説明

レーダ装置

【課題】検知範囲内に位置するターゲットの検知精度を向上することのできるレーダ装置を提供する。
【解決手段】レーダ装置1を構成するマイコン10は、まず、ステップS10の処理として、受信アレーアンテナ15のヌル点をヌル点NL1〜NL11のうちの1つに設定し、受信アレーアンテナ15のヌル点が設定された状態で受信された受信信号RをRAM等に記憶する。次に、マイコン10は、上記ヌル点NL1〜NL11すべてに対してこうした一連の処理を順次実行する。そして、マイコン10は、上記ヌル点NL1〜NL11に対する受信信号Rを順次記憶すると、これら記憶した受信信号Rの加算平均を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーティングローブを抑圧可能なアレーアンテナによって検知範囲内に位置するターゲット(対象物)を検知するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレーダ装置として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1に記載の技術では、レーダ装置は、複数のアンテナ素子により構成した送信アレーアンテナと、この送信アレーアンテナに接続した送信処理部と、複数のアンテナ素子により構成した受信アレーアンテナと、この受信アレーアンテナに接続した受信処理部とを含んで構成されている。そして、このレーダ装置は、被グレーティング抑圧側である送信アレーアンテナが放射するグレーティングローブの放射方位とグレーティング抑圧側である受信アレーアンテナが設定するヌル点の設定方位とが一致する送受合成指向性をもって、検知範囲内のターゲットを検知する。なお、送受合成指向性とは、被グレーティング抑圧側の指向性及びグレーティング抑圧側の指向性が合成された指向性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4147447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術によれば、被グレーティングローブ抑圧側のグレーティングローブの放射方位とグレーティングローブ抑圧側のヌル点の設定方位とが一致する送受合成指向性となることから、被グレーティングローブ抑圧側のグレーティングローブ幅がグレーティングローブ抑圧側のヌル幅と一致する場合、そのグレーティングローブ全体をヌルによって抑圧しつつ、すなわちグレーティングローブの放射方位の感度を抑制しつつ、検知範囲内に位置するターゲットを検知することができるようになる。
【0005】
しかしながら、被グレーティングローブ抑圧側のグレーティングローブ幅がグレーティングローブ抑圧側のヌル幅よりも広い場合、被グレーティングローブ抑圧側のグレーティングローブの一部を、グレーティングローブ抑圧側のヌルによって抑圧することができるに過ぎない。被グレーティングローブ抑圧側のグレーティングローブ全体を、グレーティングローブ抑圧側のヌルによって抑圧すること、すなわちグレーティングローブの放射方位の感度を十分に抑制することは難しい。そしてひいては、グレーティングローブの放射方位の感度を十分に抑制することが難しいことから、検知範囲内に位置するターゲットの検知精度も十分ではない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、検知範囲内に位置するターゲットの検知精度を向上することのできるレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の送信アンテナ素子からなる送信アレーアンテナと、これら複数の送信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記送信アレーアンテナの指向性を制御する送信側指向性制御部と、複数の受信アンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、これら複数の受信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記受信アレーアンテナの指向性を制御する受信側指向性制御部と、前記送信アレーアンテナの指向性及び前記受信アレーアンテナの指向性が合成された送受合成指向性をもって受信された受信信号に基づいて、対象物を検知する対象物検知部とを備えるレーダ装置であって、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち、一方をグレーティング抑圧側とし、他方を被グレーティング抑圧側とし、グレーティング抑圧側の指向性制御部は、当該グレーティング抑圧側のアレーアンテナのヌル点を、被グレーティング抑圧側のアレーアンテナの指向性におけるグレーティングローブの幅に対応する設定範囲内で異なる複数の設定方位に順次設定し、前記対象物検知部は、前記グレーティング抑圧側の指向性制御部によってヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号を加算平均し、その加算平均された受信信号に基づいて、対象物を検知することを特徴とする。
【0008】
レーダ装置としての上記構成では、送受合成指向性は、グレーティング抑圧側のヌル点が順次設定されるたびに、グレーティングローブの異なる部分がヌルによって抑圧された指向性となる。これら送受合成指向性が加算平均されると、その加算平均された送受合成指向性は、グレーティングローブの複数部分がヌルによって抑圧された指向性となる。したがって、グレーティングローブの幅がヌル幅より広い場合であっても、グレーティングローブをヌルによってより抑圧した送受合成指向性をもって受信信号を受信する、すなわち、グレーティングローブの放射方位の感度を抑制した上で受信信号を受信することができるようになる。そしてひいては、検知範囲内に位置するターゲット(対象物)の検知精度を向上することができるようになる。
【0009】
ちなみに、従来、アレーアンテナの受信信号を複数回積算することによりメインローブの方位における受信信号の信号レベルを増幅するいわゆるスナップショットという技術が知られている。ただし、上記請求項1記載の構成は、こうした技術と対比して、グレーティング抑圧側の指向性制御部が、グレーティング抑圧側のアレーアンテナのヌル点を上記設定範囲内で異なる複数の設定方位に順次設定する点で相違する。そして、この相違点があるため、スナップショット技術では、グレーティングローブの方位における受信信号の信号レベルを増幅してしまうのに対し、上記請求項1に記載の構成では、グレーティングローブの方位における受信信号の信号レベルを抑圧することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、請求項2に記載の発明では、複数の送信アンテナ素子からなる送信アレーアンテナと、これら複数の送信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記送信アレーアンテナの指向性を制御する送信側指向性制御部と、複数の受信アンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、これら複数の受信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記受信アレーアンテナの指向性を制御する受信側指向性制御部と、前記送信アレーアンテナの指向性及び前記受信アレーアンテナの指向性が合成された送受合成指向性をもって受信された受信信号に基づいて、対象物を検知する対象物検知部とを備えるレーダ装置であって、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち、一方をグレーティング抑圧側とし、他方を被グレーティング抑圧側とし、グレーティング抑圧側の指向性制御部は、当該グレーティング抑圧側のアレーアンテナのヌル点を、被グレーティング抑圧側のアレーアンテナにおけるグレーティングローブの幅に対応する設定範囲内で異なる複数の設定方位に順次設定し、前記対象物検知部は、前記グレーティング抑圧側の指向性制御部によってヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号から方位別に最小値を抽出して生成した受信信号に基づいて、対象物を検知することを特徴とする。
【0011】
レーダ装置としての上記構成では、送受合成指向性は、グレーティング抑圧側のヌル点が順次設定されるたびに、グレーティングローブの異なる部分がヌルによって抑圧された指向性となる。これら送受合成指向性から方位別に最小値を抽出して生成された送受合成指向性は、グレーティングローブの複数部分がより一層抑圧された指向性となる。したがって、グレーティングローブの幅がヌルの幅より広い場合であっても、グレーティングローブをヌルによってよりいっそう抑圧した送受合成指向性をもって受信信号を受信する、すなわち、グレーティングローブの放射方位の感度をより位相抑制した上で受信信号を受信することができるようになる。そして、ひいては、検知範囲内に位置するターゲット(対象物)の検知精度を向上することができるようになる。
【0012】
また、上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明では、複数の送信アンテナ素子からなる送信アレーアンテナと、これら複数の送信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記送信アレーアンテナの指向性を制御する送信側指向性制御部と、複数の受信アンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、これら複数の受信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記受信アレーアンテナの指向性を制御する受信側指向性制御部と、前記送信アレーアンテナの指向性及び前記受信アレーアンテナの指向性が合成された送受合成指向性をもって受信された受信信号に基づいて、対象物を検知する対象物検知部とを備えるレーダ装置であって、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち、一方をグレーティング抑圧側とし、他方を被グレーティング抑圧側とし、グレーティング抑圧側の指向性制御部は、当該グレーティング抑圧側のアレーアンテナのヌル点を、被グレーティング抑圧側のアレーアンテナにおけるグレーティングローブの幅に対応する設定範囲内で異なる複数の設定方位に順次設定し、前記対象物検知部は、前記グレーティング抑圧側の指向性制御部によってヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号の推移に基づいて、対象物を検知することを特徴とする。
【0013】
レーダ装置としての上記構成では、送受合成指向性は、グレーティング抑圧側のヌル点が順次設定されるたびに、グレーティングローブはその異なる部分が抑圧される一方、メインローブはほとんど抑圧されない指向性となる。このような送受合成指向性をもって受信された受信信号は、グレーティング抑圧側のアレーアンテナの指向性が設定されるたびに、以下のように推移する。すなわち、被グレーティング抑圧側のメインローブが放射される方位から受信した受信信号は、グレーティング抑圧側のアレーアンテナの指向性が設定されても、ほとんど変動しない。しかしながら、被グレーティングローブ抑圧側のグレーティングローブが放射される方位から受信した受信信号は、グレーティングローブ抑圧側のアレーアンテナの指向性が設定されるたび、大きく変動することになる。そのため、対象物検知部は、受信信号の推移に基づいて、被グレーティング抑圧側のメインローブが放射される方位からの受信信号であるか、被グレーティング抑圧側のグレーティングローブが放射される方位からの受信信号であるか判別することができるようになる。そしてひいては、検知範囲内に位置する対象物の検知精度を向上することができるようになる。
【0014】
また、上記請求項1〜3のいずれか一項に記載の構成において、望ましくは、請求項4に記載の発明のように、グレーティング抑圧側の指向性制御部は、前記設定範囲として、前記被グレーティング抑圧側のアレーアンテナの指向性におけるグレーティングローブのピークから『「−3dB」〜「−20dB」』となる角度範囲とするとよい。さらに望ましくは、グレーティング抑圧側の指向性制御部は、前記設定範囲として、前記被グレーティング抑圧側のアレーアンテナの指向性におけるグレーティングローブのピークから『「−5dB」〜「−15dB」』となる角度範囲とするとよい。
【0015】
また、請求項1〜5のいずれかに記載の構成において、請求項6に記載の発明のように、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち開口幅が狭い方のアンテナをグレーティング抑圧側とすることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】レーダ装置の第1の実施の形態について、その全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態によって実行されるグレーティング抑圧処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態において、「0度」走査時における送信アレーアンテナの指向性の一例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態において、グレーティング抑圧処理の実行に伴って複数の異なる方位に設定されたヌル点の別に、受信アレーアンテナの指向性の一例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態において、グレーティング抑圧処理の実行に伴って複数の異なる方位に設定されたヌル点の別に、送信アレーアンテナの指向性及び受信アレーアンテナの指向性が合成された送受合成指向性の一例を示す図である。
【図6】第1の実施の形態において、送信アレーアンテナ及び受信アレーアンテナによって最終的に得られる送受合成指向性の一例を示す図である。
【図7】グレーティングローブレベルについて説明するための模式図である。
【図8】第2の実施の形態について、送信アレーアンテナ及び受信アレーアンテナによって実現される最終的な送受合成指向性の一例を示す図である。
【図9】第3の実施の形態について、その原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るレーダ装置の第1の実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。図1は、本実施の形態のレーダ装置1について、その全体構成を示すブロック図である。はじめに、この図1を参照して、レーダ装置1の構成及び機能について説明する。
【0018】
図1に示されるように、レーダ装置1は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと記載)10と、発振器11と、電力分配器12と、送信側位相器13と、送信アレーアンテナ14と、受信アレーアンテナ15と、受信側位相器16と、混合器(ミキサ)17と、A/D変換器18とを備えて構成されている。
【0019】
発振器11の後述のマイコン10が接続されており、発振器11の後段には電力分配器12が接続されている。発振器11は、マイコン10によって指定される周波数帯(例えばミリ波帯)で発振するとともに三角波状に変化する高周波信号を生成し、その生成した高周波信号を電力分配器12に出力する。
【0020】
電力分配器12の後段には、送信側位相器13を介して送信アレーアンテナ14が接続されている。また、電力分配器12には混合器17が接続されている。電力分配器12は、発振器11から入力された高周波信号を送信信号S及びローカル信号Lに電力分配し、その送信信号Sを送信側位相器13を介して送信アレーアンテナ14に出力するとともに、そのローカル信号Lを混合器17に出力する。
【0021】
送信側位相器13は、送信アレーアンテナ14と電力分配器12との間に介在しているとともにマイコン10に接続されている。ここで、送信アレーアンテナ14は、図示しない平面上(アンテナ面上)に一定間隔にて配列された複数(例えば「5個」)の送信アンテナ素子14a〜14eを有して構成されている。送信側位相器13は、マイコン10の指示に従って、電力分配器12から送信アンテナ素子14a〜14eに入力される送信信号Sの位相量をそれぞれ設定する。
【0022】
送信アレーアンテナ14は、電力分配器12から送信側位相器13を介して入力される送信信号S(電気信号)を送信ビーム(電波)として、各送信アンテナ素子14a〜14eから外部に向けて放射する。この送信ビームの放射方位は、各送信アンテナ素子14a〜14eに入力される送信信号Sの位相量によって決定される。なお、この送信ビームの放射方位は送信アレーアンテナ14のアンテナ面を基準としており、詳しくは、アンテナ面に垂直な放射方位を「0度」とし、平行な放射方位を「±90度」としている。送信アレーアンテナ14は、送信アンテナ素子14a〜14e毎に送信信号の位相が制御されることにより、所望の放射方位範囲に送信ビームを放射することができる。すなわち、送信アレーアンテナ14はその指向性が可変である。
【0023】
一方、受信アレーアンテナ15は、図示しない平面上に一定間隔にて配列された複数(例えば「3個」)の受信アンテナ素子15a〜15cを有して構成されており、これら受信アンテナ素子15a〜15cは、受信側位相器16を介して混合器17に接続されている。ここで、上記送信アレーアンテナ14から放射された送信ビーム(電波)がターゲットによって反射されると、受信アレーアンテナ15の各受信アンテナ素子15a〜15cはその反射ビーム(電波)を受信し、その受信した反射ビームを受信信号(電気信号)Rとして受信側位相器16に出力する。受信側位相器16は、マイコン10の指示に従って、受信アンテナ素子15a〜15cから入力された受信信号Rの位相量を設定した上で混合器17へ出力する。
【0024】
混合器17は、その前段に接続された受信側位相器16から受信信号Rが入力され、その後段にはA/D変換器18を介してマイコン10が接続されている。また、混合器17は、受信側位相器16から入力された受信信号Rと電力分配器12から入力されたローカル信号Lとを混合(同期検波)することでベースバンド信号を取り出し、その取り出したベースバンド信号をA/D変換器18によってデジタル信号に変換した上で、マイコン10に出力する。
【0025】
受信アレーアンテナ15への上記反射ビームの入射方位は、各受信アンテナ素子15a〜15cから出力される受信信号Rの位相量(差)によって決定される。なお、この反射ビームの入射角度は受信アレーアンテナ15のアンテナ面を基準としており、詳しくは、アンテナ面に垂直な入射方向を「0度」とし、平行な入射方向を「±90度」としている。受信アレーアンテナ15は、受信アンテナ素子15a〜15c毎に受信信号Rの位相が制御されることにより、所望の入射方位範囲から反射ビームを受信することができる。
【0026】
マイコン10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/O等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されるとともに、A/D変換器18を介して混合器17から取り込んだベースバンド信号を高速フーリエ変換(FFT)処理を実行するための演算処理装置(例えば、DSP(Digital SignalProcessor)を備え、ROMに記憶された各種制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。
【0027】
マイコン10は、まず、「−90度」から「+90度」までのターゲットの検知範囲に対し送信アレーアンテナ14からメインローブを放射することで上記検知範囲を走査する。この検知範囲内にターゲットが位置すると、送信アレーアンテナ14から放射されたメインローブが反射され、その反射波が受信アレーアンテナ15にて受信される(受信信号R)。マイコン10は、受信アレーアンテナ15にて受信した受信信号Rの強度が判定閾値以上であるか否かを判定し、その強度が判定閾値以上である旨判定した場合、受信信号Rの位相差を用いてターゲットの方位を検知する。このように、レーダ装置1は、いわゆる電子スキャン方式を採用している。ちなみに、このマイコン10が特許請求の範囲に記載の対象物検知部に相当する。
【0028】
なお、本実施の形態では、送信アレーアンテナ14のアンテナ面と受信アレーアンテナ15のアンテナ面は平行とされており、ターゲットの検知範囲を「−90度」から「+90度」までとしている。
【0029】
図3は、方位「0度」走査時における送信アレーアンテナ14の指向性の一例を示す図である。この図2に示されるように、方位「0度」にメインローブMLが放射されており、この放射されたメインローブMLは、方位「−7度」から「+7度」までのおよそ「14度」の幅を有する。また、メインローブMLと同等の強度を有する不要放射であるグレーティングローブGLl及びGLrが方位「45度」及び「+45度」にそれぞれ放射されている。グレーティングローブGLlは方位「−55度」から「−35度」までのおよそ「20度」の幅を有しており、グレーティングローブGLrは方位「35度」から「55度」までのおよそ「20度」の幅を有している。これらグレーティングローブGLl及びGLrは検知範囲内に位置するターゲットの誤検知の原因となることから、ターゲットの検知精度を向上するには、グレーティングローブGLl及びGLrを抑圧することが必要となる。
【0030】
そこで、本実施の形態では、送信アレーアンテナ14を被グレーティング抑圧側とするとともに受信アレーアンテナ15をグレーティング抑圧側とし、送信アレーアンテナ14のグレーティングローブを受信アレーアンテナ15のヌルによって抑圧する。
【0031】
図2は、マイコン10によって実行されるグレーティング抑圧処理S1の処理手順を示すフローチャートである。以下、この図2を併せ参照して、グレーティングローブの抑圧方法について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、グレーティングローブGLlの抑圧方法についてのみ説明するが、グレーティングローブGLrの抑圧方法も、このグレーティングローブGLrの抑圧方法に準じた方法である。
【0032】
グレーティング抑圧処理S1が実行開始されると、マイコン10は、ステップS10の処理として、グレーティングローブGLlの放射方位に対応する設定範囲内で互いに異なる複数のヌル点を順次設定する。詳しくは、マイコン10は、ステップS10の処理として、まず、グレーティングローブGLlの放射方位(方位「−45度」)を算出する。ちなみに、マイコン10は、送信アレーアンテナ14のメインローブML上記検知範囲に対して放射し、送信アレーアンテナ14の構成(送信アンテナ素子14a〜14eの間隔)を用いて、送信アレーアンテナ14のグレーティングローブの放射方位を算出することができる。なお、グレーティングローブGLlの放射方位はグレーティングローブGLlのピークに相当する。そして、マイコン10は、グレーティングローブGLlのピークから「−10dB」となるグレーティングローブGLl幅(方位「−55度」から方位「−35度」までのおよそ「20度」の幅)を算出する。グレーティングローブGLl幅を算出すると、マイコン10は、そのグレーティングローブGLl幅と同一の幅(方位「−55度」から「−35度」までのおよそ「20度」の幅)を、グレーティングローブGLlの幅に対応する設定範囲として設定する。そして、マイコン10は、その設定範囲内で互いに異なる複数(例えば「11個」)のヌル点NL1〜NL11となるように、受信側位相器16に位相量を指示する。このようにして、受信アレーアンテナ15の指向性が順次設定される。なお、各位相量は、各ヌル点NL1〜NL11間が等間隔となるように設定される。
【0033】
図4に、受信アレーアンテナ15のヌル点が上記ヌル点NL1〜NL11に設定された状態における受信アレーアンテナ15の指向性DR1〜DR11を示す。また、図5に、受信アレーアンテナ15のヌル点が上記ヌル点NL1〜NL11に設定された状態における送受合成指向性D1〜D11を示す。ここで、送受合成指向性D1〜D11は、受信アレーアンテナ15の指向性DR1〜DR11(図4参照)と送信アレーアンテナ14の指向性DS(図3参照)とがそれぞれ合成された指向性である。この図5に示される送受合成指向性D1〜D11は、グレーティングローブGLl及びGLr(図3参照)の互いに異なる部分が抑圧された指向性となっているに過ぎず、グレーティングローブGLl及びGLrの全体は抑圧されていない。
【0034】
そこで、マイコン10は、続くステップS11の処理として、ヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号Rを加算平均する。詳しくは、マイコン10は、まず、受信アレーアンテナ15のヌル点を上記ヌル点NL1〜NL11のうちの1つに設定し、受信アレーアンテナ15のヌル点が設定された状態で受信された受信信号RをRAM等に記憶する。次に、マイコン10は、上記ヌル点NL1〜NL11すべてに対してこうした一連の処理(ヌル点の設定及び受信信号Rの記憶)を順次実行する。そして、マイコン10は、上記ヌル点NL1〜NL11に対する受信信号Rを順次記憶すると、これら記憶した受信信号Rの加算平均を算出する。
【0035】
図6に、受信信号Rの加算平均によって最終的に得られる送受合成指向性Dの一例を示す。上記送受合成指向性D1〜D11(図5参照)がすべて加算平均されると、その加算平均された送受合成指向性Dは、この図6に示されるように、グレーティングローブGLl及びGLrの全体が抑圧された指向性となる。したがって、グレーティングローブGLl及びGLrが放射される方位の感度を抑制した上で受信信号を受信することができるようになり、ひいては、検知範囲内に位置するターゲットの検知精度を向上することができるようになる。
【0036】
図7は、レーダ装置1を車両Cに搭載した場合において、送信アレーアンテナ14のメインローブの放射方位及びグレーティングローブの放射方位をそれぞれ示す模式図である。この図7に示されるように、RCS(Rader Cross Section:レーダ反射断面積)値の小さなターゲット(例えば乗用車等の小型車両)が送信アレーアンテナ14のメインローブ放射方位に位置し、RCS値の大きなターゲット(例えばトラック等の大型車両)が送信アレーアンテナ14のグレーティングローブ放射方位に位置する場合、ターゲットを誤検知してしまうことがある。詳しくは、例えば大型車両のRCS値はおよそ「25dBsm」であり、小型車両のRCS値はおよそ「10dBsm」であるとする。この場合、大型車両のRCS値の方が小型車両のRCS値よりも「10dB〜25dB]程度大きいことになる。そのため、送信アレーアンテナ14のグレーティングローブ放射方位から到来する反射波の強度(レベル)の方が送信アレーアンテナ14のメインローブ放射方位から到来する反射波の強度よりも大きいことがあり、グレーティングローブ放射方位にターゲットが位置すると判定してしまうことがある。こうしたターゲットの誤検知を低減するには、メインローブの放射強度とグレーティングローブの放射強度とのDU(Desired to Undesired signal ration)比は、最低でも「20dB」程度となることが望ましい。
【0037】
本実施の形態のレーダ装置1では、先の図6に矢印にて示したように、メインローブの放射強度(「0dB」)とグレーティングローブの放射強度(「−20dB」)とのDU比は「20dB」程度となり、ターゲットの誤検知を低減するに望ましいDU比を確保することができている。したがって、確かに、検知範囲内に位置するターゲットの検知精度を向上することができている。ちなみに、背景技術の欄に記載した背景技術では上記DU比が「15dB」以上となることもあるが、本実施の形態では上記DU比をおよそ「20dB」とすることが可能である。
【0038】
上記実施の形態では、レーダ装置1は、まず、グレーティングローブGLlのピークに相当する放射方位を算出し、そのグレーティングローブGLlのピークから「−10dB」となるグレーティングローブGLl幅を算出する。そして、レーダ装置1は、そのグレーティングローブGLl幅と同一の幅を設定範囲として設定していた(S10参照)。このグレーティングローブ幅よりも広い幅を設定範囲として設定すると、送信アレーアンテナ14及び受信アレーアンテナ15の構成(特に開口面の広さ)によっては、送信アレーアンテナ14(被グレーティング抑圧側)のグレーティングローブと受信アレーアンテナ15(グレーティング抑圧側)のメインローブとが互いに干渉してしまい、送受合成指向性において、グレーティングローブの放射強度が増大してしまう可能性がある。しかしながら、上記実施の形態では、送信アレーアンテナ14のグレーティングローブGLl及びGLrの幅と同一の幅を受信アレーアンテナ15のヌル点の設定方位範囲として設定したため、送受合成指向性において、グレーティングローブの放射強度を増大させてしまうことを回避することができるようになる。
【0039】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、レーダ装置1は、先のステップS11の処理(図2参照)として、受信アレーアンテナ15のヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号Rを加算平均していたが、第2の実施の形態では、受信アレーアンテナ15のヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号Rから方位別の最小値を抽出する。
【0040】
詳しくは、マイコン10は、まず、受信アレーアンテナ15のヌル点を上記ヌル点NL1〜NL11のうちの1つに設定する。次に、マイコン10は、受信アレーアンテナ15のヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号RをRAM等に記憶する。マイコン10は、こうした一連の処理を上記ヌル点NL1〜NL11すべてに対して順次実行する。そして、マイコン10は、上記ヌル点NL1〜NL11に対する受信信号Rを順次記憶すると、これら記憶した複数の受信信号Rから方位別の最小値を抽出する。
【0041】
図8に、複数の受信信号Rから方位別に最小値を抽出することによって最終的に得られる送受合成指向性D’の一例を示す。上記送受合成指向性D1〜D11(図5参照)が方位別に最小値が抽出されると、その抽出され生成された送受合成指向性D’は、この図8に示されるように、グレーティングローブGLl及びGLrの全体がより一層抑圧された指向性となる。したがって、グレーティングローブGLl及びGLrが放射される方位の感度をより一層抑制した上で受信信号を受信することができるようになり、ひいては、検知範囲内に位置するターゲットの検知精度をより一層向上することができるようになる。
【0042】
(第3の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、レーダ装置1は、先のステップS11の処理(図2参照)として、受信アレーアンテナ15のヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号Rを加算平均していた。また、上記第2の実施の形態では、受信アレーアンテナ15のヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号Rから方位別の最小値を抽出していた。この第3の実施の形態では、受信アレーアンテナ15のヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号Rの推移に基づいて、レーダ装置1の検知範囲内に位置するターゲットを検知する。
【0043】
詳しくは、図9に、受信アレーアンテナ15によって方位「45度」において受信される受信信号Rの推移及び受信アレーアンテナ15によって方位「0度」において受信される受信信号Rの推移をそれぞれ示す。なお、方位「45度」は、送信アレーアンテナ14からグレーティングローブGLrが放射される方位であり、方位「0度」は、送信アレーアンテナ14からメインローブMLが放射される方位である。
【0044】
この図9に示されるように、受信アレーアンテナ15によって方位「0度」において受信される受信信号Rは、受信アレーアンテナ15のヌル点がヌル点NL1からヌル点NL11まで順次設定されても、ほとんど変動しない。しかしながら、受信アレーアンテナ15によって方位「45度」において受信される受信信号Rは、受信アレーアンテナ15のヌル点がヌル点NL1からヌル点NL11まで順次設定されるたび、大きく変動することになる。ちなみに、図9では、観測回数「1回目」は、受信アレーアンテナ15のヌル点がヌル点NL1に設定された状態で受信された受信信号Rの強度を意味し、観測回数「2回目」は、受信アレーアンテナ15のヌル点がヌル点NL2に設定された状態で受信された受信信号Rの強度を意味し、以下同様に、観測回数「11回目」は、受信アレーアンテナ15のヌル点がヌル点NL11に設定された状態で受信された受信信号Rの強度を意味する。そのため、レーダ装置1は、受信アレーアンテナ15によって受信される受信信号Rの推移を用いて、メインローブMLの放射方位から到来した受信信号であるか、あるいは、グレーティングローブGLl及びGLrの放射方位から到来した受信信号であるか判別することができるようになり、ひいては、レーダ装置1の検知範囲内に位置するターゲットの検知精度を向上することができるようになる。
【0045】
ちなみに、レーダ装置1の送信側位相器13及び受信側位相器16が特許請求の範囲に記載の送信側指向性制御部及び受信側指向性制御部にそれぞれ相当する。
【0046】
なお、本発明に係るレーダ装置1は、上記各実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0047】
上記各実施の形態では、レーダ装置1は、まず、グレーティングローブGLlのピークに相当する放射方位を算出し、そのグレーティングローブGLlのピークから「−10dB」となるグレーティングローブGLl幅を算出していたが、これに限らない。他に例えば「−8dB」や「−5dB」となるグレーティングローブ幅を算出してもよい。ちなみに、『「−3dB」〜「−20dB」』となるグレーティングローブ幅を算出することが望ましく、『「−5dB」〜「−15dB」』となるグレーティングローブ幅を算出することがさらに望ましい。要は、送信アレーアンテナ14(被グレーティング抑圧側)のグレーティングローブと受信アレーアンテナ15(グレーティング抑圧側)のメインローブとが互いに干渉してしまい、送受合成指向性において、グレーティングローブの放射強度が増大してしまう事態を回避し、且つ、上記DU比をおよそ「20dB」とすることができればよい。
【0048】
上記各実施の形態では、送信アレーアンテナ14は、「5個」の送信アンテナ素子14a〜14eを有して構成されていたが、送信アンテナ素子の数はこれに限らない。送信アンテナ素子の数については、必要に応じて増減してよい。同様に、上記実施の形態では、受信アレーアンテナ15は、「3個」の受信アンテナ素子15a〜15cを有して構成されていたが、受信アンテナ素子の数はこれに限らない。受信アンテナ素子の数については、必要に応じて増減してよい。
【0049】
上記各実施の形態では、送信アレーアンテナ14は、複数の送信アンテナ素子が平面上に配列された平面アンテナとして構成されていたが、これに限らない。送信アレーアンテナ14は、アレーアンテナであればよく、複数の送信アンテナ素子が平面上に配列されていなくてもよい。同様に、上記各実施の形態では、受信アレーアンテナ15は、複数の受信アンテナ素子が平面上に配列された平面アンテナとして構成されていたが、これに限らない。受信アレーアンテナ15は、アレーアンテナであればよく、複数の受信アンテナ素子が平面上に配列されていなくてもよい。
【0050】
上記各実施の形態では、送信側位相器13は、送信アンテナ素子14a〜14eに入力される複数の送信信号Sの位相量をそれぞれ設定することで送信アレーアンテナ14の指向性を設定していたが、送信アレーアンテナを構成する複数の送信アンテナ素子すべての位相量を設定しなくてもよい。例えば、複数の送信アンテナ素子のうちいずれか1つを除く他の送信アンテナ素子の位相量を設定してもよい。すなわち、複数の送信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することでも、送信アレーアンテナの指向性を制御することはできる。同様に、上記各実施の形態では、受信側位相器16は、受信アンテナ素子15a〜15cに入力される複数の受信信号Rの位相量をそれぞれ設定することで受信アレーアンテナ15の指向性を設定していたが、受信アレーアンテナを構成する複数の受信アンテナ素子すべての位相量を設定しなくてもよい。例えば、複数の受信アンテナ素子のうちいずれか1つを除く他の受信アンテナ素子の位相量を設定してもよい。すなわち、複数の受信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することでも、受信アレーアンテナの指向性を制御することはできる。
【0051】
上記各実施の形態では、便宜上、送信アレーアンテナ14から放射されるメインローブの放射方位を方位「0度」に固定して説明したが、既述の通り、「−90度」から「90度」まで、送信アレーアンテナ14からメインローブを放射して走査することは可能である。また、送信アレーアンテナ14から放射されるメインローブの放射方位に追従して、受信アレーアンテナ15のヌル点も設定することが可能である。
【0052】
上記各実施の形態では、送信アレーアンテナ14を被グレーティング抑圧側とし、受信アレーアンテナ15をグレーティング抑圧側としたが、これに限らない。逆に、受信アレーアンテナ15を被グレーティング抑圧側とし、送信アレーアンテナ14をグレーティング抑圧側としてもよい。また、送信アレーアンテナ14及び受信アレーアンテナ15のうち、開口幅が狭い方のアンテナをグレーティング抑圧側とし、開口幅が広い方のアンテナを被グレーティング抑圧側としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…レーダ装置、10…マイクロコンピュータ(対象物検知部)、11…発振器、12…電力分配器、13…送信側位相器(送信側指向性制御部、指向性制御部)、14…送信アレーアンテナ、14a〜14e…送信アンテナ素子、15…受信アレーアンテナ、15a〜15c…受信アンテナ素子、16…受信側位相器(受信側指向性制御部、指向性制御部)、17…混合器、18…A/D変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナ素子からなる送信アレーアンテナと、
これら複数の送信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記送信アレーアンテナの指向性を制御する送信側指向性制御部と、
複数の受信アンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、
これら複数の受信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記受信アレーアンテナの指向性を制御する受信側指向性制御部と、
前記送信アレーアンテナの指向性及び前記受信アレーアンテナの指向性が合成された送受合成指向性をもって受信された受信信号に基づいて、対象物を検知する対象物検知部とを備えるレーダ装置であって、
前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち、一方をグレーティング抑圧側とし、他方を被グレーティング抑圧側とし、
グレーティング抑圧側の指向性制御部は、当該グレーティング抑圧側のアレーアンテナのヌル点を、被グレーティング抑圧側のアレーアンテナの指向性におけるグレーティングローブの幅に対応する設定範囲内で異なる複数の設定方位に順次設定し、
前記対象物検知部は、前記グレーティング抑圧側の指向性制御部によってヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号を加算平均し、その加算平均された受信信号に基づいて、対象物を検知することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
複数の送信アンテナ素子からなる送信アレーアンテナと、
これら複数の送信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記送信アレーアンテナの指向性を制御する送信側指向性制御部と、
複数の受信アンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、
これら複数の受信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記受信アレーアンテナの指向性を制御する受信側指向性制御部と、
前記送信アレーアンテナの指向性及び前記受信アレーアンテナの指向性が合成された送受合成指向性をもって受信された受信信号に基づいて、対象物を検知する対象物検知部とを備えるレーダ装置であって、
前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち、一方をグレーティング抑圧側とし、他方を被グレーティング抑圧側とし、
グレーティング抑圧側の指向性制御部は、当該グレーティング抑圧側のアレーアンテナのヌル点を、被グレーティング抑圧側のアレーアンテナにおけるグレーティングローブの幅に対応する設定範囲内で異なる複数の設定方位に順次設定し、
前記対象物検知部は、前記グレーティング抑圧側の指向性制御部によってヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号から方位別に最小値を抽出して生成した受信信号に基づいて、対象物を検知することを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
複数の送信アンテナ素子からなる送信アレーアンテナと、
これら複数の送信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記送信アレーアンテナの指向性を制御する送信側指向性制御部と、
複数の受信アンテナ素子からなる受信アレーアンテナと、
これら複数の受信アンテナ素子の少なくとも一部の位相を制御することにより、前記受信アレーアンテナの指向性を制御する受信側指向性制御部と、
前記送信アレーアンテナの指向性及び前記受信アレーアンテナの指向性が合成された送受合成指向性をもって受信された受信信号に基づいて、対象物を検知する対象物検知部とを備えるレーダ装置であって、
前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち、一方をグレーティング抑圧側とし、他方を被グレーティング抑圧側とし、
グレーティング抑圧側の指向性制御部は、当該グレーティング抑圧側のアレーアンテナのヌル点を、被グレーティング抑圧側のアレーアンテナにおけるグレーティングローブの幅に対応する設定範囲内で異なる複数の設定方位に順次設定し、
前記対象物検知部は、前記グレーティング抑圧側の指向性制御部によってヌル点が設定された状態で受信された複数の受信信号の推移に基づいて、対象物を検知することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
グレーティング抑圧側の指向性制御部は、前記設定範囲として、前記被グレーティング抑圧側のアレーアンテナの指向性におけるグレーティングローブのピークから『「−3dB」〜「−20dB」』となる角度範囲とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
グレーティング抑圧側の指向性制御部は、前記設定範囲として、前記被グレーティング抑圧側のアレーアンテナの指向性におけるグレーティングローブのピークから『「−5dB」〜「−15dB」』となる角度範囲とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナのうち開口幅が狭い方のアンテナをグレーティング抑圧側とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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