説明

ロータリー式の電気かみそり

【課題】肌面への負担を軽減しながらローラーで肌面を伸ばして、ひげを確実に起毛し、ひげ切断を効果的に行なえるロータリー式の電気かみそりを提供する。
【解決手段】第1切断刃11と第2切断刃12とローラー13を含む切断部7をかみそりヘッド3に設ける。ローラー13を両切断刃11・12の間に配置する。ローラー13は、そのローラー頂部が第1・第2の両切断刃11・12の頂部より上方に突出する状態で配置する。駆動時におけるローラー13の回転方向を、第1切断刃11から遠ざかる向きで、内刃15の回転方向と逆にする。さらに、ローラー13の周速度を両内刃15・17の周速度より小さく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌を伸ばして肌面に倒れこんでいるひげを起毛するローラーを備えているロータリー式の電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
起毛手段を備えている電気かみそりは、例えば特許文献1、2に公知である。特許文献1においては、ロータリー内刃に隣接して起毛用回転体を平行に配置し、これら両者の外面にそれぞれアーチ状の外刃と毛導入板とを配置している。外刃および毛導入板には、スリット状のくせ毛導入穴と、起毛されたくせ毛を導入するスリット状の起毛導入穴とが設けてある。起毛用回転体はスパイラル状の起毛羽根を備えており、ロータリー内刃の回転方向とは逆向きに駆動される。
【0003】
特許文献2の電気かみそりにおいては、櫛歯構造の切断刃の上方に肌面を伸ばすローラーを配置している。ローラーは、摩擦ローラーで切断刃から離れる向きに回転駆動されて肌面を伸ばし、肌面に倒れこんでいるくせ毛を起毛する。
【0004】
特許文献3には、起毛用回転体を備えた脱毛装置が開示してある。起毛用回転体はゴム製の角枠状の無端リングからなり、その一部を摩擦ローラーで回転駆動することにより、リングの対向辺部を互いに外向きに回転させて肌面を伸ばし、肌面に倒れこんでいる毛を起毛する。
【0005】
特許文献4には、前後一対の切断刃の間にローラーを配置し、ローラーを外刃ホルダーで遊転自在に軸支している。ローラーは丸軸状のゴム状弾性体と、金属製の軸体とで構成してあり、肌面が外刃に対して過剰に押し付けられるのを防いで、肌面が傷付くのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−317536号公報(段落番号0007、図1)
【特許文献2】特開昭60−2271号公報(第2頁右下欄2〜9行、第1図)
【特許文献3】特許第3427134号公報(段落番号0032、図1)
【特許文献4】特開2002−239271号公報(段落番号0021、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の電気かみそりにおいては、ひげを毛導入板のくせ毛導入穴に導入して、導入されたくせ毛を起毛用回転体で強制的に起毛したのち、起毛されたくせ毛を外刃に設けた起毛導入穴から導入して内刃で切断する。そのため、起毛用回転体で起毛されたくせ毛を外刃に設けた起毛導入穴へ導入するまでの間に、くせ毛が肌面に倒れこむおそれがある。また、起毛用回転体の外面がアーチ状の毛導入板で覆われているので、起毛用回転体で肌面を伸ばして起毛することはできない。
【0008】
その点、特許文献2の電気かみそりにおいては、回転駆動されるローラーで肌面を伸ばすことができる。しかし、バリカン刃状の切断刃を支持する刃基台と、ローラーを軸支するローラー基台とが、共通する支軸でそれぞれ独立して揺動可能に支持してある。そのため、ひげ切断時の切断刃とローラーとの位置関係が一定せず、切断刃がローラーに対して接近したり遠ざかったりする。結果、ローラーで肌面を伸ばすことができたとしても、起毛されたひげを常に最適の位置で切断できるとは限らず、ひげを切断するのに手間が掛かる。例えば、かみそりヘッドを肌面に繰り返し摺接してからでないと、ひげを確実に切断できない。また、ローラーの周速度がかみそりヘッドの肌面に対する摺動速度より大きいことが必要条件になっているので、肌面が過剰に擦られるなど、肌に余分な負担が掛かるのを避けられない。
【0009】
特許文献3に係る無端リング状の起毛用回転体は、脱毛爪が露出する脱毛ヘッドの周囲を囲む状態で角枠状に配置してあり、対向する辺部のそれぞれが外向きに回転するように駆動される。そのため、リングの一部のみが肌面に押し付けられるなど、外部負荷が局部的に集中するような場合や、落下衝撃を受けるような場合に、起毛用回転体が脱毛ヘッドから分離するおそれがあり、起毛構造を実用化するうえで多くの問題がある。
【0010】
本発明の目的は、ローラーで肌面を伸ばしてひげを確実に起毛でき、したがってひげ切断を効果的に行なえるロータリー式の電気かみそりを提供することにある。本発明の目的は、ローラーによる肌面への負担を軽減しながらひげを確実に起毛でき、ひげ切断後の肌面のヒリ付きをよく防止できるロータリー式の電気かみそりを提供することにある。本発明の目的は、起毛作用を発揮するローラーと切断刃との駆動負荷が大きい場合でも、ひげ切断に関与していない切断刃の回転慣性力で駆動負荷に対抗して、ひげ切断を効果的に行なえるロータリー式の電気かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電気かみそりにおいては、横軸回りに回転駆動される内刃15と外刃16とからなる切断刃11と、肌面を伸ばすローラー13とを含む切断部7がかみそりヘッド3に設けてある。ローラー13は、ローラー駆動機構で切断刃11から離れる向きに回転駆動する。駆動時におけるローラー13の周速度を内刃15の周速度より小さく設定する。
【0012】
切断部7は前後に隣接して配置される第1切断刃11と第2切断刃12とを含んで構成する。ローラー13は、第1切断刃11と第2切断刃12のいずれかに隣接する状態で配置する。
【0013】
第1切断刃11の内刃15と、第2切断刃12の内刃17と、ローラー13とを、本体ケース1の内部に設けた1個のモーター6で同時に回転駆動する。
【0014】
第2切断刃12の内刃17の直径を、第1切断刃11の内刃15の直径、およびローラー13の直径より大きく設定する。
【0015】
ローラー13は、第1切断刃11と第2切断刃12との間に配置する。ローラー13のローラー中心から、第1切断刃11の内刃15の回転中心までの距離をAとし、ローラー13のローラー中心から、第2切断刃12の内刃17の回転中心までの距離をBとするとき、A<Bを満足するようにローラー13を配置する。
【0016】
駆動時におけるローラー13の回転方向と、第1切断刃11の内刃15の回転方向とを互いに逆向きに設定する。
【0017】
ローラー13のローラー幅L3を、第1切断刃11の内刃15の刃幅L1、および第2切断刃12の内刃17の刃幅L2と同じか、それより大きく設定する。
【0018】
第2切断刃12の内刃17の駆動回転数を、第1切断刃11の内刃15の駆動回転数より小さく設定する。以て、両切断刃11・12の内刃15・17の周速度を近似させる。
【0019】
ローラー13と第2切断刃12との間に、トリマー刃14を配置する。
【0020】
ローラー13とトリマー刃14のそれぞれを上下フロート自在に支持して、ローラーばね24およびトリマーばね35で上向きに進出付勢する。ローラーばね24のばね力を、トリマーばね35のばね力より小さく設定する。
【0021】
トリマー刃14の頂部を、第1・第2の両切断刃11・12の頂部と同じ高さに位置させる。ローラー13のローラー頂部を第1・第2の両切断刃11・12の頂部より上方に突出する。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、かみそりヘッド3に設けたローラー13をローラー駆動機構で回転駆動して、肌面を切断刃11から離れる向きに伸ばすので、肌面に倒れこんだひげを確実に起毛して切断刃11で切断できる。また、ひげ切断時の切断刃11とローラー13との位置関係を常に一定にして、起毛されたひげを切断刃11で的確に切断できる。さらに、駆動時におけるローラー13の周速度を、内刃15の周速度より小さく設定するので、肌面をローラー13で伸ばす際に、肌面がローラー13で不必要に擦られるのを防止できる。したがってローラー13による肌面への負担を軽減しながらひげを起毛でき、ひげ切断後の肌面のヒリ付きをよく防止できる。
【0023】
切断部7に第1切断刃11と第2切断刃12を設け、両切断刃11・12のいずれかに隣接する状態でローラー13を配置すると、ローラー13が肌面に接触する状態において、両切断刃11・12によっても肌面を受け止めることができる。このように、両切断刃11・12とローラー13との三者で肌面を受け止めると、ローラー13が肌面に局部的に押し付けられるのを防止して、ローラー13に作用する負荷を軽減できる。また、肌面がローラー13で不必要に擦られることも防止できる。
【0024】
第1・第2の両切断刃11・12の内刃15・17とローラー13とを、1個のモーター6で同時に回転駆動すると、各切断刃11・12で個別にひげ切断を行なう場合に、ひげ切断に関与していない側の切断刃の内刃の回転慣性力を利用して、切断抵抗に対抗できる。例えば、顎の下に生えているひげを切断する場合には、ローラー13と第1切断刃11とを肌面にあててひげを切断する。この場合には、ローラー13の回転抵抗と、第1切断刃11の内刃15の切断抵抗とがモーター6の駆動負荷となる。しかし、第2切断刃12は肌面から離れて、その内刃17が外刃18に摺接した状態のままで空転し、大きな回転慣性力を生じている。そのため、ローラー13および第1切断刃11の内刃15に大きな回転抵抗が作用していたとしても、内刃17の回転慣性力が先の回転抵抗に対抗する。したがって、第1切断刃11に大量のひげが捕捉されて、切断負荷が急増するような場合であっても、内刃15の駆動回転数が瞬間的に低下するのを、内刃17のフライホィール効果で防ぎながら、ひげ切断を円滑に持続することができる。なお、第1切断刃11が肌面から離れている場合には、その内刃15が空転して回転慣性力を生じ、第2切断刃12の回転抵抗に対抗する。
【0025】
第2切断刃12の内刃17の直径を、第1切断刃11の内刃15の直径、およびローラー13の直径より大きく設定すると、第2切断刃12の肌面との接触面積を大きくでき、肌面との接触面積が大きい分だけ、ひげを短い時間で効果的に切断できる。また、直径が大きい分だけ、先に説明した内刃17の回転慣性力を増加して、第1切断刃11およびローラー13の回転抵抗をフライホィール効果で効果的に相殺できる。
【0026】
ローラー13のローラー中心から第2切断刃12の内刃17の回転中心までの距離Bを、ローラー中心から第1切断刃11の内刃15の回転中心までの距離Aより大きくすると、第1切断刃11と第2切断刃12とが同時に肌面に接触するのを防止できる。とくに、第1切断刃11とローラー13でひげ切断を行なう際に、第2切断刃12を肌面から遠ざけて、その内刃17で大きな回転慣性力を生じさせることができる。したがって、内刃17の直径を大きくして回転慣性力を増加することと相俟って、第1切断刃11およびローラー13の回転抵抗を、内刃17のフライホィール効果でさらに効果的に相殺できる。
【0027】
駆動時におけるローラー13の回転方向と、第1切断刃11の内刃15の回転方向を逆向きに設定すると、肌面をローラー13で第1切断刃11から遠ざかる向きへ伸ばしながら、肌面が引っ張られる方向とは逆向きに回転する内刃15でひげ切断を行なえる。したがって、ローラー13で起毛されたひげを、内刃15で効果的に捕捉して確実に切断できる。また、第1切断刃11がローラー13を追随する向きにかみそりヘッド3を操作することにより、ローラー13で起毛されたひげの捕捉を、さらに確実に行なうことができる。
【0028】
ローラー13のローラー幅L3を、両切断刃11・12の内刃15・17の刃幅L1・L2と同じか、それより大きく設定すると、ローラー13のローラー幅L3に相当する肌面を伸ばして、より多くのひげを同時に起毛し、切断機会を増加できる。また、ひげの切断機会が増える分だけ、両切断刃11・12によるひげ切断を効率よく行なえる。
【0029】
直径寸法が大きな第2切断刃12の内刃17の駆動回転数を、第1切断刃11の内刃15の駆動回転数より小さく設定して、両切断刃11・12の内刃15・17の周速度を近似させるのは、第2切断刃12による肌面への負担を軽減するためである。内刃17の直径が大きな第2切断刃12においては、第1切断刃11に比べて肌面に対する接触面積が大きくなる。また、両内刃15・17の駆動回転数が同じであれば、直径が大きな第2切断刃12で、より大量のひげを同時に切断できる反面、肌面肌面への負担が大きくなる。しかし、両切断刃11・12の内刃15・17の周速度を近似させると、第2切断刃12によるひげ切断量を減少して、肌面への負担を緩和できる。また、駆動回転数を抑止する分だけ内刃17の駆動トルクを大きくできるので、パワフルにひげ切断を行なって肌面への負担を緩和できる。駆動回転数を抑止するのに伴なって、内刃17の温度上昇を抑止できる利点もある。
【0030】
ローラー13と第2切断刃12との間にトリマー刃14を配置すると、トリマー刃14で肌面を受け止めて、ローラー13が肌面に強く押し付けられるのを緩和し、肌面に対する負担を軽減できる。さらに、トリマー刃14と第2切断刃12とは、それぞれが長毛を捕捉して効果的に切断できるので、切断後の短毛を第1切断刃11およびローラー13で捕捉して好適に仕上げ切断できる。
【0031】
ローラー13およびトリマー刃14を上下フロート自在に支持し、ローラーばね24のばね力をトリマーばね35のばね力より小さく設定すると、トリマー刃14に先行してローラー13を下降移動させて、ローラー13が肌面に過剰に押し付けられるのを防止できる。これにより、ローラー13が肌面に強く押し付けられるのを防止して、ローラー13に作用する負荷を軽減できる。また、肌面がローラー13で強く擦られるのを防いで肌面への負担を緩和できる。
【0032】
ローラー13のローラー頂部を、第1・第2の両切断刃11・12の頂部、およびトリマー刃14より上方に突出させると、両切断刃11・12に先行する状態で、ローラー13を肌面に密着させて、常に肌面を伸ばした状態でひげ切断を行なえる。したがって、肌面に倒れこんだひげを両切断刃11・12で的確に切断して、ひげ剃り作業を短時間で能率よく行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電気かみそりの側縦断面図である。
【図2】電気かみそりの正面図である。
【図3】ローラーの支持および駆動構造を示す縦断正面図である。
【図4】トリマー刃の支持および駆動構造を示す縦断正面図である。
【図5】両切断刃、およびローラーの駆動構造を示す概念図である。
【図6】両切断刃、およびローラーの平面図である。
【図7】電気かみそりの使用例を示す説明図である。
【図8】別の実施例に係る電気かみそりの側縦断面図である。
【図9】別の実施例に係る電気かみそりの側縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(実施例) 図1ないし図7は本発明に係るロータリー式の電気かみそりの実施例を示す。図2においてロータリー式の電気かみそりは、本体ケース1と、本体ケース1に組み付けられる作動ユニットとを備えている。本体ケース1の前面にはモーター起動用のスイッチボタン2が設けてあり、背面上部にはきわ剃り刃ユニット(図示していない)が設けてある。作動ユニットは、下半側の電装品ユニットと、電装品ユニットの上部に設けられるかみそりヘッド3とで構成する。電装品ユニットは、回路基板と2次電池4などで構成してある。回路基板には、先のスイッチボタン2でオンオフされるスイッチユニットや、制御回路を構成する電子部品、および表示部用のLEDなどが実装してある。
【0035】
かみそりヘッド3は、ヘッドフレーム5と、その下部に固定されるモーター6と、かみそりヘッド3の上部に配置される切断部7と、モーター6の動力を切断部7に伝動する駆動構造と、ヘッドフレーム5に対して着脱される外刃ホルダー8などで構成してある。かみそりヘッド3は、本体ケース1で上下フロート可能に、しかも前後傾動、および左右傾動可能に支持してある。モーター6および回路基板を含む電装品ユニットは、かみそりヘッド3と本体ケース1との間に設けた成形パッキンでシールしてある。
【0036】
切断部7は、かみそりヘッド3の前後に隣接して配置される第1切断刃(切断刃)11と、第2切断刃(切断刃)12と、両切断刃11・12の間に配置されるローラー13およびトリマー刃14などで構成する。肌面を伸ばすローラー13は、第1切断刃11の背部に配置され、トリマー刃14はローラーと第2切断刃との間に配置してある。トリマー刃14は、主に長毛・くせ毛を切断する。また、第1切断刃11と第2切断刃12とは、それぞれ主に短毛を切断する。
【0037】
図1に示すように、第1切断刃11および第2切断刃12は、それぞれ横軸回りに回転駆動される内刃15・17と、両内刃15・17の外面を個別に覆う外刃16・18とからなる。両内刃15・17は、丸軸状の刃ホルダーの周面に10個の小刃を螺旋状に配置して構成してあり、後述する内刃駆動構造で図1に矢印Mで示す向きに回転駆動される。両外刃16・18は、それぞれ電鋳法で形成された網刃からなり、先に述べた外刃ホルダー8でアーチ形状に保形してある。
【0038】
図3においてローラー13は、ゴムまたはエラストマーで形成されるローラー本体20と、ローラー本体20を支持するローラー軸21とからなり、ローラー軸21の左右両端が逆門形のローラー支持枠22で軸支してある。ローラー軸21の一側端にはローラー駆動構造の回転動力を受け継ぐ受動プーリ23が固定してある。ローラー13の全体は、ヘッドフレーム5で上下フロート自在に支持されて、ローラーばね24で上向きに進出付勢してある。詳しくは、ローラー支持枠22の両側端に設けたスライド突起25を、ヘッドフレーム5の上面左右のガイド枠に設けたガイド溝26で上下スライド自在に案内している。さらに、ローラー支持枠22の下面の左右2個所と、ヘッドフレーム5の上面との間に、圧縮コイル形のばねからなるローラーばね24を配置している。ローラー13は、金属、あるいはプラスチックで形成してあってもよい。
【0039】
図4においてトリマー刃14は、それぞれかまぼこ形断面状のスリット刃からなる内刃30および外刃31と、内刃30を支持する内刃枠32と、外刃31を支持する左右一対の刃受ピース33と、内刃30を外刃31に密着付勢する板ばね製の内刃ばね34などで構成する。トリマー刃14は、外刃ホルダー8で上下フロート自在に支持されて、トリマーばね35で上向きに進出付勢してある。詳しくは、刃受ピース33の外側面に設けたスライド爪37を、外刃ホルダー8の側壁内面に設けたガイド溝38で上下スライド自在に案内している。さらに、両刃受ピース33と外刃ホルダー8の内桟39との間に、圧縮コイル形のばねからなるトリマーばね35を配置している。先に説明したローラーばね24のばね力は、トリマーばね35のばね力より小さく設定してある。
【0040】
モーター6の回転動力を切断部7に伝動する駆動構造を図5に示す。駆動構造は、1個のモーター6を駆動源にして構成してあり、第1切断刃11および第2切断刃12の内刃15・17を駆動する2系統の内刃駆動構造と、ローラー13を回転駆動するローラー駆動構造と、トリマー刃14の内刃30を往復駆動するトリマー駆動構造とで構成する。
【0041】
内刃駆動構造は、モーター6の縦軸周りの回転動力を左右軸回りの回転動力に変換する出力ギヤ41およびフェースギヤ42と、フェースギヤ42の回転動力を内刃軸15a・17aに固定した受動ギヤ43・44に伝動するギヤトレイン45・46とで構成する。モーター動力を受けた第1切断刃11の内刃15と、第2切断刃12の内刃17とは、それぞれ矢印Mで示すように同じ向きに回転駆動される。
【0042】
ローラー駆動構造は、第1切断刃11用のギヤトレイン45から分岐されるギヤトレイン49と、ギヤトレイン49の終段ギヤ50と、ローラー軸21との間に設けられる巻掛伝動構造とで構成する。先に説明したように、ローラー13はヘッドフレーム5で上下フロート自在に支持されており、ローラー13の上下フロート動作を吸収するために、回転動力を巻掛伝動構造を介してローラー13に伝動している。このように、巻掛伝動体を伝動媒体とすることにより、過大な負荷が作用するような場合にローラー13をスリップさせて肌面を保護できる。
【0043】
巻掛伝動構造は、終段ギヤ50と同行回転する駆動プーリー51と、ローラー軸21に固定した受動プーリー23と、両プーリー51・23に巻き掛けられるベルト52と、ベルト52の一側に外接するテンションプーリ53などで構成する。巻掛伝動構造を介して回転駆動されるローラー13の回転方向は、第1切断刃11から離れる向きであって、その内刃15の回転方向と逆向きに設定してあり、周速度は内刃15・17の周速度より小さく設定する。具体的には、第1切断刃11の内刃15の小刃先端の周速度を1.5m/secとするとき、ローラー13の周速度は0.5m/secとした。なお、ローラー13の周速度は、かみそりヘッド3を肌面に沿って移動するときの移動速度(5〜20cm/s)より速く設定することが好ましい。
【0044】
ローラー13が上下フロートする場合には、テンションプーリ53が揺動してベルト52の弛みを吸収する。したがって、ローラー13の上下位置の変化とは無関係に、回転動力をローラー13に伝動できる。また、ローラー13に過大な負荷が作用するような場合には、例えば受動プーリー23とベルト52とがスリップして動力の伝動を抑止し、ローラー13による肌面の引っ張り力を小さくできる。また、かみそりヘッド3が肌面に強く押し付けられる場合に、ローラー13が沈み込んで肌面に対する押圧力を軽減し、肌面への負担を軽減できる。
【0045】
トリマー駆動構造は、図4および図5に示すように出力ギヤ41に噛み合う偏心カム56と、偏心カム56で左右に往復駆動される振動子57と、振動子57の上面に突設される駆動軸58と、内刃枠32に設けられて駆動軸58の動作を受け継ぐ受動部59とで構成する。偏心カム56は、出力ギヤ41と噛み合うギヤと、その上面の偏心位置に突設される偏心ピンとで構成してある。振動子57の往復動作は、本体ケース1の背面に配置したきわ剃り刃ユニットにも伝動される。
【0046】
先に説明したように、トリマー刃14は、主に長毛・くせ毛を切断する。また、第1切断刃11と第2切断刃12とは、それぞれ主に短毛を切断する。第1・第2の切断刃11・12と、ローラー13と、トリマー刃14の位置および寸法関係は、次のように設定する。第2切断刃12の内刃17の直径は、第1切断刃11の内刃15の直径、およびローラー13の直径より大きく設定する。
【0047】
第2切断刃12の内刃17の直径を他より大きく設定すると、両内刃15・17の回転数を同じとする場合に、第2切断刃12の内刃17の周速度が他より大きくなり、肌面に大きな負担をかけてしまうおそれがある。こうした状況を解消するために、第2切断刃12の内刃17の駆動回転数を、第1切断刃11の内刃15の駆動回転数より小さく設定して、両切断刃11・12の内刃15・17の周速度を近似ないし同じに設定する。そのために、第2切断刃12のギヤトレイン46の減速比を、第1切断刃11のギヤトレイン45の減速比より大きくして、両内刃15・17の周速度を同じにした。具体的には、第2切断刃12の内刃17の小刃先端の周速度を1.5m/secとした。
【0048】
図1に示すように、ローラー13のローラー中心から、第1切断刃11の内刃15の回転中心までの距離をAとし、ローラー13のローラー中心から、第2切断刃12の内刃17の回転中心までの距離をBとするとき、A<Bを満足するようにローラー13を配置している。このように距離Bを距離Aより大きくすることにより、肌面をローラー13で伸ばしながら第1切断刃11で短いひげを切断するとき、第2切断刃12が肌面に接触するのを避けることができる。このとき、無負荷状態の第2切断刃12の内刃17は、その直径寸法が大きいこともあって、自己の回転慣性力でフライホィール効果を発揮する。したがって、第1切断刃11およびローラー13の回転抵抗を、内刃17のフライホィール効果で効果的に相殺できる。
【0049】
ひげ剃り時には、長毛剃りと、粗剃りと、仕上げ剃りを単独で、あるいは併用しながらひげ切断を行なう。長毛剃り時には、長毛やくせ毛を主にトリマー刃14で切断する。粗剃り時には、肌面との接触面積が大きな第2切断刃12で短毛を切断し、あるいは、トリマー刃14で長毛を切断するのに併行して、第2切断刃12で短毛を切断する。さらに、仕上げ剃り時には、第2切断刃12に比べて、肌面に対する接触圧が大きな第1切断刃11で短毛を切断し、あるいは、第1切断刃11と第2切断刃12で短毛を併行して切断する。距離Bと距離Aとに距離差を設けることにより、上記のような多様なひげ切断形態を的確に選択することができる。
【0050】
図7に示すように、かみそりヘッド3を矢印Pの方向へ移動させながら顎等の仕上げ剃りする場合には、肌面に接触しているローラー13の回転抵抗と、第1切断刃11の内刃15の切断抵抗とが、モーター6の駆動力に対して負荷となる。この使用状態において、第2切断刃12は肌面から離れており、内刃17は外刃18に摺接した状態のままで空転して、回転慣性力を生じている。しかも、内刃17の直径寸法は、第1切断刃11の内刃15の直径より大きいので、より大きな回転慣性力を生じる。そのため、第1切断刃11に大量のひげが捕捉されて、切断負荷が急増するような場合であっても、内刃15の駆動回転数が瞬間的に低下するのを内刃17のフライホィール効果で防いで、ひげ切断を円滑に持続することができる。
【0051】
上記のような、内刃17のフライホィール効果による回転持続作用は、両切断刃11・12の内刃15・17とローラー13とを、本体ケース1に設けた1個のモーター6で同時に回転駆動することで実現できる。なお、第2切断刃12でひげ切断を行なう場合には、肌面から離れている第1切断刃11の内刃15の回転慣性力で、第2切断刃12の内刃17の切断抵抗に対抗して、瞬間的な駆動回転数の低下を同様に阻止できる。
【0052】
ロータリー式の電気かみそりにおいては、かみそりヘッド3が矢印P方向へ移動するとき、各内刃15・17の回転方向が矢印Pとは逆向きになるように設定する。これは、かみそりヘッド3を、図7の矢印P方向へ移動させるとき、外刃16・18の刃穴に捕捉されたひげが、矢印P方向とは逆側の刃穴の内縁に押し付けられ、その状態のままで、ひげを内刃15・17と外刃16・18で即座に切断できるからである。なお、内刃15・17の回転方向が逆である場合には、矢印P方向とは逆側の刃穴の内縁に押し付けられたひげを、内刃15・17で矢印P方向の刃穴の内縁にまで移動させた後でないと、ひげ切断を行なえない。
【0053】
図1に示すように、トリマー刃14の頂部は、第1・第2の両切断刃11・12の頂部と同じ高さに位置させてある。これに対し、ローラー13のローラー頂部は、第1・第2の両切断刃11・12の頂部より、寸法Hで示す分だけ上方に突出させてある。このように、ローラー13を両切断刃11・12の頂部より上方に突出させることにより、仕上げ剃り時にローラー13を肌面に確実に密着させて、肌面を伸ばすことができる。また、ローラー13は肌面を内刃15の回転方向とは逆向きに引っ張りながら伸ばすので、肌面に倒れこんだひげを強制的に起毛できる。
【0054】
図6に示すように、第1切断刃11の内刃15の刃幅をL1とし、第2切断刃12の内刃17の刃幅をL2とし、ローラー13のローラー幅をL3とするとき、両内刃15・17とローラー13との幅寸法の関係は、不等式(L1=L2)<L3を満足するように設定してある。このように、ローラー13のローラー幅L3を、両内刃15・17の刃幅L1・L2より大きく設定すると、第1切断刃11・第2切断刃12の切断領域より広幅の肌面をローラー13で引っ張って伸ばし、肌面に倒れこんだひげをより広範に起毛して効果的にひげ切断を行なえる。なお、ローラー13のローラー幅L3は、等式(L1=L2=L3)を満足できればよく、刃幅L1と刃幅L2との関係がどうであれ、少なくとも(L1<L3)を満足できればよい。
【0055】
以上のように本発明の電気かみそりにおいては、駆動時におけるローラー13の回転方向を、第1切断刃11の内刃15の回転方向とは逆向きになるようにした。したがって、ひげ切断時には、ローラー13で肌面を第1切断刃11から遠ざかる向きへ伸ばし、肌面に倒れこんだひげを起こし多様体で第1切断刃11で好適に切断できる。このとき、内刃15はローラー13と逆向きに回転するので、起毛されたひげを効果的に捕捉して確実に切断できる。また、肌面に密着するローラー13の周速度を、内刃15・17の周速度より小さく設定するので、ローラー13による肌面への負担を軽減でき、したがってひげ切断後の肌面がローラー13で擦られてヒリ付くのを防止できる。
【0056】
図8は、本発明に係る電気かみそりの別の実施例を示す。そこでは、かみそりヘッド3の上部前後に第1切断刃11と第2切断刃12を配置し、両切断刃11・12の間にトリマー刃14を配置した。さらに、第1切断刃11の前側にローラー13を配置した。駆動時におけるローラー13の回転方向は、第1切断刃11の内刃15と同じ向きにした。また、ローラー13、第1切断刃11、トリマー刃14、第2切断刃12の各頂部の高さを、かみそりヘッド3の前部から後部へ向かって徐々に低くして、第1切断刃11と第2断刃12が同時に肌面に接触するのを避けるようにした。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
【0057】
上記のように、第1切断刃11の前側にローラー13を配置する場合には、ローラー13の回転方向が内刃15の回転方向と同じになる。しかし、内刃15が肌面に直接触れるわけではないので、先の実施例と同様に、ローラー13で肌面を第1切断刃11から遠ざかる向きへ伸ばして、肌面に倒れこんだひげを強制的に起毛できる。また、かみそりヘッド3を矢印P方向へ移動しながらひげ切断を行なう場合には、ローラー13がかみそりヘッド3の移動方向と同じ向きへ転がる状態で回転駆動されるため、ローラー13は肌面を伸ばしながら、同時にかみそりヘッド3を矢印P方向へ押す作用を発揮する。したがって、ローラー13を第1切断刃11の前側に配置することにより、矢印P方向へ操作されるかみそりヘッド3の移動動作を、ローラー13で補助することができる。
【0058】
図9(a)・(b)は、それぞれ本発明に係る電気かみそりのさらに別の実施例を示す。図9(a)では、切断部7を第1切断刃11とローラー13とで構成し、ローラー13を第1切断刃11の後側に配置した。駆動時におけるローラー13の回転方向は、第1切断刃11の内刃15と逆向きにした。この実施例においても、ローラー13のローラー頂部は第1切断刃11の頂部より上方に突出させてある。したがって、この実施例における電気かみそりにおいても、ローラー13で肌面を伸ばして、肌面に倒れこんだひげを強制的に起毛できる。
【0059】
図9(b)では、切断部7を第1切断刃11と、第2切断刃12と、ローラー13とで構成し、ローラー13を第2切断刃12の後側に配置した。第1切断刃11の内刃15の直径と、第2切断刃12の内刃17の直径は同じとし、駆動時におけるローラー13の回転方向は、両切断刃11・12の内刃15・17の回転方向と逆向きにした。この実施例においては、両切断刃11・12の頂部位置を同じ高さとし、ローラー13のローラー頂部を両切断刃11・12の頂部より上方に突出させるようにした。
【0060】
使用時には、肌面をローラー13で、第1切断刃11および第2切断刃12の内刃15・17の回転方向と逆向きに引っ張って伸ばし、肌面に倒れこんだひげを強制的に起毛できる。また、かみそりヘッド3の肌面に対する当て方を変えることにより、第2切断刃12とローラー13との間の肌面、あるいは第1切断刃11とローラー13との間の肌面を引っ張って起毛することができる。
【0061】
上記の実施例では、内刃15・17とローラー13のそれぞれを、1個のモーター6で同時に駆動するようにしたが、その必要はなく、各内刃15・17とローラー13を、それぞれ専用のモーターを駆動源とする2系統の内刃駆動構造とローラー駆動構造とで駆動することができる。あるいは、各内刃15・17を1個のモーター6で同時に駆動し、ローラー13のみを専用のモーターで駆動することができる。
【0062】
上記の実施例では、ローラー13と第2切断刃12との間にトリマー刃14を配置したが、その必要はなくトリマー刃14は省略することができる。かみそりヘッド3は本体ケース1で、上下フロート可能、前後傾動、左右傾動可能に支持してある必要はなく、かみそりヘッド3が本体ケース1で固定支持してある電気かみそりであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
3 かみそりヘッド
7 切断部
11 第1切断刃
12 第2切断刃
13 ローラー
15 第1切断刃の内刃
16 第1切断刃の外刃
17 第2切断刃の内刃
18 第2切断刃の外刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横軸回りに回転駆動される内刃(15)と外刃(16)とからなる切断刃(11)と、肌面を伸ばすローラー(13)を含む切断部(7)がかみそりヘッド(3)に設けられており、
ローラー(13)が、ローラー駆動機構で切断刃(11)から離れる向きに回転駆動されており、
駆動時におけるローラー(13)の周速度が、内刃(15)の周速度より小さく設定してあることを特徴とする特徴とするロータリー式の電気かみそり。
【請求項2】
切断部(7)が、前後に隣接して配置される第1切断刃(11)と第2切断刃(12)とを含んで構成されており、
ローラー(13)が、第1切断刃(11)と第2切断刃(12)のいずれかに隣接する状態で配置してある請求項1に記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項3】
第1切断刃(11)の内刃(15)と、第2切断刃(12)の内刃(17)と、ローラー(13)とを、本体ケース(1)の内部に設けた1個のモーター(6)で同時に回転駆動する請求項2に記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項4】
第2切断刃(12)の内刃(17)の直径が、第1切断刃(11)の内刃(15)の直径、およびローラー(13)の直径より大きく設定してある請求項2から3のいずれかひとつに記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項5】
ローラー(13)が、第1切断刃(11)と第2切断刃(12)との間に配置されており、
ローラー(13)のローラー中心から、第1切断刃(11)の内刃(15)の回転中心までの距離を(A)とし、ローラー(13)のローラー中心から、第2切断刃(12)の内刃(17)の回転中心までの距離を(B)とするとき、(A<B)を満足するようにローラー(13)が配置してある請求項2、3または4に記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項6】
駆動時におけるローラー(13)の回転方向と、第1切断刃(11)の内刃(15)の回転方向とが互いに逆向きに設定してある請求項1から5のいずれかひとつに記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項7】
ローラー(13)のローラー幅(L3)が、第1切断刃(11)の内刃(15)の刃幅(L1)、および第2切断刃(12)の内刃(17)の刃幅(L2)と同じか、それより大きく設定してある請求項1から6のいずれかひとつに記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項8】
第2切断刃(12)の内刃(17)の駆動回転数が、第1切断刃(11)の内刃(15)の駆動回転数より小さく設定されて、両切断刃(11・12)の内刃(15・17)の周速度が近似させてある請求項4から7のいずれかに記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項9】
ローラー(13)と第2切断刃(12)との間に、トリマー刃(14)が配置してある請求項2から8のいずれかに記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項10】
ローラー(13)とトリマー刃(14)のそれぞれが上下フロート自在に支持されて、ローラーばね(24)およびトリマーばね(35)で上向きに進出付勢されており、
ローラーばね(24)のばね力が、トリマーばね(35)のばね力より小さく設定してある請求項9に記載のロータリー式の電気かみそり。
【請求項11】
トリマー刃(14)の頂部が、第1・第2の両切断刃(11・12)の頂部と同じ高さに位置させてあり、
ローラー(13)のローラー頂部が第1・第2の両切断刃(11・12)の頂部より上方に突出してある請求項2から10のいずれかひとつに記載のロータリー式の電気かみそり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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