説明

レーダ装置

【課題】 連続妨害波とパルス妨害波とが混在する複合妨害波の環境下においても、所望のレーダ目標信号を的確に検出する。
【解決手段】 主アンテナ1及び補助アンテナ2を併設したレーダ装置において、第1及び第2の閾値設定手段72,74出力の一致信号を導出する一致信号生成手段73と、この一致信号に基づいてSLC3から出力された信号の振幅を制限して出力する振幅制限手段71とを有する。
従って、たとえSLC3から出力される主CH信号Ymに大きなパルス妨害波Jp1が残存したとしても、一致信号生成手段73における検出により振幅制限手段71を駆動するので、パルス妨害波Jp1の振幅は制限され、目標信号S1,S2は良好なS/Nのもとで検出表示できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続妨害波とパルス妨害波とが混在する複合妨害波の環境下においても、目標(所望)信号を的確に検出可能なレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指向性を有するアンテナでレーダ波を受信し、目標(所望)信号を抽出するレーダ装置において、妨害波はレーダアンテナパターンのサイドローブから受けることが多い。
【0003】
レーダ装置において、サイドローブからの妨害波を除去するために、サイドローブキャンセラ(SLC;Sidelobe Canceller)が採用される。
【0004】
SLCは、主アンテナからの受信信号と、主アンテナのサイドローブよりも利得の高い補助アンテナからの受信信号とを導入し、妨害波到来方向の受信感度をゼロにするようなパターン形成を行って妨害波を抑圧する。しかしながら、妨害波をキャッチして、妨害波到来方向の受信感度がゼロとなるパターンを得るまでには時間を要するので、SLCは、短パルス妨害波に対しては必ずしも効果的ではないという問題がある。
【0005】
そこで、スイッチング動作によりパルス妨害波を除去するサイドローブブランカ(SLB;Sidelobe Blanker)を採用し、SLBとSLCとの組み合わせ構成により、連続妨害波に加えてパルス妨害波をも抑圧するレーダ装置が知られている。(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
図5は、主アンテナと補助アンテナと設置し、連続妨害波をSLCで抑圧するとともに、パルス妨害波をSLBで除去して目標信号を検出する従来のレーダ装置の構成図である。また、図6(a)は図5に示した主アンテナ及び補助アンテナのアンテナパターン図で、実線Paは主アンテナのアンテナパターン、一点鎖線Pbは補助アンテナのアンテナパターンをそれぞれ示したものであり、受信される第1及び第2の目標信号S1,S2及び連続妨害波Jc並びに第1,第2のパルス妨害波Jp1,Jp2を各受信角度方向に合わせて示している。図6(b)は連続妨害波Jc抑圧時の受信感度を示したパターン図である。
【0007】
図5に示した従来のレーダ装置の構成において、アレイアンテナからなる主アンテナ1と補助アンテナ2には、それぞれ主受信機1a及び補助受信機2aが接続されている。
【0008】
主受信機1a及び補助受信機2aでは、それぞれ受信信号の高周波増幅、周波数変換及びA/D変換等が行われ、ディジタル化された主CH(チャンネル)信号及び補助CH(チャンネル)信号が形成され、主CH信号はSLC3に、また補助CH信号YaはSLC3及びSLB4に供給される。
【0009】
SLC3は、減算回路31、2つの加算回路32,33、それに遅延回路34aを組み込んだ狭帯域フィルタ34で構成され、狭帯域フィルタ34と減算回路31との間のフィードバック制御によりウエイト処理が実行される。
【0010】
SLC3は、図6(a)に示したように、サイドローブに連続妨害波Jcを受信したとき、受信角度位置における補助アンテナ2のアンテナ利得Jcbは、所定の時定数のもとで図示矢印Y方向に移動収束し、主アンテナ1のアンテナ利得Jcaと一致して減算を行うように機能する。従って、図6(b)に示すように、受信感度パターン上にヌル点Jcnが形成され、到来方向の感度がゼロとなるように作動し、連続妨害波Jcは抑圧される。
【0011】
SLC3において、連続妨害波Jcが抑圧された主CH信号YmはSLB4に供給される。
【0012】
SLB4は、図5に示したように、スイッチング回路41、振幅比較回路42、及びゲート発生回路43で構成され、SLC3からの主CH信号Ymは、スイッチング回路41及び振幅比較回路42に、また補助受信機2aから出力された補助CH信号Yaは振幅比較回路42に供給される。
【0013】
振幅比較回路42は、SLC3から供給される主CH信号Ymと補助受信機2aから供給される補助CH信号Yaとを導入し、両信号の振幅レベルを比較し、補助CH信号Yaの振幅レベルが主CH信号Ymよりも大のとき、振幅比較信号をゲート発生回路43に供給する。
【0014】
すなわち、振幅比較回路42は、主アンテナ1で受信されたパルス妨害波Jp1,Jp2と補助アンテナ2で受信されたパルス妨害波Jp1,Jp2とを比較したとき、図6に示したように、サイドローブにおけるアンテナ利得の差異から、補助CH信号Yaにおける振幅レベルの方がより大である(Jpb>Jpa)であることを利用してパルス妨害波Jp1,Jp2を検出し、ゲート発生回路43に供給する。
【0015】
ゲート発生回路43は、振幅比較回路42で検出されたパルス妨害波Jp1,Jp2のパルス幅に相当するゲート信号を形成してスイッチング回路41に供給するので、スイッチング回路41は、スイッチ(ON/OFF)によるOFF操作により、図6(b)に示したように、受信角度位置Jpoで受信されSLC3から供給された主CH信号Ymに含むパルス妨害波Jp1,Jp2を除去して、図5に示したパルス圧縮回路5に供給する。
【0016】
パルス圧縮回路5は、このようにして妨害波が抑圧ないしは除去された主CH信号Ymを導入し、目標信号に対するパルス圧縮を行って検出器6に供給するので、検出器6は目標信号S1,S2を検出表示することができる。
【非特許文献1】吉田 孝 監修「改訂 レーダ技術」社団法人 電子情報通信学会、平成8年10年1月1日発行、p.296
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記のように、従来のレーダ装置では、サイドローブで受信された連続妨害波JcはSLC3で抑圧され、同じくサイドローブで受信されたパルス妨害波Jp1,Jp2はSLB4で除去されるように構成されている。
【0018】
SLB4は、振幅比較回路42を備え、補助CH信号Yaにおけるパルス妨害波Jp1,Jp2が主CH信号Ymにおけるパルス妨害波Jp1,Jp2よりも振幅レベルが大であることを利用してパルス妨害波Jp1,Jp2を検出し、その検出信号によりスイッチング回路41が作動して、パルス妨害波Jp1,Jp2が除去される。
【0019】
しかしながら、SLB4では、連続妨害波Jcとパルス妨害波Jp1,Jp2が同時に混在する環境下において、補助受信機2aから出力される補助CH信号Ya中には、パルス妨害波Jp1,Jp2とともに連続妨害波Jcも何ら抑圧されることなく含まれて振幅比較回路42に供給される。
【0020】
従って、振幅比較回路42からは連続妨害波Jcにも応答した信号がゲート発生回路43を介してスイッチング回路41に供給されるので、スイッチング回路41は、連続妨害波Jcの受信時間長にわたって主CH信号Ymを遮断することになる。
【0021】
連続妨害波Jcによって主CH信号Ymが遮断される様子を、図5に加え、図7を参照して説明する。
【0022】
図7(a)は主アンテナ1で受信したレーダ波の主受信機1aにおける距離(レンジ)方向の出力波形を示したものであり、メインローブで受信された異なる距離からの目標信号S1,S2と、サイドローブで受信された連続妨害波Jc及び2個のパルス妨害波Jp1,Jp2を示している。
【0023】
図7(a)に示した主受信機1aの出力信号は、SLC3に供給され、ここで連続妨害波Jcは抑圧されるので、SLC3から出力される主CH信号Ymの信号波形は図7(b)に示したようになり、振幅比較回路42に供給される。なお、SLC3では、ある時定数のもとでウエイト処理が行われるので、SLC3出力の連続妨害波Jcは、図7(b)に示したように、立ち下がり特性を示して抑圧される。
【0024】
図7(c)は、振幅比較回路42に供給される補助CH信号Yaの波形を示している。
【0025】
補助CH信号Yaは、サイドローブにおいては、主アンテナ1よりアンテナ利得の大きな補助アンテナ2で受信された信号であるから、図7(c)に示したように、補助CH信号Yaに含むパルス妨害波Jp1,Jp2や連続妨害波Jcは、主CH信号Ymにおけるよりも大きな振幅レベルを示す。なお、ここでは、サイドローブで受信されたパルス妨害波Jp1及び連続妨害波Jcの振幅レベルは主CH信号Ymのメインローブで受信される目標信号S1,S2よりも大であるものとして示している。
【0026】
そこで、図7(b)に示した主CH信号Ymと図7(c)に示した補助CH信号Yaとが振幅比較回路42に供給され振幅比較されたとき、パルス妨害波Jp1,Jp2のみならず、連続妨害波Jcも、主CH信号Ymにおけるより受信目標信号S1,S2よりも大(Ya>Ym)であるので、スイッチング回路41には、図7(d)に示したゲート信号がゲート発生回路43から供給され、スイッチング動作により主CH信号Ymの出力は遮断(OFF)される。
【0027】
従って、スイッチング回路41のOFF動作により、スイッチング回路41からの信号出力は、図7(e)に示したようにゼロとなるので、主CH信号Ymに含む目標信号S1,S2の検出は不可能となる。
【0028】
なお上記説明において、主CH信号Ymに含む目標信号S1が補助CH信号Yaに含む連続妨害波Jcよりも大であれば、その限りにおいて、スイッチング回路41はON動作し目標信号S1は出力される。しかしながら他の受信レベルの低い目標信号S2等の多くは検出されないことになり実用上問題である。
【0029】
レーダ装置の実際の運用において、意図的に放射される妨害波は大きな信号レベルを有していることが多い。とりわけパルス圧縮レーダ等におけるように、遠距離に位置する小さな移動目標の検出を目的としたレーダ装置においては、連続妨害波とパルス妨害波とが混在する複合妨害波の環境下において目標検出を行うとき、パルス妨害波及び連続妨害波の抑圧ないしは除去が課題であり改善が要望されていた。
【0030】
そこで本発明は、比較的簡単な構成で、パルス妨害波はもとより、連続妨害波をも適切に抑圧し、比較的小さなレベルの目標信号でも良好なS/Nのもとで、的確に検出可能なレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
第1の本発明に係るレーダ装置は、主アンテナと補助アンテナとを有し、主アンテナのサイドローブで受信された妨害波を抑圧して目標信号を検出するレーダ装置において、前記主アンテナと前記補助アンテナとに接続され、妨害波を抑圧して出力するサイドローブキャンセラと、このサイドローブキャンセラからの出力を導入し、予め設定された第1の閾値を超えた信号成分を導出する第1の閾値設定手段と、前記補助アンテナからの信号を導入し、予め設定された第2の閾値を超えた信号成分を導出する第2の閾値設定手段と、この第2の閾値設定手段と前記第1の閾値設定手段とに接続され、各閾値設定手段から出力された各信号成分の一致信号を導出する一致信号生成手段と、この一致信号生成手段と前記サイドローブキャンセラとに接続され、一致信号生成手段からの一致信号に基づき、前記サイドローブキャンセラから供給された信号の振幅を制限して出力する振幅制限手段とを具備することを特徴とする。
【0032】
第2の本発明に係るレーダ装置は、主アンテナと補助アンテナとを有し、主アンテナのサイドローブで受信された妨害波を抑圧して目標信号を検出するレーダ装置において、前記主アンテナと前記補助アンテナとに接続され、妨害波を抑圧して出力するサイドローブキャンセラと、このサイドローブキャンセラと前記補助アンテナとに接続され、サイドローブキャンセラから出力された信号と補助アンテナから出力された信号との振幅を比較する比較手段と、この比較手段と前記サイドローブキャンセラとに接続され、比較手段からの振幅比較信号に基づき、前記サイドローブキャンセラから供給された出力信号の振幅を制限して出力する振幅制限手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
上記のように、第1の本発明に係るレーダ装置は、第1及び第2の閾値設定手段と、各閾値設定手段から出力された各信号成分の一致信号を導出する一致信号生成手段と、この一致信号生成手段からの一致信号に基づいてサイドローブキャンセラから出力された信号の振幅を制限して出力する振幅制限手段とを有する。
【0034】
一致信号生成手段は、第1及び第2の閾値設定手段で抽出された振幅レベルの大きな信号成分の相関一致をとって振幅制限手段を駆動するので、たとえ一方の補助CH信号に連続妨害波が存在したとしても、抑圧された主CH信号側の連続妨害波との間では不一致となり、振幅制限手段における主CH信号の振幅制限は回避できる。
【0035】
一方、パルス妨害波は、補助CH信号に含むパルス妨害波とサイドローブキャンセラでは抑圧されることなく出力されるパルス妨害波とが一致し、一致信号が生成されて振幅制限手段を駆動する。
【0036】
このように、振幅制限手段は、連続妨害波には応答せず、パルス妨害波に対し、その振幅を予め設定された振幅値に制限して出力するので、後段において、主CH信号に含む目標信号を良好なS/Nのもとで検出できる。
【0037】
また、第2の本発明に係るレーダ装置は、比較手段と振幅制限手段とを有し、比較手段は、補助アンテナで受信された信号レベルとサイドローブキャンセラで連続妨害波が抑圧された主アンテナの受信信号とを比較して振幅制限手段を制御するので、主CH信号と比較して、補助CH信号に含むより振幅レベルの大きなパルス妨害波や連続妨害波を検出して振幅制限手段を作動させることができる。
【0038】
つまり、振幅制限手段は、主CH信号に含む目標信号検出に支障ない程度に、妨害波を振幅制限して出力することができる。
【0039】
従って、連続妨害波とパルス妨害波とが混在する複合妨害波の環境下において、目標信号よりも大きな連続妨害波やパルス妨害波を受信したとしても、目標信号は何ら遮断されることなく出力され検出できる。
【0040】
また同時に、比較手段で検出されたパルス妨害波は、主CH信号に含むパルス妨害波の振幅を制限して出力するので、目標信号の検出がパルス妨害波により阻害されるのを回避できる。
【0041】
このように、第1及び第2の本発明のレーダ装置によれば、SLCで連続妨害波を抑圧した主CH信号は何ら遮断されることなく出力され、またたとえ強大なパルス妨害波を含むとしてもその振幅は制限されるので、目標信号を適正なS/Nのもとで検出表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明によるレーダ装置の一実施例を図1ないし図4を参照して詳細に説明する。なお、図5ないし図7に示した従来のレーダ装置と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明は省略するとともに、本実施例におけるレーダ装置においても、図6に示したアンテナパターンが形成されてレーダ波及び妨害波が受信されるものとして以下説明する。
【0043】
図1は、本発明によるレーダ装置の第1の実施例を示した構成図である。
【0044】
図1において、アレイアンテナで構成された主アンテナ1と補助アンテナ2には、それぞれ主受信機1a及び補助受信機2aが接続されている。
【0045】
主受信機1aと補助受信機2aは、主アンテナ1と補助アンテナ2で受信された高周波信号をそれぞれ増幅し、周波数変換、及びA/D変換を経て、ディジタル化された主CH信号及び補助CH信号を形成してSLC3に供給する。
【0046】
SLC3は、従来と同様に、主CH信号と補助CH信号とにおける妨害波信号を用いたウエイト処理により、主CH信号に含む連続妨害信号を抑圧して出力する。
【0047】
SLC3において、連続妨害波が抑圧された主CH信号Ymは、振幅制限手段であるリミッタ回路71と第1の閾値設定手段である第1スレショルド回路72に供給される。
【0048】
第1スレショルド回路72は、ベースクリッパの機能を有し、予め設定された閾値Thm以上の信号成分を検出して出力する。
【0049】
従って、第1スレショルド回路72は、SLC3で抑圧されたレベルの小さな連続妨害波や雑音成分を除去し、閾値Thm以上の、振幅レベルの大きなパルス妨害波や受信レベルの大きな目標信号成分を検出して、一致信号生成手段であるアンド回路73に供給する。
【0050】
一方、補助受信機2aから出力される補助CH信号Yaは、上記のようにSLC3に供給されるとともに、第2の閾値設定手段である第2スレショルド回路74に供給される。
【0051】
第2スレショルド回路74は、第1スレショルド回路72と同様に、予め設定された閾値Tha以上の信号成分を検出してアンド回路73に供給する。従って、第2スレショルド回路74からは、閾値Thaを超えた、受信レベルの高いパルス妨害波Jp1,Jp2や連続妨害波Jcが検出されてアンド回路73に供給される。
【0052】
アンド回路73は、第1スレショルド回路72と第2スレショルド回路74で検出され出力された信号間の一致(AND)をとり、その一致信号をリミッタ回路71に供給する。
【0053】
リミッタ回路71は振幅制限手段を構成し、一致信号の時間長にわたり、SLC3から供給される主CH信号Ymの振幅を予め設定されたリミット値(ピーククリップレベルの振幅)Aに制限して出力する。
【0054】
すなわち、SLC3から供給される主CH信号Ymの位相をΦmとしたとき、リミッタ回路71は、リミット値Aに振幅制限された主CH信号Ym=A・exp(j・Φm)を導出してパルス圧縮回路5に供給する。
【0055】
上記のように、この実施例では、閾値Thmの第1スレショルド回路72を経た主CH信号Ymと閾値Thaの第2スレショルド回路74を経た補助CH信号Yaとが、アンド回路73において一致の有無が判定され、一致した信号成分により、主CH信号Ymがリミット値Aに制限されて出力されるが、その過程を、図2を参照してさらに詳細説明する。
【0056】
図2(a)は、主受信機1aの出力信号波形を示したもので、図7(a)に示した出力信号波形に対応する。すなわち、図2(a)は、目標信号S1,S2がメインローブにおいて距離を異にして受信され、連続妨害波Jc及び2個の距離を隔てたパルス妨害波Jp1,Jpがサイドローブに受信された様子を示している。
【0057】
図2(b)は、図7(b)に対応し、SLC3から第1スレショルド回路72に供給される主CH信号Ymと、その第1スレショルド回路72において予め設定された閾値Thm(一点鎖線で示す)とを合わせ示した信号波形図である。
【0058】
第1スレショルド回路72は、閾値Thm以下の信号を切り取るベースクリッパであり、図2(c)に示したように、閾値Thmを超えた目標信号S1及びパルス妨害波Jp1を生成してアンド回路73に供給する。
【0059】
一方、図2(d)は、図7(c)に対応し、補助受信機2aから出力された補助CH信号Yaと、第2スレショルド回路74において、予め設定された閾値Tha(一点鎖線で示す)とを合わせ示した信号波形図である。
【0060】
第2スレショルド回路74は、閾値Tha以下の信号を切り取り、図2(e)に示したように、閾値Thaを超えた連続妨害波Jc及びパルス妨害波Jp1を生成してアンド回路73に供給する。
【0061】
アンド回路73は、図2(c)に示した第1スレショルド回路72からの信号と、図2(e)に示した第2スレショルド回路74との一致(アンド)をとり、図2(f)に示す一致信号を生成してリミッタ回路71に供給する。
【0062】
リミッタ回路71は、アンド回路73からの一致信号の供給を受け、その一致信号の占める時間長の間、SLC3から供給される主CH信号Ymの振幅を、予め設定されたリミット値Aに振幅制限して出力する。
【0063】
従って、リミッタ回路71からは、図2(g)に示したように、図2(f)に示された区間の間の信号成分、すなわち目標信号S1及びパルス妨害波Jp1がリミット値Aに振幅制限された主CH信号Ymが出力される。
【0064】
大きな連続妨害波Jc及びパルス妨害波Jp1がサイドローブで受信され、また信号レベルの大きな目標信号S1がメインローブで受信されたとしても、リミッタ回路71は主CH信号Ymを遮断(OFF)することなく、図2(g)に示したように、図2(f)に示された区間長の間だけ、予め設定されたリミット値Aに振幅制限されて出力される。
【0065】
すなわち、大きな目標信号S1が、たとえ連続妨害波Jcとの一致により、振幅制限されたとしても信号レベルの小さな目標信号S2とともに遮断されることなく出力され、検出される。
【0066】
また、振幅レベルの大きな妨害波Jp1は、リミッタ回路71における、図2(f)に示された区間長さにわたりリミット値Aに振幅制限されるので、目標信号S1,S2は良好なS/Nのもとで検出可能である。とりわけ、パルス圧縮では、パルス妨害波はパルス圧縮比に比例してその振幅がさらに抑圧されるので、リミット値Aへの振幅制限により、パルス妨害波Jp1が目標信号S1,S2の検出を阻害するのを回避できる。
【0067】
なお、図では示していないが、レンジ(距離)方向でパルス妨害波がたとえ目標信号に重なって存在したとしても、目標信号は重畳したパルス妨害波のパルス幅だけ振幅制限を受けるのみで済むので、目標検出に対する影響は小さく押さえられる。
【0068】
上記第1の実施例では、一致信号生成手段(アンド回路73)と振幅制限手段(リミッタ回路71)とを設け目標信号S1,S2を検出するように構成したが、主CH信号にたとえ大きなパルス妨害波Jp1を含むとしても、目標信号S1,S2を遮断することなく出力検出できれば良いので、一致信号生成手段を振幅比較手段に代えても、同様に、主CH信号に含む当該パルス妨害波の振幅を制限して目標検出できる。
【0069】
図3は、SLC3を経た主CH信号と補助受信機からの補助CH信号との振幅比較により、パルス妨害波を抽出し、主CH信号に含むパルス妨害波の振幅を制限して目標を検出する本発明に係るレーダ装置の第2の実施例を示した構成図である。
【0070】
なお、図3に示した構成において、図1に示した第1の実施例と同一構成には同一符号を付して詳細な説明は省略し、相違点のみを特に説明する。
【0071】
図3に示した第2の実施例にかかるレーダ装置は、図1に示したレーダ装置と対比して、図1に示したアンド回路73に代えて振幅比較回路75を設けた点が相違する。
【0072】
以下、図3に示したレーダ装置の動作を、図4に示した信号波形図を参照して説明する。
【0073】
図4(a)は、主受信機1aの出力信号波形を示したもので、図2(a)に示した主受信機1aの出力信号波形に対応し、目標信号S1,S2がメインローブにおいて距離を異にして受信され、連続妨害波Jc及び2個の距離を隔てたパルス妨害波Jp1,Jp2がサイドローブに受信された様子を示している。
【0074】
図4(b)は、図2(b)に対応し、SLC3から第1スレショルド回路72に供給される主CH信号Ymと、その第1スレショルド回路72において予め設定される閾値Thmレベル(一点鎖線で示す)との関係を示した信号波形図である。
【0075】
第1スレショルド回路72は、ベースクリッパを構成し、閾値Thm以下の信号を切り取り、図4(c)に示したように、閾値Thmを超えた目標信号S1及びパルス妨害波Jp1を検出して振幅比較回路75に供給する。
【0076】
一方、図4(d)は、図2(d)に対応し、補助受信機2aから出力される補助CH信号Yaと、第2スレショルド回路74において予め設定された閾値Tha(一点鎖線で示す)との関係を示した信号波形図である。
【0077】
第2スレショルド回路74は、閾値Tha以下の信号を切り取り、図4(e)に示したように、閾値Thaを超えた連続妨害波Jc及びパルス妨害波Jp1を検出して振幅比較回路75に供給する。なお、この第2の実施例では、閾値Tha=閾値Thmに設定されているものとする。
【0078】
振幅比較回路75は、図4(c)に示した第1スレショルド回路72からの信号と、図4(e)に示した第2スレショルド回路74からの信号を比較し、この実施例では、図4(e)に示した第2スレショルド回路74からの信号振幅が大のとき、その区間の比較信号をリミッタ回路71に供給する。
【0079】
この実施例でも、補助CH信号Yaは、補助CH信号Yaに含む連続妨害波Jc及びパルス妨害波J1,J2は、いずれも主CH信号Ymにおける連続妨害波Jc及びパルス妨害波J1,J2よりも振幅は大であるとする。従って、振幅比較回路75からは、パルス妨害波Jp1を含む連続妨害波Jcの図4(f)に示す距離方向の比較信号が得られてリミッタ回路71に供給される。
【0080】
リミッタ回路71は、振幅比較回路75からの比較出力信号の供給を受け、その比較出力信号の占める時間長(距離区間)の間にわたり、SLC3から供給される主CH信号Ymの振幅を、予め設定されたリミット値Aに制限して出力する。
【0081】
リミッタ回路71からは、図4(g)に示したように、目標信号S1及びパルス妨害波Jp1において、リミット値Aに振幅制限された主CH信号Ymが出力される。
【0082】
従って、第2の実施例においても、SLC3を経た主CH信号Ymにパルス妨害波Jp1がたとえ消え残っていたとしても、振幅比較回路75におけるサイドローブにおけるアンテナ利得差を利用した比較操作により、パルス妨害波Jp1が検出され、リミッタ回路71を作動させるので、主CH信号Ymにおけるパルス妨害波Jp1の振幅を、移動目標等の目標検出に支障がない程度の振幅(リミット値A)に制限されて出力される。
【0083】
また、補助CH信号Yaに含む連続妨害波Jcの振幅は、SLC3で抑圧された主CH信号Ymに含む連続妨害波Jcの振幅よりも大であるから、振幅比較回路75では、その連続妨害波Jcを検出し、連続的にリミッタ回路71を作動させる。
【0084】
しかしながら、リミッタ回路71は、SLC3からの主CH信号Ymに対し、リミット値Aに単に制限するように作動するのみであるから、たとえ連続妨害波Jc中に目標信号S1,S2が存在したとしても、主CH信号Ymに含む目標信号S1,S2は、何ら遮断(OFF)されることなく出力され検出される。
【0085】
なお、この第2の実施例では、主アンテナ1で受信される目標信号S1の信号レベルが補助CH信号における連続妨害波Jcのレベルよりも低いものとして説明したが、目標信号S1の信号レベルが連続妨害波Jc(あるいはパルス妨害波)の振幅レベルより高い場合は、リミッタ回路71で振幅制限を受けることなく出力され、検出に際し、目標信号S1成分は最大限有効利用される。
【0086】
また、上記第1及び第2の各実施例では、レーダ装置は、単に目標からのレーダ波を受信するものとして説明したが、主アンテナ系に送受切換器を組み込み受信系とともにレーダ送信機を切換え接続し、主アンテナにおけるレーダ波の送受信により、目標からの反射信号を受信するように構成しても良いことは言うまでもない。
【0087】
また、上記各実施例の主受信機1a及び補助受信機2aは、各受信高周波がディジタル信号に変換されて出力されるものとして説明したが、中間周波等のアナログ信号の状態で出力されたものでも同様な効果を得ることができる。
【0088】
以上説明のように、第1及び第2の実施例に係るレーダ装置によれば、大きな連続妨害波Jcと目標信号S1,S2とがレンジ方向に重畳した環境下においても、また強大なパルス妨害波Jp1.Jp2が受信されたとしても、振幅制限手段は、主CH信号はなんら遮断されることなく検出でき、また大きなパルス妨害波がたとえSLCでは抑圧されることなく残存したとしてもリミット値に振幅制限されるので、目標信号S1,S2は良好なS/Nのもとで的確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明によるレーダ装置の第1の実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示したレーダ装置の動作を説明する信号波形図である。
【図3】本発明によるレーダ装置の第2の実施例を示した構成図である。
【図4】図2に示したレーダ装置の動作を説明する信号波形図である。
【図5】従来のレーダ装置を示した構成図である。
【図6】図6(a)は図5に示したレーダ装置のアンテナパターン図、図6(b)は図5に示したレーダ装置の受信感度パターン図である。
【図7】図5に示したレーダ装置の動作を説明する信号波形図である。
【符号の説明】
【0090】
1 主アンテナ
1a 主受信機
2 補助アンテナ
2a 補助受信機
3 サイドローブキャンセラ(SLC)
5 パルス圧縮回路
6 検出器
71 リミッタ回路(振幅制限手段)
72 第1スレショルド回路(第1の閾値設定手段)
73 アンド回路(一致信号生成手段)
74 第2スレショルド回路(第2の閾値設定手段)
75 振幅比較回路(比較手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主アンテナと補助アンテナとを有し、主アンテナのサイドローブで受信された妨害波を抑圧して目標信号を検出するレーダ装置において、
前記主アンテナと前記補助アンテナとに接続され、妨害波を抑圧して出力するサイドローブキャンセラと、
このサイドローブキャンセラからの出力を導入し、予め設定された第1の閾値を超えた信号成分を導出する第1の閾値設定手段と、
前記補助アンテナからの信号を導入し、予め設定された第2の閾値を超えた信号成分を導出する第2の閾値設定手段と、
この第2の閾値設定手段と前記第1の閾値設定手段とに接続され、各閾値設定手段から出力された各信号成分の一致信号を導出する一致信号生成手段と、
この一致信号生成手段と前記サイドローブキャンセラとに接続され、一致信号生成手段からの一致信号に基づき、前記サイドローブキャンセラから供給された信号の振幅を制限して出力する振幅制限手段と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記振幅制限手段は、前記一致信号の時間幅の間、前記サイドローブキャンセラから供給された出力信号の振幅を制限するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
主アンテナと補助アンテナとを有し、主アンテナのサイドローブで受信された妨害波を抑圧して目標信号を検出するレーダ装置において、
前記主アンテナと前記補助アンテナとに接続され、妨害波を抑圧して出力するサイドローブキャンセラと、
このサイドローブキャンセラと前記補助アンテナとに接続され、サイドローブキャンセラから出力された信号と補助アンテナから出力された信号との振幅を比較する比較手段と、
この比較手段と前記サイドローブキャンセラとに接続され、比較手段からの振幅比較信号に基づき、前記サイドローブキャンセラから供給された出力信号の振幅を制限して出力する振幅制限手段と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
前記比較手段は、前記補助アンテナから出力された信号成分の振幅レベルが前記サイドローブキャンセラから出力された信号成分の振幅レベルよりも大のとき振幅比較信号を出力し、
前記振幅制限手段は、前記サイドローブキャンセラからの出力信号を、前記振幅比較信号の時間幅にわたって振幅制限する
ように構成されたことを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記サイドローブキャンセラと前記比較手段との間に、サイドローブからの出力を導入し、予め設定された第1の閾値を超えた信号成分を比較手段に導出する第1の閾値設定手段を設け、
前記補助アンテナと前記比較手段との間に、補助アンテナからの出力を導入し、予め設定された第2の閾値を超えた信号成分を前記比較手段に導出する第2の閾値設定手段を設けた
ことを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記比較手段は、前記第2の閾値設定手段から出力された信号成分の振幅レベルが第1の閾値設定手段から出力された信号成分の振幅レベルよりも大のとき振幅比較信号を出力し、
前記振幅制限手段は、前記サイドローブキャンセラからの出力信号を、前記振幅比較信号の時間幅にわたって振幅制限する
ように構成されたことを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記振幅制限手段は、パルス圧縮手段に出力信号を供給するように構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1項に記載のレーダ装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate