説明

ロータリ圧縮機

【課題】低コストで、圧縮部の調心精度の高いロータリ圧縮機を得ること。
【解決手段】第2シリンダには、少なくとも4つのねじ孔が設けられ、上端板、中間仕切板、第1シリンダ及び下端板の夫々には、前記第2シリンダの少なくとも4つのねじ孔を介して、互いに連通する少なくとも4つのボルト通し孔が設けられ、前記中間仕切板の少なくとも4つのボルト通し孔の内、2つのボルト通し孔は、他のボルト通し孔より小径に形成され、記下端板と第1シリンダ、上端板と第2シリンダとは、夫々予め調心固定されて第1シリンダ組、第2シリンダ組を形成し、前記第1シリンダ組と第2シリンダ組とは、前記回転軸により互いに調心固定され、前記第1シリンダ組及び第2シリンダ組と中間仕切板とは、前記第1シリンダ組側から前記中間仕切板の2つの小径のボルト通し孔に夫々挿通され、該2つの小径のボルト通し孔に夫々連通する前記第2シリンダの各ねじ孔にねじ込まれた通しボルトにより調心固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのシリンダを有するロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仕切り板を挟んで重合された第1および第2のシリンダと、これらの第1および第2のシリンダの外側面にそれぞれ重合された2つのベアリングと、これらのベアリングに回動自在に支持され上記シリンダ内に設けられたローラを回転する回転軸とを具備するロータリコンプレッサにおいて、いずれか一方のベアリングに第1の貫通孔を2つ以上窄設し、これらの第1の貫通孔に対応する第1のシリンダに上記第1の貫通孔から挿入されたボルトが螺合する雌ねじ部を形成した第2の貫通孔を窄設し、これらの第2の貫通孔に対応する仕切り板および第2のシリンダに略同一径の第3および第4の貫通孔を窄設し、上記第2、第3および第4の貫通孔に亘ってスプリングピン(位置決めピン)を挿入したロータリコンプレッサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、密閉容器内に設けられた電動機部と、この電動機部に回転軸を介して連結された圧縮機構部とを有し、前記圧縮機構部が、前記回転軸を支持する主軸受と副軸受との間に第1と第2のシリンダとを有し、この第1、第2のシリンダを仕切板で分離したロータリ圧縮機において、前記仕切板を介在し前記第2のシリンダを前記第1のシリンダに固定する締結ボルトと、前記第1と第2のシリンダ及び前記仕切板を貫通する連結孔を設け、前記仕切板の前記連通孔の内径を第1と第2のシリンダの前記連通孔の内径より小さくし、前記連通穴は、前記第1と第2のシリンダいずれか一方の連通孔を基準として前記仕切板の位置を決定するものであり、前記仕切板の連通穴に挿入される位置決め治具の先端をテーパ状としたロータリ圧縮機が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−123294号公報
【特許文献2】特開2001−329983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の技術によれば、スプリングピンのコスト、仕切り板及びシリンダにピンを挿入するための貫通孔を窄設するコストがかかる、という問題がある。特許文献2に開示された従来の技術によれば、仕切板を介在し第2のシリンダを第1のシリンダに固定する締結ボルトのためのボルト穴のほかに、位置決め治具のための連通穴を、第1と第2のシリンダ及び仕切板に窄設するコストがかかる、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで、圧縮部の調心精度の高いロータリ圧縮機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、圧縮機筐体と、前記圧縮機筐体内下部に配置され、上側から下側へ、上端板、第2シリンダ、中間仕切板、第1シリンダ及び下端板が積層された圧縮部と、前記圧縮機筐体内上部に配置され、回転軸を介して前記圧縮部を駆動するモータと、を備え、第1、第2低圧連絡管から冷媒ガスを吸入して圧縮し、吐出管へ吐出するロータリ圧縮機において、前記第2シリンダには、少なくとも4つのねじ孔が設けられ、前記上端板、中間仕切板、第1シリンダ及び下端板の夫々には、前記第2シリンダの少なくとも4つのねじ孔を介して、互いに連通する少なくとも4つのボルト通し孔が設けられ、前記中間仕切板の少なくとも4つのボルト通し孔の内、2つのボルト通し孔は、他のボルト通し孔より小径に形成され、前記下端板と第1シリンダ、上端板と第2シリンダとは、夫々予め調心固定されて第1シリンダ組、第2シリンダ組を形成し、前記第1シリンダ組と第2シリンダ組とは、前記回転軸により互いに調心固定され、前記第1シリンダ組及び第2シリンダ組と中間仕切板とは、前記第1シリンダ組側から前記中間仕切板の2つの小径のボルト通し孔に夫々挿通され、該2つの小径のボルト通し孔に夫々連通する前記第2シリンダの各ねじ孔にねじ込まれた通しボルトにより調心固定されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで、圧縮部の調心精度の高いロータリ圧縮機が得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図である。
【図2】図2は、第1、第2の圧縮部の横断面図である。
【図3】図3は、実施例のロータリ圧縮機の第2シリンダ及び中間仕切板を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、実施例のロータリ圧縮機の第2シリンダ及び中間仕切板の他の形態を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、実施例のロータリ圧縮機の第2シリンダ及び中間仕切板のさらに他の形態を示す分解斜視図である。
【図6】図6は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部の天地を逆にした分解縦断面図である。
【図7】図7は、実施例のロータリ圧縮機の上マフラーカバー、上端板、第2シリンダ、回転軸、ロータ及び中間仕切板を組立てた状態を示す天地を逆にした縦断面図である。
【図8】図8は、図7の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかるロータリ圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図であり、図2は、第1、第2の圧縮部の横断面図である。
【0012】
図1に示すように、実施例1のロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10の下部に設置された圧縮部12と、圧縮機筐体10の上部に設置され、回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0013】
モータ11のステータ111は、圧縮機筐体10の内周面に焼きばめされて固定されている。モータ11のロータ112は、ステータ111の中央部に配置され、モータ11と圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に焼きばめされて固定されている。
【0014】
圧縮部12は、第1の圧縮部12Sと、第1の圧縮部12Sと並列に設置され第1の圧縮部12Sの上側に積層された第2の圧縮部12Tと、を備えている。図2に示すように、第1、第2の圧縮部12S、12Tは、第1、第2吸入孔135S、135T、第1、第2ベーン溝128S、128Tが設けられた環状の第1、第2シリンダ121S、121Tを備えている。
【0015】
図2に示すように、第1、第2シリンダ121S、121Tには、モータ11の回転軸15と同心に、円形の第1、第2シリンダ内壁123S、123Tが形成されている。第1、第2シリンダ内壁123S、123T内には、シリンダ内径よりも小さい外径の第1、第2環状ピストン125S、125Tが夫々配置され、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tと、第1、第2環状ピストン125S、125Tとの間に、冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する第1、第2作動室130S、130T(圧縮空間)が形成される。
【0016】
第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tから径方向に、シリンダ高さ全域に亘る第1、第2ベーン溝128S、128Tが形成され、第1、第2ベーン溝128S、128T内に、夫々平板状の第1、第2ベーン127S、127Tが、摺動自在に嵌合されている。
【0017】
図2に示すように、第1、第2ベーン溝128S、128Tの奥部には、第1、第2シリンダ121S、121Tの外周部から第1、第2ベーン溝128S、128Tに連通するように第1、第2のスプリング穴124S、124Tが形成されている。第1、第2のスプリング穴124S、124Tには、第1、第2ベーン127S、127Tの背面を押圧するベーンスプリング(図示せず)が挿入されている。ロータリ圧縮機1の起動時は、このベーンスプリングの反発力により、第1、第2ベーン127S、127Tが、第1、第2ベーン溝128S、128T内から第1、第2作動室130S、130T内に突出し、その先端が、第1、第2環状ピストン125S、125Tの外周面に当接し、第1、第2ベーン127S、127Tにより、第1、第2作動室130S、130T(圧縮空間)が、第1、第2吸入室131S、131Tと、第1、第2圧縮室133S、133Tとに区画される。
【0018】
また、第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2ベーン溝128S、128Tの奥部と圧縮機筐体10内とを、図1に示す開口部Rで連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒ガスを導入し、第1、第2ベーン127S、127Tに、冷媒ガスの圧力により背圧をかける第1、第2圧力導入路129S、129Tが形成されている。
【0019】
第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2吸入室131S、131Tに外部から冷媒を吸入するために、第1、第2吸入室131S、131Tと外部とを連通させる第1、第2吸入孔135S、135Tが設けられている。
【0020】
また、図1に示すように、第1シリンダ121Sと第2シリンダ121Tの間には、中間仕切板140が設置され、第1シリンダ121Sの第1作動室130Sと第2シリンダ121Tの第2作動室130Tとを区画している。第1シリンダ121Sの下端部には、下端板160Sが設置され、第1シリンダ121Sの第1作動室130Sを閉塞している。また、第2シリンダ121Tの上端部には、上端板160Tが設置され、第2シリンダ121Tの第2作動室130Tを閉塞している。
【0021】
下端板160Sには、下軸受部161Sが形成され、下軸受部161Sに、回転軸15の下軸受支持部151が回転自在に支持されている。上端板160Tには、上軸受部161Tが形成され、上軸受部161Tに、回転軸15の上軸受支持部153が回転自在に支持されている。
【0022】
回転軸15は、互いに180°位相をずらして偏心させた第1偏芯部152Sと第2偏芯部152Tとを備え、第1偏芯部152Sは、第1の圧縮部12Sの第1環状ピストン125Sに回転自在に嵌合し、第2偏芯部152Tは、第2の圧縮部12Tの第2環状ピストン125Tに回転自在に嵌合している。
【0023】
回転軸15が回転すると、第1、第2環状ピストン125S、125Tが、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tに沿って第1、第2シリンダ121S、121T内を図2の時計回りに公転し、これに追随して第1、第2ベーン127S、127Tが往復運動する。この第1、第2環状ピストン125S、125T及び第1、第2ベーン127S、127Tの運動により、第1、第2吸入室131S、131T及び第1、第2圧縮室133S、133Tの容積が連続的に変化し、圧縮部12は、連続的に冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する。
【0024】
図1に示すように、下端板160Sの下側には、下マフラーカバー170Sが配置され、下端板160Sとの間に下マフラー室180Sを形成している。そして、第1の圧縮部12Sは、下マフラー室180Sに開口している。すなわち、下端板160Sの第1ベーン127S近傍には、第1シリンダ121Sの第1圧縮室133Sと下マフラー室180Sとを連通する第1吐出孔190S(図2参照)が設けられ、第1吐出孔190Sには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止する第1吐出弁(図示せず)が配置されている。
【0025】
下マフラー室180Sは、環状に形成された1つの室であり、第1の圧縮部12Sの吐出側を、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、第2シリンダ121T及び上端板160Tを貫通する冷媒通路136(図2参照)を通して上マフラー室180T内に連通させる連通路の一部である。下マフラー室180Sは、吐出冷媒ガスの圧力脈動を低減させる。
【0026】
図1に示すように、上端板160Tの上側には、上マフラーカバー170Tが設置され、上端板160Tとの間に上マフラー室180Tを形成している。上端板160Tの第2ベーン127T近傍には、第2シリンダ121Tの第2圧縮室133Tと上マフラー室180Tとを連通する第2吐出孔190T(図2参照)が設けられ、第2吐出孔190Tには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止する第2吐出弁(図示せず)が設置されている。上マフラー室180Tは、吐出冷媒の圧力脈動を低減させる。
【0027】
第1シリンダ121S、下端板160S、下マフラーカバー170S、第2シリンダ121T、上端板160T、上マフラーカバー170T及び中間仕切板140は、通しボルト175及び上端板ボルト176により一体に締結されている(これらの圧縮部12を構成する部材の組立方法については後述する)。通しボルト175及び上端板ボルト176により一体に締結された圧縮部12のうち、上端板160Tの外周部が、圧縮機筐体10にスポット溶接により固着され、圧縮部12を圧縮機筐体10に固定している。
【0028】
円筒状の圧縮機筐体10の外周壁には、軸方向に離間して下部から順に、第1、第2貫通孔(図示せず)が、第1、第2吸入管104、105を通すために設けられている。また、圧縮機筐体10の外側部には、独立した円筒状の密閉容器からなるアキュムレータ25が、アキュムホルダー252により保持されている。
【0029】
アキュムレータ25の天部中心には、冷凍サイクルと接続するシステム接続管255が接続され、アキュムレータ25の底部に設けられた底部貫通孔(図示せず)には、一端がアキュムレータ25の内部上方まで延設され、他端が、第1、第2吸入管104、105の他端に接続される第1、第2低圧連絡管31S、31Tが接続されている。
【0030】
冷凍サイクルの低圧冷媒をアキュムレータ25を介して第1、第2の圧縮部12S、12Tに導く第1、第2低圧連絡管31S、31Tは、吸入部としての第1、第2吸入管104、105を介して第1、第2シリンダ121S、121Tの第1、第2吸入孔135S、135T(図2参照)に接続されている。すなわち、第1、第2吸入孔135S、135Tは、冷凍サイクルの低圧側に並列に連通している。
【0031】
圧縮機筐体10の天部には、冷凍サイクルと接続し高圧冷媒ガスを冷凍サイクルに吐出する吐出部としての吐出管107が接続されている。すなわち、第1、第2吐出孔190S、190Tは、冷凍サイクルに連通している。また、圧縮機筐体10の天部には、モータ11に電力を供給する電源端子台115が配置されている。
【0032】
圧縮機筐体10内には、およそ第2シリンダ121Tの高さまで潤滑油が封入されている。また、潤滑油は、回転軸15の下部に挿入された羽根ポンプ(図示せず)によって圧縮部12を循環し、摺動部品の潤滑及び微小隙間によって圧縮冷媒の圧縮空間を区画している箇所のシールをしている。
【0033】
次に、図2〜図8を参照して、実施例のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。図3は、実施例のロータリ圧縮機の第2シリンダ及び中間仕切板を示す分解斜視図であり、図4は、第2シリンダ及び中間仕切板の他の形態を示す分解斜視図であり、図5は、第2シリンダ及び中間仕切板のさらに他の形態を示す分解斜視図であり、図6は、圧縮部の天地を逆にした分解縦断面図であり、図7は、上マフラーカバー、上端板、第2シリンダ、回転軸、ロータ及び中間仕切板を組立てた状態を示す天地を逆にした縦断面図であり、図8は、図7の上面図である。
【0034】
図2及び図3に示すように、第2シリンダ121Tの胴体部には、略等間隔に5つのねじ孔121Tnが設けられている。また、図6に示すように、上マフラーカバー170T、上端板160T、中間仕切板140、第1シリンダ121S、下端板160S及び下マフラーカバー170S夫々には、第2シリンダ121Tの5つのねじ孔121Tnと夫々連通する5つのボルト通し孔121aが設けられている(実施例では、ねじ孔121Tn及びボルト通し孔121aを5つとしたが、4つ又は6つとしてもよい)。また、第1シリンダ121Sには、5つのボルト通し孔121aとは別の位置に、2つのねじ孔121Snが互いに離れた位置に設けられ(図2参照)、下端板160Sには、第1シリンダ121Sの2つのねじ孔121Snに連通する2つのボルト通し孔160Saが設けられている。
【0035】
中間仕切板140の5つのボルト通し孔121aの内、2つのボルト通し孔121bの内径は、他のボルト通し孔121aの内径より小径に形成され、通しボルト175の外径より+0.4mm(数百ミクロンオーダー)大径に精密に形成されている。図3〜図5に示すように、2つのボルト通し孔121bは、隣合わない位置(互いに離れた位置)に設けるのがよい。
【0036】
図4〜図6に示すように、第2シリンダ121Tの5つのねじ孔121Tnの内、中間仕切板140の2つの小径のボルト通し孔121bに連通するねじ孔121Tnの通しボルト175挿入側に、テーパ部121Ttを設けるとよい。また、図5及び図6に示すように、中間仕切板140の2つの小径のボルト通し孔121bの通しボルト175挿入側にも、テーパ部121Ttを設けるとよい。
【0037】
次に、図1〜図8を参照して実施例のロータリ圧縮機1の圧縮部12の組立方法を説明する。図6に示すように、まず、第1のステップとして、上マフラーカバー170T及び上端板160T夫々の5つのボルト通し孔121aに、夫々5本の上端板ボルト176を通し、第2シリンダ121Tの5つのねじ孔121Tnに夫々ねじ込み、自動調心組立装置により、±0.003mm(数ミクロンオーダー)の調心精度で、上端板160Tと第2シリンダ121Tとを調心固定し、第2シリンダ組121TKとする。
【0038】
次に、図6に示すように、第2のステップとして、下端板160Sと第1シリンダ121Sとを、ボルト通し孔160Saを通してねじ孔121Snにねじ込んだ2本の下端板ボルト177及び上記自動調心組立装置により、±0.003mm(数ミクロンオーダー)の調心精度で調心固定し、第1シリンダ組121SKとする。
【0039】
次に、図6〜図8に示すように、第3のステップとして、第2シリンダ組121TKに、第2環状ピストン125S、第2ベーン127T(図2参照)及び回転軸15を組付け、その上に、中間仕切板140を乗せる。この状態では、第2シリンダ組121TKに対する中間仕切板140の位置精度は、目検討で±1.5mm程度とすればよい。
【0040】
次に、図6に示すように、第4のステップとして、中間仕切板140の上に、第1環状ピストン125S及び第1ベーン127S(図2参照)を組付けた第1シリンダ組121SKを乗せ、その上に、下マフラーカバー170Sを乗せる。
【0041】
次に、図6に示すように、第5のステップとして、5本の通しボルト175を、下マフラーカバー170S、第1シリンダ組121SK及び中間仕切板140の夫々5つのボルト通し孔121a、121bに挿入し、第2シリンダ121Tの5つのねじ孔121Tnにねじ込んで、圧縮部12全体を締結する。
【0042】
下端板160Sと上端板160Tとは、回転軸15を基準軸として、±0.003mm(数ミクロンオーダー)の調心精度で、自動調心組立装置により調芯され締結されるので、第1シリンダ121Sと第2シリンダ121Tとは、±0.006mm(数ミクロンオーダー)の調心精度で締結される。
【0043】
中間仕切板140の5つのボルト通し孔121aの内、2つを小径のボルト通し孔121bとし、通しボルト175を挿通することにより、中間仕切板140と第2シリンダ121Tとを、±0.2mm(数百ミクロンオーダー)の調心精度で締結することができる。第1シリンダ121Sと第2シリンダ121Tとの調心精度は、±0.006mmであるので、第1シリンダ121Sと中間仕切板140も、±0.2mm(数百ミクロンオーダー)の調心精度で締結される。
【0044】
実施例のロータリ圧縮機1は、通しボルト175を5本とし、中間仕切板140の5つのボルト通し孔121aの内、隣合わない2つを小径のボルト通し孔121bとすることにより、2つの小径のボルト通し孔121b間の距離が大きくなり、第1、第2シリンダ121S、121Tに対する中間仕切板140の回転方向のズレ(通しボルト175回りのズレ)を小さくすることができ、第1、第2シリンダ121S、121Tと中間仕切板140の調心精度をより向上させることができる。
【0045】
また、図4〜図7に示すように、第2シリンダ121Tのねじ孔121Tn及び中間仕切板140のボルト通し孔121aの夫々ボルト挿入側に、一般的な面取りよりも大きい直径差で3mm以上のテーパ部121Ttを設けることにより、第1シリンダ121Sに対して、中間仕切板140又は第2シリンダ121Tが、±1.5mm程度位置ずれしていても、通しボルト175をテーパ部121Ttに押付けてずらし、調心することができる。
【0046】
この場合、4本以上の通しボルト175を通す中間仕切板140の全てのボルト通し孔121aを小径とすると、ボルト通し孔121a同士の相対的位置精度を高くする必要があり加工コストがアップするため、2つのボルト通し孔121aだけを小径のボルト通し孔121bとし、先に、この2つのボルト通し孔121bに通しボルト175を通して中間仕切板140を調心する。
【0047】
以上説明した実施例のロータリ圧縮機1によれば、中間仕切板140の2つのボルト通し孔121bを小径とすることにより、中間仕切板140と第1、第2シリンダ121S、121Tとを、所定の調心精度(±0.2mm:数百ミクロンオーダー)の範囲で締結することができる。そのため、第1、第2環状ピストン125S、125Tが、中間仕切板140に摺接しながら高圧部と低圧部をシールするシール幅H(図1参照)を適正(1.5mm〜3.0mm)に保つことができ、低コストでロータリ圧縮機1の性能のバラツキを少なくすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ロータリ圧縮機
10 圧縮機筐体
11 モータ
12 圧縮部
15 回転軸
25 アキュムレータ
31S 第1低圧連絡管
31T 第2低圧連絡管
104 第1吸入管
105 第2吸入管
107 吐出管(吐出部)
111 ステータ
112 ロータ
115 電源端子台
12S 第1の圧縮部
12T 第2の圧縮部
121S 第1シリンダ
121Sn ねじ孔
121T 第2シリンダ
121a ボルト通し孔
121b 小径のボルト通し孔
121Tn ねじ孔
121Tt テーパ部
121SK 第1シリンダ組
121TK 第2シリンダ組
123S 第1シリンダ内壁
123T 第2シリンダ内壁
124S 第1スプリング穴
124T 第2スプリング穴
125S 第1環状ピストン
125T 第2環状ピストン
127S 第1ベーン
127T 第2ベーン
128S 第1ベーン溝
128T 第2ベーン溝
129S 第1圧力導入路
129T 第2圧力導入路
130S 第1作動室
130T 第2作動室
131S 第1吸入室
131T 第2吸入室
133S 第1圧縮室
133T 第2圧縮室
135S 第1吸入孔
135T 第2吸入孔
136 冷媒通路
140 中間仕切板
151 下軸受支持部
152S 第1偏芯部
152T 第2偏芯部
153 上軸受支持部
160S 下端板
160Sa ボルト通し孔
160T 上端板
161S 下軸受部
161T 上軸受部
170S 下マフラーカバー
170T 上マフラーカバー
175 通しボルト
176 上端板ボルト
177 下端板ボルト
180S 下マフラー室
180T 上マフラー室
190S 第1吐出孔
190T 第2吐出孔
252 アキュムホルダー
255 システム接続管
R 第1、第2圧力導入路の開口部
H 第1、第2環状ピストンと中間仕切板が摺接するシール幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機筐体と、
前記圧縮機筐体内下部に配置され、上側から下側へ、上端板、第2シリンダ、中間仕切板、第1シリンダ及び下端板が積層された圧縮部と、
前記圧縮機筐体内上部に配置され、回転軸を介して前記圧縮部を駆動するモータと、
を備え、第1、第2低圧連絡管から冷媒ガスを吸入して圧縮し、吐出管へ吐出するロータリ圧縮機において、
前記第2シリンダには、少なくとも4つのねじ孔が設けられ、
前記上端板、中間仕切板、第1シリンダ及び下端板の夫々には、前記第2シリンダの少なくとも4つのねじ孔を介して、互いに連通する少なくとも4つのボルト通し孔が設けられ、
前記中間仕切板の少なくとも4つのボルト通し孔の内、2つのボルト通し孔は、他のボルト通し孔より小径に形成され、
前記下端板と第1シリンダ、上端板と第2シリンダとは、夫々予め調心固定されて第1シリンダ組、第2シリンダ組を形成し、
前記第1シリンダ組と第2シリンダ組とは、前記回転軸により互いに調心固定され、
前記第1シリンダ組及び第2シリンダ組と中間仕切板とは、前記第1シリンダ組側から前記中間仕切板の2つの小径のボルト通し孔に夫々挿通され、該2つの小径のボルト通し孔に夫々連通する前記第2シリンダの各ねじ孔にねじ込まれた通しボルトにより調心固定されている、
ことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記中間仕切板の2つの小径のボルト通し孔は、隣合わない位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記中間仕切板の2つの小径のボルト通し孔の通しボルト挿入側にテーパ部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
前記中間仕切板の2つの小径のボルト通し孔に夫々連通する前記第2シリンダの2つのねじ孔の通しボルト挿入側に、テーパ部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
前記テーパ部の最大径と最少径の差は、直径で3mm以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載のロータリ圧縮機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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