説明

ロックウール解繊方法

【目的】複雑な装置を使用することなくロックウールの短繊維集塊を効率的に解繊する。
【構成】気流中にロックウールの短繊維凝集塊1を供給して風送するとともに、この気流中に設けた複数の針状突起7と不規則凹凸面8を有する凹凸とに衝突させて短繊維凝集塊をより小さな凝集塊に分解し解繊を促進する。好ましくは、まず複数の針状突起7に衝突させ、次いでその下流に設けた不規則凹凸面を有する凹凸8に衝突させ、必要に応じてさらに再度複数の針状突起13に衝突させることにより、ロックウールの短繊維凝集塊が順次により小さい短繊維凝集塊に分解されるので、解繊が効率的に促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロックウール解繊方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロックウールなどの短繊維凝集塊を解繊する従来技術が下記特許文献1,2に記載されている。特許文献1記載の方法は、渦巻き形解繊室内の中心部に旋回流を発生させる回転羽根を設け、原料供給ホッパーから解繊室に送り込んだ短繊維凝集塊をこの旋回流に乗せ、解繊室内壁面に設置した山形凹凸状の解繊刃に繰り返し衝突させて解繊する方法である。また、特許文献2記載の方法では、円筒状の解繊室の内壁面から中心に向けて放射状に延びるロッドを複数設け、短繊維凝集塊をロッドに衝突させることによって粉砕解繊する。
【特許文献1】特許第2813172号公報
【特許文献2】特開平5−140822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、これら従来技術による短繊維凝集塊の解繊方法では、短繊維凝集塊が解繊刃や解繊ロッドの間をすり抜けてしまうことがあり、十分に解繊することができない場合があった。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ロックウールの短繊維凝集塊を効率よく解繊することができる新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するため、請求項1にかかる本発明のロックウール解繊方法は、気流中にロックウールの短繊維凝集塊を供給して風送するとともに、この気流中に設けた複数の針状突起と不規則凹凸面を有する凹凸とに衝突させて短繊維凝集塊をより小さな凝集塊に分解し解繊を促進することを特徴とする。
【0006】
請求項2にかかる本発明のロックウール解繊方法は、気流中にロックウールの短繊維凝集塊を供給して風送するとともに、この気流中に設けた複数の針状突起に衝突させ、次いでその下流に設けた不規則凹凸面を有する凹凸に衝突させて、短繊維凝集塊を順次により小さな凝集塊に分解し解繊を促進することを特徴とする。
【0007】
請求項3にかかる本発明のロックウール解繊方法は、気流中にロックウールの短繊維凝集塊を供給して風送するとともに、この気流中に設けた第一の複数の針状突起に衝突させ、次いでその下流に設けた不規則凹凸面を有する凹凸に衝突させ、さらにその下流に設けた第二の複数の針状突起に衝突させて、短繊維凝集塊を順次により小さな凝集塊に分解し解繊を促進することを特徴とする。
【0008】
ロックウールは、玄武岩質の岩石を1500℃程度の高温で溶融し、高圧空気で吹き飛ばして繊維化したものであり、鉱滓を主原料とするスラグウールも含む。解繊前のロックウールの形状はバルク状の短繊維凝集塊であり、100〜150kg/m程度の嵩密度を有する。本発明方法による解繊後のロックウールの嵩密度は10〜40kg/m程度である。
【0009】
ロックウールの短繊維凝集塊を風送供給する気流中には複数の針状突起が林立して設けられている。各針状突起の先端は先鋭状に尖っていることが好ましい。針状突起の林立状態は、たとえば矩形の四隅及び対角線の交点の五箇所にピン(針状突起)が立っている林立単位を平面に沿って連続的に設けたものである。針状突起の直径は0.8〜2mm、高さは5〜10mm程度である。林立単位となる矩形の大きさは20×20mm、18×10mmなどとすることができる。
【0010】
針状突起は、ロックウールの短繊維凝集塊を風送する気流方向に対して傾斜した方向に延長するように、風送ダクトの内面に植立させることが好ましい。針状突起の植立方向は、気流方向に対して略直交する方向や、上流方向側に傾斜した方向とすることができる。これにより、ダクト内を風送されるロックウールの短繊維凝集塊が針状突起に衝突し、より小さな凝集塊に分解される。
【0011】
針状突起は、風送方向において後述の不規則凹凸面の上流側に設けることが好ましいが、不規則凹凸面の上流側及び下流側の二箇所に設けることも好ましい実施形態の一つである。不規則凹凸面の上流側及び下流側の二箇所に針状突起を設ける場合、上流側の針状突起の林立密度と下流側の針状突起の林立密度は同じであっても良いが、下流側の針状突起の林立密度を上流側の針状突起の林立密度より密にすると、解繊の度合い(進行)に対応させることができると共に、ロックウール短繊維凝集塊の詰まりをなくして効率的に解繊することができるので好ましい実施形態である。
【0012】
ロックウールの短繊維凝集塊を風送供給する気流中に上述の針状突起と共に解繊手段として設けられる不規則凹凸面は、たとえば金属板や無機板、合成樹脂板などの板表面を先鋭凹凸状に加工した面や、サンドペーパー面として構成することができる。凹凸の高さは、サンドペーパーの場合は♯20〜♯90を使用し、先鋭的な凹凸形状の場合は高さ0.1〜3mm程度とすることが好ましい。
【0013】
ロックウール短繊維凝集塊を風送する気流は、レイノルズ数Re≧200,000の条件を満たす空気の乱流とすることが好ましい。
【0014】
ロックウール短繊維凝集塊を解繊するに当たっては、松、杉、桧などの針葉樹またはラワン、カポール、栗、ポプラなどの広葉樹の木質繊維(木粉を含んでも良い)及び/またはスラグ、フライアッシュ、炭化カルシウム、アルミナなどの無機質粉体を加えると良い。添加混合された木質繊維や無機質粉体は、解繊されたロックウールの繊維間に入り込んでロックウール繊維同士の再凝集を防止する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロックウール解繊方法によれば、気流中にロックウールの短繊維凝集塊を供給して風送するとともに、この気流中に設けた複数の針状突起と不規則凹凸面を有する凹凸とに衝突させて短繊維凝集塊をより小さな凝集塊に分解するので、効率よく解繊を促進することができる。
【0016】
特に、まず複数の針状突起に衝突させ、次いでその下流に設けた不規則凹凸面を有する凹凸に衝突させ、あるいはさらに再度複数の針状突起に衝突させることにより、ロックウールの短繊維凝集塊が針状突起及び凹凸によって順次に小さい短繊維凝集塊に分解されるので、解繊が効率的に促進される。
【0017】
これらの作用を介して、本発明によれば、複雑な装置を使用することなくロックウール短繊維凝集塊を効率的に解繊することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明によるロックウール解繊方法を実施するための装置構成例を示し、ロックウール短繊維凝集塊1を風送するダクト2と、ダクト2の入口部に設けられてダクト2内に乱流を発生させる送風機3と、ダクト2内の乱流気流によって風送される間に解繊されたロックウールを捕集する捕集装置4と、捕集装置4に捕集されたロックウールを貯蔵する貯蔵タンク5とを有する。
【0019】
ダクト2は、送風機3の吐出口から略水平に延長する入口側水平ダクト2aと、捕集装置4に通じる出口側水平ダクト2eと、これらの間に連続して設けられる傾斜ダクト2b、垂直ダクト2c及び傾斜ダクト2dから形成される。
【0020】
入口側の傾斜ダクト2bにおいて、送風機3からの乱流気流が衝突しやすい側の内壁に複数の針状突起からなる突起部6が設けられている。図2は突起部6の平面図であり、ピッチPとピッチQで形成される矩形の四隅と対角線の交点の5箇所に各々針状突起7を傾斜ダクト2bの内壁から垂立させた林立単位を平面的に連続させて突起部6が構成されている。ピッチの大きさは、たとえばP=20mm、P=10mm、ピッチQ=20mm、Q=10mmである。各針状突起7は、図3に示すように先端が尖った形状を有しており、この実施形態では直径d=1mm、高さH=7mmである。突起部6は、送風機3からの乱流気流が衝突しやすい側の内壁部分に設けられ、すなわち、図1に示すように少なくとも送風機3の吐出口に対向する傾斜ダクト2bの内壁部分に設けられるが、必要に応じてその両側部分(図1において紙面表面側及び裏面側)にも突起部6を設けても良く、さらには傾斜ダクト2bの内壁の全般に亘って突起部6を形成しても良い。
【0021】
さらに、垂直ダクト2c及び出口側の傾斜ダクト2dには、送風機3からの乱流気流が衝突しやすい側の内壁が凹凸面8とされている。この実施形態では、#24のサンドペーパーを垂直ダクト2c及び出口側の傾斜ダクト2dの内壁面に貼着することにより凹凸面8を形成している。凹凸面8の形成箇所は、これらダクト2c,2dにおいて送風機3からの乱流気流が衝突しやすい側の内壁部分であり、図1の実施形態のようにダクト全体が逆C字形に形成されている場合は、これらダクト2c,2dの内壁面のうちの少なくとも右側部分(図1において)に凹凸面8を形成するものとし、必要に応じてその両側部分(図1において紙面表面側及び裏面側)にも凹凸面を形成する(図示せず)。もちろんダクト2c,2dの内壁の全般に亘って凹凸面を形成しても良い。
【0022】
送風機3は、ダクト2内にレイノルズ数Re≧200,000の条件を満たす乱流の気流を発生させる能力を備えている。
【0023】
捕集装置4は、円筒状または角筒状の縦形筒体であり、その側壁に出口側水平ダクト2eが開口して連結されている。出口側水平ダクト2eの開口部の上方にはバグフィルター9が設けられ、ここで集塵・洗浄された空気10が系外に放出されるようになっている。捕集装置4の下端は貯蔵タンク5内に向けて開口している。
【0024】
以上のように構成されたロックウール解繊装置において、ロックウールの短繊維凝集塊1を送風機3の吸込口に供給すると、該短繊維凝集塊1は送風機3の吐出口からダクト2内に送り込まれ、送風機3によってダクト2内に生成されたレイノルズ数Re≧200,000の乱流気流によってダクト2内を風送される。ロックウール短繊維凝集塊1は、乱流気流内で不規則な激しい運動をしながら、その繊維同士の間隔が徐々に広がっていく。さらに、乱流気流によるダクト2内を通過する間に、ロックウール短繊維凝集塊1は、傾斜ダクト2bの内壁に設けられた針状突起7に衝突を繰り返し、さらには垂直ダクト2c及び傾斜ダクト2dに設けられた凹凸面8に衝突を繰り返しながら、徐々に大きさ及び嵩密度の小さい短繊維凝集塊に分割されていく。これらの相乗作用により、ロックウール短繊維凝集塊1は十分に解繊された状態となる。
【0025】
このようにして嵩密度が十分に小さくなるまで解繊されたロックウール11がダクト2の出口から捕集装置4に送り込まれる。空気はバグフィルター9を介して排気される。解繊されたロックウール11は捕集装置4内を重力で下方に移動し、その下端開口から貯蔵タンク5に落下して貯蔵される。
【0026】
この解繊装置を使用して、レイノルズ数Re≧200,000以上の乱流気流でロックウール短繊維凝集塊1を風送したところ、解繊前のロックウールの嵩密度100〜150kg/mが10〜40kg/mとなって捕集装置4に捕集され、理想的な解繊状態が得られた。比較のために、ダクト2内に突起部6及び凹凸面8を設けない解繊装置構成にして同様に作動させたところ、ロックウールの嵩密度を40kg/m以下まで低下させることができず、十分な解繊を行うことができなかった。
【0027】
図4は、本発明によるロックウール解繊方法を実施するための装置構成の変形例を示す。この装置構成が図1の装置構成と異なる点は、複数の針状突起を備えた突起部6が入口側の傾斜ダクト2bの内壁だけでなく、出口側水平ダクト2eの入口側(傾斜ダクト2dに近い側)の内壁にも設けられている点である。つまり、凹凸面8の上流側及び下流側にそれぞれ突起部6,12が設けられている。その他の構成については図1と同様であるので、同一部分・要素には同一の符号を付して、それらの説明を割愛する。
【0028】
上流側の突起部6について既述したと同様、下流側の突起部12も、送風機3からの乱流気流が衝突しやすい側の内壁に設けられ、すなわち、図4に示すように傾斜ダクト2dを通って斜め左上(図4において)に向かう乱流気流が最も衝突しやすいダクト2eの内壁上面部分に少なくとも設けられるが、必要に応じてその両側部分(図4において紙面表面側及び裏面側)にも突起部12を設けても良く、さらには出口側水平ダクト2eの内壁の全般に亘って突起部12を形成しても良い。
【0029】
下流側の突起部12における針状突起13の形状は、上流側の突起部6における針状突起6の形状(図3)と略同一であって良く、先端が尖った形状を有している。
【0030】
また、下流側の突起部12は、上流側の突起部6と同様、ピッチPとピッチQで形成される矩形の四隅と対角線の交点の5箇所に各々針状突起13を出口側水平ダクト2eの入口側の内壁から垂立させた林立単位を平面的に連続させて構成されている。その林立密度は、上流側の突起部6における針状突起の林立密度と同じであっても良いが、好ましくは図4及び図5に示すように、下流側の突起部12における針状突起の林立密度を上流側の突起部6における針状突起の林立密度より密にする。この実施形態では、上流側の突起部6における針状突起7の林立ピッチをP=20mm、P=10mm、ピッチQ=20mm、Q=10mmとし、下流側の突起部12における針状突起13の林立ピッチをP=10mm、P=5mm、ピッチQ=18mm、Q=9mmとしている。このような粗密関係とすると、ダクト2内を風送されるロックウール短繊維凝集塊1の解繊の度合い(進行)に対応させることができると共に、ロックウール短繊維凝集塊1の詰まりをなくして効率的に解繊することができる。
【0031】
なお、図示の装置構成は例示にすぎず、特許請求の範囲に記載された本発明方法を実施することができるものであれば様々な変形態様を取り得る。たとえば、図1及び図4に示す装置構成ではダクト2の全体形状が略逆C字形を有するものとされているが、たとえば、傾斜ダクト2dの傾斜方向を傾斜ダクト2bと略同一方向とし、出口側水平ダクト2eを図1及び図4とは反対方向(これら図において右方向)に延長させて、略S字形の全体形状を有するダクト構成としても何ら差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明方法を実施するためのロックウール解繊装置の一例を示す構成図である。
【図2】図1のロックウール解繊装置において入口側の傾斜ダクトの内壁に設けられる突起部の平面図である。
【図3】突起部に備えられる針状突起の正面図である。
【図4】本発明方法を実施するためのロックウール解繊装置の他例を示す構成図である。
【図5】図4のロックウール解繊装置において出口側水平ダクトの内壁に設けられる下流側の突起部の平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ロックウール短繊維凝集塊
2 ダクト
2a 入口側水平ダクト
2b 傾斜ダクト
2c 垂直ダクト
2d 傾斜ダクト
2e 出口側水平ダクト
3 送風機
4 捕集装置
5 貯蔵タンク
6 突起部(上流側)
7 針状突起
8 凹凸面
9 バグフィルター
10 空気
11 解繊されたロックウール
12 突起部(下流側)
13 針状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流中にロックウールの短繊維凝集塊を供給して風送するとともに、この気流中に設けた複数の針状突起と不規則凹凸面を有する凹凸とに衝突させて短繊維凝集塊をより小さな凝集塊に分解し解繊を促進することを特徴とするロックウール解繊方法。
【請求項2】
気流中にロックウールの短繊維凝集塊を供給して風送するとともに、この気流中に設けた複数の針状突起に衝突させ、次いでその下流に設けた不規則凹凸面を有する凹凸に衝突させて、短繊維凝集塊を順次により小さな凝集塊に分解し解繊を促進することを特徴とするロックウール解繊方法。
【請求項3】
気流中にロックウールの短繊維凝集塊を供給して風送するとともに、この気流中に設けた第一の複数の針状突起に衝突させ、次いでその下流に設けた不規則凹凸面を有する凹凸に衝突させ、さらにその下流に設けた第二の複数の針状突起に衝突させて、短繊維凝集塊を順次により小さな凝集塊に分解し解繊を促進することを特徴とするロックウール解繊方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−328609(P2006−328609A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156817(P2005−156817)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】