ロータリーダンパ
【課題】隔壁を精密に成形でき、かつ高い耐圧性能を得ることが可能で、さらに軽量化が可能であるロータリーダンパを提供する。
【解決手段】本発明は、本体ケース10が、プレス成形される金属製の外側ケース11であって、周壁11a及び端壁11bを有する外側ケース11と、外側ケース11内に設けられる樹脂製の内側ケース12であって、周壁12aを有する内側ケース12と、内側ケース12の回り止め手段とを有し、隔壁12cが、内側ケース12の部分として、内側ケース12の周壁12aから突出するように設けられ、蓋40が、金属製であって、外側ケース11の周壁11aの端部11fをかしめることにより取り付けられることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、本体ケース10が、プレス成形される金属製の外側ケース11であって、周壁11a及び端壁11bを有する外側ケース11と、外側ケース11内に設けられる樹脂製の内側ケース12であって、周壁12aを有する内側ケース12と、内側ケース12の回り止め手段とを有し、隔壁12cが、内側ケース12の部分として、内側ケース12の周壁12aから突出するように設けられ、蓋40が、金属製であって、外側ケース11の周壁11aの端部11fをかしめることにより取り付けられることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本体ケースと、該本体ケース内に設けられるロータと、該ロータの周りに形成される室と、該室を仕切る隔壁と、前記室内に設けられるベーンと、前記室に充填される粘性液体と、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有し、前記本体ケースと前記ロータとが相対的に回転するときに前記隔壁又は前記ベーンが前記粘性液体を押圧することによって生じる前記粘性液体の抵抗を利用して前記本体ケース又は前記ロータの回転速度を減速させるロータリーダンパが知られている。
【0003】
この種のロータリーダンパにおいては、樹脂又は亜鉛ダイカストから成る本体ケースの部分として隔壁が設けられている。ここで、隔壁は、ロータの外周面に接するように配置されるが、ロータの回転の障害となってはならず、また、ロータとの間の隙間の大きさやばらつきが制動特性に影響を及ぼすため、精密に成形されることが要求される。この点、樹脂又は亜鉛ダイカストから成る成形品(本体ケースと隔壁とが一体に成形されたもの)によれば、隔壁を精密に成形することが容易である。
【0004】
しかしながら、樹脂から成る成形品は、耐圧性能が低いため、大きな制動力を発生させることが困難であった。他方、亜鉛ダイカストから成る成形品は、耐圧性能が高いので大きな制動力を発生させることが可能であるが、重量が重いため、軽量化が困難であった。
【0005】
下記特許文献1には、プレスによって本体ケースと隔壁とが一体に成形された金属製の成形品が開示されている。かかる成形品によれば、高い耐圧性能を得ることができ、かつ軽量化を実現し得る。しかしながら、プレスによって隔壁を精密に成形することが困難であった。
【特許文献1】特開2005−98430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、隔壁を精密に成形でき、かつ高い耐圧性能を得ることが可能で、さらに軽量化が可能であるロータリーダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下のロータリーダンパを提供する。
1.本体ケースと、該本体ケース内に設けられるロータと、該ロータの周りに形成される室と、該室を仕切る隔壁と、前記室内に設けられるベーンと、前記室に充填される粘性液体と、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有し、前記本体ケースと前記ロータとが相対的に回転するときに前記隔壁又は前記ベーンが前記粘性液体を押圧することによって生じる前記粘性液体の抵抗を利用して前記本体ケース又は前記ロータの回転速度を減速させるロータリーダンパであって、
前記本体ケースが、プレス成形される金属製の外側ケースであって、周壁及び端壁を有する外側ケースと、該外側ケース内に設けられる樹脂製の内側ケースであって、周壁を有する内側ケースと、該内側ケースの回り止め手段とを有し、
前記隔壁が、前記内側ケースの部分として、前記内側ケースの周壁から突出するように設けられ、
前記蓋が、金属製であって、前記外側ケースの周壁端部をかしめることにより取り付けられることを特徴とするロータリーダンパ。
2.前記外側ケースの周壁端部の一部に凹部が形成され、前記蓋の外周部の一部に前記凹部に嵌り込む凸部が形成されていることを特徴とする前記1に記載のロータリーダンパ。
3.前記内側ケースが、さらに端壁を有し、前記内側ケースの回り止め手段が、前記内側ケースの端壁に形成される突起と、該突起が嵌り込む穴であって、前記外側ケースの端壁に形成される穴とから構成されることを特徴とする前記1又は2に記載のロータリーダンパ。
【発明の効果】
【0008】
前記1に記載の本発明によれば、隔壁が、樹脂製の内側ケースの部分として、内側ケースの周壁から突出するように設けられるため、隔壁を精密に成形することが容易である。また、前記1に記載の本発明によれば、金属製の外側ケースが内側ケースの外側に配置され、さらに金属製の蓋が外側ケースの周壁端部をかしめることにより取り付けられるため、高い耐圧性能を得ることができ、その結果、大きな制動力を発生させることが可能になる。また、前記1に記載の本発明によれば、外側ケースが金属製であるが、プレス成形が可能な程度に肉厚が薄いため、軽量化が可能である。また、前記1に記載の本発明によれば、内側ケースの回り止め手段を有するため、外側ケース内で内側ケースがしっかりと固定され、その結果、制動特性の安定を図ることができる。さらに、前記1に記載の本発明によれば、製造コストを低減することが可能である。
前記2に記載の本発明によれば、外側ケースの周壁端部の一部に、蓋の外周部の一部に形成される凸部が嵌り込む凹部が形成されるため、該凹部を蓋の位置決め及びかしめ加工時のストッパとして機能させることができ、その結果、蓋を容易にかつ適切な位置に取り付けることが可能になる。
前記3に記載の本発明によれば、内側ケースの端壁に形成される突起が外側ケースの端壁に形成される穴に嵌り込むことにより、内側ケースの回転を抑制することができるため、制動特性の安定を図ることが可能になる。また、突起及び穴がそれぞれ内側ケース及び外側ケースの各端壁に形成されることにより、内側ケース及び外側ケースの各周壁の肉厚を薄くできるため、粘性液体が充填される室の容積を十分に確保することが可能になり、制動特性を向上させることができる。また、突起及び穴は、外側ケースに対する内側ケースの位置決めとしても機能するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0010】
図1は本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す平面図、図2は図1におけるA−A部断面図、図3は図1におけるB−B部断面図、図4は図1におけるC−C部断面図、図5は図2におけるD−D部断面図、図6は本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す底面図である。
【0011】
図1−図6に示したように、本発明の実施例に係るロータリーダンパは、本体ケース10と、本体ケース10内に設けられるロータ20と、ロータ20の周りに形成される室30と、室30を仕切る隔壁12cと、室30内に設けられるベーン21と、室30に充填される粘性液体と、本体ケース10の開口部を閉塞する蓋40とを有して構成される。
【0012】
本体ケース10は、外側ケース11と、内側ケース12と、内側ケース12の回り止め手段とを有して構成される(図5参照)。
【0013】
外側ケース11は、厚さの薄い金属板をプレス加工することによって成形されたものであり、周壁11a及び端壁11bを有して構成される(図7−図9参照)。周壁11aの端部11fの一部には、凹部11cが形成されている(図8,図9参照)。端壁11bの中央には、貫通孔11dが形成され、貫通孔11dの周りには、端壁11bを貫通する複数の穴11eが形成されている(図7−図9参照)。
【0014】
内側ケース12は、樹脂から成り、周壁12a,12b、隔壁12c及び端壁12dを有して構成される(図10−図12参照)。周壁12a,12bには、外側ケース11の周壁11aに隣接して配置される外周壁12aと、ロータ20を支持する内周壁12bとが含まれる(図11参照)。隔壁12cは、内側ケース12の部分として、外周壁12aから内周壁12bに向かって突出するように形成される(図12参照)。端壁12dには、外側ケース10の端壁11bに形成された穴11eに嵌り込む突起12eが形成されている(図10,図11参照)。上記のように構成される内側ケース12は、金型を用いた成形法により成形されるが、素材が樹脂であるため、隔壁12cを精密に成形できる。また、隔壁12cは、周壁(外周壁12a)から突出するように形成されるため、隔壁12cの形状だけでなく、隔壁12cの位置も精密に成形することができる。
【0015】
内側ケース12の回り止め手段は、外側ケース11の穴11eと内側ケース12の突起12eとから構成される。かかる回り止め手段によれば、図3及び図4に示したように、突起12eが穴11eに嵌り込むことにより、内側ケース12の回転を抑制することができる。突起12e及び穴11eは、外側ケース11に対する内側ケース12の位置決めとしても機能する。
【0016】
ロータ20の中央には、ロータ20を貫通する孔部20aが形成され、孔部20aの周りには、内側ケース12の内周壁12bが嵌り込む溝20bが形成されている(図13,図14参照)。ロータ20の下端側には、所定の深さを有する大径部20cと、所定の深さを有し、大径部20cより内径が小さい小径部20dが形成されている(図14,図15参照)。ロータ20は、図4に示したように、本体ケース10内において、溝20bに嵌め込まれる内側ケース12の内周壁12bと、小径部20dに嵌め込まれる蓋40の内周壁40aとにより支持されており、ロータ20と本体ケース10は相対的に回転可能である。
【0017】
図5に示したように、本体ケース10内にロータ20を設けることにより、ロータ20の周りには室30が形成される。室30は、ロータ20の外周面に接するように配置される隔壁12cによって仕切られている(図5参照)。室30内には、粘性液体が充填される。粘性液体の漏出を防止するため、ロータ20に形成される溝20b及び大径部20cにOリング50が配設されている(図4参照)。
【0018】
ベーン21は、ロータ20の部分として、ロータ20の外周面から突出するように形成されている(図13−図15参照)。実施例において採用したベーン21は、先端部21aが弁としての機能を果たすように、一面側に溝21bが設けられている(図13−図15参照)。
【0019】
実施例に係るロータリーダンパは、本体ケース10とロータ20とが相対的に回転するときに隔壁12c又はベーン21が粘性液体を押圧することによって生じる粘性液体の抵抗を利用して本体ケース10又はロータ20の回転速度を減速させるものであるところ、かかるベーン21によれば、ロータ20が回転する場合には、ベーン21が図5において時計回り方向へ回転することにより、ベーン21の先端部21aがロータ20に近接する方向へ変形して、先端部21aと内側ケース12の外周壁12aとの間に粘性液体が通過する流路を形成する。したがって、このときに発生する粘性液体の抵抗は小さいため、ロータ20の回転速度は殆ど減速しない。一方、ベーン21が図5において反時計回り方向へ回転するときは、先端部21aが内側ケースの外周壁12aに圧接するように変形して、上記流路を閉鎖する。したがって、このときに発生する粘性液体の抵抗は大きいため、ロータ20の回転速度は減速する。他方、本体ケース10が回転する場合には、隔壁12cが図5において時計回り方向へ回転することにより、ベーン21の先端部21aが内側ケース12の外周壁12aに圧接するため、本体ケース10の回転速度が減速する。一方、隔壁12cが図5において反時計回り方向へ回転するときには、ベーン21の先端部21aがロータ20に近接する方向へ変形して、ベーン21の先端部21aと内側ケース12の外周壁12aとの間に粘性液体が通過する流路が形成されるため、本体ケース10の回転速度は殆ど減速しない。
【0020】
蓋40は、厚さの薄い金属板をプレス加工することによって成形されたものであり、内周壁40a、鍔部40b及び凸部40cを有して構成される(図16−図18参照)。内周壁40aは、上記したようにロータ20を支持する役割を果たす。鍔部40bには、厚さ方向に貫通する穴40dが設けられ、この穴40dには、ロータリーダンパを固定するための留め具が挿通される。凸部40cは、蓋40の外周部の一部に形成されている(図16,図18参照)。上記のように構成される蓋40は、図19に示したように、凸部40cを外側ケース11の凹部11cに嵌め込んでロータ20の上にセットした後、外側ケース11の周壁11aの端部11fをかしめることにより、図2及び図6に示したように取り付けられる。
【0021】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、隔壁12cが、樹脂製の内側ケース12の部分として、内側ケース12の周壁(外周壁12a)から突出するように設けられるため、隔壁12cの形状及び位置を精密に成形することが容易である。また、内側ケース12は樹脂製であるため、それ自体の耐圧性能は低いものの、その外側に金属製の外側ケース11が配置され、補強されるため、高い耐圧性能を得ることができる。したがって、大きな制動力を発生させることができる。また、金属製の外側ケース11の肉厚は、プレス成形が可能な程度に薄いため、軽量化が可能である。また、内側ケース12の回り止め手段を有するため、外側ケース11内で内側ケース12がしっかりと固定され、その結果、制動特性の安定を図ることができる。また、外側ケース11の周壁11aの端部11fの一部に、蓋40の外周部の一部に形成される凸部40cが嵌り込む凹部11cが形成されているため、凹部11cを蓋40の位置決め及びかしめ加工時のストッパとして機能させることができ、その結果、蓋40を容易にかつ適切な位置に取り付けることができる。さらに、実施例に係るロータリーダンパと同様に、高い耐圧性能と精密に成形された隔壁を備えたロータリーダンパとして、従来、亜鉛ダイカストから成る成形品(本体ケースと隔壁とが一体に成形されたもの)を用いたものが存在するが、実施例に係るロータリーダンパによれば、本体ケース10をプレス成形される金属製の外側ケース11と隔壁12cを有する樹脂製の内側ケース12との二重構造としたことにより、従来品より製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A部断面図である。
【図3】図1におけるB−B部断面図である。
【図4】図1におけるC−C部断面図である。
【図5】図2におけるD−D部断面図である。
【図6】本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す底面図である。
【図7】本発明の実施例において採用した外側ケースの平面図である。
【図8】本発明の実施例において採用した外側ケースの断面図である。
【図9】本発明の実施例において採用した外側ケースの底面図である。
【図10】本発明の実施例において採用した内側ケースの平面図である。
【図11】本発明の実施例において採用した内側ケースの断面図である。
【図12】本発明の実施例において採用した内側ケースの底面図である。
【図13】本発明の実施例において採用したロータの平面図である。
【図14】本発明の実施例において採用したロータの断面図である。
【図15】本発明の実施例において採用したロータの底面図である。
【図16】本発明の実施例において採用した蓋の平面図である。
【図17】本発明の実施例において採用した蓋の断面図である。
【図18】本発明の実施例において採用した蓋の底面図である。
【図19】本発明の実施例において採用した蓋の取付方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 本体ケース
11 外側ケース
11a 周壁
11b 端壁
11c 凹部
11d 貫通孔
11e 穴
12 内側ケース
12a 外周壁
12b 内周壁
12c 隔壁
12d 端壁
12e 突起
20 ロータ
20a 孔部
20b 溝
20c 大径部
20d 小径部
21 ベーン
21a 先端部
21b 溝
30 室
40 蓋
40a 内周壁
40b 鍔部
40c 凸部
40d 穴
50 Oリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本体ケースと、該本体ケース内に設けられるロータと、該ロータの周りに形成される室と、該室を仕切る隔壁と、前記室内に設けられるベーンと、前記室に充填される粘性液体と、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有し、前記本体ケースと前記ロータとが相対的に回転するときに前記隔壁又は前記ベーンが前記粘性液体を押圧することによって生じる前記粘性液体の抵抗を利用して前記本体ケース又は前記ロータの回転速度を減速させるロータリーダンパが知られている。
【0003】
この種のロータリーダンパにおいては、樹脂又は亜鉛ダイカストから成る本体ケースの部分として隔壁が設けられている。ここで、隔壁は、ロータの外周面に接するように配置されるが、ロータの回転の障害となってはならず、また、ロータとの間の隙間の大きさやばらつきが制動特性に影響を及ぼすため、精密に成形されることが要求される。この点、樹脂又は亜鉛ダイカストから成る成形品(本体ケースと隔壁とが一体に成形されたもの)によれば、隔壁を精密に成形することが容易である。
【0004】
しかしながら、樹脂から成る成形品は、耐圧性能が低いため、大きな制動力を発生させることが困難であった。他方、亜鉛ダイカストから成る成形品は、耐圧性能が高いので大きな制動力を発生させることが可能であるが、重量が重いため、軽量化が困難であった。
【0005】
下記特許文献1には、プレスによって本体ケースと隔壁とが一体に成形された金属製の成形品が開示されている。かかる成形品によれば、高い耐圧性能を得ることができ、かつ軽量化を実現し得る。しかしながら、プレスによって隔壁を精密に成形することが困難であった。
【特許文献1】特開2005−98430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、隔壁を精密に成形でき、かつ高い耐圧性能を得ることが可能で、さらに軽量化が可能であるロータリーダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下のロータリーダンパを提供する。
1.本体ケースと、該本体ケース内に設けられるロータと、該ロータの周りに形成される室と、該室を仕切る隔壁と、前記室内に設けられるベーンと、前記室に充填される粘性液体と、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有し、前記本体ケースと前記ロータとが相対的に回転するときに前記隔壁又は前記ベーンが前記粘性液体を押圧することによって生じる前記粘性液体の抵抗を利用して前記本体ケース又は前記ロータの回転速度を減速させるロータリーダンパであって、
前記本体ケースが、プレス成形される金属製の外側ケースであって、周壁及び端壁を有する外側ケースと、該外側ケース内に設けられる樹脂製の内側ケースであって、周壁を有する内側ケースと、該内側ケースの回り止め手段とを有し、
前記隔壁が、前記内側ケースの部分として、前記内側ケースの周壁から突出するように設けられ、
前記蓋が、金属製であって、前記外側ケースの周壁端部をかしめることにより取り付けられることを特徴とするロータリーダンパ。
2.前記外側ケースの周壁端部の一部に凹部が形成され、前記蓋の外周部の一部に前記凹部に嵌り込む凸部が形成されていることを特徴とする前記1に記載のロータリーダンパ。
3.前記内側ケースが、さらに端壁を有し、前記内側ケースの回り止め手段が、前記内側ケースの端壁に形成される突起と、該突起が嵌り込む穴であって、前記外側ケースの端壁に形成される穴とから構成されることを特徴とする前記1又は2に記載のロータリーダンパ。
【発明の効果】
【0008】
前記1に記載の本発明によれば、隔壁が、樹脂製の内側ケースの部分として、内側ケースの周壁から突出するように設けられるため、隔壁を精密に成形することが容易である。また、前記1に記載の本発明によれば、金属製の外側ケースが内側ケースの外側に配置され、さらに金属製の蓋が外側ケースの周壁端部をかしめることにより取り付けられるため、高い耐圧性能を得ることができ、その結果、大きな制動力を発生させることが可能になる。また、前記1に記載の本発明によれば、外側ケースが金属製であるが、プレス成形が可能な程度に肉厚が薄いため、軽量化が可能である。また、前記1に記載の本発明によれば、内側ケースの回り止め手段を有するため、外側ケース内で内側ケースがしっかりと固定され、その結果、制動特性の安定を図ることができる。さらに、前記1に記載の本発明によれば、製造コストを低減することが可能である。
前記2に記載の本発明によれば、外側ケースの周壁端部の一部に、蓋の外周部の一部に形成される凸部が嵌り込む凹部が形成されるため、該凹部を蓋の位置決め及びかしめ加工時のストッパとして機能させることができ、その結果、蓋を容易にかつ適切な位置に取り付けることが可能になる。
前記3に記載の本発明によれば、内側ケースの端壁に形成される突起が外側ケースの端壁に形成される穴に嵌り込むことにより、内側ケースの回転を抑制することができるため、制動特性の安定を図ることが可能になる。また、突起及び穴がそれぞれ内側ケース及び外側ケースの各端壁に形成されることにより、内側ケース及び外側ケースの各周壁の肉厚を薄くできるため、粘性液体が充填される室の容積を十分に確保することが可能になり、制動特性を向上させることができる。また、突起及び穴は、外側ケースに対する内側ケースの位置決めとしても機能するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0010】
図1は本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す平面図、図2は図1におけるA−A部断面図、図3は図1におけるB−B部断面図、図4は図1におけるC−C部断面図、図5は図2におけるD−D部断面図、図6は本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す底面図である。
【0011】
図1−図6に示したように、本発明の実施例に係るロータリーダンパは、本体ケース10と、本体ケース10内に設けられるロータ20と、ロータ20の周りに形成される室30と、室30を仕切る隔壁12cと、室30内に設けられるベーン21と、室30に充填される粘性液体と、本体ケース10の開口部を閉塞する蓋40とを有して構成される。
【0012】
本体ケース10は、外側ケース11と、内側ケース12と、内側ケース12の回り止め手段とを有して構成される(図5参照)。
【0013】
外側ケース11は、厚さの薄い金属板をプレス加工することによって成形されたものであり、周壁11a及び端壁11bを有して構成される(図7−図9参照)。周壁11aの端部11fの一部には、凹部11cが形成されている(図8,図9参照)。端壁11bの中央には、貫通孔11dが形成され、貫通孔11dの周りには、端壁11bを貫通する複数の穴11eが形成されている(図7−図9参照)。
【0014】
内側ケース12は、樹脂から成り、周壁12a,12b、隔壁12c及び端壁12dを有して構成される(図10−図12参照)。周壁12a,12bには、外側ケース11の周壁11aに隣接して配置される外周壁12aと、ロータ20を支持する内周壁12bとが含まれる(図11参照)。隔壁12cは、内側ケース12の部分として、外周壁12aから内周壁12bに向かって突出するように形成される(図12参照)。端壁12dには、外側ケース10の端壁11bに形成された穴11eに嵌り込む突起12eが形成されている(図10,図11参照)。上記のように構成される内側ケース12は、金型を用いた成形法により成形されるが、素材が樹脂であるため、隔壁12cを精密に成形できる。また、隔壁12cは、周壁(外周壁12a)から突出するように形成されるため、隔壁12cの形状だけでなく、隔壁12cの位置も精密に成形することができる。
【0015】
内側ケース12の回り止め手段は、外側ケース11の穴11eと内側ケース12の突起12eとから構成される。かかる回り止め手段によれば、図3及び図4に示したように、突起12eが穴11eに嵌り込むことにより、内側ケース12の回転を抑制することができる。突起12e及び穴11eは、外側ケース11に対する内側ケース12の位置決めとしても機能する。
【0016】
ロータ20の中央には、ロータ20を貫通する孔部20aが形成され、孔部20aの周りには、内側ケース12の内周壁12bが嵌り込む溝20bが形成されている(図13,図14参照)。ロータ20の下端側には、所定の深さを有する大径部20cと、所定の深さを有し、大径部20cより内径が小さい小径部20dが形成されている(図14,図15参照)。ロータ20は、図4に示したように、本体ケース10内において、溝20bに嵌め込まれる内側ケース12の内周壁12bと、小径部20dに嵌め込まれる蓋40の内周壁40aとにより支持されており、ロータ20と本体ケース10は相対的に回転可能である。
【0017】
図5に示したように、本体ケース10内にロータ20を設けることにより、ロータ20の周りには室30が形成される。室30は、ロータ20の外周面に接するように配置される隔壁12cによって仕切られている(図5参照)。室30内には、粘性液体が充填される。粘性液体の漏出を防止するため、ロータ20に形成される溝20b及び大径部20cにOリング50が配設されている(図4参照)。
【0018】
ベーン21は、ロータ20の部分として、ロータ20の外周面から突出するように形成されている(図13−図15参照)。実施例において採用したベーン21は、先端部21aが弁としての機能を果たすように、一面側に溝21bが設けられている(図13−図15参照)。
【0019】
実施例に係るロータリーダンパは、本体ケース10とロータ20とが相対的に回転するときに隔壁12c又はベーン21が粘性液体を押圧することによって生じる粘性液体の抵抗を利用して本体ケース10又はロータ20の回転速度を減速させるものであるところ、かかるベーン21によれば、ロータ20が回転する場合には、ベーン21が図5において時計回り方向へ回転することにより、ベーン21の先端部21aがロータ20に近接する方向へ変形して、先端部21aと内側ケース12の外周壁12aとの間に粘性液体が通過する流路を形成する。したがって、このときに発生する粘性液体の抵抗は小さいため、ロータ20の回転速度は殆ど減速しない。一方、ベーン21が図5において反時計回り方向へ回転するときは、先端部21aが内側ケースの外周壁12aに圧接するように変形して、上記流路を閉鎖する。したがって、このときに発生する粘性液体の抵抗は大きいため、ロータ20の回転速度は減速する。他方、本体ケース10が回転する場合には、隔壁12cが図5において時計回り方向へ回転することにより、ベーン21の先端部21aが内側ケース12の外周壁12aに圧接するため、本体ケース10の回転速度が減速する。一方、隔壁12cが図5において反時計回り方向へ回転するときには、ベーン21の先端部21aがロータ20に近接する方向へ変形して、ベーン21の先端部21aと内側ケース12の外周壁12aとの間に粘性液体が通過する流路が形成されるため、本体ケース10の回転速度は殆ど減速しない。
【0020】
蓋40は、厚さの薄い金属板をプレス加工することによって成形されたものであり、内周壁40a、鍔部40b及び凸部40cを有して構成される(図16−図18参照)。内周壁40aは、上記したようにロータ20を支持する役割を果たす。鍔部40bには、厚さ方向に貫通する穴40dが設けられ、この穴40dには、ロータリーダンパを固定するための留め具が挿通される。凸部40cは、蓋40の外周部の一部に形成されている(図16,図18参照)。上記のように構成される蓋40は、図19に示したように、凸部40cを外側ケース11の凹部11cに嵌め込んでロータ20の上にセットした後、外側ケース11の周壁11aの端部11fをかしめることにより、図2及び図6に示したように取り付けられる。
【0021】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、隔壁12cが、樹脂製の内側ケース12の部分として、内側ケース12の周壁(外周壁12a)から突出するように設けられるため、隔壁12cの形状及び位置を精密に成形することが容易である。また、内側ケース12は樹脂製であるため、それ自体の耐圧性能は低いものの、その外側に金属製の外側ケース11が配置され、補強されるため、高い耐圧性能を得ることができる。したがって、大きな制動力を発生させることができる。また、金属製の外側ケース11の肉厚は、プレス成形が可能な程度に薄いため、軽量化が可能である。また、内側ケース12の回り止め手段を有するため、外側ケース11内で内側ケース12がしっかりと固定され、その結果、制動特性の安定を図ることができる。また、外側ケース11の周壁11aの端部11fの一部に、蓋40の外周部の一部に形成される凸部40cが嵌り込む凹部11cが形成されているため、凹部11cを蓋40の位置決め及びかしめ加工時のストッパとして機能させることができ、その結果、蓋40を容易にかつ適切な位置に取り付けることができる。さらに、実施例に係るロータリーダンパと同様に、高い耐圧性能と精密に成形された隔壁を備えたロータリーダンパとして、従来、亜鉛ダイカストから成る成形品(本体ケースと隔壁とが一体に成形されたもの)を用いたものが存在するが、実施例に係るロータリーダンパによれば、本体ケース10をプレス成形される金属製の外側ケース11と隔壁12cを有する樹脂製の内側ケース12との二重構造としたことにより、従来品より製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A部断面図である。
【図3】図1におけるB−B部断面図である。
【図4】図1におけるC−C部断面図である。
【図5】図2におけるD−D部断面図である。
【図6】本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す底面図である。
【図7】本発明の実施例において採用した外側ケースの平面図である。
【図8】本発明の実施例において採用した外側ケースの断面図である。
【図9】本発明の実施例において採用した外側ケースの底面図である。
【図10】本発明の実施例において採用した内側ケースの平面図である。
【図11】本発明の実施例において採用した内側ケースの断面図である。
【図12】本発明の実施例において採用した内側ケースの底面図である。
【図13】本発明の実施例において採用したロータの平面図である。
【図14】本発明の実施例において採用したロータの断面図である。
【図15】本発明の実施例において採用したロータの底面図である。
【図16】本発明の実施例において採用した蓋の平面図である。
【図17】本発明の実施例において採用した蓋の断面図である。
【図18】本発明の実施例において採用した蓋の底面図である。
【図19】本発明の実施例において採用した蓋の取付方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 本体ケース
11 外側ケース
11a 周壁
11b 端壁
11c 凹部
11d 貫通孔
11e 穴
12 内側ケース
12a 外周壁
12b 内周壁
12c 隔壁
12d 端壁
12e 突起
20 ロータ
20a 孔部
20b 溝
20c 大径部
20d 小径部
21 ベーン
21a 先端部
21b 溝
30 室
40 蓋
40a 内周壁
40b 鍔部
40c 凸部
40d 穴
50 Oリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、該本体ケース内に設けられるロータと、該ロータの周りに形成される室と、該室を仕切る隔壁と、前記室内に設けられるベーンと、前記室に充填される粘性液体と、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有し、前記本体ケースと前記ロータとが相対的に回転するときに前記隔壁又は前記ベーンが前記粘性液体を押圧することによって生じる前記粘性液体の抵抗を利用して前記本体ケース又は前記ロータの回転速度を減速させるロータリーダンパであって、
前記本体ケースが、プレス成形される金属製の外側ケースであって、周壁及び端壁を有する外側ケースと、該外側ケース内に設けられる樹脂製の内側ケースであって、周壁を有する内側ケースと、該内側ケースの回り止め手段とを有し、
前記隔壁が、前記内側ケースの部分として、前記内側ケースの周壁から突出するように設けられ、
前記蓋が、金属製であって、前記外側ケースの周壁端部をかしめることにより取り付けられることを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
前記外側ケースの周壁端部の一部に凹部が形成され、前記蓋の外周部の一部に前記凹部に嵌り込む凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記内側ケースが、さらに端壁を有し、前記内側ケースの回り止め手段が、前記内側ケースの端壁に形成される突起と、該突起が嵌り込む穴であって、前記外側ケースの端壁に形成される穴とから構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリーダンパ。
【請求項1】
本体ケースと、該本体ケース内に設けられるロータと、該ロータの周りに形成される室と、該室を仕切る隔壁と、前記室内に設けられるベーンと、前記室に充填される粘性液体と、前記本体ケースの開口部を閉塞する蓋とを有し、前記本体ケースと前記ロータとが相対的に回転するときに前記隔壁又は前記ベーンが前記粘性液体を押圧することによって生じる前記粘性液体の抵抗を利用して前記本体ケース又は前記ロータの回転速度を減速させるロータリーダンパであって、
前記本体ケースが、プレス成形される金属製の外側ケースであって、周壁及び端壁を有する外側ケースと、該外側ケース内に設けられる樹脂製の内側ケースであって、周壁を有する内側ケースと、該内側ケースの回り止め手段とを有し、
前記隔壁が、前記内側ケースの部分として、前記内側ケースの周壁から突出するように設けられ、
前記蓋が、金属製であって、前記外側ケースの周壁端部をかしめることにより取り付けられることを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
前記外側ケースの周壁端部の一部に凹部が形成され、前記蓋の外周部の一部に前記凹部に嵌り込む凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記内側ケースが、さらに端壁を有し、前記内側ケースの回り止め手段が、前記内側ケースの端壁に形成される突起と、該突起が嵌り込む穴であって、前記外側ケースの端壁に形成される穴とから構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリーダンパ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−281052(P2008−281052A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124407(P2007−124407)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】
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