説明

ロータリエバポレータ

【課題】凝縮液を受けフラスコで回収する時に試料容器内への戻りを確実に回避する。
【解決手段】凝縮液を下方の底部へ向けて滴下する内部に滴下口23を備えた上下に長い凝縮器21と、凝縮器21の底部に接続され前記滴下口23からの凝縮液を受ける受けフラスコ33と、駆動部3により回転自在に支持され連通路13に形成された一方のジョイント開口端15bが前記滴下口23の下位に臨むと共に、他方のジョイント開口端15aが前記凝縮器21の外へ延長され試料容器17と接続連通し合うロータリジョイント15とを有する構造とする一方、
前記滴下口23を、前記ロータリジョイント15を通るロータリジョイント軸線領域tの外側に設け、凝縮液をロータリジョイント15から外れた位置に落下させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリエバポレータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にロータリエバポレータにあっては、例えば、図5に示すように駆動部101によって回転自在に支持されたロータリジョイント103の一端に試料を蒸留する試料容器105が接続されている。
【0003】
ロータリジョイント103は、連通路に形成される一方、試料容器105は加熱手段となるウォータバス107によって加温されながら回転することで内部の試料が蒸気となってロータリジョイント103を介して凝縮器111内へ送り込まれる。
【0004】
凝縮器111内に送り込まれた試料蒸気は内部に設けられた冷却剤109によって凝縮され、その凝縮液は下部の受けフラスコ113によって回収される構造となっている。
【0005】
ロータリジョイント103は、試料容器105内の試料蒸気を凝縮器111へ向けて誘導案内するところから、上昇傾斜するレイアウト構造となり、ロータリジョイント103のジョイント開口端115は凝縮器111と受けフラスコ113をつなぐ接続管117の内部中央部位において上を向いた状態で開口する構造となる。
【0006】
一方、試料容器105には、試料補充用の試料チューブ119が設けられ、試料チューブ119は開閉コック121を介してロータリジョイント103の中心部位を通り試料容器105内に臨む形状となっている。
【0007】
このため、凝縮器111内で凝縮された凝縮液が下方へ落下する時に、ロータリジョイント103のジョイント開口端115から直接試料容器105内へ戻るケースと、あるいは、試料チューブ119を使用する際に、その試料チューブ119上に落下し、落下した凝縮液がその試料チューブ119を伝わって試料容器105内へ戻るようになるため蒸留作業の低下を招くようになる。
【0008】
また、凝縮液が有機溶剤となる場合には、ロータリジョイント103をシールするシール部材を損傷する不具合が発生するため、それらの問題を解消したロータリエバポレータが提案されている。
【特許文献1】特開平10−165701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
凝縮液の戻りをなくすようにしたロータリエバポレータにあっては、凝縮器となる冷却器において、冷却用のドライアイスの入った内槽とその外側の外槽とにより凝縮空間部を作る専用の凝縮器となっている。
【0010】
このために、内槽のない冷却器では使用できない面があり、使用用途に制限される不具合があった。
【0011】
そこで、本発明は、いずれのタイプの凝縮器であっても使用可能で、凝縮液の戻りを確実になくすようにしたロータリエバポレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、凝縮液を下方の底部へ向けて滴下する内部に滴下口を備えた上下に長い凝縮器と、凝縮器の底部に接続され前記滴下口からの凝縮液を受ける受けフラスコと、駆動部により回転自在に支持され連通路に形成された一方のジョイント開口端が前記滴下口の下位に臨むと共に、他方のジョイント開口端が前記凝縮器の外へ延長され試料容器と接続連通し合うロータリジョイントとを有し、
前記滴下口は、前記ロータリジョイントを通るロータリジョイント軸線領域の外側に設けるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料容器内で発生した試料蒸気をロータリジョイント→滴下口を介して凝縮器内へ支障なく円滑に送り込むことができる。
【0014】
凝縮器内に送り込まれた試料蒸気はそこで凝縮され、凝縮液となって落下する際、必ず滴下口から落下するため、凝縮作用のある凝縮器であればいずれのタイプの凝縮器であっても使用可能となる。また、滴下口から落下する凝縮液はロータリジョイント又は試料チューブを避けて落下するため試料容器への凝縮液の戻りを確実になくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1にあっては、前記凝縮器を、少なくとも前記受けフラスコが接続されるフラスコ接続部とロータリジョイントが挿入配置されるジョイント接続部とを一体形状に作ることで、従来、2部品であったものが1部品で済むと共に、接続領域がなくなる分、高い気密保持を可能とする。
【0016】
第2にあっては、前記滴下口の開口面積を、平面からみてロータリジョイントに沿った弦の部分と凝縮器の内周壁面に沿った円弧の部分からなる半円形状とすることで、試料蒸気が支障なく円滑に流れる大きな開口面積を確保する。
【0017】
(実施例)
以下、図1乃至図4の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0018】
図4はロータリエバポレータの全体の概要斜視図を示している。ロータリエバポレータ1の駆動部3は、ベース台5に立設された昇降装置7の可動部材(図示していない)に上下動自在に支持されている。昇降装置7の可動部材は操作スイッチ9のオン・オフにより、上下動し、駆動部3は上下に長いガイド孔11の範囲内において昇降可能となっている。
【0019】
駆動部3には、内部空間が連通路13となるロータリジョイント15が傾斜上昇した状態で回転自在に支持されている。ロータリジョイント15の下降端側となる一方のジョイント開口端15aには、フラスコ等の試料容器17がクリップ等の接続手段18を介して着脱自在に接続連通している。試料容器17は、ロータリジョイント15と一体に回転しながら加熱手段となるウォータバス19により加温される。
【0020】
ロータリジョイント15の上昇端側となる他方のジョイント開口端15bは、凝縮器21の内部で滴下口23の下位に臨む形状となっている。
【0021】
ロータリジョイント15は、駆動部3に対して軸線方向に沿って移動可能で、試料容器17の大きさに対応して支障なく試料容器17の取付け、取外しが行なえるようになっている。この場合、図1に示すように凝縮器21内に臨むロータリジョイント15のジョイント開口端15bは軸線方向に沿って移動し、ジョイント開口端15bの位置が標準位置dを基準として前後に移動可能となる。
【0022】
凝縮器21は、上下に長いガラス製の円筒状に作られ、その上部は、前記駆動部3から延びる支柱22に金属バンド24を介して固定支持され、駆動部3と一諸に上下動可能となっている。凝縮器21の内部には、冷却水が流れる二重の凝縮螺旋25とその下位に滴下口23がそれぞれ設けられている。
【0023】
その外にコック接続部27、フラスコ接続部29、ジョイント接続部31がそれぞれ一体形状に作られた一部品となっている。これにより、一部分となることで接続領域がなくなる分内部の高い気密保持の確保が可能となっている。
【0024】
二重の凝縮螺旋25は外側の一端が、例えば、水道等に接続される入口25a、内側の一端が排水用となる出口25bとなっていて、内部を冷却水が流れることで、滴下口23を介して送り込まれる試料蒸気を凝縮する凝縮部となっている。この場合、凝縮作用があれば必ずしも二重の凝縮螺旋タイプでなくてもよく、内部に冷却剤を備えた内槽とその外側の外槽とからなる二重槽構造タイプのものであってもよい。
【0025】
滴下口23は、図2に示すように平面からみてロータリジョイント15に沿った弦の部分23aと凝縮器21の内周壁面に沿った円弧の部分23bからなる半円弧状の開口面積となっていて、前記ロータリジョイント15を通るロータリジョイント軸線領域tの外側に設けられている。この場合、凝縮液が決まった位置から落下するよう弦の部分23aの中央部位に凝縮液を集める傾斜勾配面23cを設けるようにすることが望ましい。
【0026】
一方、フラスコ接続部29は、凝縮器21の中心軸線X上に配置され、受けフラスコ33がクリップ等の接続手段35を介して着脱自在に装着されている。受けフラスコ33のフラスコ口は滴下口23の下位にあって、滴下口23から落下する凝縮液は、ロータリジョイント15又は後述する試料チューブ37に当ることなく下位の受けフラスコ33に向けて落下するようになっている。
【0027】
コック接続部27とジョイント接続部31は、所定の角度傾斜した傾斜軸線Yに沿って配置され、ジョイント接続部31には前記したロータリジョイント15がシール部材39を介して回転自在に挿入支持されている。
【0028】
コック接続部27には、図1に示すように手動コック41が密着し合う状態で回転自在に装置されている。手動コック41には、試料チューブ37が接続され試料チューブ37は、前記ロータリジョイント15の内部空間となる連通路13を通過し試料容器17内まで延長された形状となっている。
【0029】
手動コック41のコックポート41aとコック接続部27のコックポート27aは、前記手動コック41を回転し各ポート41a,27aを対向させた時、コックポート27aと試料容器17とが試料チューブ37を介して連通し合い、例えば、試料等の補充が可能となっている。
【0030】
この場合、試料チューブ37は、前記した通り試料補充用となっているもので、実験によっては取外す場合がある。
【0031】
なお、図1において43は図外の真空ポンプと接続する接続口で、凝縮器21の内部を所定の真空度に保つことが可能となっている。
【0032】
このように構成されたロータリエバポレータ1によれば、ウォータバス19によって加温された試料容器17からの試料蒸気は、ロータリジョイント15を介して凝縮器21内へ送り込まれる。
【0033】
この時、上方の凝縮螺旋25へ向かう試料蒸気は、大きな開口面積を持つ滴下口23を介して支障なく円滑に上昇し凝縮する。凝縮した凝縮液は滴下口23から下方へ向け落下する。滴下口23から落下する凝縮液はロータリジョイント15又は試料チューブ37を避けて落下するため、試料容器17内への凝縮液の戻りを確実に回避すると共に、受けフラスコ33による凝縮液の回収が可能となる。
【0034】
したがって、例えば、実験時において、ロータリジョイント15の外周をシールするシール部材39に悪影響を与える有機溶剤等の凝縮液の溜りがなくなり、長期間にわたって安定したシール状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るロータリエバポレータの凝縮器、受けフラスコ、駆動部、試料容器の関係を示した概要説明図。
【図2】図1のA−A線断面説明図。
【図3】滴下口とロータリジョイントの関係を示した概要切断説明図。
【図4】ロータリエバポレータ全体の概要説明図。
【図5】従来例を示したロータリエバポレータの一部分の概要切断説明図。
【符号の説明】
【0036】
1 エバポレータ
3 駆動部
13 連通路
15 ロータリジョイント
15a,15b ジョイント開口部
17 試料容器
21 凝縮器
23 滴下口
23a 弦の部分
23b 円弧の部分
27 コック接続部
29 フラスコ接続部
31 ジョイント接続部
33 受けフラスコ
t ロータリジョイント軸線領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮液を下方の底部へ向けて滴下する内部に滴下口を備えた上下に長い凝縮器と、凝縮器の底部に接続され前記滴下口からの凝縮液を受ける受けフラスコと、駆動部により回転自在に支持され連通路に形成された一方のジョイント開口端が前記滴下口の下位に臨むと共に、他方のジョイント開口端が前記凝縮器の外へ延長され試料容器と接続連通し合うロータリジョイントとを有し、
前記滴下口は、前記ロータリジョイントを通るロータリジョイント軸線領域の外側に設けるようにしたことを特徴とするロータリエバポレータ。
【請求項2】
前記凝縮器は、少なくとも前記受けフラスコが接続されるフラスコ接続部とロータリジョイントが挿入配置されるジョイント接続部とが一体形状に作られていることを特徴とする請求項1記載のロータリエバポレータ。
【請求項3】
前記滴下口の開口面積は、平面からみてロータリジョイントに沿った弦の部分と凝縮器の内周壁面に沿った円弧の部分からなる半円形状となっていることを特徴とする請求項1記載のロータリエバポレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−98246(P2007−98246A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289940(P2005−289940)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000114891)ヤマト科学株式会社 (17)
【出願人】(593024368)株式会社池田硝子 (2)
【Fターム(参考)】