説明

レーダ表示装置

【課題】拡大表示の際に解像度を向上させ、柔軟に拡大率を選択することができるレーダ表示装置を提供する。
【解決手段】レーダビデオ信号の信号強度データを格納する入力画像メモリ11,12を走査ごとに切り換えてデータの書き込みおよび読み出しを行い、座標変換部14、正規化部15は、入力画像メモリ11,12のいずれかから完全な1走査分のレーダビデオ信号を用いて座標変換処理、拡大率に応じた信号強度データの正規化処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPI(Plan Position Indicator)スキャンからラスタスキャンに変換してレーダ画像を表示するレーダ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PPI(Plan Position Indicator)スキャンからラスタスキャンに変換してレーダ画像を表示するレーダ表示装置として、図3に示すようなものがある。図3に示すレーダ表示装置において、外部のレーダ信号処理装置から、デジタル化された極座標系のレーダビデオ信号の距離データr、方位角データθ、信号強度データIが入力される。アドレス生成部2は、距離データr、方位角データθを書き込みアドレスとして、入力画像メモリ1に信号強度データIを記憶させる。
【0003】
入力画像メモリ1に記憶された信号強度データは、アドレス生成部2からの読み出し制御信号によって読み出される。読み出された信号強度データI´は、拡大部4に入力される。また、アドレス生成部2は、読み出された信号強度データI´の距離データr´、方位角データθ´を座標変換部3に出力する。
【0004】
座標変換部3は、信号強度データI´の極座標値(r´,θ´)を座標変換して直交座標値(X´,Y´)を算出し、拡大部4に出力する。拡大部4は、拡大率Kとすると、直交座標値(X´,Y´)に対してその付近のK個の座標値を出力画像メモリ5の書き込みアドレスとして生成する。そして、出力画像メモリ5は、拡大部4で生成したK個の座標値を書き込みアドレスとして、それぞれのアドレスに信号強度データI´を記憶する。
【0005】
出力画像メモリ5に記憶された信号強度データI´は、合成部7において、レーダ画像に重畳して表示する地図等の画像のデジタルデータと合成され、ラスタスキャン方式の表示部8で表示される。重畳して表示する画像のデジタルデータは、図示しない外部の装置から入力されてデジタルデータメモリ6に格納されている。
【0006】
このように、図3に示すレーダ表示装置では、表示画面を拡大しようとした場合、拡大率Kに対してK個の書き込みアドレスに信号強度データI´を記憶し、これを読み出してレーダ画像を表示するが、これは拡大前の画素を引き伸ばすことになり、解像度という点では拡大前と変わらなかった(例えば、特許文献1参照)。入力データを保存する入力画像メモリ1がレーダの1走査分しか格納することができず、保持するデータのサンプル数が少ないため、このような拡大処理を行っていた。
【0007】
そこで、拡大表示の場合に解像度を向上させる表示装置として、特許文献2に開示されたものがある。この表示装置は、ビデオ信号を2系列のデータに変換して記憶し、拡大表示するときは2系列のデータを交互に選択することにより、解像度のよい拡大機能を実現している。
【特許文献1】特開平2−162282号公報
【特許文献2】特公平4−64432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に示された技術は、拡大により解像度を向上させることができるが、拡大率が2倍に固定されており、拡大機能としては不十分であるという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、拡大表示の際に解像度を向上させ、柔軟に拡大率を選択することができるレーダ表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のレーダ表示装置は、極座標系走査のレーダビデオ信号の信号強度データを、極座標系の座標値をアドレスとして格納する2つの入力画像記憶手段と、これら2つの入力画像記憶手段への前記レーダビデオ信号の信号強度データの書き込みおよび読み出しを制御する記憶制御手段と、2つの前記入力画像記憶手段の一方から読み出された前記レーダビデオ信号の信号強度データに対応する座標値を極座標系から直交座標系に変換する座標変換手段と、2つの前記入力画像記憶手段の一方から読み出された前記レーダビデオ信号の信号強度データを拡大率に応じて正規化して代表値を算出する正規化手段と、この正規化手段で算出された前記代表値を、前記座標変換手段により得られた直交座標系の座標値をアドレスとして格納する出力画像記憶手段と、この出力画像記憶手段に格納された前記代表値に対応する直交座標系走査のレーダ画像を表示する表示部とを備え、前記記憶制御手段は、走査ごとに2つの前記入力画像記憶手段を切り換えてレーダビデオ信号の信号強度データの書き込みおよび読み出しを行い、一方の前記入力画像記憶手段から読み出しを行っているときは他方の前記入力画像記憶手段に書き込みを行うように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレーダ表示装置は、レーダビデオ信号の信号強度データを格納する入力画像記憶手段を2つ備え、走査ごとに2つの入力画像記憶手段を切り換えて書き込みおよび読み出しを行うので、常にどちらかの入力画像記憶手段から完全な1走査分のレーダビデオ信号を用いて、データを欠落させることなく座標変換処理を行い、拡大率に応じた信号強度データの正規化処理を行うことができるので、拡大表示の際に解像度を向上させ、柔軟に拡大率を選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のレーダ表示装置を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態に係るレーダ表示装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように本実施の形態のレーダ表示装置は、極座標系走査のレーダビデオ信号の信号強度データを格納する入力画像メモリ11,12と、入力画像メモリ11,12への書き込みおよび読み出しを制御するメモリ制御部13と、入力画像メモリ11,12の一方から読み出されたレーダビデオ信号の信号強度データに対応する座標値を極座標系から直交座標系に変換する座標変換部14と、入力画像メモリ11,12の一方から読み出されたレーダビデオ信号の信号強度データを拡大率に応じて正規化して代表値を算出する正規化部15と、正規化部15で算出された代表値を格納する出力画像メモリ16と、レーダ画像に重畳して表示する地図等の画像のデジタルデータを格納するデジタルデータメモリ17と、レーダ画像に地図等の画像を合成する合成部18と、合成部18で生成された画像を表示する表示部19とを備える。表示部19は、CRT、LCD等の、ラスタスキャン方式のディスプレイから構成される。
【0014】
ここで、図1に示すレーダ表示装置の動作を説明する。図示しない外部のレーダ信号処理装置から、デジタル化されたレーダビデオ信号の距離データr、方位角データθ、信号強度データIが入力されると、メモリ制御部13は、距離データr、方位角データθを書き込みアドレスとして、入力画像メモリ11または入力画像メモリ12に信号強度データIを記憶させる。入力画像メモリ11,12は、レーダ信号処理装置の分解能を落とさずにレーダビデオ信号の信号強度データを格納できるだけの容量を有している。
【0015】
ここで、メモリ制御部13は、走査ごとに入力画像メモリ11,12を切り換えて信号強度データIの書き込みを行うように制御する。また、データの書き込みは読み出しを行っていない方の入力画像メモリから行う。例えば、入力画像メモリ2から信号強度データI´の読み出しを行っている場合は、入力画像メモリ11に信号強度データIの書き込みを行うように制御する。
【0016】
そして、入力画像メモリ11または入力画像メモリ12に記憶された信号強度データは、メモリ制御部13からの読み出し制御信号によって読み出される。読み出しは書き込みを行っていない方の入力画像メモリから行われる。読み出された信号強度データI´は、正規化部15に入力される。また、メモリ制御部13は、読み出された信号強度データI´の距離データr´、方位角データθ´を座標変換部14および正規化部15に出力する。
【0017】
座標変換部14は、レーダビデオ信号の座標系を極座標系(r,θ)から直交座標系(X,Y)に変換する。
【0018】
PPI画像の中心の座標を(X,Y)、拡大率Kとすると、直交座標(X,Y)は以下の(数式1),(数式2)で求められる。
【0019】
X=Krsinθ+X (数式1)
Y=Krcosθ+Y (数式2)
ここで、中心座標(X,Y)、拡大率Kは、図示しないPC等の外部装置から座標変換部14に入力される。
【0020】
図2は極座標系から直交座標系への座標変換を説明するための図である。図2では、PPI画像の中心の座標を(X,Y)、表示部19の画面21を縦M画素、横N画素とした場合の座標変換を示している。
【0021】
図2に示すある点A(r´,θ´)の直交座標値(X,Y)は、拡大率Kとすると、(数式1),(数式2)より、以下のようになる。
【0022】
(X,Y)=(Kr´sinθ´+X,Kr´cosθ´+Y) (数式3)
ここで、レーダ信号処理装置におけるθの分解能をTとすると、従来の技術ではθからθT−1までT回の三角関数の演算が必要であった。しかし、本発明では、入力画像メモリ11,12の少なくとも一方に、常に1走査分のレーダビデオ信号を保持しているので、点A(r´,θ´)の座標変換をする際に、点B(r´,θ´+π/2)、点C(r´,θ´+π)、点D(r´,θ´+3π/4)のXY座標も符号反転と足し算の簡単な処理で求めることができる。点B,C,Dの直交座標値(X,Y),(X,Y),(X,Y)は、拡大率Kとすると、以下のようになる。
【0023】
(X,Y)=(Kr´cosθ´+X,−Kr´sinθ´+Y) (数式4)
(X,Y)=(−Kr´sinθ´+X,−Kr´cosθ´+Y) (数式5)
(X,Y)=(−Kr´cosθ´+X,Kr´sinθ´+Y) (数式6)
すなわち、θからθT/4−1まで(0〜90度まで)、T/4回の三角関数の計算で極座標系から直交座標系へ座標変換を行うことができる。
【0024】
なお、PPI表示画像の中心を移動させる場合、例えば、中心を(X,Y)から(X+a,Y+b)に移動させる場合は、点A(r´,θ´)の直交座標値(X,Y)は以下のようになる。
【0025】
(X,Y)=(Kr´sinθ´+X+a,Kr´cosθ´+Y+b) (数式7)
座標変換部14は、上記のように座標変換によって算出したXY座標を、出力画像メモリ16のアドレスとして出力する。
【0026】
正規化部15は、入力されたレーダビデオ信号の信号強度データI´を拡大率Kに応じて正規化する。r方向の分解能L、θの分解能Tとすると、入力画像メモリ11,12にはそれぞれL×T個のデータが格納されている。拡大率を1(通常表示)、出力する表示部の画面サイズを縦M画素、横N画素(M≦N)とすると、PPI表示画像の半径rは最大でもN/2画素となる。
【0027】
正規化部15は、r方向の分解能LをN/2画素に正規化するために、r方向の連続するL/(N/2)=2L/N個の信号強度データI´の最大値をとり、この最大値を2L/N個の受信強度の代表値I´´とし、出力画像メモリ16に出力する。
【0028】
拡大率Kの場合は、(2L/N)/K=2L/NK個の連続する信号強度データI´の最大値を受信強度の代表値I´´とする。また、2L/NK=1、すなわちK=2L/Nのとき、拡大率Kは最大となる。
【0029】
例えば、M=N=2048画素、r方向の分解能L=4096とすると、L/(N/2)=4となるので、拡大率1の通常表示の場合、r方向に4つ連続する信号強度データI´の値から代表値I´´を求め、この代表値I´´を出力画像メモリ16に出力する。また、上記の条件では最大の拡大率Kは4であり、このとき、出力される代表値I´´は、入力された信号強度データI´と同じとなる。この場合は、r方向の分解能L=4096のうち、内側の1/4にあたる1024個の点を直交座標系に変換することになり、分解能は保たれる。
【0030】
出力画像メモリ16は、正規化部15から出力される代表値I´´を書き込む。この際、座標変換部14で得られた代表値I´´に対応するXY座標を出力画像メモリ16のアドレスとする。なお、XY座標が画面21の表示範囲外である場合には、出力画像メモリ16は書き込みを行わない。
【0031】
出力画像メモリ16に記憶された信号強度データの代表値I´´は、合成部18において、レーダ画像に重畳して表示する地図等の画像のデジタルデータと合成され、ラスタスキャン方式の表示部19で表示される。
【0032】
レーダ画像に重畳して表示する画像のデジタルデータDは、図示しない外部の装置から入力されてデジタルデータメモリ17に格納されている。レーダ画像を拡大したり、PPI表示画像の中心を移動させたりする場合には、拡大、移動させたデジタルマップがデジタルデータメモリ17に入力される。
【0033】
このように本実施の形態によれば、PPIスキャンのレーダビデオ信号の信号強度データを格納する入力画像メモリ11,12への書き込み、読み出しを走査ごとに切り換えることで、常に1走査分のデータを使用することができ、これによりデータを欠落させることなく、レーダ画像の拡大やPPI画像の中心点の移動をしたラスタスキャンへの変換を行うことが可能となり、拡大表示の際の解像度を向上させ、柔軟に拡大率を選択することができる。
【0034】
また、入力画像メモリ11,12の少なくとも一方に、常に1走査分のレーダビデオ信号を保持しているので、これを用いて符号反転と足し算の簡単な処理を行うことにより、三角関数の演算量を1/4にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーダ表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】極座標系から直交座標系への座標変換を説明するための図である。
【図3】従来のレーダ表示装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
11,12 入力画像メモリ
13 メモリ制御部
14 座標変換部
15 正規化部
16 出力画像メモリ
17 デジタルデータメモリ
18 合成部
19 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極座標系走査のレーダビデオ信号の信号強度データを、極座標系の座標値をアドレスとして格納する2つの入力画像記憶手段と、
これら2つの入力画像記憶手段への前記レーダビデオ信号の信号強度データの書き込みおよび読み出しを制御する記憶制御手段と、
2つの前記入力画像記憶手段の一方から読み出された前記レーダビデオ信号の信号強度データに対応する座標値を極座標系から直交座標系に変換する座標変換手段と、
2つの前記入力画像記憶手段の一方から読み出された前記レーダビデオ信号の信号強度データを拡大率に応じて正規化して代表値を算出する正規化手段と、
この正規化手段で算出された前記代表値を、前記座標変換手段により得られた直交座標系の座標値をアドレスとして格納する出力画像記憶手段と、
この出力画像記憶手段に格納された前記代表値に対応する直交座標系走査のレーダ画像を表示する表示部とを備え、
前記記憶制御手段は、走査ごとに2つの前記入力画像記憶手段を切り換えてレーダビデオ信号の信号強度データの書き込みおよび読み出しを行い、一方の前記入力画像記憶手段から読み出しを行っているときは他方の前記入力画像記憶手段に書き込みを行うように制御することを特徴とするレーダ表示装置。
【請求項2】
前記座標変換手段は、一方の前記入力画像記憶手段に記憶されている1走査分の極座標系走査のレーダビデオ信号の信号強度データを用い、1/4走査分の三角関数の演算で1走査分の座標変換を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーダ表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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