説明

ロッカースイッチ

【課題】粉塵の多い作業環境で使用しても誤動作を防止するためのロック機構の動作が妨げられるのを防止できるロッカースイッチを得る。
【解決手段】
ロッカースイッチ3は、ロックケース4と、該ロックケースにピン5により回動自在に支持され、操作面が押されるとシーソー動作する操作部6と、該操作部のシーソー動作により通電(ON)または遮断(OFF)されるように構成された接点部とを備えている。前記ロックケースの外枠端部4aと係合可能な係止部8aを備えるロックノブ8が、前記操作部の表面をスライドするように設けられている。前記操作部の一端側を押圧してピン部を中心に回動させて前記接点部をONまたはOFF状態にし、この状態で前記ロックノブをスライドさせることで前記係止部を前記ロックケースの外枠端部に係合させてロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部が操作されるとシーソー動作するシーソー動作型のロッカースイッチに関し、特に誤動作を防止するためのロック機構を備えているロッカースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
誤動作を防止するためのロック機構を備えているロッカースイッチとしては、例えば特許文献1(特開平11−67014号公報)に記載のものがある。
この特許文献1に記載のロッカースイッチ(シーソー動作型スイッチ)は、側壁を有したハウジングと、底部及び箱型内部を有する有底箱形に形成されてその底部の箱形外面で形成される操作面が操作されるとシーソー動作する操作部と、可動接点が操作部のシーソー動作によって駆動されて固定接点に接離する接点部とを備え、前記シーソー動作によって前記ハウジングの側壁に係止して前記操作部をロックするスライド部が、前記操作部の箱形内部に設けられた構成となっている。即ち、前記操作部内にスライド部を設けて、このスライド部の係止片をハウジング側壁の係止孔に係合させることで、前記操作部の動作をロックするように構成しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−67014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているロッカースイッチを、建設機械のように粉塵が多く作業環境の厳しい場所で稼働される機械における電気回路のON−OFFスイッチとして適用した場合、以下の課題がある。即ち、前記ロッカースイッチの操作部の上面に開口部が形成されており、この部分に前記スライド部のスライド片が収容される構成となっていること、また前記操作部の側面にも前記スライド部の係止片が出入りする開口が形成されていることなどから、前記操作部内の前記スライド部との間の隙間に塵埃がたまり易い。このため、前記スライド部のスムーズな動作が妨げられ、ロック機能が働かず、誤操作を引き起こし易いという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、粉塵の多い作業環境で使用しても誤動作を防止するためのロック機構の動作が妨げられるのを防止できるロッカースイッチを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、ロックケースと、該ロックケースにピンにより回動自在に支持され、操作面が押されるとシーソー動作する操作部(ロックノブベース)と、該操作部のシーソー動作により通電(ON)または遮断(OFF)されるように構成された接点部とを備えたロッカースイッチにおいて、シーソー動作する前記操作部の表面をスライドするように設けられ且つ前記ロックケースの外枠端部と係合可能な係止部を有するロックノブを備え、前記操作部の一端側を押圧すると該操作部は前記ピン部を中心に回動して前記接点部をONまたはOFF状態にし、この状態で前記ロックノブを前記押圧部分とは反対側にスライドさせて前記係止部を前記ロックケースの外枠端部に係合させることで、前記操作部のシーソー動作をロックし、更に前記ロックノブを前記押圧部分側にスライドさせることにより、前記操作部のロックを解除するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記ロックノブがスライドされてロック位置となる側の前記操作部の端部に凸形状に構成されて前記ロックノブが誤操作されるのを防止する誤操作防止ガードを設けることが好ましい。
また、前記誤操作防止ガードは、前記ロックノブのロック位置側となる部分の端部の高さと略同等か、前記ロックノブ端部の高さよりも高くなるように構成すると良い。
【0008】
前記ロックノブはばねにより常時ロック位置側に押圧されるように構成し、前記操作部の一端側を押圧して該操作部を前記ピン部を中心に回動させると、前記ロックノブを前記ばねにより自動的にロック位置側にスライドさせ、該ロックノブの係止部が前記ロックケースの外枠端部と自動的に係止するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粉塵の多い作業環境で使用しても、誤動作を防止するためのロック機構の動作が妨げられるのを防止でき、これによって誤操作を防止できるロッカースイッチを得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のロッカースイッチの実施例1を備えている建設機械の運転室内を示す斜視図。
【図2】図1に示すロッカースイッチ付近を拡大して示す拡大斜視図。
【図3】図2に示すロッカースイッチを拡大して示す斜視図。
【図4】図3のロッカースイッチの背面図。
【図5】図3、図4に示すロッカースイッチの内部構造を示す断面図で、操作部のロックが解除された状態の図。
【図6】図3、図4に示すロッカースイッチの内部構造を示す断面図で、操作部がロックされた状態の図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のロッカースイッチの実施例を、図面を用いて説明する。各図において同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。
【実施例1】
【0012】
本発明のロッカースイッチの実施例1を図1〜図6により説明する。
図1は、本実施例のロッカースイッチを備えている建設機械の運転室内を示す斜視図で、図において、1は運転席で、この運転席1の脇の部分には操作レバー2や各種の操作スイッチなどが設けられている。3は運転席1の脇の部分に設けられている本実施例のロッカースイッチで、このロッカースイッチ3付近の拡大図を図2に示す。
【0013】
本実施例では、前記ロッカースイッチ3はディーゼルエンジン排気後処理装置(DPF;Diesel Particulate Filter)のフィルター再生用のスイッチとして用いられている例を示している。ディーゼルエンジン排気後処理装置における再生処理は、排気温度を高温にしてフィルターに堆積した煤等の粒子状物質を燃焼除去するものである。そのため、排気管から外部に放出される排気温度も通常よりも高い温度となるため、排気管の周囲に可燃物等が存在したり、トンネル内等の狭隘な作業現場で再生が行われると、周囲に排気による熱の影響を与え易い。従って、再生処理を行なうことが不適切な場所では、再生処理が行われないようにする必要があり、前記フィルター再生用のスイッチは、安易にはONにできないようにする必要がある。
【0014】
また、建設機械のように粉塵が多く作業環境の厳しい場所で稼働される機械における電気回路のON−OFFスイッチとして適用されるロッカースイッチは、内部に粉塵が入って動作不良を引き起こさないようにすることも必要である。
【0015】
図1、図2に示すロッカースイッチ3の詳細構造を図3〜図6により説明する。図3は図2に示すロッカースイッチを拡大して示す斜視図、図4は図3のロッカースイッチの背面図である。
図3、図4において、4はロックケースで、該ロックケース4にはピン5を介して、ロッカースイッチ3の操作部となるロックノブベース6が回動自在に支持されており、該操作部(ロックノブベース)6は、その操作面6Aまたは6Bが押されるとシーソー動作するように構成されている。
【0016】
また、前記ロックケース4内には接点部が設けられており、前記操作部6がシーソー動作することにより、前記接点部が通電(ON)または遮断(OFF)されるように構成されている。前記接点部のON−OFFは導線7を介して、前記ディーゼルエンジン排気後処理装置(図示せず)に接続されている。
【0017】
8は、シーソー動作する前記操作部6の表面を左右(前記操作面6A,6Bの一方側から他方側)にスライドするように設けられ、且つ前記ロックケース4の外枠端部4aと係合可能な係止部8a(図5、図6参照)を備えるロックノブである。前記ロックケース4の外枠は樹脂成形で製作され、この樹脂製の外枠の外面にはゴム材9が設けられている。10は運転席の脇に設けられたスイッチ設置部の穴にロッカースイッチ3を押し込むことで、該ロッカースイッチ3を前記穴に固定するためのスイッチ固定爪である。
【0018】
11は、前記ロックノブ8がスライドされてロック位置となる側の前記操作部(ロックノブベース)6の端部に凸形状に形成されている誤操作防止ガードで、この誤操作防止ガード11は、ロック位置にある前記ロックノブ8が、誤って押されないように、ロックノブ8の端部を覆うように設けられており、前記ロックノブ8が誤操作されるのを防止している。
【0019】
次に、図5、図6により図3、図4に示した本実施例のロッカースイッチ3の内部構造を説明する。図5は操作部のロックが解除された状態の断面図、図6は操作部がロックされた状態の断面図である。
操作部6のロックが解除されている図5で説明すると、操作部(ロックノブベース)6はロックケース4に支持されたピン5を中心に左右に回動(シーソー動作)できるように構成され、この操作部6には、前記ピン5を中心にして当該操作部6と一体に揺動する揺動部12が下方に延びている。
【0020】
また、前記ロックケース4内には、可動片14、固定端子15,16及び共通端子17等で構成された接点部が設けられており、この接点部では、前記共通端子17の上端部17aを支点として前記可動片14が左右に回動可能に構成されている。
前記揺動部12には、その内部に押圧部材12aが設けられており、この押圧部材12aは前記可動片14をばねにより常時押圧するように構成されている。従って、前記揺動部12の押圧部材12aが前記可動片14上を移動することにより、この可動片14が前記固定端子15,16の接点15a,16aと接離することでON−OFFされるように構成されている。
【0021】
ロックノブ8は前記操作部6の上表面を左右にスライドするように取り付けられており、更にこのロックノブ8の下面には、前記操作部6のシーソー動作をロックするための係止部8aが一体に構成されている。即ち、図5に示す状態から、前記操作部6の一端側(操作面6A側)を押圧すると、該操作部6は前記ピン5部を中心に回動して前記接点部をONまたはOFF状態にし(この実施例では操作面6Aを押すと接点部はOFF状態となるように構成されている)、この状態で前記ロックノブ8を前記押圧側(操作面6A側)とは反対側(操作面6B側)にスライドさせることで、図6に示すように、前記係止部8aを前記ロックケース4の外枠端部4aに係合させることができ、これにより、前記操作部6のシーソー動作をロックすることができる。
【0022】
ロックノブ8をスライドさせるには、手動でスライドさせるようにしても良いが、本実施例では、前記操作面6Aを押すことで自動的にロックノブ8が操作面6B側に移動して、前記係止部8aを前記ロックケース4の外枠端部4aに係合させるように構成している。即ち、本実施例では、前記ロックノブ8をばね13により常時ロック位置側(操作面6B側)に押圧されるように構成しており、このようにすれば次のように動作する。
【0023】
図5に示す状態では、ロックノブ8の係止部8aは前記ばね13の作用により、ロックケース4の内面に押圧され、ロックは解除された状態となっている。
次に、前記操作部6の操作面6Aを押圧して該操作部6を前記ピン5部を中心に回動させると、前記ロックノブ8の係止部8aがロックケース4の外枠端部4a(上端面)を超えたとき、前記ばね13により自動的にロック位置側にスライドされ、図6に示すように、このロックノブ8の係止部8aを前記ロックケース4の外枠端部4aに自動的に係止させることができる。
【0024】
更に、図6に示す状態から、前記操作部6のロック状態を解除する場合には、前記ロックノブ8の上面の突起部8bに指を掛けるなどして、ロックノブ8を操作部6の操作面6A側に手動によりスライドさせる。これにより、ロックノブ8の係止部8aをロックケース4の外枠端部4aよりも内側に移動させることができるから、図5のロックが解除された状態にすることができる。このように前記操作部6のロックを解除することにより、操作部6の操作面6Bを押すことで、前記接点部をONの状態にすることが可能になる。
【0025】
なお、安易にロックが解除されて、ON状態に操作されてしまうと、前述したように、ロッカースイッチ3がディーゼルエンジン排気後処理装置のフィルター再生用のスイッチとして用いられている場合、排気管から外部に放出される排気温度は通常より高い温度となるため、排気管の周囲に可燃物等が存在したり、トンネル内等の狭隘な作業現場で再生が行われると、周囲に排気による熱の影響を与え易い。従って、再生処理を行なうことが不適切な場所では、再生処理が行われないようにする必要がある。しかし、ロックノブ8をスライドさせるには前記突起部8bに指を掛けて行う他に、ロックノブ8の外方端部8cに指を掛けることでも容易にロックノブを移動させることができ、誤って安易にロックを解除してしまう可能性がある。
【0026】
そこで、本実施例では、前述した誤操作防止ガード11が、ロックノブ8がロック位置となる側の前記操作部(ロックノブベース)6の端部に、凸形状に形成されている。この誤操作防止ガード11は、前記ロックノブ8のロック位置側となる部分(外方端部8c)の高さと略同等か、前記ロックノブの外方端部8cの高さよりも高くなるように構成することが好ましい。
【0027】
このように、誤動作防止ガード11を設けることにより、図6に示すロック状態では、ロックノブ8の外方端部8cに誤って指を掛けてロックノブ8をスライドさせてしまうようなことは回避できる。従って、操作者が突起部8bに指を掛けるなどして意図してロックノブ8を解除しない限り、ロックは解除され難くなり、例えばディーゼルエンジン排気後処理装置のフィルター再生用のスイッチを誤ってONにしてしまうことを回避できる。
【0028】
本実施例によれば、ロックノブ8は操作部(ロックノブベース)6の上面を左右にスライドする構成としているので、操作部6とロックノブ8との間にはほとんど隙間はなく、操作部6とロックノブ8との間やロッカースイッチ3内部に塵埃が貯まり難い。従って、建設機械のように粉塵の多い作業環境で使用しても、ロック機構を構成する前記ロックノブ8の動作が妨げられるのを防止可能なロッカースイッチを得ることができる。
【0029】
また、本実施例によれば、前記ロック機構が無意に解除されないように誤操作防止ガード11を有しているので、誤操作により安易にロックを解除してしまうことも防止可能なロッカースイッチを得ることができる。
更に本実施例によれば、ロックケース4の外枠端部4aを利用して前記ロック機構の一部を構成しているので、ロック機構を安価に製作できる効果も得られる。
なお、上述した実施例では、本発明のロッカースイッチを、建設機械の運転室に設けられ、ディーゼルエンジン排気後処理装置のフィルター再生用のスイッチとして用いた例で説明したが、本発明のロッカースイッチはこれに限られるものでないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1:運転席、
2:操作レバー、
3:ロッカースイッチ、
4:ロックケース、4a:外枠端部、
5:ピン、
6:操作部(ロックノブベース)、6A,6B:操作面、
7:導線、
8:ロックノブ、8a:係止部、8b:突起部、8c:外方端部、
9:ゴム材、
10:スイッチ固定爪、
11:誤操作防止ガード、
12:揺動部、12a:押圧部材、
13:ばね、
14:可動片、
15,16:固定端子、15a,16a:接点、
17:共通端子、17a:上端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックケースと、該ロックケースにピンにより回動自在に支持され、操作面が押されるとシーソー動作する操作部と、該操作部のシーソー動作により通電(ON)または遮断(OFF)されるように構成された接点部とを備えたロッカースイッチにおいて、
シーソー動作する前記操作部の表面をスライドするように設けられ且つ前記ロックケースの外枠端部と係合可能な係止部を有するロックノブを備え、
前記操作部の一端側を押圧すると該操作部は前記ピン部を中心に回動して前記接点部をONまたはOFF状態にし、この状態で前記ロックノブを前記押圧部分とは反対側にスライドさせて前記係止部を前記ロックケースの外枠端部に係合させることで、前記操作部のシーソー動作をロックし、更に前記ロックノブを前記押圧部分側にスライドさせることにより、前記操作部のロックを解除するように構成されている
ことを特徴とするロッカースイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のロッカースイッチにおいて、前記ロックノブがスライドされてロック位置となる側の前記操作部の端部に凸形状に構成されて前記ロックノブが誤操作されるのを防止する誤操作防止ガードが設けられていることを特徴とするロッカースイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載のロッカースイッチにおいて、前記誤操作防止ガードは、前記ロックノブのロック位置側となる部分の端部の高さと略同等か、前記ロックノブ端部の高さよりも高くなるように構成されていることを特徴とするロッカースイッチ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のロッカースイッチにおいて、前記ロックノブはばねにより常時ロック位置側に押圧されるように構成し、前記操作部の一端側を押圧して該操作部を前記ピン部を中心に回動させると、前記ロックノブを前記ばねにより自動的にロック位置側にスライドさせ、該ロックノブの係止部が前記ロックケースの外枠端部と自動的に係止するように構成されていることを特徴とするロッカースイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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