説明

ロボット制御装置

【課題】モーターの性能をより多く引き出すことが可能なロボット制御装置。
【解決手段】モーターパラメーター記憶手段40と、慣性モーメント計算手段10と、移動距離計算手段20と、速度指令曲線計算手段30と、速度指令曲線計算手段30により生成された速度指令曲線に従ってモーター72を制御するモーター制御装置60と、を備えるロボット制御装置75であって、モーター72の内部温度を測定するモーター温度測定手段50をさらに備えており、モーターパラメーター記憶手段40は、内部温度によって変動する可変パラメーターについては許容最大値よりも低い内部温度下で使用された場合の増大する方向に補正されたモーターパラメーターを含めて記憶しており、速度指令曲線計算手段30は、補正されたモーターパラメーターを用いて速度指令曲線310を生成するロボット制御装置75。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用及び民生用等のロボットを制御するロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品の搬送、組み立て、溶接などを行う自動装置として、回転軸を有するロボットアー
ム(以下、単に「アーム」と称する。)と回転軸を駆動するモーターとを備えるアーム型
ロボットがある。アーム型ロボット(以下、単に「ロボット」と称する。)の性能を表す
代表的な指標として、操作範囲、可搬重量、作業速度の3つがある。操作範囲はアーム長
と関連し、作業速度はアームの回転速度に関連する。したがって、アーム長とアーム可搬
重量とアーム回転速度とについての要求仕様が決まると、かかる要求を満たすためのモー
ターの要求仕様も定まる。そしてモーターの要求仕様が決まると、該モーターの価格も定
まる。
【0003】
ロボットの価格は、主要部品の1つであるモーターの価格と強く相関している。そのた
め、ロボットの低価格化すなわちコストダウンを実現するためには、モーターの有する能
力を有効に引き出して、ロボットの要求仕様に対してできる限り小型のモーターを用いる
ことが必要となる。そのため、例えば特許文献1には、ロボットのアームがある点から他
の点まで移動する際の速度を決定する速度指令曲線計算手段を、記憶手段と最高速度計算
手段と加減速時間決定手段と速度指令曲線生成手段との計4要素で構成して、モーターの
駆動トルクを最大限に発揮させるロボット制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−200033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来のロボット制御装置は、モーターの内部温度の変動について
は考慮されていない。一般に、ロボットは使用可能な環境範囲(許容範囲)が定められて
いる。周辺温度についても、例えば0℃〜40℃のように設定されている。一方で、モー
ターの内部温度にも上限すなわち許容温度(最大許容温度)がある。上述の周辺温度の上
限(上述の例では40℃)は、当該温度でロボットを連続使用しても、モーターの内部温
度が許容温度を超えないように設定されている。
【0006】
しかし、モーターは使用時(すなわち通電時)に通電量に合せて発熱して、非通電時に
周辺温度との温度差により冷却されるものである。そのため、間欠的な使用時、あるいは
周辺温度が上限(40℃)よりも低い場合においては、内部温度が上昇しにくい傾向にあ
る。したがって、周辺温度の許容範囲を定めた上で単一の許容最大トルクが設定されてい
る従来のロボット制御装置は、モーターの性能を完全に引き出せていないという課題があ
った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかるロボット制御装置は、ロボットアームを駆動するモータ
ーの加速時許容最大トルクと減速時許容最大トルクと許容最高回転速度との3つのパラメ
ーターを格納するモーターパラメーター記憶手段と、関節座標と搬送重量とからロボット
アームの慣性モーメントを計算する慣性モーメント計算手段と、関節座標から上記ロボッ
トアームの移動距離を算出する移動距離計算手段と、上記モーターパラメーター記憶手段
の出力と上記慣性モーメント計算手段の出力と上記移動距離計算手段の出力とから加速時
最大加速度と減速時最大加速度と最高回転速度とを計算して速度指令曲線を生成する速度
指令曲線計算手段と、上記速度指令曲線計算手段により生成された速度指令曲線に従って
上記モーターを制御するモーター制御装置と、を備えたロボット制御装置であって、上記
モーターの内部温度を測定するモーター温度測定手段をさらに備えており、上記モーター
パラメーター記憶手段は、上記内部温度の許容最大値における上記3つのパラメーターを
記憶すると共に、上記3つのパラメーターのうち上記内部温度によって変動する可変パラ
メーターについては、上記許容最大値よりも低い上記内部温度下で使用された場合の増大
する方向に補正されたパラメーターを含めて記憶しており、上記速度指令曲線計算手段は
、上記モーター温度測定手段による測定結果が上記許容最大値よりも低い場合、上記補正
されたパラメーターを用いて上記速度指令曲線を生成することを特徴とする。
【0009】
このような構成であれば、アームを駆動するモーターの能力を上限まで引き出すことが
できる。したがって、同等の作業を行うロボットにおいてモーターを小型化できる。した
がって、ロボットの価格を低減できる。
【0010】
[適用例2]上述のロボット制御装置であって、上記モーターパラメーター記憶手段は
上記内部温度と上記移動距離とを所定の範囲毎に区切り、該範囲毎の組合せを表として記
憶すると共に、該表のセルに対してそれぞれ最適な加速時許容最大トルクと減速時許容最
大トルクと許容最高回転速度とを記憶しており、上記内部温度と上記移動距離とが指定さ
れると該組合せに対応する加速時許容最大トルクと減速時許容最大トルクと許容最高回転
速度とを出力することを特徴とするロボット制御装置。
【0011】
このような構成であれば、上記内部温度等を連続量として処理する場合に比べてモータ
ーパラメーター記憶手段の構成を簡略化できる。したがって、ロボットの価格をより一層
低減できる。
【0012】
[適用例3]上述のロボット制御装置であって、上記可変パラメーターは、加速時許容
最大トルクと減速時許容最大トルクとであることを特徴とするロボット制御装置。
【0013】
上記2つのパラメーターは通電量に比例するため、上記内部温度による影響が大きい。
すなわち、使用環境温度範囲の上限における値と該上限よりも低い温度下で使用されると
きの値との差が大きい。したがって、上記2つのパラメーターを使用環境温度に対応させ
ることで、モーターの能力を充分に引き出すことができる。
【0014】
[適用例4]上述のロボット制御装置であって、上記可変パラメーターは、上記3つの
パラメーターの全てであることを特徴とするロボット制御装置。
【0015】
許容最高回転速度が一定期間維持されているときも通電されているため、使用環境温度
の影響を受ける。したがって、許容最高回転速度も使用環境温度に対応させることで、モ
ーターの能力をより一層引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】アーム型ロボットの概略を示す図。
【図2】本実施形態にかかるロボット制御装置の構成をモーターと共に示す図。
【図3】モーターパラメーターの項目を示す図。
【図4】モーターパラメーター記憶手段に記憶された可変パラメーターを示す図。
【図5】モーターの使用領域を示す図であるモーター特性図。
【図6】速度指令曲線図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態にかかるロボットについて、図面を参照しつつ述べる。図1は
、本実施形態のロボット制御方法の対象となるロボット(アーム型ロボット)70の概略
を示す図である。図示するように、ロボット70は中心軸73を中心に回転移動が可能な
アーム71と該アームを駆動するモーター72とを備えている。そしてさらに、ロボット
70は、モーター制御信号610(後述する図2参照)を出力してモーター72を回転さ
せることでアーム71を所定の位置まで移動させるロボット制御装置75を備えている。
【0018】
なお、図1に示すロボット70は、単一のアーム71と単一の中心軸73を備える最小
限の構成のロボットである。本実施形態のロボット制御装置75は、より複雑な構成のロ
ボット、例えば複数のアーム71を有し、かつ各々のアーム71が複数の中心軸73を有
する多関節型のロボット70にも適用可能である。
【0019】
図2は、本実施形態にかかるロボット制御装置75の構成を、モーター72と共に示す
図である。本実施形態にかかるロボット制御装置75は、慣性モーメント計算手段10と
、移動距離計算手段20と、速度指令曲線計算手段30と、モーターパラメーター記憶手
段40と、モーター内部温度測定手段50と、モーター制御手段60とを有している。
【0020】
本実施形態にかかるロボット制御装置75は、以下に述べるようにロボット70を制御
している。まず、ロボット70の使用者が図示しない外部入力装置を用いて移動命令10
0を入力する。入力された移動命令100は慣性モーメント計算手段10及び移動距離計
算手段20に伝達される。移動命令100は、関節座標101と搬送重量102とを含ん
でいる。関節座標101とは、アーム71の先端を停止させる位置であり、(x、y、z
)の3次元座標で表される。搬送重量102は、アーム71本体、該アームに装着される
工具、該アームにより搬送される部品、等を合計した重量である。移動命令100のうち
、関節座標101は慣性モーメント計算手段10と移動距離計算手段20の双方に伝達さ
れ、搬送重量102は慣性モーメント計算手段10のみに伝達される。
なお、一般にロボット70が行う定型作業は、複数の工程が組み合わされた物である場
合が多い。本明細書の記載においては、かかる場合において個々の工程毎に移動命令10
0が存在するものとしている。
【0021】
慣性モーメント計算手段10は、関節座標101と搬送重量102とから慣性モーメン
トを計算して、慣性モーメント情報110として、速度指令曲線計算手段30に対して出
力する。移動距離計算手段20は、関節座標101から移動距離を計算して、移動距離情
報210として速度指令曲線計算手段30及びモーターパラメーター記憶手段40に対し
て出力する。またロボット70はモーター72の内部に、モーター内部温度測定手段50
(すなわち温度計)を備えている。該温度計の測定値、すなわちモーター72の内部温度
は、モーター内部温度情報510として常時モーターパラメーター記憶手段40に対して
出力されている。
【0022】
モーターパラメーター記憶手段40は、速度指令曲線計算手段30に対してモーターパ
ラメーター情報410を出力する機能を果たす構成要素である。図3は、モーターパラメ
ーターの項目を示す図である。モーターパラメーターは、少なくとも加速時最大トルクF
1と減速時最大トルクF2と許容最高回転数Vとの3項目を含んでいる。そして、本実施形
態のロボット制御装置75は、上述の3項目のモーターパラメーターを、モーター72の
機種毎に固定された値ではなく条件によって変わり得る可変パラメーターPnmとしている
点に特徴がある。すなわち、本実施形態のロボット制御装置75が備えるモーターパラメ
ーター記憶手段40は、上述の3項目のモーターパラメーターを、受け取った移動距離情
報210とモーター内部温度情報510とを基に補正した上で、モーターパラメーター情
報410として速度指令曲線計算手段30に対して出力している。
【0023】
上述の3項目のモーターパラメーターは、モーター72に供給される電流値すなわちモ
ーター72の通電量と正の相関関係にある。すなわち、通電量が増加すると、加速時最大
トルクF1等は上昇する関係にある。一方で、通電量の増加はモーター72を加熱させる
ことにつながる。そして、モーター72を安全に使用できる温度には上限がある。そのた
め段落(0005)で述べたように、モーター72には使用可能な環境範囲(許容範囲)
として、周辺温度についても定められている。図3に示す3項目のモーターパラメーター
は、従来のロボット制御装置においては固定値であり、周辺温度が上限値である場合にお
いてもモーター72を安全に使用できるように、余裕をもって設定されている。
【0024】
しかし、上述したように、モーター72は使用時に通電量に合せて発熱して、非通電時
に周辺温度との温度差により冷却される。したがって、周辺温度が上限値よりも低い場合
においては、より多くの通電が可能となり得る。また、個々の作業すなわちアーム71の
移動が間欠的である場合は、モーター72を冷却する時間がより多く確保されていること
となる。そこで本実施形態のロボット制御装置75は、可変パラメーターPnmの補正を移
動距離情報210とモーター内部温度情報510とを基に行っている。
なお、上述の補正は、モーター内部温度に代えて周辺温度を基に行うことも可能である
。ただし、モーター72の過熱を防止するためにはモーター72の内部温度を直接管理す
る方が確実である。そのため、本実施形態のロボット制御装置75は、モーター内部温度
を基に補正を行っている。
【0025】
図4は、モーターパラメーター記憶手段40に記憶された可変パラメーターPnmの態様
を示す図(すなわちマトリクス表)である。図示するように、可変パラメーターPnmは、
モーター内部温度(単に「温度」と図示)と移動距離(単に「距離」と図示)とで構成さ
れる表の形で記憶されている。移動距離計算手段20から出力された移動距離情報210
とモーター内部温度測定手段50から出力されたモーター内部温度情報510の双方は、
所定の範囲毎に区切られて、図4に示す表の縦軸と横軸を構成している。可変パラメータ
ーPnmは、かかる表のセル毎に設定されている。モーターパラメーター記憶手段40に対
して移動距離情報210とモーター内部温度情報510とが出力されると、該双方の情報
で指定されるセル内の可変パラメーターPnmが読み込まれて、モーターパラメーター情報
410として速度指令曲線計算手段30に対して出力される。
【0026】
速度指令曲線計算手段30は、慣性モーメント情報110と移動距離情報210とモー
ターパラメーター情報410とを基に速度指令曲線310を計算して、モーター制御手段
60に対して出力する。モーター制御手段60は、速度指令曲線310をモーター制御信
号610に変換した上で、モーター72に対して出力する。そして、モーター72が該モ
ーター制御信号に基づいて回転することでアーム71(図1参照)が移動する。
【0027】
図5は、モーター72の使用領域を示す図、すなわちモーター特性図である。そして図
6は、速度指令曲線計算手段30から出力される速度指令曲線310を示す図である。な
お以下の記載において、符号の末尾に「a」が付記されている場合は従来のロボット制御
装置を用いた場合の要素であり、符号の末尾に「b」が付記されている場合は本実施形態
のロボット制御装置75を用いた場合の要素であるとする。
モーター72の使用領域は、最大トルク(加速時最大トルクF1と減速時最大トルクF2
)と許容最高回転数Vで規定されている。このうち、最大トルクは主としてモーター72
の内部温度で制限されている。許容最高回転数は、内部温度の他に、モーター72の強度
等の機械的な要素からも制限されている。
【0028】
図5(a)は、従来の使用領域すなわちモーターパラメーターが固定されている場合の
使用領域である定常使用領域700を示す図である。定常使用領域700は、連続使用領
域701と反復使用領域702とを含んでいる。連続使用領域701は、周辺温度が上限
(例えば40℃)である場合においても連続的に使用可能な領域である。反復使用領域7
02は周辺温度が上限である場合において、間欠的に使用可能な領域である。図5(b)
は、本実施形態のロボット制御装置75により形成された使用領域、すなわちモーターパ
ラメーターが可変パラメーターPnmとなることで拡大された使用領域を示す図である。図
示するように最大トルク(F1、F2)と許容最高回転数Vの双方が増大することで、条件
付使用領域703が形成されている。
【0029】
なお、通電による発熱量は加速時と減速時とで大きな差はない。そこで、図5において
は、加速時最大トルクF1と減速時最大トルクF2との2種類の最大トルクが同一として定
常使用領域700を設定している。また、条件付使用領域703は1つのみ図示されてい
るが、実際には図4の表に示すセルの数だけ存在し得る。
【0030】
図6(a)は、図5(a)に示す定常使用領域700を基に計算された速度指令曲線3
10aを示す図である。すなわち、従来のロボット制御装置を用いた場合の速度指令曲線
を示す図である。図6(b)は、図5(b)に示す条件付使用領域703が付加された使
用領域を基に計算された速度指令曲線310bを示す図である。すなわち、本実施形態の
ロボット制御装置75を用いた場合の速度指令曲線を示す図である。なお、図5(c)及
び図6(c)については後述する。
【0031】
図6において、T1はモーター72を許容最高回転数Vまで加速するために要する時間
であり、T3は許容最高回転数Vで回転しているモーター72を停止させるために要する
時間である。T2はモーターが許容最高回転数Vで回転している時間である。Ttはトータ
ルの移動(作業)時間であり、アーム71が移動命令100に含まれる関節座標101で
指定される位置まで移動するために要する時間である。
アーム71が長い距離を移動する場合は、Ttに占めるT2の比率が大きくなる。したが
って、トータルの移動時間であるTtは、許容最高回転数Vに大きく左右される。一方、
アーム71が移動と停止とを細かく繰り返す場合は、Ttに占めるT1とT3の比率が大き
くなる。したがってTtは、加速時最大トルクF1と減速時最大トルクF2とに大きく左右
される。
【0032】
従来のロボット制御装置による速度指令曲線310aと本実施形態のロボット制御装置
75による速度指令曲線310bとを比較すると、以下のことが言える。まず、許容最高
回転数Vに達するまでに要する時間であるT1について比較する。可変パラメーターPnm
が補正されて加速時最大トルクF1が増大しているため、図示するように、許容最高回転
数Vbが従来のロボット制御装置を用いた場合の許容最高回転数Vaに対して増大してい
るにもかかわらず、T1bがT1aに比べて短縮されている。したがって、本実施形態のロボ
ット制御装置75によれば、仕様が同一のモーター72を用いた場合において、より短時
間により高い回転数まで加速できる。
【0033】
許容最高回転数Vbで回転しているモーター72を停止させるために要する時間である
3についても同様である。可変パラメーターPnmが補正されて減速時最大トルクF2が増
大しているため、T3bがT3aに比べて短縮されている。したがって、本実施形態のロボッ
ト制御装置75によれば、より高速で回転しているモーター72をより短時間で停止させ
ることができる。
【0034】
また上述したように、許容最高回転数Vbも、従来のロボット制御装置を用いた場合に
おける許容最高回転数Vaに比べて増加している。したがって、アーム71の移動が最大
速度で移動する時間であるT2bも、速度指令曲線310aにおける該時間であるT2aに比
べて短縮されている。
【0035】
以上述べたように、本実施形態のロボット制御装置75によれば、同一仕様のモーター
72を用いた場合において、T1b、T2b、及びT3bの全てが、従来のロボット制御装置を
用いた場合における該時間であるT1a、T2a、及びT3aに比べて短縮される。したがって
、本実施形態のロボット制御装置75によれば、同一仕様のモーター72を用いた場合に
おいて、トータルの作業時間であるTtbを、従来のロボット制御装置を用いた場合におけ
るトータルの作業時間であるTtaに比べて大幅に短縮できる。
【0036】
上述したように、本実施形態のロボット制御装置75を用いれば、同一のモーター72
を備えるロボット70を用いた場合において、アーム71の移動時間すなわち作業時間を
大幅に短縮できる。すなわち、同一時間に実施する作業量を増加させることができる。し
たがって、本実施形態のロボット制御装置75を用いれば、作業量が同一である場合にお
いて、従来のロボット制御装置を用いる場合に比べるとモーター72の要求仕様を低くす
ることができる。すなわち、同一の性能のロボット70をより小型のモーター72を用い
て実現できる。したがって、本実施形態のロボット制御装置75を用いれば、同一の性能
のロボット70を、低コスト化かつ小型化して実現できる。
【0037】
しかしながら、上述の従来のロボット制御装置は、モーターの内部温度の変動について
は考慮されていない。一般に、ロボットは使用可能な環境範囲(許容範囲)が定められて
いる。周辺温度についても、例えば0℃〜40℃のように設定されている。一方で、モー
ターの内部温度にも上限すなわち許容温度(最大許容温度)がある。上述の周辺温度の上
限(上述の例では40℃)は、当該温度でロボットを連続使用しても、モーターの内部温
度が許容温度を超えないように設定されている。
【0038】
なお、本実施形態のロボット制御装置75は、ロボット70の周辺温度が低いほど大き
な効果を発揮する。すなわち、同一時間に実施する作業量を増加させることができる。し
かし、本実施形態のロボット制御装置75は、モーター72の内部温度を直接測定して、
該内部温度が許容温度を超えない範囲内において可能な限りモーター72の能力を引き出
すことができるため、周辺温度が上限に達している場合であっても、従来のロボット制御
装置を用いた場合に比べて同一時間内により多くの作業を実施させることができる。
【0039】
本発明の実施の形態は、上述の各実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、
変形例を挙げて説明する。
【0040】
(変形例1)
上述の実施形態では、許容最高回転数Vを可変パラメーターPnmとしている。すなわち
、モーター72の内部温度が低い場合は許容回転数を増大させられるとしている。しかし
、最大トルク(加速時最大トルクF1と減速時最大トルクF2)が主としてモーター72の
内部温度で制限されるモーターパラメーターであるのに対して、許容最高回転数Vは主と
して機械的な要素で制限されるモーターパラメーターである。したがって、許容最高回転
数Vを固定値(固定パラメーター)として扱わなければならない場合もあり得る。
【0041】
図5(c)は、変形例1として、かかる場合のモーター72の使用領域を示した図であ
る。許容最高回転数Vが固定値であるため、条件付使用領域703が、横軸方向すなわち
トルクが増大する方向にのみ伸張している。図6(c)は、モーター72の使用領域が図
5(c)に示す形状である場合における速度指令曲線310cを示す図である。許容最高
回転数Vcが従来のロボット制御装置を用いた場合のVaと同一であるため、T2cは短縮
されていない。しかし、最大トルク(加速時最大トルクF1と減速時最大トルクF2)が増
加しているため、モーター72を許容最高回転数Vcまで加速する時間であるT1cと、モ
ーター72を停止させるために要する時間であるT3cは短縮されている。したがって、上
述の実施形態のロボット制御装置75は、アーム71が頻繁に移動するような作業を実施
する場合においては、モーター72の許容最大回転数Vが固定値である場合であっても、
大きな効果を発揮できる。
【0042】
(変形例2)
上述の実施形態のロボット制御装置75が備えるモーターパラメーター記憶手段40は
、可変パラメーターPnmを、移動距離情報210とモーター内部温度情報510とを縦軸
と横軸とする表のセル毎に設定している。したがって、上述の実施形態における可変パラ
メーターPnmは、非連続的な数値である。しかし、モーターパラメーター記憶手段40に
代えてモーターパラメーター計算手段を備えるロボット制御装置も可能である。連続した
数値である移動距離情報210とモーター内部温度情報510とから可変パラメーターP
nmを計算することで、可変パラメーターPnmを連続的な数値とすることができる。かかる
ロボット制御装置であればモーター72の能力をより一層有効に利用でき、モーター72
及び該モーターを構成要素とするロボット70をより一層小型化できる。
【符号の説明】
【0043】
10…慣性モーメント計算手段、20…移動距離計算手段、30…速度指令曲線計算手
段、40…モーターパラメーター記憶手段、50…モーター内部温度測定手段、60…モ
ーター制御手段、70…ロボット、71…ロボットアームとしてのアーム、72…モータ
ー、73…中心軸、75…ロボット制御装置、100…移動命令、101…関節座標、1
02…搬送重量、110…慣性モーメント情報、210…移動距離情報、310…速度指
令曲線、410…モーターパラメーター情報、510…モーター内部温度情報、610…
モーター制御信号、700…定常使用領域、701…連続使用領域、702…反復使用領
域、703…条件付使用領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを駆動するモーターの加速時許容最大トルクと減速時許容最大トルクと
許容最高回転速度との3つのパラメーターを格納するモーターパラメーター記憶手段と、
関節座標と搬送重量とからロボットアームの慣性モーメントを計算する慣性モーメント
計算手段と、
関節座標から前記ロボットアームの移動距離を算出する移動距離計算手段と、
前記モーターパラメーター記憶手段の出力と前記慣性モーメント計算手段の出力と前記
移動距離計算手段の出力とから加速時最大加速度と減速時最大加速度と最高回転速度とを
計算して速度指令曲線を生成する速度指令曲線計算手段と、
前記速度指令曲線計算手段により生成された速度指令曲線に従って前記モーターを制御
するモーター制御装置と、
を備えたロボット制御装置であって、
前記モーターの内部温度を測定するモーター温度測定手段をさらに備えており、
前記モーターパラメーター記憶手段は、前記内部温度の許容最大値における前記3つの
パラメーターを記憶すると共に、前記3つのパラメーターのうち前記内部温度によって変
動する可変パラメーターについては、前記許容最大値よりも低い前記内部温度下で使用さ
れた場合の増大する方向に補正されたパラメーターを含めて記憶しており、
前記速度指令曲線計算手段は、前記モーター温度測定手段による測定結果が前記許容最
大値よりも低い場合、前記補正されたパラメーターを用いて前記速度指令曲線を生成する
ことを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット制御装置であって、
前記モーターパラメーター記憶手段は前記内部温度と前記移動距離とを所定の範囲毎に
区切り、該範囲毎の組合せを表として記憶すると共に、該表のセルに対してそれぞれ最適
な加速時許容最大トルクと減速時許容最大トルクと許容最高回転速度とを記憶しており、
前記内部温度と前記移動距離とが指定されると該組合せに対応する加速時許容最大トルク
と減速時許容最大トルクと許容最高回転速度とを出力することを特徴とするロボット制御
装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロボット制御装置であって、
前記可変パラメーターは、加速時許容最大トルクと減速時許容最大トルクとであること
を特徴とするロボット制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のロボット制御装置であって、
前記可変パラメーターは、前記3つのパラメーターの全てであることを特徴とするロボ
ット制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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