
そして、ビデオ幅調整部13では、入力されたビデオ信号のパルス幅をセットされたパルス幅データに合わせるように制御した後、モニタ16に出力する。このようにすると、監視者は、見やすい表示画面で進入してくるターゲットの飛行位置を確認できる。
【0023】
また、高精細な表示画面でターゲットの飛行位置を確認したい場合には、監視者は例えばテーブル171より表示精度の高いテーブル173を選択するようにビデオ幅制御部15に対し指示入力を行う。
【0024】
以上のように上記実施形態では、モニタ16に対するターゲットのビデオ信号の表示処理の実行に先立ち、距離検出部14にて送受信部11から出力されるタイミング信号をもとに、ターゲットまでの距離を検出し、この検出結果に基づいて、ビデオ幅調整部13及びビデオ幅制御部15にて最大探知距離に位置するターゲットのビデオ信号のパルス幅については最大のパルス幅「z」に制御し、近距離に位置するターゲットのビデオ信号のパルス幅についてはパルス幅「z」に比して狭いパルス幅に制御するようにしている。
【0025】
従って、ターゲットまでの距離ごとに最適なパルス幅でターゲットのビデオ信号をモニタ16に表示することができ、これにより監視者は見やすい表示画面でターゲットの飛行位置を確認できる。また、ターゲットの移動に同期して自動的にビデオ信号のパルス幅を制御できる。
【0026】
また、上記実施形態では、予めターゲットまでの距離ごとのパルス幅データを求めてテーブル171に格納しておくことにより、ビデオ幅制御部15にて距離検出部14で検出されるターゲットまでの距離に対応するパルス幅データをテーブル171から読み出して、このパルス幅データをパルス幅調整部13にセットするようにしているので、簡単な手順で最適なビデオ信号のパルス幅でターゲットの飛行位置をモニタ16に表示できる。
【0027】
さらに、上記実施形態では、表示精度ごとに異なる複数のテーブル171〜17nを用意し、指示入力に応じて、該当する精度のテーブル171〜17nを選択できるようにしているので、使用状況ごとに監視者が自身でターゲットのビデオ信号の表示精度を変更することができる。
【0028】
なお、上記実施形態で説明したビデオ幅調整部13、距離検出部14及びビデオ幅制御部15それぞれの処理は、コンピュータプログラムによってソフトウェア処理することが可能である。
【0029】
また、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施形態に係わるレーダ表示装置の構成を示すブロック図。
【図2】上記図1に示したテーブルの記憶内容の一例を示す図。
【図3】同実施形態の運用動作を説明するためのタイミング波形図。
【図4】以前におけるモニタのターゲット表示例を説明するために示す図。
【符号の説明】
【0031】
11…送受信部、12…空中線装置、13…ビデオ幅調整部、14…距離検出部、15…ビデオ幅制御部、16…モニタ、171〜17n…テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動目標に対しレーダパルス信号を送信し、前記移動目標から反射されるレーダパルス信号を受信処理し、この受信処理結果から得られる前記移動目標のビデオ信号を表示器に表示するレーダ表示装置において、
前記受信処理結果に基づいて、前記移動目標までの距離を検出する検出手段と、
この検出手段による検出結果に基づいて、前記ビデオ信号のパルス幅を制御する制御手段とを具備したことを特徴とするレーダ表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、最大探知距離に位置する第1の移動目標のビデオ信号のパルス幅を所定の第1のパルス幅に制御し、前記第1の移動目標より近い距離に位置する第2の移動目標のビデオ信号のパルス幅を前記第1のパルス幅に比して狭い第2のパルス幅に制御することを特徴とする請求項1記載のレーダ表示装置。
【請求項3】
前記複数のビデオ信号のパルス幅データを、前記移動目標までの距離データに対応付けたテーブルを格納する記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記検出結果に基づいて、前記テーブルから該当するパルス幅データを読み出し、このパルス幅データに基づいて前記ビデオ信号のパルス幅を制御することを特徴とする請求項1記載のレーダ表示装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、精度ごとに異なる複数のテーブルを格納し、
前記制御手段は、指示入力に応じて、該当する精度のテーブルを選択することを特徴とする請求項3記載のレーダ表示装置。
【請求項5】
移動目標に対しレーダパルス信号を送信し、前記移動目標から反射されるレーダパルス信号を受信処理し、この受信処理結果から得られる前記移動目標のビデオ信号を表示器に表示するレーダ表示方法において、
前記受信処理結果に基づいて、前記移動目標までの距離を検出し、
この検出結果に基づいて、最大探知距離に位置する第1の移動目標のビデオ信号のパルス幅を所定の第1のパルス幅に制御し、前記第1の移動目標より近い距離に位置する第2の移動目標のビデオ信号のパルス幅を前記第1のパルス幅に比して狭い第2のパルス幅に制御することを特徴とするレーダ表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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