説明

ロイシンおよび/またはイソロイシン粒子の調製方法

【課題】 ロイシンおよび/またはイソロイシンについて、固体原料から微粉砕して得られた市場に登場している微細粉体を用い、流動性がよく、加工しやすい粒子に調製する方法を提供すること。
【解決手段】 ロイシンおよび/またはイソロイシンの微細粉末を、直打法により1錠当たり100〜300mg重量の錠剤であって硬度0.4〜1.0kgを有する錠剤に成形した後、得られた錠剤を20〜30メッシュの篩い上にて微振動を与えることにより粗粉砕することを特徴とするロイシンおよび/またはイソロイシン粒子の調製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐鎖必須アミノ酸であるL−ロイシンおよび/またはL−イソロイシンの粒子を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐鎖必須アミノ酸であるL−ロイシン(以下、単に「ロイシン」という)およびL−イソロイシン(以下、単に「イソロイシン」という)は、各種タンパク質、ペプチドの構成成分であるが、最近に至りそれ自体で抗ウイルス作用が認められ、それぞれ単独、あるいは両者の配合物として生体に投与される、抗ウイルス剤として利用されることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
これらのロイシンならびにイソロイシンは、一般的に日本薬局方で定められた製法、例えば発酵法あるいは抽出法により、各規格に基づいて製造されており、代表的なものとして味の素株式会社によるいわゆる「味の素規格」と称されるものが普及している。その粒度は1mm以下の粒子であり、日本薬局方の規格を満たすものが使用されているが、その粒度に特に制約はない。また、その他に製造業者の相違により3規格が市場に出ている。
【0004】
実際に市場に出ているこれらのロイシンならびにイソロイシンは、その粒子径(粒度)が10ミクロン(10μm)以下のものが多く、いずれも相当に細かな微粉末であり、カサ比重が小さく、0.2程度のものである。したがって、微粉末自体の加工現場、さらにはそれを用いた二次加工、三次加工現場での取り扱いが極めて困難なものであり、種々の問題がクローズアップされてきている。
【0005】
すなわち、(1)超微粉末であるため、原料として用いた場合にはその製造ロスが多いこと、(2)微粉末であるため、粉末自体の流動性が著しく悪く、単品で種々の製造加工機への導入(搬入)が困難であること、(3)微粉末であることから、他の原料への混入(コンタミネーション)が心配されることなどであり、さらには、ロイシン、イソロイシン自体の粉塵爆発の危険性までが指摘されている(特許文献2)
【0006】
ところで、一般的に、これら微粉末の原料にあっては、他の原料との配合が許されない場合もある。特にロイシンおよび/またはイソロイシンにあっては、これらアミノ酸のみでその効果・効能を発揮する製品特性があり、投与しやすい製剤加工をする際に、他の賦形剤等の原料素材との配合が許されない場合がある。しかしながら、ロイシンあるいはイソロイシンにあっては、微粉末であることから流動性が悪いと共に、苦み等を有し、風味が悪くなり、服用しにくいとの問題点もある。したがって、ロイシンおよび/またはイソロイシンの単品を含有する顆粒製剤において、ロイシン粒子の粒度を調製し、流動性がよく、風味が改善された粒子自体の開発が望まれている。
【特許文献1】特願2004−063060
【特許文献2】特許第3228288号掲載公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、上記現状に鑑み、ロイシンおよび/またはイソロイシンについて、固体原料から微粉砕して得られた市場に登場している微細粉体を用い、流動性がよく、加工しやすい粒子に調製する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために本発明者は鋭意検討した結果、ロイシンおよび/またはイソロイシンの微粉末を、乾式打錠法により特定の硬度を有する錠剤に打錠して、得られた錠剤を特定のメッシュを有する篩い上にて微振動をあたえ粗粉砕することで、所望の加工特性を有する粒子に調製しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
したがって、本発明は、その基本的態様として、ロイシンおよび/またはイソロイシンの微細粉末を、直打法により1錠当たり100〜300mg重量の錠剤であって硬度0.4〜1.0kgを有する錠剤に成形した後、得られた錠剤を20〜30メッシュの篩い上にて微振動を与えることにより粗粉砕することを特徴とするロイシンおよび/またはイソロイシン粒子の調製方法である。
【0010】
この場合において、本発明は、より好ましくは、1錠当たり150〜200mgの錠剤とするのがよい。また、錠剤の硬度として0.5〜0.7kgを有する錠剤に成形するのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒子の調製方法により、取り扱いが困難であったロイシンおよび/またはイソロイシンの微細粉末が、20〜30メッシュの篩を通過(篩過)した約1.0〜0.7mm程度の粒子に調製し得るものであり、その流動性も良好で、極めて加工性に優れたロイシンおよび/またはイソロイシンの粒子を提供することができる。
したがって、これまで例えばスティック状の三方シールの包装袋に充填することが困難であったこれらの分岐債必須アミノ酸を、単品として充填しうるものであり、その医療上の利点は多大なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法で使用するロイシンならびにイソロイシンの微粉末としては、その製造法は特に限定されない。これまで市場に提供されている発酵法または抽出法で製造され、その粒子が10ミクロン(μm)以下に調製されているものを使用することができる。
【0013】
本発明者は、ロイシンならびにイソロイシンの粒度を調製し、その流動性を上げるために、一般的に使用されている湿式造粒法を考えた。しかしながら、これらアミノ酸にはエタノールや水などの溶媒の使用も全く許されない条件がある。このことから、一般的に使用されている湿式造粒法が導入できず、新たな試みが求められた。その一つとして、これら必須アミノ酸の比重を高めることを考えた。
【0014】
その手段としては、一般的に、水、アルコールなどの溶媒を使用しない紛体同士の結合による乾式造粒法を採用したいのであるが、単なる圧力によるアミノ酸同士の結合による顆粒化を望むだけであれば、特に問題はない。しかしながら原体としてのアミノ酸が微細粉末であるために、乾式造粒法ではアミノ酸同士の結合による粒子化が十分に行われず、35〜45%という非常に高いロス率があるため、乾式造粒法は採用できない。
【0015】
そこで、一旦アミノ酸の微細粉末を錠剤として成形した後、その錠剤を粗粉砕することでアミノ酸の比重を高めることを検討した。その手段として、本発明者は最初に、種々の医薬品あるいはサプリメント等における製剤技術として実績のある粉末直接打錠方法(直打法)を検討し、ついで得られた錠剤を粗粉砕することを検討した。
その検討結果を下記に具体的に説明することにより、実施例に代え、本発明における、ロイシンおよび/またはイソロイシン粒子の調製方法の詳細を説明して行く。
【0016】
本発明者は、アミノ酸の微細粉末の直打法による錠剤の形成について、錠剤の重量とその硬度の関係を検討した。すなわち、その方法として、ロイシンを用いて、
(1)150〜200mgの重量で最大加圧による打錠、
(2)350〜500mgの重量で最大加圧による打錠、
(3)800〜1,000mgの重量で、最大加圧による打錠、
を検討した。錠剤の打錠性を判断した結果、最も小さいタイプの打錠が安定した錠剤を製造することができた。
【0017】
すなわち、錠剤の重量が大きなものである場合(上記の2ならびに3の場合)には、最大加圧による打錠を行っても、錠剤の内部までが均一に圧縮成形されたものとなっておらず、次工程における粗粉砕では、内部の微細粉末がそのまま残存するといった結果であった。また、実際の生産においても安定した加圧を得ることが困難であった。
その結果、1錠150〜200mgの重量を目安とした錠剤が、コンスタントに加圧テストに適合し、実生産において採用可能であることが判明した。
なお、得られた錠剤の硬度は、0.4〜1.0kg程度であり、ふつうの打錠品の硬度が3〜5kgであることからみれば脆いものであった。しかしながら、次工程の粗粉砕には何ら問題のない硬度であり、あまり硬度が高すぎると、かえって粗粉砕が困難となる問題がある。
【0018】
次いで、得られた打錠品を粉砕し、粒子を上げる粗粉砕を検討した。
一般的な粉砕には、ハンマーミル等の衝撃式(高速回転式)粉砕法、ボールミル等のタンブラー式(媒体式)粉砕法、切り削るカッターミルによる粉砕法、あるいは、超鋼に高回転でぶつけるジェットミル等の流体式(気流式)粉砕法で、対象物を小さくすることが考えられる。
【0019】
しかしながら、これらの粉砕方式を検討した結果、得られたロイシンの錠剤をこれらの方法で粉砕すると、粉砕効率が極めて良好なものであることから、元通りの微粉末(原体の微粉末)に戻ってしまうことが確認され、これらの技術を一切使用することはできなかった。
【0020】
そのため、本発明者は、シフター(篩い)を用い、そのシフター上に上記で得られた錠剤を落下させると共にシフターに微振動を与え、錠剤を粗粉砕する手段に着目した。すなわち、上記で得られた錠剤は、その硬度が0.4〜1.0kg、とくに0.5〜0.7kg程度を有するものであることから、シフター上での微振動により錠剤が容易に崩壊され、崩壊されると同時にシフターのメッシュを篩過し、所望の粒子が得られることに着目した。
【0021】
そのための検討として、20メッシュ、または30メッシュのシフター(篩い)を上部に設置し、微振動を利用して上記で得たロイシンの錠剤を落下させた。
その結果、目標通り、20メッシュあるいは30メッシュの篩いを篩過し、所望の粗粉砕品が製造された。
得られた粗粉砕品は、約1.0〜0.7mm程度の粒子に調製されたものであって、単なる微粉末であったロイシンの原体粉末に比較して、流動性が良好なものであり、取り扱いが容易な原材料に変換されていた。
【0022】
例えば、この得られたロイシンの粒子を用いて、スティックタイプの三方シールの包装品に問題なく充填されたロイシン粒子を製造することができた。
この結果、細長いスティック状に近い3方シール品が問題なく充填生産することができた。
なお、イソロイシンについても同様に検討を行ったが、ロイシンとほぼ同様の結果を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
健康食品や、医薬品などのように、付加価値の高い原材料(素材)の中には、カサ比重の低いものが多くある。これらの素材は、そのまま他の賦形剤等の添加剤を配合することなく服用しやすく、取り扱いが容易な製品に調製されることが好ましく、等にかかる素材の利点を効率的に活かすには、他の原料との混合は基本的に避けるべきである。
本発明の粒子の調製方法にあっては、このような素材の加工に極めて有効なものであるといえる。
【0024】
特に、ロイシンならびにイソロイシンは、市場に出ている原体(素材)自体が10μm以下の微粉末であり、その取り扱いは非常に困難なものであり、例えば、これらアミノ酸をそのまま三方シール品包装品に充填することは困難なものであったが、本発明で得られた量子を用いることにより、問題なく充填することができ、またその風味も改善されたものとなり、医療上の価値は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイシンおよび/またはイソロイシンの微細粉末を、直打法により1錠当たり100〜300mg重量の錠剤であって硬度0.4〜1.0kgを有する錠剤に成形した後、得られた錠剤を20〜30メッシュの篩い上にて微振動を与えることにより粗粉砕することを特徴とするロイシンおよび/またはイソロイシン粒子の調製方法。
【請求項2】
1錠当たり150〜200mgの錠剤とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
硬度が0.5〜0.7kgである錠剤に成形する請求項1に記載の調製方法。

【公開番号】特開2006−83067(P2006−83067A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266311(P2004−266311)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(501369617)
【Fターム(参考)】