説明

ロッド状プラスチック原料、これを得るための重合用容器および重合装置ならびにロッド状プラスチック原料を使用した光伝送体の製造方法

【課題】 溶融押出成形で使用するのに好適なロッド状プラスチック原料、これを得るための重合用容器および重合装置ならびにこのロッド状プラスチック原料を使用した光伝送体の製造方法を提供する。
【解決手段】 ロッド状プラスチック原料Rを塊状重合で成形するための重合用容器3は、上下両端が開口した筒状容器本体11と、容器本体11の上下端部開口を閉鎖する上下栓12,13とを備えている。上栓12は、貫通状の通路18を有している。下栓13は、中央孔21aを有し容器本体11の下端開口に密着する外栓部21と、外栓部21の中央孔21aに着脱可能に嵌め入れられた内栓部22とからなる。内栓部22は、重合終了後にロッド状プラスチック原料Rに一体化されることで原料供給装置への接続部材となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用途や光ファイバー用途などに用いられる光伝送体を溶融押出成形により製造するに際し、好適な形態のロッド状プラスチック原料、このロッド状プラスチック原料を得るための重合用容器および重合装置ならびにこのロッド状プラスチック原料を使用して実施される光伝送体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送体(例えば光ファイバー)の製造技術として、図8に示すような溶融押出装置(70)が知られている。この装置(70)は、屈折率分布を有するプラスチック光ファイバーを溶融押出法で製造するもので、コア層およびクラッド層用の2層金型(73)の上流側に、コア原料供給装置(71)およびクラッド原料供給装置(72)が連結されている。2層金型(73)の下流側には、ドーパント(屈折率調整剤)を拡散するためのドーパント拡散管(74)が備えられており、その下流にロール(75)を介して、テイクアップロール(76)が配置されている。
【0003】
この装置(70)によると、コア層およびクラッド層用の材料は、まず、各原料供給装置(71)(72)内において加熱されて溶融状態とされ、次いで、2層金型(73)内において、コア層の外周にクラッド層を有する2層構造とされ、次いで、ドーパント拡散管(74)内において、ドーパントが拡散することで屈折率分布が形成され、次いで、ロール(75)によって所定径とされることで、プラスチック製光伝送体としてのGI型光ファイバ(F)が製造される。
【0004】
特許文献1には、上記の溶融押出装置(70)で使用されるコア原料供給装置(71)およびクラッド原料供給装置(72)の好適な構成として、図示省略するが、ロッド状のプラスチック原料が収納される加圧タンクと、加圧タンクの下流側に設けられてロッド状のプラスチック原料の下端部分を加熱溶融させる加熱溶融部と、加熱溶融部を加熱する加熱手段と、ガス圧で溶融プラスチックを順次金型へ供給するためのガス加圧手段とを備えているものが開示されている。この特許文献1には、さらに、ロッド状プラスチック原料の上端部に環状溝を設けておき、この溝に嵌められた1対の保持アームでロッド状プラスチック原料を挟持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2010/109938号(段落[0083]ならびに図9および図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1によると、溶融押出成形で使用するのに好適な原料供給装置が得られ、これにより、光信号の伝達損失悪化が極めて少なく、押出成形法本来の生産性を併せ持つ光伝送体の製造が可能となる。
【0007】
しかしながら、この製造方法における原料供給装置で使用されるロッド状プラスチック原料は、環状溝を形成する際に割れやすいという問題や溝の研削時にごみが付着するという問題があり、ロッド状プラスチック原料を原料供給装置での使用に適した形態とすることが課題になっている。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、溶融押出成形で使用するのに好適なロッド状プラスチック原料、これを得るための重合用容器および重合装置ならびにこのロッド状プラスチック原料を使用した光伝送体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によるロッド状プラスチック原料は、ロッド状とされたプラスチック原料を下方に移動させながらその下先端を部分的に加熱して溶融状態で排出する原料供給装置において使用されるロッド状プラスチック原料であって、塊状重合で成形されるとともに、原料供給装置に接続するための接続部材が重合時に一体化されていることを特徴とするものである。
【0010】
ロッド状プラスチック原料は、通常、円柱状(断面形状が円形)とされるが、角柱状(断面形状が多角形)などとされてもよい。ロッド状プラスチック原料の断面形状が円形状の場合、その直径は、5〜60mmが好ましい。5mmより小さいと、一定量の光伝送体を製造するためには長尺のロッド状プラスチック原料を準備する必要があり、60mmを超えると、溶融プラスチックの体積が大きくなるので、プラスチック原料が溶融している時間が短くなくなり、熱安定性に優れないプラスチックでは劣化物による信号伝達の損失悪化を招く恐れがある。より好ましい直径は、20〜50mmである。上記直径は、ロッド状プラスチック原料の断面形状が多角形状の場合には、外接円の直径に相当する。また、ロッド状プラスチック原料の長さは、100〜1000mmが好ましい。
【0011】
塊状重合は、溶媒を用いずモノマーだけで行う重合で、これを上記寸法のロッド状プラスチック原料の成形に適用することで、光伝送体(例えば光ファイバー)の原料としての要件、すなわち、不純物が少なく、光信号の伝達損失悪化が極めて少ないという要件が満たされる。塊状重合成形によると、液体状態の原料モノマーに例えば金属製の部材を接触または部材の一部を挿入しておくことで、重合で得られるポリマーにこの部材を一体化(融着)することが可能である。そこで、原料供給装置に接続するための接続部材(金属部材が好ましいが、これに限定されるものではない)が重合成形時にロッド状プラスチック原料に一体化されているものとすることで、原料供給装置との接続を容易なものとすることができる。
【0012】
例えば、接続部材にめねじを形成しておけば、原料供給装置に設けられたおねじに容易に接続することができる。接続部材の構成は、相手側部材(原料供給装置の原料保持部の構成)によって適宜変更可能であり、ねじ部(めねじまたはおねじ)を有しているものの他に、接着を利用してもよく、また、磁力を利用してもよく(接続部材および相手側部材のいずれか一方を磁石に、他方を磁石または磁性体に)、さらにまた、テープ接続、プランジャ、セットカラー、クランプなどの形態とすることもできる。
【0013】
この発明による重合用容器は、ロッド状プラスチック原料を塊状重合で成形するための重合用容器であって、上下両端が開口した筒状容器本体と、容器本体の上下端部開口を閉鎖する上下栓と、容器本体の上下端部に設けられて上下栓の外れを防止する上下押さえ部材とを備えており、上栓は、貫通状の通路を有し、下栓は、中央孔を有し容器本体の下端開口に密着する外栓部と、外栓部の中央孔に着脱可能に嵌め入れられ重合終了後にロッド状プラスチック原料に一体化されることで原料供給装置への接続部材となる内栓部とからなることを特徴とするものである。
【0014】
この発明において、「上下」は、重合時における上下をいうものとし、重合前のモノマー充填時やバブリング(容器内への不活性ガス導入)時には、この上下を逆にして使用されることがある。
【0015】
下栓の外栓部と内栓部とは、例えば、外栓部に貫通状のめねじが設けられ、内栓部にこのめねじにねじ合わされるおねじが形成されることで、着脱可能に結合される。着脱可能に結合するには、ねじ結合に限定されるものではない。
【0016】
外栓部は、容器本体からの液体状態のモノマーの漏れを防止するために、外周面がテーパ状(上端側が小径)とされて、その上端部分が容器本体内に挿入されることが好ましい。
【0017】
容器本体の下端開口を閉鎖する必要から、外栓部の外径は、ロッド状プラスチック原料の外径よりも大きくなり、外栓部がロッド状プラスチック原料に残ると、これがロッド状プラスチック原料を移動させる際の障害になることから、外栓部は、重合成形後に取り外される。内栓部の外径は、ロッド状プラスチック原料の外径と等しく(または小さく)され、これにより、内栓部がロッド状プラスチック原料に残っても、ロッド状プラスチック原料を移動させる際の障害になることはない。
【0018】
上栓は、複数部材からなるものとされてもよいが、通常、1部材からなるものとされる。いずれにしろ、上栓は、容器本体からの液体状態のモノマーの漏れを防止するために、その外周面がテーパ状(下端側が小径)とされて、その下端部分が容器本体内に挿入されることが好ましい。
【0019】
上栓の通路には、適宜な流量制御用バルブ(例えばボールバルブ)によって開閉可能な配管が接続されることが好ましい。このようにすると、重合時に、容器本体内を不活性ガス(例えば窒素ガス)で満たして所定圧に保持する際、この上栓の通路を不活性ガス流入通路として使用することができる。上栓の通路およびバルブによって開閉可能な配管は、モノマー充填時のモノマー流入通路や不活性ガスによるバブリングを行う時の不活性ガス流入通路として使用することもできる。
【0020】
下栓の内栓部は、1部材とされてももちろんよいが、軸体と筒体とからなり、これらが着脱可能に結合されたものとされることが好ましい。例えば、内栓部は、内周面にめねじが形成された筒体と、外周面におねじが形成されて筒体にねじ合わされた軸体とからなるものとされる。このようにすると、筒体の内周面をモノマー充填時のモノマー流入通路として使用したり、不活性ガスによるバブリングを行う時の不活性ガス流出通路として使用することができ、重合前の工程を実施する際に好適なものとなる。
【0021】
軸体の上下長さは、筒体の上下長さよりも大きいものとされ、軸体の上下端部は、筒体の上下端より突出させられていることが好ましい。このようにすると、軸体を筒体にねじ合わせた際に、軸体の上端部が筒体の上端より突出するとともに、軸体の下端部が筒体の下端より突出した状態となり、軸体の上端部(上方突出部)がモノマー内に挿入されることで、重合成形後のポリマーと下栓の内栓部との接着性が向上し、軸体の下端部(下方突出部)に接続のための部分(例えばめねじ部)を設けることで、原料供給装置に接続しやすい形態の接続部材が得られる。
【0022】
重合前の工程(充填および酸素除去)は、重合用容器の上下を逆にして行われる。すなわち、貫通状通路が設けられてここに配管が接続されている栓(上栓)が下、外栓部および内栓部からなる栓(下栓)が上とされる。このとき、下栓の内栓部が軸体および筒体からなるものでは、軸体が取り外され、内栓部の筒体と外栓部とが組み付けられた状態とされる。筒体のめねじは、モノマーの充填通路として使用することができる。モノマーの充填通路としては、下側に位置している上栓の貫通状通路および配管を使用することも可能であり、この場合、筒体のめねじは、容器本体内の空気が抜けていくための通路として使用される。そして、下側に位置している上栓の貫通状通路および配管から不活性ガスを導入してバブリングを行う際には、筒体のめねじは、不活性ガスを排出するための通路として使用される。下栓の内栓部が一部材(一体品)とされているものでは、内栓部が取り外された状態で、上記の工程を行えばよい。酸素を除去するためには、バブリングに代えて、真空脱気、超音波脱気などとしてもよく、また、容器内にモノマーと不活性ガスを充填して撹拌混合を繰り返すようにしてもよい。これらの酸素除去の場合、上下を重合時と同じにして行うこともできる。
【0023】
上下栓は、重合時に反応しにくい材料(金属、フッ素樹脂など)で形成される。下栓は、その後の原料供給装置での使用条件(例えば、高温、酸、腐食性ガス)に耐え得るもの(ハステロイ(商標名)、テフロン(商標名)など)とされる。
【0024】
容器本体は、ラジカルと反応しにくくかつ洗浄して再利用可能な材料、例えば、フッ素樹脂製、ガラス製または金属製とされる。塊状重合物(ロッド状プラスチック原料)を容器本体から抜き取りやすいように、容器本体が金属製の場合には、その内面に表面処理(フッ素樹脂コーティングなど)が施されていることが好ましい。
【0025】
容器本体は、金属製(例えばアルミニウム製)の外筒と、その内部に着脱可能に嵌め入れられたフッ素樹脂製(例えばテフロン製)の内筒とからなることが好ましい。このようにすると、金属製の外筒の内面の表面処理は不要であり、フッ素樹脂製の内筒を洗浄することで繰り返して使用することができる。フッ素樹脂製の管は、ロッド状プラスチック原料の重合・取出しおよびその後の洗浄を行う点で好適な材料であるが、重合時および重合後の温度変化(冷却)によるロッド状プラスチック原料の体積変化の影響を受けやすいことから、これを内筒として、金属製(変形しにくい厚手)の外筒とからなる二重筒とすることにより、フッ素樹脂製の内筒の変形が防止され、ロッド状プラスチック原料の変形(反り)が防止される。
【0026】
容器本体が二重筒とされる場合、上下押さえ部材は、外筒に取り付けられていることが好ましい。上下押さえ部材の外筒への取付けは、例えば、外筒の上下端面に複数のめねじ部を形成するとともに、板状とされた上下押さえ部材の外周縁部に複数のねじ挿通孔を形成し、上下栓を上下押さえ部材で押さえた状態で、そのねじ挿通孔に挿通したねじ(おねじ部材)を外筒のめねじ部にねじ込んでいくことで行われる。上下押さえ部材の外筒への取付けは、これに限定されないことはもちろんである。
【0027】
この発明による重合装置は、ロッド状プラスチック原料を塊状重合成形によって得るためのものであって、上栓にバルブによって開閉可能な配管が接続された上記の重合用容器が使用されるとともに、重合用容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段が上栓の通路に接続された配管に接続されていることを特徴とするものである。
【0028】
不活性ガス供給手段は、重合時(加熱中)、不活性ガスで重合用容器に圧力をかけ続けるものであり、これにより、内圧低下による外部からの酸素進入が無くなり、ポリマーの重合安定性が向上する。
【0029】
この重合装置(下栓の内栓部が筒体と軸体とに分離可能なもの)を用いて塊状重合を行う方法は、例えば、次のようなものとなる。
【0030】
まず、下栓の軸体を取り外して、重合用容器に上栓および下栓(軸体を取り外した状態のもの)を取り付けて、重合用容器を上下逆にした状態でモノマーを充填する。次いで、重合用容器を上下逆にしたままで、その下方から不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンなど)を導入して容器上方から排出することでバブリングを行う。次いで、軸体を取り付けることで下栓を内栓、外栓の筒体および外栓の軸体が一体化された状態とし、重合用容器の上下を反転して上下を元に戻す。次いで、上栓の配管に真空ラインを接続し、容器内部を減圧状態にして脱気する。この脱気を行うことで、重合固化時に発生するボイドを低減させることができる。次いで、上栓の配管に不活性ガス供給手段を接続し、減圧を不活性ガスによってパージして常圧とする。次いで、重合用容器をオーブン内に配置し、オーブン加熱する。重合時(加熱中)には、上栓に接続された不活性ガス供給手段によって不活性ガスで圧力をかけ続ける。この状態で所定時間加熱することで重合が終了する。重合終了後、上栓を外し、容器本体より塊状重合物(ロッド状プラスチック原料)を押し出す。下栓の内栓部はロッド状プラスチック原料に融着して一体化されており、この下栓から外栓部を取り外すことで、内栓部が接続部材として残り、原料供給装置でそのまま使用できる形態の接続部材付きロッド状プラスチック原料が得られる。
【0031】
不活性ガス供給手段としては、例えば、風船を使用して、風船に不活性ガスを満たして上栓の配管に接続するようにすればよい。これに代えて、不活性ガス供給手段は、1または複数の重合用容器の上栓にそれぞれ接続される分岐管を有する配管と、この配管に不活性ガスを供給する供給源と、配管入口側および配管出口側にそれぞれ設けられた計2つの逆止弁とからなり、配管入口側の逆止弁の設定圧力が配管出口側の逆止弁の設定圧力よりも小さくなされているものとしてもよい。後者のようにすると、重合用容器の内圧が2つの逆止弁の設定圧力間の圧力に維持され、重合がより安定したものとなる。
【0032】
この発明による光伝送体の製造方法は、コア層およびクラッド層用の2層金型の上流側にコア原料供給装置およびクラッド原料供給装置を配置し、各原料供給装置において、ロッド状プラスチック原料の下端部を加熱溶融させて2層金型に供給し、2層金型内において、コア層およびクラッド層からなる光伝送体を形成する光伝送体の製造方法において、各原料供給装置における加熱溶融工程において、各原料供給装置に設けられた原料送り手段の原料保持部に上記ロッド状プラスチック原料の接続部材を接続し、原料送り手段によってロッド状プラスチック原料を下方に移動させることを特徴とするものである。
【0033】
コア原料供給装置およびクラッド原料供給装置は、公知のもので、ロッド状のプラスチック原料が収納される加圧タンクと、加圧タンクの下流側に設けられてロッド状のプラスチック原料の下端部分を加熱溶融させる加熱溶融部と、加熱溶融部を加熱する加熱手段と、ガス圧で溶融プラスチックを順次金型へ供給するためのガス加圧手段とを備えているものとされる。
【0034】
このような原料供給装置によると、ロッド状プラスチック原料の下端部分を加熱溶融させることで、必要量のみ溶融させることができ、これにより、ロッド状プラスチック原料が溶融している時間が短くなり、熱安定性に優れないプラスチックに対しても、劣化物による信号伝達の損失悪化を防ぐことができる。
【0035】
ロッド状プラスチック原料の下方への降下は、溶融量制御手段によって、制御された速度で行い、溶融量を制御することが好ましい。溶融量制御手段は、例えば、アクチュエータ機構を内蔵して加圧タンク外に配置された本体と、加圧タンク内に移動可能に配置されて本体に駆動されてロッド状プラスチック原料を下方に送る送りロッドとを有し、送りロッドは、加圧タンクの開口縁部から加圧タンク内に挿入され、加圧タンクの開口縁部に、送りロッドとの間からの加圧ガスの洩れを防止するシール手段が設けられているものとされる。
【0036】
ここで、例えば送りロッド(原料送り手段)の先端部(下端部)がおねじとされ、ロッド状プラスチック原料の上端部にめねじが形成された接続部材が一体化されていると、送りロッドとロッド状プラスチック原料との接続が容易となるとともに、ロッド状プラスチック原料を保持する構成が不要となり、装置の簡素化および作業の手間の低減の点から好ましいものとなる。
【0037】
このようなロッド状プラスチック原料としては、径が小さいと、一定量の光伝送体を製造するためには長尺のロッド状プラスチック原料を準備する必要があり、また、径が大きいと、溶融プラスチックの体積が大きくなるので、プラスチック原料が溶融している時間が短くなくなり、熱安定性に優れないプラスチックでは劣化物による信号伝達の損失悪化を招く恐れがある。したがって、ロッド状プラスチック原料の好ましい直径は、20〜50mm程度である。このような直径(大径)の塊状重合物を得る適切な装置および方法は、従来なかったが、この発明による重合用容器および重合装置を用いることで、上記原料供給装置に適したロッド状プラスチック原料が得られる。
【0038】
ロッド状プラスチック原料が塊状重合成形で得られることにより、これを使用して製造された光伝送体(例えば光ファイバー)は、不純物が少なく、光信号の伝達損失悪化が極めて少ないものとなる。また、原料供給装置に接続するための接続部材がロッド状プラスチック原料に一体化されていることで、ロッド状プラスチック原料に追加の加工を施す必要がないので、光伝送体の製造工程が簡素化されるとともに、製品に不純物が入る可能性が低減される。
【0039】
光伝送体の製造で使用されるプラスチックの種類は、透明性が高く光伝送に用いることができるものであれば限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体、スチレン系モノマーの重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル等;スチレン系モノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、これらの共重合体でも構わない。その他共重合成分として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等のビニルエステル類;N―n−ブチルマレイミド、N―tert−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類等が例示される。その他、ポリカーボネート系プラスチック、シクロオレフィン系プラスチック、非晶フッ素系プラスチックなどを用いることもできる。
【0040】
光ファイバーは、通常、マルチモード光ファイバーと、シングルモード光ファイバーとに分類され、さらにマルチモード光ファイバーは、ステップインデックス(SI)型と屈折率分布を有するグレーデッドインデックス(GI)型に分類されるが、本発明の光伝送体の製造方法は、GI型(中心から半径方向外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコアを備えたタイプの)光ファイバーの製造により有利である。
【発明の効果】
【0041】
この発明のロッド状プラスチック原料によると、塊状重合で成形されるとともに、原料供給装置に接続するための接続部材が重合時に一体化されているので、ロッド状プラスチック原料を下方に移動させながらその下先端を部分的に加熱して溶融状態で排出する原料供給装置において使用することで、原料供給装置との接続を容易なものとすることができる。
【0042】
この発明の重合用容器によると、上下両端が開口した筒状容器本体と、容器本体の上下端部開口を閉鎖する上下栓と、容器本体の上下端部に設けられて上下栓の外れを防止する上下押さえ部材とを備えており、上栓は、貫通状の通路を有し、下栓は、中央孔を有し容器本体の下端開口に密着する外栓部と、外栓部の中央孔に着脱可能に嵌め入れられ重合終了後にロッド状プラスチック原料に一体化されることで原料供給装置への接続部材となる内栓部とからなるので、これを使用することによって、上記ロッド状プラスチック原料を好適に塊状重合で成形することができる。
【0043】
この発明の重合装置によると、重合用容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段が上栓の通路に接続された配管に接続されているので、内圧低下による外部からの酸素進入が無くなり、ポリマーの重合安定性が向上し、高品質なロッド状プラスチック原料を得ることができる。
【0044】
この発明の光伝送体の製造方法によると、各原料供給装置における加熱溶融工程において、各原料供給装置に設けられた原料送り手段の原料保持部に上記ロッド状プラスチック原料の接続部材を接続し、原料送り手段によってロッド状プラスチック原料を下方に移動させることにより、プラスチック原料が加熱溶融している時間が短時間に抑えられ、光信号の伝達損失悪化の原因となる劣化異物が極めて少なく、押出成形法本来の高い生産性で光ファイバーを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明による重合装置の1実施形態を示す垂直断面図である。
【図2】図2は、本発明による重合用容器の重合前工程における状態を示す垂直断面図である。
【図3】図3は、本発明による重合用容器の上栓の構成部材を分解して示す垂直断面図である。
【図4】図4は、本発明による重合用容器の下栓を示す垂直断面図である。
【図5】図5は、本発明によるロッド状プラスチック原料の重合完了後から次工程での使用状態にするまでの工程を示す図である。
【図6】図6は、本発明による重合装置の不活性ガス供給手段の他の実施形態を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明によるロッド状プラスチック原料が使用される原料供給装置を示す垂直断面図である。
【図8】図8は、本発明によるロッド状プラスチック原料が使用される1例である溶融押出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、図1および図7の上下を上下というものとする。
【0047】
この発明によるロッド状プラスチック原料は、図8に示した溶融押出装置におけるコア原料供給装置(71)およびクラッド原料供給装置(72)で使用するのに好適なものとなっている。
【0048】
図7は、コア原料供給装置およびクラッド原料供給装置として使用される原料供給装置を示しており、原料供給装置(1)は、加圧タンク(41)と、加圧タンク(41)内に加圧窒素ガスを導入するガス加圧手段(42)と、ロッド状プラスチック原料(R)を下方に移動させる原料送り手段(43)と、加圧タンク(41)の下端に連なって設けられている冷却部(44)および加熱溶融部(45)とを有している。
【0049】
原料送り手段(43)は、アクチュエータ(溶融量制御手段)(51)と、アクチュエータ(51)によって上下移動させられる送りロッド(52)と、送りロッド(52)の下端部に突出状に設けられた原料保持部(53)とを有している。原料保持部(53)には、おねじが形成されており、ロッド状プラスチック原料(R)に一体化されている接続部材(22)に形成されているめねじとねじ合わされるようになされている。
【0050】
加圧タンク(41)は、上下に開口部を有しており、各開口部に、めねじが形成された接続部(41a)(41b)が設けられている。加圧タンク(41)には、上下の中程に原料投入口(41c)が設けられており、加圧タンク(41)内は、その下部がロッド状プラスチック原料(R)の収納空間とされており、原料投入口(41c)には、これを密閉することができる扉(54)が設けられている。
【0051】
加圧タンク(41)の上方の開口部には、送りロッド(52)との間からの加圧ガスの洩れを防止する送りロッドシール手段(60)が設けられている。
【0052】
アクチュエータ(51)は、アクチュエータ機構を内蔵した本体(61)と、本体(61)外部にあってアクチュエータ機構によって移動させられるスライダー(62)とを有しており、送りロッド(52)は、その上端部がスライダー(62)に保持されている。本体(61)およびスライダー(62)は、加圧タンク(41)外部に配置されており、送りロッド(52)は、加圧タンク(41)の上端の開口部から加圧タンク(41)内に挿入され、加圧タンク(41)内において上下移動可能とされている。スライダー(62)は、図7に示した実線位置から二点鎖線位置まで移動可能とされており、スライダー(62)の下降に伴って、ロッド状プラスチック原料(R)が下端側から順次加熱溶融部(45)内に挿入されていくようになされている。
【0053】
アクチュエータ(51)の本体(61)には、スライダー(62)の移動を制御する手段が内蔵されており、このアクチュエータ(51)により、ロッド状プラスチック原料(R)の下方への降下を制御された速度で行うことができる。
【0054】
こうして、原料供給装置(1)において、ロッド状プラスチック原料(R)を下方に移動させながらその下先端を部分的に加熱して溶融状態で排出し、これが2層金型内に供給されることで、光伝送体が製造される。
【0055】
ロッド状プラスチック原料(R)は、直径が38mmとされ、塊状重合で成形されおり、この重合成形時に、原料供給装置(1)に接続するための接続部材(22)が一体化されている。
【0056】
図1から図4までには、この接続部材(22)付きのロッド状プラスチック原料(R)を塊状重合で得る際に好適なこの発明による重合用容器および重合装置を示している。
【0057】
図1において、重合装置(2)は、重合用容器(3)と、重合用容器(3)を加熱するためのオーブン(4)と、加熱中に重合用容器(3)に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段としての風船(5)とを備えている。
【0058】
重合用容器(3)は、図1および図2に示すように、上下両端が開口した筒状容器本体(11)と、容器本体の上下端部開口を閉鎖する上下栓(12)(13)と、容器本体(11)の上下端部に設けられて上下栓(12)(13)の外れを防止する上下押さえ部材(14)(15)とを備えている。
【0059】
容器本体(11)は、金属製の外筒(16)と、その内部に着脱可能に嵌め入れられたフッ素樹脂製の内筒(17)とからなる。
【0060】
上下栓(12)(13)は、耐食性に優れた金属(例えばハステロイ(商標名))製とされており、上下押さえ部材(14)は、熱伝導性が高い金属(例えばアルミニウム)製とされている。
【0061】
上栓(12)は、貫通状の通路(18)を有し、この通路(18)には、めねじが設けられて、ボールバルブ(流量制御用バルブ)(20)によって開閉可能な配管(19)が接続されている。
【0062】
下栓(13)は、容器本体(11)の下端開口に密着する外栓部(21)と、外栓部(21)に着脱可能に嵌め入れられた内栓部(22)とからなる。下栓(13)の内栓部(22)は、さらに、筒体(23)および軸体(24)の2部材に分離可能とされている。
【0063】
図2に示す重合用容器(3)は、重合成形準備工程における状態を示すもので、図1に示す重合成形工程における状態とは上下を逆(図2の上方に下栓(13)があり、下方に上栓(12)がある)にして使用されている。
【0064】
上栓(12)は、図4に示すように、1つの部材から形成されており、下栓(13)は、図3に示すように、外栓部(21)を形成する1つの部材と、内栓部(22)を形成する2つの部材(すなわち、筒体(23)および軸体(24))との計3つの部材からなる。
【0065】
上栓(12)の外周面は、テーパ状(下端側が小径)とされて、その下端部分が容器本体(11)内に挿入可能とされており、これにより、容器本体(11)からの液体状態のモノマーの漏れが防止される。
【0066】
下栓(13)の外栓部(21)の外周面は、テーパ状(上端側が小径)とされて、その上端部分が容器本体(11)内に挿入可能とされており、これにより、容器本体(11)からの液体状態のモノマーの漏れが防止される。下栓(13)の外栓部(21)には、これを貫通するめねじとされた中央孔(21a)が設けられている。
【0067】
下栓(13)の内栓部(22)の筒体(23)は、フランジ部(23a)を有しており、その外周面には、外栓部(21)の中央孔(21a)にねじ合わされるおねじ(23b)が形成されており、また、その内周面には、めねじ(23c)が形成されている。
【0068】
下栓(13)の内栓部(22)の軸体(24)は、図3(c)に示すように、筒体(23)のめねじ(23c)にねじ合わされるおねじが外周面に形成された軸部(25)と、軸部(25)の下端に設けられ外周面(26a)が六角柱状とされた頭部(26)とからなる。軸体(24)の上下長さは、筒体(23)の上下長さよりも大きくなされており、軸部(25)が筒体(23)にねじ合わされた状態で、軸体(24)の頭部(26)は、筒体(23)の下端よりも下方に突出しており、軸体(24)の軸部(25)の上端部は、筒体(23)の上端よりも上方に突出している。頭部(26)は、中空状とされて、その内周面には、めねじ(26b)が形成されている。
【0069】
上下押さえ部材(14)(15)は、円板状とされ、その外周縁部に等間隔で複数(例えば3つまたは4つ)の貫通孔(ねじ挿通孔)が設けられている。容器本体(11)の外筒(16)の上下端面には、上下押さえ部材(14)(15)の貫通孔に対応して、等間隔で複数のめねじ部が設けられており、複数本のねじ(25)によって、上下押さえ部材(14)(15)が外筒(16)に着脱可能に取り付けられている。容器本体(11)に上下栓(12)(13)を取り付けた状態で、上下押さえ部材(14)(15)を外筒(16)に取り付けて、複数本のねじ(25)を締め付けていくことにより、上下栓(12)(13)は、その外周面のテーパ面先端部が容器本体(11)内に入り込んでいき、容器本体(11)の上下開口を密封する。
【0070】
下栓(13)は、図2に示す重合成形準備工程においては、軸体(24)が取り外された状態(外栓部(21)に内栓部(22)の筒体(23)がねじ合わされた状態)で使用され、図1に示す重合成形工程においては、3つの部材が一体化された状態(外栓部(21)に内栓部(22)の筒体(23)がねじ合わされ、さらに、軸体(24)が筒体(23)にねじ合わされ状態)で使用される。
【0071】
図2において、重合用容器(3)には、液体状態のモノマー(M)が充填され、この後、重合用容器(3)の下方から不活性ガス(窒素ガス)が導入されることで、バブリング(酸素除去)工程が実施される。ここで、モノマー(M)の充填は、重合用容器(3)の上方から内栓部(22)の筒体(23)の中空部を使用してもよく、また、重合用容器(3)の下方から行うこともできる。すなわち、上栓(12)に設けられた貫通状通路(18)および配管(19)は、不活性ガスおよびモノマー(M)の流入用通路として使用可能であり、また、内栓部(22)の筒体(23)の中空部は、モノマー(M)の流入用通路および不活性ガスの排出用通路として使用可能である。
【0072】
図1において、重合用容器(3)は、上下が戻されて、オーブン(4)で加熱される。この際、不活性ガス供給手段としての風船(5)が上栓(12)の配管(19)に接続される。風船(5)には、窒素ガス(不活性ガスの1例)が充填され、重合時(加熱中)には、風船(5)内の窒素ガスによる圧力が重合用容器(3)に負荷される。
【0073】
上記の重合用容器(3)および重合装置(2)を用いて塊状重合を行う方法は、次のようなものとなる。
【0074】
まず、下栓(13)の軸体(24)を取り外して、重合用容器(3)に上栓(12)および下栓(13)(軸体(24)を取り外した状態のもの)を取り付けて、重合用容器(3)を上下逆にした状態でモノマー(M)を充填する。モノマー(M)の充填は、筒体(23)のめねじ(23c)をモノマー(M)の充填通路として使用することで、重合用容器(3)の上方から行うことができる。モノマー(M)の充填通路としては、下側に位置している上栓(12)の貫通状通路(18)および配管(19)を使用することも可能であり、この場合、筒体(23)のめねじ(23c)は、容器本体(11)内の空気が抜けていくための通路として使用される。
【0075】
次いで、重合用容器(3)を上下逆にしたままで、その下方から窒素ガスを導入して容器(3)上方から排出することでバブリング(重合用容器(3)内およびモノマー溶存の酸素を不活性ガスに置換)を行う。バブリング時間は、5〜30分間程度とされ、モノマーの種類や保管状態によって適宜調整される。
【0076】
次いで、ボールバルブ(20)を閉じるとともに、軸体(24)を取り付けることで下栓(13)を3部材(21)(23)(24)が一体化された状態とし、重合用容器(3)の上下を反転して上下を元に戻す。
【0077】
次いで、上栓(12)の配管(19)に真空ライン(図示略)を接続し、重合用容器(3)の内部を減圧状態にして脱気する。脱気時の重合用容器(3)の内部圧力は、0〜50kPa(abs)が好ましい。この脱気を行うことで、重合固化時に発生するボイドを低減させることができる。
【0078】
次いで、上栓(12)の配管(19)に不活性ガス供給手段としての風船(5)を接続し、減圧を窒素ガス(不活性ガス)によってパージして常圧とする。
【0079】
次いで、重合用容器(3)をオーブン(4)内に配置し、オーブン加熱する。重合時(加熱中)には、上栓(12)に接続された風船(5)内の窒素ガスで圧力をかけ続ける。これにより、内圧低下による外部からの酸素進入が無くなり、ポリマーの重合安定性が向上する。この状態で所定時間加熱することで重合が終了する。
【0080】
重合終了後、上下押さえ板(14)(15)、上栓(12)および外筒(16)を外し、図5(a)に示すように、容器本体(11)の内筒(17)より塊状重合物(ロッド状プラスチック原料)(R)を押し出す。図5(b)に示すように、下栓(13)の内栓部(22)は、軸体(24)の上端部がロッド状プラスチック原料(R)に食い込んだ状態で、ロッド状プラスチック原料(R)に融着して一体化されている。そして、図5(c)に示すように、この下栓(13)から外栓部(21)を取り外す。
【0081】
外栓部(21)は、容器本体(11)の下端開口を閉鎖する必要から、テーパ状とされて、その外径がロッド状プラスチック原料(R)の外径よりも大きくなされている。この外栓部(21)がロッド状プラスチック原料(R)に残ったままでは、図7に示す原料供給装置(1)で使用される際、加圧タンク(41)の下端にある開口部と干渉して、ロッド状プラスチック原料(R)を移動させる際の障害になる。そこで、この外栓部(21)を取り外すことにより、内栓部(22)が接続部材(原料保持部(53)に形成されたおねじにねじ合わせ可能なめねじ(26b)が形成された部材)として残り、図5(c)に示した接続部材(22)付きロッド状プラスチック原料(R)が得られる
この接続部材(22)付きロッド状プラスチック原料(R)は、追加の切削を行うことなく、図7に示す原料供給装置(1)での使用が可能であり、原料保持部(53)に形成されたおねじと、ロッド状プラスチック原料(R)に一体化されている接続部材(22)に形成されているめねじ(26b)とをねじ合わせることで、原料供給装置(1)に容易に取り付けることができる。
【0082】
フッ素樹脂製の内筒(17)は、洗浄することで繰り返して使用することができる。容器本体(11)は、重合時および重合後の温度変化(冷却)によるロッド状プラスチック原料(R)の体積変化の影響を受けやすいことから、これををフッ素樹脂だけで形成すると、ロッド状プラスチック原料の変形(反り)が生じる可能性がある。上記のように、フッ素樹脂製の内筒(17)と金属製の外筒(例えばアルミニウム製で変形しにくい厚手のもの)(16)とからなる二重筒の容器本体(11)とすることにより、フッ素樹脂製の内筒(17)の変形(ロッド状プラスチック原料(R)の変形)を防止することができ、しかも、容器本体(11)を熱伝導性に優れたものとできる。
【0083】
上記の風船を使用した不活性ガス供給手段(5)は、装置を簡素化できる点で有利であるが、圧力を一定に保つことが困難という問題がある。図6は、この問題を解消できる不活性ガス供給手段を示しており、この不活性ガス供給手段(6)は、窒素ガスボンベ(不活性ガスの供給源)(31)と、窒素ガスボンベ(31)出口部に設けられて窒素ガスの圧力を調整するレギュレータ(32)と、1または複数(図示は3つ)の重合用容器(3)の上栓にそれぞれ接続される分岐管(33a)を有し一端側(上流側)がレギュレータ(32)に接続された配管(33)と、配管(33)の他端側(下流側)に接続された排気貯め用の風船(34)と、レギュレータ(32)の出口部(配管入口側)および風船(34)の入口部(配管出口側)にそれぞれ設けられた計2つの逆止弁(35)(36)とからなり、配管入口側の逆止弁(35)の設定圧力が配管出口側の逆止弁(36)の設定圧力よりも小さくなされている。
【0084】
この不活性ガス供給手段(6)によると、レギュレータ(32)によって重合用容器(3)に送られる窒素ガスの圧力が調整され、重合用容器(3)の内圧が高くなって、配管出口側の逆止弁(36)の設定圧力よりも高くなると、排気貯め用の風船(34)に窒素ガスが排気されることにより、重合用容器(3)の内圧が2つの逆止弁(35)(36)の設定圧力間の圧力に維持される。これにより、風船(5)を使用する場合に比べて、重合をより安定したものとすることができる。重合時の重合用容器(3)の内部圧力は、10〜500kPa(G)が好ましい。
【符号の説明】
【0085】
(1) 原料供給装置
(2) 重合装置
(3) 重合用容器
(5) 風船(不活性ガス供給手段)
(6) 不活性ガス供給手段
(11) 容器本体
(12) 上栓
(13) 下栓
(14)(15) 押さえ部材
(16) 外筒
(17) 内筒
(18) 通路
(19) 配管
(20) ボールバルブ(流量制御用バルブ)
(21) 外栓部
(21a) 中央孔
(22) 内栓部(接続部材)
(23) 筒体
(23c) めねじ
(24) 軸体
(43) 原料送り手段
(53) 原料保持部
(R) ロッド状プラスチック原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド状とされたプラスチック原料を下方に移動させながらその下先端を部分的に加熱して溶融状態で排出する原料供給装置において使用されるロッド状プラスチック原料であって、塊状重合で成形されるとともに、原料供給装置に接続するための部材が重合時に一体化されていることを特徴とするロッド状プラスチック原料。
【請求項2】
ロッド状プラスチック原料を塊状重合で成形するための重合用容器であって、上下両端が開口した筒状容器本体と、容器本体の上下端部開口を閉鎖する上下栓と、容器本体の上下端部に設けられて上下栓の外れを防止する上下押さえ部材とを備えており、上栓は、貫通状の通路を有し、下栓は、中央孔を有し容器本体の下端開口に密着する外栓部と、外栓部の中央孔に着脱可能に嵌め入れられ重合終了後にロッド状プラスチック原料に一体化されることで原料供給装置への接続部材となる内栓部とからなることを特徴とする重合用容器。
【請求項3】
下栓の内栓部は、内周面にめねじが形成された筒体と、外周面におねじが形成されて筒体にねじ合わされた軸体とからなり、軸体の上下端部は、筒体の上下端より突出させられていることを特徴とする請求項2の重合用容器。
【請求項4】
容器本体は、金属製の外筒と、その内部に着脱可能に嵌め入れられたフッ素樹脂製の内筒とからなり、上下押さえ部材は、外筒に取り付けられていることを特徴とする請求項2または3の重合用容器。
【請求項5】
上栓の貫通状通路に、流量制御用バルブによって開閉可能な配管が接続されている請求項2から4までのいずれかに記載の重合用容器。
【請求項6】
請求項5に記載の重合用容器を使用して、ロッド状プラスチック原料を塊状重合成形によって得るための重合装置であって、重合用容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段が上栓の通路に接続された配管に接続されていることを特徴とする重合装置。
【請求項7】
コア層およびクラッド層用の2層金型の上流側にコア原料供給装置およびクラッド原料供給装置を配置し、各原料供給装置において、ロッド状プラスチック原料の下端部を加熱溶融させて2層金型に供給し、2層金型内において、コア層およびクラッド層からなる光伝送体を形成する光伝送体の製造方法において、
各原料供給装置における加熱溶融工程において、各原料供給装置に設けられた原料送り手段の原料保持部に請求項1に記載のロッド状プラスチック原料の接続部材を接続し、原料送り手段によってロッド状プラスチック原料を下方に移動させることを特徴とする光伝送体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−194310(P2012−194310A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57550(P2011−57550)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】