説明

ロック機構、筐体構造、及び電子機器

【課題】ケース結合のためのネジをなくすとともに、ケースの薄型化を可能にして、高いデザイン性を実現させる。
【解決手段】回転によりロック動作及びロック解除動作するロック部材71と、このロック部材71に接続され、電圧の印加により形状変化してロック部材71をロック動作またはロック解除動作する方向に回転させる形状記憶合金部材72と、を備えるロック機構7。具体的には、電圧の印加により形状記憶合金部材72が形状復帰してロック部材71をロック解除動作する方向に回転させる。そして、形状記憶合金部材72に電圧を印加するための正極端子76と負極端子73がケース1に固定されている。その負極端子73が形状記憶合金部材72の一方の端部に接続され、正極端子76がリード線75の一方の端部に接続されて、このリード線75の他方の端部と形状記憶合金部材72の他方の端部とがロック部材71と一体に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体等のロック機構と、そのロック機構を備える筐体構造と、その筐体構造を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラにおいては、多種、多様の機能を有した製品が、多数のメーカーから発売されている。特にコンパクトタイプにおいては、小型、薄型、スタイリッシュなものが数多く提供されており、高いデザイン性を有する製品も多く見受けられる。
【0003】
ところで、特許文献1において、遊技機に設けられる、主基板を収容する基板ケースが提案される。この基板ケースは、本体ケースと蓋ケースとを、外部から開封不能に封止する封止構造を備え、封止構造が、本体ケース内側に設けられる係止棒と、蓋ケース内側に設けられ、本体ケースと蓋ケースとが嵌合された場合に、係止棒に係止される係止材と、を備え、係止材が、形状記憶合金で形成されるとともに、変態温度以上で回復するように形状記憶された係止材の形状が、係止棒との係止が解除される形状である構成としたものである。
これによれば、基板ケース外部から、封止構造を解除することができないようにするとともに、基板ケースや回路基板に実装された電子部品に影響を及ぼすことなく、加熱することで封止構造が解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、高いデザイン性をさらに高めるための障害となるものがある。それらは、製品を構成する上で重要な要素として存在しており、その一つとして、外装ケースを取り付け、固定するためのネジが挙げられる。
【0006】
この点、特許文献1の変態温度以上で回復するように形状記憶された係止材を用いた封止構造による基板ケースは、ケース結合のためのネジを必要としないが、形状記憶合金で形成されて係止棒に係止される係止材の形状が複雑で、ケースの薄型化が困難である。
【0007】
本発明の課題は、ケース結合のためのネジをなくすとともに、ケースの薄型化を可能にして、高いデザイン性を実現させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、回転によりロック動作及びロック解除動作するロック部材と、このロック部材に接続され、電圧の印加または加熱により形状変化して前記ロック部材をロック動作またはロック解除動作する方向に回転させる形状記憶合金部材と、を備えるロック機構を特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロック機構であって、電圧の印加または加熱により前記形状記憶合金部材が形状復帰して前記ロック部材をロック解除動作する方向に回転させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のロック機構であって、前記ロック部材をロック動作またはロック解除動作する回転方向に付勢するバネ部材を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のロック機構であって、前記形状記憶合金部材に電圧を印加するための正極端子と負極端子がケースに固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のロック機構であって、前記ケースの前記正極端子と負極端子がそれぞれ位置する部分に、正極と負極が識別可能な識別部を施したことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のロック機構であって、前記正極端子と負極端子の一方の端子が前記形状記憶合金部材の一方の端部に接続され、他方の端子がリード線の一方の端部に接続されて、このリード線の他方の端部と前記形状記憶合金部材の他方の端部とが前記ロック部材と一体に接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項4から6のいずれか一項に記載のロック機構であって、前記負極端子は電子回路のグランドに電気的接続されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のロック機構であって、前記形状記憶合金部材はワイヤまたはコイルであることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のロック機構を備える筐体構造を特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の筐体構造であって、電池蓋を備え、前記電池蓋の中に前記端子が隠されていることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項9または10に記載の筐体構造を備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケース結合のためのネジをなくすとともに、ケースの薄型化を可能にして、高いデザイン性を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、デジタルカメラの正面図(a)と側面図(b)と背面図(c)である。
【図2】図1(b)の正極端子部分の拡大図(a)と負極端子部分の拡大図(b)である。
【図3】図1のデジタルカメラの分解斜視図である。
【図4】図3のロック機構部分の拡大図である。
【図5】図4のロック機構部分のロック状態を示した正面図である。
【図6】図5のロック機構部分のロック解除状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成としてデジタルカメラを示したもので、図中、1はリアケース、2はフロントケースである。
【0022】
図示のように、リアケース1には、表示画面11、メニューキー12、再生キー13、撮影キー14及び上下左右矢印キー15が設けられ、フロントケース2には、レンズ開口部21が設けられている。
図示例において、リアケース1及びフロントケース2は、樹脂などの非導電材料を使用するため、角張ったデザインではなく、丸みを帯びた形状でデザイン自由度が大きい形状に形成されている。
【0023】
そして、リアケース1とフロントケース2の一側部の上下には、図2に拡大して示すように、端子接続用の識別部として機能する丸穴23と角穴24が設けられている。
【0024】
図3はデジタルカメラを分解して示したもので、図中、3は電池、4は撮影装置、5は回路基板部、6はホルダ、7はロック機構である。
【0025】
図示のように、ケース1・2の内部には、電池3と、画像を撮影するレンズを含む撮影装置4と、その撮影した画像を処理する画像処理部、撮影モード・再生モードの切り替えなどカメラの動作を制御する制御部、画像を保存しておく記憶部などを搭載した回路基板部5と、それを保持・固定するために設けられたホルダ6と、リアケース1とフロントケース2を固定するロック機構7などを備えている。なお、リアケース1の内側に表示装置10が設けられている。
【0026】
以上の電池3、撮影装置4などを搭載した回路基板部5は、ホルダ6にネジn1で結合して保持・固定される。
【0027】
そして、リアケース1とフロントケース2を固定するロック機構7は、図4に拡大して示すように、ロック部材71及び形状記憶合金ワイヤ72などを備えている。
【0028】
図示のように、ロック部材71には、突起部によるロック爪71aが設けられている。また、形状記憶合金ワイヤ72の両端には、負極端子73と接続端子74がそれぞれカシメ付けて取り付けられている。接続端子74にはリード線75が半田付けされている。このリード線75の他端には、正極端子76がカシメ付けて取り付けられている。
【0029】
接続端子74は、ロック部材71に溶着またはネジなどにより取り付けられて、外力により外れないように固定されている。また、形状記憶合金ワイヤ72は、ロック部材71の外周のガイド形状に合わせて巻き付くようにセットされている。
【0030】
こうして接続端子74が一体に取り付けられたロック部材71は、その丸孔に、ホルダ6にカシメ付けられたシャフト77を挿入するように取り付けられる。このとき、シャフト77をねじりバネ(バネ部材)78に通して、ホルダ6に対してロック部材71が所定の方向に力をかけるように取り付けられている。なお、シャフト77の先端には、ロック部材71が外れないようにストッパーリング79が取付けられている。
【0031】
負極端子73は、ネジn2でホルダ6の所定の位置に電気的に導通するように固定されている。
また、正極端子76は、ネジn3でホルダ6の所定の位置に固定されている。このとき、正極端子76は、二枚のスペーサ81・82に挟まれるように取り付けられて、ホルダ6に導通しないようになっている。従って、スペーサ81・82に使用する材料としては、樹脂などの絶縁材料を使用する。
【0032】
以上において、負極端子73と正極端子76には、機器外部から電圧供給を受けるための接点部がそれぞれ一体に設けられている。これら負極端子73と正極端子76は、リアケース1とフロントケース2の一側部の上下に設けた端子接続用の丸穴23と角穴24にそれぞれ位置している。すなわち、負極端子73が角穴24の内方に配置されて、正極端子76が丸穴23の内方に配置されている。
【0033】
以上のように構成されたロック機構7を、ホルダ6を介しリアケース1に取り付けておけば、フロントケース2を嵌合したとき、そのフロントケース2に設けられた図示しない引掛り部に、ロック部材71のロック爪71aが挿入されてケース1・2が固定される。
【0034】
以上のようなロック機構7を機器の内部に一つないし複数個配置すると、以下のように、ネジレスでケース固定ができる。
【0035】
次に、ロック機構7の動作について説明する。
【0036】
抵抗体である形状記憶合金ワイヤ72は、その両端に電圧をかけると発熱し、形状復帰温度に達すると、予め記憶された形状に復帰する。
ここで、電圧は数ボルト(5・6ボルト)であり、ワイヤの長さに応じ電圧を管理する。また、ねじりバネ78の加重を、形状記憶合金ワイヤ72の形状復帰力よりも小さく設定しておく。
【0037】
従って、図5に示すように、ねじりバネ78による外力により引き伸ばされた状態でセットされている形状記憶合金ワイヤ72に規定の電圧を印加すると、図6に示すように、形状記憶合金ワイヤ72は、発熱により縮む方向に形状復帰力を発生させ、ロック部材71を、シャフト77を中心に回転させてロックを解除する。
【0038】
電圧の印加を停止すると、図5に示したように、形状記憶合金ワイヤ72の形状復帰力はなくなり、ねじりバネ78によりロック部材71はロック状態に戻される。
【0039】
ここで、正極端子76と負極端子73の間に電圧を印加する場合、正極端子76には、電圧の+側、負極端子73には、電圧の−側を接続する。
これは、負極端子73は、機器のグランドに接続されているためである。
【0040】
こうして、負極端子73を機器のグランドに接続することで、外部からの静電気が進入した場合でも機器のグランドに接続されているので、回路基板部5を静電気から保護することができる。
【0041】
また、リアケース1とフロントケース2の一側部の上下には、外部より電圧を印加するために端子接続用の丸穴23と角穴24が設けられ、その丸穴23と角穴24に正極端子76と負極端子73がそれぞれ位置している。すなわち、上方の丸穴23の中に正極端子76が位置して、下方の角穴24の中に負極端子73が位置している。
【0042】
こうして、外部より電圧を印加する端子接続用の丸穴23と角穴24とすることで、目視で識別できるようにして誤接続を防止できる。
【0043】
以上、実施形態のロック機構7を備えるデジタルカメラによれば、ロック機構7を一つないし複数個設けることでケース嵌合のためのネジをなくす(少なくする)ことができるとともに、ロック部材71の回転動作によりケースの薄型化を可能にして、高いデザイン性を実現させることができる。
【0044】
そして、形状記憶合金ワイヤ72が印加される電圧により形状復帰することを用いて、ロック部材71を、シャフト77を中心として回転動作させ、ロック解除するように構成したことで、ロック機構7を小型化することができる。
【0045】
また、電圧を印加する負極端子73をネジ止め固定したことで、部品点数を最小限に構成することができ、作業工数、部品コストを削減できる。
【0046】
同様に、電圧を印加する正極端子76をネジ止め固定したことで、部品点数を最小限に構成することができ、作業工数、部品コストを削減できる。
【0047】
また、電圧を印加する負極端子73を機器のグランドに電気的に接続したことで、外部からの静電気に対する対策が共通化でき、作業工数及びコストのアップを防止することができる。
【0048】
さらに、外部電圧供給のためにリアケース1及びフロントケース2に識別部として、正極端子76側を丸穴23に、負極端子73側を角穴24にしたことで、電圧印加の際の極性の誤接続を防止することができる。
【0049】
(変形例)
また、形状記憶合金ワイヤ72を形状記憶合金コイルに置き換えた場合でも同様の動作をさせることができ、さらには、形状記憶合金ワイヤ72よりも形状記憶合金コイルのほうが形状復帰の際の可動範囲が大きいことから、ロック機構7としての大きさを小型できる。
【0050】
また、端子接続用の識別部として、形状が異なる穴に代えて、穴の色を異ならせることも可能であり、さらに、穴を開閉するキャップを付けたり、穴の周りに耐衝撃ラバーを設けたり、ケースから端子を突出させて、その端子を覆うカバーや端子の周りに耐衝撃ラバーを設けたりすることも可能である。
【0051】
さらに、電池蓋を備える構造の場合、その電池蓋の中に端子が隠されている構造とすれば、デザイン性がさらに向上する。
【0052】
また、電圧の印加により形状記憶合金ワイヤ72が発熱して縮む方向に形状復帰するのに代えて、電圧の印加により形状記憶合金ワイヤ72が発熱して伸びる方向に形状復帰することも可能である。
【0053】
(他の変形例)
以上の実施形態においては、デジタルカメラとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラを備える携帯電話、電卓、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電子辞書などの機器全てに用いることができる。
また、実施形態では、形状記憶合金部材をワイヤまたはコイルとしたが、ワイヤやコイル以外であってもよい。
【0054】
そして、実施形態において、電圧の印加により形状記憶合金部材が発熱して形状復帰するものとしたが、加熱により形状記憶合金部材が形状復帰する構成としてもよい。
さらに、ロック部材、形状記憶合金部材、穴の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 ケース
2 ケース
23 識別部
24 識別部
3 電池
4 撮影装置
5 回路基板部
6 ホルダ
7 ロック機構
71 ロック部材
72 形状記憶合金部材
73 負極端子
74 接続端子
75 リード線
76 正極端子
77 シャフト
78 ねじりバネ(バネ部材)
79 ストッパーリング
81 スペーサ
82 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転によりロック動作及びロック解除動作するロック部材と、
このロック部材に接続され、電圧の印加または加熱により形状変化して前記ロック部材をロック動作またはロック解除動作する方向に回転させる形状記憶合金部材と、を備えることを特徴とするロック機構。
【請求項2】
電圧の印加または加熱により前記形状記憶合金部材が形状復帰して前記ロック部材をロック解除動作する方向に回転させることを特徴とする請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記ロック部材をロック動作またはロック解除動作する回転方向に付勢するバネ部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のロック機構。
【請求項4】
前記形状記憶合金部材に電圧を印加するための正極端子と負極端子がケースに固定されていることを特徴とする請求項1または3のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項5】
前記ケースの前記正極端子と負極端子がそれぞれ位置する部分に、正極と負極が識別可能な識別部を施したことを特徴とする請求項4に記載のロック機構。
【請求項6】
前記正極端子と負極端子の一方の端子が前記形状記憶合金部材の一方の端部に接続され、
他方の端子がリード線の一方の端部に接続されて、
このリード線の他方の端部と前記形状記憶合金部材の他方の端部とが前記ロック部材と一体に接続されていることを特徴とする請求項4または5に記載のロック機構。
【請求項7】
前記負極端子は電子回路のグランドに電気的接続されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項8】
前記形状記憶合金部材はワイヤまたはコイルであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のロック機構を備えることを特徴とする筐体構造。
【請求項10】
電池蓋を備え、
前記電池蓋の中に前記端子が隠されていることを特徴とする請求項9に記載の筐体構造。
【請求項11】
請求項9または10に記載の筐体構造を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−42527(P2012−42527A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181252(P2010−181252)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】