説明

レーンマーク認識装置

【課題】車載カメラの撮像画像から、レーンマーク以外の物体の画像部分を除外して、走行レーンの認識精度を向上させたレーンマーク認識装置を提供する。
【解決手段】車載カメラ20による時系列の撮像画像Im(t1),Im(t2)から、レーンマークの画像部分の候補である候補画像部分60,61を抽出する候補画像部分抽出部11と、候補画像部分60,61の両端エッジを特徴点Ca1(t1),Cb1(t1)、Ca1(t2),Cb1(t2)として抽出する特徴部分抽出部12と、各特徴点の移動ベクトルVa1,Vb1を算出する移動ベクトル算出部13と、移動ベクトルVa1とVb1の相違度が所定レベル以上である候補画像部分を、レーンマークの画像部分の候補から除外する候補画像部分除外部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラの撮像画像から、道路に設けられたレーンマークを認識するレーンマーク認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載カメラの撮像画像から道路に設けられたレーンマークを認識する装置として、例えば、道路上に離散的に設けられたレーンマーク(Botts Dots、キャッツアイ等)を認識するときに、レーンマークの位置が重ならないように設定された時間間隔で撮像された複数の画像を合成し、この合成画像からレーンマークを抽出することにより、レーンマークの検出個数を増加させるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4358147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載カメラによる撮像画像には、道路の周囲に存在するポール標識等のレーンマーク以外の立体道路標識の画像部分が含まれる場合がある。そして、立体道路標識をレーンマークであると誤認識すると、自車両の走行レーンの位置を正しく検知することができないという不都合がある。
【0005】
本発明はかかる背景を鑑みてなされたものであり、車載カメラの撮像画像から、立体道路標識の画像部分を除外して、レーンマークの認識精度を向上させることができるレーンマーク認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、車載カメラによる撮像画像から、レーンマークの画像部分の候補である候補画像部分を抽出する候補画像部分抽出部と、前記候補画像部分に対して、実空間上の鉛直方向に相当する特定方向の間隔をもった複数の特徴部分を抽出する特徴部分抽出部と、異なる時点での撮像画像間で、同一物体の画像部分であると推定される前記候補画像部分の前記各特徴部分の移動状況を算出する移動状況算出部と、前記各特徴部分の移動状況の相違度が所定レベル以上である前記候補画像部分を、レーンマークの画像部分の候補から除外する候補画像部分除外部と、前記候補画像部分除外部により除外されなかった前記候補画像部分に基づいて、レーンマークを認識するレーンマーク認識部とを備えたことを特徴とする(第1発明)。
【0007】
第1発明によれば、前記候補画像部分抽出部により抽出されたレーンマークの画像部分の候補である前記候補画像部分に対して、前記特徴部分抽出部により、前記特定方向(実空間上の鉛直方向に相当)の間隔を持った複数の特徴部分が抽出される。そして、前記移動状況算出部により、異なる時点での撮像画像間で、同一物体の画像部分であると推定される前記候補画像部分の前記各特徴部分の移動状況が算出される。
【0008】
この場合、道路脇に存在する立体道路標識は鉛直方向に長く、立体道路標識の画像部分は自車両近付くに従って前記特定方向の長さ大きく変化するため、前記特定方向の間隔をもった各特徴部分の移動状況(移動方向、移動量等)の相違度が大きくなる。それに対して、レーンマークは鉛直方向の高さが僅かであるため、車両がレーンマークに近付いたときのレーンマークの画像部分の前記特定方向の高さの増加も僅かなものとなり、各特徴部分の移動状況の相違度が小さくなる。
【0009】
そこで、前記候補画像部分除外部により、各特徴部分の移動状況の相違度が所定レベル以上である前記候補画像部分を、レーンマークの画像部分の候補から除外することによって、道路脇に存在する立体道路標識がレーンマークとして誤認識されることを回避することができる。そして、前記レーンマーク認識部により、前記候補画像部分除外部により除外されなかった前記候補画像部分に基づいてレーンマークを認識することによって、レーンマークの認識精度を向上させることができる。
【0010】
また、第1発明において、前記特徴部分抽出部は、前記候補画像部分の前記特定方向の両端部を、前記複数の特徴部分とすることを特徴とする(第2発明)。
【0011】
第2発明によれば、前記候補画像部分の前記特定方向の両端部を前記複数の特徴部分とすることにより、前記移動状況算出部により算出される各特徴部分の移動状況の相違を大きくして、移動状況の相違の判断を容易にすることができる。
【0012】
また、前記候補画像部分抽出部は、撮像画像における位置又はカメラから物体までの距離に応じて決定した範囲の大きさを有する画像部分に限定して、前記候補画像部分を抽出することを特徴とする(第3発明)。
【0013】
第3発明において、前記カメラからレーンマークまでの距離が長くなるほど、レーンマークの撮像部分の位置が撮像画像の中心付近に近付き、また、撮像画像におけるレーンマークの画像部分の大きさが小さくなる。そこで、前記候補画像部分抽出部により、撮像画像における位置又はカメラから物体までの距離に応じて決定した範囲の大きさを有する画像部分に限定して、前記候補画像部分を抽出することによって、レーンマークの候補画像部分を効率良く抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】カメラ及び車両走行支援装置の車両への取付態様の説明図。
【図2】車両走行支援装置の構成図。
【図3】車両走行支援装置によるレーンマーク認識処理のフローチャート。
【図4】候補画像部分の抽出処理の説明図。
【図5】時系列画像間での移動ベクトル算出処理の説明図。
【図6】立体道路標識の移動ベクトルの説明図。
【図7】レーンマークの移動ベクトルの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態において、本発明のレーンマーク認識装置は、車両1(自車両)に搭載された車両走行支援装置10の機能の一部として構成されている。車両1には、カメラ20と車両走行支援装置10とが搭載されている。
【0016】
カメラ20は、車両1の前方を、フロントウィンドウ越しに撮像するように車内に取り付けられており、カメラ20の取付部を原点として、車両1の左右方向(車幅方向)をX軸、上下方向(鉛直方向)をY軸、前後方向(進行方向)をZ軸とした実空間座標系が定義されている。
【0017】
図2を参照して、車両1には、車両走行支援装置10の他に、速度センサ21、加速度センサ22、ヨーレートセンサ23、操舵装置30、及び制動装置31が備えられている。速度センサ21は車両1の速度の検出信号を出力し、加速度センサ22は車両1の加速度の検出信号を出力し、ヨーレートセンサ23は車両1のヨーレートの検出信号を出力する。
【0018】
車両走行支援装置10は、CPU、メモリ等により構成された電子ユニットであり、カメラ20の映像信号及び各センサ21,22,23の検出信号が入力される。車両走行支援装置10は、メモリに保持された車両走行支援用の制御プログラムをCPUに実行させることによって、候補画像部分抽出部11、特徴部分抽出部12、移動ベクトル算出部13(本発明の移動状況算出部に相当する)、候補画像部分除外部14、及びレーンマーク認識部15として機能して、車両1の走行レーンを認識する。
【0019】
車両1には、さらに、操舵装置30と制動装置31が搭載され、車両走行支援装置10は、操舵装置30と制動装置31の一方又は両方の作動を制御することにより、車両1が走行レーンから逸脱しないようにする走行支援制御を実行する。
【0020】
次に、図3に示したフローチャートに従って、車両走行支援装置10によるレーンマークの認識処理について説明する。車両走行支援装置10は、STEP10でカメラ20の撮像画像を入力して画像メモリ(図示しない)に保持し、STEP20で2値化処理とエッジ検出を行う。これにより、図4(a)に示したようなグレースケール画像(多値画像)から2値画像が生成され、図4(b)に示したようなエッジ抽出画像が抽出される。
【0021】
続くSTEP30は、候補画像部分抽出部11による処理である。候補画像部分抽出部11は、エッジ抽出画像から、レーンマークの画像部分の候補(候補画像部分)を抽出する。図4(b)の例では、候補画像部分として、実際のレーンマークの画像部分51の他に、道路の周囲に存在する立体道路標識の画像部分50が抽出されている。
【0022】
なお、候補画像部分抽出部11は、抽出対象とする候補画像部分のサイズを、E1→E2→E3というように、実空間上の車両1から物体までの距離が長くなるに従って小さく設定して、各サイズ内に収まる画像部分を候補画像部分として抽出する。これにより、候補画像部分抽出部11は、他車両等のサイズ的に明らかにレーンマークの画像部分ではないと判断できる画像部分を抽出対象外としている。
【0023】
続くSTEP40のループは、特徴部分抽出部12と移動ベクトル算出部13と候補画像部分除外部14とによる処理であり、候補画像部分抽出部11により抽出された各候補画像部分について、STEP41〜STEP43の処理が実行される。
【0024】
STEP40のループの処理は、図5に示したように、異なる時点t1,t2(t1+Δt)での撮像画像Im(t1)とIm(t2)間での、候補画像部分の移動状況(60→62、61→63等)に基づいて実行される。
【0025】
STEP41は、特徴部分抽出部12による処理である。図6を参照して、特徴部分抽出部12は、時点t1での撮像画像Im(t1)における候補画像部分60(立体道路標識の画像部分)の上端エッジ部Ca1(t1)と下端エッジ部Cb1(t1)を特徴部分として抽出すると共に、時点t2での撮像画像Im(t2)において、同一物体の画像部分であると推定される候補画像部分61の状態エッジ部Ca1(t2)と下端エッジ部Cb1(t2)を特徴部分として抽出する。
【0026】
この場合、候補画像部分60(立体道路標識の画像部分)の上端エッジ部Ca1(t1)と下端エッジ部Cb1(t1)は、本発明の鉛直方向に相当する特定方向(y方向)に間隔をもった複数の特徴部分に相当する。
【0027】
続くSTEP42は、移動ベクトル算出部13による処理である。移動ベクトル算出部13は、時点t1,t2間における候補画像部分60,61の特徴部分Ca1(Ca1(t1)→Ca1(t2))の移動ベクトルVa1と、特徴部分Cb1(Cb1(t1)→Cb1(t2))の移動ベクトルVb1とを算出する。なお、移動ベクトルVa1,Vb1は、本発明の移動状況に相当する。
【0028】
STEP43とSTEP45は、候補画像部分除外部14による処理である。候補画像部分除外部14は、STEP43で、移動ベクトルVa1とVb1の相違度が所定レベル以上であるか否かを判断する。ここで、相違度としては、移動ベクトルVa1とVb1間の角度θの多きさ、移動ベクトルVa1とVb1の長さの差、これらの組合せ等を用いる。
【0029】
立体画像標識のように、鉛直方向に長い物体の候補画像部分は、撮像画像Im(t1),Im(t2)間で、y方向に拡大されるため、移動ベクトルVa1とVb1の相違度が大きくなる。それに対して、道路に設けられたレーンマークは、鉛直方向の高さがほとんどない。そのため、図7に示したように、撮像画像Im(t1)における候補画像部分70(レーンマークの画像部分)の上端エッジ部Ca2(t1)及び下端エッジ部Cb2(t1)と、撮像画像Im(t2)における候補画像部分71の上端エッジ部Ca2(t2)及び下端エッジ部Cb2(t2)との間で、移動ベクトルVa2とVb2との相違度は僅かなものとなる。
【0030】
そのため、候補画像部分除外部14は、STEP43で、上端エッジについての移動ベクトルVaと下端エッジについての移動ベクトルVbとの相違度が所定レベル以上であるときは、STEP45に分岐してその候補画像部分をレーンマークの画像部分の候補から除外する。これにより、立体道路標識等の鉛直方向に長い物体を、レーンマークの候補から除外することができる。
【0031】
そして、全ての候補画像部分についての除外処理を終えてループ1を抜けたSTEP50で、レーンマーク認識部15は、STEP45で除外されなかった候補画像部分に基づいて、車両1が走行している道路のレーンマークを精度良く認識することができる。
【0032】
以上説明した図3のフローチャートの処理によれば、演算負荷が小さい処理により立体道路標識等の鉛直方向に長い立体物の除外処理を行うことができる。また、この除外処理は、画像部分の上部エッジ(図6のCa1)と下部エッジ(図6のCb1)が一体の立体物のものであると仮定して、この仮定の成否を判断するものである。そして、一体の立体物であると判断された場合には、この画像部分を、レーンマーク認識の処理を開始する前段階で除外することができるため、立体道路標識等がレーンマークであると誤認識されることを抑制することができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、図4(b)に示したように、候補画像部分を抽出する際の領域をカメラ20との距離に応じて変更して設定したが、この領域を固定とする場合であっても本発明の効果を得ることができる。
【0034】
また、本実施の形態においては、図6,図7に示したように、候補画像部分のy方向の両端エッジを特徴部分としたが、特徴部分はこれに限らず、y方向(実空間上の鉛直方向に相当する特定方向)に間隔をもった複数の特徴部分を抽出して、各特徴部分の移動ベクトルを算出することで、本発明の効果を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態では、本発明の特徴部分の移動状況として移動ベクトルを算出したが、特徴部分の移動量等の他の指標を移動状況として算出してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…車両、10…車両走行支援装置、11…候補画像部分抽出部、12…特徴部分抽出部、13…移動ベクトル算出部、14…候補画像部分除外部、15…レーンマーク認識部、20…カメラ、21…速度センサ、22…加速度センサ、23…ヨーレートセンサ、30…操舵装置、31…制動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラによる撮像画像から、レーンマークの画像部分の候補である候補画像部分を抽出する候補画像部分抽出部と、
前記候補画像部分から、実空間上の鉛直方向に相当する特定方向の間隔をもった複数の特徴部分を抽出する特徴部分抽出部と、
異なる時点での撮像画像間で、同一物体の画像部分であると推定される前記候補画像部分の前記各特徴部分の移動状況を算出する移動状況算出部と、
前記各特徴部分の移動状況の相違度が所定レベル以上である前記候補画像部分を、レーンマークの画像部分の候補から除外する候補画像部分除外部と、
前記候補画像部分除外部により除外されなかった前記候補画像部分に基づいて、レーンマークを認識するレーンマーク認識部と
を備えたことを特徴とするレーンマーク認識装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーンマーク認識装置において、
前記特徴部分抽出部は、前記候補画像部分の前記特定方向の両端部を、前記複数の特徴部分とすることを特徴とするレーンマーク認識装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のレーンマーク認識装置において、
前記候補画像部分抽出部は、撮像画像における位置又はカメラから物体までの距離に応じて決定した範囲内の大きさを有する画像部分に限定して、前記候補画像部分を抽出することを特徴とするレーンマーク認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−108665(P2012−108665A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256097(P2010−256097)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】