説明

ロータリエンコーダの連結構造

【課題】ロータリエンコーダ22と、連結対象としての外部装置の軸との間に十分なアラインメントを簡単に実現する。
【解決手段】円筒状のケーシング10と、ベアリング23、23を介してケーシング10に内装する回転軸21と、ケーシング10を固定する保持手段30とを設け、回転軸21の回転を検出するロータリエンコーダ22をケーシング10に組み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばギヤ機構の角度伝達誤差測定装置などの外部装置の軸にロータリエンコーダを連結する場合に特に好適なロータリエンコーダの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ギヤ機構の入力軸、出力軸にそれぞれロータリエンコーダを連結し、入力軸、出力軸間の角度伝達誤差を連続的に測定して評価する測定装置が出願人によって開発され、実用化されている(特許文献1、図5)。
【0003】
このものは、供試のギヤ機構1の入力軸1a、出力軸1bにそれぞれカップリング2a、2bを介してロータリエンコーダ3a、3bを連結し、ロータリエンコーダ3a、3bの出力信号S1 、S2 をコンピュータによる解析装置5に入力して解析することにより、ギヤ機構1の正回転時、逆回転時における角度伝達誤差の瞬時値、平均値、ピーク値などの統計値の他、ギヤ機構1のバックラッシ、角速度変動率などを算出してギヤ機構1の性能を評価することができる。なお、図5において、入力軸1aは、ベルト4a、プーリ4b、4cを介して駆動用のモータ4に連結されている。そこで、入力軸1a側のロータリエンコーダ3aは、モータ4、ベルト4a、プーリ4b、4c、カップリング2aとともに一体のユニット6aとし、出力軸1b側のロータリエンコーダ3bは、カップリング2bとともに一体のユニット6bとして、それぞれ供試のギヤ機構1と組み合わせて使用するものとする。
【特許文献1】特開2005−249628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、供試のギヤ機構の入力軸、出力軸には、それぞれロータリエンコーダを含むユニットを連結する必要があるが、このとき、ロータリエンコーダと入力軸、出力軸とのアラインメントを正しくして高い測定精度を実現するために、各ユニットの設置作業が必ずしも簡便ではないという問題があった。また、ロータリエンコーダと入力軸、出力軸との間に介装するカップリングにばね要素を導入してアラインメントの不整合を吸収しようとすると、ばね定数の影響により振動が発生し、過大な測定誤差を生じることがある。ただし、ここでいうアラインメントとは、2軸間の同心性、平行度の双方を含んでいうものとする。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、円筒状のケーシングと、ケーシングの軸心上に内装する回転軸とを組み合わせることによって、ロータリエンコーダと、連結対象としての外部装置の軸との間に十分なアラインメントを簡単に実現することができるロータリエンコーダの連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、円筒状のケーシングと、ベアリングを介してケーシングの軸心上に内装する回転軸と、ケーシングを固定する保持手段とを備えてなり、ケーシングには、回転軸をロックするセットねじを設け、ケーシングの外周には、軸心と平行な第1の計測面と、軸心に直角の第2の計測面とをそれぞれ周方向に連続させて形成し、ケーシングには、回転軸の回転を検出するロータリエンコーダを組み付けることをその要旨とする。
【0007】
なお、保持手段は、ケーシングの外周に嵌合させるリングと、リングの径方向に立設し、ケーシングを半径方向に移動調節する複数の調節ねじとを備えることができる。
【0008】
また、回転軸は、いんろう形のカップリングを介してロータリエンコーダの連結対象としての外部装置の軸に連結し、カップリングには、外部装置の軸と回転軸との平行度を調節する複数の調節ねじを立設してもよい。
【発明の効果】
【0009】
かかる発明の構成によるときは、円筒状のケーシングの軸心上に内装する回転軸の回転は、ケーシングに組み付けるロータリエンコーダによって検出することができ、回転軸の一端は、ケーシングから突出させ、連結対象としての外部装置の軸に直接的または間接的に連結することができる。そこで、ケーシングに設けるセットねじを介して回転軸をケーシングにロックし、保持手段によるケーシングの固定を解放した上、外部装置の軸を介して回転軸とケーシングとを一体的に回転させながら、ケーシングの外周の第1、第2の計測面の振れをそれぞれダイヤルゲージで計測することにより、外部装置の軸に対するケーシングの軸心の偏心量と偏角、すなわち両者間の同心性、平行度をチェックすることができる。第1の計測面は、ケーシングの軸心と平行に形成され、第2の計測面は、ケーシングの軸心に直角に形成されているからである。
【0010】
したがって、たとえば保持手段を介してケーシングの固定位置を半径方向に移動調節して第1、第2の計測面の振れをそれぞれ最少にセットすれば、外部装置の軸と、ロータリエンコーダとのアラインメントを容易に正しく設定することができる。ただし、ケーシングと、回転軸、ロータリエンコーダとの各軸心は、それぞれ互いに正しいアラインメントにあらかじめ設定されているものとする。なお、ダイヤルゲージによって計測される第1、第2の計測面の振れ幅a、bとすると、計測位置における同心性の狂いはa/2であり、平行度の狂いはbである。
【0011】
保持手段は、ケーシングの外周に隙間嵌めで嵌合させる調節ねじ付きのリングとすることにより、ケーシングを半径方向に移動調節して固定することができる。なお、リングは、たとえば固定用の脚を介して定盤上に固定し、ケーシングを水平に保持するものとする。また、調節ねじは、たとえば3本以上をリングの周方向に等間隔に配置することが好ましい。
【0012】
回転軸を外部装置の軸に連結するいんろう形のカップリングに複数の調節ねじを立設することにより、調節ねじを介して外部装置の軸とロータリエンコーダとのアラインメントを正しく設定することができる。いんろう形のカップリングは、外部装置の軸と回転軸との同心性を保証するから、複数の調節ねじは、外部装置の軸と回転軸、ケーシングの各軸心の平行度を調節できればよく、カップリングの偏心位置に対して軸方向に立設すればよい。また、この場合の保持手段は、単にケーシングの回転止めとして利用すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
ロータリエンコーダの連結構造は、円筒状のケーシング10と、ケーシング10に内装する回転軸21と、ケーシング10を固定する保持手段30とを備えてなる(図1、図2)。なお、ケーシング10の一端には、回転軸21の一端に連結するロータリエンコーダ22が組み付けられている。
【0015】
ケーシング10は、前後の小径部11、大径部12を有し、小径部11の中間部外周には、外フランジ11aが形成されている。また、小径部11には、アンギュラコンタクトのベアリング23、23を介し、回転軸21がケーシング10の軸心C上に内装されている。回転軸21は、ケーシング10の前端に突出する最大径部から後方に向けて順に小径となる段付き軸であって、回転軸21の前端面には、軸心C上の大径穴21aと、大径穴21aのまわりのねじ穴21b、21b…とが形成されている。
【0016】
ケーシング10の前端には、回転軸21の最大径部を前後に貫通させるシール兼用の蓋板25aがねじ止めされている。一方、小径部11内のベアリング23、23の外輪側は、蓋板25aと、小径部11の後部内周の段との間において、中間のスペーサリング23aを介して位置決めされている。また、ベアリング23、23の内輪側は、小径部11の後部において回転軸21に後方からねじ込むナット24と、小径部11の前部において回転軸21に形成する段との間において、中間のスペーサリング23bを介して位置決めされている。小径部11の後端には、回転軸21の中間部を前後に貫通させる別のシール兼用の蓋板25bがねじ止めされている。
【0017】
回転軸21の後端部は、蓋板25bを貫通し、大径部12内の軸心C上に後向きに突出している。一方、大径部12内には、ケーシング10の後端に装着するロータリエンコーダ22の軸が軸心C上に前向きに突出しており、回転軸21は、カップリング26を介してロータリエンコーダ22の軸に連結されている。なお、大径部12には、蓋板25b、カップリング26などの着脱作業などのために、大きな開口部12a、12aが軸心Cを挟んで対称形に設けられている。ただし、図1には、紙面の奥側の開口部12aのみが図示されている。また、ロータリエンコーダ22には、保護用のカバー22aが掛けられている。
【0018】
小径部11の外周には、軸心Cと平行な第1の計測面27aが外フランジ11aの前方に形成され、軸心Cに直角の第2の計測面27bが外フランジ11aの前面に形成されている。第1、第2の計測面27a、27bは、それぞれ十分な平滑度に仕上げられており、それぞれケーシング10の周方向に連続させて形成されている。
【0019】
小径部11の後端部には、回転軸21上のナット24に向けてセットねじ28、28が径方向に立設されている。セットねじ28、28は、それを締め込むことにより、ナット24を介して回転軸21をケーシング10に対して回転不能にロックすることができ、それを緩めることにより、回転軸21を回転自在に解放することができる。
【0020】
保持手段30は、リング31と、リング31の径方向に立設する複数の調節ねじ32、32…とを備えて構成されている。リング31は、ケーシング10の大径部12の外周に対して適当な隙間を介して隙間嵌めで嵌合させることができる。また、調節ねじ32、32…は、リング31の周方向に等間隔に配置され、リング31を外側から内側に貫通している。そこで、保持手段30は、調節ねじ32、32…を締め込むことにより、ケーシング10を半径方向に移動調節可能に固定することができる。なお、リング31は、先端に雄ねじ部33aを有する支持脚33を介して定盤F上に支持されており、ケーシング10を水平に保持することができる。
【0021】
ケーシング10から突出する回転軸21の前端には、連結対象としての外部装置の軸を連結する(図3)。ただし、図3において、外部装置の軸として、図5のギヤ機構1の入力軸1aが例示されている。入力軸1aには、楔形の締結金具1a1 を介してプーリ4cが固定されており、プーリ4c、回転軸21は、いんろう形のカップリング2aを介して連結されている。すなわち、入力軸1a、回転軸21は、プーリ4c、カップリング2aを介し、ばね要素を介することなく間接的に連結されている。
【0022】
図3において、ケーシング10上のセットねじ28、28を締め付けると、回転軸21をケーシング10と一体にロックすることができる。そこで、リング31上の調節ねじ32、32…を緩め、ケーシング10の外周の第1、第2の計測面27a、27bに対してそれぞれダイヤルゲージDa 、Db をセットして入力軸1a、プーリ4cを回転させると、ダイヤルゲージDa 、Db の振れは、それぞれ入力軸1aに対するケーシング10の軸心Cの同心性、平行度を示す。したがって、ダイヤルゲージDa 、Db の振れ幅がそれぞれ最少となるように調節ねじ32、32…を調節してケーシング10を固定することにより、入力軸1aとロータリエンコーダ22の軸との正しいアラインメントを簡単に実現することができる。よって、セットねじ28、28を緩めて回転軸21を回転自在に解放し、プーリ4cを介して入力軸1aを回転駆動してロータリエンコーダ22を作動させ、回転軸21、入力軸1aの回転を検出することができる。
【他の実施の形態】
【0023】
入力軸1aとロータリエンコーダ22の軸とのアラインメントは、プーリ4cと回転軸21とを連結するいんろう形のカップリング2aに立設する調節ねじ2a2 、2a2 …を介して正しく設定してもよい(図4)。ただし、図4(A)は、図3のY−Y線矢視相当図であり、同図(B)、(C)は、それぞれ同図(A)のZ1 −Z1 線、Z2 −Z2 線矢視相当拡大断面図である。
【0024】
カップリング2aは、ボルト孔2a1aを介してプーリ4c側のねじ穴2a1bにねじ込むボルト2a1 、2a1 …を介してプーリ4cに連結されており、調節ねじ2a2 、2a2 …は、それぞれカップリング2aに形成するねじ孔2a2aにねじ込むことにより、先端をプーリ4cに突き当てることができる。そこで、いんろう形のカップリング2aは、ボルト2a1 、2a1 …を介してプーリ4cと同軸に連結されており、調節ねじ2a2 、2a2 …を調節することにより、プーリ4cに対する傾きを調節し、入力軸1aと回転軸21との平行度を調節することができる。ただし、このときの保持手段30は、単にケーシング10の回り止めとして機能すればよく、ケーシング10を定盤F上に水平に支持することができる限り、どのような形式、形状であっても構わない。
【0025】
以上の説明において、図3の入力軸1a、プーリ4c、カップリング2aは、ギヤ機構1の出力軸1b、カップリング2bに代えてもよい。すなわち、この発明は、ギヤ機構1の入力軸1a、出力軸1bの双方に適用可能である。
【0026】
なお、回転軸21は、ギヤ機構1の入力軸1a、出力軸1bに限らず、他の任意の外部装置の軸に連結し、ロータリエンコーダ22を介して外部装置の軸の回転を高精度に検出することができる。また、このときの連結態様は、図3のような間接的な形態に代えて、直接的な形態であってもよい。なお、ケーシング10内の回転軸21とロータリエンコーダ22の軸との連結形態も、カップリング26の形式を任意に選択し、カップリング26を省略してもよい。また、ロータリエンコーダ22は、回転軸21の後部に直接マウントする中空軸形エンコーダとしてもよい。すなわち、ロータリエンコーダ22は、回転軸21の回転を検出することができればよく、任意の形態によりケーシング10に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】全体構成縦断面図
【図2】図1のX矢視相当図
【図3】使用状態説明図
【図4】他の実施の形態を示す要部構成説明図
【図5】従来技術を示すブロック系統図
【符号の説明】
【0028】
C…軸心
2a…カップリング
2a2 …調節ねじ
10…ケーシング
21…回転軸
22…ロータリエンコーダ
27a…第1の計測面
27b…第2の計測面
28…セットねじ
30…保持手段
31…リング
32…調節ねじ

特許出願人 株式会社 シンヱーテック
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケーシングと、ベアリングを介して前記ケーシングの軸心上に内装する回転軸と、前記ケーシングを固定する保持手段とを備えてなり、前記ケーシングには、前記回転軸をロックするセットねじを設け、前記ケーシングの外周には、軸心と平行な第1の計測面と、軸心に直角の第2の計測面とをそれぞれ周方向に連続させて形成し、前記ケーシングには、前記回転軸の回転を検出するロータリエンコーダを組み付けることを特徴とするロータリエンコーダの連結構造。
【請求項2】
前記保持手段は、前記ケーシングの外周に嵌合させるリングと、該リングに立設し、前記ケーシングを半径方向に移動調節する複数の調節ねじとを備えることを特徴とする請求項1記載のロータリエンコーダの連結構造。
【請求項3】
前記回転軸は、いんろう形のカップリングを介して前記ロータリエンコーダの連結対象としての外部装置の軸に連結し、前記カップリングには、外部装置の軸と前記回転軸との平行度を調節する複数の調節ねじを立設することを特徴とする請求項1記載のロータリエンコーダの連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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