説明

ロトライニング法

本発明は、(a)アンダーコートが粉末添加剤も含有し、かつオーバーコートが、好ましくは、アンダーコートより厚い無気泡のコーティングを形成する安定化されたコポリマーである多層コート系の、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーによる中空物品の内部表面のロトライニング、(b)アンダーコートが、安定化されたコポリマーまたは安定化されていないコポリマーである実施形態、(c)単層コート系としてのアンダーコートの使用、(d)組成物中に存在する接着促進性無気泡促進性金属粉末の存在から生じる、表面に接着する無気泡のコーティングを形成するための組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロトライニングポリマーとしてテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを用いるロトライニング法、およびロトライニング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(非特許文献1)に、所望の厚さのフルオロポリマーによって容器の内部表面をコーティングするために十分な粉末形状のフルオロポリマーを鋼容器へ添加する工程と、それに続いて、オーブン中三次元で容器を回転させてフルオロポリマーを融解する工程とを伴うロトライニング法が記載されている。この方法によって、容器の内部表面はフルオロポリマーによって被覆されて、そして継目のないライニングが形成される(第315頁)。得られるフルオロポリマーライニングは、ライニングを形成するフルオロポリマーの化学的不活性のため、そしてライニングが存在しない場合に腐食材料に暴露される容器の内部表面に関してライニングが連続的であるため、容器に貯蔵されるか、または容器が取扱う腐食性材料から容器を保護する。従って、ライニングには、空孔や、ピンホールさえも存在せず、すなわち、それらを通して腐食性材料がライニングを浸透して容器の構造材料を攻撃することはない。
【0003】
また(非特許文献1)は、容器とフルオロポリマーライニングとの間の関係を明らかにしている。いくつかのフルオロポリマー、特に、エチレンとテトラフルオロエチレン(ETFE)またはクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)のいずれかとのコポリマー、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)に関して、ライニングは容器の内部表面に接着するが、ペルフッ素化された融解加工可能なポリマー、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン(FEP)およびテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFA)に関して、かかるポリマーは、容器内に密着しないライニングのみを形成する(第314頁)。ロトライニングに利用可能なPFAは、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)である。密着しないライニングは、容器の内部表面の形状によってその位置に保持され、すなわち機械的にその位置に閉じ込められて、容器に必要な保護を提供する。ライニングが密着しない理由は、ライニングされた容器がロトライニング操作から冷却される時の、ペルフッ素化ポリマーの収縮の高さから生じる。PFAの収縮はFEPの収縮よりもさらに高く、容器の内部表面からのライニングの分離が引き起こされる。これは、いくつかの適用においては満足できるものであるが、ライニングと容器の内部表面との間の接着性の不足は、特に、パイプの長さが増加する時にライニングの運動における機械的抑制の機会が制限される、パイプのような容器において不都合となる。パイプを通る油のような腐食性材料の通路は、特に、材料の流れおよび/または温度が変動する場合、ライニングに機械的応力を受けさせ、これによってライニングの亀裂および不良が引き起こされ得る。
【0004】
(特許文献1)は、PFAを使用する容器のロトライニングを開示する。PFAは、ロトライニング間に気泡を発生するため、PFAに微細粉末を0.1重量%〜30重量%添加することによって、気泡発生の問題を解決している。微細粉末としては、ガラス、ケイ素、亜鉛、アルミニウム、銅等のような無機粉末または金属粉末が開示されている。微細粉末の好ましい量は5重量%であり、そして得られるライニングは厚さ2.0mm(80ミル)である。ロトライニングされたコーティングの接着性に及ぼす影響については開示されていない。しかしながら、微細粉末の影響は開示されており、すなわち、外側に放出されるように自由に移動する微細粉末粒子への気泡の接着が引き起こされ、それによって、気泡がコーティング中に残らないことが記載されている。しかしながら、この特許は、微細粉末の存在がもう1つの問題を引き起こすこと、すなわち、微細粉末がコーティングの表面上に沈着して、容器に貯蔵される化学薬品中で汚染物質となることが開示されている。この特許は、ライニング(第1の層)上に、微細粉末を含まない第2のロトライニング層を適用することによって、この問題を解決している。第2の層における気泡形成が小さいように、第2の層は第1の層よりも薄く保持され、そして第2の層の厚さは0.5mm〜1.0mm(20ミル〜40ミル)であることが開示されている。
【0005】
(特許文献1)において、容器の基礎をなす内部表面を、容器中に貯蔵される化学薬品から確実に保護するために第1の層が十分に厚くなければならないことと同様に、容器中に貯蔵される化学薬品が、第1の層に存在する微細粉末と確実に接触しないように、第2の層が十分に厚くなければならない。残念ながら、1.0mmの第2の層の厚さは薄すぎるため、第1の層を確実に、第2の層によって完全に被覆することはできない。コーティングされる表面上のPFA粉末の沈着の均一性が制御不可能であるため、典型的に、ロトライニングは厚さが不均一である。
【0006】
【特許文献1】日本特許第2904593号公報(1992年9月24日に特開平4−267744号公報として公開された)
【特許文献2】欧州特許第0 226 668 B1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,632,902号明細書
【特許文献4】米国特許第6,624,269号明細書
【特許文献5】米国特許第5,981,673号明細書
【非特許文献1】J.シャイルズ(J.Scheirs)、モダン フルオロポリマーズ(Modern Fluoropolymers)、ジョン ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons)(1997)
【非特許文献2】J.シャイルズ(J.Scheirs)、モダン フルオロポリマーズ(Modern Fluoropolymers)、ジョン ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons)(1997)第376頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PFAの第1の層(アンダーコート)への添加剤が、ロトライニングされる物品の内部へと漏出することを防ぎ、そしてライニングされる物品の内部表面にPFAロトライニングを接着することの課題は、なお解決されずに残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
保護の役割を果たすために、ライニングに空孔が存在してはならないことは上記された。従って、ライニング中に空隙を形成する気泡が、ライニングに存在してはならない。また気泡は、(腐食性材料に面する)ライニングの表面の不規則性を形成する不都合を有する。これは、腐食性材料の流れにおける不規則性、およびライニングによる腐食性材料の包括点を引き起こし、ライニングを通してのその後のプロセスの流れにおいて汚染を引き起こす。本発明は、ロトライニング条件下で気泡を形成しない安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー(PFA)を使用する。コポリマーを安定化する方法はいくつかあり、不安定末端基を安定末端基へと変換することが挙げられる。かかる方法の1つは、(特許文献2)に記載されている。ここでは、PFAコポリマー顆粒(粒子)はフッ素処理を受け、コポリマーの不安定末端基、特に−COOH、−CONH、−CHOH、−COCH、−CF=CFおよび−COF末端基が最も安定な末端基−CFに変換され、そして得られるフッ素化コポリマーは、(総量で)炭素原子10個あたり80個未満の不安定末端基を有する。不安定末端基の不安定性は、ロトライニングを形成するためのコポリマーの融解に伴う加熱間のHFおよびCOのような揮発性生成物への分解によって現れ、これらの揮発性生成物は、ライニング中で気泡を形成する。(特許文献2)の実施例2に、安定化(フッ素化)されたコポリマーは、無気泡のライニングをもたらすが、フッ素化されていないコポリマーは、気泡および塊状物を有するライニングをもたらすことが記載されている。塊状物は、ライニング上面上に突出する被包性気泡であり、被包は破裂を受けて、それによってライニング中に空孔が形成する。残念ながら、安定化されたPFAのライニングは、適用された表面に接着せず、そしてPFAライニングとの機械的結合を形成するライニング表面の幾何学によってのみ、その位置に保持される。
【0009】
本発明は、無気泡であり、かつロトライニングされる表面に接着性である単層コートPFAロトライニング、ならびに接着性、無気泡の多層コートPFAロトライニングを提供する。
【0010】
多層コートの実施形態に関して、本発明は、粉末添加剤を含有するテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーのアンダーコート上のオーバーコートとしての安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの使用を伴う。従って、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの粒子と、接着促進粉末添加剤とを含む組成物によって、中空物品の内部表面をロトライニングして、前記内部表面上に接着性、無気泡のアンダーコートを形成する工程と、前記アンダーコート上に、ロトライニングされたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの無気泡のオーバーコートを形成する工程とを含む方法であって、前記オーバーコートを形成する前記コポリマーが安定化されたコポリマーであり、かつ前記オーバーコートの厚さが、前記アンダーコートの厚さの少なくとも約2/3である方法として、この実施形態を記述することができる。アンダーコートを形成するコポリマーは、好ましくは安定化されているが、安定化されていないテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーを使用することができ、そして粉末添加剤が、この安定化されていないコポリマーのロトライニングの間の気泡形成を防ぐ。好ましくは、オーバーコートの厚さは、アンダーコートの厚さより大きい。最も好ましくは、オーバーコートの厚さは少なくとも約1.5mm(60ミル)である。安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)の使用は、アンダーコート中の粉末による中空物品に含有される流体の汚染を防ぐための、PFAの厚いオーバーコートの形成を可能にする。
【0011】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、単層ロトライニングコーティング(ライニング)としての安定化されたPFAの使用を伴い、それによって、ロトライニング法によってPFA粉末から形成される時のアンダーコートにおける気泡形成を防ぐ目的のために、このPFAに粉末を添加することは不必要である。この実施形態を、安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの粒子と、接着促進性無気泡形成粉末とを含む組成物を、中空物品の内部へ添加する工程と、前記物品を回転させて、前記内部表面上に組成物を分配する工程と、前記物品をそれが回転させている間に加熱して、前記コポリマー粒子を融解させ、前記内部表面に接着している前記コポリマーおよび前記粉末を含む連続的なライニングを形成する工程と、前記物品を冷却する工程とを含む方法として記載することができる。ロトライニング組成物中に存在する粉末のため、かかるライニングは、無気泡および平滑であり、そしてそのようにしてロトライニングされた物品の内部表面に対して接着性である。ロトライニング法の間に安定化されたPFAからの気泡が存在しないことは、コーティング表面への気泡の運搬において粉末が占有されないことを意味する。その代わり、粉末は、物品の内部表面にコーティングを接着させる特有の機能を提供する。かかる好ましい粉末の例は、この接着性の結果をもたらす粉末のような金属粉末であり、亜鉛、銅およびスズ、ならびにそれらの組み合わせである。これらの金属粉末は、それら自体がコーティングにおいて気泡形成を引き起こさない。アルミニウムおよび酸化アルミニウム粉末は、両方とも、PFAが安定化されたものであってもコーティングにおいて気泡形成を引き起こす。前記組成物に存在する、金属粉末を含む、接着促進性無気泡形成粉末の量は少なく、約5重量%未満である。最大接着性は、一般的に、約2重量%以下の粉末を使用して達成される。達成される接着性に対して必要とされるものよりも多い粉末を使用することに、利点はない。より多い量の粉末は、汚染物質になる不都合、およびコーティングの強靭性を悪化させる不都合を有する。驚くべきことに、これらの少量の粉末は、ロトライニングされた物品の内部表面にライニングを接着させる。多層コートライニングを形成するために、上記第1の実施形態との組み合わせで、本発明の本実施形態を使用することができる。
【0012】
安定化されていないテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーを用いて上記単層コートロトライニング法を実行することができる。ここでは、別のロトライニング法では形成される気泡は粉末の存在によって防がれる。
【0013】
本発明のもう1つの実施形態は、無気泡の接着性ロトライニングコーティングを得るために使用される組成物であって、安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの粒子と、接着促進性無気泡促進性粉末と、および安定化されていないテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーの粒子と、接着促進性無気泡形成粉末とを含む組成物である。単層コーティングを形成するために、または上記第1の実施形態におけるアンダーコーティングとして、この組成物を使用することができる。本発明のもう1つの態様は、上記ロトライニング法によるように、組成物(コポリマー)の融解および冷却によって、本発明の組成物から形成されたライニング(コーティング、フィルムまたはシート)の組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ロトライニングの加工工程は、単層コート適用のためのロトライニング材料として、安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの粒子を単独で使用する従来のものである。従って、コポリマーが添加された後および回転工程開始の前に、物品の中空内部が密封されることは理解される。典型的に、ライニングされる中空物品の内部表面は、炭素鋼またはステンレス鋼のような鋼から製造される。
【0015】
本発明は、ロトライニングにおいて使用される組成物、および/またはそれによって形成された特定のロトライニング層、あるいはロトライニングによって製造された層の組み合わせに関する。単層コーティングとして(特許文献2)に開示されるロトライニング工程および安定化されたコポリマーを使用することができる。この刊行物において、コポリマーの水性分散系のゲルを形成する工程と、水非混合性液体の存在下でゲルを機械的に撹拌して顆粒を形成する工程と、それに続く顆粒の乾燥工程とを伴う溶媒補助造粒によってコポリマーの粒子を調製する。得られる顆粒は、200μm〜3000μmの平均粒径を有し、そして1.5未満の球体係数によって示されるように実質的に球体形状を有する。本発明において使用されるコポリマーの粒子は、単層コート、アンダーコートまたはオーバーコートのいずれとして使用される場合でも、この刊行物に開示される様式で調製することができ、得られる顆粒は、そこに記載のものと同一の粒径および球体形状を有し、またこれらの特徴は、この刊行物に開示されるように決定される。またこれらのコーティングのいずれかのためのコポリマー粒子を、他の方法によって、例えば、米国特許公報(特許文献3)に開示されるように、コポリマーの融解押出および押出物のミニキューブへの切断によって、製造することもできる。この場合、キューブの平均粒径は、200μm〜1200μmである。従って、本発明において使用されるコポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは100μm〜3000μmであり、より好ましくは約400μm〜1100μmである。
【0016】
コポリマー粒子は、自由流れになるように粒子を硬化するために十分な時間、粒子の融解を回避するために、融解開始より低い温度まで粒子を加熱することによって、熱硬化可能でもある。(特許文献2)に開示されるように、熱硬化は、少なくとも60の摩擦係数を示す粒子を特徴とする。
【0017】
コポリマー自体は、典型的に、テトラフルオロエチレンと、アルキル基が1〜8の炭素原子、好ましくは1〜3の炭素原子を含有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)との水性分散系共重合によって製造される。ビニルエーテルコモノマーは、1つまたは複数のビニルエーテルであり得る。得られるコポリマーは、水性分散系媒体中で微細粒子として形成され、これらの微細粒子は約0.2μmの平均粒径を有し、これはしばしば、一次粒子径と称される。本発明の方法において使用されるコポリマー粒子は、一般的に、(特許文献2)の造粒法によって調製された時に一次粒子の凝集であるという意味で、二次粒子である。粒子が押出/切断によって製造される場合も、それらは最初の一次粒子より大きい。
【0018】
コポリマーは、典型的に、約0.4モル%〜10モル%のビニルエーテルコモノマーを含有し、残りはテトラフルオロエチレン単位であって、そして所望であればビニルエーテルコモノマーのモル量未満の少量の他のコモノマーを含有し得る。かかるコポリマーの例は、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)とのコポリマー(MFAとも称される)、ならびにテトラフルオロエチレンとペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)またはPPVEのコポリマーである。MFAは、主コモノマーがペルフルオロ(メチルビニルエーテル)であるテトラフルオロエチレンをベースとするペルフルオロポリマーとして文献に記載されている(非特許文献2)。米国特許公報(特許文献4)は、MFAについての追加的な組成上の情報を開示しており、すなわち、追加的なコモノマーはPPVEであり、そしてMFAに関して次の組成が開示される:TFEのコポリマー、0.5重量%〜13重量%のPMVE、および0.5重量%〜3重量%のPPVE。テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーの製造業者は、このコポリマーをPFAから明白に識別するために、それが導入された場合、このコポリマーをMFAと称する。しかしながら、最近では、製造業者はMFAをPFAの一種と称し、そしてその解釈、すなわちPFAがMFAを含むことは、本発明の適用に関しても採用される。
【0019】
またテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーは、典型的に、ASTM D 3307に開示される手順によって決定されるように、372℃において約1g/10分〜50g/10分のメルトフロー速度(MFR)、より好ましくは約2g/10分〜30g/10分を示す。もちろん、MFRを有することによって示されるように、コポリマーは融解加工可能である。これらのMFRを有するコポリマーは、融解状態において適切な流れを示し、コポリマー粒子を連続ライニングへと変換し、そしてライニングに関しては、ロトライニングされた物品の使用に関連する熱的および機械的衝撃に耐性を示す十分な強靭性を有する。コポリマーは部分的に結晶性であっても、または非晶質であってもよい。好ましくは、コポリマーは部分的に結晶性である。部分的に結晶性とは、ポリマーがいくらかの結晶性を有し、かつASTM D 3418に従って測定される検出可能な融点および少なくとも約3J/gの融解吸熱を特徴とすることを意味する。前記定義に従って結晶性ではない融解加工可能なポリマーは、非晶質である。非晶質ポリマーとしては、ASTM D 3418に従って測定されるように約20℃未満のガラス転移温度を有することによって識別されるエラストマーが挙げられる。
【0020】
上記PFAコポリマーは、安定化されていても、安定化されていなくても、本発明で使用される単層、アンダーコートおよびオーバーコート(安定化されたコポリマー)ロトライニング組成物において使用される基礎的なフルオロポリマーである。TFE/PPVEコポリマーは約305℃の融解温度を有し、TFE/PEVEコポリマーは約280℃の融解温度を有し、そしてTFE/PMVE/PPVEコポリマーは約270℃の融解温度を有する。アンダーコートおよびオーバーコートコポリマーは、同一または異なるものであり得る。しかしながら、後者の場合、オーバーコート中のコポリマーの融解温度が、アンダーコート中のコポリマーの融解温度以下であることが望ましい。
【0021】
不安定なPFAコポリマーの安定化に関して、(特許文献2)に記載の通り、本明細書に記載のコポリマーの多くは、加熱時に、ロトライニングにおいて気泡および空隙を引き起こすCOおよびHFのような揮発性生成物に分解し得る不安定末端基を有する。この刊行物において、コポリマー中の不安定末端基数を、コポリマー中に存在する炭素原子10個あたり約80個未満となるまで減少させるために十分な時間、コポリマー粒子をフッ素に暴露することによって、コポリマーを安定化させる。本発明で使用されるコポリマー粒子において、同一終点に達するように、このフッ素処理を使用することができ、これらの末端基の合計は、炭素原子10個あたり約80個未満の不安定末端基、好ましくは炭素原子10個あたり約50個未満、より好ましくは約10個未満、そしてさらにより好ましくは約3個未満の不安定末端基である。「不安定末端基」は、−COOH、−CONH、−CHOH、−COCH、−CF=CFおよび−COFを意味する。これらの末端基をフッ素に暴露することによって、これらの不安定末端基は非常に安定な−CF末端基へと変換される。(特許文献2)に、不安定末端基に関する分析が開示されている。−CFH末端基を含有するMFAは、中間レベルの安定性を有する。中空物品の内部表面においてロトライニングとして単独で使用されるかかるコポリマーは、コーティングの形成間に気泡を形成するが、コポリマーが分解しないようにロトライニング温度およびロトライニング時間(層厚)の選択において注意を払えば、かかるコポリマーは無気泡のロトライニングオーバーコートを形成可能である。コポリマーが炭素原子10個あたり約80個未満のかかる末端基を有するような、上記不安定末端基の代わりに−CFH末端基を含有するMFAコポリマーは、それにもかかわらず、本発明の単層またはアンダーコートの態様に関して不安定であり、すなわち、コポリマー単独ではロトライニング間に気泡を形成するが、本発明のオーバーコート層の態様に関して安定であると考えられる。
【0022】
また、ロトライニング法において気泡形成せず、場合によっては平滑な無気泡の単層コート、アンダーコートまたはオーバーコートを形成するということによっても、コポリマーの安定性を特徴付けることができる。平滑とは、クレーターまたは空隙または塊状物がライニングの表面上に存在しないことを意味する。塊状物は、ライニングの暴露表面から突出する被包性気泡である。また、空隙が存在しないことは、ライニングが、ロトライニングされる中空物品の内部表面上に連続コーティングを形成することを示す。無気泡とは、ライニングにおいて気泡が肉眼では見えず、そして空隙またはクレーターのような気泡の残りのいずれも見えないことを意味する。中空物品の内部表面と接触するロトライニングに関する安定性の必要条件は、オーバーコートに関するものよりも大きい。フルオロポリマーの安定化がない場合、融解フルオロポリマーと内部表面との間の接触は気泡形成を促進する。オーバーコートは内部表面と接触しないため、この気泡促進供給源は存在しない。安定化されていないTFE/PPVEコポリマーオーバーコートは、少なくとも1.3mm(50ミル)の通常のオーバーコート厚において、それにもかかわらず気泡を形成するが、TFE/PMVE/PPVEコポリマーは、−CFである優勢な末端基を有さず、特に代わりに−CFH末端基を有する場合、コポリマーを長時間、高温まで加熱しないことによって、無気泡のオーバーコートを形成し得る。しかしながら、より高い加工寛容度を提供するために、好ましくは、安定化されたPFAからオーバーコートを形成する。
【0023】
平滑な無気泡のロトライニング結果を達成するためのコポリマーの安定化を、フッ素処理以外の方法、または重合からの回収後のコポリマーの他の末端基の安定化処理、および粒子を形成することによって得ることができる。例えば、形成時のコポリマーが、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシまたはペルクロロアルキルのような安定末端基によって形成される、米国特許公報(特許文献5)に開示される重合法によるような共重合法において形成されるように、コポリマーを安定化することができる。
【0024】
本発明の第1の実施形態に従って、粉末添加剤を含有するテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーアンダーコート上のオーバーコートとして安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを使用し、安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを単独で、すなわち粉末添加剤を存在させずに使用して、オーバーコート(トップコートの形成)を実行する。各コポリマー中のアルキル基は、1〜8、好ましくは1〜3の炭素原子を含有し得、そしてビニルエーテルコモノマーは、かかるコモノマーの1つまたは複数であり得る。コポリマーは、ライニング(アンダーコート)中で使用されるコポリマーと同一であっても、または異なってもよい。オーバーコートの役割は、アンダーコート中の粉末添加剤から、ロトライニングされた物品の内容物を保護しながら、中空物品中に含有される(通過するか、または内部に保持される)流体から、中空物品の内部表面を保護するために望ましいライニング厚を完成することである。粉末添加剤は、コポリマーアンダーコート中に分散される微細形状のいずれかの無気泡形成材料であり得、かかる材料はアンダーコート内で不連続であり、かつアンダーコートから解放可能であり、すなわち、粉末は、アンダーコートのコポリマーに接着しない。トップコートとしてのオーバーコートは、加工流体に対して純粋な化学的に不活性なコポリマーを提供する。ライニング(アンダーコート)を形成するために使用されるものと同一のロトライニング法によって、アンダーコートを冷却後、オーバーコートを適用することができる。すなわち、すでにライニングされた中空物品の内部に安定化されたコポリマーの粒子を添加し、そして中空物品を再加熱して、オーブン内で回転し、PFAコポリマー/粉末添加剤ライニング上で、物品の中空内部中に充填されたコポリマー粒子による安定化されたコーティングの形成を引き起こす。
【0025】
上記の通り、好ましくは、オーバーコートの厚さは、アンダーコートの厚さより大きい。アンダーコートは中空物品の内部表面に接着し、そしてアンダーコートとポリマー的に類似するオーバーコートはアンダーコートに接着し、それによって、厚く接着したテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの全コーティングが中空物品の内部表面上に形成される。オーバーコートが、少なくとも約0.75mm(30ミル)、より好ましくは少なくとも約1.5mm(60ミル)、そしてさらにより好ましくは少なくとも約2.5mm(100ミル)の厚さを有し、そして全コーティング、すなわちアンダーコートおよびオーバーコートが、少なくとも約2.25mm(90ミル)、好ましくは少なくとも約2.75mm(110ミル)、そしてさらにより好ましくは少なくとも4mm(160ミル)の厚さを有することが好ましい。オーバーコートは、より厚く、例えば約100mm(4000ミル)までであってもよく、そしてまた全層厚もより厚く、例えば約125mm(5000ミル)までであってもよい。
【0026】
またアンダーコートは、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマーでもある。アルキル基は、1〜8、好ましくは1〜3の炭素原子を含有し、そしてビニルエーテルコモノマーは、かかるコモノマーの1つまたは複数であり得る。コポリマーは、オーバーコート中で使用されるコポリマーと同一であっても、または異なってもよい。アンダーコート中のコポリマーは、好ましくは安定化されており、すなわち、粉末を存在させずに、無気泡のライニングを形成することが可能である。前記の通り、安定化処理による末端基の結果の点から安定化を記述することができ、例えば、上記MFRを特徴とするコポリマーを形成するために過硫酸カリウムのような無機塩を使用して実行された重合の結果である炭素原子10個あたり総数で少なくとも約400個の不安定末端基を含有する重合時のコポリマーと比較して、炭素原子10個あたり80個未満の不安定末端基を含有するコポリマーである。簡略化の目的のため、炭素原子10個あたり(総数で)少なくとも約80個の不安定末端基を有するコポリマーを不安定であるものとして考える。
【0027】
アンダーコートは、コポリマーおよび接着促進性無気泡促進性粉末を含む組成物であるアンダーコートを形成するために使用されているコポリマーによって、中空物品の内部表面に接着するように製造される。かかる粉末は、上記粉末添加剤であってもよい。好ましい粉末は、亜鉛、スズまたは銅、あるいはそれらの組み合わせのような金属粉末である。金属粉末の組み合わせの例は、それらの物理的混合物および合金である。合金の例としては、Zn/Cu(黄銅)およびCu/Sn(青銅)が挙げられる。またこれらの粉末は、注意が払われずに、長時間、高温でこのコポリマーを加熱した場合に、MFAコポリマーの気泡形成を防ぐことができる。アルミニウムまたは酸化アルミニウムのようないくつかの粉末添加剤は、ロトライニング法の間にロトライニング組成物中で気泡形成を引き起こし、従って適切ではない。ロトライニング組成物の粉末成分は、典型的に、約100μm以下、好ましくは約60μm未満の粒径を有する。粉末粒子に関して、約1μm未満である必要はない。その結果として、少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約90重量%の粉末粒子が、約1μm〜100μmの径である。粉末を、安定化されたコポリマーまたは安定化されていないMFAの粒子と単純に混合して、ロトライニングされる中空物品の内部に添加される組成物を形成することができる。使用する場合は、フッ素が粉末と反応しないように、フッ素化処理後、粉末とコポリマーとの混合を実行する。
【0028】
コポリマーが安定化されていても、されていなくても関係なく、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの融解密度は約1.74g/ccであり、そして室温まで冷却後のコポリマーの密度は約2.15g/ccである。融解状態と固体状態との間の密度におけるこの大きな差異は、融解からのロトライニングの冷却時の大きな収縮を示し、これは、グリットブラストによって内部表面を粗くした場合でさえも、コポリマーライニングが中空物品の内部表面に接着しない理由である。驚くべきことに、コポリマーと混合された少量の粉末は、ライニングを内部表面へと接着させるために十分であり、好ましくは少なくとも約25lb/インチ(4.4kN/m)の剥離強度を達成する。かかる粉末の量は、少なくとも約0.2重量%、好ましくは0.3重量%〜1.2重量%、より好ましくは約0.4重量%〜1.0重量%である。本明細書に開示される重量%は、コポリマー/粉末組成物の総重量をベースとする。少なすぎる量の粉末は、所望の接着性を与えず、そして粉末の量が約1.2重量%を超えると、接着性のさらに明らかな改善は得られない。代わりに、接着性は減少し、そしてアンダーコートの強靭性も減少する。ロトライニング組成物を形成するコポリマーと粉末との混合物は、得られるロトライニングにおいて保持され、すなわち、ライニングは、ライニングを形成するコポリマー中の粉末の分散系である。
【0029】
アンダーコートは、少なくとも約0.75mm(30ミル)、好ましくは少なくとも約1.25mm(50ミル)、そしてさらには約25mm(1000ミル)までの厚さを有し得るが、約1.25mm〜2.5mm(50ミル〜100ミル)の厚さが好ましい。ライニングの厚さは、ライニングの最も薄い点の厚さである。平面を有するロトライニングされる内部表面は、平面の中心付近でより薄い領域を有するロトライニングを受ける傾向があるが、円筒形内部表面は均一な厚さのロトライニングを受ける傾向がある。
【0030】
アンダーコートを形成するコポリマーが安定化されたコポリマーである場合、粉末添加剤は、接着を引き起こすという単一目的に役立つ。コポリマーが安定化されていないMFAである場合、粉末は、ロトライニング間のMFAの気泡形成を防ぐという追加目的に役立つ。
【0031】
本発明のもう1つの態様は、単層ロトライニングコーティング、すなわち、オーバーコートが存在しないものを形成するための好ましい安定化されたコポリマー/粉末組成物の使用である。コーティングの表面への粉末の移送に関してロトライニング間にコーティング中で形成する気泡が存在しないため、そしてさらに、組成物中の粉末濃度は非常に低く、従って、ロトライニングされた物品中に含有される流体の汚染の可能性が最小化されるため、この単層は多くのロトライニング適用において有用である。
【実施例】
【0032】
以下の実施例において、使用されたフルオロポリマーは、6g/10分のメルトフロー速度を示す市販品として入手可能なテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーである。コポリマーは、475μmの平均粒径を有する粒子形状である。これらの粒子は、特記されない限り、フッ素処理されて、炭素原子10個あたり10個未満の不安定末端基を有する安定化されたコポリマーを形成する。金属粉末を使用する場合、かかる粉末はタルカムパウダーの粉末度を有し、少なくとも約90重量%の粉末粒子が2μm〜40μmの範囲の粒径を有する。コポリマー粒子を所望の量の金属粉末と乾燥混合することによって、実施例で使用するロトライニング組成物を調製する。得られた組成物(混合物)を、所望のライニング厚が得られる量で、ロトライニングされる型中に添加する。型は、本のような平坦な矩形の箱型であり、2つの主要対立内部表面が、ライニングされる基材の試験パネルであり、そして残りの小さい方の内部表面は、その位置に試験パネルを保持し、そしてロトライニングが生じるために必要とされる囲いを形成するフレームを含む。コポリマー粒子を融解するために必要とされる熱を供給するエアオーブン中に置いて、型を多数の軸上で回転させて、組成物によってライニングされた2つの試験パネルを含む型の内部表面を得る。ロトライニング法の完了時に、オーブンを冷却し、そしてロトライニングの品質を観察するために、ロトライニングされた試験パネルを型から分離した。試験パネル上のロトライニングが接着の出現を有する場合、すなわち、ライニングが試験パネルの縁部に接着し、そして型の冷却間の試験パネルよりも大きいライニングの収縮によって試験パネルが弓状に曲げられる場合、ASTM D 413の手順に従って試験パネル上のライニングの接着性の剥離強度を決定する。肉眼によるライニングの観察によって、ライニングの無気泡の品質を決定する。ライニングの厚さ内に見える気泡が存在せず、そしてライニングの表面が平滑、すなわち、空隙、塊状物およびクレーターが存在しない場合、ライニングは無気泡であると考えられる。
【0033】
一般的に、中空物品の内部表面をロトライニングするために、本発明の方法を使用することができる。ここでの内部表面は、炭素鋼またはステンレス鋼のような様々な材料から製造されていてよい。本発明によってライニングが内部表面に接着するという事実により、本発明の実施は、管材料を含むパイプのライニングに関して特に役立つものとなる。パイプに関して、ライニングとパイプとの間の機械的な相互接続のみが、パイプの各端部におけるフランジである。フランジ間のパイプが長いほど、パイプ内部表面に接着していない場合はライニングの完全性に有害となり得る流体または温度変化、特に迅速または突然の温度変化の機械的作用のため、ライニングに負荷される機械的応力が大きい。パイプ内部表面から独立したライニングの湾曲は、ライニングの亀裂を引き起こし得る。一般的に中空物品の内部表面への、および特にパイプの内部表面へのライニングの接着はライニングを強化し、それによってその完全性を保持し、かつその寿命を延長する。
【0034】
(実施例1)
720°F(382℃)のオーブン温度で型を120分間回転させて、一連のロトライニングを実行する。ここで、試験パネルは、アルミナ粒子とガラスビーズとのブレンド(16グリット)によってグリットブラストされた1018炭素鋼である。そして、型に添加されるロトライニング材料の量は、厚さ90ミル(2.3mm)のライニングを形成するために十分である。
【0035】
ロトライニング材料が、単独で安定化されたコポリマーからなり、いずれの粉末も含まない場合、得られる平滑な無気泡のライニングは、型およびその中の試験パネルの冷却時に、グリットブレストされた鋼表面から分離する。
【0036】
ロトライニング材料が、安定化されたコポリマーと0.5重量%のZnとの組成物である場合、得られる無気泡ライニングは、68.5lb/インチ(12.1kN/m)の試験パネル上での剥離強度を示す。試験パネルとして304ステンレス鋼を使用するが、1018鋼試験パネルと同一の方法でグリットブラストされたこの方法の繰り返しによって、得られる平滑な無気泡のライニングは、44.6lb/インチ(7.8kN/m)の剥離強度を示す。
【0037】
2.25mm(90ミル)の厚さまで、これらのロトライニングされたアンダーコート上に同一の安定化されたコポリマーのオーバーコートを適用するために、同一のロトライニング手順を使用する。オーバーコートは無気泡である。
【0038】
(実施例2)
様々なオーブン温度で型を120分間回転させて、一連のロトライニングを実行する。ここで、試験パネルは、実施例1に記載のブラスト媒体ブレンドによってグリットブラストされている。そして組成物は、厚さ90ミル(2.3mm)のライニングを形成するための安定化されたコポリマーおよび0.5重量%のZnである。
【0039】
オーブン温度が690°F(365℃)である場合、1018炭素鋼試験パネル上で得られる平滑な無気泡のライニングは、54.1lb/インチ(9.5kN/m)の剥離強度を示す。試験パネルが304ステンレス鋼である場合、平滑な無気泡のライニングの剥離強度は29.5lb/インチ(5.17kN/m)である。
【0040】
オーブン温度が700°F(371℃)である場合、得られる平滑な無気泡のライニングは、1018炭素鋼試験パネル上で66.6lb/インチ(11.7kN/m)の剥離強度を示す。試験パネルが304ステンレス鋼である場合、得られる平滑な無気泡のライニングは37.5lb/インチ(6.56kN/m)の剥離強度を示す。
【0041】
オーブン温度が710°F(377℃)である場合、得られる平滑な無気泡のライニングは、1018炭素鋼試験パネル上で71lb/インチ(12.4kN/m)、そして304ステンレス鋼試験パネル上で43.5lb/インチ(7.6kN/m)の剥離強度を示す。
【0042】
3mm(120ミル)の厚さまで、これらのロトライニングされたアンダーコート上に同一の安定化されたコポリマーのオーバーコートを適用するために、同一のロトライニング手順を使用する。オーバーコートは無気泡である。
【0043】
(実施例3)
680°F(360℃)のオーブン温度で型を120分間回転させて、一連のロトライニングを実行する。ここで、試験パネルは、実施例1に記載のブラスト媒体ブレンドによってグリットブラストされている。そして組成物は、厚さ90ミル(2.3mm)の平滑な無気泡のライニングを形成するための安定化されたコポリマーおよび様々な量のZnである。
【0044】
組成物中のZnの量が0.5重量%である場合、1018炭素鋼試験パネル上のライニングの剥離強度は43.4lb/インチ(7.6kN/m)である。Znの量を、0.8重量%まで、次いで1.1重量%まで増加させた時、剥離強度は、それぞれ42.6lb/インチおよび37.2lb/インチ(7.5kN/mおよび6.5kN/m)である。
【0045】
厚さ50ミル(1.25mm)の平滑な無気泡のライニングが製造されるように、ロトライニング組成物の量を減少させた場合、組成物中のZnが0.5重量%、0.8重量%および1.1重量%のライニングの剥離強度は、それぞれ34.5lb/インチ、38.0lb/インチ、および35.4lb/インチ(6.0kN/m、6.7kN/mおよび6.2kN/m)である。
【0046】
(実施例4)
710°F(377℃)のオーブン温度で型を120分間回転させて、一連のロトライニングを実行する。ここで、1018炭素鋼試験パネルは、24グリットブラスト媒体によってブラストされている。そして、組成物は、0.5重量%のZn、0.5重量%のSnまたは0.5重量%のCuのいずれかを含有する。得られる厚さ90ミル(2.3mm)のライニングは無気泡かつ平滑であり、そしてZn含有ライニングの接着性と比較して、SnおよびCu含有組成物のライニングの接着性は有利である。
【0047】
ロトライニング組成物を形成するために、安定化されたコポリマーと一緒に、0.5重量%および1重量%のアルミニウム金属粉末または粉末状酸化アルミニウムを使用してこれらのロトライニングを繰り返した場合、得られるライニングは気泡を含有し、それらの保護の目的に関してライニングは不適切となる。
【0048】
(実施例5)
熱オーブン中でオーブン温度として740℃、および型の回転時間として2時間を使用し、そして様々なテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマーおよび粉末金属添加剤として亜鉛を使用して、一連のロトライニングを実行する。この一連のロトライニングにおいて、コポリマーAとして前記実施例において使用された安定化されたコポリマーを使用する。同一であるが安定化されていない、すなわちフッ素処理されていないコポリマー粉末もコポリマーBとして使用する。コポリマーCは、15g/10分のMFRを有し、その粒子が1000μmの平均粒径を有するテトラフルオロエチレンおよびペルフルオロ(エチルビニルエーテル)の安定化されていないコポリマーである。コポリマーDは、6g/10分のMFRおよび475μmの平均粒径を有する安定化されていないMFAコポリマー(テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマー)である。各コポリマーに関して、ロトライニングコーティングの厚さは90ミル(2.3mm)である。全てのライニングは無気泡かつ平滑であり、そしてステンレス鋼パネルに接着し、以下の剥離強度を与える。
【0049】
【表1】

【0050】
これらの結果は、0.5重量%から1重量%へのコポリマー中のZn含量の増加は、一般的に剥離強度にほとんど影響を及ぼさないことを示す。剥離強度における最大増加が得られるコポリマーCでは、コポリマー中2重量%のZn濃度において、剥離強度は62.4lb/インチ(10.92kN/m)まで落ちる。コポリマーBに関しても、Zn濃度の増加とともに剥離強度が減少し、コポリマー中2重量%のZn濃度において、剥離強度は43.47lb/インチ(7.60kN/m)である。
【0051】
またこれらの結果は、安定化されたコポリマー(コポリマーA)よりも安定化されていないコポリマー(コポリマーB)が、基材に対してより良好な接着性を有することを示す。これらの結果は、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)含有コポリマー(コポリマーC)が最良の剥離強度を示すことをさらに示す。
【0052】
(実施例6)
MFAコポリマー、実施例5のコポリマーDを使用して、一連のロトライニングを製造する。ここで、ロトライニング温度は720°Fであり、そしてロトライニング時間は2時間であり、グリットブラストされた(16グリット)鋼の試験パネルを使用して、90ミル(2.3mm)の厚さのロトライニングを形成する。MFAがそのまま使用される場合、すなわち、粉末添加剤を含有しない場合、コーティングは剥離強度を有さない。これは、簡単に試験パネルの表面から離れて落下する。1重量%の亜鉛粉末をMFAに添加した場合、得られるコーティングは、36.5lb/インチ(6.5kN/m)の剥離強度を示す。亜鉛粉末濃度を3重量%まで増加した場合、得られるコーティングは18lb/インチ(3.2kN/m)の剥離強度を示す。同一であるが粉末添加剤をいずれも含まないMFAコポリマーを使用して、(ロトライニング技術により)亜鉛含有MFAコポリマー下層上に厚さ50ミルのトップコートを形成すると、平滑な表面を有する無気泡のトップコートが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの粒子と、接着促進粉末添加剤とを含む組成物によって、中空物品の内部表面をロトライニングして、前記内部表面上に無気泡の接着性アンダーコートを形成する工程と、前記アンダーコート上に、ロトライニングされたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの無気泡のオーバーコートを形成する工程とを含む方法であって、前記オーバーコートの厚さは、前記アンダーコートの厚さの少なくとも約2/3であるが、ただし、前記アンダーコートを形成する前記コポリマーが、安定化されていないテトラフルオロエチレン(メチルビニルエーテル)/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーである場合、前記粉末添加剤は、前記ロトライニングの間の気泡形成を防ぐことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記オーバーコートの厚さが、前記アンダーコートの厚さより大きいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンダーコート中の前記コポリマーが、安定化されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オーバーコートの厚さが、少なくとも約1.5mm(60ミル)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粉末が金属粉末であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
安定化されたテトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーまたは安定化されていないテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーの粒子と、接着促進性無気泡促進性粉末とを含む組成物を、前記中空物品の内部へ添加する工程であって、前記金属粉末が前記安定化されていないコポリマーの気泡形成を防ぐ工程と、前記物品を回転させて、前記内部表面上に組成物を分配する工程と、前記物品をそれが回転させている間に加熱して、前記コポリマー粒子を融解させ、前記内部表面上に前記コポリマーおよび前記金属粉末を含む連続的な無気泡のライニングを形成する工程と、前記物品を冷却し、その結果として、前記表面に接着した前記無気泡のライニングを得る工程とを含むことを特徴とする中空物品の内部表面をロトライニングする方法。
【請求項7】
前記金属粉末の量が約2重量%以下であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コポリマーによって前記ライニングをオーバーコートして、前記ライニングの厚さより大きい厚さを有するオーバーコートを得る工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記オーバーコートが、少なくとも約2.5mmの厚さを有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ライニングの厚さが、少なくとも約1.25mmであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記粉末が金属粉末であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記金属粉末が亜鉛であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属粉末がスズを含有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記金属粉末が銅を含有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記金属粉末が金属の組み合わせであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記金属の組み合わせが、黄銅および青銅よりなる群の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記安定化されたコポリマーが、前記コポリマー中に、炭素原子10個あたり約80個未満の不安定末端基を有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記不安定末端基が、−COOH、−CONH、−CHOH、−COCH、−CF=CFおよび−COFであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項6に記載の方法によって形成されたライニング。
【請求項20】
無気泡の接着性ロトライニングを得るための組成物であって、安定化されたテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの粒子と、接着促進性無気泡促進性粉末とを含むか、または安定化されていないテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーの粒子と、接着促進性無気泡促進性粉末とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項21】
前記コポリマーの融解と、それに続く冷却の後、請求項20に記載の組成物から得られる組成物。

【公表番号】特表2006−510472(P2006−510472A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559236(P2004−559236)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/038365
【国際公開番号】WO2004/052618
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】