説明

レール探傷方法及び装置

【課題】 探触子のレール面への押しつけ力を一定に保持し、人手によらず探触子を自動走査して高精度にレールの探傷を行えるようにする。
【解決手段】 レール頭頂部、レール頭側部、及びレール底側部にそれぞれ超音波探触子(21,22,23,24,25,26)を接触させ、各超音波探触子をヒンジ機構を有する重し(20,20′)でレール30に押圧して走査するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレールの溶接継ぎ目部等の傷を超音波探傷する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の手でレールを挟んで2つの探触子を持ちながら、レールに沿って一定間隔で走査し、片側の探触子から45°の角度で超音波を出射し、レール内部の傷で反射した超音波を反対側の探触子で受けてレールの傷の有無を検査することが行われている。
【0003】
また、超音波探触子をレールの頭頂部、頭部側面、底部上面にそれぞれ接触させた状態で設定した距離だけ自動で走査し、レール溶接継ぎ目箇所の全断面について内部欠陥の状態を検査する装置も提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−128650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人の手で2つの探触子を持ってレールの傷を見つける方法では、常時一定の間隔で2つの探触子をレールに沿って動かさなければならず、走査方法が測定者の技術や経験によって左右されることが多く、測定精度も人によって変わってしまうという問題があった。
この点、特許文献1では人手によらないで探触子を走査するので操作者により測定精度が変わってしまうことはないが、自動走査を行った場合に探触子のレール面への押しつけ力を一定に保持するのが難しく、測定精度を低下させてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、探触子のレール面への押しつけ力を一定に保持し、人手によらず探触子を自動走査して高精度にレールの探傷を行えるようにすることを目的とする。
そのために、本発明は、レール頭頂部、レール頭側部、及びレール底側部にそれぞれ超音波探触子を接触させ、レールに沿って各超音波探触子を走査するレール探傷方法において、各超音波探触子をヒンジ機構を有する重しでレールに押圧して走査するようにしたことを特徴とする。
また、本発明のレール探傷方法は、往復動走査で同一箇所を複数回走査しながら超音波探触子を前進させて所定範囲の探傷を行うことを特徴とする。
また、本発明のレール探傷装置は、レール頭頂部、レール頭側部、及びレール底側部に対向させて超音波探触子をそれぞれ保持するとともに、各超音波探触子を走査する走査手段と、各超音波探触子をレールに押圧接触させるヒンジ機構を有する重し手段と、前記走査手段を制御するとともに、超音波探触子から受信したデータを演算処理して探傷結果を表示する操作盤と、を有することを特徴とする。
また、本発明のレール探傷装置は、前記走査手段が、往復動走査で同一箇所を複数回走査しながら超音波探触子を前進させて所定範囲の探傷を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ヒンジ機構を有する重しで探触子をレールに押し付けた状態で、走査装置によりレールに沿って探触子を走査することにより、探触子のレール面への押しつけ力を一定に保持し、自動走査によりレール探傷を行うことができ、技術や経験によらず一定の精度でレールの傷の検査を行うことが可能となる。また、往復動走査で同一箇所を複数回走査することにより、探触子とレールとの間に接触媒質をより浸透しやすくして、傷からの反射エコーを確実に捉えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の自動化したレール探傷装置を説明する図で、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図、図1(c)は正面図である。
本探傷装置は、4隅において相互に接続された上部フレーム1、下部フレーム2に各部の装置を取り付ける構造になっていて、レール上以外の場所に静地するための折り畳み式の4本の脚3を備えており、装置の前後に設けたマグネット4でレールに設置され、このとき脚3は折り返すようになっている。
【0008】
上部フレーム1には把手5、7、操作盤6、探触子とレール面との間に供給する水等の接触媒質を保持するタンク8が設けられ、バルブ9を介して各探触子とレール面との間に接触媒質が供給される。モータ10は電池ボックス11に格納された充電式のバッテリーで駆動し、上部フレーム1の内側に設けられ、各探触子を走査するためのベルトワイヤ12を駆動する。
【0009】
このような探傷装置の各探触子を図2、図3をも参照して説明する。
レール30の頭部31には、ベルトワイヤ12から延びるアーム13、14で保持されて頭頂部探触子21、22が当接し、レール頭側部には、ベルトワイヤで駆動されるガイドローラで上部フレームに保持されて頭側部探触子23、24がその両側に当接し、レール底側部には、ベルトワイヤで駆動されるガイドローラで下部フレームに保持されて底側部探触子25、26がその両側に当接しており、各探触子はベルトワイヤ12で同時に走査駆動される。
【0010】
図3(a)に示すように、頭頂部探触子21、22はヒンジ機構を有し、その回転軸Aを中心に回動する重し20′でその頭部を下方に押しつけられてレール30の頭頂部に一定の押圧力を与える。また、図3(b)に示すように、頭側部探触子23、24、または底側部探触子25、26は、ヒンジ機構を有し、その回転軸Bを中心に回動する重し20でレール30の頭側部、底側部に一定の押圧力を与えるように構成される。
【0011】
本実施形態では、重しとその取付金具の総重量を、頭頂部で40g、頭側部で80g、底側部で60gとし、これにヒンジ機構の回転軸の中心から重しの重心までの距離と、ヒンジ機構の回転軸の中心から探触子との接触点までの距離の比を乗算したところ、頭頂部探触子への押しつけ力は66g、頭側部探触子への押し付け力は120g、底側部探触子への押し付け力は60gであった。そして、例えば、各探触子のレールとの接触面積を3.99cm2 として、これで除したところ、レール上での各部での接触圧は、頭頂部探触子が約16.54(g/cm2 )、頭側部探触子は約30.08(g/cm2 )、底側部探触子は約15.04(g/cm2 )であった。
【0012】
このように、ヒンジ機構を有する重しで探触子を押圧するという簡単な構成で、レール面の形状変化にも追従してほぼ一定の接触圧を維持することが可能であり、測定精度を向上させることが可能である。
【0013】
次に、図4、図5により探触子の走査方法について説明する。
全ての探触子は、演算処理機能や表示画面を有する操作盤6(図1)により制御され、本実施形態では一本のベルトワイヤで全探触子を走査駆動し、測定は頭頂部、頭側部、底側部毎にそれぞれ行って各測定データを操作盤6に取り込み、ここで所定の演算処理を行って操作盤6の画面に結果を表する。なお、頭頂部、頭側部、底側部毎に異なる波長の超音波を使用することにより、3箇所同時に測定することも可能である。
【0014】
図4(a)は、頭側部、或いは底側部の探触子の走査方法を説明する図であり、レールの水平断面を示している。
頭側部、底側部の探触子は、例えば、レール30の溶接部(溶接中心O)に対して、レール頭部、レール底部の溶接部を水平方向(幅方向)に探傷する。そのため、片側の探触子(23または25)から超音波を送信し、溶接部で反射した反射波を反対側の探触子(24または26)で受信し、その強度変化から溶接部での傷を見つける。本実施形態では、探触子から溶接部に対して45°の角度で超音波を送信し、45°の角度で反射する超音波を受信するようにしており、レール両側の探触子と溶接部までの距離L1+L2が一定となるように各探触子を互いに反対方向に走査駆動する。このような走査でレール幅方向全範囲に渡って溶接部の検査を行う。なお、溶接部の反対側の面についても同様の走査方法で探傷を行う。
【0015】
図4(b)は頭頂部の探触子の走査方法を説明する図である。
頭頂部の探触子は、例えば、レール30の溶接部(溶接中心O)に対して、レールの垂直方向(高さ方向)に探傷する。そのため、本実施形態では、例えば、頭頂部の一方の探触子21から溶接部に対して45°の角度で超音波を送信し、溶接部から45°で反射してさらにレール底部において45°で反射した超音波を他方の探触子22で受信する。溶接部の高さをHとしたとき、探触子21の走査範囲は、溶接中心Oに対して0〜H、探触子22の走査範囲は、溶接中心Oに対してH〜2Hとなり、互いに反対方向に走査駆動する。このような走査でレール高さ方向全範囲に渡って溶接部の検査を行い、溶接部の反対側の面についても同様の走査方法で探傷を行う。
【0016】
図5は同一箇所を複数回走査する例を説明する図である。
図5(a)は探傷するレール30を示しており、図5(b)〜図5(c)の矢印は走査方向を示している。図5(b)は探傷箇所を1回だけ走査する例を示しており、通常この方法が用いられる。図5(c)は探触子を往復動させて同一箇所を3回走査し、順次探触子を前進させて全範囲を走査する例を示し、図5(d)は探触子を往復動させて同一箇所を5回走査し、順次探触子を前進させて全範囲を走査する例を示している。
【0017】
超音波をレールに確実に入射させるためには、探触子とレールとの間に接触媒質が必要であり、通常は専用ジェルや油、水などを使用する。この接触媒質が両者間に浸透していない場合には、超音波の入射が空気によってさえぎられ、傷からの反射エコーを捉えることができない。本発明の装置では、モーターにより自動で探触子を移動させる場合に、図5(b)、図5(c)のように複数回同一箇所を走査することも可能であり、探触子とレールとの間に接触媒質をより浸透しやすくし、探触子は、エコーの高いものを常に更新することになるため、傷からの反射エコーを確実に捉えることが可能となる。
【0018】
なお、上記の例では2探触子法を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるれのではなく、1探触子法にも適用可能であることは言うまでもない。また、探傷箇所は溶接部に限らず、検査を必要とする任意の箇所にも適用可能である。また、探触子の走査速度を速くすることにより測定精度が若干落ちるものの測定時間を短縮することが可能であるので、走査速度を可変とし、測定状況に応じて走査速度を選択可能にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば、技術や経験によらず一定の精度でレールの傷の検査を行うことが可能となるので産業上の利用価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】レール探傷装置を説明する図である。
【図2】探触子を説明する図である。
【図3】重しによる探触子のレールへき押し付けを説明する図である。
【図4】探触子の走査方法を説明する図である。
【図5】探触子の走査方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0021】
1…上部フレーム、2…下部フレーム、3…脚、4…マグネット、5、7…把手、6…操作盤、8…タンク、9…バルブ、10…モータ、11…電池ボックス、12…ベルトワイヤ、20,20′…重し、21,22…頭頂部探触子、23,24…頭側部探触子、25,26…底側部探触子、30…レール、31…レール頭部、32…レール腹部、33…レール底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール頭頂部、レール頭側部、及びレール底側部にそれぞれ超音波探触子を接触させ、レールに沿って各超音波探触子を走査するレール探傷方法において、
各超音波探触子をヒンジ機構を有する重しでレールに押圧して走査するようにしたことを特徴とするレール探傷方法。
【請求項2】
往復動走査で同一箇所を複数回走査しながら超音波探触子を前進させて所定範囲の探傷を行うことを特徴とする請求項1記載のレール探傷方法。
【請求項3】
レール頭頂部、レール頭側部、及びレール底側部に対向させて超音波探触子をそれぞれ保持するとともに、各超音波探触子を走査する走査手段と、
各超音波探触子をレールに押圧接触させるヒンジ機構を有する重し手段と、
前記走査手段を制御するとともに、超音波探触子から受信したデータを演算処理して探傷結果を表示する操作盤と、
を有するレール探傷装置。
【請求項4】
前記走査手段は、往復動走査で同一箇所を複数回走査しながら超音波探触子を前進させて所定範囲の探傷を行うことを特徴とする請求項3記載のレール探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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