説明

ロータリースイッチ

【課題】 本発明は、ハウジングを薄肉化しても反り等の変形が発生しないと共に、クリック機構の磨耗を軽減して長寿命のロータリースイッチを提供すること。
【解決手段】 本発明に係わるハウジング2は、下方が底壁3で遮蔽されると共に、周囲が外周壁2aで囲まれて内部が空洞状になっており、ハウジング2の空洞内部には、回転体9の回転に伴ってクリック感触が得られるクリック機構が配設され、前記クリック機構は、金属板からなるクリック板7と、このクリック板7に形成した複数のクリック発生部7bに摺動してクリック感触が得られる金属板からなる弾性部材10とを有し、前記弾性部材10は、回転体9と共に回転可能になっており、クリック板7は、ハウジングの底壁3上に配設されて弾性部材10の付勢力により底壁に押圧されているので、ハウジングの変形を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリースイッチに係わり、デジタルカメラ等のディスプレイに表示されるメニュー等を切替可能なロータリースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリースイッチを、例えば特許文献1に記載のもので説明すると、特許文献1記載のロータリースイッチ30は、図6、図7に示すように、最下部に樹脂材料からなるハウジング31が配設され、このハウジング31には、円筒状の支持部31aと、この支持部31aの下端側に略円環状の収納部31bとを有する基盤部31cが形成されている。
前記基盤部31cには、外方に導出して開口部31dが形成され、この開口部31dには、固定端子部32が配設されている。また、固定端子部32は、絶縁材からなる基台 32aと、この基台32aの一端側から複数の接続端子32bが延出形成されている。そして、複数の接続端子32bは、基台 32aに埋設されていると共に、基台 32aの他端部側から延出する複数の摺動子32cに接続されている。
【0003】
また、ハウジング31の収納部31bには、樹脂材料からなる回路基板33が配設され、この回路基板33は、中央にハウジング31の支持部31aが挿通可能な挿通孔33aが形成されて外形が円環状に形成されている。
また、回路基板33は、下面に摺動子32cと摺動する環状の接点部(図示せず)が複数形成されて、回転体34の下面に固着されている。
そして、回転体34の回転に伴って回路基板33が回転することで、接点部が摺動子32cに対して摺動してスイッチ回路が切換わるようになっている。
前記回転体34は、樹脂材料からなり、ハウジング31の支持部31aに挿入されて回転可能な円筒状の回転軸部34aが形成されている。
【0004】
また、回転軸部34aの図示下端側には、ハウジング31の収納部31bに収納されるツバ状の基部34bが形成され、この基部34bの下面に回路基板33が接着剤等で固着されている。そして、基部34bの上面には、内側の内周領域に複数の凹溝34cが周方向に複数形成されると共に、凹溝34cの外側の外周領域に平坦状の補助ばね受け部34dが形成されている。
また、凹溝34c上には、略円環状のばね部材35が配設され、このばね部材35の互いに対向する位置に一対の平坦部35aが形成され、この平坦部35aにかしめ孔35bが形成されている。
【0005】
また、ばね部材35は、平坦部35aを境として両端部を略V字状に屈曲した弾性腕部35cが形成され、この弾性腕部35cの一端側の中央には、凹溝34cに係脱可能な凸部35dが形成されている。
前記凸部35d近傍から外側に延設され、弾性腕部35cの円弧方向に沿って略T字状で自由端状の補助ばね部35eが形成されている。
【0006】
また、ばね部材35の上部に配設される金属板からなるフレーム36には、回転体34の回転軸部34aが挿通する窓孔36aが形成されると共に、ばね部材35を下面に取付けるための一対の取付孔36bが形成されている。
そして、取付孔36bにばね部材35のかしめ孔35bを重ね合わせた状態でリベット37を挿入してかしめ付けることで、フレーム36にばね部材35が固着されて一体化される。
また、フレーム36には、ハウジング31にかしめ付けて取付けるための複数の係合片36cと、電子機器などの基板(図示せず)にリフロー半田等で取付けるための取付脚36dとが形成されている。
このような従来のロータリースイッチは、フレーム36の係合片36cをハウジング31にかしめ付けて組み立てがされ、ハウジング31から図示下方に突出するフレーム36の取付脚36dが、電子機器などの基板にリフロー半田等により取付け可能になっている。
【0007】
このような構成の従来のロータリースイッチの操作は、まず、回転体34の回転軸部34aに取付けた摘み(図示せず)を回転操作すると、ハウジング31の支持部31aを中心として回転体34が回転する。
この時、回転体34に取付けた回路基板33が回動して、この回路基板33に形成した接点部(図示せず)が固定端子部32の摺動子32cに当接した状態で摺動して、スイッチの切替が行われる。
また、回転体34が回転することで、図8に示すように、補助ばね部35eの自由端部が、平坦状の補助ばね受け部34dに当接した状態で摺動すると共に、回転体34の凹溝34cがばね部材35の凸部35dに対して係脱してクリック感が得られる。
即ち、樹脂材料からなる回転体34の凹溝34cと、金属板からなるばね部材35の凸部35dとでクリック機構を構成して、クリック感触を得ることができるようになっている。
【特許文献1】特開2002−110002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のロータリースイッチは、最近の薄型化の要求に対応してハウジング31を薄肉にすると、電子機器などの基板にリフロー半田付け等で取付ける時の熱によって、薄肉のハウジング31に反り、或いはねじれ等の不具合が発生するおそれがあった。そのために、従来のロータリスイッチは、ハウジングの変形を防止するための専用部材が必要であった。
また、回転体34が樹脂材料で形成され、ばね部材35が金属板で形成されているために、クリック機構である回転体34の凹溝34cが、ばね部材35の凸部35dに対して係脱を繰り返すことで、凹溝34cのコーナ部が削られて磨耗し、ロータリースイッチの寿命が短くなる問題があった。
また、凹溝34cが削られることで、樹脂粉等の磨耗粉が発生し、摺動子32c、或いは回路基板33の接点部等に付着して、スイッチが導通不良等になるおそれがあった。
【0009】
本発明は、前述したような課題を解決するためになされたもので、ハウジングを薄肉化しても反り等の変形が発生しないと共に、クリック機構の磨耗を軽減して長寿命のロータリースイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための第1の手段として本発明のロータリースイッチは、回転可能な回転体と、この回転体の一部を回転可能に収納する空洞部を有するハウジングと、前記空洞部内に配設した固定接点と、前記回転体に取付けられて前記固定接点に接離可能な可動接点と、前記ハウジングの空洞部上を遮蔽すると共に前記回転体を前記回転操作可能に保持する保持部材とを備え、
前記ハウジングは、前記空洞部の下方を遮蔽する底壁と、前記空洞部の周囲に形成した外周壁とを有し、前記ハウジングの前記空洞部内には、前記回転体の回転に伴ってクリック感触が得られるクリック機構が配設され、前記クリック機構は、金属板からなるクリック板と、このクリック板に形成した複数のクリック発生部を摺動して前記クリック感触が得られる金属板からなる弾性部材とを有し、前記弾性部材は、前記回転体と共に回転可能になっており、前記クリック板は、前記ハウジングの底壁上に配設されて前記弾性部材の付勢力により前記底壁に押圧されていることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第2の手段として、前記弾性部材には、前記クリック発生部に係脱可能な係脱部が形成され、前記クリック板には、前記弾性部材の前記係脱部が摺動可能な摺動部が形成されると共に、前記摺動部に前記クリック発生部が複数形成されていることを特徴とする請求項1記載のロータリースイッチ。
【0011】
また、前記課題を解決するための第3の手段として、前記クリック板の前記クリック発生部は、前記摺動部を所定間隔で貫通形成した複数の孔部からなり、前記弾性部材の前記係脱部は、前記孔部に係脱可能な凸状に形成されていることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第4の手段として、前記クリック板には、前記摺動部の外周縁に回り止め部が形成され、この回り止め部が前記ハウジングの前記外周壁に形成した係合部に係合可能になっていることを特徴とする。
【0012】
また、前記課題を解決するための第5の手段として、前記弾性部材は、一部が前記回転体に埋設されて一体化され、前記係脱部は、前記回転体の回転中心を挟んだ対称位置に一対形成されていることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第6の手段として、前記回転体は、回転中心を挟んで対称方向に延出形成された一対のアーム部を有し、前記弾性部材は、環状に形成された一部が前記一対のアーム部に前記埋設されて前記一体化されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記課題を解決するための第7の手段として、前記ハウジングの前記空洞部内には、内周側に内周領域と、外周側に外周領域とが形成され、前記内周領域の前記底壁には、前記固定接点が配設され、前記外周領域の前記底壁には、前記クリック板が配設され、前記内周領域と前記外周領域との間に所定高さの防塵壁が形成されていることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第8の手段として、前記クリック板に形成した前記孔部からなる前記クリック発生部と対向する位置の前記底壁には、所定深さで凹部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記課題を解決するための第9の手段として、前記凹部は、前記クリック発生部と対向する位置の前記底壁に形成した円弧状の凹溝からなることを特徴とする。
また、前記課題を解決するための第10の手段として、前記ハウジングの前記底壁の中心部には、上方に突出する支持軸が形成され、前記支持軸と対向する前記回転体の回転中心には、前記支持軸に嵌合して回転可能な支持孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロータリースイッチのクリック機構は、金属板からなるクリック板と、このクリック板に形成した複数のクリック発生部を摺動してクリック感触が得られる金属板からなる弾性部材とを有し、この弾性部材は、回転体と共に回転可能になっており、クリック板は、ハウジングの底壁上に配設されて弾性部材の付勢力により底壁に押圧されているので、弾性部材により底壁に押圧されるクリック板によって、リフロー半田等の熱によるハウジングの変形を防止できる。そのために、ハウジングの変形防止用の専用部材が不要になる。また、弾性部材及びクリック板の両方が金属板なので、互いの磨耗を軽減できて長寿命のロータリースイッチを提供できる。
また、弾性部材は、クリック発生部に係脱可能な係脱部が形成され、クリック板には、弾性部材の係脱部が摺動可能な摺動部が形成されると共に、摺動部にクリック発生部が複数形成されているので、弾性部材の係脱部がクリック板の複数のクリック発生部を係脱することで、クリック感触を確実に得ることができる。
【0016】
また、クリック板のクリック発生部は、摺動部を所定間隔で貫通形成した複数の孔部からなり、弾性部材の係脱部は、孔部に係脱可能な凸状に形成されているので、孔部からなるクリック発生部が摺動部で繋がっておりクリック板の剛性を高めることができ、より確実なハウジングの変形防止ができる。また、孔部に凸状の係脱部が係脱するので、更に確実なクリック感触を得ることができる。
また、クリック板には、摺動部の外周縁に回り止め部が形成され、この回り止め部がハウジングの外周壁に形成した係合部に係合可能になっているので、クリック板を確実に回り止めすることができる。
【0017】
また、弾性部材は、回転体に埋設されて一体化され、係脱部は、回転体の回転中心を挟んだ対称位置に一対形成されているので、一対の係脱部によって、クリック板をバランスよく均等に弾性付勢することができる。
また、回転体には、回転中心を挟んで対称方向に突出する一対のアーム部が形成され、弾性部材は、環状に形成された一部分が一対のアーム部に埋設されているので、回転体の外周部に弾性部材を配設できると共に、回転体の厚さ内に弾性部材を埋設できる。そのために、薄型化が可能である。
【0018】
また、ハウジングの空洞部内には、内周側に形成した内周領域と、外周側に形成した外周領域とを有し、内周領域の底壁には、固定接点が配設され、外周領域の底壁には、クリック板が配設され、内周領域と外周領域との間に所定高さの防塵壁が形成されているので、固定接点に塗布している接点用グリスと、クリック板に塗布している潤滑用グリスとが混ざるのを防止できる。
更に、クリック板、または弾性部材が磨耗して金属粉が発生したとしても、この金属粉が内周領域の接点領域に侵入するのを防止できる。
また、外周領域の底壁には、クリック板に形成した孔部からなるクリック発生部と対向する位置に、所定深さで凹部が形成されているので、孔部からなるクリック発生部に係合する凸状の係脱部が、クリック発生部から突き出たとしても底壁に当接するのを防止できる。
【0019】
また、凹部は、クリック発生部と対向する位置の底壁に形成した円弧状の凹溝からなるので、ハウジングを製造する成型金型の製造が容易である。
また、ハウジングの底壁の中心部には、上方に突出する支持軸が形成され、支持軸と対向する回転体の回転中心には、支持軸に嵌合して回転可能な支持孔が形成されているので、回転体の偏心を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明のロータリースイッチの実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明の実施の形態のロータリースイッチ1を図1〜図5に基づいて説明すると、外形が多角形(例えば8角形)に形成された樹脂材料からなるハウジング2が最下部に配設されている。
このハウジング2は、周囲が外周壁2aで囲まれ、この外周壁2aの外周面には、鉤状のフック部2bが4箇所に突出形成されている。前記外周壁2aの内周面の複数箇所には、後述するクリック板7の回り止め部7c及び切起し部7dが係合可能な係合部2cが形成されている。
【0021】
また、ハウジング2は、内部に空洞部2eが形成され、この空洞部2eの下部が底壁3で遮蔽されて上方が開放されている。前記底壁3の裏面には、図3に示すように、電子機器などの基板(図示せず)に位置決めするための位置決め突起2dが突出形成されている。
前記底壁3上には、所定高さの防塵壁3aが環状に形成され、空洞部2eは、防塵壁3aを挟んだ内側に内周領域3b、外側に外周領域3cが形成されている。そして、内周領域3bには、複数の固定接点4が形成されている。
【0022】
前記固定接点4は、防塵壁3aに接する内周領域3bの外側に、複数の個別接点4aが円周方向に互いに隣り合って形成されると共に、個別接点4aの内周側に環状の共通接点4bが形成されている。
また、外周領域3cの底壁3上には、金属板からなる後述するクリック板7が配設されている。
即ち、ハウジング2の空洞部2e内には、内周側に形成した内周領域3bと、外周側に形成した外周領域3cとを有し、内周領域3bの底壁3には、固定接点4が配設され、外周領域3cの底壁3には、クリック板7が配設され、内周領域3bと外周領域3cとの間に所定高さの防塵壁3aが形成されている。
【0023】
また、個別接点4a及び共通接点4bは、それぞれが絶縁されて底壁3に埋設され、外周壁2aから外方に延出して複数の外部端子5に接続されている。
また、外周領域3cの底壁3には、所定深さで円弧状の凹溝からなる凹部3dが円周方向に形成され、この凹部3dを挟んだ内周側と外周側とに、同じ高さのクリック板受け部3eが形成されている。
また、共通電極4bの内側で底壁3の中心部には、所定の径寸法と高さ寸法の支持軸6が突出形成されている。
【0024】
また、ハウジング2の空洞部2e内には、後述する回転体9を回転操作することでクリック感触を得ることができるクリック機構が配設されている。前記クリック機構は、所定厚さの金属板からなるクリック板7を有し、このクリック板7は、ハウジング2の外周領域3cのクリック板受け部3e上に載置可能な環状に形成されている。
また、クリック板7には、一方の面である図示上面が平坦状に形成された摺動部7aが設けられている。前記摺動部7aには、複数の角孔状の孔部からなるクリック発生部7bが円周方向に所定間隔で打ち抜きされて貫通形成されている。
前記孔部からなるクリック発生部7bは、一方の面(図示上面)側から打抜き加工しているので、一方の面側のコーナ部にダレ(剪断面)が発生すると共に、他方の面(図示下面)側にバリ(破断面)が発生するようになっている。
そのために、クリック発生部7bに後述する弾性部材10の凸状の係脱部10aを無理なく係脱でき、操作フィーリングの良いクリック感触を得ることができる。
【0025】
また、クリック板7には、環状の外周縁部の互いに対向する位置の2箇所に回り止め部7c、7cが突出形成され、一方の回り止め部7c近傍を図示上方の一方向に所定高さで切曲げした切曲げ部7dが形成されている。
そして、ハウジング2の外周領域3cのクリック板受け部3e上にクリック板7を載置すると、回り止め部7cが外周壁2aの係合部2cに係合して、クリック板7の回転方向の動きが規制されて回り止めされるようになっている。
また、切曲げ部7dは、一方向に切曲げされているので、クリック板7の裏表を識別可能になっていると共に、組立て時にクリック板7をチャッキングできるようになっている。
【0026】
また、ハウジング2の内周領域3b上には、共通接点4bに当接して摺動可能な第1摺動子8aと、個別接点4aに当接して摺動可能な第2摺動子8bとが形成された略環状の可動接点8が配設されている。
前記可動接点8には、互いに対向する位置の2箇所に取付孔8c、8cが形成され、この取付孔8c、8cが回転体9に取付け可能になっている。
また、回転体9は、樹脂材料からなり、外形が円形状の基部9aと、この基部9aから上方に突出する摘み部9bと、回転中心(摘み部9b)を挟んで基部9aから対称方向に所定長さで延びる一対のアーム部9c、9cとが形成されている。
【0027】
また、一対のアーム部9c、9cの先端部寄りの位置には、回転体9の回転中心を中心とする円弧状の凸条部9d、9dが形成され、この凸条部9d、9dによって、後述する保持部材11と回転体9との間での摩擦抵抗を小さくするようになっている。
また、回転体9には、図4に示すように、底壁3に形成した支持軸6と対向する回転中心に、支持軸6に嵌合して回転可能な支持孔9eが所定深さで形成されている。また、アーム部9cの端部寄りには、ステンレス板等の弾性を有する金属板からなる外形が環状の弾性部材10が埋設して固着されている。
【0028】
前記環状の弾性部材10は、回転体9の回転中心(摘み部9b)を挟んで、アーム部9c、9cの延出方向と直交する方向の対称位置に、図示下方側に突出させて凸状の係脱部10a、10aが形成されている。そして、基部9a下面に、可動接点8が取付けられて回転体9が構成されている。
このような構成の回転体9は、係脱部10a、10aを、クリック板7の摺動部7a上に位置させ、後述する保持部材11でハウジング2の開放された上方を遮蔽すると、弾性部材10の付勢力によりクリック板7がハウジング2の底壁3に押圧されるようになっている。この時、回転体9を回転操作させると、係脱部10aが角孔状のクリック発生部7bにを係脱して、所定の大きさのクリック感触が得られるようになっている。
【0029】
また、回転体9の上方には、回転体9を弾性部材10の付勢力に抗してハウジングの空洞内部に保持するための金属板からなる保持部材11が配設されている。
この保持部材11は、外形が略8角形の遮蔽部11aを有し、この遮蔽部11aの中央部に、摘み部9bが挿通して回転体9を回転自在に支持可能な軸孔11bが形成されている。また、遮蔽部11aの外周縁部には、互いに対向する位置の4箇所に、ハウジング2のフック部2bにスナップ係止可能な係止部11cが形成されている。
【0030】
このような構成の本発明のロータリースイッチ1の組立ては、クリック板7の切曲げ部7cを上向きにした状態で、回り止め部7cをハウジング2の係合部2cに係合させて、底壁3のクリック板受け部3e上にクリック板7を載置する。その後、クリック板7の摺動部7a上に、弾性部材10の係脱部10aを位置合わせして回転体9を載置する。
すると、可動接点8の第1摺動子8aが共通接点4b上に位置すると共に、第2摺動子8bが個別接点4a上に位置する。
【0031】
次に、回転体9上に保持部材11を位置させて、保持部材11の軸孔11bに回転体9の摘み部9bを挿通すると共に、係止部11cをハウジング2のフック部2bにスナップ係止すると、弾性部材10の付勢力に抗して回転体9が保持部材11で下方に押圧されて、弾性部材10の係脱部10aがクリック板7をハウジング2の底壁3に押圧する。
同時に、可動接点8の第1摺動子8aが共通接点4bに弾接すると共に、第2摺動子8bが個別接点4aに弾接して、本発明のロータリースイッチ1が組立てされている。
【0032】
このように組立てられたロータリースイッチ1は、薄型化対応のために、ハウジング2の底壁3が薄肉に形成されているが、底壁3上に金属板からなるクリック板7が弾性部材10で押圧されて密着しているので、デジタルカメラ等の電子機器の基板(図示せず)に外部端子5をリフロー半田して取り付けたとしても、半田付け時の熱により発生するハウジング2の反り、或いはねじれ等の変形を防止できる。そのために、薄型化が可能なロータリースイッチ1とすることができる。また、ハウジング2には、内周領域3bと外周領域3cとの間に形成している防塵壁3aによって、クリック板7、または弾性部材10が磨耗して金属粉が発生したとしても、この金属粉が内周領域3bの接点領域に侵入するのを確実に防止できる。そのために、固定接点4と可動接点8との接触を、更に確実にして、安定した接触とすることができる。
また、クリック板7の摺動部7aと弾性部材10の係脱部10aとの摺動性能を向上するために、摺動部7aの上面には、グリス等の潤滑剤が塗布されているが、この潤滑剤は、防塵壁3aによって、内周領域3bに流れ込むのを防止できる。
【0033】
このようなロータリースイッチ1の操作は、回転体9の摘み部9bを操作者が回転操作すると、弾性部材10の係脱部10aがクリック板7の摺動部7a上を摺動して、クリック発生部7bを係脱してクリック感触が発生する。
このことにより、摘み部9bを回転操作する操作者が、クリック感触を得ると共に、このクリック感触に対応して、第1摺動子8aが複数の個別接点4aを接離してスイッチ回路が切替えられる。
即ち、スイッチ回路の切替えに連動して、クリック感触を操作者が得ることができ、操作性に優れている。
このような本発明のロータリースイッチ1は、例えばデジタルカメラ等の電子機器に用いられれており、回転体9を回転操作することで、ディスプレイ上に表示されているメニュー等の選択、或いはスクロール等が行えるようになっている。
【0034】
尚、底壁3に形成した凹部3dは、図1において、所定深さと幅寸法の環状のもので説明したが、底壁3上に載置したクリック板7のクリック発生部7bと対向する位置に、所定深さで角孔状に掘り込み形成したものでも良い。
また、クリック板7のクリック発生部7bを角孔状に打ち抜き形成したもので説明したが、摺動部7aを所定深さで凹状に図示下方にへこませたものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のロータリースイッチの分解斜視図である。
【図2】本発明のロータリースイッチの上面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】図2の4-4断面図である。
【図5】図2の5-5断面図である。
【図6】従来のロータリースイッチの分解斜視図である。
【図7】従来のロータリースイッチの回転体の要部拡大図である。
【図8】従来のロータリースイッチの回転体とばね部材の凸部との関係を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 本発明のロータリースイッチ
2 ハウジング
2a 外周壁
2b フック部
2c 係合部
2d 位置決め突起
2e 空洞部
3 底壁
3a 防塵壁
3b 内周領域
3c 外周領域
3d 逃げ溝
3e クリック板受け部
4 固定接点
4a 個別接点
4b 共通接点
5 外部端子
6 支持軸
7 クリック板
7a 摺動部
7b クリック発生部
7c 回り止め部
7d 切曲げ部
8 可動接点
8a 第1摺動子
8b 第2摺動子
8c 取付孔
9 回転体
9a 基部
9b 摘み部
9c アーム部
9d 凸条部
9e 支持孔
10 弾性部材
10a 係脱部
11 保持部材
11a 遮蔽部
11b 軸孔
11c 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な回転体と、この回転体の一部を回転可能に収納する空洞部を有するハウジングと、前記空洞部内に配設した固定接点と、前記回転体に取付けられて前記固定接点に接離可能な可動接点と、前記ハウジングの空洞部上を遮蔽すると共に前記回転体を前記回転操作可能に保持する保持部材とを備え、
前記ハウジングは、前記空洞部の下方を遮蔽する底壁と、前記空洞部の周囲に形成した外周壁とを有し、前記ハウジングの前記空洞部内には、前記回転体の回転に伴ってクリック感触が得られるクリック機構が配設され、前記クリック機構は、金属板からなるクリック板と、このクリック板に形成した複数のクリック発生部を摺動して前記クリック感触が得られる金属板からなる弾性部材とを有し、前記弾性部材は、前記回転体と共に回転可能になっており、前記クリック板は、前記ハウジングの底壁上に配設されて前記弾性部材の付勢力により前記底壁に押圧されていることを特徴とするロータリースイッチ。
【請求項2】
前記弾性部材には、前記クリック発生部に係脱可能な係脱部が形成され、前記クリック板には、前記弾性部材の前記係脱部が摺動可能な摺動部が形成されると共に、前記摺動部に前記クリック発生部が複数形成されていることを特徴とする請求項1記載のロータリースイッチ。
【請求項3】
前記クリック板の前記クリック発生部は、前記摺動部を所定間隔で貫通形成した複数の孔部からなり、前記弾性部材の前記係脱部は、前記孔部に係脱可能な凸状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のロータリースイッチ。
【請求項4】
前記クリック板には、前記摺動部の外周縁に回り止め部が形成され、この回り止め部が前記ハウジングの前記外周壁に形成した係合部に係合可能になっていることを特徴とする請求項2、または3記載のロータリースイッチ。
【請求項5】
前記弾性部材は、一部が前記回転体に埋設されて一体化され、前記係脱部は、前記回転体の回転中心を挟んだ対称位置に一対形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のロータリースイッチ。
【請求項6】
前記回転体は、回転中心を挟んで対称方向に延出形成された一対のアーム部を有し、前記弾性部材は、環状に形成された一部が前記一対のアーム部に前記埋設されて前記一体化されていることを特徴とする請求項5記載のロータリースイッチ。
【請求項7】
前記ハウジングの前記空洞部内には、内周側に内周領域と、外周側に外周領域とが形成され、前記内周領域の前記底壁には、前記固定接点が配設され、前記外周領域の前記底壁には、前記クリック板が配設され、前記内周領域と前記外周領域との間に所定高さの防塵壁が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかにロータリースイッチ。
【請求項8】
前記クリック板に形成した前記孔部からなる前記クリック発生部と対向する位置の前記底壁には、所定深さで凹部が形成されていることを特徴とする請求項4乃至7の何れか1項に記載のロータリースイッチ。
【請求項9】
前記凹部は、前記クリック発生部と対向する位置の前記底壁に形成した円弧状の凹溝からなることを特徴とする請求項8記載のロータリースイッチ。
【請求項10】
前記ハウジングの前記底壁の中心部には、上方に突出する支持軸が形成され、前記支持軸と対向する前記回転体の回転中心には、前記支持軸に嵌合して回転可能な支持孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のロータリースイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−149428(P2007−149428A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340237(P2005−340237)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】